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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143885
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】通信用電線及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/12 20060101AFI20220926BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20220926BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20220926BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01B11/12
H01B7/295
H01B7/02 Z
H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044644
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 甫
【テーマコード(参考)】
5G309
5G315
【Fターム(参考)】
5G309AA01
5G309RA04
5G309RA12
5G315CA03
5G315CB02
5G315CB06
5G315CD02
5G315CD12
(57)【要約】
【課題】高い難燃性を有する通信用電線及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】通信用電線1Aは、単線又は撚線で構成された導体111と、絶縁性を有し導体の外周を被覆する絶縁被覆112と、を有する絶縁電線11A、11Bが対撚りされている対撚り線2と、対撚り線2の外周を覆うシース12Aと、を備え、特性インピーダンスが100Ω±10Ωの範囲内であり、室温で66MHzの周波数における挿入損失が0.68dB/m未満であり、シース12Aは、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単線又は撚線で構成された導体と、絶縁性を有し前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有する電線が対撚りされている対撚り線と、
前記対撚り線の外周を覆うシースと、
を備え、
特性インピーダンスが100Ω±10Ωの範囲内であり、
室温で66MHzの周波数における挿入損失が0.68dB/m未満であり、
前記シースは、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含む
通信用電線。
【請求項2】
前記絶縁被覆は、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含む
請求項1に記載の通信用電線。
【請求項3】
JASO D625に規定される水平燃焼試験を行ったときの消炎までの時間が10秒未満である
請求項1又は請求項2に記載の通信用電線。
【請求項4】
ISO19642-2に規定される45度傾斜法での燃焼試験を行ったときの消炎までの時間が30秒未満である
請求項1又は請求項2に記載の通信用電線。
【請求項5】
前記導体の引張強さが600MPa以上である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の通信用電線。
【請求項6】
前記シースの内面より内側においては、前記絶縁被覆の外側に空隙があり、
径方向の断面において、前記シースの内面より内側の断面積に対する前記空隙の割合が8%以上30%以下である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の通信用電線。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の通信用電線を含み、自動車に配索されるワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信用電線及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内の通信に用いられる電線の発明として、例えば特許文献1に開示された電線がある。特許文献1に開示された電線は、導体と当該導体を被覆する絶縁被覆とを備える電線を撚り合わせてなる対撚線と、当該対撚線の全体を被覆する絶縁材料よりなるシースとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-188431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電線においては、絶縁被覆及びシースは、難燃剤として水酸化マグネシウムを含んでいる。しかしながら、特許文献1に開示された電線においては、シースが導体に直接接触していないことにより、導体を介したシースの伝導冷却の能力が低いものとなっている。そのため、例えば電線が発煙した場合、発煙により生じた熱がシースを有していない電線より逃げにくく、難燃性に難がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い難燃性を有する通信用電線及びワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る通信用電線は、単線又は撚線で構成された導体と、絶縁性を有し前記導体の外周を被覆する絶縁被覆と、を有する電線が対撚りされている対撚り線と、前記対撚り線の外周を覆うシースと、を備え、特性インピーダンスが100Ω±10Ωの範囲内であり、室温で66MHzの周波数における挿入損失が0.68dB/m未満であり、前記シースは、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含む。
【0007】
本発明の一態様に係る通信用電線は、前記絶縁被覆は、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含む構成である。
【0008】
本発明の一態様に係る通信用電線は、JASO D625に規定される水平燃焼試験を行ったときの消炎までの時間が10秒未満である構成である。
【0009】
本発明の一態様に係る通信用電線は、ISO19642-2に規定される45度傾斜法での燃焼試験を行ったときの消炎までの時間が30秒未満である構成である。
【0010】
本発明の一態様に係る通信用電線は、前記導体の引張強さが600MPa以上である。
【0011】
本発明の一態様に係る通信用電線は、前記シースの内面より内側においては、前記絶縁被覆の外側に空隙があり、径方向の断面において、前記シースの内面より内側の断面積に対する前記空隙の割合が8%以上30%以下である。
【0012】
本発明の一態様に係るワイヤハーネスは、上記のいずれかの通信用電線を含み、自動車に配索されるワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信用電線及びワイヤハーネスに高い難燃性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、パイプ型のシースを備える通信用電線の断面図である。
図2図2は、充実型のシースを備える通信用電線の断面図である。
図3図3は、対撚り線の撚り方を示す図である。
図4図4は、通信用電線の自動車への配索を模式的に示す平面図である。
図5図5は、変形例に係る通信用電線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0016】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る通信用電線1Aの断面図である。通信用電線1Aは、100Ω±10Ωの範囲の特性インピーダンスを有している。通信用電線1Aは、例えば自動車に配索され、配索された自動車においてイーサネット(登録商標)の規格に従った通信に用いられる。
【0017】
通信用電線1Aは、絶縁電線11A、絶縁電線11B、及びシース12Aで構成されている。絶縁電線11Aと絶縁電線11Bは、対撚りされて対撚り線2を構成し、対撚り線2は、シース12Aで被覆されている。
【0018】
(シース)
シース12Aは、対撚り線2の保護や対撚り線2の対撚りの安定化、対撚り線2と周囲環境との距離の確保に寄与するものである。シース12Aは、ポリオレフィン系樹脂をベース材とした樹脂で形成されているのが好ましい。本実施形態では、シース12Aは、ポリオレフィン系樹脂をベース材とし、難燃剤や酸化防止材を添加した材料で形成されており、難燃剤として臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを採用している。シース12Aに採用される臭素系難燃剤としては、例えばデカブロモジフェニルエーテル、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンなどがある。本実施形態では、例えばビス(ペンタブロモフェニル)エタンを採用しており、100質量部であるポリオレフィン系樹脂のベース材に対し、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンは、5質量部以上且つ35質量部以下が望ましい。また、100質量部であるポリオレフィン系樹脂のベース材に対し、三酸化アンチモンは、5質量部以上且つ15質量部以下が望ましい。シース12Aの形状は、中空のパイプ型であり、径方向の断面の厚みを0.75mmとし、外径を3.2mmとしている。なお、シース12Aの径方向の断面の厚みは、0.75mmに限定されるものではなく、他の値であってもよい。また、シース12Aの外径についても、3.2mmに限定されるものではなく、他の値であってもよい。また、中空のシース12Aの内面より内側においては、通信用電線1Aの径方向に沿った断面において、シース12Aの内面より内側の面積に対して絶縁電線11A、11Bを除く空間が占める割合を空隙率と称し、空隙率を8%以上且つ30%以下とするのが好ましい。
【0019】
シース12Aの硬さについては、柔らかすぎると摩耗や変形などの問題が発生する虞があり、硬すぎると温度が上昇したときに対撚り線2が開かなくなるため、望ましい硬度の範囲がある。本実施形態では、シース12Aは、JIS K 6253-3に従ってタイプDのデュロメータで測定したときに硬度がD25~D70の範囲内であるのが好ましく、D40~D60の範囲内であるのがより好ましい。
【0020】
なお、対撚り線2を保護するシースは、図1に示すパイプ型のシース12Aに替えて、中空ではない充実型のシースとしてもよい。図2は、充実型のシース12Bを備える通信用電線1Bの断面図である。また、対撚り線2とシース12A、12Bとの間にテープ等の介在があってもよい。シースを充実型のシース12Bとする場合、シース12Bの硬度は、JIS K 6253-3に従ってタイプDのデュロメータで測定したときにD30~D40の範囲内であるのが好ましい。
【0021】
(絶縁電線)
絶縁電線11Aは、導体111と絶縁被覆112で構成されている。導体111は、S撚りされた7本の素線1111を圧縮して形成された圧縮導体を焼鈍したものである。導体111は、撚線の一例である。この圧縮導体に対して行う焼鈍については、圧縮導体の引張り強さが600MPa~1200MPaの範囲内であり、破断伸びが1%以上、且つ7%未満となるように、加熱の温度、加熱時間、加熱後の温度保持時間、冷却時間を設定して焼鈍を行うのが好ましい。本実施形態では、焼鈍を行った導体111の引張り強さは800MPaであり、破断伸びは2.5%である。導体111の径方向の断面積は、特性インピーダンスを100Ω±10Ωとするために、0.05mm(0.05sq)以上、且つ0.35mm(0.35sq)以下とするのが好ましい。また、自動車に配索したときの軽量化や細径化の観点から、導体111の径方向の断面積を0.22mm(0.22sq)未満とするのが好ましく、0.13mm(0.13sq)とするのがより好ましい。なお、撚線である導体111を構成する素線1111の本数は、7本に限定されるものではなく、他の本数であってもよい。また、導体111は、素線1111を圧縮していない非圧縮導体であってもよく、撚られたものではなく単線であってもよい。
【0022】
素線1111は、錫の濃度が0.7質量%の銅合金で形成されている。なお、素線1111における錫の濃度は、0.4質量%以上、且つ0.8%以下が望ましく、より好ましくは、0.6質量%以上、且つ0.8質量%以下であるのが望ましい。また、素線1111は、銀の濃度が1質量%以上、且つ4質量%以下の銅合金であってもよく、銅合金を錫メッキしたものであってもよい。なお、絶縁電線11Bは、絶縁電線11Aと同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0023】
絶縁被覆112は、誘電率が低い樹脂であるのが好ましく、例えば、PE(ポリエチレン)、EVA(エチレン酢酸ビニル)又はPP(ポリプロピレン)等のポリオレフィン系樹脂をベース材とした樹脂で形成されている。本実施形態では、絶縁被覆112は、PPをベース材とし、難燃剤や酸化防止材を添加した材料で形成されており、難燃剤としては、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを採用している。臭素系難燃剤としては、例えばデカブロモジフェニルエーテル、ビス(テトラブロモフタルイミド)エタン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンなどがある。本実施形態では、例えばビス(ペンタブロモフェニル)エタンを採用しており、100質量部であるPPのベース材に対し、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンは、5質量部以上且つ35質量部以下が望ましい。また、100質量部であるPPのベース材に対し、三酸化アンチモンは、5質量部以上且つ15質量部以下が望ましい。なお、絶縁被覆112における難燃剤は、臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンではなく、水酸化マグネシウムを採用してもよい。絶縁被覆112の難燃剤として水酸化マグネシウムを採用した場合、100質量部であるPPのベース材に対し、水酸化マグネシウムは、40質量部以上且つ150質量部以下が望ましい。
【0024】
絶縁被覆112の厚さは、通信用電線1Aの特性インピーダンスが100Ω±10Ωとなるように、本実施形態では、導体111の直径や後述するシース12Aの厚さと合わせて0.2mmとした。
【0025】
絶縁被覆112の硬さについては、通信用電線1A、1Bが自動車に配索されて温度が上昇したときに塑性変形を起こさない程度の硬さであるのが好ましく、例えば、パイプ型のシース12Aを備える通信用電線1Aにおいては、絶縁被覆112の硬さは、シース12Aと同等であるのが好ましい。充実型のシース12Bを備える通信用電線1Bにおいては、絶縁被覆112の硬さは、シース12Bと同等であるのが好ましい。
【0026】
(対撚り線)
図3は、対撚り線2の撚り方を示す図である。対撚り線2は、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bをダブルツイストバンチャー型の撚線機で対撚りした撚線である。本実施形態では、対撚り線2は、ピッチが20mmであり、Z撚りで撚られている。
【0027】
ところで、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bとを撚り合わせる場合、単に撚り合わせると絶縁電線11Aと絶縁電線11Bのそれぞれが捻じれた状態で撚り合わされてしまい、この捻じれが撚りを解く力が働くため、対撚り線2がばらけやすくなる。
【0028】
したがって本実施形態では、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bとを撚り合わせながら、その撚り合わせの回転方向とは逆の回転方向(すなわち、撚り合わせによる絶縁電線11Aの捻じれと絶縁電線11Bの捻じれを緩和する回転方向)に、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bのそれぞれをひねって回転させるという、いわゆる撚り返しを施して、捻じれを防止している。
【0029】
ここで、撚り合わせの回転角Xと撚り返しの回転角Yとの比Y/Xを、撚り返し率と称する。すなわち絶縁電線11Aと絶縁電線11Bに撚り返しが全く施されておらず、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bが捩じれたままの状態では、撚り返し率の値は0%であり、撚り返しが施され、絶縁電線11A自体の捻じれと絶縁電線11B自体の捩じれが全くない状態では撚り返し率の値は100%である。本実施形態では、対撚り線2の撚り返し率は、100%としている。撚り返し率を100%とすることにより、絶縁電線11Aと絶縁電線11Bがばらけにくくなっている。
【0030】
(評価)
前述した通信用電線1Aについて高周波特性と難燃性を評価した。この評価に際し、通信用電線1Aにおいて絶縁被覆112の難燃剤を臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンとした実施例1と、通信用電線1Aにおいて絶縁被覆112の難燃剤を水酸化マグネシウムとした実施例2を作成した。また、実施例1、2との比較のために比較例1~3を作成した。比較例1は、通信用電線1Aのシース12Aを、難燃剤を含まない構成としたものであり、比較例2は、通信用電線1Aのシース12Aの難燃剤を臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンに替えて水酸化マグネシウムとしたハロゲンフリーの構成としたものである。比較例3は、通信用電線1Aからシース12Aを除いた構成であり、絶縁被覆112の難燃剤を水酸化マグネシウムとした構成である。
【0031】
実施例1、2及び比較例1~3の高周波特性については、特性インピーダンスと損失を評価した。特性インピーダンスについては、実施例1、2及び比較例1~3のそれぞれを10m採取し、キーサイト・テクノロジー株式会社のE5071C ENAベクトル・ネットワーク・アナライザを用いてTDR法(Time Domain Reflectometry)により測定した。TDR法による測定については、実施例1、2及び比較例1~3のそれぞれについて、測定に用いるパルス信号の立ち上がり時間を700psとし、10mのうちの0.5m~1.5mの範囲の値を平均したものを特性インピーダンスとした。また、TDR法による測定に際しては、周囲の温度を室温(23℃)として特性インピーダンスを測定した。特性インピーダンスの評価は、実施例1、2及び比較例1~3のそれぞれについて、特性インピーダンスの測定結果が100±10Ωの範囲に入っていれば「〇」と評価し、100±10Ωの範囲外の場合は「×」と評価した。
【0032】
損失については、実施例1、2及び比較例1~3のそれぞれを10m採取し、キーサイト・テクノロジー株式会社のE5071C ENAベクトル・ネットワーク・アナライザを用いてSパラメータのうちSdd12及びSdd21を評価し、この評価したSパラメータの絶対値をデシベル表記したものの符号を正とし、電線長で割ったものを挿入損失とした。例えば、Sdd12が-5dBであれば、挿入損失は0.5dB/mとなる。損失の評価は、実施例1、2及び比較例1~3のそれぞれについて、周波数を66MHzとしたときの挿入損失が0.68dB/m以上であれば「×」と評価し、0.68dB/m未満且つ0.20dB/m以上であれば「〇」と評価し、0.20dB/m未満であれば「◎」と評価した。
【0033】
実施例1、2及び比較例1~3の難燃性については、実施例1、2及び比較例1~3を日本自動車技術会規格(JASO D625)に従って水平燃焼を実施し、消炎までの時間を測定した。日本自動車技術会規格に従った難燃性の評価は、実施例1、2及び比較例1~3のそれぞれについて、消炎までの時間が30秒以上であれば「×」と評価し、10秒以上且つ30秒未満であれば「△」と評価し、1秒以上10秒未満であれば「〇」と評価し、1秒未満であれば「◎」と評価した。また、難燃性については、ISO19642-2に従って45度傾斜法での燃焼試験も実施し、消炎までの時間を測定した。ISO19642-2に従った難燃性の評価は、実施例1、2及び比較例1~3のそれぞれについて、消炎までの時間が70秒以上であれば「×」と評価し、30秒以上且つ70秒未満であれば「△」と評価し、1秒以上30秒未満であれば「〇」と評価し、1秒未満であれば「◎」と評価した。
【0034】
実施例1、2及び比較例1~3の構成と特性インピーダンス、損失及び難燃性の評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように、シース12Aの材料に臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含む実施例1、2は、消炎までの時間が短く、比較例1~3と比較すると高い難燃性を有している。また、絶縁被覆112の材料に臭素系難燃剤及び三酸化アンチモンを含む実施例1は、絶縁被覆112の材料に水酸化マグネシウムを含む実施例2より消炎までの時間が短く、より高い難燃性を有している。
【0037】
(ワイヤハーネス)
次に、通信用電線1Aを自動車に配索した例について説明する。通信用電線1Aは、通常のワイヤハーネスと組み合わせて使用できるほか、以下に説明する例にも使用できる。図4は、前述した通信用電線1Aを自動車に配索した例を示す平面図である。図4に示す自動車1000は、例えば、ハイブリッド車、電気自動車又は燃料電池車等を含む自動車である。自動車1000は、配索構造500を有する。
【0038】
配索構造500は、自動車1000が有する二次電池BATから供給される電力を電装品へ供給し、電装品を制御するECU(Electronic Control Unit)600と電装品との間で授受される信号を中継するシステムである。配索構造500は、複数の電気接続箱、及び複数のケーブルを有する。二次電池BATは、繰り返し充電及び放電が可能な二次電池である。二次電池BATの電圧は、例えば12V、24V、48Vなどであり、複数の電装品へ電力を供給する。なお、二次電池BATの位置は、図示した位置に限定されるものではなく、自動車1000内の他の位置に配置されていてもよい。
【0039】
配索構造500に接続される電装品は、例えば、ヘッドランプ、テールランプ、ストップランプ、ターンランプなどの灯火系の機器や、ディスプレイ装置、カーオーディオ、計器パネルなどの運転席周辺の機器、パワーウインドウ、ワイパー、シートヒーター、ドアロック、電動ミラー、リアデフロスター、リアワイパーなどの機器、アクチュエータ、各種センサーなどである。なお、図面が煩雑になるのを防ぐため、図4においては複数の電装品の図示を省略している。
【0040】
配索構造500は、複数のケーブルとして、ケーブルBW1、ケーブルBW2、ケーブルRW、ケーブルLW、ケーブルRW1、ケーブルLW1、ケーブルRW11及びケーブルLW11を有する。ケーブルBW2、ケーブルRW、ケーブルLW、ケーブルRW1、ケーブルLW1、ケーブルRW11及びケーブルLW11のうち電装品とECUとの間の通信に用いられるケーブルは、前述の通信用電線1Aを有するケーブルであり、ワイヤハーネスの一例である。なお、ケーブルBW2、ケーブルRW、ケーブルLW、ケーブルRW1、ケーブルLW1、ケーブルRW11及びケーブルLW11は、通信用電線1Aに替えて通信用電線1Bであってもよい。
【0041】
配索構造500は、複数の電気接続箱として、分配部FM、電気接続箱FR、電気接続箱FL、電気接続箱MR、電気接続箱ML、電気接続箱RR及び電気接続箱RLを有する。これらの電気接続箱は、電装品と電気接続箱を接続して電装品へ電力を供給する電線が接続される端子、電装品と電気接続箱を接続して電装品との間で信号を授受する通信用電線1Aが接続される端子、電装品への電力供給を制御する制御部、リレー回路、ヒューズ、スイッチング回路、平滑回路などを有する。
【0042】
配索構造500によれば、ECU600と電装品との間で電気接続箱と前述のケーブルを介してイーサネット(登録商標)の規格に従った通信を行うことができる。
【0043】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0044】
図5は通信用電線の変形例を示す図である。図5に示す通信用電線1Cは、通信用電線1Bと比較すると、絶縁被覆112に替えて絶縁被覆112Aを備えている点で相違している。絶縁被覆112Aは、ポリオレフィン系樹脂をベース材とした樹脂で形成されている。絶縁被覆112Aは、絶縁被覆112がパイプ型であるのに対して充実型である点で相違している。なお、通信用電線1Cは、充実型のシース12Bを備えているが、シース12Bに替えてパイプ型のシース12Aを備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1A、1B、1C 通信用電線
2 対撚り線
11A、11B 絶縁電線
12A、12B シース
111 導体
112、112A 絶縁被覆
500 配索構造
600 ECU
1000 自動車
1111 素線
BAT 二次電池
BW1、BW2、RW1、LW1、RW11、LW11 ケーブル
FM 分配部
FR、MR、RR、FL、ML、RL 電気接続箱
図1
図2
図3
図4
図5