(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022143916
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】レーザ装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20220926BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20220926BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20220926BHJP
【FI】
B23K26/21 W
H01S3/00 B
H01S5/0225
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044701
(22)【出願日】2021-03-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】東野 律子
(72)【発明者】
【氏名】東條 公資
【テーマコード(参考)】
4E168
5F172
5F173
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168BA54
4E168BA55
4E168BA87
4E168CB03
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4E168EA02
4E168EA08
4E168EA09
4E168EA11
4E168KA05
5F172AM08
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5F173MB03
5F173MC30
5F173ME44
5F173MF03
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】ビームプロファイルを変更可能な技術を提供する。
【解決手段】レーザ装置10は、対象物400を予備加熱するための青色レーザ光を各々が出力する6個の第1レーザ装置101~106と、対象物400を本加熱するための赤外レーザ光を出力する第2レーザ装置201とを備え、対象物400における6個の第1レーザ光の各々の第1照射位置と対象物400における赤外レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の前記第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を予備加熱するための第1レーザ光を各々が出力する複数の第1光源と、
前記対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する第2光源とを備え、
前記対象物における前記複数の第1レーザ光の各々の第1照射位置と前記対象物における前記第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係と、前記複数の前記第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である、レーザ装置。
【請求項2】
前記相対的位置関係と、前記第1照射位置の各々の位置と、のうちの少なくとも1つを変更する制御装置をさらに備える、請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
ユーザからの照射パターンの入力を受付ける入力装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記照射パターンに基づいて、前記相対的位置関係と前記各々の位置とのうちの少なくとも1つを変更する、請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記レーザ装置は、前記第2レーザ光を分割する光学素子をさらに備え、
前記照射パターンは、分割された前記第2レーザ光の各々の前記第2照射位置に対応する位置に前記複数の第1レーザ光うちの一部の第1レーザ光を照射させるパターンを含む、請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記照射パターンは、前記複数の第1レーザ光のうちの1以上の第1レーザ光による前記対象物の照射に続いて、該第1レーザ光が照射された前記第1照射位置に前記第2レーザ光を照射させるパターンを含む、請求項3または請求項4に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記複数の第1レーザ光を集光して、前記対象物に照射させる集光レンズをさらに備え、
前記集光レンズに、前記第2レーザ光を透過させる透過部が形成されており、
前記透過部を透過した前記第2レーザ光は、前記対象物に照射される、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記透過部は、穴部である、請求項6に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記透過部は、前記第2レーザ光を透過させるための透過コーティングである、請求項6に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記第1光源は、半導体レーザ装置により構成される、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記第2光源は、シングルモードファイバレーザ装置により構成される、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項11】
前記第1レーザ光は、400nm以上550nm以下の波長のレーザ光であり、
前記第2レーザ光は、900nm以上1100nm以下の波長のレーザ光であり、
前記対象物は、銅、金、またはアルミニウムから構成される、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のレーザ装置。
【請求項12】
対象物を予備加熱するための第1レーザ光を出力する第1光源と、
前記対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する第2光源とを備え、
前記対象物における前記第1レーザ光の第1照射位置と前記対象物における前記第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係は変更可能である、レーザ装置。
【請求項13】
対象物を予備加熱するための第1レーザ光を出力する第1光源と、
前記対象物を本加熱するための第2レーザ光を各々が出力する複数の第2光源とを備え、
前記対象物における前記第1レーザ光の第1照射位置と前記対象物における前記複数の第2レーザの各々の第2照射位置との相対的位置関係と、前記複数の前記第2照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である、レーザ装置。
【請求項14】
対象物を予備加熱するための第1レーザ光を各々が出力する複数の第1光源と、
前記対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する第2光源と、
前記第1レーザ光を集光する第1光学系と、
前記第2レーザ光を集光する第2光学系とを備え、
前記第1光学系および前記第2光学系は、互いに光軸方向にずれて配置されている、レーザ装置。
【請求項15】
対象物を加工するレーザ装置の制御方法であって、
前記対象物を予備加熱するための複数の第1レーザ光を出力することと、
前記対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力することと、
前記対象物における前記複数の第1レーザ光の各々の第1照射位置と前記対象物における前記第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係と、前記複数の前記第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つを変更することとを備える、制御方法。
【請求項16】
前記相対的位置関係を変更することは、
前記第2照射位置を決定することと、
決定された前記第2照射位置に基づいて前記第1照射位置を決定することとを含む、請求項12に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ファイバレーザから出力される第1レーザ光と、半導体レーザから出力され、第1レーザ光とは異なる波長の第2レーザ光とを、第1レーザ光を透過させ第2レーザ光を反射させるミラーを用いて重畳させ、加工対象物に照射させる技術が開示されている。このミラーを経て、第1レーザ光と第2レーザ光とは同軸で重畳される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術では、2色のレーザ光により作成されるビームプロファイルについて十分に検討されていない。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、2種類以上のレーザ光のビームプロファイルを調整可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るレーザ装置は、複数の第1光源と、第2光源とを備える。複数の第1光源は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を各々が出力する。第2光源は、対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する。また、対象物における前記複数の第1レーザ光の各々の第1照射位置と前記対象物における前記第2レーザの第2照射位置との相対的位置関係と、前記複数の前記第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。
【0007】
本開示に係るレーザ装置は、第1光源と、第2光源とを備える。第1光源は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を出力する。第2光源は、前記対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する。また、前記対象物における前記第1レーザ光の第1照射位置と前記対象物における前記第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係は変更可能である。
【0008】
本開示に係るレーザ装置は、第1光源と、複数の第2光源とを備える。第1光源は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を出力する。複数の第2光源の各々は、対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する。また、前記対象物における前記第1レーザ光の第1照射位置と前記対象物における前記複数の第2レーザの各々の第2照射位置との相対的位置関係と、前記複数の前記第2照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。
【0009】
本開示に係るレーザ装置は、複数の第1光源と、第2光源と、第1光学系と、第2光学系とを備える。複数の第1光源の各々は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を出力する。第2光源は、対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する。第1光学系は、第1レーザ光を集光する。第2光学系は、第2レーザ光を集光する。第1光学系および前記第2光学系は、互いに光軸方向にずれて配置されている。
【0010】
本開示に係るレーザ装置の制御方法は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を出力することと、対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力することと、対象物における複数の第1レーザ光の各々の第1照射位置と対象物における第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つを変更することとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、2種類以上のレーザ光のビームプロファイルを調整可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に従うレーザ装置の構成例を示す図である。
【
図2】本実施の形態に従う制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施の形態に従うレーザ装置10の主な構成部などの斜視図である。
【
図11】制御装置500により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
[レーザ装置による加工]
本実施の形態に係るレーザ装置は、加工対象の対象物に対してレーザ光を照射して該対象物を加熱することにより、該対象物を構成する材料を融解・蒸発させて加工(具体例では溶接や切断)する。対象物の材質によっては、本加熱用レーザ光の波長に対して吸収率が低く、十分な加工ができないことがある。そこで、本実施の形態に係るレーザ装置は、予備加熱用のレーザ光を用いて該吸収率を上昇させた後に、該吸収率が上昇した箇所に対して加熱用レーザ光により加工する。
【0015】
たとえば、予備加熱用のレーザ光を青色レーザ光とし、本加熱用のレーザ光を赤外レーザ光とする。この場合において、対象物が特定の対象物である場合には、該赤外レーザ光の吸収率が低く該赤外レーザ光は該特定の対象物の表面で反射してしまう。赤外レーザ光が反射してしまうと、適切に特定の対象物を加工できない。特定の対象物は、たとえば、金、銅、またはアルミニウムなどから構成される高反射材である。このような高反射材は、温度が上昇すると赤外光の吸収率が増加するという特性を有する。赤外光の吸収率が増加すると、高反射材において赤外レーザ光は適切に吸収されることから、該高反射材であっても適切に加工することができる。
【0016】
そこで、本実施の形態では、高反射材の加工箇所(赤外レーザ光の照射箇所)に対して、青色レーザ光を照射することにより、該加工箇所の温度を局所的に上昇させる。そして、温度が上昇した箇所(つまり、赤外レーザ光の吸収率が上昇した箇所)に対して、赤外レーザ光を照射する。したがって、対象物が高反射材であっても、赤外レーザ光の照射により適切に加工することができる。このように、本実施の形態では、青色レーザ光は、予備加熱用のレーザ光として用いられ、赤外レーザ光は、本加熱用のレーザ光として用いられる。なお、予備加熱用レーザ光および本加熱用のレーザ光を共に青色レーザ光とする構成が考えられる。しかしながら、一般的に、青色レーザ光のような半導体レーザ光は、BPP(Beam Parameter Products)が悪く、シングルモードファイバーレーザのように微小なスポット径が得られない。よって、本実施の形態では、青色レーザ光を本加熱用のレーザ光として用いる構成が採用されない。
【0017】
[レーザ装置の全体構成]
図1は、本実施の形態に従うレーザ装置10の構成例を示す図である。対象物400は、配置台(図示せず)に配置される。レーザ装置10は、対象物400に対してレーザ光(青色レーザ光および赤外レーザ光)を照射する。レーザ装置10は、第1レーザ装置群と、アクチュエータ群と、コリメートレンズ群と、第2レーザ装置201と、光学素子211と、集光レンズ300と、制御装置500と、入力装置502とを備える。集光レンズ300は、本開示の「第1光学系」に対応する。
【0018】
第1レーザ群は、N個(Nは1以上の整数)の第1レーザ装置から構成される。本実施の形態では、N=6である。つまり、第1レーザ装置群は、6個の第1レーザ装置により構成される。本実施の形態では、6個の第1レーザ装置は、第1レーザ装置101と、第1レーザ装置102と、第1レーザ装置103と、第1レーザ装置104と、第1レーザ装置105と、第1レーザ装置106とである。第1レーザ装置101~106のそれぞれ、たとえば、半導体レーザ装置により構成される。なお、第1レーザ装置101~第1レーザ装置106は、他のレーザ装置により構成されてもよい。他のレーザ装置は、たとえば、固体レーザ装置である。また、第1レーザ装置は、本開示の「第1光源」に対応する。
【0019】
第1レーザ装置101~106の各々は、第1レーザ光を出力する。第1レーザ光は、典型的には、400以上であり550nm以下の波長のレーザ光である。たとえば、第1レーザ光は、いわゆる青色レーザ光または緑色レーザ光である。本実施の形態では、第1レーザ光を青色レーザ光とする。上述のように、青色レーザ光は、対象物400を予備加熱するためのレーザ光である。
【0020】
アクチュエータ群は、N個の第1レーザ装置のそれぞれに対応するN個のアクチュエータから構成される。アクチュエータは、「駆動機構」とも称される。上述のようにN=6であることから、アクチュエータ群は、6個のアクチュエータ151~156により構成される。6個のアクチュエータ151~156のそれぞれは、6個の第1レーザ装置101~106に対応して配置される。アクチュエータは、第1レーザ装置の出力端(たとえば、後述の
図3に示す出力ファイバの出力端101Sなど)を、後述のXY平面において、変位可能である。これにより、アクチュエータは、該アクチュエータに対応する第1レーザ装置からの青色レーザ光の対象物400における照射位置を変更するように、該第1レーザ装置を駆動できる。アクチュエータは、たとえば、圧電素子(ピエゾ素子)またはモータなどにより構成される。なお、本実施の形態では、照射位置は、対象物400において、レーザ光が照射されている位置を示す。照射位置は、レーザ光が対象物400に照射された点状の位置という概念と、一定の面積を有する照射領域という概念とを含む。
【0021】
より具体的には、アクチュエータ151は、第1レーザ装置101を駆動する。アクチュエータ152は、第1レーザ装置102を駆動する。アクチュエータ153は、第1レーザ装置103を駆動する。アクチュエータ154は、第1レーザ装置104を駆動する。アクチュエータ155は、第1レーザ装置105を駆動する。アクチュエータ156は、第1レーザ装置106を駆動する。
【0022】
コリメートレンズ群は、N個の第1レーザ装置のそれぞれに対応するN個のコリメートレンズから構成される。上述のようにN=6であることから、コリメートレンズ群は、6個のコリメートレンズ161~166により構成される。6個のコリメートレンズ161~166のそれぞれは、6個の第1レーザ装置101~106に対応して配置される。コリメートレンズは、該コリメートレンズに対応する第1レーザ装置からの青色レーザ光をコリメートする。
【0023】
より具体的には、コリメートレンズ161は、第1レーザ装置101からの青色レーザ光をコリメートする。コリメートレンズ162は、第1レーザ装置102からの青色レーザ光をコリメートする。コリメートレンズ163は、第1レーザ装置103からの青色レーザ光をコリメートする。コリメートレンズ164は、第1レーザ装置104からの青色レーザ光をコリメートする。コリメートレンズ165は、第1レーザ装置105からの青色レーザ光をコリメートする。コリメートレンズ166は、第1レーザ装置106からの青色レーザ光をコリメートする。
【0024】
第2レーザ装置201は、第2レーザ光を出力する。第2レーザ光は、典型的には、900nm以上であり、1100nm以下の波長のレーザ光である。たとえば、第2レーザ光は、赤外レーザ光である。赤外レーザ光は、対象物400を本加熱するためのレーザ光である。第2レーザ装置201は、たとえばシングルモードファイバーレーザ装置である。第2レーザ装置201は、他の装置であってもよい。他の装置は、たとえば、固体レーザ装置またはCO2レーザ装置であってもよい。また、赤外レーザ光はシングルモードである。また、第2レーザ装置は、本開示の「第2光源」に対応する。
【0025】
光学素子211は、対象物400における赤外レーザ光の照射パターンを変更する。光学素子211は、たとえば、DOE(Diffractive Optical Element)である。光学素子211は、たとえば、赤外レーザ光をM個(Mは2以上の整数)に分割する。また、制御装置500は、光学素子211を、赤外レーザ光の経路に出し入れ可能である。このように、制御装置500は、光学素子211を出し入れさせることにより、赤外レーザ光を分割させないようにしたり、赤外レーザ光を分割させるようにすることができる。フォーカスレンズ212は、赤外レーザ光を集光して、赤外レーザ光の焦点を調整する。フォーカスレンズ212は、本開示の「第2光学系」に対応する。
【0026】
上述のように、第1レーザ装置101~106のそれぞれの出力端は変位可能となっている。なお、
図3の例では、図面簡略化のために第1レーザ装置101~106のそれぞれの出力端のうちの出力端101Sが示されている。また、本実施の形態においては、第2レーザ装置201には、アクチュエータは配置されていない。したがって、第2レーザ装置201の出力端201Sは、変位されない構成となっている。
【0027】
制御装置500は、第1レーザ装置101~106、アクチュエータ151~156、第2レーザ装置201、および光学素子211を制御する。制御装置500は、第1レーザ装置101~106からの青色レーザ光の出力および非出力の切換、および青色レーザ光の出力パワーなどを制御する。制御装置500は、第2レーザ装置201からの赤外レーザ光の出力および非出力の切換、および赤外レーザ光の出力パワーなどを制御する。
【0028】
制御装置500は、アクチュエータ151~156のいずれかのアクチュエータを制御することにより、該アクチュエータに対応する第1レーザ装置の出力端を変位させる。第1レーザ装置の出力端の変位により、該第1レーザ装置から出力された青色レーザ光の集光レンズ300に対する入射角度を変更する。制御装置500は、この変更により、該青色レーザ光の対象物400における照射位置を変更(調整)できる。
【0029】
入力装置502には、ユーザからの情報(命令)が入力される。入力装置502は、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネルなどから構成される。入力装置502からの命令信号は、制御装置500に入力される。制御装置500は、該命令信号に基づいた制御を実行する。
【0030】
ユーザにより入力される入力情報は、たとえば、後述する照射パターンなどを含むようにしてもよい。たとえば、表示装置に、後述の照射パターンが表示され、ユーザは、該表示された照射パターンを選択する。この選択により、ユーザは、照射パターンなどを入力できる。また、入力情報は、アクチュエータの駆動情報を含むようにしてもよい。駆動情報は、たとえば、アクチュエータに対応する第1レーザ装置の出力端を変位させる量などを示す情報である。ユーザは、入力装置を用いて、第1レーザ装置の出力端の位置を微調整できる。
【0031】
また、入力情報は、第1レーザ装置101~106からの青色レーザ光の出力および非出力の切換を示す情報を含むようにしてもよい。また、入力情報は、第2レーザ装置201からの赤外レーザ光の出力および非出力の切換を示す情報を含むようにしてもよい。また、入力情報は、光学素子211の回転角度を示す情報を含むようにしてもよい。
【0032】
コリメートレンズ161~166のそれぞれでコリメートされた青色レーザ光(6個の青色レーザ光)、およびフォーカスレンズ212で焦点が調整された赤外レーザ光は集光レンズ300に入射する。集光レンズ300では、6個の青色レーザ光を集光しかつ1本の赤外レーザ光を通過させて、対象物400に照射する。
【0033】
また、レーザ装置10は、赤外レーザ光および青色レーザ光を走査することにより、対象物400において点状および線状(たとえば、直線状または曲線状)に照射することができる。レーザ装置10が、赤外レーザ光および青色レーザ光を走査する場合には、レーザ装置10および対象物400を相対的に移動させる。たとえば、レーザ装置10の図示しない出力部(赤外レーザ光および青色レーザ光を出力される部分)が移動することにより、赤外レーザ光および青色レーザ光を対象物400に対して線状に照射するようにしてもよい。また、レーザ装置10は、対象物400が配置されている配置台(図示せず)を移動させることにより、赤外レーザ光および青色レーザ光を対象物400に対して線状に照射するようにしてもよい。
【0034】
図2は、制御装置500のハードウェア構成を示すブロック図である。制御装置500は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)560と、ROM(Read Only Memory)562と、RAM(Random Access Memory)564と、HDD(Hard Disk Drive)566と、ハードウェアI/F170と、入力I/F572とを有する。各構成要素はデータバスによって相互に接続されている。
【0035】
ハードウェアI/F170は、ハードウェア群190を制御するためのインターフェースである。ハードウェア群190は、第1レーザ装置101~106と、アクチュエータ151~156と、第2レーザ装置201と、光学素子211とである。入力I/F572は、入力装置502と通信するためのインターフェースである。
【0036】
ROM562は、CPU560にて実行されるプログラムを格納する。RAM564は、CPU560におけるプログラムの実行により生成されるデータなどを一時的に格納する。RAM564は、作業領域として利用される一時的なデータメモリとして機能できる。HDD562は、不揮発性の記憶装置である。また、HDD566に代えて、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置を採用してもよい。
【0037】
また、ROM562に格納されているプログラムは、記録媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通されてもよい。または、プログラムは、情報提供事業者によって、いわゆるインターネットなどによりダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供されてもよい。制御装置500は、記録媒体またはインターネットなどにより提供されたプログラムを読み取る。制御装置500は、読み取ったプログラムを所定の記憶領域(たとえば、ROM562)に記憶する。CPU560は、該記憶されたプログラムを実行することにより上述の表示処理を実行する。
【0038】
記録媒体は、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、CD-ROM(compact disc read-only memory)、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc)、光カード、マスクROM、EPROM(Electronically Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリなどの固定的にプログラムを担持する媒体としてもよい。また、記録媒体は、プログラムなどをコンピュータが読取可能な非一時的な媒体である。
【0039】
図3は、レーザ装置10の主な構成部と、対象物400との斜視図である。
図3では、第1レーザ装置101~106、および第2レーザ装置201は、それぞれ、ファイバーの形状で示されている。
図3に示すように、第1レーザ装置101~106からの青色レーザ光の出力方向(第2レーザ装置201からの赤外レーザ光の出力方向)をZ軸方向ともいう。このように、本実施の形態では、第1レーザ装置101~106からの青色レーザ光の出力方向、および、第2レーザ装置201からの赤外レーザ光の出力方向は共にZ軸方向に沿っている。つまり、好ましくは、赤外レーザ光の光軸と、6個の青色レーザ光の光軸とは、Z軸方向に沿って互いに平行である。また、所定箇所に設置された対象物400の高さ方向をY軸方向とし、該対象物の幅方向をX軸方向とする。上述のXY平面は、Z軸方向に垂直な平面である。また、集光レンズ300およびフォーカスレンズ212は、互いにZ軸方向にずれて配置されている。
【0040】
図3の例では、集光レンズ300は、断面円形状である。また、集光レンズ300の中央には穴部306が設けられている。本実施の形態の穴部306は、断面円形状である。フォーカスレンズ212を透過した赤外ビームは、穴部306を通過して、対象物400に照射される。このように穴部306は、赤外レーザ光を透過させる透過部である。
【0041】
また、
図3に示すように、集光レンズ300において、6個の青色レーザ光のそれぞれの入射位置および赤外レーザ光の入射位置は異なる。また、
図3の例では、赤外レーザ光の入射位置は、集光レンズ300の中央位置であるが、他の位置(たとえば、集光レンズ300の端)としてもよい。
【0042】
また、第1レーザ装置101からの青色レーザの集光レンズ300における入射位置と、第1レーザ装置102からの青色レーザの集光レンズ300における入射位置とは左右対称の位置関係となっている。また、第1レーザ装置103からの青色レーザの集光レンズ300における入射位置と、第1レーザ装置104からの青色レーザの集光レンズ300における入射位置とは左右対称の位置関係となっている。また、第1レーザ装置105からの青色レーザの集光レンズ300における入射位置と、第1レーザ装置106からの青色レーザの集光レンズ300における入射位置とは左右対称の位置関係となっている。
【0043】
図4は、集光レンズ300の一例を示す図である。集光レンズ300は、レンズ本体302と、該レンズ本体302の表面に形成された第1層304とを含む。
図4では、第1層304は、集光レンズ300の片面に形成されている例が示されているが、集光レンズ300の両面に形成されてもよい。第1層304は、青色レーザ光の反射率が低い層である。第1層304は、たとえば、誘電体多層膜である。第1層304は、たとえば、二酸化チタン(TiO
2)と、二酸化ケイ素(SiO
2)との積層により構成される。積層数は、1としてもよく、2以上としてもよい。また、レンズ本体302の表面の全領域に第1層304が形成されると、赤外レーザ光は適切に集光レンズ300に入射されない。そこで、本実施の形態では、集光レンズ300の所定領域(本実施の形態では、中央領域)に、赤外レーザ光を透過させるための透過部(本実施の形態では、穴部306)が形成される。これにより、青色レーザ光および赤外レーザ光の双方を集光レンズ300に入射させることができる。
【0044】
また、上述したように、赤外レーザ光は、光学素子211により分割可能である。赤外レーザ光が分割されたか否かに関わらず、全ての赤外レーザ光が穴部306を通過するように該穴部306の径は設定される。
【0045】
[照射位置の変更]
本実施の形態のレーザ装置10は、6個の青色レーザ光の各々の第1照射位置と対象物400における赤外レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係を変更することができる。本実施の形態では、制御装置500が、アクチュエータ151~156を制御することにより、相対的位置関係を変更する。
【0046】
図5は、相対的位置関係の変更を説明するための図である。
図5では、対象物400における青色レーザ光の第1照射位置101A~106Aと、対象物400における赤外レーザ光の第2照射位置102Aとが示されている。第1照射位置101A~106Aのそれぞれは、第1レーザ装置101~第1レーザ装置106のそれぞれから出力された青色レーザ光の照射位置である。また、第2照射位置201Aは、第2レーザ装置201から出力された赤外レーザ光の照射位置である。
【0047】
レーザ装置10は、第1照射位置101A~106Aと、第2照射位置201Aとの相対的位置関係を変更可能である。上述のように、第2レーザ装置201の出力端201Sは、変位されない構成となっている。したがって、レーザ装置10は、第2照射位置201Aを基準にして、第1照射位置101A~106Aを変更可能(移動可能)となっている。
【0048】
さらに、レーザ装置10においては、6個の第1照射位置101A~106Aの各々も別個に変更可能となっている。第1照射位置101A~106Aの各々は、「個別位置」とも称される。個別位置を変更させることにより、第1照射位置101A~106Aにより形成される領域を変更させることができる。
図6は、6個の第1照射位置101A~106Aの各々(個別位置)が変位可能であることを示す図である。
図6の例では、第1照射位置101A~106Aにより形成される領域として楕円形の領域が示されている。
図5の例では、第1照射位置101A~106Aの各々の一部が重畳して形成される領域が示されている。個別位置を変更させることにより、
図5に示す領域から、他の形状の領域(
図6の例では楕円形領域)に変更できる。このように、ユーザは、第1照射位置101A~106Aにより形成される領域を変更できる。また、たとえば、ユーザは、該領域を矩形状の領域などに変更できる。
【0049】
本実施形態では、レーザ装置10は、上記の相対的位置関係と、上記の個別位置の双方を変更可能(調整可能)とされている。変形例として、レーザ装置10は、上記の相対的位置関係と上記の個別位置とのうちのいずれか一方を変更可能(調整可能)となるように構成されてもよい。
【0050】
本実施の形態では、制御装置500がアクチュエータ151~アクチュエータ156を駆動させることにより変更対象位置を変更可能である。具体的には、制御装置500は、アクチュエータ151~アクチュエータ156を駆動させることにより第1照射位置101A~106Aを変更可能(移動可能)である。
【0051】
なお、レーザ装置10は、第1照射位置101A~106Aと、第2照射位置201Aとを個別に変更可能となる構成が採用されてもよい。また、レーザ装置10は、第1照射位置101A~106Aを基準として、第2照射位置201Aが変更可能となる構成が採用されてもよい。
【0052】
また、制御装置500は、予め定められた照射パターンに基づいて相対的位置関係を変更できる。ここで、照射パターンは、第1パターン~第4パターンを含む。また、照射パターンに関するデータは、たとえば、上述のROM562などに予め格納されている。
【0053】
図7は、第1パターンの一例を示す図である。第1パターンは、
図7に示すように、第1照射位置101A~106Aと、第2照射位置201Aとが重畳しているパターンである。第1パターンは、対象物400に対する青色レーザ光の照射タイミング(青色レーザ光の到達タイミング)と、対象物400に対する赤外レーザ光の照射タイミング(赤外レーザ光の到達タイミング)が同一であるパターンである。
【0054】
図8は、第2パターンの一例を示す図である。第2パターンでは、
図8(A)に示すように、まず、6個の青色レーザ光の少なくとも1つの青色レーザ光が照射される。
図8(A)の例では、6つの第1照射位置101A~106Aが示されていることから、6個の全てのレーザ光が照射されていることを示している。そして、該青色レーザ光の照射が維持されたまま、所定時間経過後に、
図8(B)に示すように、第1照射位置101A~106Aに赤外レーザ光が照射される。
【0055】
このように、第2パターンは、6個の青色レーザ光のうちの1以上の青色レーザ光による対象物400の照射に続いて、第1照射位置101A~106Aに赤外レーザ光を照射させるパターンである。したがって、
図8(A)に示すように、青色レーザ光の照射により対象物400の第1照射位置101A~106Aが局所的に加熱される。局所的に加熱された位置(つまり、第1照射位置101A~106A)の温度は上昇し、該位置における赤外レーザ光の吸収率は上昇する。したがって、
図8(B)に示すように該位置に赤外レーザ光を照射することにより、赤外レーザ光を該位置で吸収させ、該位置での本加熱を実現することができる。
【0056】
図9は、第3パターンの一例を示す図である。上述の説明では、1つの対象物400に対して、青色レーザ光および赤外レーザ光を照射する構成を説明した。第3パターンは、複数の対象物の各々に対して青色レーザ光および赤外レーザ光を照射するパターンである。
図9の例では、複数の対象物として、2つの対象物である対象物4001および対象物4002が示されている。
【0057】
図9の例での第3パターンでは、対象物4001の第2照射位置201A1に赤外レーザ光が照射されている。また、該第2照射位置201A1に対応する位置に6個の青色レーザ光のうちの一部の青色レーザ光が照射される。ここで、第2照射位置に対応する位置とは、該第2照射位置と重畳する位置としてもよく、該第2照射位置から一定の距離、離れている位置としてもよい。
図9の例では、第2照射位置201A1に対応する位置とは、該第2照射位置201A1に重畳する位置である。
図9の例では、6個の青色レーザ光のうちの一部の青色レーザ光は、第1レーザ装置101~103の各々から出力された青色レーザ光である。よって、
図9の例では、対象物4001に第1照射位置101A~103Aが示されている。
【0058】
また、
図9の例では、対象物4002の第2照射位置201A2に赤外レーザ光が照射されている。また、該第2照射位置201A2と重畳する位置に6個の青色レーザ光のうちの一部の青色レーザ光が照射される。該一部の青色レーザ光は、第1レーザ装置104~106の各々から出力された青色レーザ光である。よって、
図9の例では、対象物4002に第1照射位置104A~106Aが示されている。
【0059】
図10は、第4パターンの一例を示す図である。第4パターンは、たとえば、対象物400において、線状(たとえば、直線状または曲線状)に、赤外レーザ光および青色レーザ光を走査する場合に用いられるパターンである。
図10の例では、赤外レーザ光および青色レーザ光は、線Lに沿って走査される。また、第4パターンにおいては、第1照射位置(
図10の例では、第1照射位置101A~106A)は、第2照射位置201Aを基準にして、対象物400における走査方向(
図10の例では、線Lの方向)側に設定される。
【0060】
このように設定されることにより、青色レーザ光および赤外レーザ光は、対象物400において、線L状に走査される。また、該線Lにおいて赤外レーザ光よりも先に青色レーザ光が照射される。したがって、線Lにおいて、青色レーザ光により局所的に加熱された後に赤外レーザ光を照射することができる。
【0061】
なお、第4パターンの思想が、第3パターンに反映されてもよい。この場合には、上述の「第2照射位置に対応する位置」は、該第2照射位置から一定の距離、離れている位置とされる。つまり、第2照射位置201A1は、第1照射位置101A~103Aから一定距離、離れており、第2照射位置201A2は、第1照射位置103A~106Aから一定距離、離れているパターンとなる。
【0062】
レーザ装置10においては、たとえば、第1~第4パターンを含む複数の照射パターンから、照射パターンをユーザは選択できるように構成されている。たとえば、ユーザは、入力装置502を操作することにより第1パターン~第4パターンのいずれかを選択可能である。
【0063】
従来のレーザ装置においては、ビームプロファイルが検討されていないという問題があった。これに対し、本実施の形態のレーザ装置10は、対象物400における複数の青色レーザ光の各々の第1照射位置101A~106Aと対象物400における赤外レーザ光の第2照射位置201Aとの相対的位置関係と、6個の第1照射位置101A~106Aの各々の位置(変更対象位置)を変更可能とした。したがって、赤外レーザ光と青色レーザ光とのビームプロファイルを多様にすることができる。
【0064】
また、制御装置500が、変更対象位置を変更可能とする。したがって、ユーザが相対的位置関係を変更する構成と比較して、相対的位置関係の変更が容易となる。
【0065】
また、レーザ装置10は、ユーザからの照射パターンの入力を受付ける入力装置502を備える。制御装置500は、入力された照射パターンに基づいて変更対象位置を変更する。したがって、たとえば、ユーザは、高頻度で用いられる照射パターンで変更対象位置を変更できる。よって、ユーザの負担を軽減できる。
【0066】
また、照射パターンのうちの第3パターンは、
図9に示すように、光学素子211により分割された赤外レーザ光の各々の第2照射位置201A1、201A2に対応する位置に6個の青色レーザ光うちの一部の青色レーザ光を照射させるパターンである。したがって、たとえば、レーザ装置10は、複数の対象物を並行して加工することができる。
【0067】
また、照射パターンのうちの第2パターンおよび第4パターンは、
図8および
図10に示すように、6個の青色レーザ光のうちの1以上の青色レーザ光による対象物400の照射に続いて、該青色レーザ光の第1照射位置に赤外レーザ光を照射させるパターンである。したがって、青色レーザ光により局所的に予備加熱した後に赤外レーザ光を照射する。よって、赤外レーザ光の反射率の高い対象物400であっても、該赤外レーザ光で加工することができる。
【0068】
また、レーザ装置10は、複数の青色レーザ光を集光して、対象物400に照射させる集光レンズ300をさらに備える。集光レンズ300には、赤外レーザ光を透過させる透過部が形成されており、透過部を透過した赤外レーザ光は、対象物400に照射される。したがって、レーザ装置10は、集光レンズ300により複数の青色レーザ光と赤外レーザ光とを集光して対象物400に照射することができる。
【0069】
また、
図4等に示すように集光レンズ300に形成された透過部は、穴部306である。したがって、比較的、簡易な構成で赤外レーザ光に集光レンズ300を透過させることができる。
【0070】
また、第1レーザ装置101~106は、半導体レーザ装置である。したがって、既存の半導体レーザ装置により青色レーザ光を対象物400に照射できる。
【0071】
また、第2レーザ装置201は、シングルモードファイバレーザ装置である。したがって、既存のシングルモードファイバレーザ装置により赤外レーザ光を対象物400に照射できる。
【0072】
また、青色レーザ光を一例とする第1レーザ光は、400nm以上550nm以下の波長のレーザ光であり、赤外レーザ光を一例とする第2レーザ光は、900nm以上1100nm以下の波長のレーザ光である。また、対象物400は、銅、金、またはアルミニウムから構成される。したがって、対象物400が銅、金、またはアルミニウムといった第2レーザ光を反射させる高反射材であっても、第1レーザ光により該高反射材を予備加熱することから、該高反射材の第2レーザ光の吸収率を高めることができる。よって、第1レーザ光により該高反射材を加工できる。
【0073】
また、レーザ装置10においては、集光レンズ300およびフォーカスレンズ212は、互いにZ軸方向にずれて配置される構成が採用されている。したがって、レーザ装置10の設計者などは、赤外レーザ光と、青色レーザとのビームプロフィルを調整しながら、レーザ装置10を設計(製造)することができる。換言すれば、設計者などは、レーザ装置10の製造時に赤外レーザ光と、青色レーザとのビームプロフィルを調整できる。
【0074】
[制御装置の処理]
図11は、制御装置500により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、制御装置500は、ユーザによる入力装置502への入力操作などに基づいて、上述の相対的位置関係および個別位置を変更する。このステップS1は、以下のステップS2と、ステップS4とを含む。
【0075】
ステップS2においては、制御装置500は、ユーザからの入力装置502に対する命令に基づいて、第2照射位置を決定する。次に、ステップS4において制御装置500は、たとえば、上述の照射パターンおよびステップS2で決定された第2照射位置に基づいて、第1照射位置を決定する。
【0076】
次に、ステップS6において、制御装置500は、第1レーザ装置に青色レーザ光を決定された第1照射位置に照射させる。また、ステップS6において、制御装置500は、第2レーザ装置201に赤外レーザ光を決定された第2照射位置に照射させる。なお、ステップS6においては、第2パターンが選択されたときには、制御装置500は、先に青色レーザ光を照射させ、その後、該青色レーザ光が照射された第1照射位置に赤外レーザ光を照射する。このような処理により、レーザ装置10は、青色レーザ光により予備加熱された位置に対して、本加熱するための赤外レーザ光を照射できる。
【0077】
また、
図11の例では、制御装置500は、ステップS1の処理の後に、ステップS6の処理を実行する例を説明した。しかし、制御装置500は、ステップS6の実行中(つまり、赤外レーザ光と青色レーザ光との出力中)にステップS1の処理を実行するようにしてもよい。
【0078】
[変形例]
(1)
図4の例では、集光レンズ300においては、赤外レーザ光を透過させる透過部として、穴部306が形成されている構成を説明した。しかしながら、透過部は、赤外レーザ光が透過される構成であれば、如何なる構成であってもよい。
図12は、変形例の集光レンズ300Aを示す図である。集光レンズ300Aは、集光レンズ300は、レンズ本体302と、該レンズ本体302の表面に形成された第1層304と、該レンズ本体302の表面に形成された第2層308とを有する。第2層308は、本開示の「透過コーティング」に対応する。第2層308は、赤外レーザ光の反射率が低い層である。第2層308は、五酸化タンタル(TaO
2)と、二酸化ケイ素(SiO
2)との積層により構成される。積層数は、1としてもよく、2以上としてもよい。
【0079】
図12のような集光レンズ300Aの構成であっても、適切に赤外レーザ光を透過させることができる。
【0080】
(2) 上述の実施の形態では、レーザ装置10は、アクチュエータを含む構成を説明した。しかしながら、レーザ装置10は、アクチュエータを含まない構成が採用されてもよい。この場合には、ユーザは、第1レーザ装置を把持して手作業で、青色レーザ光の対象物400における照射位置を変更するようにしてもよい。つまり、ユーザが手作業で相対的位置関係を変更するようにしてもよい。
【0081】
また、上述の実施の形態では、照射パターンとしての第1~第4パターンを実行させるプログラムデータが予め格納されている構成を説明した。しかしながら、このようなプログラムデータが格納されていない構成が採用されてもよい。このような構成である場合には、たとえば、ユーザが、第1レーザ装置および第2レーザ装置の照射方向を微調整することにより、第1~第4パターンの少なくとも1つのパターンを実現させるようにしてもよい。
【0082】
(3) また、上述の実施の形態では、レーザ装置10が集光レンズ300を備える構成を説明した。しかしながら、レーザ装置10は、集光レンズ300を備えていなくてもよい。たとえば、第1レーザ装置101~106のそれぞれからの青色レーザ光と、第2レーザ装置201からの赤外レーザ光とが直接、対象物400に照射される構成が採用されてもよい。
【0083】
(4) 上述の実施の形態では、第1レーザ装置の数は複数(6個)であり、第2レーザ装置の数は1個である構成を説明した。しかしながら、第1レーザ装置の数および第2レーザ装置の数は共に1個であってもよい。このような構成においては、対象物400における青色レーザ光の第1照射位置と対象物400における赤外レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係が変更可能である。したがって、ビームプロファイルを調整することができる。
【0084】
また、第1レーザ装置の数は、1個であり、第2レーザ装置の数は複数個であってもよい。このような構成においては、対象物400における青色レーザ光の第1照射位置と対象物400における複数の第2レーザの各々の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の第2照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。したがって、ビームプロファイルを調整することができる。
【0085】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0086】
(第1項) 一態様に係るレーザ装置は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を各々が出力する複数の第1レーザ装置と、対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する第2レーザ装置とを備え、対象物における複数の第1レーザ光の各々の第1照射位置と対象物における第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。
【0087】
第1項に記載のレーザ装置によれば、対象物における複数の第1レーザ光の各々の第1照射位置と対象物における第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。したがって、ビームプロファイルを調整することができる。
【0088】
(第2項) 第1項に記載のレーザ装置は、相対的位置関係を変更する制御装置をさらに備える。
【0089】
第2項に記載のレーザ装置によれば、制御装置が、相対的位置関係を変更することから、ユーザの負担を軽減できる。
【0090】
(第3項) 第2項に記載のレーザ装置は、ユーザからの照射パターンの入力を受付ける入力装置をさらに備え、制御装置は、照射パターンに基づいて相対的位置関係を変更する。
【0091】
ユーザが選択した照射パターンに基づいて、相対的位置関係を変更することから、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0092】
(第4項) 第3項に記載のレーザ装置は、第2レーザ光を分割する光学素子をさらに備え、照射パターンは、分割された第2レーザ光の各々の第2照射位置に対応する位置に複数の第1レーザ光うちの一部の第1レーザ光を照射させるパターンを含む。
【0093】
第3項に記載のレーザ装置によれば、複数の対象物を並行して加工することができる。
(第5項) 第3項または第4項に記載のレーザ装置において、照射パターンは、複数の第1レーザ光のうちの1以上の第1レーザ光による対象物の照射に続いて、該第1レーザ光が照射された第1照射位置に第2レーザ光を照射させるパターンを含む。
【0094】
第5項に記載のレーザ装置によれば、第1レーザ光により対象物を予備加熱した後に第2レーザ光により本加熱させることができることから、たとえば、第2レーザ光の反射率が高い対象物であっても第2レーザ光により本加熱させることができる。
【0095】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか1項に記載のレーザ装置は、複数の第1レーザ光を集光して、対象物に照射させる集光レンズをさらに備え、集光レンズに、第2レーザ光を透過させる透過部が形成されており、透過部を透過した第2レーザ光は、対象物に照射される。
【0096】
第6項に記載のレーザ装置によれば、集光レンズにより複数の第1レーザ光と第2レーザ光とを集光して対象物に照射することができる。
【0097】
(第7項) 第6項に記載のレーザ装置において、透過部は、穴部である。
第7項に記載のレーザ装置によれば、第2レーザ光に集光レンズを透過させることができる。
【0098】
(第8項) 第6項に記載のレーザ装置において、透過部は、第2レーザ光を透過させるための透過コーティングである。
【0099】
第8項に記載のレーザ装置によれば、第2レーザ光に集光レンズを透過させることができる。
【0100】
(第9項) 第1項項~第8項のいずれか1項に記載のレーザ装置において、第1光源は、半導体レーザ装置により構成される。
【0101】
第9項に記載のレーザ装置によれば、既存の半導体レーザ装置により第1レーザ光を対象物に照射できる。
【0102】
(第10項) 第1項~第9項のいずれか1項に記載のレーザ装置において、第2レーザ光源は、シングルモードファイバレーザ装置により構成される。
【0103】
第10項に記載のレーザ装置によれば、既存のシングルモードファイバレーザ装置により第2レーザ光を対象物に照射できる。
【0104】
(第11項) 第1項~第10項のいずれか1項に記載のレーザ装置において、第1レーザ光は、400nm以上550nm以下の波長のレーザ光であり、第2レーザ光は、900nm以上1100nm以下の波長のレーザ光であり、対象物は、銅、金、またはアルミニウムから構成される。
【0105】
第11項に記載のレーザ装置によれば、対象物が銅、金、またはアルミニウムといった第2レーザ光を反射させる高反射材であっても、第1レーザ光により該高反射材を予備加熱することから、該高反射材の第2レーザ光の吸収率を高めることができる。したがって、第1レーザ光により該高反射材を加工できる。
【0106】
(第12項) 他の態様に係るレーザ装置は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を出力する第1光源と、対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する第2光源とを備え、対象物における第1レーザ光の第1照射位置と対象物における第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係は変更可能である。
【0107】
第12項に記載のレーザ装置によれば、対象物における第1レーザ光の第1照射位置と対象物における第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係が変更可能である。したがって、ビームプロファイルを調整することができる。
【0108】
(第13項) 他の態様に係るレーザ装置は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を出力する第1光源と、対象物を本加熱するための第2レーザ光を各々が出力する複数の第2光源とを備え、対象物における第1レーザ光の第1照射位置と対象物における複数の第2レーザの各々の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の第2照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。
【0109】
第13項に記載のレーザ装置によれば、対象物における第1レーザ光の第1照射位置と対象物における複数の第2レーザの各々の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の第2照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。したがって、ビームプロファイルを調整することができる。
【0110】
(第14項) 他の態様に係るレーザ装置は、対象物を予備加熱するための第1レーザ光を各々が出力する複数の第1光源と、対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力する第2光源と、第1レーザ光を集光する第1光学系と、第2レーザ光を集光する第2光学系とを備え、第1光学系および第2光学系は、互いに光軸方向にずれて配置されている。
【0111】
第14項に記載のレーザ装置によれば、該レーザ装置の製造時などにおいてビームプロファイルを調整することができる。
【0112】
(第15項) 別の態様に係る制御方法は、対象物を加工するレーザ装置の制御方法である。制御方法は、対象物を予備加熱するための複数の第1レーザ光を出力することと、対象物を本加熱するための第2レーザ光を出力することと、対象物における複数の第1レーザ光の各々の第1照射位置と対象物における第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つを変更することとを備える。
【0113】
第15項に記載の制御方法によれば、対象物における複数の第1レーザ光の各々の第1照射位置と対象物における第2レーザ光の第2照射位置との相対的位置関係と、複数の第1照射位置の各々の位置とのうちの少なくとも1つは変更可能である。したがって、ビームプロファイルを変更することができる。
【0114】
(第16項) 第12項に記載の制御方法において、相対的位置関係を変更することは、第2照射位置を決定することと、決定された第2照射位置に基づいて第1照射位置を決定することとを含む。
【0115】
第16項に記載の制御方法によれば、第1レーザ光により予備加熱された位置に対して、本加熱するための第2レーザ光を照射できる。
【0116】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
10 レーザ装置、101,102,103,104,105,106 第1レーザ装置、151,152,153,154,155,156 アクチュエータ、201 第2レーザ装置、211 光学素子、300,300A 集光レンズ、302 レンズ本体、304 第1層、306 穴部、308 第2層、400,4001,4002 対象物、500 制御装置、502 入力装置、562 ROM、564 RAM。