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  • 特開-サルモネラ菌の分析方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144004
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】サルモネラ菌の分析方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20220926BHJP
   A23K 10/00 20160101ALI20220926BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALN20220926BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
A23K10/00
C12Q1/689 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021044831
(22)【出願日】2021-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】篠原 久実
(72)【発明者】
【氏名】中島 明子
【テーマコード(参考)】
2B150
4B063
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AA05
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QS24
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】
より迅速に(すなわち、従来よりも短時間で)サルモネラ菌の存在を検査できる検査方法を提供することを、課題とする。
【解決手段】
被験試料を培地に分散して、サルモネラ属菌の培養条件下でインキュベートする、インキュベート工程と、
前記インキュベート工程で得られた培養液を遠心して、集菌する遠心工程と、
前記遠心工程で得られた菌体から、ライゼート液を調製する、ライゼート液調製工程と、
前記ライゼート液から、核酸を抽出する、核酸抽出工程と、
サルモネラ属菌の核酸をターゲットとするプライマーセットを使用して、LAMP法で核酸増幅し、ATP検出法により検出する、核酸検出工程と、を含む、サルモネラ属菌の検出方法。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験試料を培地に分散して、サルモネラ属菌の培養条件下でインキュベートする、インキュベート工程と、
前記インキュベート工程で得られた培養液を遠心して、集菌する遠心工程と、
前記遠心工程で得られた菌体から、ライゼート液を調製する、ライゼート液調製工程と、
前記ライゼート液から、核酸を抽出する、核酸抽出工程と、
サルモネラ属菌の核酸をターゲットとするプライマーセットを使用して、LAMP法で核酸増幅し、ATP検出法により検出する、核酸検出工程と、を含む、サルモネラ属菌の検出方法。
【請求項2】
前記被験試料が、油粕である、請求項1に記載のサルモネラ属菌の検出方法。
【請求項3】
前記インキュベート工程の後に、フィルトレーションをして、被験試料に含まれる残渣を除去した培養液を、前記遠心工程に供する、請求項1又は2に記載のサルモネラ属菌の検出方法。
【請求項4】
前記インキュベート工程が、4~7時間以内で行われる、請求項1~3の何れか一項に記載の、サルモネラ属菌の検出方法。
【請求項5】
前記被験試料が、菜種粕であって、前記インキュベート工程の時間が6~7時間であるか、又は、前記被験試料が大豆粕であって、前記インキュベート工程の時間が5~6時間である、請求項4に記載のサルモネラ属菌の検出方法。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載のサルモネラ属菌の検出方法を含む、飼料の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サルモネラ菌の分析方法、特に、家畜等に与える飼料に含まれるサルモネラ菌を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サルモネラ菌は、食中毒の原因となる細菌である。家畜等に与える飼料がサルモネラ菌に汚染されていると、当該飼料を食した家畜由来の食肉もサルモネラ菌に汚染されることとなり、食中毒の原因となり得る。
【0003】
このような状況下で、サルモネラ菌の迅速な検査方法が、種々開発されてきた。例えば特許文献1には、クイックジーン(登録商標)システムとPCR法との組み合わせにより、試料中のサルモネラ菌を検査する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6451002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、検査に際し9~11時間もの長時間を要していた。これにより、緊急の検査依頼に対応することができなかった。
したがって本発明は、より迅速に(すなわち、従来よりも短時間で)サルモネラ菌の存在を検査できる検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1] 被験試料を培地に分散して、サルモネラ属菌の培養条件下でインキュベートする、インキュベート工程と、前記インキュベート工程で得られた培養液を遠心して、集菌する遠心工程と、前記遠心工程で得られた菌体から、ライゼート液を調製する、ライゼート液調製工程と、前記ライゼート液から、核酸を抽出する、核酸抽出工程と、サルモネラ属菌の核酸をターゲットとするプライマーセットを使用して、LAMP法で核酸増幅し、ATP検出法により検出する、核酸検出工程と、を含む、サルモネラ属菌の検出方法。
[2] 前記被験試料が、油粕である、[1]に記載のサルモネラ属菌の検出方法。
[3] 前記インキュベート工程の後に、フィルトレーションをして、被験試料に含まれる残渣を除去した培養液を、前記遠心工程に供する、[1]又は[2]に記載のサルモネラ属菌の検出方法。
[4] 前記インキュベート工程が、4~7時間以内で行われる、[1]~[3]の何れかに記載の、サルモネラ属菌の検出方法。
[5] 前記被験試料が、菜種粕であって、前記インキュベート工程の時間が6~7時間であるか、又は、前記被験試料が大豆粕であって、前記インキュベート工程の時間が5~6時間である、[4]に記載のサルモネラ属菌の検出方法。
[6] [1]~[5]の何れかに記載のサルモネラ属菌の検出方法を含む、飼料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、迅速にサルモネラ菌を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】試験例4において、従来法と本願発明に係る方法の検出感度を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るサルモネラ属菌の検出方法は、被験試料を培地に分散して、サルモネラ属菌の培養条件下でインキュベートする、インキュベート工程と、
前記インキュベート工程で得られた培養液を遠心して、集菌する遠心工程と、
前記遠心工程で得られた菌体から、ライゼート液を調製する、ライゼート液調製工程と、
前記ライゼート液から、核酸を抽出する、核酸抽出工程と、
サルモネラ属菌の核酸をターゲットとするプライマーセットを使用して、LAMP法で核酸増幅し、ATP検出法により検出する、核酸検出工程と、を含む。
本発明によれば、従来の方法と比較して迅速にサルモネラ属菌を検出することができる。
【0010】
本発明において「被験試料」は、サルモネラ属菌の存在又は非存在を検査したい試料であれば、特に制限されないが、飼料を被験試料とすることが好ましい。
本発明において「飼料」とは、家禽などが栄養目的で経口的に摂取するもの全てを意味する。具体的には養分含量の面から分類すると、粗飼料、濃厚飼料、無機物飼料、特殊飼料の全てを包含し、また公的規格の面から分類すると、配合飼料、混合飼料、単体飼料の全てを包含する。また、給餌方法の面から分類すると、直接給餌する飼料、他の飼料と混合して給餌する飼料、あるいは飲料水に添加し栄養分を補給するための飼料の全てを包含する。
本発明の好ましい形態では、被験試料が油粕である。ここで、本発明において「油粕」とは、農作物から油を搾り取った残渣であり、例えば菜種粕、綿実粕、茶実粕、大豆粕が含まれるが、これらに限定されない。本発明のより好ましい形態では、被験試料は、菜種粕及び/又は大豆粕である。
【0011】
本発明において「サルモネラ属菌」とは、グラム陰性通性嫌気性桿菌の腸内細菌科の一属であるサルモネラ属に属する細菌のことであり、主にヒトや動物の消化管に生息する腸内細菌の一種である。サルモネラ属に属する細菌の一部は、ヒトや動物に経口感染して食中毒を引き起こす。サルモネラ属菌による食中毒は人獣共通の感染症である。以下、「サルモネラ属菌」を単に「サルモネラ」又は「サルモネラ菌」と記載する場合もある。
【0012】
本発明においては、第1に、被験試料を培地に分散して、サルモネラ属菌の培養条件下でインキュベートする、インキュベート工程を行う。
インキュベート工程におけるサルモネラ属菌の培養条件は特に制限されず、本分野において公知の条件を、被験試料にあわせて適宜採用、調整することができる。
インキュベート温度は、好ましくは38℃以上、より好ましくは39℃以上、さらに好ましくは40℃以上、さらに好ましくは41℃以上である。また、インキュベート温度は、好ましくは44℃以下、より好ましくは43℃以下である。
インキュベート時間は、好ましくは3時間以上、より好ましくは4時間以上、さらに好ましくは5時間以上である。また、インキュベート時間は、好ましくは10時間以下、より好ましくは9時間以下、さらに好ましくは8時間以下、さらに好ましくは7時間以下である。
このような条件でインキュベートを行うことで、被験試料中にサルモネラ属菌が存在する場合には、これを培養することができる。
【0013】
被験試料が菜種粕である場合、インキュベート時間は、好ましくは4時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは6時間以上である。また、この場合、インキュベート時間は、好ましくは9時間以下、より好ましくは8時間以下、さらに好ましくは7時間以下である。
【0014】
被験試料が大豆粕である場合、インキュベート時間は、好ましくは4時間以上、より好ましくは5時間以上である。また、この場合、インキュベート時間は、好ましくは8時間以下、より好ましくは7時間以下、さらに好ましくは6時間以下である。
【0015】
インキュベート工程において使用する培地は、サルモネラ属菌を培養することができれば特に制限されず、本分野において公知の非選択的及び/又は軽度に選択的な一般的細菌用増殖培地を適宜採用することができる。例えば、MP培地、BPW、EEMブイヨン、BLB培地又はこれと同様なタイプの培地が含まれる。本培地は、潜在的に損傷を受けたサルモネラの迅速な回復と増殖を可能にする非選択培地及び/又は軽度に選択的な培地のいずれでもよく、さらに、十分なサルモネラの増殖を可能にし、その結果、サルモネラが最初のサンプルに存在している場合には、少なくとも1個の生存力のあるサルモネラを含むことが可能となるように調製できる培地が含まれる。
適切な非選択増殖培地の例としては、MP培地(MP Media、MP)、緩衝ペプトン水(Buffered Peptone Water、BPW)、EEMブイヨン(EEM Broth、EEM)、BTB加乳糖ブイヨン(Lactose Broth with BTB、BLB)及び当業者に既知の他の非選択的培地及び/又は軽度に選択的培地が挙げられる。以上の培地は、デュポン株式会社(MP培地)、関東化学株式会社(BPW)、メルク社(EEM培地、LB培地)から入手可能である。この中で特に本発明で使用される好ましい培地は、MP培地である。
【0016】
増菌用の培地成分としては、サルモネラの生育に適したものが選択される。例えば、肉エキス、ペプトン、酵母エキス等の栄養成分、乳糖、ブドウ糖等の糖類、及びサルモネラ以外の細菌の生育を抑制するための選択剤や抗生物質を含有する培地成分が用いられる。
糖類としては、被検体試料中に混在している可能性が高い大腸菌群が特に資化する乳糖を用いるのが、サルモネラに対する選択性を向上させる上で好ましい。選択剤としては、マラカイトグリーンや塩化マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、胆汁酸塩類等が好ましく、さらに抗生物質としては、プロテウス属に有効なノボビオシンの添加が有効である。ノボビオシン又はそのナトリウム塩は1~50μg/mlの濃度で添加できる。好ましくはノボビオシンの濃度は20~40μg/mlで、より好ましい濃度は約25μg/mlである。また、他の抗生物質(例えばバンコマイシン、ペニシリン、アンピシリン及びアミカシン)を適切な濃度で培地に添加することもできる。
【0017】
第2に、上記インキュベート工程で得られた培養液を遠心して集菌する、遠心工程を行う。
遠心工程を含むことによって、培養したサルモネラ属菌を効率よく集菌することができるため、従来と比較してインキュベート時間が短時間でも、後述する核酸検出工程でサルモネラ属菌を検出するために必要な核酸量を確保するために十分な量のサルモネラ属菌を得ることができる。したがって本発明によれば、迅速なサルモネラ属菌の検査ができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、インキュベート工程の後に、フィルトレーションをして、被験試料に含まれる残渣を除去した培養液を、遠心工程に供する。
フィルトレーションをすることにより、被験試料に由来する残渣が除かれるため、核酸抽出工程を効率的に行うことができる。
フィルトレーションの方法は、被験試料に由来する残渣を除くことができれば、特に限定されない。フィルトレーションの容易性の観点から、一般的に入手可能なフィルター付きストマッカー袋で被験試料を培養し、フィルター通過側の培養液(すなわち、残渣が除去された培養液)を使用することで、フィルトレーションをした培養液を得ることができる。
【0019】
培養液の遠心方法は特に制限されず、本分野において公知の方法で遠心し、集菌することができる。例えば、一般的な遠心機を用いて、14,000rpmで3分間遠心することで、集菌することができる。
本発明の好ましい形態では、上記遠心工程で集菌した菌体をPBS等の緩衝液に再懸濁し、これを遠心分離して上清を除去することで、菌体からの残留培養液の除去洗浄を行う。この残留培養液の除去洗浄は、複数回行ってもよい。
【0020】
第3に、上記遠心工程で得られた菌体から、ライゼート液を調製する。ライゼート液の調製は、本分野で公知の方法やキットを使用して、調製することができる。例えば、遠心工程の後に、上清を除去し、一般的に入手可能なキットに含まれる溶解バッファー(Lysis Buffer)と混合することで、ライゼート液を調製することができる。
【0021】
第4に、上記ライゼート液調製工程で調製したライゼート液から核酸を抽出する。菌体から核酸を抽出する方法は特に制限されず、一般的に入手可能な核酸抽出キットを使用して、抽出することができる。
【0022】
本発明において「核酸」とは、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを意味し、前記オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは修飾されたり、又は修飾された塩基を含むことができる。オリゴヌクレオチドは、2~60のヌクレオチドを含むヌクレオチドの単一鎖重合体である。ポリヌクレオチドは、2以上のヌクレオチドを含むヌクレオチドの重合体である。ポリヌクレオチドは、第2鎖が第1オリゴヌクレオチドの逆相補的配列のオリゴヌクレオチドとアニーリングされたオリゴヌクレオチドを含む二重鎖DNA、単一鎖RNA、二重鎖RNA又はRNA/DNAヘテロデュプレックスを含む単一鎖核酸重合体でありうる。核酸は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、rRNA、tRNA、切片化された核酸を含むが、これらに限定されるものではない。
【0023】
最後に、上記核酸抽出工程で抽出した核酸を、サルモネラ属菌の核酸をターゲットとするプライマーセットを使用して、LAMP法で核酸増幅し、ATP検出法により検出する、核酸検出工程を行う。
【0024】
LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法は、標的遺伝子の6か所の領域に対して4種類のプライマーを設計し、鎖置換反応を利用して一定温度で反応させることを特徴とする、核酸増幅方法である。
核酸増幅方法として、LAMP法を採用することで、PCRのように特別な機器を使用しなくとも、一定時間等温状態を維持することができれば、上記核酸抽出工程で抽出した核酸を増幅することができる。
なおLAMP法は、国際公開2001-34790号公報に記載の方法で行うことができる。また、一般的に入手可能な、LAMP法を実行するためのキットを使用することでも、実行することができる。
【0025】
ATP検出法は、遺伝子増幅された際に出現するピロリン酸塩及び3′ホスフォアデノシン5′ホスフォ硫酸をATPスルフリラーゼでの付加反応によりATPを産生させ,これをルシフェラーゼにより発光検出することにより,特定遺伝子の検出を行う方法である。
ATP検出法は発光検出のため、励起光源が不要となる。またATP検出法による検出は、蛍光検出よりも高感度で核酸を検出することができる。
ATP検出法は、一般的に入手可能な試薬を用いることで、実行することができる。
【0026】
本発明においては、LAMP法による核酸増幅と、ATP検出法による核酸検出とを、同一の機器を用いて実行することができる。
例えば、スリーエムヘルスケア株式会社より発売されている3MTM病原菌自動検出システム(以下、MDSともいう)を用いることで、LAMP法による核酸増幅の後、引き続いてATP検出法による核酸検出を行うことができる。
【0027】
LAMP法で用いるプライマーセットは、サルモネラ属菌の核酸配列に基づいて、適宜設計することができる。サルモネラ属菌の例示的な核酸配列は、例えば下記文献に記載されている。
LiuWQ et al.,“Salmonella paratyphi C:genetic divergence from Salmonella choleraesuis and pathogenic convergence with Salmonella typhi”,PLoS One,2009;4(2):e4510;Thomson NR et al.,“Comparative genome analysis of Salmonella enteritidis PT4 and Salmonella gallinarum 287/91 provides insights into evolutionary and host adaptation pathways,“Genome Res,2008 Oct;18(10):1624-37;EnchevaV et al.,“Proteome analysis of serovars typhimurium and Pullorum of Salmonella enterica subspeciesI”,BMC Microbiol,2005 Jul 18;5:42;McClell and M et al.,“Comparison of genome degradation in Paratyphi A and Typhi,human-restricted serovars of Salmonella enterica that cause typhoid”,Nat Genet,2004 Dec;36(12):1268-74;Chiu CH et al.,“Salmonella enterica serotype Choleraesuis:epidemiology,pathogenesis,clinical disease, and treatment,“Clin Microbiol Rev,2004 Apr;17(2):311-22;Deng W et al.,“Comparative genomics of Salmonella enterica serovar Typhi strains Ty2 and CT18,”J Bacteriol,2003 Apr;185(7):2330-7;Parkhil lJ et al.,“Complete genome sequence of amultiple drug resistant Salmonella enterica serovar Typhi C T18”,Nature,200 1Oct 25;413(6858):848-52;McClell and M et al.,“Complete genome sequence of Salmonella enterica serovar typhimurium LT2,“Nature,2001 Oct 25;413(6858):852-6.
【0028】
またプライマーセットは、本分野において公知の方法及び機器によって、合成することができる。
【0029】
以下、実施例を参照して、本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0030】
<試験例1>MDSで陽性となるサルモネラ属菌の菌数の確認
試験例1では、3MTM病原菌自動検出システム(MDS)を利用して核酸抽出工程及び核酸検出工程を行った場合に陽性となるサルモネラ属菌の菌数を確認した。
【0031】
試験例1は、以下のように行った。
(1)ハートインフュージョン寒天培地(HIA培地)で純粋培養したサルモネラ菌を、ハートインフュージョン液体培地(HIB培地)450μLに接種し、35℃で14時間程度培養し、菌数がおよそ10個の菌原液を得た。
(2)上記(1)で得た菌原液を、100μL当たりの菌数が10~10個となるように希釈し、菌数の異なる希釈済み菌液を得た。
(3)上記(2)で得た希釈済み菌液各20μLを、MDSを用いて、サルモネラ菌の核酸抽出及び核酸検出を行った。MDSは、製造元提供のプロトコルに基づいて操作した。
(4)上記(2)で得られた希釈済み菌液のうち、推定菌数が10個の菌液と10個の菌液をDHL寒天培地に100μL塗抹し、35℃で24時間培養して、定型集落数を確認した。
MDS検査の結果と、定型集落数から求めた検査菌数(cfu/g)を、下記表1に示す。表1中、「(+)」はMDS検査で陽性となったことを表し、「(-)」はMDS検査で陰性となったことを示す。また表1中「‐」は、菌数を求めていないことを示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示す通り、核酸抽出工程及び核酸検出工程を、MDSを用いて実行する場合、陽性となる菌数は70個以上であることが明らかになった。
【0034】
<試験例2>被験試料の培養時間の検討
試験例2では、培養時間ごとの菌数を測定し、核酸抽出工程及び核酸検出工程を、MDSを用いて実行する場合に陽性となる培養時間を確認した。
【0035】
試験例2は、以下のように行った。
(1)低たんぱく大豆粕、高たんぱく大豆粕、及び菜種粕を被験試料とした。各被験試料25gずつを、あらかじめ42℃に温めておいたMP培地225gに加え、さらに、100μL当たりの菌数が10個となるように希釈した菌液を100μL接種し、42℃で培養5~7時間培養した。培養液は、各被験試料について2本ずつ用意した(下記表2においては各被験試料に1~2のナンバリングをして表示している)。
(2)上記(1)で得られた培養液100μLを、攪拌後速やかにDHL寒天培地に塗抹し、35℃で24時間培養して、定型集落数を確認した。
培養時間ごとの定型集落数から求めた菌数(cfu/mL)を、下記表2に示す。表2中「‐」は、菌数を求めていないことを示す。
【0036】
【表2】
【0037】
試験例1と試験例2の結果を合わせると、大豆粕は5時間で、菜種粕は6時間で、MDSで陽性となる菌数(約70個以上)となることが明らかになった。
【0038】
<試験例3>サルモネラ属菌の検出
本試験例では、サルモネラ菌の検出を行った。
【0039】
試験例3は、以下のように行った。
(1)試験例2(1)と同様にして、培養液を得た。培養時間は、低たんぱく大豆粕及び高たんぱく大豆粕は5時間及び6時間とし、菜種粕は6時間及び7時間とした。
(2)上記(1)で得られた培養液をよく攪拌し、各被験試料について、培養液1.5mLをマイクロチューブに入れたものを、低タンパク質大豆粕及び高たんぱく大豆粕については3本、菜種粕については5本用意し、各マイクロチューブを遠心機で14,000rpm、3分間遠心した(下記表3においては各被験試料に1~3又は1~5のナンバリングをして表示している)。
(3)上清を捨て、PBSを1mL添加、混合し、再び遠心機で14,000rpm、3分間遠心した。
(4)上清を捨て、沈殿物をMDS試薬キットに含まれる溶解バッファー200μLで洗いながら、全量を上記キット中のライシスチューブに移し、100℃で15分間加熱した。加熱後、MDSのプロトコルに従い、核酸検出を行った。
(5)菌数確認のため、(1)で得られた培養液のうち100μLをDHL寒天培地に塗抹し、35℃で24時間培養した。
MDSの検出結果と菌数を、下記表3に示す。表3中、「(+)」はMDS検査で陽性となったことを表し、「(-)」はMDS検査で陰性となったことを示す。また表3中「‐」は、菌数を求めていないことを示す。
【0040】
【表3】
【0041】
表3に示す通り、大豆粕を被験試料とした場合、5時間以上培養することで、MDS検査で陽性となり、サルモネラ菌を検出できることが明らかになった。また菜種粕を被験試料とした場合、6時間以上培養することで、MDSで陽性となり、サルモネラ菌を検出できることが明らかになった。
【0042】
<試験例4>従来法との比較
本試験例では、遠心工程を含む本発明に係る検査方法と、従来用いられていたクイックジーン(登録商標)法を含む検査方法とを比較した。被験試料としては、低たんぱく大豆粕を使用した。
【0043】
試験例4は、以下の方法で行った。
(1)サルモネラ属菌を、HIB培地0.5mlに1白金耳量植菌し、35℃で一晩培養し、前培養液を得た。
(2)得られた前培養液を、10倍までリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した菌懸濁液を調製した。
(3)被験試料25gに対しMP培地(デュポン株式会社製)225mL添加したフィルター付きストマッカー袋に、上記(2)で調製した懸濁液を100μL添加(約1cfu(=1コロニー)分)し、42℃で5時間培養し、インキュベート工程を行った。
(4)5時間培養後、クイックジーン(登録商標)法及び遠心工程で菌液の処理を行った。
(4-1)クイックジーン(登録商標)法(従来法)
フィルター付きストマッカー袋のフィルター通過側より採取した培養液200μLを、1.5~2mlのマイクロチューブに入れ、QuickGene(倉敷紡績株式会社製)キットのマニュアルに従い菌の遺伝子を抽出した。
具体的には、まず、培養液200μLに対し、上記キットに含まれる組織溶解液(MDT)を180μL、前処理酵素(EDT)を20μL添加し、タッチミキサーでよく攪拌させた。
次いで、上記キットに含まれる溶解液(LDT)を180μL添加しよく攪拌後、70℃に調温したブロックヒーターで10分加温した。
加温後、十分に冷却し、エタノールを240μL添加し、よくピペッティングした。その全量をQuickGene装置にセットしたカラムに添加し、装置が停止するまで加圧した。
そして、カラムの位置を洗浄側から溶出側に移動させ、遺伝子溶出液(CDT)をカラムに200μL添加、約30秒加圧してカラムから溶出した溶液を、クイックジーン(登録商標)処理遺伝子抽出検体とした。クイックジーン(登録商標)処理遺伝子抽出検体は、同じものを3本調製した(下記表4においては各試料名を従来法1~3とナンバリングして表示している)。
(4-2)遠心工程(本発明)
フィルター付きストマッカー袋のフィルター通過側より採取した培養液500μLを、1.5~2mlのマイクロチューブに入れ、遠心機で14,000rpm、3分遠心した。上清を除去後、PBSを1ml添加しよく攪拌後、再び遠心機で14,000rpm、3分遠心した。上清を除去後、得られた沈殿物を遠心法処理検体とした。遠心法処理検体は、同じものを3本調製した(下記表4においては各試料名を遠心法1~3とナンバリングして表示している)。
(5)上記(4-1)で得たクイックジーン(登録商標)処理遺伝子抽出検体のそれぞれの20μLに対して、Molecular Detection Assay2-Salmonella(MDA2SAL:スリーエムジャパン株式会社製)付属の溶解バッファーを180μL添加して、ライゼート液Aを得た。
上記(4-2)で得た遠心法処理検体は、得られた沈殿物全量を溶解バッファー約550μLで回収し、ライゼート液Bを得た(ライゼート液調製工程)。
(6)ライゼート液A、B(各3本)をそれぞれ、100℃、15分加熱後、室温で10分間冷却し、その処理溶液から上清を20μL取り、リージェントチューブ(PCRチューブ:スリーエムジャパン株式会社製)に添加した。チューブの内容物を処理溶液上澄みで溶解後、MDS装置にセットし分析に供した。測定開始5分後より現れる発光強度から、ピークが得られた検体をサルモネラ属菌遺伝子陽性検体として判断した(核酸抽出工程及び核酸検出工程)。
検出結果を表4及び図1に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
表4及び図1に示す通り、従来法(クイックジーン(登録商標)法)でサルモネラ菌を検出した場合、調製した試料3本中1本(試料名「従来法3」)しかサルモネラ菌の発光量(RLU)のピークが観察されず、そのピークの高さも低く、ピークが観察されるまでに時間を要した。
これに対し、本発明でサルモネラ菌を検出した場合、調製した3本の試料(試料名「遠心法1」、「遠心法2」、「遠心法3」)すべてでサルモネラ菌の発光量(RLU)のピークが観察され、そのピークの高さも従来法と比較して高く、ピークが観察されるまでの時間も短かった。
以上より、本発明は、従来法(クイックジーン(登録商標)法)と比較して、短時間の培養でもサルモネラ菌を感度よく検出することができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、サルモネラ属菌の検出に用いることができる。

図1