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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014439
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】麺類の品質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220112BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109
A23L7/109 D
A23L7/109 F
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106582
(22)【出願日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2020116314
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 歩
(72)【発明者】
【氏名】城島 伸介
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐太
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA02
4B046LA05
4B046LA06
4B046LA09
4B046LB01
4B046LB07
4B046LB10
4B046LC01
4B046LC04
4B046LC12
4B046LC15
4B046LC20
4B046LG20
4B046LG23
4B046LG29
4B046LG30
4B046LG36
4B046LG43
4B046LG44
4B046LP01
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP20
4B046LP40
4B046LP51
4B046LP69
4B046LP71
(57)【要約】
【課題】麺類に良好な食感をはじめ様々な品質改良効果を付与することができる、麺類の品質改良剤、及び、麺類に良好な食感をはじめ様々な品質改良効果を付与することができる、麺類の品質改良方法を提供すること。
【解決手段】脂質蛋白質複合体を有効成分とする麺類の品質改良剤である。また、麺類に脂質蛋白質複合体を添加する工程を含む、麺類の品質改良方法である。品質の改良は、食感の改良、湯戻り性向上、茹で時の澱粉溶出防止、伸びの防止及びほぐれ性の向上のうちの1種以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質蛋白質複合体を有効成分とする、麺類の品質改良剤。
【請求項2】
前記脂質蛋白質複合体を構成する脂質におけるリン脂質の含有量が、30~100質量%である、請求項1に記載の麺類の品質改良剤。
【請求項3】
前記脂質蛋白質複合体を構成する脂質が、レシチンである、請求項1又は2に記載の麺類の品質改良剤。
【請求項4】
前記脂質蛋白質複合体を構成する蛋白質が、植物性蛋白質又は乳蛋白質である、請求項1~3のいずれか一項に記載の麺類の品質改良剤。
【請求項5】
前記植物性蛋白質が、小麦蛋白質、豆類蛋白質及び米蛋白質からなる群から選ばれる1種以上である、請求項4に記載の麺類の品質改良剤。
【請求項6】
前記豆類蛋白質が、大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、そら豆蛋白質、緑豆蛋白質及びひよこ豆蛋白質からなる群から選ばれる1種以上である、請求項5に記載の麺類の品質改良剤。
【請求項7】
前記乳蛋白質が、ミルクプロテインコンセントレートである、請求項4に記載の麺類の品質改良剤。
【請求項8】
前記脂質蛋白質複合体における蛋白質と脂質との質量比が、蛋白質100質量部に対し脂質が10~250質量部である、請求項1~7のいずれか1項に記載の麺類の品質改良剤。
【請求項9】
品質の改良が、食感の改良、湯戻り性向上、茹で時の澱粉溶出防止、伸びの防止及びほぐれ性の向上のうちの1種以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の麺類の品質改良剤。
【請求項10】
麺類に脂質蛋白質複合体を添加する工程を含む、麺類の品質改良方法。
【請求項11】
前記脂質蛋白質複合体を麺生地原料に直接添加して混合するか、配合水の全て若しくは一部に前記脂質蛋白質複合体を分散若しくは溶解させてこれを麺生地原料に添加するか、又は前記脂質蛋白質複合体の水溶液を麺帯や麺線の表面に塗布又は噴霧する、請求項10に記載の麺類の品質改良方法。
【請求項12】
前記脂質蛋白質複合体の添加量が、麺類に含まれる穀粉100質量部に対して0.0001~0.6質量部である、請求項11に記載の麺類の品質改良方法。
【請求項13】
麺類を茹でる際又は湯戻しする際の水又は湯に前記脂質蛋白質複合体を添加する、請求項10に記載の麺類の品質改良方法。
【請求項14】
前記水又は湯中の前記脂質蛋白質複合体の濃度が、0.001~0.5質量%である、請求項13に記載の麺類の品質改良方法。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか1項に記載の麺類の品質改良剤を含有する麺類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類に良好な食感をはじめ様々な品質改良効果を付与することができる、麺類の品質改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類は、穀類を主原料とする点でパンやごはんと並び、広く食されている。
麺類の種類としては、中華麺、うどん、そば、パスタ、麺皮などがある。また、製法によって分類することもあり、乾麺、生麺、即席麺、冷凍麺、ゆで麺、蒸し麺などが挙げられる。また、麺の太さによって太麺や細麺のみならず、そうめん、冷や麦などに分類されることもある。
これらの麺類は小麦粉やそば粉などの穀粉を主体とし、食塩、水、それにかんすいなどの単純な配合であるがゆえ、微妙な配合や製法の差でその美味しさや食感は大きく変わってくる。
【0003】
これら麺類に要望される食感としては、一部の例外を除くと、ソフトでしなやかである、弾力のある食感でありながらねちゃつくことなく歯切れが良好である、のど越し感やツルツル感ともいう滑らかな食感である、などの優れた食感が挙げられる。
また、麺類に要望される品質の改良点としては、湯戻り性向上、茹で時の澱粉溶出防止、伸びの防止、ほぐれ性の向上などが挙げられる。
【0004】
ここで、上記のような良好な食感の麺類を得るためには吸水量を増やすことが行われるが、そうすると、製造時に相互付着しやすいためほぐれ性が悪く、また、茹で時に澱粉が溶出しやすく、茹でた後に伸びやすい麺類となってしまう。
【0005】
そのため、澱粉、乳化剤、ゲル化剤などを主体とする麺類の品質改良剤が各種提案されている。
例えば、酵素を添加する方法(例えば特許文献1参照)や、増粘多糖類を添加する方法(例えば特許文献2参照)、さらには化工澱粉を使用する方法(例えば特許文献3参照)、乳化剤を添加する方法(例えば特許文献4参照)などの方法が提案されている。
しかし、これらの方法は軟らかくなりすぎて弾力性が感じられなくなったり、単に硬い食感になったりしてしまうなど、食感が悪化しやすいという問題がある。
このように、食感と品質をバランスよく改良可能な麺類の品質改良剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-166430号公報
【特許文献2】特開2008-136361号公報
【特許文献3】特開平03-143361号公報
【特許文献4】特開平09-070272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、麺類に良好な食感をはじめ様々な品質改良効果を付与することができる、麺類の品質改良剤を提供することにある。また本発明の別の目的は、麺類に良好な食感をはじめ様々な品質改良効果を付与することができる、麺類の品質改良方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究した結果、脂質と蛋白質の混合物に特定の処理を行ったものを使用することにより上記課題を解決可能なことを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、脂質蛋白質複合体を有効成分とする麺類の品質改良剤を提供するものである。
また本発明は、麺類の製造時に脂質蛋白質複合体を添加する工程を含むことを特徴とする麺類の品質改良方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の麺類の品質改良剤により、麺類に良好な食感をはじめ様々な品質改良効果をバランスよく付与することができる。
また本発明の麺類の品質改良方法によれば、麺類の良好な食感をはじめ様々な品質をバランスよく改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の麺類の品質改良剤について、好ましい実施形態に基づき詳述する。
まず、本発明で使用する、脂質蛋白質複合体について説明する。
【0011】
本発明の麺類の品質改良剤は、有効成分として脂質蛋白質複合体を含有する。更に、本発明の麺類の品質改良剤は、必要に応じ、後述するその他の成分を含有していてもよい。
本発明において脂質蛋白質複合体とは、蛋白質と脂質とを含有し、且つ蛋白質と脂質との間に働く強い親和力により形成される高次構造を持つものを意味する。単に蛋白質と脂質とを含有するものは本発明の脂質蛋白質複合体には包含されない。
【0012】
まず、本発明の麺類の品質改良剤に含まれる脂質蛋白質複合体(以下、単に「複合体」ということがある。)の構成成分である脂質及び蛋白質について述べる。
【0013】
上記複合体を構成する脂質としては、特に限定されず、任意の脂質を使用することが可能である。脂質の具体例としては、例えば、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。本発明の効果が一層顕著になることから、脂質として、モノグリセリド、リン脂質、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種又は2種以上を使用することが好ましく、リン脂質を使用することが風味の面からも機能の面からも特に好ましい。
【0014】
すなわち、本発明に用いる脂質蛋白質複合体を構成する脂質は、一部又は全部がリン脂質であることが特に好ましい。上記脂質におけるリン脂質の含有量は、リン脂質とリン脂質以外の脂質との質量比率が、前者:後者で、30:70~100:0の範囲が好ましく、60:40~100:0の範囲がより好ましく、80:20~100:0の範囲が最も好ましい。換言すれば、脂質蛋白質複合体を構成する脂質におけるリン脂質の含有量は、30~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、80~100質量%であることが最も好ましい。本発明においては、目的に応じて、上記脂質の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
なお、リン脂質をレシチンの形で使用する場合は、リン脂質と、レシチンに含有されるその他の脂質との質量比率が、前者:後者で、30:70~100:0の範囲にある任意のレシチンを使用することができ、好ましくは60:40~100:0のレシチンを、より好ましくは80:20~100:0のレシチンを使用するとよい。すなわち、本発明においては、脂質蛋白質複合体を構成する脂質としてレシチンを用いることが好ましく、レシチンのリン脂質の含有量は、30~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましく、80~100質量%であることが最も好ましい。
【0016】
本発明においては、上記リン脂質の由来は特に限定されるものではなく、大豆由来リン脂質、ヒマワリ由来リン脂質、紅花由来リン脂質、菜種由来リン脂質等の植物由来の植物性リン脂質、卵黄由来リン脂質、魚卵由来リン脂質、乳由来リン脂質等の動物由来の動物性リン脂質、及び微生物由来の微生物性リン脂質のいずれも使用することができる。また、これらの抽出物、精製物あるいは酵素処理品等を使用することも可能である。具体的なリン脂質としてはホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン等が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明では、乳アレルゲンや卵アレルゲンを含まない麺類とすることが可能な点、菜食主義者(ベジタリアン)や完全菜食主義者(ビーガン)であっても食することができる麺類とすることが可能な点で、大豆由来、ヒマワリ由来、紅花由来、菜種由来などの食物由来の植物性リン脂質又は微生物由来の微生物性リン脂質を使用することが好ましく、少量の添加で麺類に対して高い品質改良効果が得られる品質改良剤とすることができる点、更には脂質との複合体生成能が高い点から、大豆由来リン脂質及び/又はヒマワリ由来リン脂質を使用することが特に好ましい。大豆由来リン脂質は、大豆レシチンの形で、ヒマワリ由来リン脂質はヒマワリレシチンの形で用いることができる。
【0018】
上記複合体を構成する蛋白質としては、特に限定されず、任意の蛋白質を使用することが可能である。蛋白質の具体例としては、例えば、動物性蛋白質、微生物性蛋白質及び植物性蛋白質等が挙げられる。動物性蛋白質としては、例えば、ホエイ蛋白質及びカゼイン蛋白質等の乳蛋白質;並びに低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン及びオボムコイド等の卵蛋白質等が挙げられる。植物性蛋白質としては、グリアジン、グルテニン、プロラミン及びグルテリン等の小麦蛋白質;大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、そら豆蛋白質、緑豆蛋白質、ひよこ豆蛋白質及びレンズ豆蛋白質等の豆類蛋白質;並びに米蛋白質等のその他穀類蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明では、乳アレルゲンや卵アレルゲンを含まない麺類とすることが可能な点、菜食主義者(ベジタリアン)や完全菜食主義者(ビーガン)であっても食することができる麺類とすることが可能な点で、蛋白質は動物性蛋白質を含有しないことが好ましい。すなわち本発明では、蛋白質は微生物性蛋白質及び/又は植物性蛋白質であることが好ましく、植物性蛋白質であることがより好ましい。植物性蛋白質としては、小麦蛋白質、豆類蛋白質及び米蛋白質からなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、豆類蛋白質がより好ましい。豆類蛋白質としては、なかでも少量の添加で高い品質改良効果が得られる品質改良剤とすることができる点、脂質との複合体生成能が高い点、及び、水溶性が高いことから後述する製造方法をとることが容易であること点で、大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、そら豆蛋白質、緑豆蛋白質、及びひよこ豆蛋白質からなる群から選択される1種以上を使用することが更に好ましい。
【0020】
また本発明では、動物性蛋白質を使用する場合、風味が良好である点で乳蛋白質であることが好ましい。乳蛋白質としては、少量の添加で高い品質改良効果が得られる品質改良剤とすることができる点、脂質との複合体生成能が高い点、及び、水溶性が高いことから後述する製造方法をとることが容易である点で、ミルクプロテインコンセントレートを使用することが好ましい。
【0021】
本発明に含まれる複合体における、蛋白質と脂質との質量比は、蛋白質100質量部に対し脂質が10~250質量部であることが好ましく、20~130質量部であることがより好ましく、80~130質量部であることが更に好ましく、100~130質量部であることが最も好ましい。蛋白質100質量部に対する脂質の質量比を上述の範囲とすることで、麺類の品質改良効果が一層高まり、且つ麺類の風味が損なわれることがないため好ましい。また、複合体を製造する際に蛋白質と脂質とを含有する水溶液の粘度が高くならないので、該水溶液がゲル状になりにくくなり、その結果複合体の製造が容易となるため好ましい。
【0022】
上記脂質蛋白質複合体は、例えば、蛋白質や蛋白質を含有する食品素材、及び脂質や脂質を含有する食品素材を水に添加し、更に必要により後述するその他の成分を水に添加して蛋白質と脂質とを含有する水溶液を調製し、調製した水溶液を均質化することによって得ることができる。この場合、得られる水溶液は脂質蛋白質複合体を含有するものとなる。この際、蛋白質及び/又は蛋白質を含有する食品素材の使用量、並びに脂質及び/又は脂質を含有する食品素材の使用量を、得られる脂質蛋白質複合体における脂質と蛋白質との比が上述の範囲となるように適切に設定することが好ましい。なお、上記蛋白質として、蛋白質を含有する食品素材を使用した場合、また、脂質として、脂質を含有する食品素材を使用した場合、複合体における脂質の含有量及び蛋白質の含有量は、それぞれの食品素材に含まれる純蛋白質含有量及び純脂質含有量を用いて算出するものとする。
【0023】
上記の蛋白質と脂質とを含有する水溶液中における蛋白質の含有量は、好ましくは1~25質量%、より好ましくは5~25質量%、更に好ましくは5~20質量%であり、脂質の含有量は、好ましくは1~25質量%、より好ましくは5~25質量%、更に好ましくは5~20質量%である。上記の蛋白質と脂質とを含有する水溶液中の蛋白質及び脂質の含有量を上記の範囲とすることで、混合・撹拌によりダマを解消・分散させることができ、且つ十分に均質化を行うことができ、効率よく脂質蛋白質複合体を製造できるため好ましい。
【0024】
上述した通り、脂質蛋白質複合体の製造時に、水溶液中に蛋白質及び脂質以外のその他の成分を含有させることができるが、蛋白質及び脂質を高効率で複合化させる観点から、その他の成分を含有させないことが好ましい。
【0025】
脂質蛋白質複合体を製造する際、蛋白質と脂質とを含有する水溶液を均質化する前又は均質化した後に加熱殺菌することが好ましい。均質化の後に加熱殺菌する場合は、加熱殺菌の後に再度均質化することができる。
【0026】
上記均質化に用いる装置としては、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーのような高速せん断乳化釜、コミットロールやマスコロイダーのような高速せん断ミキサー、スタティックミキサー、インラインミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ディスパーミル等が挙げられる。この均質化処理は、2段式ホモジナイザーを用いて、例えば、1段目3~100MPa、2段目0~5MPaの均質化圧力にて行えばよい。
【0027】
上記加熱殺菌の方法としては、インジェクション式、インフュージョン式、マイクロ波等の直接加熱方式、及び、バッチ式、プレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式があり、UHT、HTST、LTLT等の60~160℃の加熱処理を行えばよい。
【0028】
均質化・加熱殺菌を行った後、複合体を含有する水溶液を冷却することが好ましい。冷却方法としては、例えば、チューブラー式、掻取式等の熱交換機によって冷却する方法が挙げられる。また、別の方法として、適当な容器に充填した後に、水浴、氷浴、冷蔵庫、冷凍庫等で冷却する方法も挙げられる。
また、上記操作の後、必要に応じて濃縮操作を行うことができる。
また、本発明においては、良好な風味の麺類を得るという観点から、複合化工程又は濃縮の工程は、加熱を伴う乾燥工程等を含まないことが好ましい。
【0029】
本発明の麺類の品質改良剤に含まれる脂質蛋白質複合体は、粉体、顆粒、錠剤等の固形状や、液状、ペースト等の流動状のいずれの形態であってもよいが、他の成分との混合性が高い点、そのまま品質改良剤とした際の麺類への混合性が良好である点で、粉体、液状及びペースト状のいずれかの形態であることが好ましい。
粉体とする場合は、凍結乾燥して粉末化してもよく、また、スプレードライして粉末化してもよい。
また液剤、ペースト等の流動状の形態とする場合は、上記複合体を含む水溶液をそのまま用いることができる。
【0030】
本発明の麺類の品質改良剤は、複合体を含有する水溶液を乾燥して粉末化したものや、複合体を含有する水溶液をそのまま使用することもできる。また複合体と下記のその他の成分とを混合して、常法により粉体、顆粒、錠剤等の固形状や、液剤、ペースト等の流動状の形態に製剤化することもできる。また、複合体を油脂に分散させた形態とすることもできる。
【0031】
本発明の麺類の品質改良剤が粉体、顆粒、錠剤等の固形状の形態である場合、本発明の麺類の品質改良剤における上記脂質蛋白質複合体の含有量は、少量の添加で効果を得るという目的のため、脂質蛋白質複合体の固形分として5~100質量%であることが好ましく、より好ましくは10~100質量%であり、更に好ましくは50~100質量%であり、更により好ましくは70~100質量%であり、最も好ましくは80~100質量%である。
【0032】
また、本発明の麺類の品質改良剤が液剤、ペースト等の流動状の形態である場合、本発明の麺類の品質改良剤における上記脂質蛋白質複合体の含有量は、少量の添加で効果を得るという目的、粘度が高すぎず使用しやすいこと、及び保存中の沈殿の生成を避けるため、脂質蛋白質複合体の固形分として1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは5~20質量%である。
【0033】
本発明の麺類の品質改良剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じ、上記脂質蛋白質複合体以外のその他の成分を含有することができる。該その他の成分としては、水、アルコール類、油脂、ゲル化剤や安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類・甘味料、糖アルコール、澱粉類、乳や乳製品、卵製品、穀類、無機塩、有機酸塩、酵素、ジグリセライド、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストン等のデキストリン類、その他各種食品素材、微粒二酸化ケイ素・炭酸マグネシウム・リン酸二ナトリウム・酸化マグネシウム等の固結防止剤、ビタミン類、光沢剤、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、有機酸、重炭安等のアルカリ剤、強化剤等が挙げられる。
【0034】
上記油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油、バター、バターオイル等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明では、上記の油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
上記ゲル化剤や安定剤としては、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、LMペクチン、HMペクチン、海藻抽出物、海藻エキス、寒天、グルコマンナン、ローカストビーンガム、グアーガム、ジェランガム、タラガントガム、キサンタンガム、カラギーナン、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、トラガントガム、アラビアガム、カシアガムが挙げられる。本発明では、上記ゲル化剤や安定剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、卵黄油、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化剤が挙げられる。本発明では、上記の乳化剤の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
本発明の麺類の品質改良剤の形態としては、特に制限されず、上記の、固形、顆粒状、粉末状、ペースト状、流動状、液状のいずれの形態であってもよいが、麺類生地や湯戻し時の混合しやすさの点で、粉末状又は液状であることが好ましく、さらには、即席麺の粉末スープに混合するなど、添加方法のバリエーションを多くとれることから粉末状であることが特に好ましい。
【0038】
また、本発明の麺類の品質改良剤が油分と水分を含有する場合、その乳化型は水中油型であっても油中水型であってもよく、さらには2重乳化型であってもよいが、本発明の有効成分である脂質蛋白質複合体が水溶性であるため、効果が素早く得られ、且つ、高い麺類の改良効果を得ることが可能である点で水中油型の乳化形態であることが好ましい。
【0039】
本発明の麺類の品質改良剤は、さまざまな麺類に広く適用でき、例えば、うどん、そうめん、冷麦、中華麺、そば、パスタ、沖縄そば、麺皮など一般的な麺類食品を挙げることができる。また、麺類の種類としては、製法によって分類することもでき、乾麺、生麺、即席麺、冷凍麺、ゆで麺、蒸し麺などが挙げられる。また、麺の太さによって太麺や細麺などに分類されることもある。
【0040】
本発明の麺類の品質改良剤による品質の改良としては、食感の改良、湯戻り性向上、湯戻し時の澱粉溶出防止、伸びの防止、ほぐれ性の向上などが挙げられる。
【0041】
例えば、食感の改良としては、麺類の種類や形態にもよるが、ソフトでしなやかである、弾力のある食感でありながらねちゃつくことなく歯切れが良好である、のど越し感やツルツル感ともいう滑らかな食感である、などが挙げられる。
【0042】
また、湯戻り性向上としては、即席麺や乾麺などの保存性の高い麺類において、短時間の煮沸、あるいは熱湯を注ぐなどの方法で喫食可能な状態に復元する際、できるだけ短時間で、生麺のような柔らかでしなやかな食感に復元できることが挙げられる。
【0043】
また、ほぐれ性の向上としては、製造時に麺線化した際の、あるいは麺皮化した際の相互付着の防止や、茹で前や茹で後に麺を保管した際の相互付着の防止が挙げられる。
【0044】
本発明でいう麺類とは、穀粉類と水を主原料とし、これを混捏して得られた麺類生地を圧延あるいは引き伸ばして麺帯生地とし、これをさらに引き伸ばし、切り出し、打ち抜くなどの方法により細長くあるいは薄板状に成型した食品、及びその加工品、並びにそれらの調理品である。
【0045】
上記穀粉類としては、小麦粉、そば粉、米粉、豆粉、各種澱粉や化工澱粉など、通常の麺類食品に使用可能な穀粉類を使用することができるが、本発明においては、小麦粉を使用することが好ましい。該小麦粉としては、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム粉などが挙げられる。
【0046】
上記麺類生地には、上記の各成分以外に、通常の麺類の製造に用いられる食塩、かんすい、グルテン、甘味剤、着色料、調味料、苦味料、強化剤、界面活性剤、可溶化剤、増粘剤、糊料、賦形剤、防腐剤、香料、抗菌剤、殺菌剤、塩類、溶媒、キレート剤、中和剤、酸味料、pH調整剤、保存剤、緩衝剤、油脂、油脂加工品、卵類、乳や乳製品を添加することができる。
【0047】
また、麺類の形態としては、生麺、半生麺、乾麺、揚げ麺、ゆで麺、冷凍麺、即席麺などの形態があるが、本発明の麺類の品質改良剤の効果として一番高い効果が湯戻り性の改良であることから、乾麺、半乾麺、即席麺などの乾燥している麺類に対しての利用が好ましく、中でも、湯戻り性の改良効果が高いことから即席麺に使用することが好ましい。
【0048】
なお、即席麺には、麺を油揚げした油揚げ即席麺、熱風乾燥や真空凍結乾燥等により麺を乾燥させたノンフライ即席麺があるが、本発明はそのどちらであっても使用することができる。本発明の麺類の品質改良剤をノンフライ即席麺に使用した場合は、湯戻り性の向上効果に加え、ノンフライ即席麺ならではの麺の柔らかさやのど越しと歯切れを、生麺の食感により近づけることが可能となる。
【0049】
なお、本発明では、上記麺類が太麺であることも好ましい。なお、本発明において太麺とは、復元前の乾燥した状態で、麺線幅2.0mm以上、好ましくは2.0~5.0mm且つ麺厚1.0mm超、好ましくは1.05~2.0mm未満のものを指す。
【0050】
本発明の麺類の品質改良剤は、太麺であっても湯戻り性が良好であるという効果が得られることに加え、もちもちした食感を付与することができる。
【0051】
麺類への本発明の麺類の品質改良剤の添加方法としては、最終的に麺類中に本発明の有効成分である、脂質蛋白質複合体が添加されていれば特に限定されず、各種添加方法をとることができる。例えば、小麦粉等の麺生地原料に直接添加して混合することも、また配合水の全て又は一部に分散または溶解させてこれを麺生地原料に添加することもできる。また、水溶液状態で、麺帯や麺線の表面に塗布するか、噴霧して使用することもできる。さらには、麺類を茹でる際や湯戻しする際の水や湯に添加することも可能であり、とくに即席麺では粉末スープに混合する方法も可能である。
【0052】
なかでも本発明の麺類の品質改良剤の使用は、ごく少量の使用量で本発明の高い効果が得られる点で、小麦粉等の麺生地原料に直接添加して混合するか、あるいは配合水の全て又は一部に分散又は溶解させてこれを麺生地原料に添加する方法によることが好ましい。
【0053】
上記麺類における本発明の麺類の品質改良剤の添加量は、特に限定されず、麺類の種類や形態、形状、添加方法等に応じて適宜決定されるが、麺生地原料に直接添加する場合は、麺類に含まれる穀粉100質量部に対し、麺類の品質改良剤に含まれる脂質蛋白質複合体の固形分として好ましくは0.0001~0.6質量部、より好ましくは0.001~0.3質量部である。脂質蛋白質複合体の含有量を上述の範囲とすることで、本発明の効果が確実に奏され、且つ麺類が、異味が感じられないものとなる。
【0054】
なお、水溶液状態で、麺帯や麺線の表面に塗布するか、噴霧して使用する場合は、水溶液中の濃度は脂質蛋白質複合体の固形分濃度として好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.05~0.7質量%である。この場合、麺類の固形分100質量部に対し、脂質蛋白質複合体の固形分として0.0001~0.6質量部、より好ましくは0.001~0.3質量部となるよう塗布又は噴霧する。
【0055】
また、麺類を茹でる際や湯戻しする際の水や湯に添加する場合は、水溶液中の濃度は脂質蛋白質複合体の固形分濃度として好ましくは0.001~0.5質量%、より好ましくは0.002~0.3質量%である。
【0056】
次に、本発明の麺類の品質改良方法について述べる。
本発明の麺類の品質改良方法は、麺類の製造時に脂質蛋白質複合体を添加する工程を含むことを特徴とするものである。
【0057】
麺類の製造方法や脂質蛋白質複合体の添加方法や添加量、さらには改良される品質については、上述のとおりである。
【0058】
最後に、本発明の麺類について述べる。
本発明の麺類は、上記本発明の麺類の品質改良剤を含有する麺類であり、良好な食感をはじめ様々な品質改良効果がバランスよく付与されている。麺類の製造方法や上記本発明の麺類の品質改良剤の添加方法や添加量については、上述の通りである。
【0059】
本発明の麺類は、特に即席麺の場合、短時間の茹で時間で、生麺のような柔らかでしなやかな食感となり、湯戻り性が優れているという特徴を有する。また、麺類が太麺であると、上記効果が得られることに加え、もちもち感が強化されるという効果も有する。
【実施例0060】
本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0061】
<麺類の品質改良剤の製造>
〔製造例1〕
大豆蛋白質(「ProFam(登録商標)974」:ADM社製)(蛋白質含有量85.0質量%、脂質含有量3.0質量%、水分含量6質量%)6質量部を、60℃に加温した水88質量部に加え、スリーワンモーターを使用して撹拌して十分に分散させた。ここに粉末状大豆レシチン(脂質含有量99質量%、リン脂質含有量90質量%)を6質量部添加し、よく撹拌して十分に分散・乳化させ、予備乳化液を得た。この予備乳化液をバルブ式ホモジナイザー(アルファラバル社製:ホモジナイザー)を用いて、30MPaの圧力で均質化した後、VTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機)で139℃・4秒間殺菌した後、5℃まで冷却した。これを-0.5℃/hの徐冷により、50時間かけて冷却し、これを凍結乾燥し、水分含量が3質量%である粉末状の脂質蛋白質複合体を含む品質改良剤Aを得た。
得られた品質改良剤A中の複合体の含有量、品質改良剤Aの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0062】
〔製造例2〕
大豆蛋白質に代えてエンドウ豆蛋白質(「NUTRALYS(登録商標)S85F」:ロケット社製)(蛋白質含有量85.0質量%、脂質含有量7.0質量%、水分含量4質量%)を使用した以外は製造例1と同様の配合及び製法で、水分含量が3質量%である粉末状の脂質蛋白質複合体を含む品質改良剤Bを得た。
得られた品質改良剤B中の複合体の含有量、品質改良剤Bの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0063】
〔製造例3〕
大豆蛋白質に代えて、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)(「Promilk85」:イングレディア社製)(蛋白質含有量81.0質量%、脂質含有量1.0質量%、水分含量5質量%)を使用した以外は製造例1と同様の配合及び製法で、水分含量が3質量%である粉末状の脂質蛋白質複合体を含む品質改良剤Cを得た。
得られた品質改良剤C中の複合体の含有量、品質改良剤Cの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0064】
〔製造例4〕
粉末状大豆レシチンを添加せず、且つ水88質量部を94質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法で、水分含量が3質量%である粉末状の品質改良剤Dを得た。
得られた品質改良剤D中の複合体の含有量、品質改良剤Dの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0065】
〔製造例5〕
製造例1における大豆蛋白質6質量部を11質量部に変更し、粉末状大豆レシチン6質量部を1質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法で、水分含量が3質量%である粉末状の脂質蛋白質複合体を含む品質改良剤Eを得た。
得られた品質改良剤E中の複合体の含有量、品質改良剤Eの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0066】
〔製造例6〕
製造例1における大豆蛋白質6質量部を9.6質量部に変更し、粉末状大豆レシチン6質量部を2.4質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法で、水分含量が3質量%である粉末状の脂質蛋白質複合体を含む品質改良剤Fを得た。
得られた品質改良剤F中の複合体の含有量、品質改良剤Fの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0067】
〔製造例7〕
製造例1における大豆蛋白質6質量部を6.5質量部に変更し、粉末状大豆レシチン6質量部を5.5質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法で、水分含量が3質量%である粉末状の本発明の麺類の品質改良剤Gを得た。
得られた品質改良剤G中の複合体の含有量、品質改良剤Gの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0068】
〔製造例8〕
製造例1における大豆蛋白質6質量部を4質量部に変更し、粉末状大豆レシチン6質量部を8質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法で、水分含量が3質量%である粉末状の脂質蛋白質複合体を含む品質改良剤Hを得た。
得られた品質改良剤H中の複合体の含有量、品質改良剤Hの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0069】
〔製造例9〕
粉末状大豆レシチンに代えて粉末状ヒマワリレシチン(脂質含有量100質量%、リン脂質含有量90質量%)を使用した以外は製造例1と同様の配合及び製法で、水分含量が3質量%である粉末状の脂質蛋白質複合体を含む品質改良剤Iを得た。
得られた品質改良剤I中の複合体の含有量、品質改良剤Iの固形分中における複合体の含有量、及び、複合体における蛋白質と脂質との質量比について〔表1〕に記載した。
【0070】
【表1】
【0071】
<中華麺の製造>
〔実施例1〕
中華麺用小麦粉(特ナンバーワン:日清製粉製)100質量部、粉末状活性グルテン(エマソフトM1000:理研ビタミン製)1質量部、乾燥卵白1質量部を混合し、小麦粉組成物を得た。一方、粉末かん水(赤:オリエンタル酵母製)1質量部、食塩1質量部、及び、麺類の品質改良剤A0.075質量部を水35質量部に添加、分散、溶解し、水溶液を得た。ミキサーを使用し、小麦粉組成物及び水溶液を十分に混合し麺類生地を得た。1晩リタード後、製めん機を用いて、圧延、切断、麺線化して中華麺Aを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Aの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0072】
〔実施例2〕
麺類の品質改良剤Aに代えて、麺類の品質改良剤Bを使用した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Bを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Bの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0073】
〔実施例3〕
麺類の品質改良剤Aに代えて、麺類の品質改良剤Cを使用した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Cを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Cの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0074】
〔比較例1〕
麺類の品質改良剤Aに代えて、麺類の品質改良剤Dを使用した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Dを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Dの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0075】
〔実施例4〕
麺類の品質改良剤Aに代えて、麺類の品質改良剤Eを使用した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Eを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Eの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0076】
〔実施例5〕
麺類の品質改良剤Aに代えて、麺類の品質改良剤Fを使用した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Fを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Fの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
〔実施例6〕
麺類の品質改良剤Aに代えて、麺類の品質改良剤Gを使用した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Gを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Gの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0077】
〔実施例7〕
麺類の品質改良剤Aに代えて、麺類の品質改良剤Hを使用した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Hを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Hの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0078】
〔実施例8〕
麺類の品質改良剤Aに代えて、麺類の品質改良剤Iを使用した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Iを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Iの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0079】
〔実施例9〕
麺類の品質改良剤Aの添加量を0.075質量部から0.01質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Jを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Jの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0080】
〔実施例10〕
麺類の品質改良剤Aの添加量を0.075質量部から0.5質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Kを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Kの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0081】
〔比較例2〕
麺類の品質改良剤Aを無添加に変更した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Lを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Lの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0082】
〔比較例3〕
麺類の品質改良剤Aを無添加とし、大豆蛋白質0.0375質量部及び粉末状大豆レシチン0.0375質量部を添加した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Mを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Mの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0083】
〔比較例4〕
麺類の品質改良剤Aを無添加とし、大豆蛋白質0.075質量部を添加した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Nを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Nの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0084】
〔比較例5〕
麺類の品質改良剤Aを無添加とし、粉末状大豆レシチン0.075質量部を添加した以外は、実施例1の配合及び製法にしたがって中華麺Oを得た。麺線化した時点のほぐれ性、100℃の湯で1分20秒間茹でた、茹で後の中華麺Oの歯切れ、喉越し、弾力及び風味について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表2〕に示した。
【0085】
評価基準:(ほぐれ性・歯切れ・喉越し・弾力・風味)
専門パネラー10名による評価
◎:8割以上が良好と評価
○:5割以上8割未満が良好と評価
△:2割以上5割未満が良好と評価
×:2割未満が良好と評価
【表2】
【0086】
<即席中華麺の製造>
〔実施例11〕
中華麺用小麦粉(特ナンバーワン:日清製粉製)100質量部、粉末状活性グルテン(エマソフトM1000:理研ビタミン製)1質量部、乾燥卵白1質量部を混合し、小麦粉組成物を得た。一方、粉末かん水(赤:オリエンタル酵母製)1質量部、及び、食塩1質量部を水35質量部に添加、分散、溶解し、水溶液を得た。ミキサーを使用し、小麦粉組成物及び水溶液を十分に混合し麺類生地を得た。1晩リタード後、製めん機を用いて、圧延、切断、麺線化した後、100℃の湯で1分20秒間茹でたのち、これを140℃で1分フライし即席中華麺Aを得た。袋詰めして常温2週間保管後、湯戻し試験に供した。
湯戻し試験は、上記即席中華麺A50gを容器に入れ、ここに、麺類の品質改良剤A0.017gを溶解した熱湯300mlを注ぎ入れ蓋をして4分湯戻しを行い、湯戻し即席中華麺Aを得た。得られた湯戻し即席中華麺Aの湯戻り性及び麺伸びについて下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。また、湯戻し後のほぐれ性について、下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。
【0087】
〔実施例12〕
麺類の品質改良剤Aの添加量を0.017gから0.033gに変更した以外は、実施例11の配合及び製法により、湯戻し即席中華麺Bを得た。得られた湯戻し即席中華麺Bの湯戻り性及び麺伸びについて下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。また、湯戻し後のほぐれ性について、下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。
【0088】
〔実施例13〕
麺類の品質改良剤Aの添加量を0.017gから0.066gに変更した以外は、実施例11の配合及び製法により、湯戻し即席中華麺Cを得た。得られた湯戻し即席中華麺Cの湯戻り性及び麺伸びについて下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。また、湯戻し後のほぐれ性について、下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。
【0089】
〔実施例14〕
中華麺用小麦粉(特ナンバーワン:日清製粉製)100質量部、粉末状活性グルテン(エマソフトM1000:理研ビタミン製)1質量部、乾燥卵白1質量部を混合し、小麦粉組成物を得た。一方、粉末かん水(赤:オリエンタル酵母製)1質量部、及び、食塩1質量部、麺類の品質改良剤A0.075質量部を水35質量部に添加、分散、溶解し、水溶液を得た。ミキサーを使用し、小麦粉組成物及び水溶液を十分に混合し麺類生地を得た。1晩リタード後、製めん機を用いて、圧延、切断、麺線化した後、100℃の湯で1分20秒間茹でたのち、これを140℃で1分フライし即席中華麺Dを得た。袋詰めして常温2週間保管後、湯戻し試験に供した。
湯戻し試験は、上記即席中華麺D50gを容器に入れ、ここに、熱湯300mlを注ぎ入れ蓋をして4分湯戻しを行い、湯戻し即席中華麺Dを得た。得られた湯戻し即席中華麺Dの湯戻り性及び麺伸びについて下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。また、湯戻し後のほぐれ性について、下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。
【0090】
〔比較例6〕
麺類の品質改良剤Aを無添加とした以外は実施例14の配合及び製法により、湯戻し即席中華麺Eを得た。得られた湯戻し即席中華麺Eの湯戻り性及び麺伸びについて下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。また、湯戻し後のほぐれ性について、下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表3〕に示した。
【0091】
評価基準:(湯戻り性、麺伸び、ほぐれ性)
専門パネラー10名による評価
◎:8割以上が良好と評価
○:5割以上8割未満が良好と評価
△:2割以上5割未満が良好と評価
×:2割未満が良好と評価
【0092】
【表3】
【0093】
<パスタの製造>
〔実施例15〕
市販の乾燥パスタ(ママー1.6mm)を熱湯で7分間茹で、ここに、麺類の品質改良剤Aの0.1質量%水溶液を、麺の固形分に対して2質量%噴霧(付着量は、脂質蛋白質複合体として、麺類の固形分100質量部に対し0.0018質量部)し、パスタAを得た。得られたパスタAの食感(歯切れ・弾力)について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表4〕に示した。
【0094】
〔比較例7〕
麺類の品質改良剤Aの0.1%水溶液を噴霧しなかった以外は実施例15と同様の製法でパスタBを得た。得られたパスタBの食感(歯切れ・弾力)について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表4〕に示した。
【0095】
評価基準:(歯切れ、弾力)
専門パネラー10名による評価
◎:8割以上が良好と評価
○:5割以上8割未満が良好と評価
△:2割以上5割未満が良好と評価
×:2割未満が良好と評価
【0096】
【表4】
【0097】
<生パスタの製造>
〔実施例16〕
デュラムセモリナ粉(ジョーカーA:日本製粉製)100質量部、麺類の品質改良剤A0.075質量部を混合し、小麦粉組成物を得た。一方、全卵(正味)50質量部、及び、食塩1質量部を水40質量部に、添加、分散、溶解し、水溶液を得た。ミキサーを使用し、小麦粉組成物及び水溶液を十分に混合し麺類生地を得た。1晩リタード後、押し出し式製めん機を用いて直径2mmの生パスタAを得た。袋詰めして冷蔵1日保管後、下記ほぐれ性試験を行ない、結果を〔表5〕に記載した。
【0098】
〔比較例8〕
麺類の品質改良剤Aを無添加とした以外は、実施例16と同様の配合及び製法で、生パスタBを得た。得られた生パスタBは、実施例16と同様の下記ほぐれ性試験を行った。ほぐれ性について下記の評価基準にしたがって評価を行い、結果を〔表5〕に示した。
【0099】
評価基準:(ほぐれ性)
専門パネラー10名による評価
◎:8割以上が良好と評価
○:5割以上8割未満が良好と評価
△:2割以上5割未満が良好と評価
×:2割未満が良好と評価
【0100】
【表5】
【0101】
<冷凍うどんの製造>
〔実施例17〕
小麦粉(日本製粉製:シロツバキ)100質量部、食塩1質量部、水35質量部をミキサーボウルに投入し、縦型ミキサーでフックを使用して十分にミキシングし、うどん生地である麺類生地を得た。
得られたうどん生地は、厚さ2mm、幅4mmの太麺に製麺した。
うどん500gを、麺類の改良剤A0.4gを溶解した熱湯4000gに投入し、4分間茹でた後、氷で締め、-20℃で凍結し、冷凍うどんAを得た。
2週間-20℃で保管したのち、解凍せずそのまま2リットルの熱湯に投入して1分間茹でた冷凍うどんAは、もちもちした食感でありながら歯切れ、口溶け、喉越しが極めて良好であった。
なお、ゆで汁について、日立分光光度計(U-2910)用いて波長600nmにおける吸光度を測定したところ、226mAbsであった。
【0102】
〔比較例9〕
麺類の品質改良剤Aを含有しない熱湯を使用した以外は実施例17と同様の配合及び製法で、冷凍うどんBを得た。実施例17と同様の方法で茹でた冷凍うどんBは、もちもち感、歯切れ、口溶け、喉越しともうどんAに比べて劣っていた。
なお、ゆで汁について、日立分光光度計(U-2910)を用いて波長600nmにおける吸光度を測定したところ、335mAbsであり、冷凍うどんAに比べてゆで汁が濁っていた。
【0103】
<うどんの製造>
〔実施例18〕
小麦粉(日清製粉製:シロツバキ)100質量部、食塩1質量部、麺類の改良剤A0.075質量部、水35質量部をミキサーボウルに投入し、縦型ミキサーでフックを使用して十分にミキシングし、うどん生地である麺類生地を得た。
得られたうどん生地は、厚さ2mm、幅4mmの太麺に製麺してうどんAを得た。
熱湯に投入し、5分間茹でた後、氷で締めた、茹で後のうどんAは、もちもちした食感でありながら歯切れ、口溶け、喉越しが極めて良好であった。
【0104】
〔比較例10〕
麺類の品質改良剤Aを含有しない以外は実施例18と同様の配合及び製法で、うどんBを得た。実施例18と同様の方法で得られた茹で後のうどんBは、もちもち感、歯切れ、口溶け、喉越しともうどんAに比べて劣っていた。
【0105】
<麺皮の製造>
〔実施例19〕
小麦粉(特ナンバーワン:日清製粉製)100質量部、食塩1質量部、麺類の改良剤A0.075質量部、水40質量部をミキサーボウルに投入し、縦型ミキサーでフックを使用して十分にミキシングし、餃子皮生地である麺皮生地を得た。
得られた餃子皮生地を厚さ1.4mmに圧延した後、直径10mmの円形に型抜きし餃子皮Aを得た。
得られた餃子皮Aに具材10gを包餡し、餃子Aを得た。
熱湯に投入し、4分間茹でた餃子Aは、もちもちした食感でありながら歯切れ、口溶け、喉越しが極めて良好であった。
【0106】
〔比較例11〕
麺類の品質改良剤Aを含有しない以外は実施例19と同様の配合及び製法で、餃子Bを得た。実施例19と同様の方法で得られた茹で後の餃子Bは、もちもち感、歯切れ、口溶け、喉越しとも餃子Aに比べて劣っていた。
【0107】
<やきそばの製造>
〔実施例20〕
実施例1の配合及び製法にしたがって得た中華麺Aを7分間蒸した。
菜種油10gを鉄板に塗布、加熱後、蒸した中華麺A150gを加えて2分間炒めて、やきそばAを得た。
やきそばAは、もちもちした食感でありながら歯切れが良好であった。
【0108】
〔比較例12〕
麺類の品質改良剤Aを含有しない以外は実施例20と同様の配合及び製法で、やきそばBを得た。実施例20と同様の方法で得られたやきそばBは、もちもち感、歯切れともやきそばAに比べて劣っていた。