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特開2022-144482X線CT測定装置の試料装着部品およびX線CT測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144482
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】X線CT測定装置の試料装着部品およびX線CT測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20220926BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045519
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA14
2G001QA02
2G001QA10
(57)【要約】
【課題】CT値較正操作と測定対象である試料の測定とを試料の付替えを伴わずに一度に実施出来、且つ、同一試料容器を用いた場合、毎回の位置決め操作を不要化出来るX線CT測定装置の試料装着部品と、当該X線CT測定装置の試料装着部品を用いたX線CT測定方法とを提供する。
【解決手段】X線CT(Computed Tomography)測定装置における、下部が円柱形の軸部11であり、上端部が前記軸部の軸芯に垂直な平面である載置面13を有する金属製の試料台10と、有底円筒形状を有し内容物の存在を確認可能なプラスチック製の試料容器50と、からなる試料装着部品であって、前記載置面13上には金属製の凸部21を有し、前記試料容器の底面裏側には凹部53を有し、前記凸部21と前記凹部53とを嵌合することで、前記軸部11の軸芯と前記試料容器50の中心軸とが一致するように構成されるX線CT測定装置の試料装着部品を提供する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CT(Computed Tomography)測定装置における、
下部が円柱形の軸部であり、上端部が前記軸部の軸芯に垂直な平面である載置面を有する金属製の試料台と、
有底円筒形状を有し内容物の存在を確認可能なプラスチック製の試料容器と、からなる試料装着部品であって、
前記載置面上には金属製の凸部を有し、
前記試料容器の底面裏側には凹部を有し、
前記凸部と前記凹部とを嵌合することで、前記軸部の軸芯と前記試料容器の中心軸とが一致するように構成されることを特徴とする、X線CT測定装置の試料装着部品。
【請求項2】
前記凸部の先端が突先形状を成し、
前記凸部の先端を前記凹部に突き刺すことで、前記軸部の軸芯と前記試料容器の中心軸とが一致するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のX線CT測定装置の試料装着部品。
【請求項3】
前記載置面上に雌ネジが施されたダボ穴を有し、
前記ダボ穴へ、雄ネジが施された金属製のダボを螺合することにより、所望の形状を有する前記凸部を構成することを特徴とする、請求項1または2に記載のX線CT測定装置の試料装着部品。
【請求項4】
X線CT(Computed Tomography)測定装置における、
下部が円柱形の軸部であり、上端部が前記軸部の軸芯に垂直な平面である載置面を有する金属製の試料台と、
有底円筒形状を有し内容物の存在を確認可能なプラスチック製の試料容器と、からなる試料装着部品であって、
前記載置面上には突先形状を成した突先部を有し、
前記載置面上に、前記試料容器と嵌合することで前記軸部の軸芯と前記試料容器の中心軸とを一致させる凸状の囲い部が形成されており、
前記突先部を前記試料容器の底面裏側に突き刺すことで、前記軸部の軸芯と前記試料容器の中心軸とが一致するように構成されることを特徴とする、X線CT測定装置の試料装着部品。
【請求項5】
前記プラスチックの素材が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のX線CT測定装置の試料装着部品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のX線CT測定装置の試料装着部品をX線CT測定装置に設置し、X線CT測定を実施することを特徴とする、X線CT測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT測定の際に用いる測定装置用の試料装着部品、および、X線CT測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT測定装置は、測定対象物内をX線が透過する際の「透過しやすさ」「吸収されやすさ」の違いを利用して、測定対象物の材質や構造を調べるものである。CTとはComputed Tomographyの略称で、コンピュータ断層撮影法と呼ばれており、物体を走査(スキャン)することからX線CTスキャンと呼ばれることもある。
【0003】
X線が物質に入射すると、さまざまな原因により吸収されながら通過していく。X線CT測定装置は、測定対象物をさまざまな方向からX線で撮影し、再構成処理を行うことにより、測定対象物の内部構造に係る情報を得る。このとき、異なる物質で構成された測定対象物の場合だけでなく、同じ物質であっても、密度が異なるとX線の吸収係数に違いが出るため、その差を計測することが出来る。この結果、測定対象物内部の情報を、対象を破壊することなく非破壊的に評価することが可能な分析装置である。
【0004】
X線CT測定装置にて得られる画像において、2次元画像は小さな正方形の画素である「ピクセル」から構成されている。また、3次元画像は立方体の「ボクセル」からから構成されている。ピクセルやボクセルには、白黒の濃淡値(画像濃度値)が与えられCT画像を表現している。この画像濃度値のことを、X線CT測定装置では「CT値」と呼んでいる。
特許文献1には、X線CT撮影において検出された検出値を較正する検出値較正方法であって、有効なキャリブレーションを行い、適度なコントラストの被検体の画像を得ることを可能にする検出値較正方法、並びに、この検出値較正方法に用いられるX線CT装置、較正用ファントムおよび保持具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-119020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、X線CT測定装置ではX線管球から発生したX線によって透過像を得る。しかしながら、X線管球の使用時間が長くなるにつれX線の強度が低下する。そのため同じ試料を測定してもX線管球使用時間によって、CT値が変化してしまう。
【0007】
そのため、X線CT測定装置においては、標準試料を用いたCT値の較正操作が必要になる。ここで、CT値較正用の標準試料として、一般的に、水と空気とが使用される。具体的には、水を原点の0とし、何もない空気の状態を最低の値である-1000とすることで、相対的なCT値が常に一定になるように較正する。
しかしながら、測定対象試料の密度が水に比べて大きい場合は、上記水と空気によるCT値較正では、精度良く該測定対象試料のCT値を得ることができなかった。その場合には、空気と、金属など密度の高い物質とを標準試料とし、空気を-1000、金属の標準試料を1000と設定することでCT値較正を行う。
CT値較正は、同種の試料の連続測定であれば1日1回程度実施する必要があり、さらに、測定対象試料である実試料の測定条件が変わるごとに、標準試料を用いたCT値較正操作を行う必要がある。
【0008】
X線CT測定装置での測定は、測定対象試料を専用の試料台に固定してから行う。具体的には、試料を固定した専用の試料台を装置に設置した後、試料へX線を照射することで透過像を得る。そして、当該試料の透過像を観察しながら、当該試料の測定したい部分の中心位置を、X線管球と検出器との中心位置を結んだ直線上に合わせる。特に、粉末試料の場合、有底円筒形のプラスチック製試料容器に粉末試料を装入して測定するが、この場合、設定する分解能によって測定可能な範囲(本発明において「観察視野」と記載する場合がある。)が決まってくる為、試料容器の中心位置を、X線管球と検出器の中心位置を結んだ直線上に合わせても、試料容器の中心位置が試料台の回転軸芯からズレている場合は、試料容器が偏芯して回転する。すると、特に回転軸から離れた試料容器の外周部が観察視野外にはみ出してしまい、正常な撮像が出来なくなる。一方、観察視野内に測定対象試料が存在しない範囲が生じるので、測定範囲が狭められてしまう。当該事態を避ける為には、試料台上において、測定対象試料、すなわち試料容器の正確な位置決めが求められる。
【0009】
従来は、まず、標準となる金属試料を専用の試料台に固定して、空気と金属試料にてCT値の較正を行った後、金属試料を取外してから測定対象試料である実試料を固定して、CT測定を行っていた。また、当該実試料の固定には、両面テープや紫外線硬化樹脂を用いていた。その場合、試料台上で試料を付替える操作が発生し、それに伴って試料の装着精度が低下することにもつながっていた。なお、試料を固定するための媒体については、上記両面テープや紫外線硬化樹脂に限らず、一般的な接着剤等を用いることができる。尤も、粘土の使用は避けた方が良い。粘土は、X線照射時に邪魔をして、測定を妨害する場合があるからである。
【0010】
本発明は、上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、有底円筒形の試料容器に粉末試料を装入してX線CT測定をするに当たって、CT値較正操作と測定対象試料である実試料の測定とを、試料の付替えを伴わずに一度に実施出来、且つ、同一試料容器を用いた場合、毎回の位置決め操作を不要化出来るX線CT測定装置の試料装着部品と、当該X線CT測定装置の試料装着部品を用いたX線CT測定方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決する為、本発明者らは研究を行った。そして、下記の構成を有するX線CT測定装置の試料装着部品、および、当該X線CT測定装置の試料装着部品を用いたX線CT測定方法とに想到して、上述の課題を解決した。
【0012】
即ち、上述の課題を解決する為の第1の発明は、
X線CT(Computed Tomography)測定装置における、
下部が円柱形の軸部であり、上端部が前記軸部の軸芯に垂直な平面である載置面を有する金属製の試料台と、
有底円筒形状を有し内容物の存在を確認可能なプラスチック製の試料容器と、からなる試料装着部品であって、
前記載置面上には金属製の凸部を有し、
前記試料容器の底面裏側には凹部を有し、
前記凸部と前記凹部とを嵌合することで、前記軸部の軸芯と前記試料容器の中心軸とが一致するように構成されることを特徴とする、X線CT測定装置の試料装着部品である。
第2の発明は、
前記凸部の先端が突先形状を成し、
前記凸部の先端を前記凹部に突き刺すことで、前記軸部の軸芯と前記試料容器の中心軸とが一致するように構成されることを特徴とする、第1の発明に記載のX線CT測定装置の試料装着部品である。
第3の発明は、
前記載置面上に雌ネジが施されたダボ穴を有し、
前記ダボ穴へ、雄ネジが施された金属製のダボを螺合することにより、所望の形状を有する前記凸部を構成することを特徴とする、第1または第2の発明に記載のX線CT測定装置の試料装着部品である。
第4の発明は、
X線CT(Computed Tomography)測定装置における、
下部が円柱形の軸部であり、上端部が前記軸部の軸芯に垂直な平面である載置面を有する金属製の試料台と、
有底円筒形状を有し内容物の存在を確認可能なプラスチック製の試料容器と、からなる試料装着部品であって、
前記載置面上には突先形状を成した突先部を有し、
前記載置面上に、前記試料容器と嵌合することで前記軸部の軸芯と前記試料容器の中心軸とを一致させる凸状の囲い部が形成されており、
前記突先部を前記試料容器の底面裏側に突き刺すことで、前記軸部の軸芯と前記試料容器の中心軸とが一致するように構成されることを特徴とする、X線CT測定装置の試料装着部品である。
第5の発明は、
前記プラスチックの素材が、ポリエチレンまたはポリプロピレンであることを特徴とする、第1から第4の発明のいずれかに記載のX線CT測定装置の試料装着部品である。
第6の発明は、
第1から第5の発明のいずれかに記載のX線CT測定装置の試料装着部品をX線CT測定装置に設置し、X線CT測定を実施することを特徴とする、X線CT測定方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有底円筒形の試料容器に粉末試料を装入してX線CT測定をするに当たって、CT値較正操作と測定対象試料のX線CT測定とを、試料の付替えを伴わずに一度に実施出来、かつ、同一試料容器を用いた場合、試料容器を試料台へ固定する際の位置決め操作を不要化出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】プラスチック製の試料容器の斜視図である。
図2】プラスチック製の試料容器の底部の斜視図である。
図3】異なる形態に係るプラスチック製の試料容器の底部の斜視図である。
図4】試料台の模式的な斜視図である。
図5】異なる形態に係る試料台の模式的な斜視図である。
図6】試料台における載置面の斜視図である。
図7】異なる形態に係る試料台における載置面の斜視図である。
図8】異なる形態に係る試料台における載置面の斜視図である。
図9】異なる形態に係る凸部の斜視図である。
図10】異なる形態に係る凸部の斜視図である。
図11】X線CT測定装置の試料台に設置された試料容器の模式的な断面図である。
図12】異なる形態に係るX線CT測定装置の試料台に設置された試料容器の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
X線CT測定装置においては、測定対象の試料(本発明において単に「試料」と記載する場合がある。)またはX線管球・検出器を回転させて、試料における複数のX線透過像を取得する。そして、その複数のX線透過像をコンピュータにて集約、合成することにより、試料の3次元像を取得することができる。
【0016】
しかし、上述したようにX線CT測定装置においては、少なくとも1日1回程度、さらに、試料の測定条件の変更ごとに、標準試料を用いたCT値較正操作を行う必要がある。
従来の技術に係るCT値較正操作においては、まず試料台へ、例えば円柱状のステンレス塊等の金属試料を標準試料として両面テープで固定する。そして、当該標準試料のCT値を1000と設定する較正操作と、試料台上へ何も置かず、空気を標準試料としたときのCT値を-1000と設定する較正操作とを実施して、較正を行っていた。そして、当該金属試料と空気とを標準試料とした較正操作の後に、試料を充填した試料容器を試料台上へ両面テープや紫外線硬化樹脂等で固定し、X線CT測定を行っていた。
【0017】
この為、測定条件が頻繋に変更される試料を測定する場合等は、較正操作に時間をとられ、較正も含めた測定時間が長時間となるという課題があった。
【0018】
次に、試料はプラスチック製の円筒容器である試料容器に充填され、金属製の試料台上へ両面テープや樹脂等で固定される。当該試料台は、円柱状または円柱へさらに円盤が載った形状であって上面が平面状である。
【0019】
X線CT測定装置における測定において、観察視野サイズは装置の能力や分解能の設定によって規定されている。そこで、有底円筒形の試料容器に粉末試料を装入してX線CT測定をするに当たって、試料がその観察視野サイズに収まるように設置し、測定を行うこととなる。しかし、試料を回転させて測定する場合、試料容器の中心位置が試料台の回転軸芯からズレていると、試料容器が偏芯して回転するため、幅方向において試料が観察視野サイズからはみ出し易くなる。はみ出しが発生した場合、はみ出した部分における試料のX線透過像が取得できなくなったり、観察視野内に試料が存在しない範囲が生じたりする。このため、測定範囲が狭くなってしまい、得られる情報量が少なくなる。
【0020】
そこで、このはみ出しを防止するためには、試料全体が観察視野サイズに入るように、試料容器の中心位置と試料台の回転軸芯とを出来る限り一致させた上で、観察視野の中心と試料容器の中心位置を合わせれば良い。具体的には、所定方向からのX線透過像を取得し、試料が観察視野からはみ出していないことを確認した後、試料を90°回転させ、再度X線透過像を取得して、試料が観察視野からはみ出していないことを確認する。このとき、試料が観察視野からはみ出していた場合は、X線CT測定装置から試料を取り出し、再度、試料台中心に試料を固定し直すこととなる。
【0021】
さらに、従来技術に係る試料台では、試料台上の任意の位置に試料容器を固定するものであった為、試料台の軸部の軸芯と、試料容器の中心軸との位置に毎回ずれが生じていた。この為、同一形状の試料容器に充填された試料を大量に測定しようとした場合であっても、毎回、まず、所定方向からのX線透過像を取得し、試料が観察視野からはみ出していないことを確認する。その後、試料を90°回転させ、再度X線透過像を取得して、試料が観察視野からはみ出していないことを、再度確認する必要があり、手間と時間とを要するという課題があった。
【0022】
上述した複数の課題を解決する発明を実施する為の試料装着部品の形態と、それを用いたX線CT測定について、図面を参照しながら、1.試料容器、2.試料台、3.試料台への試料容器設置、4.X線CT測定、5.まとめ、の順に説明する。
【0023】
1.試料容器
図1は、本発明に係るプラスチック製の試料容器50の模式的な斜視図である。試料容器50は外径がr50の容器底部52を有する円柱状の形状を有している。試料容器50は透明から半透明のプラスチック製であり、内容物の存在やその充填状態を、容器側面51を通して外から確認可能なものであって、X線の透過を妨げないものである。当該観点から、プラスチックの材質はポリエチレン、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0024】
試料容器50の底面部における外側の形態は、容器底部52が平面になっているものや、プラスチック製の試料容器50の底部の斜視図である図2に示すように、容器底部52の外側の中心に、当該容器が射出成型されて製造される際に形成される凹部53が存在しているものや、異なる形態に係るプラスチック製の試料容器50の底部の斜視図である図3に示すように、容器底部52が試料容器50の内側に向かって窪み、凹面鏡状の凹部54を形成しているもの等がある。
本発明では、試料容器50の底面部における外側の形態がいずれのものであっても使用可能であるが、後述する理由により、容器底部52の外側の中心に、当該容器が射出成型されて製造される際に形成される凹部53が存在しているものが好ましい。さらに、容器底部52が試料容器50の内側に向かって凹面鏡状に窪んでいるものであっても良い。
【0025】
試料容器50としては、市販のプラスチック製の試料容器の中から、内容物の存在やその充填状態を容器外から確認可能であり、適宜なサイズや底面部の形状を有しているものを選択して使用することができる。好ましい例として、例えば、小型容器として、Kartell社製の型番730サンプル瓶:内径×外径×全高(mm)φ6.5×φ8×30を、大型容器として、ニッコーハンセン社製のプッシュバイアル型番PV-10:外径×全高(mm)φ21×41.3を挙げることが出来る。
【0026】
2.試料台
図4は、本発明に係る試料台10の模式的な斜視図である。試料台10において、下部は円柱形の軸部11であり、上端部が前記軸部11の軸芯に垂直な平面であり、直径がr10である載置面13を有する円盤状の載置部12である。尚、軸部11と載置部12との軸芯は一致している。そして軸部11は、X線CT測定装置に設置可能な軸径を有している。試料台10は金属製でありステンレス等の耐食性の高い金属であることが好ましい。
【0027】
試料台の変形例の斜視図を図5に示す。図5に示す異なる形態に係る試料台20において、下部は円柱形の軸部11であり、上端部が前記軸部11の軸芯に垂直な平面であり、直径がr20である載置面13を有する円盤状の載置部12である。ここで、軸部11と載置部12とは同直径のr20であり、一体的な円柱構造となっている例である。
【0028】
試料台10および異なる形態に係る試料台20の載置面13の斜視図を図6に、載置面13に係る変形例の斜視図を図7に示す。
図6に示す載置面13には、凸部21が設けられている。凸部21は金属製でありステンレス等の耐食性の高い金属であることが好ましい。凸部21は載置面13の中心、即ち、軸部11と載置部12との軸芯と一致している部分に設けることで、上述した本発明に係るプラスチック製の試料容器50の中心軸を、軸部11と載置部12との軸芯と容易に一致させることが可能になり好ましい構成である。
【0029】
図7に示す載置面13には、凸部21に加え、載置面13の外周部に凸状の囲い部31を設けることが出来る。囲い部31を設けることにより、上述した本発明に係るプラスチック製の試料容器50の容器底部52と嵌合し、試料容器50の中心軸を、軸部11と載置部12との軸芯と容易に一致させることが出来る。
この構成を採る場合、囲い部31の高さ32は、凸部21の高さより低いことが好ましい。これは、凸部21にX線ビームを照射して、後述するCT値較正をする際、囲い部31の妨害を受けずに凸部21へ容易にX線ビームを照射できるからである。
また、囲い部31を設ける構成を採る場合、後述するように凸部21は載置面13の中心になくても良い。
【0030】
一方、上述した囲い部31の高さ32を凸部21の高さより高くした場合の例を図8に示す。この場合は、囲い部31の一部分を切り欠いて、一方の切り欠き部33および他方の切り欠き部34を設ければ良い。当該構成を採ることで、X線ビームが一方の切り欠き部33および他方の切り欠き部34を通過する際、凸部21に照射され後述するCT値較正が出来る。
【0031】
凸部の変形例の斜視図を図9図10に示す。図9に示す異なる形態に係る凸部22においては、先端部が例えば針状である突先形状を有している例である。この場合、上述した本発明に係るプラスチック製の試料容器50の容器底部52と嵌合すると共に、先端部が、試料容器50のプラスチック製底部に貫入するものである。
【0032】
図10に示す異なる形態に係る凸部23は、異なる形態に係る凸部23として雄ネジを有するダボを用いた例である。この場合、載置面13における異なる形態に係る凸部23の設置位置に、当該ダボと螺合する雌ネジを有する穴を穿ち、所望の長さを有するダボを当該穴と螺合させることにより、載置面13に所望の高さを有する異なる形態に係る凸部23を設けることが出来る。また、当該ダボにおいて、穴から突出する部分の形状を上述した突先形状、または、半球状の形状等、所望の形状とすることにより、所望の形状を有する異なる形態に係る凸部23を設けることが出来る。載置面13における異なる形態に係る凸部23の設置位置に、当該ダボと螺合する雌ネジを有する穴を穿つ形態とすれば、1つの試料台10を使用するだけで、多様な高さ、形状を有する凸部21を形成することができる。
【0033】
3.試料台への試料容器設置方法
上述した試料容器50が、図2に示すように容器底部52の外側の中心に凹部53が存在しているものである場合、上述した図6に示す載置面13にある凸部21または異なる形態に係る凸部23と、凹部53とを嵌合させる構成や、図9に示す先端部が針状である異なる形態に係る凸部22を凹部53と嵌合させると共に、異なる形態に係る凸部22の先端部を凹部53に突き刺す構成を採ることが出来る。
【0034】
上述の構成を採る場合、プラスチック製の試料容器50の中心軸を、軸部11と載置部12との軸芯と容易に一致させることが可能になり好ましい構成である。
加えて好ましいことに、上述の構成を採ることにより、X線のビームが照射される範囲内である観察視野内の端部に、金属製の凸部21や異なる形態に係る凸部22、23が位置することとなる。この結果、X線CT測定装置におけるCT値較正操作を、当該金属製の凸部21や異なる形態に係る凸部22、23を標準試料として実施することが出来る。そのことで、CT値較正操作と測定対象試料のX線CT測定とを試料の付替えを伴わずに一度に実施することが可能になる。なお、必ずしも凸部21が載置面13の中心に存在する必要は無く、試料容器50の凹部53と凸部21とを嵌合させたときに、試料容器50の中心軸が軸部11と載置部12との軸芯と一致するように、凹部53または凸部21の位置が調整されている形態でも構わない。
【0035】
一方、上述したように、囲い部31を設ける構成を採る場合、凸部21は、先端部が針状である異なる形態に係る凸部22(突先部)となる。また、試料容器50の凹部53、凹面鏡状の凹部54は、無くても良い。囲い部31を設ける構成とした場合、囲い部31が試料容器50と嵌合することで試料容器50の中心軸が軸部11と載置部12との軸芯と一致するように構成することができるので、試料容器50の凹部53と凸部21とが嵌合するように構成する必要は無い。異なる形態に係る凸部22(突先部)は、試料容器50を、試料台10や、異なる形態に係る試料台20への固定する役割、および、CT値較正操作における標準試料としての役割を果たすことになる。そのことにより、底面が平坦な試料容器50、すなわち、凹部53、凹面鏡状の凹部54を有さない試料容器50にも対応できる。よって、突先部が載置面13の中心にない場合であっても、試料容器50を囲い部31に嵌合させることができる構成であれば構わないことになる。この結果、プラスチック製の試料容器50の中心軸を、軸部11と載置部12との軸芯と容易に一致させることが可能になる。また、X線CT測定装置におけるCT値較正操作を、当該金属製の異なる形態に係る凸部22(突先部)を標準試料として実施することが出来る。
【0036】
ここで、囲い部31を設ける構成を採る場合、当該囲い部31が、凸部21へX線のビームが照射されるのを妨害しないよう、その高さを調整する、または、当該囲い部31を試料台10の全周に設けるのではなく、一部に欠損部を設ける、等の対応を採る。試料台が異なる形態に係る試料台20である場合も同様である。
【0037】
4.X線CT測定
本発明に係る試料台10および試料容器50を用いて、試料に対してX線CT測定を行う方法について、X線CT測定装置の試料台10に設置された試料容器50の模式的な断面図である図11を参照しながら説明する。
尚、試料は、粉体、粒体、塊状体等、特に制限されるものではないが説明の便宜の為、粉体試料を例として説明する。
まず、準備される粉体試料の量や、求められる分解能に応じて試料容器50の大きさを定める。粉体試料の量が多い場合や求められる分解能が低い場合は、径の大きな大型の容器を用い、粉体試料の量が少ない場合や求められる分解能が高い場合は径の小さな小型の容器を用いる。
【0038】
選択された試料容器50の大きさに合わせて、適宜な載置面13の径r10を有する試料台10を選択する。
選択された試料台10をX線CT測定装置に設置する。そして、図11に示すように、粉体試料60が充填された選択された試料容器50を当該試料台10の載置面13に設置し、試料容器50の凹部53と載置面13の凸部21とを嵌合させる。当該試料台10が囲い部31を有する場合は、当該試料容器50を囲い部31と嵌合させる。この結果、プラスチック製の試料容器50の中心軸と、試料台10における軸部11と載置部12との軸芯とが一致する(図11において破線で示す)。
【0039】
粉体試料60をすべて含み、容器側面51の一部または全部、容器底部52の一部または全部、金属製の凸部21の一部が観察視野70(図11において一点鎖線で示す)に入るように、X線CT測定装置を設定する。金属製の凸部21が、先端部が針状である異なる形態に係る凸部22である場合も同様であって、異なる形態に係る凸部22の一部が観察視野70の範囲内に入るように、X線CT測定装置を設定する。
尚、このとき、プラスチック容器によるX線の吸収は小さくて無視出来ることから、プラスチック容器を介して金属製の凸部21や、先端部が針状である異なる形態に係る凸部22のCT値を測定することや、プラスチック容器を介して空気のCT値を測定することが出来る。
【0040】
当該構成を採ることによって、粉体試料60、金属である凸部21または異なる形態に係る凸部22、23、空気部分の3つを、観察視野70の中に取り込むことが出来る。この結果、観察視野70内をX線で走査することにより、粉体試料60に係るX線走査データの採取と、空気部分のCT値を-1000、金属(高密度)部分のCT値を1000と設定することによるCT値較正とを同時に行うことが出来る。
【0041】
尚、参考の為、異なる形態に係る試料台や試料容器を用いた場合のX線CT測定について、異なる形態に係るX線CT測定装置の試料台に設置された試料容器の模式的な断面図である図12を用いて、簡単に説明する。図12は、試料台として図5を用いて説明したものを用い、試料容器として図3を用いて説明したものを用いた場合の模式的な断面図である。
この場合、試料容器50の底部は、凹面鏡状の凹部54となっているので、この部分に凸部21が入りこむことにより、金属製の凸部21の一部が観察視野70(図12において一点鎖線で示す)に入ることになる。
これ以外のことは、図11を用いて説明したX線CT測定を行う方法と同様である。
【0042】
5.まとめ
以上説明したように、本発明に係る試料装着部品を用いることにより、試料を充填したプラスチック製の試料容器50の中心軸と、試料台10における軸部11と載置部12との軸芯とが一致する形で、当該試料容器50を載置部12上に設置することが出来る。そして、粉体試料60、金属である凸部21または異なる形態に係る凸部22、23、空気部分の3つを、観察視野70の中に取り込むことによって、CT値較正と試料に対するX線CT測定とを同時に行うことが出来る。
この結果、上述のX線CT測定工程に係る操作が大きく削減され、操作時間も大きく削減される。当該効果は、多種の試料を、多様な測定条件にて測定する際に、特に顕著なものとなる。
【符号の説明】
【0043】
10.試料台
11.軸部
12.載置部
13.載置面
20.異なる形態に係る試料台
21.凸部
22.異なる形態に係る凸部
23.異なる形態に係る凸部
31.囲い部
32.囲い部の高さ
33.一方の切り欠き部
34.他方の切り欠き部
50.試料容器
51.容器側面
52.容器底部
53.凹部
54.凹面鏡状の凹部
60.粉体試料
70.観察視野
図1
図2
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図12