(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144645
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】微細立体構造形成方法、微細立体構造、プラズマエッチング装置及びガス供給システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20220926BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20220926BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20220926BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
B81C1/00
B81B1/00
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045738
(22)【出願日】2021-03-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、中小企業庁、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】503446992
【氏名又は名称】誠南工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521118112
【氏名又は名称】株式会社和泉テック
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和貴
(72)【発明者】
【氏名】原 史朗
(72)【発明者】
【氏名】石田 夕起
(72)【発明者】
【氏名】亀井 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】薮田 勇気
(72)【発明者】
【氏名】大滝 英司
(72)【発明者】
【氏名】田中 信明
【テーマコード(参考)】
2G084
3C081
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB02
2G084BB25
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD55
2G084FF27
2G084FF28
2G084FF29
3C081AA17
3C081BA02
3C081BA04
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3C081EA28
5F004AA12
5F004BB13
5F004CA01
5F004CA08
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5F004DA01
5F004DA03
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5F004DB00
5F004DB01
5F004DB19
5F004DB20
5F004EA13
5F004EA28
5F004EA37
5F004EB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】凹部側面の傾きを制御した微細立体構造を得ること及び迅速にガスを切り替えるガス供給システムを提供する。
【解決手段】プラズマエッチング装置100において、ガス供給システム4は、パッシベーションガスGpを供給し、プラズマを1回以上発生させて保護膜を堆積するパッシベーション工程と、エッチングガスGeを供給し、プラズマを1回以上発生させて厚さ方向に窪みを形成するエッチング工程と、を備えるサイクルを複数サイクル繰り返すことにより凹部を形成する凹部形成工程を有する。凹部形成工程において、サイクル毎のプラズマ発生回数を調整することで、凹部の側面と天面とのなす角度を制御する微細立体構造形成方法は、2種以上のガスの夫々が、上流側から順に圧力調整器Re、RpとパルスガスバルブVe、Vpとを備える配管を通じて圧力調整器でガス圧力を調整した後にパルスガスバルブの開閉によりチャンバ3へのガス供給を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシベーションガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて保護膜を堆積するパッシベーション工程と、エッチングガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて厚さ方向に窪みを形成するエッチング工程とを備えるサイクルを、複数サイクル繰り返すことにより凹部を形成する凹部形成工程を有し、
前記凹部形成工程において、サイクル毎のプラズマ発生回数を調整することにより、前記凹部の側面と天面とのなす角度を制御することを特徴とする微細立体構造形成方法。
【請求項2】
前記パッシベーションガスと前記エッチングガスの両方を、上流側から順に圧力調整器とパルスガスバルブを備える配管を有するガス供給システムにより供給し、
前記圧力調整器で圧力を調整した後に、前記パルスガスバルブの開閉により供給を制御することを特徴とする請求項1に記載の微細立体構造形成方法。
【請求項3】
前記凹部形成工程において、少なくとも一部のサイクルを、サイクル毎のプラズマ発生回数を減らしながら繰り返すことにより、前記角度を鋭角とすることを特徴とする請求項1または2に微細立体構造形成方法。
【請求項4】
前記凹部形成工程において、少なくとも一部のサイクルを、サイクル毎のプラズマ発生回数を増やしながら繰り返すことにより、前記角度を鈍角とすることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の微細立体構造形成方法。
【請求項5】
チャンバの容積が500mL以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の微細立体構造形成方法。
【請求項6】
半導体基板に形成された凹部を有し、
前記凹部が、側面にスキャロップを備え、
前記側面が、天面に対して傾斜していることを特徴とする微細立体構造。
【請求項7】
前記側面と天面とのなす角度が鋭角である部分において、
前記スキャロップが、深くなるに連れて小さくなることを特徴とする請求項6に記載の微細立体構造。
【請求項8】
前記側面と天面とのなす角度が鈍角である部分において、
前記スキャロップが、深くなるに連れて大きくなることを特徴とする請求項6または7に記載の微細立体構造。
【請求項9】
前記半導体基板の直径が、12.5mmであることを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の微細立体構造。
【請求項10】
パッシベーションガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて保護膜を堆積するパッシベーション工程と、エッチングガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて厚さ方向に窪みを形成するエッチング工程とを備えるサイクルを、複数サイクル繰り返すことにより凹部を形成することができ、
サイクル毎のプラズマ発生回数を調整することにより、前記凹部の側面と天面とのなす角度を制御できることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項11】
前記パッシベーションガスと前記エッチングガスを供給するガス供給システムが、上流側から順に圧力調整器とパルスガスバルブとを備える配管を有し、
前記パッシベーションガスと前記エッチングガスの両方が、前記圧力調整器で圧力を調整した後に、前記パルスガスバルブの開閉により供給されることを特徴とする請求項10に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項12】
チャンバの容積が500mL以下であることを特徴とする請求項10または11に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項13】
2種以上のガスのそれぞれが、上流側から順に圧力調整器とパルスガスバルブとを備える配管を通じて同一空間に供給され、
前記圧力調整器でガス圧力を調整した後に、前記パルスガスバルブの開閉によりガス供給を制御することを特徴とするガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細立体構造形成方法、微細立体構造、プラズマエッチング装置とガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の三次元実装や、MEMSデバイス、光導波路、マイクロ流路、マイクロリアクター、ナノインプリント用モールド等として、マイクロメートルオーダーの微細立体構造が様々な分野で実用化され始めている。
微細立体構造を形成するために、半導体の精密加工プロセスの一種である「ボッシュプロセス」と称される深堀りエッチングの手法が用いられている(特許文献1)。ボッシュプロセスは、プラズマエッチングにより窪みを形成するエッチング工程と、プラズマパッシベーションにより保護膜を堆積するパッシベーション工程を備えるサイクルを、複数サイクル繰り返すことにより、窪みを1つずつ掘り進めて凹部を形成する方法である。
【0003】
微細立体構造が用いられている様々な分野において、その性能向上等のために、滑らかな面を有することが求められる場合があるが、ボッシュプロセスでは、その原理上、凹部側面に、エッチングの繰り返し周期に同期したスキャロップ(Scallop:ホタテ貝文様)と呼ばれる凹凸が形成されてしまう。
本件出願人の一者は、特許文献2において、1サイクルあたりのエッチング量が小さいボッシュプロセスを6秒以下のサイクルタイムで繰り返すことにより、スキャロップが小さく滑らかな側面を有する微細立体構造を短い加工時間で得られたこと、具体的には、特許文献2の実験2に記載したとおり、サイクルタイム2秒のボッシュプロセスを300サイクル繰り返すことにより、10分(=2秒×300サイクル)の加工時間で、深さ10.2μm、スキャロップ周期34nm、スキャロップ深さ12nm以下である微細凹部を有する微細立体構造を形成できたことを報告している。
【0004】
近年、微細立体構造のさらなる高機能化等のために、側面が傾斜した微細立体構造が求められている。例えば、MEMSデバイスは、より複雑な構造が求められ、ナノインプリント用モールドは、スムーズな型抜きのために先端が細くなるテーパー状とすることが求められている。
しかし、ボッシュプロセスは、1サイクルあたりのエッチング量と保護膜の堆積量をそれぞれのプラズマ処理条件により調整し、このプラズマ発生条件を維持してサイクルを繰り返すことにより、垂直方向に掘り進むための技術である。ボッシュプロセスのサイクル毎のプラズマ処理条件を制御し、エッチング量を少しずつ大きく、または小さくすれば、原理上は、斜めに掘り進めることが可能である。しかし、所望の形状を実現するには、数百、場合によっては数千にも及ぶサイクルの全てについて、プラズマ処理条件を最適化する必要があり、このようなプロセス開発は現実的には不可能である。
【0005】
ここで、ボッシュプロセスを行うプラズマエッチング装置において、エッチングガスとパッシベーションガスは、マスフローコントローラとバルブにより、チャンバへの供給が制御されている。この構成では、マスフローコントローラの応答時間による遅延時間が生じる。また、バルブが閉じていると、マスフローコントローラとバルブとの間にガスが滞留して圧力が高まるため、バルブを開けた直後は設計したプラズマ処理条件よりもガス圧力が高くなる。設計条件と圧力が異なる状態でプラズマを発生させると、エッチング量、保護膜の堆積量が変化してしまうため、設計通りの形状で掘り進めるためには、ガスを切り替えるたびに圧力が安定するまで待機する必要がある。
【0006】
特許文献3には、マスフローコントローラとバルブとの間に、ガスバイパスを設け、チャンバに繋がるバルブが閉じているときにはガスバイパスにガスを流すことにより、マスフローコントローラとバルブとの間の圧力を一定に保つ技術が提案されている。
この技術により、ガスを切り替えた後にチャンバ内の圧力が安定するまで待機する時間を短くすることができるが、マスフローコントローラの応答時間に由来する遅延はそのままである。また、バルブの数が増えるため、制御が複雑となるとともに、全てのバルブが所定の開閉状態になるのに時間を要する。さらに、ガスバイパスに流れるガスは、製造に用いられない無駄なものであるため、高コストである。また、排気ラインにガス回収装置を設置したとしても、排気中のエッチングガスとパッシベーションガスとを完全に回収することはできず、これらのガスは地球温暖化係数が非常に大きく(SF6が22200、C4F8が10300)であり、僅かな漏洩でも環境への負荷が非常に大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第94/14187号
【特許文献2】国際公開第2017/150628号
【特許文献3】特表2006-507664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、凹部側面の傾きを制御した微細立体構造を得ることを課題とする。また、本発明は、迅速にガスを切り替えることのできるガス供給システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題を解決するための手段は、以下の通りである。
1.パッシベーションガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて保護膜を堆積するパッシベーション工程と、エッチングガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて厚さ方向に窪みを形成するエッチング工程とを備えるサイクルを、複数サイクル繰り返すことにより凹部を形成する凹部形成工程を有し、
前記凹部形成工程において、サイクル毎のプラズマ発生回数を調整することにより、前記凹部の側面と天面とのなす角度を制御することを特徴とする微細立体構造形成方法。
2.前記パッシベーションガスと前記エッチングガスの両方を、上流側から順に圧力調整器とパルスガスバルブを備える配管を有するガス供給システムにより供給し、
前記圧力調整器で圧力を調整した後に、前記パルスガスバルブの開閉により供給を制御することを特徴とする1.に記載の微細立体構造形成方法。
3.前記凹部形成工程において、少なくとも一部のサイクルを、サイクル毎のプラズマ発生回数を減らしながら繰り返すことにより、前記角度を鋭角とすることを特徴とする1.または2.に微細立体構造形成方法。
4.前記凹部形成工程において、少なくとも一部のサイクルを、サイクル毎のプラズマ発生回数を増やしながら繰り返すことにより、前記角度を鈍角とすることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の微細立体構造形成方法。
5.チャンバの容積が500mL以下であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の微細立体構造形成方法。
6.半導体基板に形成された凹部を有し、
前記凹部が、側面にスキャロップを備え、
前記側面が、天面に対して傾斜していることを特徴とする微細立体構造。
7.前記側面と天面とのなす角度が鋭角である部分において、
前記スキャロップが、深くなるに連れて小さくなることを特徴とする6.に記載の微細立体構造。
8.前記側面と天面とのなす角度が鈍角である部分において、
前記スキャロップが、深くなるに連れて大きくなることを特徴とする6.または7.に記載の微細立体構造。
9.前記半導体基板の直径が、12.5mmであることを特徴とする6.~8.のいずれかに記載の微細立体構造。
10.パッシベーションガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて保護膜を堆積するパッシベーション工程と、エッチングガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて厚さ方向に窪みを形成するエッチング工程とを備えるサイクルを、複数サイクル繰り返すことにより凹部を形成することができ、
サイクル毎のプラズマ発生回数を調整することにより、前記凹部の側面と天面とのなす角度を制御できることを特徴とするプラズマエッチング装置。
11.前記パッシベーションガスと前記エッチングガスを供給するガス供給システムが、上流側から順に圧力調整器とパルスガスバルブとを備える配管を有し、
前記パッシベーションガスと前記エッチングガスの両方が、前記圧力調整器で圧力を調整した後に、前記パルスガスバルブの開閉により供給されることを特徴とする10.に記載のプラズマエッチング装置。
12.チャンバの容積が500mL以下であることを特徴とする10.または11.に記載のプラズマエッチング装置。
13.2種以上のガスのそれぞれが、上流側から順に圧力調整器とパルスガスバルブとを備える配管を通じて同一空間に供給され、
前記圧力調整器でガス圧力を調整した後に、前記パルスガスバルブの開閉によりガス供給を制御することを特徴とするガス供給システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の微細立体構造形成方法は、ボッシュプロセスを利用した凹部形成工程において、サイクル毎のプラズマ発生回数を調整するという簡便な方法により、1サイクルあたりのエッチング量を制御することができる。そして、1サイクルあたりのエッチング量を徐々に変化させることにより、凹部側面と天面とのなす角度、すなわち、凹部側面の天面に対する傾きを制御した微細立体構造を形成することができる。具体的には、1サイクルあたりのエッチング量を徐々に小さくすることにより、凹部側面と天面とのなす角度を鋭角、1サイクルあたりのエッチング量を徐々に大きくすることにより、凹部側面と天面とのなす角度を鈍角、とすることができる。そのため、凹部形成工程において、1サイクルあたりのエッチング量を徐々に小さくすることと、徐々に大きくすることを交互に繰り返すことにより、ジグザグ状の側面を有する微細立体構造を形成することもできる。
【0011】
本発明の微細立体構造形成方法において、エッチング工程とパッシベーション工程における各プラズマ発生条件を変更する必要はないため、エッチング工程とパッシベーション工程のいずれか、または両方において、同一のプラズマ発生条件のままプラズマ発生回数を変更するだけで、凹部側面の傾きを制御した微細立体構造を得ることができる。そのため、本発明の微細立体構造形成方法により、側面が傾斜した微細立体構造を得るためのプロセス開発に要する時間とコストを大幅に削減することができる。
【0012】
エッチングガスとパッシベーションガスの両方を、上流側から順に圧力調整器とパルスガスバルブとを備える配管を有するガス供給システムにより供給し、圧力調整器で圧力を調整した後に、パルスガスバルブの開閉により供給を制御する本発明の微細立体構造形成方法は、処理ガスを切り替えてから安定するまでの時間が非常に短く、サイクルタイムが短いため、微細立体構造の形成に要する時間を短くすることができるとともに、形成される微細立体構造のスキャロップをより小さくすることができる。また、この形成方法は、パルスガスバルブが閉じているときにガスが流れず、微細立体構造の形成に必要なガスの量を減らすことができるため、低コストであり、温室効果ガスの排出量も減らすことができる。さらに、排気ポンプに流れるガスの量が少なくなるため、排気ポンプのメンテナンスの頻度とメンテナンスコストとを減らすことができる。
【0013】
プラズマ処理部の容積を500mL以下と小さくすることにより、プラズマ処理部の容積に対する排気能力が相対的に高くなり、処理ガスを迅速に排気して入れ替えることができる。これにより、サイクルタイムを短くすることができ、例えば、サイクルタイム1.7秒以下を実現することができる。サイクルタイムが短いボッシュプロセスは、数百サイクル繰り返しても、処理時間が短くて済むため、生産性に優れている。
【0014】
本発明の微細立体構造は、側面が傾斜しており、MEMSデバイス、光導波路、マイクロ流路、マイクロリアクター、ナノインプリント用モールド、さらに、これら以外の新規用途等において、高機能化が期待できる。
【0015】
本発明のガス供給システムは、ガスを切り替えてから安定するまでの時間が非常に短い。そのため、複数種のガスを切り替えることが必要な半導体製造装置、化学合成装置、培養装置等に好適に用いることができる。また、パルスガスバルブが閉じているときにはガスが流れないため、必要なガスの量を減らすことができ低コストである。そのため、温室効果ガスを使用する場合に、環境への負荷を軽減することができる。さらに、排気ポンプに流れるガスの量が少なくなるため、排気ポンプのメンテナンスの頻度とメンテナンスコストとを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施態様例であるプラズマエッチング装置の構成を示す概略図。
【
図2】凹部側面と天面とのなす角度(α)が鋭角である微細立体構造の概略図。
【
図3】凹部側面と天面とのなす角度(α)が鈍角である微細立体構造の概略図。
【
図4】(a)本発明のガス供給システムを用いた際のプラズマ発光強度を示すグラフ、(b)従来のマスフローコントローラを用いた際のプラズマ発光強度を示すグラフ。
【
図5】本発明の一実施態様例であるプラズマエッチング装置を用いて得られた、側面と天面とのなす角度が垂直である微細立体構造の電子顕微鏡画像。
【
図6】本発明の微細立体構造形成方法により得られた、側面と天面とのなす角度が鋭角である微細立体構造の電子顕微鏡画像。
【
図7】本発明の微細立体構造形成方法により得られた、側面と天面とのなす角度が鈍角である微細立体構造の電子顕微鏡画像。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、微細立体構造形成方法に関し、また、この微細立体構造形成方法により形成される微細立体構造、この微細立体構造形成方法等に用いることができるプラズマエッチング装置とガス供給システムに関する。
【0018】
<微細立体構造形成方法>
本発明の微細立体構造形成方法は、パッシベーションガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて保護膜を堆積するパッシベーション工程と、エッチングガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて厚さ方向に窪みを形成するエッチング工程とを備えるサイクルを、複数サイクル繰り返すことにより凹部を形成する凹部形成工程を有し、
前記凹部形成工程において、サイクル毎のプラズマ発生回数を調整することにより、前記凹部の側面と天面とのなす角度を制御することを特徴とする。
【0019】
本発明の微細立体構造形成方法は、パッシベーションガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて保護膜を堆積するパッシベーション工程と、エッチングガスを供給し、プラズマを1回以上発生させて厚さ方向に窪みを形成するエッチング工程とを備えるサイクルを、複数サイクル繰り返すことにより凹部を形成することができ、サイクル毎のプラズマ発生回数を調整することにより、凹部の側面と天面とのなす角度を制御できるプラズマエッチング装置を用いて実施することができる。
【0020】
図1に、本発明の微細立体構造形成方法で使用できるプラズマエッチング装置の一実施態様例を示す。
一実施態様例であるプラズマエッチング装置100は、プラズマ発生装置1と、半導体基板Wを設置するステージ2と、プラズマ処理を行うチャンバ3と、プラズマ発生装置1とステージ2のそれぞれへ高周波電力を伝送するための第1及び第2のインピーダンス整合回路MC1、MC2と第1及び第2の高周波電源RF1、RF2と、処理ガス(エッチングガスGeとパッシベーションガスGp)をチャンバ3へ供給するガス供給システム4と、ポンプPと、制御装置(図示せず)を有する。
【0021】
プラズマ発生装置1は、高周波アンテナ11と、静磁場を発生するソレノイドコイル12を備える。制御装置からの信号を受けて、第1の高周波電源RF1より第1のインピーダンス整合回路MC1を介して、高周波アンテナ11に1~100MHzの高周波電力を投入することにより、チャンバ3内に導入された処理ガスの一部を電離してプラズマとすることができる。また、必要に応じて、制御装置からの信号を受けて、第2の高周波電源RF2より第2のインピーダンス整合回路MC2を介してステージ2へと高周波電力を投入することにより、半導体基板Wに高周波バイアス電圧を印加することができる。さらに、制御装置からの信号を受けて、ソレノイドコイル12に電力を供給することで静磁場を発生させ、プラズマを高密度化できる。
【0022】
チャンバ3は、絶縁体からなり、その内部でプラズマ処理を行うものである。本発明において、チャンバの容積は特に制限されないが、小さいほどガスを迅速に排気することができるため、容積が500mL以下であることが好ましい。
ガス供給システム4は、上流から圧力調整器Re、Rpと、パルスガスバルブVe、Vpを備える配管を有する。パルスガスバルブVe、Vpは、制御装置からの信号を受信してから、10msec以下の高速で開閉が可能である。パルスガスバルブの開閉に掛かる応答速度は、8msec以下であることが好ましく、5msec以下であることがより好ましく、3msec以下であることが更に好ましい。パルスガスバルブVe、Vpは、全開/全閉の切り替えしかできないため、パルスガスバルブVe、Vpへ供給する処理ガスGe、Gpは、事前に圧力調整器Re、Rpにより所望の圧力、例えば、100Pa~2MPaの圧力となるように調整する。
【0023】
制御装置は、圧力調整器Re、Rpによる処理ガスGe、Gpの圧力調整、パルスガスバルブVe、Vpの開閉切り替えによる処理ガスGe、Gpのチャンバ3への導入、プラズマ発生装置1とステージ2への高周波電力の電圧、周波数、供給タイミング等を制御するものである。制御装置は、1サイクル中のパッシベーション工程とエッチング工程のそれぞれについて、高周波電力を1回以上供給することができ、これにより、1サイクル中のパッシベーション工程とエッチング工程のそれぞれにおいて、プラズマを1回以上発生させることができる。
なお、
図1に示すプラズマエッチング装置は一構成例に過ぎず、本発明のプラズマエッチング装置はこれに限定されない。例えば、磁場源として永久磁石を用いることができる。
【0024】
・凹部形成工程
半導体基板Wをシリコンとし、エッチングガスGeをSF6、パッシベーションガスGpをC4F8とした場合を例に説明する。
チャンバ3内を、予めポンプPによって10-3Pa以下の高真空状態とする。
半導体基板Wを、搬送ロボット(図示せず)によってステージ2上へ載置する。半導体基板Wは、天面上に金属膜材料またはレジストにより、パターニングされたマスク層(図示せず)を有する。半導体基板Wとしては、シリコンのみならず、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガリウムヒ素リン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、サファイア、ダイアモンド等があり、適したガス種を使用することでプラズマエッチングが可能な材質からなるものを特に制限することなく使用することができる。また、半導体基板Wの大きさは特に制限されないが、小径であることが好ましく、例えば、12.5mm(ハーフインチ)とすることができる。半導体基板の直径が12.5mmであると、小さなチャンバであっても、半導体基板と比較して大きくすることができる。例えば、半導体基板の直径が12.5mmの場合、チャンバの内径を半導体基板の10倍としてもその径(直径)は12.5cmに過ぎない。そのため、プラズマとチャンバ内壁との距離を離すことができ、プラズマがチャンバと反応しにくく、副反応を抑制することができる。
【0025】
エッチングガスGeとパッシベーションガスGpは、それぞれ、圧力調整器Re、Rpで圧力を調整した後に、パルスガスバルブVe、Vpに供給する。エッチングガスGe、パッシベーションガスGpは、公知のものを使用することができ、例えば、エッチングガスとしては、SF6、CF4、C3F8、SiF4、NF3等、パッシベーションガスとしては、C4F8、C5F8等を用いることができる。
【0026】
・パッシベーション工程
制御装置から入力信号を供給し、例えば、数msec~5secの範囲でパルスガスバルブVpを開けることにより、チャンバ3内にパッシベーションガスGpを供給する。パルスガスバルブVpへの信号入力の立ち上がりから1msec~1sec程度の遅延時間を設け、第1の高周波電源RF1より第1のインピーダンス整合回路MC1を介して周波数1~100MHz、パルス幅5msec~5sec程度の範囲内で設定された高周波電力を高周波アンテナ11に1回以上投入することにより、プラズマを1回以上発生させる。
パッシベーションガスGpとしてC4F8を用いた場合には、プラズマ発生に伴いフルオロカーボン系ラジカルが発生し、半導体基板W上にCF系重合膜からなる保護膜が堆積する。これによりパッシベーション工程が完了する。そして、プラズマ発生回数を調整することにより、保護膜の堆積量を調整することができる。この際、プラズマ発生条件を変更せずに、プラズマ発生回数のみを調整することが、保護膜の堆積量の調整が容易であるため好ましい。
【0027】
・エッチング工程
チャンバ3内のパッシベーションガスGpが減少した後(例えば、0.1~0.2sec程度経過後)に、制御装置から入力信号を供給し、例えば、数msec~5secの範囲でパルスガスバルブVeを開けることにより、チャンバ3内にエッチングガスGeを供給する。パルスガスバルブVeへの信号入力の立ち上がりから1msec~1sec程度の遅延時間を設け、第1の高周波電源RF1より第1のインピーダンス整合回路MC1を介して周波数1~100MHz、パルス幅5msec~5sec程度の範囲内で設定された高周波電力を高周波アンテナ11に1回以上投入することにより、プラズマを1回以上発生させる。
エッチングガスGeとしてSF6を用いた場合には、プラズマ発生に伴いフッ素ラジカルが発生する。このプラズマ発生の時間内で、タイミングとパルス幅とを制御して、第2の高周波電源RF2より第2のインピーダンス整合回路MC2を介して周波数1~100MHzの高周波電力をステージ2へ投入する。ステージ2への高周波電力の投入により、半導体基板Wに高周波電圧が印加されてセルフバイアスが発生して、プラズマ中のイオンが半導体基板W表面へと垂直に照射され、保護膜(CF系重合膜)のエッチングと、半導体基板Wの保護膜がエッチングされて露出した部分のエッチングが進行する。これによりエッチング工程が完了する。そして、プラズマ発生回数を調整することにより、エッチング量を調整することができる。この際、プラズマ発生条件を変更せずに、プラズマ発生回数のみを調整することが、エッチング量の調整が容易であるため好ましい。
【0028】
本発明の微細立体構造形成方法は、パルスガスバルブVp、Veと圧力調整器Rp、Reを備える配管を有するガス供給システムを用いることにより、処理ガスの切り替えに要する時間を10msec以下に短縮することができる。その結果、サイクルタイムの大幅な短縮が可能であり、微細なスキャロップ構造を維持したまま、エッチングレートを向上することができる。例えば、各工程におけるパルス幅を1sec以下に設定することにより、スキャロップ周期を100nm以下に微細化することができるとともに、高速のエッチングレートを維持することができる。
また、より短時間でインピーダンス整合を行うことにより、プラズマの高密度化または高効率化を実現できる。プラズマの条件を決定するのは入射電力と反射電力の差に相当する正味電力であるため、プラズマを発生させる毎に一定の正味電力を供給することでプロセスの安定化が可能となる。この手法を実現する手法として、電源から出力される周波数を反射係数が最小となるように、かつ入射電力を正味電力が一定となるように調整する制御機構を具備した高周波電源を用いる方法が挙げられる。
さらに、プラズマ発生装置に静磁場を印加することにより、プラズマの高密度化が実現でき、エッチングレートをさらに向上することができる。
【0029】
すなわち、本発明の微細立体構造形成方法、およびプラズマエッチング装置においては、
(1)パルスガスバルブを用いたガス導入法と、
(2)反射係数が最小となるように周波数を自動調整し、かつ正味電力が一定となるように入射電力を自動調整した高周波電源によるプラズマ発生およびステージへのバイアス印加と、
(3)静磁場印加による高密度プラズマ発生と、
を組み合わせることにより、ボッシュプロセスを少しずつ行うことができるため、微細なスキャロップ構造を維持しながらも、高速でのエッチングが可能である。そのため、側面が滑らかな微細立体構造を、短い加工時間で得ることができる。
【0030】
なお、この手法では、インピーダンス整合回路に使用するコンデンサを固定コンデンサとすることができるため、コンデンサの小型化が可能である。そのため、本件出願人の一者が提唱している、直径12.5mm(ハーフインチ)の半導体基板を用いる局所クリーン化した超小型生産システム(ミニマルファブ、特許第5361002号公報、特許第5780531号公報)のように、筐体のサイズが限られたプラズマエッチング装置であっても、200W級の高周波電源を搭載することができる。
【0031】
さらに、本発明で使用するガス供給システムは、パルスガスバルブが閉じているときにガスが流れないため、処理ガス(Gp、Ge)の消費量を減らすことができ、また、温室効果ガスの排出量を減らすこともできる。さらに、このガス供給システムは、排気ポンプに流れるガスの量を減らすことができるため、排気ポンプのメンテナンスの頻度を減らすことができ、また、メンテナンスによる製造中止時間を減らすこともできる。
【0032】
そして、本発明の微細立体構造形成方法は、凹部形成工程において、サイクル毎のプラズマ発生回数を調整することにより、凹部側面と天面とのなす角度を制御、具体的には、凹部側面と天面とのなす角度(
図2、3のα)を、鋭角、垂直、鈍角とすることができる。なお、本明細書において、「凹部側面と天面とのなす角度」とは、凹部の天面との縁の接線に垂直な断面における、凹部側面と天面とのなす角度であって、スキャロップを、例えば、画像処理により2次以上の多項式で近似する等して平滑化した後の、上記断面における凹部側面と天面とのなす角度を意味する。
【0033】
例えば、パッシベーション工程とエッチング工程のプラズマ発生回数を減らしながらサイクルを繰り返すことにより、1サイクルあたりのエッチング量が小さくなるため、
図2に示すような、凹部側面と天面とのなす角度(α)が鋭角である微細立体構造を形成することができる。この際、n回目サイクルにおけるエッチング工程において、n回目以前のサイクルで形成した側壁を更にエッチングすることにより、天面に対する凹部側面の傾斜の角度を緩やかにすることができる(αが小さくなる)ため、同一サイクルにおけるエッチング工程でのプラスマ発生回数を、パッシベーション工程でのプラスマ発生回数よりも多く設定することが好ましい。
逆に、パッシベーション工程とエッチング工程のプラズマ発生回数を増やしながらサイクルを繰り返すことにより、徐々にエッチング量が大きくなるため、
図3に示すような、凹部側面と天面とのなす角度(α)が鈍角である微細立体構造を形成することができる。
なお、1サイクルあたりのエッチング量が大きいほど、スキャロップが大きくなる。そのため、
図2に示すように、側面と天面との角度が鋭角である部分は深くなるほどスキャロップは小さく、
図3に示すように、側面と天面との角度が鈍角である部分は深くなるほどスキャロップは大きくなる。スキャロップの大きさ(周期、深さ等)は、電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)により観察することができる。
【0034】
ここで、サイクルごとのパッシベーション工程におけるプラズマ発生回数を数列Pn(nはサイクル数)、エッチング工程におけるプラズマ発生回数を数列En(nはサイクル数)とすると、Pn、Enを、それぞれ下記式1、2で表される等差数列とすることにより、天面に対して側面がなす角度を略一定に保つことができる。
Pn=p1+β(n-1) 式1
En=e1+γ(n-1) 式2
p1 :第1サイクルにおけるパッシベーション工程のプラズマ発生回数
e1 :第1サイクルにおけるエッチング工程のプラズマ発生回数
β、γ:整数
【0035】
そして、公差であるβ、γの絶対値により、側面の傾きを制御することができる。すなわち、β、γの絶対値が小さいほど、サイクル毎のプラズマ発生回数の差が小さく、サイクル毎のエッチング量の差が小さいため、側面の天面に対する傾きは急となる(αが、90°に近づく)。一方、β、γの絶対値が大きいほど、サイクル毎のプラズマ発生回数の差が大きく、サイクル毎のエッチング量の差が大きいため、側面の天面に対する傾きは穏やかとなる(αが、90°から離れる)。このようにして、本発明は、側面と天面とのなす角度(α)を、鋭角の場合に例えば、89°以下、87°以下、85°以下、80°以下、75°以下とすることができ、αが鈍角な場合、91°以上、93°以上、95°以上、100°以上、105°以上とすることができる。
【0036】
表1に、各サイクルでのプラズマ発生回数を変化させたプロセス例を示す。
【表1】
【0037】
プロセス例1、2は、サイクルを重ねる毎にプラズマ発生回数が減っており、側面と天面とのなす角度が鋭角である微細立体構造を形成することができる。そして、プロセス例1は、プロセス例2と比較して、サイクルごとのプラズマ発生回数の差が小さいため、側面の天面に対する傾きが垂直に近い微細立体構造を形成することができる。
プロセス例3、4は、サイクルを重ねる毎にプラズマ発生回数が徐々に増えており、側面と天面とのなす角度が鈍角である微細立体構造を形成することができる。そして、プロセス例43、プロセス例4と比較して、サイクルごとのプラズマ発生回数の差が小さいため、側面の天面に対する傾きが垂直に近い微細立体構造を形成することができる。
【0038】
さらに、本発明の微細立体構造形成方法は、凹部形成工程において、1サイクルあたりのエッチング量を徐々に小さくすることと徐々に大きくすることを交互に繰り返すことにより、ジグザグ状の側面を有する微細立体構造を形成することもできる。
【0039】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
本発明の一実施態様例である、ガス供給システム4を備えるプラズマエッチング装置100にて、エッチングガスGe(SF
6)導入とプラズマ生成を行った。
圧力調整器Geで5kPaに調整したエッチングガスGeを、パルスガスバルブVeをt=0.098~0.998secの時間帯で開けて供給し、高周波電力をt=0.100~1.100secの時間帯でプラズマ発生装置に入力し、フッ素ラジカルを発生させた。プラズマの発光強度を
図4(a)に示す。
【0040】
「比較例1」
従来のマスフローコントローラを用いてエッチングガスを供給した以外は、実施例1の装置と同様にして、エッチングガスGeの導入とプラズマ生成を行った。
マスフローコントローラを用いて定常的にエッチングガスGeを供給し、3sec以上の時間が経過して安定した後に、高周波電力をt=0.100~1.100secの時間帯でプラズマ発生装置に入力し、フッ素ラジカルを発生させた。プラズマの発光強度を
図4(b)に示す。
【0041】
本発明のガス供給システム4を用いた実施例1は、圧力調整器Reで圧力を調整した後に、パルスガスバルブVeの開閉によりエッチングガスGeの供給を制御することにより、パルスガスバルブVeを開けてから、僅かに2msecの時間遅延を設けて高周波電力を投入しても、即座にプラズマが生成されフッ素ラジカルが生成できた。従来のマスフローコントローラを用いた比較例1では、ガスが導入されるまでの待機時間が3秒程度必要であるが、本発明のガス供給システムを用いることにより、この待機時間を大幅に削減することができた。また、実施例1は、圧力調整器Reにより、パルスガスバルブVeへ供給するエッチングガスGeの圧力を事前に調整することにより、マスフローコントローラを用いた比較例1と同等の発光強度が得られており、高速かつ安定したガス供給とプラズマ生成が可能であることが示された。
【0042】
「実施例2」
実施例1で用いた本発明の一実施態様例であるプラズマエッチング装置100にて、ソレノイドコイル12に電力を供給することで静磁場を発生させ、下記条件で凹部形成工程を実施し、微細立体構造を形成した。
パッシベーション工程は、パッシベーションガスとしてC4F8を使用し、tVp=0~200msec、tRF1=2~402msec、PRF1=100W、PRF2=0Wとした。
エッチング工程は、エッチングガスとしてSF6を使用し、tV2=0~900msec、tRF1=2~1002msec、PRF1=100W、tRF2=2~402msec、PRF2=5Wとした。
tVp :パルスガスバルブVpを開いている時間
tVe :パルスガスバルブVeを開いている時間
tRF1:プラズマ発生装置1に高周波電力を供給する時間
PRF1:プラズマ発生装置1に供給する高周波電力
tRF2:ステージ2に高周波電力を供給する時間
PRF2:ステージ2に供給する高周波電力
パッシベーション工程とエッチング工程の切り替え時間を150msecとした。
【0043】
上記プロセスは、パッシベーション工程、エッチング工程におけるプラズマ発生回数は、どちらも1回である。
パッシベーション工程とエッチング工程とを60サイクル繰り返した時のシリコンウェハの電子顕微鏡(SEM)画像を
図5に示す。
側面と天面とのなす角度が垂直であり、滑らかな側面を有する微細立体構造を得ることができた。総プロセス時間は102secであり、エッチングレートは約2.7μm/minであった。
【0044】
「比較例2」
比較例1で用いたマスフローコントローラを採用したプラズマエッチング装置を用い、パッシベーション工程とエッチング工程の切り替え時間を、実験で使用したマスフローコントローラの安定する3000msecとした以外は、実施例2と同様にしてパッシベーション工程とエッチング工程とを60サイクル繰り返した。
側面と天面とのなす角度が垂直である微細立体構造を得ることができたが、エッチングレートは約0.62μm/minであった。
【0045】
「実施例3」
表1のプロセス例1、2に示すプラズマ発生条件とした以外は、上記実施例2と同様の条件で凹部形成工程を実施し、微細立体構造を形成した。
パッシベーション工程とエッチング工程とを60サイクル繰り返した時のシリコンウェハの電子顕微鏡(SEM)画像を
図6に示す。
パッシベーション工程とエッチング工程におけるプラズマ発生回数を減らしながらサイクルを繰り返すことにより、凹部側面と天面とのなす角度が鋭角である微細立体構造を形成することができた。また、サイクルごとのプラズマ発生回数の差を調整することにより、側面の傾きを調整できることが確認できた。
【0046】
「実施例4」
表1のプロセス例3、4に示すプラズマ発生条件とした以外は、上記実施例2と同様の条件で凹部形成工程を実施し、微細立体構造を形成した。
パッシベーション工程とエッチング工程とを60サイクル繰り返した時のシリコンウェハの電子顕微鏡(SEM)画像を
図7に示す。
パッシベーション工程とエッチング工程におけるプラズマ発生回数を増やしながらサイクルを繰り返すことにより、凹部側面と天面とのなす角度が鈍角である微細立体構造を形成することができた。また、サイクルごとのプラズマ発生回数の差を調整することにより、側面の傾きを調整できることが確認できた。
【符号の説明】
【0047】
100 プラズマエッチング装置
1 プラズマ発生装置
11 高周波アンテナ
12 ソレノイドコイル
MC1 第1のインピーダンス整合回路
RF1 第1の高周波電源
2 ステージ
MC2 第2のインピーダンス整合回路
RF2 第2の高周波電源
3 チャンバ
4 ガス供給システム
Rp 圧力調整器(パッシベーションガス用)
Re 圧力調整器(エッチングガス用)
Vp パルスガスバルブ(パッシベーションガス用)
Ve パルスガスバルブ(エッチングガス用)
Gp パッシベーションガス
Ge エッチングガス
W 半導体基板
P ポンプ