(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022144697
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】シールド外装および該シールド外装に備えられたワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20220926BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220926BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H05K9/00 L
H01B7/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021045822
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】井上 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 正則
(72)【発明者】
【氏名】三吉 隆宜
(72)【発明者】
【氏名】榊 直哉
(72)【発明者】
【氏名】石橋 慎一
【テーマコード(参考)】
5E321
5G309
5G357
【Fターム(参考)】
5E321BB41
5E321BB44
5E321CC03
5E321CC25
5E321GG09
5G309AA09
5G357DA05
5G357DA06
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD02
5G357DD05
5G357DD10
5G357DD11
5G357DG04
(57)【要約】
【課題】電磁シールド機能をもちながら、搬送時に嵩張ることがなく、搬送先において容易に展開して配索すること。
【解決手段】電磁シールド性を有する筒状のシールド外装10と、シールド外装10の内部に挿通される電線2とが備えられたワイヤーハーネス1であり、シールド外装10は、電磁シールド性を奏する第1電磁シールド部14を有するとともに、硬質である複数の硬質筒状体11と、隣り合う硬質筒状体11の間に配置され、両側の硬質筒状体11と対向する端部同士を連結する、可撓性を有する可撓性筒状体21とが備えられ、隣り合う硬質筒状体11の間において、両側の硬質筒状体11のそれぞれと導電可能に連結され、挿通される電線2の外側を囲繞し、電磁シールド性を奏する第2電磁シールド部24が設けられた構成とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁シールド性を有する筒状のシールド外装と、
前記シールド外装の内部に挿通される電線とが備えられたワイヤーハーネスであり、
前記シールド外装は、
前記電磁シールド性を奏する第1電磁シールド部を有するとともに硬質である複数の硬質筒状体と、
隣り合う前記硬質筒状体の間に配置され、両側の前記硬質筒状体と対向する端部同士を連結する、可撓性を有する可撓性筒状体とが備えられ、
隣り合う前記硬質筒状体の間において、両側の前記硬質筒状体のそれぞれと導電可能に連結され、挿通される前記電線の外側を囲繞し、前記電磁シールド性を奏する第2電磁シールド部が設けられた
ワイヤーハーネス。
【請求項2】
前記可撓性筒状体は、前記硬質筒状体の端部に外嵌し、
外嵌する前記可撓性筒状体を前記硬質筒状体に固定する固定体が設けられた
請求項1に記載のワイヤーハーネス。
【請求項3】
前記第2電磁シールド部は、前記可撓性筒状体に設けられた
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス。
【請求項4】
前記第2電磁シールド部を有する前記可撓性筒状体は、金属素線が編み込まれ、筒状に形成された筒状編組体で構成された
請求項3に記載のワイヤーハーネス。
【請求項5】
前記第2電磁シールド部を有する前記可撓性筒状体は、前記電磁シールド性及び可撓性を有する樹脂製のシールドコルゲートチューブで構成された
請求項3に記載のワイヤーハーネス。
【請求項6】
前記可撓性筒状体を外側から覆うカバー体が設けられた
請求項1乃至請求項5のうちいずれかに記載のワイヤーハーネス。
【請求項7】
前記可撓性筒状体を外側から覆うカバー体が設けられ、
前記第2電磁シールド部は、前記カバー体に設けられた
請求項1又は請求項2に記載のワイヤーハーネス。
【請求項8】
前記カバー体は、可撓性を有する可撓性カバー体である
請求項6又は請求項7に記載のワイヤーハーネス。
【請求項9】
前記カバー体は、硬質な硬質カバー体である
請求項6又は請求項7に記載のワイヤーハーネス。
【請求項10】
前記カバー体は、前記可撓性筒状体の周方向の一部を外側から覆う構成である
請求項8又は請求項9に記載のワイヤーハーネス。
【請求項11】
前記可撓性筒状体は、配索経路における直線部分に配置可能に形成された
請求項1乃至10のうちいずれかに記載のワイヤーハーネス。
【請求項12】
前記可撓性筒状体が、前記シールド外装における端部にも設けられた
請求項1乃至11のうちいずれかに記載のワイヤーハーネス。
【請求項13】
電磁シールド性を有する筒状であり、内部に電線が挿通されて請求項1乃至12のうちいずれかに記載のワイヤーハーネスを構成するシールド外装であって、
硬質であるとともに前記第1電磁シールド部が設けられた複数の前記硬質筒状体と、
前記硬質筒状体同士を連結する、可撓性を有する可撓性筒状体とが備えられ、
前記可撓性筒状体に対して両側に配置された前記硬質筒状体の間において、両側の前記硬質筒状体のそれぞれと導電可能に連結され、挿通される前記電線の外側を囲繞する前記第2電磁シールド部が設けられた
シールド外装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部に挿通される電線を外側から囲繞するシールド外装、並びに該シールド外装と電線とが備えられたワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車両においては、高電圧部品へ大電力を送電するために耐電圧の高いワイヤーハーネス(以下、「高圧ハーネス」と称する)が用いられている。
【0003】
高圧ハーネスは、例えば、バッテリーとモータとを繋ぐ場合においては、一般に、長手方向Xの途中部分が車両床下において前後方向に縦断するように配索されるため、長尺、すなわち大型に形成される。さらに、高圧ハーネスの長手方向Xにおける、上述した車両床下の配索部分の両側部分においては、バッテリーやモータに至るまで周辺の車載機器を迂回しながら配索されるため、様々な方向に曲げ変形された形状となることが多い。
このため、高圧ハーネスなどのワイヤーハーネスは、作成現場から配索現場まで搬送時に、嵩張るおそれがある。
【0004】
ところが、高圧ハーネスなどのワイヤーハーネスに備えられた外装部材は、電線の経路規制機能および電線の保護機能を高めるために、特許文献1に開示の外装部材(筒状のシールド手段)に例示されるように、長手方向の略全体が金属パイプなどの硬質部材(メイン電磁シールド部)で形成されることが多い。
【0005】
このため、このようなシールド外装が備えられたワイヤーハーネスは、特許文献1に開示のワイヤーハーネスも含めてコンパクトな形態にすることが困難であるため、効率的な搬送を行うことができないことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、電磁シールド機能をもちながら嵩張ることがなく搬送できるシールド外装およびシールド外装に備えられたワイヤーハーネスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、電磁シールド性を有する筒状のシールド外装と、前記シールド外装の内部に挿通される電線とが備えられたワイヤーハーネスであり、前記シールド外装は、前記電磁シールド性を奏する第1電磁シールド部を有するとともに硬質である複数の硬質筒状体と、隣り合う前記硬質筒状体の間に配置され、両側の前記硬質筒状体と対向する端部同士を連結する、可撓性を有する可撓性筒状体とが備えられ、隣り合う前記硬質筒状体の間において、両側の前記硬質筒状体のそれぞれと導電可能に連結され、挿通される前記電線の外側を囲繞し、前記電磁シールド性を奏する第2電磁シールド部が設けられたことを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、ワイヤーハーネスは、前記シールド外装の長手方向において隣り合う前記硬質筒状体の間に設けられた可撓性筒状体において曲げ変形させることで全体をコンパクトに折り畳むことができる。
【0010】
また、隣り合う前記硬質筒状体の間(シールド外装の長手方向における可撓性筒状体の配置箇所に相当する箇所)において設けられた第2電磁シールド部と、硬質筒状体に設けられた第1電磁シールド部とが導電可能に連結されるため、前記シールド外装は、隣り合う前記硬質筒状体と、これら硬質筒状体の間とに亘って電磁シールド性を確保することができる。
従って、前記構成によれば、電磁シールド機能をもちながら、搬送時に嵩張ることがなく搬送することができる。
【0011】
なお、電線は、1本或いは複数本でもよく、それ自体が電磁シールド性を有していなくてもよい。また、2本の電線が備えられた場合は、互いに撚り合されて形成されるツイストペア電線を採用してもよい。
【0012】
ここで、硬質筒状体は、可撓性筒状体よりも硬質に形成され、配索経路に沿って配索された状態において、内部に挿通された電線を経路規制可能な剛性(形状保持性)を有している。
一方、可撓性筒状体は、硬質筒状体よりも可撓性を有して形成され、曲げ変形可能な剛性を有している。
【0013】
なお、本明細書において、「搬送」とは、異なる施設や現場においてワイヤーハーネスを輸送させる場合に限定せず、同一施設内、同一現場内においてワイヤーハーネスを移動させる場合も含むものとする。
【0014】
この発明の態様として、前記可撓性筒状体は、前記硬質筒状体の端部に外嵌し、外嵌する前記可撓性筒状体を前記硬質筒状体に固定する固定体が設けられた構成としてもよい。
【0015】
前記構成によれば、前記可撓性筒状体の端部を、前記硬質筒状体の端部に強固に固定することができる。従って、可撓性筒状体と硬質筒状体とは、搬送時や配索時に意に反して分離することなく連結した状態に保つことができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記第2電磁シールド部は、前記可撓性筒状体に設けられた構成としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、前記第2電磁シールド部を前記可撓性筒状体に設けたため、隣り合う前記硬質筒状体の間において、前記可撓性筒状体以外に前記第2電磁シールド部を構成する別部材を設けることなく、隣り合う前記硬質筒状体と、これらに対して導電可能に連結される可撓性筒状体とに亘って電磁シールド効果を得ることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記第2電磁シールド部を有する前記可撓性筒状体は、金属素線が編み込まれ、筒状に形成された筒状編組体で構成されてもよい。
【0019】
前記構成によれば、優れた導電性と可撓性とを兼ね備えた前記可撓性筒状体を構成することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記第2電磁シールド部を有する前記可撓性筒状体は、電磁シールド性及び可撓性を有する樹脂製のシールドコルゲートチューブで構成されてもよい。
【0021】
前記構成によれば、導電性と可撓性に加え、耐久性を有する前記可撓性筒状体を構成することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記可撓性筒状体を外側から覆うカバー体が設けられた構成としてもよい。
【0023】
前記構成によれば、カバー体によって前記可撓性筒状体を保護することができ、ひいては、該可撓性筒状体の内部に挿通された電線の保護機能を高めることができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記可撓性筒状体を外側から覆うカバー体が設けられ、前記第2電磁シールド部は、前記カバー体に設けられた構成としてもよい。
【0025】
前記構成によれば、カバー体によって前記可撓性筒状体を保護することができ、ひいては、該可撓性筒状体の内部に挿通された電線の保護機能を高めることができる。
【0026】
さらに、前記構成によれば、前記可撓性筒状体に前記第2電磁シールド部が設けられなくても、前記カバー体に設けられた前記第2電磁シールド部によって、隣り合う前記硬質筒状体の間における電磁シールド性を確保することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記カバー体は、可撓性を有する可撓性カバー体としてもよい。
【0028】
前記構成によれば、前記シールド外装の隣り合う前記硬質筒状体の間における可撓性を維持しながら可撓性カバー体によって前記可撓性筒状体を保護することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記カバー体は、硬質な硬質カバー体としてもよい。
【0030】
前記構成によれば、ワイヤーハーネスを配索経路に沿って配索した状態において、硬質カバー体によって、隣り合う前記硬質筒状体の間における電線の経路規制機能を確保するとともに、前記可撓性筒状体を保護することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記カバー体は、前記可撓性筒状体の周方向の一部を外側から覆う構成としてもよい。
前記構成によれば、前記可撓性筒状体の周方向における、保護機能が必要な箇所を、前記カバー体によって効果的に保護することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記可撓性筒状体は、配索経路における直線部分に配置可能に形成された構成としてもよい。
【0033】
前記構成によれば、前記直線部分に配置される可撓性筒状体を曲げ変形することでシールド外装をコンパクトな形態とし、効率よく搬送することができる。
【0034】
さらに、上述したように、前記直線部分が曲げ変形可能となるため、ワイヤーハーネスを車体における配索経路に沿って配索する際に、該ワイヤーハーネスにおける、前記可撓性筒状体を備えた直線部分およびその周辺部の取り回しの自由度を高めることができる。
【0035】
従って、ワイヤーハーネスの配索時にワイヤーハーネスと、配索経路周辺に有する車体部品との干渉を回避しながら容易に配索することができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記可撓性筒状体が、前記シールド外装における端部にも設けられた構成としてもよい。
【0037】
前記構成によれば、電線の端部を、車体における、バッテリーとモータとの夫々の電線接続箇所に接続する際に、前記シールド外装の端部から電線接続箇所まで延びる電線を前記可撓性筒状体により覆った状態で保護することができる。
【0038】
さらに、車体振動等によって前記シールド外装が振動した場合においても、その振動が前記シールド外装から電線接続箇所へ伝わることを前記可撓性筒状体によって吸収することができ、前記シールド外装の振動の影響が電線接続箇所に及ぶことを抑制できる。
【0039】
またこの発明は、電磁シールド性を有する筒状であり、内部に電線が挿通されて上述したワイヤーハーネスを構成するシールド外装であって、硬質であるとともに第1電磁シールド部が設けられた複数の硬質筒状体と、前記硬質筒状体同士を連結する、可撓性を有する可撓性筒状体とが備えられ、前記可撓性筒状体に対して両側に配置された前記硬質筒状体の間において、両側の前記硬質筒状体のそれぞれと導電可能に連結され、挿通される前記電線の外側を囲繞する第2電磁シールド部が設けられたことを特徴とする。
【0040】
前記構成によれば、長手方向において隣り合う前記硬質筒状体の間に設けられた可撓性筒状体において曲げ変形させることで全体をコンパクトに折り畳むことができる。
【0041】
また、隣り合う前記硬質筒状体の間(長手方向における可撓性筒状体の配置箇所に相当する箇所)において設けられた第2電磁シールド部と、硬質筒状体に設けられた第1電磁シールド部とが導電可能に連結されるため、隣り合う前記硬質筒状体と、これら硬質筒状体の間とに亘って電磁シールド性を確保することができる。
従って、前記構成によれば、電磁シールド機能をもちながら、搬送時に嵩張ることがなく、搬送先において容易に展開して配索することができる。
【発明の効果】
【0042】
前記構成によれば、電磁シールド機能をもちながら、搬送時に嵩張ることがなく、搬送先において容易に展開して配索することができるシールド外装およびシールド外装に備えられたワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本実施形態のワイヤーハーネスの要部を示す側面図。
【
図2】本実施形態のワイヤーハーネスの要部を示す斜視図。
【
図3】
図2においてカバー体を分解して示した分解斜視図。
【
図4】本実施形態のワイヤーハーネスの可撓性筒状体およびその周辺部を一部断面で示した側面図。
【
図5】(a)は
図4中のA-A線断面図、(b)は変形例4の構成を
図5(a)に対応させて示した図。
【
図6】本実施形態のワイヤーハーネスの
図2とは異なる要部を示す斜視図。
【
図7】本実施形態のワイヤーハーネスの
図6に相当する部位を折り畳んだ状態を示す斜視図。
【
図8】変形例1のワイヤーハーネスの要部を
図4に対応して示した図。
【
図9】変形例2のワイヤーハーネスの要部を
図4に対応して示した図。
【
図10】変形例3のワイヤーハーネスの要部を
図4に対応して示した図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1、
図2に示すように、本実施形態のワイヤーハーネス1は、電磁シールド性を有する筒状のシールド外装10と、該シールド外装10の内部に挿通される一又は複数(当例では2本)の電線2とが備えられている。
本実施形態のワイヤーハーネス1は、図示省略するが、電気自動車やハイブリッド車におけるバッテリーとモータとを繋ぐ高電圧用のものであり、長手方向の途中部分が例えば車両の床下等に配索される。
なお、ワイヤーハーネス1は、図示省略するが、車両の床下においては前後方向に縦断するように略直線状に配索される。また、本実施形態においてワイヤーハーネス1はバッテリーとモータとに繋がれているが、これに限定されない。さらに、以下の説明において、ワイヤーハーネス1の配索経路Rにおける、モータ側を一方側Xa(一端側Xa)、バッテリー側を他方側Xb(他端側Xb)に設定する。
【0045】
ワイヤーハーネス1の配索経路Rは、車体における配策箇所に応じて様々な長さを有する複数の直線部分Rsと、様々な曲げ形状(曲げ角度、曲げ半径)を有する複数の曲げ部分Rtとを有している。
【0046】
2本(一対の)の電線2は、互いの間隔が長手方向に沿って略一定になるように、すなわち略並列(平行)に配置されている。
図1、
図2に示すように、これら2本の電線2は、シールド外装10によって一括して包囲されている。本実施形態において2本の電線2は構造および大きさが同じであるため、一方の電線2に基づいて説明する。
【0047】
電線2は、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線であって、
図5(a)に示すように、導電性を有する複数の芯線を束ねて構成された導体部121と、該導体部121の外周全体を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部122とで構成されている。
【0048】
本実施形態の電線2は、該電線2自体に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線である。但し、電線2は、例えば、導電性を有する編組部材で覆う等して電磁シールド構造が備えられたシールド電線であってもよい。
【0049】
電線2は、
図1に示すように、長手方向(軸方向)の両側の端部2a,2b付近がシールド外装10の端部10a,10bから延出されている。そして、図示省略するが、電線2の長手方向の一方の端部2aに備えられた端子金具は、モータ側に設けられたコネクタ等における所定の端子取付け部に接続されている。一方、電線2の長手方向の他方の端部2bに備えられた端子金具は、バッテリー側に設けられたコネクタ等における所定の端子取付け部に接続されている。
【0050】
シールド外装10は、モータとバッテリーとの間における、ワイヤーハーネス1の配索経路Rの略全長に亘って電線2を囲繞している。以下の説明において、シールド外装10の長手方向をX、径方向をY、周方向をZとする。
【0051】
図3~
図5(a)に示すように、シールド外装10は、電線2を保護可能に硬質に形成された硬質筒状体11と、可撓性を有して形成された可撓性筒状体21(
図3、
図4、
図5(a)参照)と、可撓性筒状体21を外側から覆うカバー体31とが複数ずつ備えられている。
【0052】
図1に示すように、硬質筒状体11と可撓性筒状体21とは、シールド外装10の長手方向Xに沿って直列かつ交互に配設されている。
図4に示すように、硬質筒状体11は、内部に電線2(当例では2本の電線2)を挿通できる程度の内径を有して円筒状に形成され、導電性を有する円筒状の導電性本体部12と、導電性本体部12の全周に亘って外側から覆う絶縁性外層部13との2層構造となるように一体に形成されている。
【0053】
硬質筒状体11は、ワイヤーハーネス1の配索経路Rに沿って配置された状態において、電線2を飛び石等から保護するとともに電線2を配索経路Rに沿って保持可能(曲げ変形不能に経路規制可能)な剛性を有している。
【0054】
上述した導電性本体部12は、円筒状の硬質筒状体11の全長および全周に亘ってアルミニウムにより形成されたアルミパイプである。これにより、硬質筒状体11は、電磁シールド性を奏する第1電磁シールド部14を有している。
【0055】
絶縁性外層部13は、導電性本体部12より径方向Yの外側において、硬質筒状体11における外層を成すように絶縁材料(樹脂部材)により形成された樹脂層である。
【0056】
硬質筒状体11は、長手方向Xの両端部に導電性本体部12が露出する露出導体端部12a,12bが設けられており、これら露出導体端部12a,12bの間を絶縁性外層部13で被覆されている。
【0057】
すなわち、
図4に示すように、硬質筒状体11は、長手方向Xの両端部において導電性本体部12が絶縁性外層部13に対して全周に亘って露出している。このように、導電性本体部12が絶縁性外層部13に対して露出する端部を、露出導体端部12a,12bに設定する。
【0058】
なお、本実施形態において、導電性本体部12はアルミニウム製であるが、導電性を有していれば、アルミニウムに特に限定せず、鉄や銅、ステンレスなど配置箇所に応じた金属種を適宜選択してもよいし、黒鉛など金属以外の導電性材料を備えた構成としてもよい。
【0059】
また、本実施形態における硬質筒状体11は、長手方向X(軸方向)に直交する断面視(以下、「直交断面視」と称する)で正円形状に形成されているが、本発明の硬質筒状体は、これに限らず、例えば、楕円形状、長円形状、或いは、四角形状などの多角形状で形成してもよい。
さらにまた、本発明の硬質筒状体は、絶縁性外層部13は必須ではなく、導電性本体部12と絶縁性外層部13とのうち、少なくとも導電性本体部12が備えられた構成であればよい。
【0060】
また、
図1に示すように、複数の硬質筒状体11のうち、所定の硬質筒状体11には、車体における所定の配索経路Rに沿って配索されたワイヤーハーネス1を車体へ取り付けるための取り付け部材としてのクランプ4が装着されている。
【0061】
クランプ4は、硬質筒状体11に保持される保持部5と、車体における所定の取付け箇所Aに取付けられる車体取付け部としてのアンカー部6とを有する公知の構造で構成される。
保持部5は、硬質筒状体11に巻き付けられるバンド部5aと、硬質筒状体11に巻き付けたバンド部5aをロックするバックル部5bとを備えている。
【0062】
アンカー部6は、支持板部6bと弾性係止片6aとが備えられ、これらによってアンカー穴Ahの縁部Aaを両側から挟み込むことで、アンカー穴Ahの縁部Aaに対して取り付けられる。
【0063】
このように、クランプ4を、硬質筒状体11に装着した状態で車体に取り付けることにより、硬質筒状体11によって電線2を配索経路Rに沿って規制した状態でワイヤーハーネス1を車体に取り付けることができる点で好ましい。
【0064】
なお、ワイヤーハーネス1を車体へ取り付けるためのクランプ4などの取り付け部材は、硬質筒状体11に対して装着可能に別体で設けるに限らず、一体に形成された構成を採用してもよい。また、クランプ4などの取り付け部材は、硬質筒状体11に限らず、後述する硬質なカバー体31に備えてもよい。
【0065】
また、
図1~
図3に示すように、本実施形態の硬質筒状体11は、ワイヤーハーネス1の配索経路Rにおける、所定の直線部分Rsに対応して形成された直線形状に形成されている。
【0066】
ところで、ワイヤーハーネス1の配索経路Rにおける、複数の直線部分Rsの中には、上述したように床下を前後方向に縦断するように直線状に配索される部分(床下直線部分Rs)など比較的長い直線部分Rsを有している。このような比較的長い直線部分Rsに配置されるシールド外装10は、比較的短い直線部分Rsのうち、何れかの長さと同じ又はより短い所定の長さごとに複数に亘って極力均等に区分けされている。
【0067】
そして、複数の硬質筒状体11は、シールド外装10の長手方向において略均等に区分けされた区間に対応する長さを有して形成された場合においては、複数の硬質筒状体11間における部品の共通化を図ることができる。
但し、複数の硬質筒状体11は、夫々の長さを極力揃えて形成されることが好ましいが、夫々が異なる長さで形成される構成としてもよい。
【0068】
図4、
図5に示すように、可撓性筒状体21は、内部に電線2(当例では2本の電線2)を挿通できる程度の内径を有して直線状かつ筒状に形成されている。
【0069】
本実施形態における可撓性筒状体21は、全長および全周に亘って、可撓性および導電性を有する筒状編組体で形成されている。これにより、可撓性筒状体21は、電磁シールド性を奏する第2電磁シールド部24を有している。
【0070】
筒状編組体は、錫メッキが施された銅製の素線21w(
図4参照)、すなわち、錫メッキ銅線21wを編んで形成した、可撓性を有する円筒状の編組体である。
なお、可撓性筒状体21としての筒状編組体は、本実施形態のように錫メッキ銅線21wを編んで形成した編組部材に限らず、メッキを施していないもの、或いは、アルミニウム(すなわち、アルミ素線を編組して形成したアルミ編組体)等他の金属種であってもよい。
【0071】
また、可撓性筒状体21は、
図6に示すような直線状に配置された状態から任意の方向へ任意の角度で曲げ変形可能に形成されている。これにより、ワイヤーハーネス1は、例えば、
図6に示すような直線状に配索された状態から可撓性筒状体21を曲げ返す(略180度曲げ変形させる)ことで
図7に示すように、コンパクトな形態に折り畳むことができる。
【0072】
さらに、
図1~
図3に示すように、可撓性筒状体21は、ワイヤーハーネス1の配索経路Rにおける曲げ部分Rtに対応して曲げ変形可能な可撓性を有している。
但し、可撓性筒状体21は、ワイヤーハーネス1の配索経路Rにおける曲げ部分Rtに配置することに限定せず、直線部分Rsに配置してもよい(同図参照)。その場合、可撓性筒状体21は、配置される直線部分Rsに対応する長さを有して形成されている。
【0073】
また、筒状の可撓性筒状体21は、シールド外装10の長手方向Xにおいて、隣り合う硬質筒状体11a,11bの間において(
図4参照)、
図5(a)に示すように、電線2の外側を全長および全周に亘って囲繞するように配置される。
【0074】
そして、
図4に示すように、シールド外装10は、長手方向Xにおいて隣り合う硬質筒状体11a,11bと、これら硬質筒状体11a,11bの間に介在する可撓性筒状体21との対向する端部(12b,21a),(12a,21b)同士が接続されている。
【0075】
具体的には、
図4に示すように、可撓性筒状体21の一端部21aは、可撓性筒状体21に対して長手方向Xの一方側Xaで隣り合う硬質筒状体11a(以下、「一方側硬質筒状体11a」とも称する)における、該一端部21aと対向する露出導体端部12bに連結されるとともに、可撓性筒状体21の他端部21bは、可撓性筒状体21に対して長手方向Xの他方側Xbで隣り合う硬質筒状体11b(以下、「他方側硬質筒状体11b」とも称する)における、該他端部21bと対向する露出導体端部12aに連結されている。
【0076】
可撓性筒状体21は、両側で隣り合う硬質筒状体11a,11bの夫々に対して同じ連結構造で連結されるため、可撓性筒状体21の一端部21aと、一方側硬質筒状体11aにおける露出導体端部12bとの連結構造についてのみさらに具体的に説明する。
【0077】
一方側硬質筒状体11aの露出導体端部12bを可撓性筒状体21の一端部21aに、該一端部21aに有する開口部22aを通じて挿通する。これにより、可撓性筒状体21の一端部21aは、一方側硬質筒状体11aの露出導体端部12bに外嵌される。
【0078】
さらに、可撓性筒状体21の一端部21aの外側から固定体としての金属製の結束バンド23で結束することで、可撓性筒状体21の一端部21aは、一方側硬質筒状体11aの露出導体端部12bに固定される。
【0079】
ここで、一方側硬質筒状体11aの導電性を有する露出導体端部12bは、絶縁性外層部13から露出しているため、上述したように、可撓性筒状体21の一端部21aに対して全周に亘って結束バンド23によって固定した状態において、露出導体端部12bと一端部21aとが電気的に接続された状態となる。
これにより、可撓性筒状体21と、一方側硬質筒状体11aとは、互いの端部21a,12b同士が導電性を確保した状態で連結される。
【0080】
なお、上述した固定体は、可撓性筒状体21と硬質筒状体11との対向する端部同士の導電性を確保したうえで固定できる手段であれば、本実施形態のように、金属製の結束バンド23に限定せず、例えば、樹脂製の結束バンド、或いは一端部21aに巻き付けるテープ、一対の半割形状の分割体で挟み込むように固定するクランプ、接着剤、溶接、或いはこれらを組み合わせた手段を採用してもよい。
【0081】
上述したように、可撓性筒状体21と硬質筒状体11(導電性本体部12)とは、何れも全長および全周に亘って導電性を有するとともに、可撓性筒状体21は、長手方向Xの両側で隣り合う硬質筒状体11a,11bと導電性を確保した状態で連結されている。このため、シールド外装10は、全長および全周に亘って電磁シールド性を有することで電線2から放射される電磁波および外部からの電磁波を遮蔽する。
【0082】
さらに、
図1に示すように、シールド外装10の長手方向Xの両端部10a,10bに、可撓性筒状体21eとして導電性および可撓性を有する筒状編組体が接続されている。可撓性筒状体21eは、電線2の長手方向における、夫々に対応する端部2a,2b付近を囲繞している。
【0083】
また、図示省略するが、シールド外装10は、ノイズ対策として長手方向Xの少なくとも何れか一方の端部(10a,10b)が車体側の接地回路に接地(アース接続)されている。ここでは、シールド外装10の長手方向Xの両方の端部が接地回路に接地されることが好ましい。
但し、シールド外装10は、上述したように、長手方向Xの何れか一端部(10a,10b)が接地回路に接地されていることが好ましいが、接地されていない構成であってもよい。また、シールド外装10の両端部10a,10b以外の部位が接地回路に接地されていてもよい。
【0084】
図1~
図5(a)に示すように、カバー体31は、可撓性筒状体21に対して外側から装着される。
但し、
図1に示すように、シールド外装10の長手方向Xの両端部10a,10bに備えられた可撓性筒状体21eについては、カバー体31で覆われずに両端部10a,10bの可撓性が保たれた状態としている。
【0085】
本実施形態のカバー体31は、可撓性筒状体21および該可撓性筒状体21の内部に挿通された電線2を配索経路Rに沿って配索された状態に規制可能な剛性を全周および全長に亘って有する硬質カバー体として形成されている。さらに、本実施形態のカバー体31は、全体が絶縁性を有する(すなわち、導電性を有しない)樹脂材料で形成されている。
【0086】
本実施形態のカバー体31は、ワイヤーハーネス1の配索経路Rにおける、所定の直線部分Rsに対応して形成された直線形状のカバー体31sと、所定の曲げ部分Rtに対応して形成された曲げ形状のカバー体31tとが備えられている。
【0087】
すなわち、カバー体31は、本実施形態の可撓性筒状体21がワイヤーハーネス1の配索経路Rにおける曲げ部分Rtと直線部分Rsとの双方に配置されることに対応して直線形状のカバー体31sと曲げ形状のカバー体31tとの双方が備えられている。
【0088】
図2、
図5(a)に示すように、カバー体31は、前記直交断面視で略正円形状、すなわち、円筒状となるように形成されるとともに、
図3、
図5(a)に示すように、複数(当例では2つ)の分割体32(32A,32B)を有して形成されている。
【0089】
一対の分割体32は、略正円形状のカバー体31が前記直交断面視で略2等分された形状、すなわち、軸方向(長手方向X)の全長に亘って、前記直交断面視で略半円弧形状となるように形成されている。本実施形態において、直線形状のカバー体31sにおける一対の分割体32は、互いに同一形状に形成されている。
【0090】
図4、
図5(a)に示すように、カバー体31は、可撓性筒状体21を全長および全周に亘って囲繞可能な大きさで形成されている。
【0091】
具体的には、
図4に示すように、カバー体31は、隣り合う硬質筒状体11a,11bの夫々に備えられた絶縁性外層部13の対向する端部13a,13b間の間隔よりも若干長尺に形成されている。さらに、カバー体31は、硬質筒状体11の外面15に内面33が周方向Zに沿って当接するように、硬質筒状体11よりも若干径大に形成されている。すなわち、カバー体31は、内径が硬質筒状体11の外径に相当する大きさで形成されている。
【0092】
さらに、
図5(a)に示すように、カバー体31は、一対の分割体32が互いに分離しないように一体に保持する手段として、一対の分割体32が互いに突き合わされる2つの端部34(第1突合せ端部34Aおよび第2突合せ端部34B)の夫々において、互いに係合する係合構造が形成されている。
【0093】
具体的には、第1突合せ端部34Aにおいては、一方の分割体32A側の端部に形成された係合突片35aと、他方の分割体32B側の端部において係合突片35aに係合可能に形成された係合凹部35bとで係合構造が構成されている。
【0094】
また、第2突合せ端部34Bにおいては、他方の分割体32B側の端部に形成された係合突片35aと、一方の分割体32A側の端部において係合突片35aに係合可能に形成された係合凹部35bとで係合構造が構成されている。
【0095】
なお、第1突合せ端部34Aおよび第2突合せ端部34Bの夫々に設けられた係合構造(35a,35b)は、
図5(a)のみに図示しており、その他の図面においては省略している。
【0096】
そして、
図3に示すように、カバー体31を可撓性筒状体21の外側に装着する際には、一対の分割体32が、前記直交断面視において可撓性筒状体21に対して両側から挟み込むように配置される。さらに、
図5(a)に示すように、第1突合せ端部34Aと第2突合せ端部34Bとの夫々において係合突片35aと係合凹部35bとが互いに係合されることで、一対の分割体32は一体に保持された状態となる。
【0097】
さらに、この状態において、カバー体31は、
図4に示すように、隣り合う硬質筒状体11a,11bの夫々に備えられた絶縁性外層部13の対向する端部13a,13b間に跨った状態となり、長手方向Xの両端部31a,31bの内面33が、夫々に対応する硬質筒状体11の絶縁性外層部13の対向する端部13a,13bの外面15に周方向Zに沿って当接した状態となる。
【0098】
なお、カバー体31を可撓性筒状体21に対して外側から装着時において、一対の分割体32が互いに分離しないように保持する手段は、上述した係合構造に限定せず、例えば、カバー体31を外側から周方向Zに巻き付けた状態で結束する結束バンド、巻き付けるテープ、カバー体31を外側から挟み込むクランプ、一対の分割体32における第1突合せ端部34Aと第2突合せ端部34Bとの夫々において突合せた端部同士を接着する接着剤或いは溶着する溶接、又はこれらを組み合わせた構成を採用することができる。また、本発明のカバー体は、上述したカバー体31のように、複数の分割体32(32A,32B)を有する分割構造に限定せず、周方向に分割しない筒状に一体に構成し、電線2を内部に挿通することにより外側から囲繞する構成としてもよい。
【0099】
上述したカバー体31によって、可撓性筒状体21および、硬質筒状体11における可撓性筒状体21との接続部分(露出導体端部12a,12b)を径方向Yの外側から全周および全長に亘って覆うことができる。
【0100】
さらに、シールド外装10の表面は、硬質筒状体11の絶縁性外層部13と絶縁部材で形成されたカバー体31とが長手方向Xに沿って交互にあらわれるため(
図1参照)、シールド外装10の全周および全長に亘って、外面(表面)全体を絶縁材料で覆うことができる。
【0101】
従って、ワイヤーハーネス1は、周辺の電気機器や電線等の導電性部材と電気的に接触しても、これら導電性部材に対して悪影響を及ぼすことがない構成とすることができる。
【0102】
上述した実施形態のワイヤーハーネス1は、
図1~
図5(a)に示すように、電磁シールド性を有する筒状のシールド外装10と、シールド外装10の内部に挿通される電線2とが備えられている。
図4に示すように、シールド外装10は、前記電磁シールド性を奏する第1電磁シールド部14を有するとともに硬質である複数の硬質筒状体11と、隣り合う硬質筒状体11の間に配置され、両側の硬質筒状体11と対向する端部(12b,21a)(12a,21b)同士を連結する、可撓性を有する可撓性筒状体21とが備えられ、
図4、
図5(a)に示すように、隣り合う硬質筒状体11の間において、可撓性筒状体21は、両側の硬質筒状体11のそれぞれと導電可能に連結され、挿通される電線2の外側を囲繞し、電磁シールド性を奏する第2電磁シールド部24が設けられている。
【0103】
前記構成によれば、電磁シールド機能をもちながら、搬送時に嵩張ることがなく、搬送先において容易に展開して配索することができる。
【0104】
詳述すると、一般に、高圧ハーネスは、例えば、バッテリーとモータとを繋ぐ場合においては、長手方向Xの途中部分が車両床下において前後方向に縦断するように配索されるため、長尺状に形成される。さらに、上述した高圧ハーネスは、例えば、バッテリーやモータと、より低い車両床下の位置との間において周辺の車載機器を迂回しながら配索されるため様々な方向に曲げ変形された(つまり、2次元形状或いは3次元形状に曲げ変形された)長尺物として形成される。
【0105】
また、ワイヤーハーネス1は、略全長に亘って電線2を外側から覆う外装部材が備えられるが、特に、高圧ハーネスにおいては、外装部材として、それ自体が電磁シールド機能を有するとともに、電線2の経路規制機能、および飛び石などの外力に対する電線2の保護機能を高めるために全体が硬質部材で形成された、例えば、金属等の硬質パイプが用いられることがある。
【0106】
このように、高圧ハーネスをはじめとして、電磁シールド機能を有する外装部材が備えられたワイヤーハーネス1は、3次元的な長尺物として形成されるにも関わらず、外装部材が金属パイプである等硬質であることに起因してコンパクトに曲げ変形させることができず、搬送の際に嵩張るため、効率的な搬送等移動させることが困難であった。
【0107】
これに対して、前記構成によれば、シールド外装10の長手方向Xにおいて隣り合う硬質筒状体11の間に設けられた可撓性筒状体21において曲げ変形させることで
図7に示すように、全体をコンパクトに折り畳むことができる。
このため、ワイヤーハーネス1は、コンパクトに折り畳んで、ハーネス収容箱(図示省略)等に収容された状態でワイヤーハーネス配索現場まで容易に搬送することができる。
【0108】
さらに、隣り合う硬質筒状体11の間(長手方向Xにおける可撓性筒状体21の配置箇所に相当する箇所)において設けられた可撓性筒状体21(第2電磁シールド部24)と、硬質筒状体11に設けられた導電性本体部12(第1電磁シールド部14)とが導電可能に連結されるため、シールド外装10は、隣り合う硬質筒状体11a,11bと、これら硬質筒状体11a,11bの間とに亘って電磁シールド性を確保することができる。
【0109】
さらにまた、ワイヤーハーネス1は、搬送の際に、シールド外装10を、複数の硬質筒状体11および可撓性筒状体21ごとに分解せずとも、隣り合う硬質筒状体11が可撓性筒状体21を介して互いに連結された状態でコンパクトな形態とすることができる。このため、ワイヤーハーネス1は、搬送先において、配索経路Rに応じたレイアウトになるように複数の硬質筒状体11および可撓性筒状体21を連結し直す手間を要することなく、曲げ変形された状態から容易に展開して配索することができる。
【0110】
従って、前記構成によれば、電磁シールド機能をもちながら、搬送時に嵩張ることがなく、搬送先において容易に展開して配索することができる。
【0111】
その他にも、シールド外装10は、搬送中、或いは搬送後に関わらず、単一の外装部材として扱えるため、可撓性筒状体21と硬質筒状体11とを複数備えた構成においても、これら構成部品を容易に管理することができる。
【0112】
また、
図4に示すように、本実施形態の可撓性筒状体21は、硬質筒状体11の露出導体端部12a,12b(端部)に外嵌し、その状態で可撓性筒状体21を硬質筒状体11の露出導体端部12a,12bに固定する固定体としての結束バンド23が設けられている。
【0113】
前記構成によれば、可撓性筒状体21は、結束バンド23によって硬質筒状体11の露出導体端部12a,12bに強固に固定することができる。従って、シールド外装10は、可撓性筒状体21と硬質筒状体11とが搬送時や配索時に意に反して分離することなく互いに連結した状態に保つことができる。
【0114】
また、
図4、
図5(a)に示すように、可撓性筒状体21が第2電磁シールド部24として機能するため、隣り合う硬質筒状体11の間において、可撓性筒状体21以外に第2電磁シールド部24を構成する別部材を設けずとも隣り合う硬質筒状体11a,11bの間における電磁シールド性を確保することができる。
【0115】
また、
図4に示すように、第2電磁シールド部24を有する可撓性筒状体21は、金属素線としての銅製の素線21wが編み込まれ、筒状に形成された筒状編組体で構成されている。
【0116】
前記構成によれば、優れた導電性と可撓性とを兼ね備えた可撓性筒状体21を構成することができる。
【0117】
また、
図1~
図5(a)に示すように、シールド外装10には、可撓性筒状体21を外側から覆うカバー体31が設けられている。
【0118】
前記構成によれば、カバー体31によって可撓性筒状体21を保護することができ、ひいては、該可撓性筒状体21の内部に挿通された電線2の保護機能を高めることができる。
【0119】
また、同図に示すように、本実施形態のカバー体31は、硬質な硬質カバー体である。
【0120】
前記構成によれば、ワイヤーハーネス1を配索経路Rに沿って配索した状態において、カバー体31によって、隣り合う硬質筒状体11の間における電線2の経路規制機能を確保するとともに、外力に対して可撓性筒状体21を保護することができる。
【0121】
また、
図1~
図4、
図6に示すように、可撓性筒状体21は、配索経路Rにおける直線部分Rsに配置可能な長さ等を有して形成されている。
【0122】
前記構成によれば、ワイヤーハーネス1の搬送時に、直線部分Rsに配置される可撓性筒状体21を曲げ変形することでワイヤーハーネス1(シールド外装10)をコンパクトな形態とすることができる。
【0123】
さらに、上述したように、ワイヤーハーネス1を車体における配索経路Rに沿って配索時に、直線部分Rsは、可撓性筒状体21において曲げ変形可能となるため、ワイヤーハーネス1の取り回し自由度を高めることができる。
従って、ワイヤーハーネス1を、配索経路R周辺に有する車体部品との干渉を回避しながら容易に配索することができる。
【0124】
その他にも、前記構成によれば、ワイヤーハーネス1の配索経路Rの直線部分Rsに配置される可撓性筒状体21の配置箇所や長さ等に応じて、該可撓性筒状体21に対して両側で配置される硬質筒状体11の長さを任意に設定することが可能となる。
【0125】
このため、硬質筒状体11は、長手方向Xの長さが例えば、ワイヤーハーネス1の配索経路Rにおける直線部分Rsの長さと同じ長さに形成する必要がなく、複数の硬質筒状体11の間で長さを揃えるなどして部品サイズの共通化を図ることができる。
従って、シールド外装10の構成部品の管理が容易になるとともに、製造コストを低減することができる。
【0126】
また、
図1に示すように、可撓性筒状体21eが、シールド外装10における端部10a,10bにも設けられている。
【0127】
前記構成によれば、電線2の端部2a,2bを、車体における、モータなどの電気機器や、バッテリーにおける夫々の電線接続箇所(図示省略)に接続する際に、電線2の長手方向における、電線接続箇所に極力近接する部分まで可撓性筒状体21eにより覆った状態で保護することができる。
【0128】
さらに、車体振動等によってシールド外装10が振動した場合においても、その振動がシールド外装10から電線接続箇所へ伝わることを可撓性筒状体21eによって吸収することができ、シールド外装10の振動の影響が電線接続箇所に及ぶことを抑制できる。
【0129】
この発明は、上述の実施形態の構成に限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
以下、本発明の変形例に係るシールド外装10A,10B,10C,10Dについて説明するが、上述した実施形態のシールド外装10と同一の構造については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0130】
例えば、
図8に示す変形例1のシールド外装10Aのように、第2電磁シールド部24が設けられた可撓性筒状体21Aは、筒状編組体ではなく、電磁シールド性及び可撓性を有するシールドコルゲートチューブで構成されている。変形例1の可撓性筒状体21Aは、樹脂に導電性を有する粉末を含有して成る導電性樹脂材料により形成されている。これにより、変形例1の可撓性筒状体21Aは、上述した可撓性筒状体21と同様に全長および全周に亘って導電性を有している。
【0131】
前記構成によれば、導電性と可撓性に加え、耐久性を有する可撓性筒状体21を構成することができる。
なお、電磁シールド性を有する可撓性筒状体21Aとしてのシールドコルゲートチューブは、変形例1の構成に限らず、例えば、樹脂製のコルゲートチューブの内面に金属箔などの導電性を有する薄肉の部材が備えられた構成としてもよい。
【0132】
また、
図9に示す変形例2のシールド外装10Bのように、可撓性筒状体21Bを外側から覆うカバー体31Bに、第2電磁シールド部24が設けられた構成としてもよい。
【0133】
具体的には、変形例2の可撓性筒状体21Bは、樹脂材料により形成されたコルゲートチューブであり、全体(全長および全周)に亘って絶縁性を有して(すなわち、導電性を有しない)構成としている。
【0134】
一方、変形例2のカバー体31Bは、樹脂材料により所定の厚みを有して硬質に形成された硬質カバーの内周面全体に第2電磁シールド部24としての金属箔37が接着されている。変形例2のカバー体31Bは、可撓性筒状体21Bの外側に装着した状態において、カバー体31Bに備えられた金属箔37の長手方向Xの両端部が、隣り合う硬質筒状体11a,11bの露出導体端部12a,12bに対して径方向の外側から全周に亘って対向する。
【0135】
そして、隣り合う硬質筒状体11a,11bの対向する端部(12a,12b)と、カバー体31Bに備えられた金属箔の長手方向Xの両端部31Ba,31Bbとの間には、導電性を有するリング38を介して電気的に接触され、カバー体31Bは、長手方向Xの両端部31Ba,31Bbにおいて、夫々に対応する側の硬質筒状体11に対して導電可能に連結されている。
【0136】
前記構成によれば、カバー体31Bによって可撓性筒状体21Bを保護することができ、ひいては、該可撓性筒状体21Bの内部に挿通された電線2の保護機能を高めることができる。
【0137】
さらに、前記構成によれば、可撓性筒状体21Bに第2電磁シールド部24が設けられていなくても、カバー体31Bに設けられた第2電磁シールド部24によって、隣り合う硬質筒状体11の間における電磁シールド性を確保することができる。
【0138】
なお、第2電磁シールド部24が設けられたカバー体31Bは、変形例2の構成に限らず、例えば、樹脂に導電性を有する粉末を含有して成る導電性樹脂材料により形成された構成とするなど、電磁シールド性を有する構成であれば、他の構成を採用してもよい。
【0139】
また、
図10に示す変形例3のシールド外装10Cのように、カバー体31Cは、可撓性を有する可撓性カバー体として構成してもよい。
【0140】
具体的には、変形例3のカバー体31Cは、樹脂材料により形成されたコルゲートチューブであり、可撓性筒状体21と同様に全体(全長および全周)に亘って可撓性を有して形成されている。
【0141】
なお、
図10に示す変形例3のシールド外装10Cにおける、可撓性筒状体21は、上述した実施形態の可撓性筒状体21と同様に筒状編組体で形成されている。
【0142】
前記構成によれば、シールド外装10に対して長手方向Xの両側で隣り合う硬質筒状体11の間における可撓性を維持しながらカバー体31Cによって可撓性筒状体21を保護することができる。
【0143】
なお、変形例3の可撓性カバー体31Cは、全体(全長および全周)に亘って絶縁性を有して(すなわち、導電性を有しないで)形成されている。
このように、隣り合う硬質筒状体11の間における、第2電磁シールド部24は、カバー体と可撓性部材とのうち、少なくとも一方に設けられた構成であれば、何れの側に設けられた構成としてもよい。
【0144】
図5(b)に示す変形例4のシールド外装10Dのように、カバー体31Dは、可撓性筒状体21の周方向Zの一部を外側から覆う構成としてもよい。
【0145】
具体的には、変形例4のカバー体31Dは、前記直交断面が、可撓性筒状体21の下部を外側から囲繞するように長手方向Xの全長に亘って円弧状に形成されている。変形例4のカバー体31Dは、全体が樹脂材料により所定の厚みを有して硬質に形成されている。
【0146】
一方、変形例4の可撓性筒状体21は、床下直線部分Rsに配置されている。変形例4のカバー体31Dは、このような可撓性筒状体21を、周方向Zにおける保護が必要となる下側から覆うことで飛び石などから可撓性筒状体21を効果的に保護することができる。
【0147】
しかも、変形例4のカバー体31Dは、可撓性筒状体21の全周ではなく、周方向Zにおける下側のみを覆うことで、カバー体31Dを備えることにより、重量が嵩むことを抑制することができる。
【0148】
また、変形例4のカバー体31Dは、全体が絶縁性を有して形成されているのに対して、可撓性筒状体21は、例えば、筒状編組体などにより全体に亘って導電性を有して形成されることで、第2電磁シールド部24を可撓性筒状体21に設けた構成としている。
このため、可撓性筒状体21は、全周に亘って電磁シールド性を確保した状態で電線2を外側から囲繞することができる。
【0149】
また、本発明は、上述した実施形態および変形例1~4の構成に限定されず、他の構成を採用してもよい。
例えば、本発明のカバー体は、硬質であることに限定せず、上述した変形例3の可撓性カバー体31Cのように、可撓性を有する構成としてもよい。可撓性を有するカバー体は、チューブ状、シート状、袋状、或いはテープ状など、その形態は特に限定せず、また、可撓性を有するカバー体として、例えば、ビニール等の樹脂シートを用いて防水機能をもたせたカバー体を採用してもよい。
【0150】
また、ワイヤーハーネス1は、上述したように、可撓性筒状体21を配索経路Rの曲げ部分Rtに応じて曲げ変形させた状態で配置することで、様々な曲げ部分Rtの曲げ形状に対応して複数の硬質筒状体11を備える必要がなく部品の共通化を図ることができる。また、例えば、車種特有の曲げ形状を有する硬質筒状体を備えることが不要となる。
【0151】
但し、ワイヤーハーネス1は、配索経路Rの曲げ部分Rtに対応する部位に、曲げ形状の硬質筒状体11が備えられた構成としてもよい。すなわち、ワイヤーハーネス1は、直線形状の硬質筒状体11のみならず、曲げ形状の硬質筒状体11を併用してもよい。
【符号の説明】
【0152】
10,10A,10B,10C,10D…シールド外装
1…ワイヤーハーネス
2…電線
11…硬質筒状体
12a,12b…露出導体端部(硬質筒状体の端部)
14…第1電磁シールド部
12b,21a…両側の硬質筒状体と対向する端部同士
12a,21b…両側の硬質筒状体と対向する端部同士
21…可撓性筒状体(可撓性筒状体、筒状編組体)
21A…可撓性筒状体(第2電磁シールド部を有する可撓性筒状体、電磁シールド性及び可撓性を有する樹脂製のシールドコルゲートチューブ)
21B…可撓性筒状体
21w…銅製の素線(金属素線)
23…結束バンド(固定体)
24…第2電磁シールド部
31…カバー体(カバー体、硬質カバー体)
31B…カバー体(カバー体、第2電磁シールド部が設けられたカバー体)
31C…カバー体(カバー体、可撓性カバー体)
31D…カバー体(カバー体、可撓性筒状体の周方向の一部を外側から覆うカバー体)
R…配索経路
Rs…配索経路における直線状に配索される直線部分
21e…可撓性筒状体(シールド外装における端部に設けられた可撓性筒状体)