(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145296
(43)【公開日】2022-10-03
(54)【発明の名称】成形体、積層成形体、および、包装材
(51)【国際特許分類】
C08F 290/14 20060101AFI20220926BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220926BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20220926BHJP
C08G 18/67 20060101ALI20220926BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08F290/14
C08L75/04
C08L33/10
C08G18/67 050
C08G18/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021046646
(22)【出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】尾野本 広志
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4J002BG052
4J002CK021
4J002GG01
4J002GG02
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA22
4J034CB03
4J034CB07
4J034DA01
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4J034DB07
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4J034GA36
4J034HA01
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4J034RA06
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BD481
4J127BE281
4J127BE28Y
4J127BF141
4J127BF14X
4J127BF471
4J127BF47X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BG161
4J127BG16X
4J127CB141
4J127DA24
4J127FA01
(57)【要約】
【課題】ポリウレタン系で加水分解性を有し、かつ、十分な強度を有する材料からなる成形体を提供する。
【解決手段】ポリウレタンと、ラジカル重合性単量体の重合体と、の複合体からなる成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンと、ラジカル重合性単量体の重合体と、の複合体からなる成形体。
【請求項2】
前記ポリウレタンが、脂肪族または脂環族ポリイソシアネート(a1)、脂肪族ポリオール(a2)、および、イオン性基含有ポリオール(a4)からなるポリウレタン(A)であって、前記ポリウレタン(A)はラジカル重合性官能基を有することを特徴とする請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
複数の層からなる積層成形体であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が請求項1または2に記載の成形体である、積層成形体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の成形体、あるいは、請求項3に記載の積層成形体からなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体、積層成形体、および、包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは様々な用途で使用されているが、廃棄処理の際の環境への負荷が大きいことから、近年、環境への影響を考慮して、さまざまな生分解性樹脂が検討されている。例えば、生分解性が良好な樹脂として、ポリ乳酸(PLA)や、ポリブチレンサクシネート(PBS)が知られている。しかしながら、これらの樹脂は柔軟性や強度が十分ではない場合がある。また、ポリウレタンは、良好な柔軟性と加水分解性を有しており、環境中に放出されても残存しづらいという利点を有するが、強度が不足しているという問題があった。
そこで、特許文献1には、ポリウレタンとポリ乳酸との共重合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等の検討によると、特許文献1に記載の生分解性樹脂の場合、得られる成形体の強度が必ずしも十分ではなかった。本発明の課題は、上記実情を鑑み、ポリウレタン系で加水分解性を有し、十分な強度を有する材料からなる成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリウレタン樹脂とラジカル重合体単量体の重合体とを複合体とすることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0006】
第1の本発明は、ポリウレタンと、ラジカル重合性単量体の重合体と、の複合体からなる成形体である。
【0007】
第1の本発明において、前記ポリウレタンが、脂肪族または脂環族ポリイソシアネート(a1)、脂肪族ポリオール(a2)、および、イオン性基含有ポリオール(a4)からなるポリウレタン(A)であって、前記ポリウレタン(A)はラジカル重合性官能基を有することが好ましい。
【0008】
第2の本発明は、複数の層からなる積層成形体であって、前記複数の層のうちの少なくとも1層が第1の本発明の成形体である、積層成形体である。
【0009】
第3の本発明は、第1の本発明の成形体、あるいは、第2の本発明の積層成形体からなる包装材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の成形体は、ポリウレタン系材料で構成されており加水分解性を有し、かつ、十分な強度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、断り書きを設けない限り「△~△△」の表記は、「△以上△△以下」を意味する。
本明細書において「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
【0012】
<成形体>
本発明の成形体は、ポリウレタンと、ラジカル重合性単量体の重合体と、の複合体からなる。
(複合体)
なお、ポリウレタンと、ラジカル重合性単量体の重合体と、の複合体とは、ポリウレタンとラジカル重合性単量体の重合体とのポリマーブレンドであってもよいし、これらを共重合単位とする共重合体であってもよい。なお、相分離構造の適切な制御のしやすさの観点から、複合体は共重合体であることが好ましく、さらに、ポリウレタンを主鎖とし、ラジカル重合体単量体の重合体をグラフト側鎖とするグラフト共重合体であることがより好ましい。
【0013】
複合体がポリマーブレンドの場合は、ラジカル重合性単量体の重合体をポリウレタンと混合することにより、複合体が形成される。また、複合体が共重合体の場合は、ブロック共重合体やグラフト共重合体が挙げられ、例えば、ポリウレタン主鎖に存在するラジカル重合性官能基を起点として、ラジカル重合性単量体が重合して側鎖を形成することで複合体が形成される。
【0014】
(ポリウレタン)
複合体を構成するポリウレタンは、脂肪族または脂環族ポリイソシアネート(a1)、脂肪族ポリオール(a2)からなるポリウレタン(A)であることが好ましく、ポリウレタン(A)は、脂肪族ポリオールとして、さらにイオン性基含有ポリオール(a4)を含むことが好ましい。なお、複合体が、ポリウレタンとラジカル重合性単量体との共重合体の場合、ポリウレタン(A)はラジカル重合性官能基を有することになる。一方、複合体がポリマーブレンドの場合、ポリウレタン(A)はラジカル重合性官能基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0015】
・脂肪族または脂環族ポリイソシアネート(a1)
脂肪族または脂環族ポリイソシアネート(a1)とは、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する、脂肪族または脂環族のポリイソシアネートである。このようなポリイソシアネートの具体例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、メチル2,6-ジイソシアネートヘキサノエート等を挙げることができる。脂肪族または脂環族のポリイソシアネート(a1)は、得られる重合体の黄変が少ないため好ましい。
【0016】
・脂肪族ポリオール(a2)
脂肪族ポリオール(a2)とは、1分子中に少なくとも2つのヒドロキシル基を有する脂肪族の有機化合物である。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール類の少なくとも一種と、アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸の少なくとも一種とを重縮合して得られるジオールおよび、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオール等のポリエステルポリオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等のポリエーテルポリオール類、その他、水添ポリブタジエンジオール、ポリアクリル酸エステルジオール等が挙げられる。
【0017】
上記のポリオールを用いる場合、分子量は通常500~7000であることが好ましく、より好ましくは500~3000である。分子量を500以上とすることにより、ポリウレタン樹脂にした時に満足する物性が得られる。また7000以下とすることにより、ポリエステルポリオールの粘度が高すぎることなく、取り扱い性が良好である。
【0018】
・イオン性基含有ポリオール(a4)
イオン性基含有ポリオール(a4)のイオン性基としては、例えば、カルボン酸基(カルボキシ基)、スルホン酸基などのアニオン性基や、4級アンモニウム基などのカチオン性基などを挙げることができる。
【0019】
カルボン酸基(カルボキシ基)含有ポリオールとしては、例えば、2,2´―ジメチロールプロパン、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシルカルボン酸などが挙げられる。
【0020】
スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば、エポキシ基含有化合物と酸性亜硫酸塩との合成反応から得られる、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノブタンスルホン酸などが挙げられる。
【0021】
カチオン性基含有ポリオールとしてはN-メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。
これらイオン性基含有ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0022】
複合体をポリウレタンとラジカル重合性単量体との共重合体とする場合、有機溶媒中でポリウレタン主鎖を重合した後、これを水中に乳化分散し、側鎖のラジカル重合性単量体を乳化重合する方法により、好ましく製造することが可能である。上記のように、ポリウレタン主鎖を構成するポリオールとして、イオン性基含有ポリオールを含むことによって、ポリウレタンを水中に乳化分散させる際に、乳化剤が不要、または、その添加量を削減することが可能となり、のちの精製作業を容易にする、あるいは、得られる重合体の純度を向上できるなどのメリットがある。
【0023】
・ラジカル重合性官能基
複合体が、ポリウレタンとラジカル重合性単量体との共重合体の場合、ポリウレタン(A)はラジカル重合性官能基を有することになるが、ポリウレタン(A)がラジカル重合性官能基を有することにより、該ラジカル重合性官能基を起点として、後に示すラジカル重合性単量体を重合することによって、側鎖を形成し、ポリウレタン主鎖、および、ラジカル重合性単量体を重合してなる側鎖を有するグラフト共重合体とすることができる。
ポリウレタン(A)が有する、ラジカル重合性官能基とは、例えば、炭素-炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよく、具体的には、(メタ)アクリロイル基、アリル基、その他のビニル基、などを上げることが出来る。特に(メタ)アクリロイル基は、ラジカル重合性官能基を有する化合物の貯蔵安定性が優れている観点や、当該化合物の重合性を制御することが容易である観点から好ましい。
【0024】
ポリウレタン(A)にラジカル重合性官能基を導入するためには、ポリウレタン(A)を構成するポリイソシアネートまたはポリオールとして、ラジカル重合性官能基を含有するものを使用すればよいが、中でも、ポリオールとして、ラジカル重合性官能基含有ポリオール(a3)を用いることにより、導入することが好ましい。
【0025】
・ラジカル重合性官能基含有ポリオール(a3)
ラジカル重合性官能基含有ポリオール(a3)とは、上記した脂肪族ポリオール中に、ラジカル重合性官能基を有する化合物をいう。
ラジカル重合性官能基含有ポリオール(a3)の具体例としては、上記した脂肪族ポリオール中に、炭素―炭素二重結合を有する化合物が挙げられ、例えば、ポリエステルジオール類のジカルボン酸として、イタコン酸、マレイン酸を用いたジオールや、ポリブタジエンジオール、(メタ)アクリル酸とトリオールとのモノエステル、例えば、グリセリンモノアリルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0026】
・鎖延長剤
ポリウレタン(A)は、必要に応じて鎖延長剤を含んでいてもよい。鎖延長剤は、イソシアネート基と反応可能な活性水素を複数個有する化合物等が挙げられる。このイソシアネート基と反応可能な活性水素を複数個有する化合物としては、水、炭素数1~8のポリオール、ポリアミン化合物等が挙げられる。前記ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。また、ポリアミン化合物の例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類を挙げることができる。
鎖延長剤は、ウレタンプレポリマー合成工程で添加してもよいし、転相乳化工程後に添加してもよい。
【0027】
(ラジカル重合性単量体の重合体)
・ラジカル重合性単量体
上述の通り、複合体が共重合体の場合、ポリウレタン主鎖に存在するラジカル重合性官能基を起点として、ラジカル重合性単量体が重合して側鎖を形成することで共重合体を得ることができる。
【0028】
ラジカル重合性単量体とは、好ましい例として、上記したラジカル重合性官能基を有する単量体化合物が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリロイル基、アリル基、その他のビニル基を有する単量体が挙げられる。特に(メタ)アクリロイル基は、ラジカル重合性官能基を有する化合物の貯蔵安定性が優れている観点や、当該化合物の重合性を制御することが容易である観点から好ましい。
【0029】
(メタ)アクロイル基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等のその他の(メタ)アクリル系単量体などが挙げられる。
【0030】
アリル基を有する重合性単量体としては、アリルアルコール、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
その他のビニル基を有する重合性単量体としては、スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン等のラジカル重合性単量体等が挙げられる。
上記のなかでも、脂肪族ポリエステルとの親和性から、アルキル基の炭素数が1~5以下の(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が1~3以下の(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。ここれらは1種単独で使用して、2種以上を併用してもよい。
【0032】
・重合開始剤
重合開始剤としては、一般的にラジカル重合に使用されるものが使用可能であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル等の油溶性アゾ化合物類;2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]およびその塩類、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]およびその塩類、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]およびその塩類、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)およびその塩類、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}およびその塩類、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)およびその塩類、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]およびその塩類等の水溶性アゾ化合物;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物類が挙げられる。
【0033】
・分子量調整剤
ラジカル重合性単量体から得られる重合体の分子量を調整する目的で、分子量調整剤を添加してもよい。本発明において、分子量調整剤として、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;α-メチルスチレンダイマー等の公知の連鎖移動剤を用いることが好ましい。分子量調整剤の使用量は、ラジカル重合性単量体の全量に対して1質量%以下であることが好ましい。
【0034】
<複合体の質量比>
(ポリマーブレンド)
ポリウレタンとラジカル重合性単量体の重合体との質量比は、55:45~95:5であることが好ましく、60:40~95:5であることがより好ましい。 質量比をこのような範囲に設定することで、柔軟性を維持したまま脂肪族ポリエステルと混和しやすくなる。
(共重合体)
共重合体におけるポリウレタン部位とラジカル重合性単量体の重合体部位との質量比は、55:45~95:5であることが好ましく、60:40~95:5であることがより好ましい。質量比をこのような範囲に設定することで、柔軟性を維持したまま脂肪族ポリエステルと混和しやすくなる。
【0035】
<複合体の製造方法>
(ポリマーブレンド)
複合体がポリマーブレンドの場合は、ポリウレタンとラジカル重合体単量体の重合体とを所定の質量比で混合することにより製造することができる。混合は、例えば、一軸、または、二軸押出機を用いて溶融混錬することにより行うことができる。
【0036】
(共重合体)
複合体が共重合体の場合は、ウレタンプレポリマーの合成、転相乳化、鎖延長、ラジカル重合の合成の各ステップを経ることにより製造可能である。
・ウレタンプレポリマーの合成
ウレタンプレポリマーは、ウレタンプレポリマーを構成する各単量体、つまり、脂肪族または脂環族ポリイソシアネート(a1)、脂肪族ポリオール(a2)、好ましくは、さらにラジカル重合性官能基含有ポリオール(a3)、好ましくは、さらにイオン性基含有ポリオール(a4)を有機溶媒中にて反応させることにより得ることができる。使用可能な有機溶媒としては、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。
【0037】
・転相乳化
上記で得られた反応溶液を所定温度まで冷却後、トリエチルアミンなどの中和剤を加え中和し、水を加えて乳化する。界面活性剤(乳化剤)としては、従来から公知のものを利用できる。例えば、ドデシルベンゼン硫酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキルアリールポリエーテル硫酸塩等のような陰イオン性乳化剤;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のような非イオン性乳化剤;セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ラウリルピリジニウムクロリド等のような陽イオン性乳化剤を適宜選択して使用できる。また、上記の如き乳化剤の代りに、あるいは乳化剤を併用して水溶性オリゴマーを分散剤として使用することも可能である。さらにポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース等のような水溶性高分子物質を上記乳化剤と併用したり、あるいは重合後、乳化液に添加したりすることも有効である。
【0038】
なお、本発明の好ましい形態では、主鎖のポリウレタンを構成するポリオールとして、さらに、イオン性基含有ポリオール(a4)を含んでいるが、この場合は、上記した乳化剤を添加しなくてもよい。
【0039】
・鎖延長
上記で得られた乳化液に、例えば、ヒドラジンなどの鎖延長剤を加えて、鎖延長反応を行う。そして、減圧下において、有機溶媒を除去し、水性ポリウレタン樹脂(ポリウレタン含有水分散液)を得る。
【0040】
・ラジカル重合体の合成
得られた水性ポリウレタン樹脂に、過硫酸カリウムなどのラジカル重合開始剤、および、ラジカル重合性単量体(b)を加え、所定時間反応させることにより、本発明の成形体を構成する複合体の水分散体を得ることができる。なお、ラジカル重合性単量体は、これを水中に乳化分散させた乳化液として、上記の水性ポリウレタン樹脂に添加することができる。
【0041】
(粉体)
上記の水分散体は、上記複合体が水中に分散された状態で含んでいる。複合体を含む水分散体は、所定の処理、例えば、電解質を溶解させた水中にて凝析して、脱イオン水にて洗浄、脱水、乾燥の後、粉体とされる。該粉体は、取り扱い安さの観点から、φ2.8mm以下の粒子径を有することが好ましい。
以上のように、本発明の成形体を構成する複合体を製造する際には、高温での反応などの製造負荷が大きい工程が不要であり、製造コストの低減、環境負荷の低減を図ることが可能である。
【0042】
<成形体の製造>
上記した複合体または粉体を使用して、成形体としてフィルムを製造する場合について以下、説明する。
【0043】
以下、複合体を用いたフィルムの製造方法の一例について説明する。フィルムは、例えば、溶融押出によるフィルム成形法によって製造することができる。フィルム原料となる複合体は、予め同方向2軸押出機、ニーダー、ヘンシェルミキサーなどを用いてプレコンパウンドしても構わない。各原料をドライブレンドした後、直接フィルム押出機に投入しても構わない。
【0044】
フィルム原料となる複合体を溶融して押出した後は、例えばキヤステイングドラム上で急冷してフィルムを成形し、フィルム成形後一定時間熱を加える処理を施すようにすればよい。必要に応じて、フィルム成形後加熱縦延伸ロールを用いて縦延伸したり、必要に応じてテンターを用いて延伸したりしてもよい。また、キャスト法以外に、インフレーション法、延伸法を採用することもできる。
【0045】
本発明の成形体(フィルム)の厚みは、二次加工によって包装材を得る際の取扱い容易性と、成形体としての強度の観点から、0.005mm~0.5mmの範囲が好ましく、0.01mm~0.125mmの範囲がより好ましい。
【0046】
<積層成形体>
本発明の積層成形体は、複数の層からなる積層成形体であって、複数の層のうちの少なくとも1層が、上記した本発明の成形体である。
本発明の成形体からなる層以外の他の層としては、例えば、ガスバリア層、ヒートシール層、接着性を有する層、粘着性を有する層、金属箔、紙などが挙げられる。
【0047】
積層成形体の層構成としては、例えば、ヒートシール層/ガスバリア層/本発明の成形体からなる層、ヒートシール層/本発明の成形体からなる層/紙などが挙げられる。
【0048】
積層成形体の製造方法としては、共押出法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法などが挙げられる。
【0049】
本発明の積層成形体において、本発明の成形体からなる層の厚みは、積層成形体全体の厚みの好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。
積層成形体の厚みは、0.01mm以上0.5mm以下が好ましい。
【0050】
<包装材>
上記した本発明の成形体、または、本発明の積層成形体は、熱成形法によって袋、パウチ、容器、蓋体、トレイ等の包装体に成形することができる。熱成形方法としては、熱板接触加熱成形法、真空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法等が好ましく用いられる。中でも、成形品の厚みの均一性や、成形品の生産効率の観点から、熱板接触加熱成形法が好ましい。
これらの成形法を用いた成形体または積層成形体の二次成形は、シートロールを用い連続的に行っても良いし、カット版のシートを用い1ショット毎に成形しても良い。
【0051】
包装材の形状は、特に制限されず、例えば食品包装用の袋、パウチ、容器、蓋体、トレイ等の用途に応じて適宜設計することができる。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
ダイセル社製のポリカプロラクトンポリオール「プラクセル220EB」(平均分子量=2000)85.8質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)9.6質量部、日油製ブレンマ―GLM4.6質量部を加え、MEK131.5質量部を加え十分に攪拌した。
次に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)36.1質量部を加えて70℃で4時間反応させ、ポリウレタンプレポリマー(PU前駆体)を得た。
反応溶液を40℃まで冷却し、トリエチルアミン(TEA)6.5質量部加えて中和した後、水328.6質量部を加えて乳化液を得た。次いで、鎖伸長剤としてヒドラジン1.8質量部と水57.9質量部の混合物を加え、鎖伸長反応を行った。
得られた乳化液を減圧下、30~60℃にてMEKを除去し、不揮発分35.8%の、安定な半透明の水分散液である水性ポリウレタン樹脂(PU含有水分散液)を得た。
以上の反応の配合組成を表1の合成例1に示す。
【0054】
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、および滴下ポンプを備えたフラスコに固形分25%となるよう調整した水性ポリウレタン樹脂260部仕込み、フラスコを70℃に昇温した。その後、重合開始剤として過硫酸カリウム(KPS)0.1部を添加し、MMAとBMAとペレックスOTPと脱イオン水を含むあらかじめ乳化分散させたプレ乳化液58.4gを2時間かけて滴下した。この滴下中はフラスコの内温を70℃に保持し、滴下が終了してから70℃で1.5時間保持した。その後、反応液を室温まで冷却し、本発明のポリウレタン/ポリ(メタ)アクリレート重合体(PU/PAc)の水分散体を得た。
以上の反応の配合組成を表2の合成例3に示す。
【0055】
得られた水分散体100部を60℃の酢酸カルシウム5部が入った脱イオン水150部に添加して、重合物を凝析し、脱イオン水で洗浄し、脱水、乾燥して、粒子径800μmの粉体状のポリウレタン/ポリ(メタ)アクリレート重合体(PU/PAc)を得た。
【0056】
得られた重合体(PU/PAc)の引張強度を評価し、結果を表3に示した。
【0057】
<実施例2>
表1の合成例2の配合組成で、実施例1と同様にしてPU含有水分散液を得て、表2の合成例4の配合組成で、実施例1と同様にして粉体状のポリウレタン/ポリ(メタ)アクリレート重合体(PU/PAc)を得た。
得られた重合体(PU/PAc)について、引張強度を評価した。結果を表3に示した。
【0058】
<比較例1>
合成例1の配合組成に沿って得られた水性ポリウレタン樹脂を、乾燥膜厚500μmとなるようポリスチレン製シャーレにキャストし、60℃で12時間乾燥させ、その後、60℃で減圧乾燥を24時間行った後、フィルムを得た。該フィルムについて引張強度を評価した。
【0059】
<評価>
(引張強度(MPa))
実施例で得られた重合体を、圧縮成形機(東洋精機製作所社製、ミニテストプレス MP-2FH)を用いて、ヒーター温度190℃、プレス圧5MPa、保持時間2分で成形した後、冷却することでフィルム(厚み:0.4mm)を得た。
【0060】
上記フィルムおよび比較例1で得られたフィルムをダンベル状に切り出し、オートグラフ((株)島津製作所製、AG-Xplus 10kN)にて、23℃雰囲気下で、チャック間距離50mm、クロスヘッドスピード20mm/minで引張試験を実施した。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
比較例1のポリウレタンからなるフィルムに比べて、ポリウレタンにアクリル系単量体の重合体を複合化させた本発明の重合体からなるフィルムは、引張強度が大きく、高い強度を有していた。
本発明の成形体は、ポリウレタン系材料で構成されており加水分解性を有し、かつ、十分な強度を有するので、ポリウレタンを使用しつつ材料強度の向上が求められていた用途において、好適に使用可能である。