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特開2022-145492金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及びその製造方法
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  • 特開-金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及びその製造方法 図1
  • 特開-金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及びその製造方法 図2
  • 特開-金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及びその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145492
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000312
(22)【出願日】2022-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2021043333
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021043336
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春成 武
(72)【発明者】
【氏名】山野 直樹
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA04
4F206AA34
4F206AD03
4F206AD24
4F206AD28
4F206AD33
4F206AE10
4F206AG27
4F206AH17
4F206AH31
4F206AH33
4F206AH57
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB13
4F206JM04
4F206JN11
(57)【要約】
【課題】 金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との気密性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との射出一体成形体である金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体であって、下記(1)及び(2)を満足する金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体。
(1);金属部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さ(Ra1)、最大高さ粗さ(Rz1)、二乗平均平方根高さ(Rq1)とポリーレンスルフィド樹脂部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さ(Ra2)、最大高さ粗さ(Rz2)、二乗平均平方根高さ(Rq2)とが、|(Ra1-Ra2)|/(Ra1+Ra2)≦0.2、|(Rz1-Rz2)|/(Rz1+Rz2)≦0.2及び/又は|(Rq1-Rq2)|/(Rq1+Rq2)≦0.2との関係を満足する。
(2)ポリアリーレンスルフィド樹脂部材が、ポリアリーレンスルフィド樹脂および変性エチレン系共重合体を含むものである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との射出一体成形体である金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体であって、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体。
(1);金属部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さ(Ra1)、最大高さ粗さ(Rz1)、二乗平均平方根高さ(Rq1)とポリーレンスルフィド樹脂部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さ(Ra2)、最大高さ粗さ(Rz2)、二乗平均平方根高さ(Rq2)とが、|(Ra1-Ra2)|/(Ra1+Ra2)≦0.2、|(Rz1-Rz2)|/(Rz1+Rz2)≦0.2及び/又は|(Rq1-Rq2)|/(Rq1+Rq2)≦0.2との関係を満足する。
(2)ポリアリーレンスルフィド樹脂部材が、ポリアリーレンスルフィド樹脂および変性エチレン系共重合体を含むものである。
【請求項2】
変性エチレン系共重合体が、エチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル-無水マレイン酸共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-酢酸ビニル共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体及び無水マレイン酸グラフト変性エチレン-α-オレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種以上の変性エチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体。
【請求項3】
下記(3)をも満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体。
(3);金属部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した際の最大高さ粗さ(Rz1)が800nm以下である。
【請求項4】
金属部材が、化学処理を施した表面を有する金属部材であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体。
【請求項5】
下記(4)をも満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体。
(4);金属部材表面を共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した際の最大高さ粗さ(Rz1)が800nmを越えるものである。
【請求項6】
金属部材が、物理的処理を施した表面を有する金属部材であることを特徴とする請求項5に記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体。
【請求項7】
金型内に金属部材を装着し、該金型内に溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂を射出充填し、該金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とが直接一体化された射出インサート複合体とすることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法。
【請求項8】
金型温度130℃以上、金型保圧1MPa以上の条件で射出インサート成形を行うことを特徴とする請求項7に記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を蓋材とすることを特徴とする容器。
【請求項10】
高気密性容器であることを特徴とする請求項9に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合面の気密性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及びその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れ、特に自動車や航空機などの輸送機器の部品用途、あるいは防水性の求められる携帯機器等の電気・電子部品用途に有用な金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との気密性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及び金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や航空機などの輸送機器の部品を軽量化するため、金属の一部を樹脂に置き換える方法が検討されている。また、樹脂と金属を複合一体化する方法として、金型内に物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材をインサートし、樹脂を射出成形して直接一体化する方法(以下、射出インサート成形法と表記する場合がある)が、良量産性、少部品点数、低コスト、高設計自由度、低環境負荷の観点から注目されており、スマートフォン等の携帯電子機器の製造プロセスなどに提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【0003】
ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPSと略記することもある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記することもある。)は、優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性、耐薬品性を有し、多くの電気・電子機器部材や自動車機器部材、その他OA機器部材等、幅広く使用されている。
【0004】
また、PASは溶融流動性に優れることから、物理的処理及び/又は化学処理を施した表面を有する金属部材との射出インサート成形法において、優れた接合強度を発現する。
【0005】
一方、原子間力顕微鏡、又は共焦点レーザ顕微鏡は金属の粗化処理面の表面解析により、粗化処理面の表面粗さを測定する方法として一般に適用されている(例えば、特許文献4、5参照。)。
【0006】
さらに、金属-樹脂接合面の気密性に優れた金属-樹脂複合構造体について提案がなされている(例えば、特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5701414号
【特許文献2】特許第5714193号
【特許文献3】特許第4020957号
【特許文献4】特開2014-136366号公報
【特許文献5】特許第6819798号
【特許文献6】特開2020-68070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1~3に提案された射出インサート成形法により得られる金属部材-樹脂部材複合体においては、金属-樹脂接合面の密着性を接合強度で数値化し、その優劣を判断しているが、接合強度が優れる場合においても、必ずしも金属-樹脂接合面の気密性が優れるものではなかった。また、特許文献4、5に提案された複合構造体においては、金属-樹脂接合面の気密性に関してはなんら検討のなされていないものであった。さらに、特許文献6に提案された冷却装置および電池構造体は優れた気密性を有するが、気密性を発現させるためのメカニズムが明確でなく、気密性を発現させるためのメカニズムの定量的な数値化が望まれていた。
【0009】
そこで、本発明は、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との気密性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及び気密性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を安定的に製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のポリアリーレンスルフィド樹脂からなるポリアリーレンスルフィド樹脂部材および表面粗化した金属部材からなる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体であり、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材の接合面のそれぞれの表面粗さの差異がある一定の割合以下である金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が、表面粗化した金属部材表面の微細凹凸形状をポリアリーレンスルフィド樹脂部材の接合面が高い精度にて転写することで、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材の接合面の密着性に著しく優れ、その結果、優れた気密性を有するものとなること、気密の信頼性に優れること、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる部材、部品、製品等となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との射出一体成形体である金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体であって、下記(1)及び(2)を満足することを特徴とする金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体及びその製造方法に関するものである。
(1);金属部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さ(Ra1)、最大高さ粗さ(Rz1)、二乗平均平方根高さ(Rq1)とポリーレンスルフィド樹脂部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さ(Ra2)、最大高さ粗さ(Rz2)、二乗平均平方根高さ(Rq2)とが、|(Ra1-Ra2)|/(Ra1+Ra2)≦0.2、|(Rz1-Rz2)|/(Rz1+Rz2)≦0.2及び/又は|(Rq1-Rq2)|/(Rq1+Rq2)≦0.2との関係を満足する。
(2);ポリアリーレンスルフィド樹脂部材が、ポリアリーレンスルフィド樹脂および変性エチレン系共重合体を含むものである。
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体は、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とを射出成形により直接一体化してなる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である。
【0014】
そして、該金属部材表面とポリアリーレンスルフィド樹脂部材の表面は、下記(1-1)~(1-3)の関係の少なくとも1つを満足することにより優れた気密性を有する金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となるものである。
【0015】
(1-1)該金属部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した際の最大高さ粗さ(以下、Rz1と記す場合がある。)と、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した最大高さ粗さ(以下、Rz2と記す場合がある。)とが、│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)≦0.2を満足する。なお、原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡で測定する際のポリアリーレンスルフィド樹脂部材は、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体より金属部材のみを溶解し、不溶解分として残るポリアリーレンスルフィド樹脂部材を調製することができ、その接合表面を部材表面として測定することができる。
【0016】
(1-2)該金属部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さ(以下、Ra1と記す場合がある。)とし、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した算術平均粗さ(以下、Ra2と記す場合がある。)とが、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)≦0.2を満足する。
【0017】
(1-3)該金属部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した二乗平均平方根高さ(以下、Rq1と記す場合がある。)とし、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡、又は、共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した二乗平均平方根高さ(以下、Rq2と記す場合がある。)とが、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)≦0.2を満足する。
【0018】
なお、Rz1、Rz2、Ra1、Ra2、Rq1、Rq2は、任意の3点以上で測定し、その平均値として求めることができる。また、共焦点レーザ顕微鏡を用いて観察する視野範囲としては、該金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の形状や寸法、表面粗化により形成される金属表面の凹凸の大きさ等により適宜選択すればよく、例えば100μm~2000μmの範囲が選択される。
【0019】
そして、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体から金属部材のみを溶解させる方法としては、如何なる方法を用いてもよく、中でも効率よく金属部材のみを溶解させることが可能となることから、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を塩酸等の酸性液体に浸漬させる方法が好ましい。また、金属部材を溶解させた後は、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材を純水で洗浄し、乾燥した後に接合面を観察することが好ましい。
【0020】
本発明における気密性とは、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材の接合面における、例えば水、水蒸気、有機溶剤;アセトン、エタノール、ジメチルホムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アンモニア等、各種車両用液体;オートマチックトランスミッションフルード、ロングライフクーラント、バッテリー液、エンジンオイル、ガソリン、軽油、ギアオイル、ブレーキオイル、シリコーンオイル等、ガス;ヘリウム、水素、酸素、窒素、空気、二酸化炭素、オゾン、メタン、一酸化炭素、液化石油ガス、過酸化水素、フッ化水素等、電池の電解液等に対する気密性を指し、気密性の評価方法としては、用途、目的に応じて適宜選択することができ、ヘリウムリークテストとしては特開2020-68070号公報に提案の方法等を挙げることができる。
【0021】
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成する金属部材としては、金属部材の範疇に属するものであればいかなる材質よりなる部材でもよく、その中でもポリアリーレンスルフィド樹脂部材との複合体とした際に各種用途への適応が可能となることから、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材、銅合金製部材、マグネシウム製部材、マグネシウム合金製部材、鉄製部材、チタン製部材、チタン合金製部材、ステンレス製部材である金属部材が好ましく、とりわけ軽量化に優れる、アルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、マグネシウム製部材、マグネシウム合金製部材、チタン製部材、チタン合金製部材、銅製部材、銅合金製部材である金属部材が好ましく、より好ましくはアルミニウム製部材、アルミニウム合金製部材、銅製部材、銅合金製部材である。また、該金属部材は、板に代表される展伸材であっても、ダイカストに代表される鋳造材であっても、鍛造材からなる金属部材であってもかまわない。
【0022】
また、該金属部材は、表面を物理的処理及び/又は化学処理した金属部材であることが好ましく、該物理的処理及び/又は化学処理を施すことにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材と直接一体化した際に、気密性等の優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体が得られるものとなる。
【0023】
そして、金属部材の表面を物理的処理及び/又は化学処理する方法としては、表面粗化した金属部材表面とする方法であれば如何なる方法を用いて物理的処理及び/又は化学処理を施すことも可能であり、化学処理としては、例えば陽極酸化処理法、酸又はアルカリの水溶液で化学処理する方法、等を挙げることができる。そして、陽極酸化処理としては、例えば金属部材を陽極として電解液中で電化反応を行いその表面に酸化被膜を形成する方法であってもよく、メッキ等の分野において陽極酸化法として一般的に知られている方法を用いることができる。より具体的には、例えば1)一定の直流電圧をかけて電解を行う直流電解法、2)直流成分に交流成分を重畳した電圧をかけることにより電解を行うバイポーラ電解法、等を挙げることができる。陽極酸化法の具体的例示としては、WO2004/055248号公報等に提案の方法等を挙げることができる。また、酸又はアルカリの水溶液で化学処理する方法としては、例えば金属部材を酸又はアルカリの水溶液に浸せきし金属部材表面を化学処理する方法であってもよく、その際の酸又はアルカリの水溶液としては、例えばリン酸等のリン酸系化合物;クロム酸等のクロム酸系化合物;フッ化水素酸等のフッ化水素酸系化合物;硝酸等の硝酸系化合物;塩酸等の塩酸系化合物;硫酸等の硫酸系化合物;水酸化ナトリウム、アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液;トリアジンチオール水溶液、トリアジンチオール誘導体水溶液により化学処理する方法等を挙げることができ、より具体的例示としては、特開2017-132243号公報、特開2019-188651号公報、WO2008/133296号公報、特許第5622785号、特開平10-096088号公報、特開平10-056263号公報、特開平04-032585号公報、特開平04-032583号公報、特開平02-298284号公報、WO2009/151099号公報、WO2011/104944号公報等に提案の方法、等を挙げることができ、特に微細な表面粗化した金属部材表面となる金属部材とする際には、化学処理する方法であることが好ましい。そして、該金属部材は、その表面を化学処理する方法により微細表面粗化したものであることが好ましく、(3)該金属部材表面を2μmの視野範囲とした原子間力顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定した際のRz1が800nm以下のものであることが好ましい。
【0024】
また、物理的処理としては、例えば表面に微小固体粒子を接触又は衝突させる方法、また高エネルギー電磁線を照射する方法等を挙げることができ、より具体的にはサンドブラスト処理、液体ホーニング処理、レーザ加工処理等を挙げることができる。更に、サンドブラスト処理、液体ホーニング処理の際の研磨剤としては、例えばサンド、スチールグリッド、スチールショット、カットワイヤー、アルミナ、炭化ケイ素、金属スラグ、ガラスビーズ、プラスチックビーズ等を挙げることができる。また、レーザ加工処理としては、WO2007/072603号公報、特開2015-142960号公報に提案の方法等を挙げることができ、特に比較的大きな孔を有する表面租化した金属部材表面とする際には、金属表面を化学処理又は物理的処理のいずれの処理でも可能であり、中でもより効率的な処理が可能となることから物理的処理する方法であることが好ましい。そして、(4)該金属部材表面を共焦点レーザ顕微鏡を用い、JIS B 0601-2001に準拠して測定したRz1が800nmを越えるものであることが好ましい。
【0025】
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂部材はポリアリーレンスルフィド樹脂と変性エチレン系共重合体を含むものであり、該ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、一般にポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものを含むものであればよく、該ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、例えばp-フェニレンスルフィド単位、m-フェニレンスルフィド単位、o-フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位からなる単独重合体又は共重合体を挙げることができ、該ポリアリーレンスルフィド樹脂の具体的例示としては、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂部材となることから、ポリ(p-フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
【0026】
さらに、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、気密性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を効率良く得ることが可能となることから、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が50~2000ポイズのポリアリーレンスルフィド樹脂であることが好ましい。
【0027】
該ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法として知られている方法により製造することが可能であり、例えば極性有機溶媒中で硫化アルカリ金属塩、ポリハロ芳香族化合物を重合することにより得る事が可能である。その際の極性有機溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げる事ができ、硫化アルカリ金属塩としては、例えば硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化リチウムの無水物又は水和物を挙げる事ができる。また、硫化アルカリ金属塩としては、水硫化アルカリ金属塩とアルカリ金属水酸化物を反応させたものであってもよい。ポリハロ芳香族化合物としては、例えばp-ジクロロベンゼン、p-ジブロモベンゼン、p-ジヨードベンゼン、m-ジクロロベンゼン、m-ジブロモベンゼン、m-ジヨードベンゼン、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロジフェニルエーテル、4,4’-ジクロロジビフェニル等を挙げる事ができる。
【0028】
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、直鎖状のもの、重合時にトリハロ以上のポリハロゲン化合物を少量添加して若干の架橋又は分岐構造を導入したもの、ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子鎖の一部及び/又は末端を例えばカルボキシル基、カルボキシ金属塩、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基等の官能基により変性したもの、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものなどが挙げられ、さらにこれらポリアリーレンスルフィド樹脂の混合物であってもかまわない。また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂は、酸洗浄、熱水洗浄あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってナトリウム原子、ポリアリーレンスルフィド樹脂のオリゴマー、食塩、4-(N-メチル-クロロフェニルアミノ)ブタノエートのナトリウム塩などの不純物を低減させたものであってもよい。
【0029】
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂部材は変性エチレン系共重合体を含むものであり、該変性エチレン系共重合体とは、反応性を有する官能基として例えば、エポキシ基、無水マレイン酸基、カルボン酸基、アミノ基、イソシアネート基等を分子内に有するものであり、例えばエチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル-無水マレイン酸共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-酢酸ビニル共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-α-オレフィン共重合体を挙げることが出来る。該変性エチレン系共重合体の配合量としては、接合面の欠陥が少なく、耐衝撃性に優れた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体とすることが可能となることから、該ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、1~40重量部であることが好ましい。
【0030】
ポリアリーレンスルフィド樹脂部材としては、特に強度、耐衝撃性に優れた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、さらにガラス繊維を配合してなるものが好ましい。該ガラス繊維としては、一般にガラス繊維と称すものであれば如何なるものを用いてもよい。該ガラス繊維の具体的例示としては、平均繊維径が6~14μmのチョップドストランド、繊維断面のアスペクト比が2~4の扁平ガラス繊維からなるチョップドストランド、ミルドファイバー、ロービング等のガラス繊維;シラン繊維;アルミノ珪酸塩ガラス繊維;中空ガラス繊維;ノンホーローガラス繊維等が挙げられ、その中でもとりわけ接合面の欠陥が少なく、耐衝撃性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、平均繊維径が6~14μmのチョップドストランド、ないしは、繊維断面のアスペクト比が2~4である扁平ガラス繊維からなるチョップドストランドであることが好ましい。これらのガラス繊維は2種以上を併用することも可能であり、必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものを用いてもよい。該ガラス繊維の配合量としては、とりわけ接合面の欠陥が少なく耐衝撃性に優れた金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体となることから、ポリアリーレンスルフィド樹脂100重量部に対して、5~120重量部であることが好ましい。
【0031】
ポリアリーレンスルフィド樹脂部材は、さらに、例えば炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、シリカ、タルク、クレイ、硫酸カルシウム、カオリン、ワラステナイト、ゼオライト、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスフレークが添加されたものであっても構わない。また、従来公知のタルク、カオリン、シリカなどの結晶核剤;ポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤;酸化防止剤;熱安定剤;滑剤;紫外線防止剤;発泡剤などの通常の添加剤を1種以上添加するものであってもよい。さらに、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアルキレンオキサイド等の1種以上を混合して使用してなるものであってもよい。
【0032】
さらに、該ポリアリーレンスルフィド樹脂部材は、成形品とする際の金型離型性や外観を改良するために離型剤を含有してもよい。該離型剤としては、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アマイド系ワックスが好適に用いられる。該ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスとしては、一般的な市販品を用いることができる。また、該脂肪酸アマイド系ワックスとは、高級脂肪族モノカルボン酸、多塩基酸及びジアミンからなる重縮合物でありこの範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばステアリン酸、セバシン酸、エチレンジアミンからなる重縮合物である、(商品名)ライトアマイドWH-255(共栄社化学(株)製)等を挙げることができる。
【0033】
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の製造方法としては、金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とを射出成形方法により直接一体化する方法を挙げることができ、その中でも特に効率よく複合体を製造することが可能となることから射出インサート成形法により一体化することが好ましい。そして、該射出インサート成形法としては、例えば金型内に金属部材を装着し、該金属部材に溶融ポリアリーレンスルフィド樹脂を充填し、ポリアリーレンスルフィド樹脂部材とし、該金属部材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材とが直接一体化された複合体とする方法を挙げることができる。この際のポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融温度としては280~340℃を挙げることができ、インサート成形を行う際の成形機としては、とりわけ生産性に優れることから射出成形機を用いて射出インサート成形を行うことが好ましい。またとりわけ、気密性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を効率良く製造することが可能となることから、インサート成形を行う際の金型温度としては130℃以上が好ましく、特に140~160℃が好ましい。また、金型保圧は1MPa以上であることが好ましく、特に30~100MPaが好ましい。
【0034】
本発明の金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体は、気密性に優れ、その気密の信頼性に優れ、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる特性を併せ持つものであり、特にこれら特性、信頼性を必要とする自動車や航空機などの輸送機器の部品用途、あるいは防水性の求められる携帯機器等の電気・電子部品用途に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、接合面の気密性、さらには、耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れ、特に自動車や航空機などの輸送機器の部品用途、あるいは防水性の求められる携帯機器等の電気・電子部品用途に有用な信頼性の高い金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体およびその製造方法を提供することができ、その産業的価値は極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】;実施例で用いた気密性評価用の容器の概略図。
図2】;気密性評価用蓋材の概略図。
図3】;気密性評価用金属部材の概略図。
図4】;気密性評価用金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体。
【実施例0037】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0038】
実施例及び比較例において用いた、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)、変性エチレン系共重合体(B)、ガラス繊維(C)、その他樹脂材を以下に示す。
【0039】
<ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)>
ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A-1)と記す。):溶融粘度210ポイズ。
ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A-2)と記す。):溶融粘度380ポイズ。
ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A-3)と記す。):溶融粘度100ポイズ。
【0040】
<変性エチレン系共重合体(B)>
エチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル-無水マレイン酸共重合体(B-1)(以下、単にエチレン系重合体(B-1)と記す。):SK global chemical社製、(商品名)ボンダインAX8390、エチレン残基単位:α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル残基単位:無水マレイン酸残基単位(重量比)=69.7:29:1.3。
エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(B-2)(以下、単にエチレン系重合体(B-2)と記す。):SK global chemical社製、(商品名)LOTADER AX8700、エチレン残基単位:α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位:α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル残基単位(重量比)=67:8:25。
【0041】
<ガラス繊維(C)>
ガラス繊維(C-1);オーウェンス コーニング ジャパン(株)製、(商品名)RES03-TP91;繊維径10μm、繊維長3mm。
ガラス繊維(C-2);日東紡株式会社製チョップドストランド、(商品名)CSG-3PA 830、繊維断面のアスペクト比4。
【0042】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂(D)>
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、単にPBT(D-1)と記す。):三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、(商品名)ノバデュラン 5010R5L。
【0043】
<ポリアミド樹脂(E)>
ポリアミド66樹脂(以下、単にPA(E-1)と記す。):Du Pont社製、(商品名)ザイデル 101。
【0044】
<ポリエチレン樹脂(F)>
低密度ポリエチレン樹脂(以下、単にPE(F-1)と記す。):東ソー株式会社製、(商品名)ペトロセン 249。
【0045】
<合成例1(PPS(A-1)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、30%苛性ソーダ溶液(30%NaOHaq)48g及びN-メチル-2-ピロリドン3679gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、380gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン2107g、N-メチル-2-ピロリドン985gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN-メチル-2-ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p-フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリフェニレンスルフィドを105℃で一昼夜乾燥した。次いで、乾燥したポリフェニレンスルフィドをバッチ式ロータリーキルン型焼成装置に充填し、窒素雰囲気下で240℃まで昇温し、1時間の保持による硬化処理を行うことによって、溶融粘度が210ポイズのPPS(A-1)を得た。
【0046】
<合成例2(PPS(A-2)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN-メチル-2-ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、340gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン2107g、N-メチル-2-ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。次いで、この系に250℃で蒸留水509gを圧入し、255℃まで昇温してさらに1時間重合反応を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN-メチル-2-ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p-フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリ(p-フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が380ポイズのPPS(A-2)を得た。
【0047】
<合成例3(PPS(A-3)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN-メチル-2-ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、339gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン2085g、N-メチル-2-ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN-メチル-2-ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は170℃で圧力は4.7kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p-フェニレンスルフィド)を洗浄した。得られたポリ(p-フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が100ポイズのPPS(A-3)を得た。
【0048】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂、金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の評価・測定方法を以下に示す。
【0049】
~ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度測定~
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、商品名CFT-500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
【0050】
~表面処理された金属部材表面のRz1、Ra1、Rq1の測定~
(原子間力顕微鏡による測定)
表面処理された金属部材表面の任意の3点の表面粗さを原子間力顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製、(商品名)E-sweep)を用い、走査探針(オリンパス株式会社製、(商品名)OMCL-AC200TN-R3、バネ定数:9N/m)を用いて、ダイナミック・フォース・モードにてJIS B 0601-2001に準拠して2μmの視野範囲において測定し、3点の平均値として求めた。
【0051】
(共焦点レーザ顕微鏡による測定)
表面処理された金属部材表面の任意の3点の表面粗さを共焦点レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製、(商品名)VK-X200)を用い、JIS B 0601-2001に準拠して1000μmの視野範囲で測定し、3点の平均値として求めた。
【0052】
~ポリアリーレンスルフィド樹脂部材の接合面のRz2、Ra2、Rq2の測定~
(原子間力顕微鏡による測定)
金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の金属部材を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬して金属部材のみを溶解させ、残るポリアリーレンスルフィド樹脂部材の接合面の任意の3点の表面粗さを原子間力顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製、(商品名)E-sweep)を用い、走査探針(オリンパス株式会社製、(商品名)OMCL-AC200TN-R3、バネ定数:9N/m)を用いて、ダイナミック・フォース・モードにてJIS B 0601-2001に準拠して2μmの視野範囲において測定し、3点の平均値として求めた。
【0053】
(共焦点レーザ顕微鏡による測定)
金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体の金属部材を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬して金属部材のみを溶解させ、残るポリアリーレンスルフィド樹脂部材の接合面の任意の3点の表面粗さを共焦点レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製、(商品名)VK-X200)を用い、JIS B 0601-2001に準拠して1000μmの視野範囲で測定し、3点の平均値として求めた。
【0054】
~気密性試験および気密性の評価~
蒸留水を上部が開放されたアルミニウム製容器に入れ、容器と図4に示す金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材とを溶接して密閉し、図1に示す気密性評価用容器を作製した。該気密性評価用容器を90℃で200時間保持した後、室温とし、金属製板材および金属製蓋材とポリアリーレンスルフィド樹脂部材との界面を検査用液体で浸した。該容器内を0.5MPaに昇圧して1分間保持し、シール性を評価した。
○:検査用液体に浸された界面から気泡が発生しない場合、気密性に優れると判断した。
×:検査用液体に浸された界面から気泡が発生した場合、気密性に劣ると判断した。
【0055】
実施例1
図3に示す形状のアルミニウム合金(A5052)製板材(50mm×10mm×1mm厚さ)および図2に示す形状のアルミニウム合金(A5052)製蓋材をアルミ用脱脂剤を7.5%含む水溶液(液温60℃)を入れた脱脂槽に5分浸漬した後、イオン交換水で水洗した。次いで、苛性ソーダを1.5%含む水溶液(液温40℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗し、さらに3%濃度の硝酸水溶液(液温40℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで、水和ヒドラジン3.5%を含む水溶液(液温60℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗し、さらに水和ヒドラジンを0.5%含む水溶液(液温33℃)を入れた槽に3分浸漬し、イオン交換水で水洗した後、温風乾燥機内で乾燥することにより、化学処理を施し表面粗化したアルミニウム合金(A5052)製板材およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を得た。
【0056】
合成例2で得られたPPS(A-2)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-1)11重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-1)をPPS(A-2)100重量部に対して25重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0057】
得られた該アルミニウム合金(A5052)製板材およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度150℃、金型保圧を60MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ないアルミニウム合金(A5052)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られたアルミニウム合金(A5052)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を用いて、原子間力顕微鏡にてRz1、Ra1、Rq1を測定し、次いで、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、アルミニウム合金(A5052)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を原子間力顕微鏡により測定した。
【0058】
│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、アルミニウム合金(A5052)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表1に示す。
【0059】
実施例2
図3に示す形状のアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板材(50mm×10mm×1mm厚さ)および図2に示す形状のアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製蓋材をアルミ用脱脂剤を7.5%を含む水溶液(液温60℃)を入れた脱脂槽に5分浸漬した後、イオン交換水で水洗した。次いで、苛性ソーダを1.5%含む水溶液(液温40℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗し、さらに5%濃度の塩酸と1%濃度の水和塩化アルミニウムを含む水溶液(液温40℃)を入れた槽に4分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで、2%濃度の一水素二フッ化アンモニウムと10%濃度の硫酸を含む水溶液(液温40℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗し、次いで1.5%濃度の苛性ソーダ水溶液(液温40℃)を入れた槽に4分浸漬し、イオン交換水で水洗し、さらに3%濃度の硝酸水溶液(液温40℃)を入れた槽に2分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで、3.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液(液温60℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗し、さらに0.5%濃度の水和ヒドラジン水溶液(液温33℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗した後、温風乾燥機内で乾燥することにより、化学処理を施し表面粗化したアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板材およびアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製蓋材を得た。
【0060】
合成例3で得られたPPS(A-3)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-1)7重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度310℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-2)をPPS(A-3)100重量部に対して100重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0061】
得られた該アルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板材およびアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度150℃、金型保圧を50MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ないアルミニウムダイカスト合金(ADC12)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られたアルミニウムダイカスト合金(ADC12)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を用いて、原子間力顕微鏡にてRz1、Ra1、Rq1を測定し、次いで、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、アルミニウムダイカスト合金(ADC12)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を原子間力顕微鏡により測定した。
【0062】
│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、アルミニウムダイカスト合金(ADC12)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
図3に示す形状のステンレス鋼(SUS316)製板材(50mm×10mm×1mm厚さ)および図2に示す形状のステンレス鋼(SUS316)製蓋材をアルミ用脱脂剤7.5%を含む水溶液(液温60℃)を入れた脱脂槽に5分浸漬した後、イオン交換水で水洗した。次いで、苛性ソーダを1.5%含む水溶液(液温40℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗し、さらに10%濃度の硫酸水溶液(液温65℃)を入れた槽に3分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで、3%硝酸水溶液(液温40℃)に3分間浸漬した後、これを水洗した後、温風乾燥機内で乾燥することにより、化学処理を施し表面粗化したステンレス鋼(SUS316)製板材およびステンレス鋼(SUS316)製蓋材を得た。
【0064】
合成例1で得られたPPS(A-1)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-2)8重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度310℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-2)をPPS(A-1)100重量部に対して75重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0065】
得られた該ステンレス鋼(SUS316)製板材およびステンレス鋼(SUS316)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度155℃、金型保圧を70MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ないステンレス鋼(SUS316)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られたステンレス鋼(SUS316)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を用いて、原子間力顕微鏡にてRz1、Ra1、Rq1を測定し、次いで、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、ステンレス鋼(SUS316)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を原子間力顕微鏡により測定した。
【0066】
│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、ステンレス鋼(SUS316)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表1に示す。
【0067】
実施例4
図3に示す形状の銅(C1100)製板材(50mm×10mm×1mm厚さ)および図2に示す形状の銅(C1100)製蓋材をアルミ用脱脂剤7.5%を含む水溶液(液温60℃)を入れた脱脂槽に5分浸漬した後、イオン交換水で水洗した。次いで、苛性ソーダを1.5%含む水溶液(液温40℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで、10%濃度の硝酸水溶液(液温40℃)を入れた槽に1分浸漬し、イオン交換水で水洗し、さらに3%濃度の硝酸水溶液(液温40℃)を入れた槽に10分浸漬し、イオン交換水で水洗した。次いで、過マンガン酸カリウム2%と苛性カリウム3%を含む水溶液(液温70℃)を入れた槽に35分間浸漬し、これをイオン交換水で水洗し、さらに亜塩素酸ソーダ5%と苛性ソーダ10%を含む水溶液(液温55℃)を入れた槽に10分間浸漬し、これをイオン交換水で水洗した後、温風乾燥機内で乾燥することにより、化学処理を施し表面粗化した銅(C1100)製板材および銅(C1100)製蓋材を得た。
【0068】
合成例2で得られたPPS(A-2)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-2)10重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-1)をPPS(A-2)100重量部に対して15重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0069】
得られた該銅(C1100)製板材および銅(C1100)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度150℃、金型保圧を50MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ない銅(C1100)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られた銅(C1100)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を用いて、原子間力顕微鏡にてRz1、Ra1、Rq1を測定し、次いで、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、銅(C1100)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を原子間力顕微鏡により測定した。
【0070】
│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、銅(C1100)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表1に示す。
【0071】
実施例5
合成例2で得られたPPS(A-2)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-1)10重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度280℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0072】
実施例1と同様の方法により得られた表面粗化したアルミニウム合金(A5052)製板材およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度285℃、金型温度150℃、金型保圧を50MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ないアルミニウム合金(A5052)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られたアルミニウム合金(A5052)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を用いて、原子間力顕微鏡にてRz1、Ra1、Rq1を測定し、次いで、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、アルミニウム合金(A5052)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を原子間力顕微鏡により測定した。
【0073】
│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、アルミニウム合金(A5052)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
比較例1
エチレン系共重合体を混合しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により得たPPS樹脂組成物、化学処理を施し表面粗化したアルミニウム合金(A5052)製板材およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を用いて、実施例1と同様の方法により複合体を製造した。得られた複合体を用いて、Rz1、Ra1、Rq1、Rz2、Ra2、Rq2を原子間力顕微鏡により測定した。
【0076】
│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2を超えるものあった。次いで、気密性評価を行った結果、気泡の発生が見られ、気密性の劣るものであった。結果を表2に示す。
【0077】
比較例2
エチレン系共重合体を混合しなかったこと以外は、実施例2と同様の方法により得たPPS樹脂組成物、化学処理を施し表面粗化したアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板材およびアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製蓋材を用いて、実施例2と同様の方法により複合体を製造した。得られた複合体を用いてRz1、Ra1、Rq1、Rz2、Ra2、Rq2を原子間力顕微鏡により測定した。
【0078】
│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2を超えるものであった。次いで、気密性評価を行った結果、気泡の発生が見られ、気密性の劣るものであった。結果を表2に示す。
【0079】
比較例3~5
金型温度、金型保圧を表2に示す条件とした以外は、実施例3と同様の方法により得たPPS樹脂組成物、化学処理を施し表面粗化したステンレス鋼(SUS316)製板材およびステンレス鋼(SUS316)製蓋材を用いて、実施例3と同様の方法により複合体を製造した。得られた複合体を用いてRz1、Ra1、Rq1、Rz2、Ra2、Rq2を原子間力顕微鏡により測定した。
【0080】
│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2を超えるものであった。次いで、気密性評価を行った結果、気泡の発生が見られ、気密性の劣るものであった。結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
実施例6
図3に示す形状のアルミニウム合金(A5052)製板材(50mm×10mm×1mm厚さ)および図2に示す形状のアルミニウム合金(A5052)製蓋材をアルミ用脱脂剤を7.5%含む水溶液(液温60℃)を入れた脱脂槽に5分浸漬した後、イオン交換水で水洗した。次いで、硫酸:塩化第二鉄:塩化第二銅:イオン交換水=8.2:7.8:0.4:83.6の重量比で混合した水溶液(30℃)を入れた槽に2分浸漬し、イオン交換水で水洗した後、温風乾燥機内で乾燥することにより、化学処理を施し表面粗化したアルミニウム合金(A5052)およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を得た。
【0083】
合成例1で得られたPPS(A-1)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-1)13重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-1)をPPS(A-1)100重量部に対して23重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0084】
得られた該アルミニウム合金(A5052)製板材およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度150℃、金型保圧を50MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ないアルミニウム合金(A5052)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られたアルミニウム合金(A5052)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を用いて、Rz1、Ra1、Rq1を共焦点レーザ顕微鏡にて測定し、次いで、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、アルミニウム合金(A5052)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を共焦点レーザ顕微鏡により測定して│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、アルミニウム合金(A5052)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表3に示す。
【0085】
実施例7
図3に示す形状のアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板材(50mm×10mm×1mm厚さ)および図2に示す形状のアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製蓋材をレーザ発振器としてシングルモードファイバーレーザを用い、出力274W、波長1070nm、レーザ照射速度10000mm/sec、ライン間隔0.05mmの条件で、連続波レーザ光を連続照射することにより、物理的処理を施し表面粗化したアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板材およびアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製蓋材を得た。そして、得られたアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板材およびアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製蓋材の表面粗化した箇所のRz1、Ra1、Rq1を共焦点レーザ顕微鏡により測定した。
【0086】
合成例3で得られたPPS(A-3)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-2)8重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度310℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-2)をPPS(A-3)100重量部に対して95重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0087】
得られた該アルミニウムダイカスト合金(ADC12)製板材およびアルミニウムダイカスト合金(ADC12)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度155℃、金型保圧を60MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ないアルミニウムダイカスト合金(ADC12)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られたアルミニウムダイカスト合金(ADC12)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、アルミニウムダイカスト合金(ADC12)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を共焦点レーザ顕微鏡により測定して│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、アルミニウムダイカスト合金(ADC12)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表3に示す。
【0088】
実施例8
図3に示す形状のステンレス鋼(SUS304)製板材(50mm×10mm×1mm厚さ)および図2に示す形状のステンレス鋼(SUS304)製蓋材をアルミ用脱脂剤7.5%を含む水溶液(液温60℃)を入れた脱脂槽に5分浸漬した後、イオン交換水で水洗した。次いで、35%濃度の塩酸水溶液:38%濃度の塩化第二鉄水溶液:塩化マンガン四水和物水溶液:40%濃度の2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン水溶液:イオン交換水=11:48:1:0.05:39.95の重量比で混合した水溶液(53℃)を入れた槽に13分浸漬し、イオン交換水で水洗した後、温風乾燥機内で乾燥することにより、化学処理を施し表面粗化したステンレス鋼(SUS304)製板材およびステンレス鋼(SUS304)製蓋材を得た。
【0089】
合成例3で得られたPPS(A-3)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-1)9重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度310℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-2)をPPS(A-3)100重量部に対して70重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0090】
得られた該ステンレス鋼(SUS304)製板材およびステンレス鋼(SUS304)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度310℃、金型温度155℃、金型保圧を60MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ないステンレス鋼(SUS304)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られたステンレス鋼(SUS304)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を用いて、Rz1、Ra1、Rq1を共焦点レーザ顕微鏡により測定し、次いで、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、ステンレス鋼(SUS304)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を共焦点レーザ顕微鏡により測定して│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、ステンレス鋼(SUS304)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表3に示す。
【0091】
実施例9
図3に示す形状の銅(C1100)製板材(50mm×10mm×1mm厚さ)および図2に示す形状の銅(C1100)製板材をレーザ発振器としてファイバーレーザ(株式会社キーエンス製、(商品名)MD-F3200)を用い、出力24W、波長1090nm、パルス周波数60kHz、レーザ照射速度2000mm/sec、ライン間隔0.05mmの条件で、レーザ光を照射することにより、物理的処理を施し表面粗化した銅(C1100)製板材および銅(C1100)製蓋材を得た。そして、得られた銅(C1100)製板材および銅(C1100)製蓋材の表面粗化した箇所のRz1、Ra1、Rq1を共焦点レーザ顕微鏡により測定した。
【0092】
合成例1で得られたPPS(A-1)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-1)12重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C-1)をPPS(A-1)100重量部に対して15重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0093】
得られた該銅(C1100)製板材および銅(C1100)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度145℃、金型保圧を55MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ない銅(C1100)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、銅(C1100)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を共焦点レーザ顕微鏡により測定して│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、銅(C1100)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表3に示す。
【0094】
実施例10
合成例2で得られたPPS(A-2)100重量部に対し、エチレン系共重合体(B-1)8重量部を予め均一に混合し、シリンダー温度280℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX25αIII)のホッパーに投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を作製した。
【0095】
実施例6と同様の方法により得られた表面粗化した該アルミニウム合金(A5052)製板材およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を金型内にセットし、シリンダー温度300℃、金型温度150℃、金型保圧を55MPaに設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75S)を用いてポリ(p-フェニレンスルフィド)樹脂組成物を射出成形し、図4に示す形状にインサート成形を行ないアルミニウム合金(A5052)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を作製した。そして、得られたアルミニウム合金(A5052)部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体である蓋材を用いて、Rz1、Ra1、Rq1を共焦点レーザ顕微鏡により測定し、次いで、該複合体を10%濃度の塩酸水溶液を入れた槽に浸漬し、アルミニウム合金(A5052)部材のみを溶解させた後、接合面のRz2、Ra2、Rq2を共焦点レーザ顕微鏡により測定して│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2以下であった。次いで、アルミニウム合金(A5052)部材-PPS樹脂部材複合体の気密性評価の結果、気泡の発生は見られず、気密性に優れるものであった。結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
比較例6
エチレン系共重合体を混合しなかったこと以外は、実施例6と同様の方法により得たPPS樹脂組成物、表面粗化したアルミニウム合金(A5052)製板材およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を用いて、実施例6と同様の方法により複合体を製造した。得られた複合体を用いて、Rz1、Ra1、Rq1、Rz2、Ra2、Rq2を共焦点レーザ顕微鏡により測定し、│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2を超えるものあった。次いで、気密性評価を行った結果、気泡の発生が見られ、気密性の劣るものであった。結果を表4に示す。
【0098】
比較例7~9
合成例1で得られたPPS(A-1)をPE(F-1)、PBT(D-1)、PA(E-1)に変更し、二軸押出機のシリンダー温度、射出成型機のシリンダー温度、金型温度、金型保圧を表4に示す条件とした以外は、実施例6と同様の方法により得た樹脂組成物、表面粗化したアルミニウム合金(A5052)製板材およびアルミニウム合金(A5052)製蓋材を用いて、実施例6と同様の方法により複合体を製造した。得られた複合体を用いてRz1、Ra1、Rq1、Rz2、Ra2、Rq2を共焦点レーザ顕微鏡により測定し、│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq1-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2を超えるものであった。次いで、気密性評価を行った結果、気泡の発生が見られ、気密性の劣るものであった。結果を表4に示す。
【0099】
比較例10~12
金型温度、金型保圧を表4に示す条件とした以外は、実施例8と同様の方法により得たPPS樹脂組成物、表面粗化したステンレス鋼(SUS304)製板材およびステンレス鋼(SUS304)製蓋材を用いて、実施例8と同様の方法により複合体を製造した。得られた複合体を用いてRz1、Ra1、Rq1、Rz2、Ra2、Rq2を共焦点レーザ顕微鏡により測定し、│(Rz1-Rz2)│/(Rz1+Rz2)、│(Ra1-Ra2)│/(Ra1+Ra2)、│(Rq-Rq2)│/(Rq1+Rq2)の値を算出した結果、いずれも0.2を超えるものであった。次いで、気密性評価を行った結果、気泡の発生が見られ、気密性の劣るものであった。結果を表4に示す。
【0100】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の複合体は、接合面に空隙等の欠陥が無く、接合面における気密性に優れ、さらに耐衝撃性、軽量性及び量産性に優れる金属部材-ポリアリーレンスルフィド樹脂部材複合体を提供するものであり、特に特に自動車や航空機などの輸送機器の部品用途、あるいは防水性の求められる携帯機器等の電気・電子部品用途に有用なものである。
【符号の説明】
【0102】
1;金属製板材。
2;金属製板材。
3;金属製蓋材。
4;PPS樹脂部材。
図1
図2
図3
図4