(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145538
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220926BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220926BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20220926BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220926BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J7/29
B32B27/00 M
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024014
(22)【出願日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2021045325
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 理恵
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AG00E
4F100AK25B
4F100AK41B
4F100AK51A
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100AT00C
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4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
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4F100BA10C
4F100BA10E
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4F100EJ05A
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4F100JA05B
4F100JK02
4F100JK06
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4F100JK20
4F100JL13B
4F100JL14E
4J004AA15
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J040ED031
4J040EF282
4J040KA16
4J040LA02
4J040LA06
4J040MA05
(57)【要約】
【課題】3次元曲面に対する追従性に優れた粘着フィルムを提供する。
【解決手段】基材11と、基材11の片面に積層された粘着層12とを備える粘着フィルム10であって、基材11は、架橋剤で架橋されているポリウレタン樹脂からなり、基材11と粘着層12とを有する積層体は、50%応力が10~29MPa、破断応力が30~69MPa、破断伸度が200~350%であり、粘着フィルム10は、被着体20のガラスに貼合した直後に測定される初期粘着力が2N/25mm以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の片面に積層された粘着層とを備える粘着フィルムであって、
前記基材は、架橋剤で架橋されているポリウレタン樹脂からなり、
前記基材と前記粘着層とを有する積層体は、50%応力が10~29MPa、破断応力が30~69MPa、破断伸度が200~350%であり、
前記粘着フィルムは、被着体のガラスに貼合した直後に測定される初期粘着力が2N/25mm以下であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
前記粘着フィルムは、被着体のガラスに貼合してから温度80℃に加熱した後に測定される永久粘着力が16N/25mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記粘着層が、ガラス転移温度(Tg)が-5℃~19℃のポリエステル系粘着剤を架橋して形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着層の20℃での動的粘弾性測定により得られる貯蔵弾性率G’が1.0MPa以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記基材の前記粘着層とは反対側の面に、カバーフィルムを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記基材の前記粘着層とは反対側の面に、印刷層が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記粘着層の前記基材とは反対側の面に、剥離フィルムを有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記粘着層の前記基材とは反対側の面に、被着体のガラスが貼合されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の表面を保護したり、表面に装飾を施したりする等の目的で、粘着フィルムが使用されている。
例えば、特許文献1には、ポリ塩化ビニルフィルムを基材として、アクリル系粘着剤から形成された粘着層を積層した加飾成形用フィルムを用いることにより、三次元曲面部にも柔軟に追従できることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、自動車の塗装鋼板表面上に貼着するための粘着シートにおいて、基材がポリカーボネート系ポリウレタンからなる硬質層とポリエステル系ポリウレタンからなる軟質層とを含み、粘着剤層がカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー等を共重合成分とするアクリル系粘着剤から形成されることが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、ポリエステル系またはポリカーボネート系のポリウレタン樹脂の無延伸フィルムよりなる基材の一面に粘着剤層を積層し、基材の他面に、装飾表示層を設けた薄膜マーキングシートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6577380号公報
【特許文献2】特許第4886969号公報
【特許文献3】特開2003-295769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物品の表面に使用される粘着フィルムでは、基材に対する印刷等により、加飾を施す場合がある。特許文献1には、ポリ塩化ビニルフィルムに可塑剤を添加することにより、3次元曲面への貼り付けを容易とする伸びと、加飾成形用の印刷性に優れるとの記載がある。しかし、有機塩素系化合物を使用することから、用途が制限されるおそれがある。
【0007】
特許文献2には、小石等の物体が跳ね上げられて車体を損傷させる現象であるチッピングに対して、車体を保護するため、3次元曲面に粘着シートを貼着する記載があるが、ポリウレタン樹脂を架橋する記載はない。
特許文献3には、基材のポリウレタン樹脂が非架橋の線状ウレタン樹脂でも架橋高分子のような強靭な物性を示すことが記載されているが、ポリウレタン樹脂を架橋する記載はない。
【0008】
3次元曲面に対する追従性を高めるためには、3次元曲面に対して粘着層が追従する前に粘着層が被着体に貼着すると、3次元曲面に対する追従が困難になる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、3次元曲面に対する追従性に優れた粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、基材と、前記基材の片面に積層された粘着層とを備える粘着フィルムであって、前記基材は、架橋剤で架橋されているポリウレタン樹脂からなり、前記基材と前記粘着層とを有する積層体は、50%応力が10~29MPa、破断応力が30~69MPa、破断伸度が200~350%であり、前記粘着フィルムは、被着体のガラスに貼合した直後に測定される初期粘着力が2N/25mm以下であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。初期粘着力の下限値は限定されないが、0.1N/25mmであってもよい。
【0011】
前記粘着フィルムは、被着体のガラスに貼合してから温度80℃に加熱した後に測定される永久粘着力が16N/25mm以上であってもよい。永久粘着力の上限値は限定されないが、50N/25mmであってもよい。
前記粘着層が、ガラス転移温度(Tg)が-5℃~19℃のポリエステル系粘着剤を架橋して形成されていてもよい。
前記粘着層の20℃での動的粘弾性測定により得られる貯蔵弾性率G’が1.0MPa以上であってもよい。貯蔵弾性率G’の上限値は限定されないが、10MPaであってもよい。
【0012】
前記基材の前記粘着層とは反対側の面に、カバーフィルムを有してもよい。
前記基材の前記粘着層とは反対側の面に、印刷層が形成されていてもよい。
前記粘着層の前記基材とは反対側の面に、剥離フィルムを有してもよい。
前記粘着層の前記基材とは反対側の面に、被着体のガラスが貼合されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、3次元曲面に対する追従性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】粘着フィルムを貼合した被着体の一例を示す断面図である。
【
図3】3次元曲面を有する被着体に粘着フィルムを追従させた例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0016】
図1に、粘着フィルムの一例を示す。粘着フィルム10は、基材11と、基材11の片面に積層された粘着層12とを備える。基材11の粘着層12とは反対側の面は、印刷等の加飾が可能な加飾面11aとなっている。粘着層12の基材11とは反対側の面は、物品等への貼合が可能な粘着面12aとなっている。
【0017】
基材11は、架橋剤で架橋されているポリウレタン樹脂から形成されている。これにより、粘着面12aに3次元曲面を有する被着体を貼合する場合にも、3次元曲面に対する追従性を改善することができる。
【0018】
ポリウレタン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物を主体とする樹脂であれば特に限定されず、公知のポリウレタン樹脂から適宜選択して用いることができる。基材11が1種のポリウレタン樹脂を含有してもよく、2種以上のポリウレタン樹脂を含有してもよい。
【0019】
ポリオールとしては、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル系ポリオール、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ラクトン系ポリオール等が挙げられる。ポリオールは、1分子に2個の水酸基を有するジオールでもよく、1分子に3個の水酸基を有するトリオールでもよい。ポリオールが4個以上の水酸基を有してもよい。
【0020】
ポリイソシアネートとしては、1分子に2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートでもよく、1分子に3個のイソシアネート基を有するトリイソシアネートでもよい。ポリイソシアネートが、4個以上のイソシアネート基を有してもよい。ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0021】
少なくとも1種以上のジオールと、少なくとも1種以上のジイソシアネートとを反応させることにより、線状のポリウレタン樹脂を得ることができる。ポリオールの少なくとも一部として、1分子に3個以上の水酸基を有する化合物を用いたり、ポリイソシアネートの少なくとも一部として、1分子に3個以上のイソシアネート基を有する化合物を用いたりすることにより、架橋構造のポリウレタン樹脂を得ることができる。架橋されたポリウレタン樹脂を用いると、飛散防止フィルム等の機械的強度や耐久性が要求される粘着フィルム10の場合にも、基材11の機械的強度や耐久性を向上することができる。
【0022】
イソシアネート基に対して未反応の水酸基を有するポリウレタン樹脂に対し、架橋剤として、ポリイソシアネートを反応させることにより、ポリウレタン樹脂を架橋させることができる。イソシアネート基を有するポリウレタン樹脂に対し、架橋剤として、ポリオールを反応させても、ポリウレタン樹脂を架橋させることができる。ポリウレタン樹脂に対する架橋剤は、ポリイソシアネートやポリオールに限定されるものではなく、ポリウレタン樹脂の有する水酸基やイソシアネート基等の官能基に対して反応することが可能な適宜の架橋剤を使用してもよい。架橋剤の割合は、適宜設定することが可能であるが、例えば、ポリウレタン樹脂100重量部に対して、架橋剤5~20重量部が挙げられる。
【0023】
基材11の厚さは特に限定されないが、例えば、30~150μm程度が挙げられる。基材11の厚さは、100μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましい。基材11を形成する方法としては、特に限定されず、インフレーション成形、押出成形、溶液キャスト、熱プレス、カレンダー成形、切削などが挙げられる。
【0024】
例えば、溶液キャストにより基材11を形成する場合は、溶剤に溶解したポリウレタン樹脂を所定の塗布面に塗布した後、溶剤を乾燥させることにより、ポリウレタン樹脂をフィルム状に形成することができる。溶剤としては、特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。
【0025】
熱可塑性または溶剤可溶性を有するポリウレタン樹脂をフィルム状に形成した後で、ポリウレタン樹脂に添加した架橋剤を反応させることにより、ポリウレタン樹脂を架橋させてもよい。これにより、基材11の形成に適した加工性と、基材11の用途に適した耐久性を両立しやすくなる。
【0026】
水分等に対する耐久性の観点からは、加水分解性の低いポリカーボネート系またはポリエーテル系のポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。溶液キャスト等における塗工性、生産性の観点からは、架橋前のポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万~10万程度が好ましい。架橋後のポリウレタン樹脂のゲル分率は、50~90%程度が好ましく、70~80%程度が好ましい。
【0027】
実施形態の基材11と粘着層12とを有する積層体は、50%応力が10~29MPa、破断応力が30~69MPa、破断伸度が200~350%である。これにより、粘着面12aに3次元曲面を有する被着体を貼合する場合にも、3次元曲面に対する追従性を改善することができる。また、粘着フィルム10をガラスに貼合した状態で、ガラスが破損しても、ガラスの飛散を防止する飛散防止性を改善することができる。
【0028】
50%応力は、基材11と粘着層12とを有する積層体から形成された試験片に引っ張り力を作用させ、伸び率が50%になった時の応力(MPa)である。50%応力が大きいほど、引っ張り力に対して耐久性が増大するので、好ましい。
【0029】
破断応力は、基材11と粘着層12とを有する積層体から形成された試験片に引っ張り力を作用させ、試験片が破断した時の応力(MPa)である。破断応力が大きいほど、引っ張りによる破断に対して耐久性が増大するので、好ましい。
【0030】
破断伸度は、基材11と粘着層12とを有する積層体から形成された試験片に引っ張り力を作用させ、試験片が破断した時の伸び率(%)である。3次元曲面に対する追従性を得るためには、適度な破断伸度が望ましいが、過度な破断伸度は、基材11が伸び過ぎて、緩みやすくなる。
【0031】
50%応力、破断応力、破断伸度は、例えば、株式会社島津製作所などで製造されている引張試験装置を用いて測定することができる。粘着フィルム10がカバーフィルム13または剥離フィルム14を有する場合、基材11と粘着層12とを有する積層体とは、それぞれカバーフィルム13または剥離フィルム14を有しない状態である。
【0032】
基材11は、必要に応じて、着色剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤等の添加剤が添加されていてもよい。基材11は、着色剤等を添加しない場合、高い透明性を付与することができる。基材11の透明性としては、例えば、全光線透過率90%以上、ヘイズ2%以下が挙げられる。
【0033】
粘着層12は、粘着剤から形成されている。粘着剤は、特に限定されず、粘着フィルム10が貼合される物品等に応じて、公知の粘着剤から適宜選択して用いることができる。粘着層12は、基材11と接するように積層されてもよい。基材11と粘着層12との間に他の層が介在してもよい。透明性、耐候性等の観点からは、ポリエステル系粘着剤等が挙げられる。
【0034】
ポリエステル系粘着剤としては、ジカルボン酸等のポリカルボン酸と、ジオール等のポリオールとを重縮合させて得られるポリエステル系ポリマーを用いた粘着剤が挙げられる。ジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。ジオールとしては、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリエーテルグリコール等が挙げられる。ポリエステル系ポリマーの粘着力を向上するため、ポリイソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能性エポキシ化合物、金属キレート化合物等の架橋剤を用いて架橋させてもよい。
【0035】
粘着層12を形成する方法は特に限定されないが、粘着剤(ポリマー)と架橋剤を含有する粘着剤組成物を基材11に塗布した後、養生(エージング)により粘着剤を架橋剤で架橋して粘着層12を形成してもよい。架橋剤の割合は、適宜設定することが可能であるが、例えば、粘着剤100重量部に対して、架橋剤1~10重量部が挙げられる。基材11以外のシート状に粘着剤を塗布し、乾燥させた後、粘着層12を基材11上に転写させてもよい。基材11と粘着層12との間に他の層が介在してもよく、基材11と粘着層12とが互いに接していてもよい。
【0036】
粘着層12の厚さは特に限定されないが、例えば、10~50μm程度が挙げられる。粘着層12は、常温(5~35℃の範囲内)でタック性を有してもよく、常温より高い温度でタック性を有してもよい。例えば、常温より高い温水中でタック性を有する粘着層12の場合は、粘着剤のガラス転移温度(Tg)が-5℃~19℃程度であることが好ましい。例えば、ガラス転移温度(Tg)が-5℃~19℃のポリエステル系粘着剤を架橋して粘着層12を形成してもよい。架橋後の粘着層12では、Tgが30℃程度となることが好ましい。これにより、粘着フィルム10の曲面追従性に加えて、粘着層12の耐久性が向上するため、ガラスの飛散防止性を改善することができる。
【0037】
粘着層12の20℃での動的粘弾性測定により得られる貯蔵弾性率G’が1.0MPa以上であることが好ましい。これは、粘着層12が20℃において、一般的な粘着剤よりも硬い性質を有することを意味する。動的粘弾性測定の振動周波数は、例えば1Hzである。
【0038】
常温において、粘着フィルム10を被着体のガラスに貼合した直後に測定される初期粘着力が、2N/25mm以下であることが好ましい。これにより、粘着フィルム10が初期粘着力を発現する段階では、粘着層12が被着体に対して変位しやすく、粘着フィルム10の曲面追従性に優れる。
【0039】
また、粘着フィルム10を被着体のガラスに貼合してから温度80℃に加熱した後に測定される永久粘着力が、16N/25mm以上であることが好ましい。これにより、粘着フィルム10が永久粘着力を発現する段階では、粘着層12が被着体に密着して、曲面に追従した状態を維持しやすくなる。なお、永久粘着力の測定条件として、温度80℃の加熱は、粘着フィルム10が永久粘着力を発現する段階に到達させやすい観点からの例示である。粘着フィルム10の使用条件においては、80℃とは異なる温度に加熱することで永久粘着力を発現させてもよく、常温で長時間(例えば24時間以上)放置した後で永久粘着力を発現させてもよい。
【0040】
基材11および粘着層12を含む粘着フィルム10の厚さは特に限定されないが、例えば、40~200μm程度が挙げられる。ここで、粘着フィルム10の厚さとは、上記の基材11と粘着層12とを有する積層体の厚さであり、下記のカバーフィルム13および剥離フィルム14の厚さが含まれない。粘着フィルム10の厚さは、100μm以下がより好ましい。
【0041】
加飾面11aを保護するため、粘着フィルム10は、基材11の粘着層12とは反対側の面に、カバーフィルム13を有してもよい。カバーフィルム13としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、セロファンフィルム、紙、樹脂ラミネート紙、金属箔、樹脂ラミネート金属箔、金属蒸着樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0042】
カバーフィルム13は、不透明あるいは半透明でもよいが、透明性が高いカバーフィルム13を用いる場合、カバーフィルム13を剥がさなくても、加飾面11aの状態を目視で容易に確認することができるので、好ましい。カバーフィルム13が無延伸の樹脂フィルムまたは延伸された樹脂フィルムであってもよい。カバーフィルム13は、加飾面11aに接する側の面に、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤などの剥離剤の層を有してもよい。カバーフィルム13が、加飾面11aに接する側の面に、剥離剤を有しなくてもよい。
【0043】
粘着面12aを保護するため、粘着フィルム10は、粘着層12の基材11とは反対側の面に、剥離フィルム14を有してもよい。剥離フィルム14としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、セロファンフィルム、紙、樹脂ラミネート紙、金属箔、樹脂ラミネート金属箔、金属蒸着樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0044】
剥離フィルム14は、不透明あるいは半透明でもよいが、透明性が高い剥離フィルム14を用いる場合、剥離フィルム14を剥がさなくても、粘着面12aの状態を目視で容易に確認することができるので、好ましい。剥離フィルム14が無延伸の樹脂フィルムまたは延伸された樹脂フィルムであってもよい。剥離フィルム14は、粘着面12aに接する側の面に、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤などの剥離剤の層を有してもよい。剥離フィルム14が、粘着面12aに接する側の面に、剥離剤を有しなくてもよい。
【0045】
図2に、粘着フィルム10を貼合した被着体20の一例を示す。基材11には印刷層15が形成されており、粘着層12には被着体20が貼合されている。基材11に印刷層15を形成する工程と、粘着層12に被着体20を貼合する工程の順序は限定されないが、基材11に印刷層15を形成した後で、粘着層12に被着体20を貼合することが好ましい。粘着フィルム10を被着体20に適合する寸法に裁断する工程を有してもよい。基材11に対する印刷は、粘着フィルム10の裁断前に実施することが好ましい。
【0046】
基材11に印刷する際、必要に応じて、加飾面11aにプライマー等の易接着層を設けてもよい。加飾面11aを保護するためにカバーフィルム13を設けた場合は、印刷前にカバーフィルム13が除去される。基材11を形成した後、加飾面11aにカバーフィルム13を設けることなく、印刷層15を形成してもよい。
【0047】
印刷層15を形成する方法は、特に限定されないが、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等の印刷方式が挙げられる。印刷層15は、加飾面11aの全面に形成されてもよいし、加飾面11aの一部の領域に形成されてもよい。印刷層15を2層以上重ね合わせてもよい。加飾面11aの異なる領域に、異なる印刷層15を形成してもよい。加飾面11aには、印刷層15以外の加飾を施してもよい。他の加飾層としては、例えば、スパッタ等による金属蒸着層などが挙げられる。
【0048】
印刷層15を形成するためのインキは、顔料、染料等の着色材と、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、環化ゴム等が挙げられる。インキは、水、有機溶剤、植物油などの溶剤を含有してもよい。印刷後は、溶剤の揮発やインキの硬化等によりインキを乾燥させることができる。インキの乾燥を促進するため、加熱、紫外線照射等を実施してもよい。
【0049】
粘着フィルム10を被着体20に貼合する前に、粘着層12から剥離フィルム14が除去される。これにより、粘着層12を介して、粘着フィルム10を被着体20に貼合することができる。被着体20は、表示面、筐体等にガラスを用いた電子機器であってもよい。被着体20において粘着層12に接する面の材質は、特に限定されないが、ガラス、金属、プラスチック等が挙げられる。
図3に示すように、平面部21と曲面部22を有する被着体20に粘着フィルム10を貼合したときの追従性にも優れている。曲面部22は、平面部21の周囲の1辺に限らず、対向する2辺、あるいは、周囲の各辺(平面部21が矩形状なら4辺)に設けられていてもよい。
【0050】
粘着フィルム10を被着体20に貼合する方法は特に限定されないが、加圧、吸引等を用いて、粘着層12を被着体20に密着させればよい。加圧方式としては、ロール部材、棒状部材、板状部材等の機械方式でもよく、液体または気体等の流体を用いた圧力媒体方式でもよい。粘着フィルム10を被着体20に仮に付着させた後、周囲から液体の圧力を作用させて等方的に加圧することが好ましい。圧力媒体が温水であってもよい。吸引方式としては、真空を用いて粘着フィルム10と被着体20との間の空気を吸引する方式が挙げられる。
【0051】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0052】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0053】
(基材の製造)
表1に示した処方1~9により、ポリウレタン樹脂製の基材を9種製造した。
処方1では、ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、商品名ダイフェラミン(登録商標)MAU8288A、重量平均分子量5万)100重量部、架橋剤としてTDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)L-45E)10重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0054】
処方2では、前記ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、商品名ダイフェラミン(登録商標)MAU8288A、重量平均分子量5万)100重量部を用い、架橋剤は添加せずにポリウレタン溶液を作成し、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0055】
処方3では、ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂(東ソー株式会社製、商品名ニッポラン(登録商標)5199、重量平均分子量3万)100重量部、架橋剤としてHDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)HX)4重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0056】
処方4では、ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂(東ソー株式会社製、商品名ニッポラン(登録商標)5230、重量平均分子量6万)100重量部、架橋剤としてHDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)HX)4重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0057】
処方5では、ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、商品名ダイフェラミン(登録商標)MAU8288A、重量平均分子量5万)100重量部、架橋剤としてTDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)L-45E)15重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0058】
処方6では、ポリエーテル系のポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、商品名レザミン(登録商標)8883HV、重量平均分子量8万)100重量部、架橋剤としてHDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)HX)4重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0059】
処方7では、ポリエーテル系のポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、商品名レザミン(登録商標)8883HV、重量平均分子量8万)100重量部を用い、架橋剤は添加せずにポリウレタン溶液を作成し、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0060】
処方8では、ポリエーテル系のポリウレタン樹脂(大日精化工業株式会社製、商品名レザミン(登録商標)8883HV、重量平均分子量8万)100重量部、架橋剤としてHDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)HX)6
重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0061】
処方9では、ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂(藤倉化成株式会社製、商品名USV1402、重量平均分子量2万)100重量部、架橋剤としてHDI系ポリイソシアネート(東ソー株式会社製、商品名コロネート(登録商標)HX)10重量部を含有するポリウレタン溶液を用いて、溶液キャスト法により、厚さ60μmのフィルムを形成して基材とした。
【0062】
また、市販の熱可塑性ポリウレタンエラストマー樹脂(TPU)フィルム(大倉工業株式会社製、商品名シルクロン(登録商標)SNY97、厚さ80μm)を所定の寸法にカットして、比較例8の基材を作製した。
【0063】
【0064】
(粘着層の製造)
上記のようにして得られた各基材の片面に、表2に示す組成で粘着層A~Dを形成して、種々の粘着フィルムを得た。
粘着層Aは、ポリエステル系粘着剤(三菱ケミカル株式会社製、商品名ニチゴーポリエスターS-0097、重量平均分子量2万、Tg=1℃)100重量部に、上記の架橋剤(商品名コロネートL-45E)4重量部を添加した粘着剤を用いて、基材の片面に厚さ20μmの粘着層を形成した。粘着層は、乾燥後の厚さが20μmとなるように架橋剤および溶剤を含有する粘着剤を基材に塗布した後、溶剤を乾燥させ、さらに養生(エージング)により粘着剤を架橋させて形成した。
【0065】
粘着層Bは、アクリル系粘着剤(藤森工業株式会社製、商品名TR-499、重量平均分子量45万、Tg=-30℃)100重量部に、上記の架橋剤(商品名コロネートL-45E)0.8重量部を添加した粘着剤を用いて、基材の片面に厚さ20μmの粘着層を粘着剤Aと同様に形成した。
【0066】
粘着層Cは、ポリエステル系粘着剤(三菱ケミカル株式会社製、商品名ニチゴーポリエスターXNP-1013、重量平均分子量3万、Tg=16℃)100重量部に、上記の架橋剤(商品名コロネートL-45E)4重量部を添加した粘着剤を用いて、基材の片面に厚さ20μmの粘着層を粘着剤Aと同様に形成した。
【0067】
粘着剤Dは、ポリエステル系粘着剤(三菱ケミカル株式会社製、商品名ニチゴーポリエスターS-0091、重量平均分子量2.5万、Tg=-10℃)100重量部に、上記の架橋剤(商品名コロネートL-45E)4重量部を添加した粘着剤を用いて、基材の片面に厚さ20μmの粘着層を粘着剤Aと同様に形成した。
【0068】
【0069】
(実施例1~5および比較例1~8の製造)
表3に示すように、各処方1~9の基材および比較例8の基材と、粘着層A~Dとを組み合わせて、実施例1~5および比較例1~8の粘着フィルムをそれぞれ製造した。各粘着フィルムの厚さは、表3に示す通りとなった。
【0070】
実施例1~5及び比較例1~8に用いた架橋後の粘着剤について、架橋後の粘着層のガラス転移温度(Tg)、および、20℃での粘着層の貯蔵弾性率G’(MPa)を測定した。粘着層の貯蔵弾性率G’はJIS K 7244-10に準じた方法で行った。その結果を表3に示す。
【0071】
(粘着フィルムのガラスに対する初期粘着力の測定方法)
粘着フィルムの基材側の面にポリエステルフィルムテープ(ポリエステル基材の厚さ25μm)を、ゴムローラーを用いて空気が入らないように貼合した後、粘着層側の剥離フィルムを剥がし、ガラス板に2kg荷重のゴムローラーを用いて空気が入らないように貼合して、評価サンプルを作製した。評価サンプルの粘着フィルムをガラスに貼合した後10分以内に、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で粘着層とガラスとの間を引き剥がし、粘着力(N/25mm)を測定した。得られた測定値を初期粘着力とした。
【0072】
(粘着フィルムのガラスに対する永久粘着力の測定方法)
粘着フィルムの基材側の面にポリエステルフィルムテープ(ポリエステル基材の厚さ25μm)を、ゴムローラーを用いて空気が入らないように貼合した後、粘着層側の剥離フィルムを剥がし、ガラス板に2kg荷重のゴムローラーを用いて空気が入らないように貼合し、得られた貼合品を0.5MPa、80℃、20minの条件でオートクレーブ処理して、評価サンプルを作製した。評価サンプルを温度23±5℃の環境下で12時間以上静置して、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で粘着層とガラスとの間を引き剥がし、粘着力(N/25mm)を測定した。得られた測定値を永久粘着力とした。
【0073】
(粘着フィルムの50%応力、破断応力、破断伸度の測定方法)
流れ方向150mm、幅方向15mmの寸法で、粘着フィルムのサンプル片を採取した。チャック間距離を100mmにセットし、基材と粘着層とを有する積層体の状態で、引張速度300mm/minで引張試験を実施した。破断時の応力を破断応力とし、破断時の伸び率を破断伸度とし、50%伸びでの応力を50%応力とした。
【0074】
(粘着フィルムの曲面追従性の評価方法)
粘着フィルムの曲面追従性は、7cm×15cmの平面部の周囲に曲面部(平面視した幅:10mm、断面の曲げ角度70度)を有するガラス製の被着体に対して、粘着フィルムを表面全面に貼合したときの追従性を目視で評価して、優れている場合を○、悪い場合を×と評価した。優れている場合とは、曲面の全面に亘って隙間やしわがなく貼付できた場合を示す。悪い場合とは、曲面の少なくとも一部に隙間やしわが生じり、粘着フィルムに破れが生じた場合を示す。
【0075】
(粘着フィルムの飛散防止性の評価方法)
粘着フィルムの飛散防止性は、ガラス製の被着体に粘着フィルムを貼合した状態で被着体の中央部を金属片で叩いて被着体を破損させて、優れている場合を○、悪い場合を×と評価した。優れている場合とは、割れたガラスが粘着フィルムから離れて落下せず、かつ、粘着フィルムが破れない状態を示し、悪い場合とは、割れたガラスが粘着フィルムから離れて落下したり、粘着フィルムが破れた状態を示す。
【0076】
(評価結果)
表3に、実施例1~5及び比較例1~8の粘着フィルムの評価結果を併せて示す。粘着フィルムの総厚は、基材および粘着層を合わせた厚さに等しい。
【0077】
【0078】
表3に示すように、実施例1~5の粘着フィルムは、50%応力、破断応力、破断伸度が適度な範囲であり、初期粘着力が小さく、被着体に対する曲面追従性が優れていた。
比較例3および8の粘着フィルムは、粘着フィルムを被着体に貼合する前の伸びが大きいため、曲面追従性が悪かった。
比較例1,2,4,5,6,および7の粘着フィルムは、初期粘着力が大きく、粘着フィルムを被着体に仮固定するときに強く貼合するため、曲面追従性が悪かった。
【0079】
実施例1~5の粘着フィルムは、ガラスの破損時に基材が破損せず、また粘着層が剥がれず、飛散防止性が優れていた。
比較例3および8の粘着フィルムは、ガラスの破損時に基材が破損して、飛散防止性が悪かった。
比較例4,5,および7の粘着フィルムは、ガラスの破損時に粘着層が剥がれて、飛散防止性が悪かった。
10…粘着フィルム、11…基材、11a…加飾面、12…粘着層、12a…粘着面、13…カバーフィルム、14…剥離フィルム、15…印刷層、20…被着体、21…平面部、22…曲面部。