IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 出光興産株式会社の特許一覧

特開2022-145656固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法
<>
  • 特開-固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法 図1
  • 特開-固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法 図2
  • 特開-固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法 図3
  • 特開-固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法 図4
  • 特開-固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法 図5
  • 特開-固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法 図6
  • 特開-固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法 図7
  • 特開-固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022145656
(43)【公開日】2022-10-04
(54)【発明の名称】固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20220926BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20220926BHJP
   C25B 3/07 20210101ALI20220926BHJP
   C25B 3/23 20210101ALI20220926BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20220926BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20220926BHJP
   C08G 64/24 20060101ALI20220926BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 29/48 20060101ALN20220926BHJP
   C07C 39/04 20060101ALN20220926BHJP
【FI】
C25B9/00 G
C25B1/23
C25B3/07
C25B3/23
C25B1/26 A
C25B9/23
C08G64/24
C08G18/32 006
C25B9/00 C
C07C29/48
C07C39/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043491
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2021046540
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】陳 信偉
(72)【発明者】
【氏名】ジア チンシン
(72)【発明者】
【氏名】熊 諳珂
【テーマコード(参考)】
4H006
4J029
4J034
4K021
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA05
4H006BA55
4H006BA91
4H006BD81
4H006FC52
4H006FE13
4J029AA09
4J029AB05
4J029AC01
4J029BB13A
4J029HC01
4J029LB01
4J029LB10
4J034BA02
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034HA01
4J034HA06
4K021AA03
4K021AB25
4K021AC04
4K021AC06
4K021BA03
4K021BA08
4K021BA11
4K021CA01
4K021CA05
4K021CA15
4K021DB53
4K021DC11
4K021DC13
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】 陽極における電気分解に必要な印加電圧を低減することで、電気分解にかかるエネルギーを低減させることが可能な固体電解質形電解装置に関する技術を提供する。
【解決手段】 本発明の一態様は、還元反応を行うカソードと、前記カソードと1対の電極を構成するアノードと、前記アノードで電気分解される処理体を保持する電解槽と、前記カソードと前記アノードとの間に接触状態にて介在する固体電解質と、前記カソードと前記アノードとの間に電圧を印加する電圧印加部と、を有し、前記処理体が、ベンゼン又はオレフィンを含むことを特徴とする、固体電解質形電解装置である。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元反応を行うカソードと、
前記カソードと1対の電極を構成するアノードと、
前記アノードで電気分解される処理体を保持する電解槽と、
前記カソードと前記アノードとの間に接触状態にて介在する固体電解質と、
前記カソードと前記アノードとの間に電圧を印加する電圧印加部と、を有し、
前記処理体が、ベンゼン又はオレフィンを含むことを特徴とする、固体電解質形電解装置。
【請求項2】
前記オレフィンが、エチレン又はプロピレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体電解質形電解装置。
【請求項3】
請求項1に記載の固体電解質形電解装置を用いるポリカーボネートの製造方法であって、
前記処理体が、ベンゼンを含み、
前記アノードにおいて前記ベンゼンを電気分解して少なくともフェノールを生成し、前記カソードにおいて二酸化炭素から少なくとも一酸化炭素を生成し、前記フェノールをアセトンと反応させてビスフェノールAを生成するビスフェノールA生成工程と、
前記一酸化炭素を塩素と反応させてホスゲンを生成するホスゲン生成工程と、
前記ビスフェノールAと、前記ホスゲンと、を反応させてポリカーボネートを生成するポリカーボネート生成工程と、を含むことを特徴とする、ポリカーボネートの製造方法。
【請求項4】
前記塩素は、第2の固体電解質形電解装置において塩水の電気分解により生成され、
前記第2の固体電解質形電解装置は、
還元反応を行う第2のカソードと、
前記第2のカソードと1対の電極を構成する第2のアノードと、
前記第2のアノードにおける電気分解の処理体である塩水を保持する電解槽と、
前記第2のカソードと前記第2のアノードとの間に接触状態にて介在する固体電解質と、
前記第2のカソードと前記第2のアノードとの間に電圧を印加する電圧印加部と、を有することを特徴とする、請求項3に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の固体電解質形電解装置を用いるポリウレタンの製造方法であって、
前記処理体が、オレフィンを含み、
前記アノードにおいて前記オレフィンを電気分解して少なくともオレフィンオキシドを生成し、前記カソードにおいて二酸化炭素から少なくとも一酸化炭素を生成し、前記オレフィンオキシドを水と反応させてオレフィングリコールを生成するオレフィングリコール生成工程と、
前記一酸化炭素を塩素と反応させてホスゲンを生成するホスゲン生成工程と、
前記ホスゲンを第一級アミンと反応させてイソシアネート化合物を生成するイソシアネート生成工程と、
前記オレフィングリコールと、前記イソシアネート化合物と、を反応させてポリウレタンを生成するポリウレタン生成工程と、を含むことを特徴とする、ポリウレタンの製造方法。
【請求項6】
前記塩素は、第2の固体電解質形電解装置において塩水の電気分解により生成され、
前記第2の固体電解質形電解装置は、
還元反応を行う第2のカソードと、
前記第2のカソードと1対の電極を構成する第2のアノードと、
前記第2のアノードにおける電気分解の処理体である塩水を保持する電解槽と、
前記第2のカソードと前記第2のアノードとの間に接触状態にて介在する第2の固体電解質と、
前記第2のカソードと前記第2のアノードとの間に電圧を印加する第2の電圧印加部と、を有することを特徴とする、請求項5に記載のポリウレタンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質形電解装置並びにそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(以降、COと略す場合がある)は化石燃料などからエネルギーを取り出した際に排出される。大気中の二酸化炭素濃度の上昇は地球温暖化の原因の一つだと言われているが、二酸化炭素は極めて安定した物質であるため、分解などして利用することが困難である。そのため、二酸化炭素を他の物質に変換し、再び資源化する技術が望まれている。
【0003】
近年、電気エネルギーを利用した二酸化炭素還元の研究が、広く行われている。二酸化炭素を還元する固体電解質形電解装置では、陰極(以降、カソードと記載する場合がある)に供給される電解質を含んだ水溶液に二酸化炭素を溶解させるとともに、陽極(以降、アノードと記載する場合がある)に水や電解質を含んだ水溶液を供給し、電気分解する形が一般的である。陰極と陽極との間にはイオンを交換するための電解質が設けられ、その部材としてはイオン交換膜が用いられることがある。このような固体電解質形電解装置として、特許文献1に開示されている二酸化炭素電解装置を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-154901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている二酸化炭素電解装置では、陽極側電解質として水を供給し、電気分解することで水酸化物イオンを発生させるが、この電気分解に必要となる印加電圧が高くなり、電気分解にかかるエネルギーが大きくなるおそれがあった。
【0006】
また、ポリカーボネートの製造方法では、一般にベンゼンとプロピレンからフェノールを生成するクメン法が用いられている。クメン法では200℃において反応させる必要があるため、高温に対応した設備が必要となり、設備投資のコストが大きくなる。また、大量の二酸化炭素が発生するため好ましくない。また、一酸化炭素は、一般に石炭に少量の酸素を加え、蒸し焼きにして得られるが、大掛かりな設備や安全上の設備が必要となり設備投資コストが大きくなるおそれがあった。
【0007】
ポリウレタンの製造方法では、一般にエチレンを酸化させ、エチレンオキシドを生成する方法が用いられている。この方法ではエチレンを240℃において酸化させる必要があるため、高温に対応した設備が必要となり、設備投資のコストが大きくなる。また、大量の二酸化炭素が発生するため好ましくない。さらに、一酸化炭素は、一般に石炭に少量の酸素を加え、蒸し焼きにして得られるが、大掛かりな設備や安全上の設備が必要となり設備投資コストが大きくなるおそれがあった。
【0008】
そこで、本開示は、陽極における電気分解に必要な印加電圧を低減することで、電気分解にかかるエネルギーを低減させることが可能な固体電解質形電解装置に関する技術を提供することを目的とする。また、本開示技術の固体電解質形電解装置を用い、COとベンゼンを元に、有機電解合成によりフェノールと一酸化炭素を同時に生成することで、COの再利用が可能であるとともに、設備の効率化(簡略化)が可能となり、製造コスト及び設備投資コストを低減できるポリカーボネートの製造方法を提供することを目的とする。さらに、本開示技術の固体電解質形電解装置を用い、COとオレフィンを元に、有機電解合成によりオレフィンオキシドと一酸化炭素を同時に生成することで、COの再利用が可能であるとともに、設備の効率化(簡略化)が可能となり、製造コスト及び設備投資コストを低減できるポリウレタンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的の実現に向け鋭意検討した結果、アノードにおいて電気分解に供される処理体として、ベンゼン又はオレフィンを含むことで、これらの処理体を電気分解するために必要な印加電圧が、水の場合と比べて低減できることを見出し、本開示技術を完成するに至った。
【0010】
また、同時に、前記処理体としてベンゼンが含まれる場合には、アノードにおける電気分解によりフェノールが得られ、同様にカソードにおける電気分解により一酸化炭素(以降、COと略す場合がある)が得られる。このようにして得られたフェノールと一酸化炭素をポリカーボネートの製造の原料として用いることができる。さらに、前記処理体としてオレフィンが含まれる場合には、アノードにおける電気分解によりオレフィンオキシドが得られ、またカソードにおける電気分解により一酸化炭素が得られる。これらオレフィンオキシドと一酸化炭素をポリウレタンの製造の原料として用いることができる。このように、アノードに用いる処理体としてベンゼン又はオレフィンを含むことで二酸化炭素の再利用生成物までの一気通貫したプロセスの構築が可能となることが分かった。即ち、従来のポリカーボネートやポリウレタンの製造工程に比べ、効率的(簡略化可能)な製造工程の構成が可能であり、設備投資コストの低減が可能となることが明らかとなった。
【0011】
さらに、固体電解質形電解装置の処理体を塩水とすることで、アノードにおける電気分解により塩素と、カソードにおける電気分解により一酸化炭素を生成することが可能であり、この塩素と一酸化炭素を、ポリカーボネート及びポリウレタン生成工程における途中物質であるホスゲンを生成するための原料とすることも可能である。このため、さらに二酸化炭素の再利用が進み、かつ、塩素の製造工程も効率化(簡略化)できるため、さらに設備投資コストの低減が可能となることが明らかとなった。即ち、本開示技術は、以下のとおりである。
【0012】
本開示の一態様によれば、
還元反応を行うカソードと、
前記カソードと1対の電極を構成するアノードと、
前記アノードで電気分解される処理体を保持する電解槽と、
前記カソードと前記アノードとの間に接触状態にて介在する固体電解質と、
前記カソードと前記アノードとの間に電圧を印加する電圧印加部と、を有し、
前記処理体が、ベンゼン又はオレフィンを含むことを特徴とする、固体電解質形電解装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、陽極における電気分解に必要な印加電圧を低減することで、電気分解にかかるエネルギーを低減させる固体電解質形電解装置に関する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示における固体電解質形電解装置の例を示す模式図である。
図2】本開示における実施形態で好適に用いられる固体電解質形電解装置において、カソード表面に固体塩基を添加することで、局所的に効率よくCOを吸着できる様子を示した概念図である。
図3】本開示におけるポリカーボネートの製造方法を示す説明図である。
図4】本開示におけるポリカーボネートの製造方法を用いた設備の一例を示すフロー図である。
図5】本開示におけるポリウレタンの製造方法を示す説明図である。
図6】本開示におけるポリウレタンの製造方法を用いた設備の一例を示すフロー図である。
図7】実施例4におけるサイクリックボルタモグラムの一部を拡大した図である。
図8】アノードにおける酸化反応(電気分解)前後の処理体(実施例4)、フェノールの標準水溶液、イオン交換水をそれぞれのFID-GCで分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における固体電解質形電解装置及びそれを用いたポリカーボネート及びポリウレタンの製造方法について、具体的に説明する。なお、本開示にかかる開示は、以下で説明する該形態に限定されるものではない。また、本開示において、数値の記載に関する「~」という用語は、その下限値以上、上限値以下を示す用語である。
【0016】
≪固体電解質形電解装置100≫
まず、図1を参照しながら、本実施形態にかかる固体電解質形電解装置(電解セル、電解モジュールとも称される)を説明する。図1に示すように、本実施形態にかかる固体電解質形電解装置100は、カソード(陰極)101と、前記カソード101と1対の電極を構成するアノード(陽極)102と、前記カソード101と前記アノード102との間に少なくとも一部が接触している接触状態にて着設する固体電解質103と、前記カソード101の前記固体電解質103との接触面101-1とは反対側の面101-2で接触している集電板104と、前記アノード102の前記固体電解質103との接触面102-2とは反対側の面102-1で接触している支持板105と、前記集電板104と前記支持板105との間(即ち、前記カソードと前記アノードとの間)に電圧を印加する電圧印加部106と、を有している。また、支持板105のアノード102と反対側の面にはアノードにおける電気分解の処理体を蓄える電解槽108(以降、電解槽108と略す場合がある)を有している。図示しない供給源及び供給装置によって、気相状態でのCOを供給することとしている。なお、図1に記載した固体電解質形電解装置100は、説明のためにカソード101やアノード102などの各部品を離した状態で図示しているが、実際には、集電板104、カソード101、固体電解質103、アノード102、支持板105のそれぞれは所定の方法によって接着され、一体化して構成されている。各部品が、着脱可能に構成されて1つの固体電解質形電解装置100を構成していてもよい。以下、各構成要素を詳述する。
【0017】
<カソード101>
(カソード101での還元反応)
カソード101での還元反応は、固体電解質形電解装置100で用いる固体電解質103の種類によって変化する。固体電解質103として陽イオン交換膜を使用した場合には、下記式(1)と(2)の還元反応が起き、固体電解質として陰イオン交換膜を使用した場合には、下記式(3)と(4)の還元反応が起きる。
【化1】
【0018】
(カソード101の基本構造・材質)
カソード101は、ガス拡散層を含むガス拡散電極である。ガス拡散層は、例えば、カーボン、金属などで作製された、紙、不織布又はメッシュなどの多孔性を有する材料を含む。カソード101の電極材料には、例えば、グラファイトカーボン、ガラス状カーボン、チタン、SUSを挙げることができる。また、カソード101が有する、CO(二酸化炭素)をCO(一酸化炭素)に還元可能なカソードの触媒は、例えば、銀、金、銅又はそれらの組合せから選択される金属を含む。触媒は、より詳細には、例えば、金、金合金、銀、銀合金、銅、銅合金、又は、それらのいずれか1種以上を含む混合金属を含む。触媒の種類は、触媒としての機能を有するものであれば特に限定されず、耐腐食性等を考慮して決定することができる。例えば、触媒が、Al、Sn、Zn等の両性金属を含まないことで、耐腐食性を向上させることができる。蒸着、析出、吸着、堆積、接着、溶接、物理混合、噴霧等の公知の方法を実施することで、カソード101(乃至は電極材料)に対して、触媒を担持させることができる。
【0019】
(固体塩基107)
ここで、図2に示すようにカソード101は、固体塩基107を有する。固体塩基107としては、常温(25℃)で固体である塩基であれば特に限定されず、例えば、炭酸水素カリウム(KHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の炭酸物{例えば、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、炭酸マグネシウム(MgCO)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ストロンチウム(SrO)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、炭酸ストロンチウム(SrCO)、酸化バリウム(BaO)、水酸化バリウム(Ba(OH))、炭酸バリウム(BaCO)など}、希土類金属の酸化物、希土類金属の水酸化物又は希土類金属の炭酸塩{例えば、酸化イットリウム(Y)、酸化ランタン(La2)など}、ハイドロタルカイト(例えば、金属複合水酸、炭酸塩、LDH、HT-CO、HT-OHなど)、表面塩基処理したゼオライト、塩基処理したモレキュラーシーブ、表面塩基処理した多孔質アルミナ(KF-Al)などを用いることが好ましい。特に、原子番号の小さい弱塩基性の固体塩基がより好ましい。また、水不溶性の固体塩基であるアルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の炭酸物、希土類金属の酸化物、希土類金属の水酸化物又は希土類金属の炭酸塩を用いることがガス中の水や反応で発生する水により流されず、固体塩基107を有するカソードとしての耐久性が低下しないため、より好ましい。ここで、「水不溶性」とは、10mgが20℃の水100mLに溶解しないものをいう。なお、固体塩基107は、カソード101の、固体電解質103との接触面101-1側に存在することが好適である。このように構成する理由は、カソード101と固体電解質103との界面が反応サイトであるからである。また、固体塩基107は、カソード101の材料との混合物として存在しても良く、また、化合物として一体化された状態で存在してもよい。塗布、蒸着、析出、物理混合等の公知の方法を実施することで、カソード101(乃至は電極材料)に対して固体塩基107を担持させることができる。固体塩基の単位面積あたりの質量は、特に限定されないが、例えば、0.1~10mg/cm、好ましくは0.1~6mg/cmである。
【0020】
ここで、固体塩基107を用いると効率が上がる理由については、以下の作用機序が推定される。まず、例えば、工場における排出ガスといったような含有濃度が10~20%となる低濃度COガスを固体電解質形電解装置100に供給した場合、COが低濃度であるが故にカソード101表面に吸着されにくい。そこで、図1に示すように、カソード101表面に固体塩基107を添加することで、固体塩基が存在している箇所に対して局所的に効率よくCOを吸着でき、CO還元を進行させることができると理解される。また、固体電解質103として陽イオン交換膜を採用した場合、カソード101表面にHが多いと、COが十分に吸着できないと理解される。この際、固体塩基107が存在すると反応が進行すると考えられる(例えばイオン交換膜を用いる場合にはpH>2となるようにpHを制御することが好ましい)。他方、固体電解質として陰イオン交換膜を採用した場合、カソード表面にOHが存在しているため、COが吸着され、CO還元には適している。しかし、OHが多すぎると安定なCO 2-で吸着されてしまい、CO還元反応が十分に進まないと理解される。この際、弱塩基性の固体塩基107が存在すると、CO還元反応がより進行すると考えられる(例えばイオン交換膜を用いる場合にはpH<12となるようにpHを制御することが好ましい)。本開示において、このような固体塩基及び触媒を有する電極を、「触媒と、触媒を有する電極材料と、少なくとも電極材料に設けられた固体塩基と、を有する電極」(換言すれば、触媒及び固体塩基を有する電極材料、を有する電極)、又は、「触媒を有し、固体塩基をさらに有するカソード」等と表現することができる。
【0021】
<アノード102>
(アノード102での酸化反応)
アノード102での酸化反応は、固体電解質形電解装置100で用いる固体電解質103の種類によって変化する。固体電解質103として陽イオン交換膜を使用した場合には、下記式(5)の酸化反応が起き、固体電解質103として陰イオン交換膜を使用した場合には、下記式(6)の酸化反応が起きる。
【化2】
【0022】
また、後述する処理体がベンゼンである場合において、図3の酸化反応が起こり、フェノールが生成される。即ち、電気分解と有機合成が同時に起こる有機電解合成が可能である。また、同様に処理体にオレフィンを用いた場合においても、図5の酸化反応が起こり、オレフィンオキシドが生成される。
【0023】
(アノード102の基本構造・材質)
アノード102は、ガス拡散層を含むガス拡散電極である。ガス拡散層は、例えば、カーボン紙若しくは不織布、又は金属メッシュ等、導電性や多孔性を有する材料を含む。カソード101の電極材料には、例えば、グラファイトカーボン、ガラス状カーボン、チタン、SUSを挙げることができる。アノード102の電極材料には、例えば、V、MnO、MoO、WO、ZrO、Cr、Ir、IrO、Ru、RuO、Rh、RhO、Co、CoOx、Cu、CuOx、Fe、FeOx、FeOOH、FeMn、Ni、NiOx、NiOOH、NiCo、NiCe、NiC、NiFe、NiCeCoCe、NiLa、NiMoFe、NiSn、NiZn、SUS、Au、Ptを挙げることができる。
【0024】
<固体電解質103>
固体電解質103は、カソード101とアノード102との間にカソード101とアノード102のそれぞれに対して少なくとも部分的に接触した状態にて介在する。ここで、固体電解質103は、特に高分子膜に限定される訳ではないが、陽イオン交換膜又は陰イオン交換膜が好適であり、陰イオン交換膜がより好適である。陽イオン交換膜としては、例えば、フッ素樹脂母体にスルホン基を導入した強酸性陽イオン交換膜、Nafion(登録商標)117、Nafion115、Nafion212やNafion350(デュポン社製)、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体母体にスルホン基を導入した強酸性陽イオン交換膜、又はネオセプタ CMX(徳山曹達社製)等を用いることができる。また、陰イオン交換膜としては、例えば、第四級アンモニウム基、第一級アミノ基、第ニ級アミノ基、第三級アミノ基、さらにこれらのイオン交換基が複数混在した陰イオン交換膜が挙げられる。具体例としては、例えば、ネオセプタ(登録商標)ASE、AHA、AMX、ACS、AFN、AFX(トクヤマ社製)、セレミオン(登録商標)AMV、AMT、DSV、AAV、ASV、AHO、AHT、APS4(旭硝子社製)等を用いることができる。
【0025】
<集電板104>
集電板104としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、ステンレス鋼(SUS)、ニッケルメッキ鋼、真鍮等の金属材料が挙げられ、なかでも加工し易さとコストの点から銅が好ましい。負極集電板の形状は、集電板104が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチングメタル、発泡メタル等が挙げられる。
【0026】
ここで、図1に示すように、集電板104には、カソード101にガス(原料ガスや生成ガス)を供給及び回収するためのガス供給孔104-1及びガス回収孔104-2が設けられている。当該ガス供給孔104-1及び当該ガス回収孔104-2により、カソード101に均一且つ効率よく原料ガスを送り込み生成ガス(生成ガスであるCOに限られず、未反応原料ガス、未反応のCOを含む)を排出することが可能となる。なお、当該図では、ガス供給孔及びガス回収孔がそれぞれ1個ずつ設けられているが、その数・場所・大きさは限定されず、適宜設定される。加えて、集電板104が通気性のあるものである場合には、ガス供給孔及びガス回収孔は必ずしも必要ない。
【0027】
なお、カソード101が電子を伝達する役割を持っている場合には、集電板104は必ずしも必要ない。
【0028】
<支持板105>
支持板105は、アノードを支持する役割を果たす。従って、アノードの厚み・剛性等により、求められる支持板105の剛性も変わる。また、当該支持板105は、アノードからの電子を受け取るべく、電気伝導性を有している必要がある。支持板105の材料としては、例えば、Ti、SUS、Niを挙げることができる。支持板を104のような流路付き集電板にしてもよい。
【0029】
ここで、図1に示すように、支持板105には、アノード102に原料ガスを送り込むためのガス流路105-1が設けられている。当該ガス流路により、アノード102に均一且つ効率よく原料ガスを送り込むことが可能となる。なお、当該図では、9個のガス流路が設けられているが、その数・場所・大きさは限定されず、適宜設定される。
【0030】
なお、本形態では、アノード102と支持板105を別体のものとして説明したが、アノード102と支持板105とが一体構造であってもよい(即ち、支持機能を持った、一体型アノードとして構成してもよい)。
【0031】
<電解槽108>
電解槽108は、アノードにおける電気分解の処理体を蓄え、アノード102に送り込む原料ガスの供給源となる。ここで原料ガスとは、水、水素、又は、酸素である。電解槽108の材料としては、例えば、Ti、SUS、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂を挙げることができる。
【0032】
<処理体>
処理体は、アノード102において電気分解され原料ガスの供給源となる。処理体は、ベンゼン又はオレフィンを含み、オレフィンとしてはエチレン、プロピレンが好ましい。ベンゼン又はオレフィンを用いると、水を用いた場合などと比較して、電気分解に必要な印加電圧を低減することが可能である。また、ベンゼンを用いた場合には、ポリカーボネートの原料となるフェノールと一酸化炭素を同時に効率よく生成することができる。また、オレフィンを用いた場合には、ポリウレタンの原料となるオレフィンオキシドと一酸化炭素を同時に効率よく生成することができる。
【0033】
処理体は、ベンゼン又はオレフィンが溶解したイオン液体とすることができる。本開示において、イオン液体とは、25℃で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)を意味し、カチオン成分とアニオン成分とからなる塩である。処理体として、ベンゼン又はオレフィンが溶解したイオン液体を用いた場合には、電気分解に必要な印加電圧をさらに低減することが可能である。
イオン液体としては、ベンゼン又はオレフィンが溶融可能であり、ベンゼン又はオレフィンと反応性がないものである限りにおいて特に限定されない。イオン液体としては酸化されにくいものが好ましく用いられる。ここで酸化されにくいイオン液体とは、酸化電位が1.23 V vs.NHEより貴側のものを意味する。
【0034】
イオン液体に含まれるカチオン成分としては、例えば、アルキルアンモニウム、アルキルホスホニウム、アルキルピリジニウム、アルキルイミダゾリウム等を挙げることができる。アニオン成分としては、例えば、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホニルイミド、パーフルオロアルキルスルホニルメチド、環状パーフルオロアルキルスルホニルイミド、ヒドロフッ化物、ビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン、ビスフルオロメタンスルホニルイミドアニオン等を挙げることができる。これらのうち、カチオン成分としてアルキルイミダゾリウムと、アニオン成分としてヘキサフルオロリン酸とを組み合わせたイオン液体が好ましく、2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート等のアルキルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートがより好ましい。
【0035】
<電圧印加部106>
電圧印加部106は、図1に示すように、集電板104と支持板105に電圧を印加することを通じ、カソード101とアノード102との間に電圧を印加する役割を担う。ここで、前記のように、集電板104は導電体であるため、カソード101に電子を供給する一方、支持板105も導電体であるため、アノード102からの電子を受け取ることになる。なお、前記のように集電板104が必要無い場合においては、カソード101と支持板105との間に電圧は印加される。また、電圧印加部106には、適切な電圧を印加するために、図示しない制御部が電気的に接続されていてもよい。
【0036】
<反応ガス供給部>
本開示における固体電解質形電解装置100には、図示しない反応ガス供給部が、固体電解質形電解装置100の外側に備えられていてもよい。すなわち、面101-2に反応ガスであるCOが供給されればよく、図示しない配管などを介して反応ガス供給部からガス供給孔104-1に反応ガスが供給されてもよいし、集電板104の、カソード101との接触面104-Bとは反対側の面104-Aに反応ガスが吹付けられるように設けられていてもよい。また、この反応ガスは、工場から排出される工場排出ガスを用いることが、環境面から好適である。
【0037】
<その他>
本開示における固体電解質形電解装置100には、その他の部品として、固体電解質形電解装置として必要な、電装部品、制御部品、バルブや配管、タンク、ポンプなどの配管部品などを含むことができる。
【0038】
≪用途≫
上述したような本開示にかかる固体電解質形電解装置に対して、例えば工場より排出されたCOガスを原料として、電圧印加部106への太陽電池等の再生可能エネルギーを利用することで、所望の生成割合による少なくともCOとHを含有した合成ガスを生成することが可能となる。さらに処理体としてベンゼンを用いた場合には、ポリカーボネートの原料としてフェノールが、処理体としてオレフィンを用いた場合には、ポリウレタンの原料としてオレフィンオキシドを、それぞれ生成することが可能であり、COの再利用が可能となる。
【0039】
<ポリカーボネートの製造方法>
本開示技術における処理体をベンゼンとして、図3に基づき、本開示の固体電解質形電解装置を用いたポリカーボネートの製造方法について説明する。
本開示の開示ポリカーボネートの製造方法は、本開示の固体電解質形電解装置を用いて生成したフェノールと一酸化炭素を原料として、フェノールをアセトンと反応させてビスフェノールAを生成するビスフェノールA生成工程(PC2-1)と、一酸化炭素を塩素と反応させてホスゲンを生成するホスゲン生成工程(PC2-2)と、ビスフェノールAと、ホスゲンと、を反応させてポリカーボネートを生成するポリカーボネート生成工程(PC2-3)と、を含むことを特徴とする。ここで、ビスフェノールA生成工程(PC2-1)、ホスゲン生成工程(PC2-2)、ポリカーボネート生成工程(PC2-3)における各化合物の生成方法は、公知の生成方法を用いることができ、特に限定されない。本開示のポリカーボネートの製造方法を用いれば、COとベンゼンを元に、有機電解合成によりフェノールと一酸化炭素を同時に生成できるため、COの再利用が可能であるとともに、設備の効率化(簡略化)が可能となり、製造コスト及び設備投資コストを低減できる。図4には、本開示のポリカーボネートの製造方法を用いた場合の設備の例とフロー図を示した。
【0040】
また、ホスゲン生成工程(PC2-2)の原料となる塩素は、上述した本開示にかかる固体電解質形電解装置の処理体の代わりに塩水を用いた第2の固体電解質形電解装置によって電気分解することで、得ることが可能となる。この点で、さらにCOの再利用が可能となると同時に、設備の効率化(簡略化)が可能となり、さらに設備投資コストが低減できる。ここで、塩素は、第2の固体電解質形電解装置のアノードにおいて塩水の電気分解により生成される。第2の固体電解質形電解装置は、還元反応を行う第2のカソードと、前記第2のカソードと1対の電極を構成する第2のアノードと、前記第2のアノードにおける電気分解の処理体である塩水を保持する第2の電解槽と、前記第2のカソードと前記第2のアノードとの間に接触状態にて介在する第2の固体電解質と、前記第2のカソードと前記第2のアノードとの間に電圧を印加する第2の電圧印加部と、を有する。第2の固体電解質形電解装置は、処理体を塩水とする以外は、本開示にかかる固体電解質形電解装置と同様のものとすることができる。
【0041】
<ポリウレタンの製造方法>
本開示にかかる処理体をオレフィンとして、図5に基づき、本開示の固体電解質形電解装置を用いたポリウレタンの製造方法について説明する。
本開示のポリウレタンの製造方法は、本開示の固体電解質形電解装置を用いて生成した、オレフィンオキシドと一酸化炭素を原料として、オレフィンオキシドを水と反応させてオレフィングリコールを生成するオレフィングリコール生成工程(PU2-1)と、一酸化炭素を塩素と反応させてホスゲンを生成するホスゲン生成工程(PU2-2)と、ホスゲンと第一級アミンを反応させてイソシアネート化合物を生成するイソシアネート生成工程(PU2-3)と、オレフィングリコールとイソシアネート化合物とを反応させてポリウレタンカーボネートを生成するポリウレタン生成工程(PC2-4)と、を含むことを特徴とする。ここで、オレフィングリコール生成工程(PU2-1)、ホスゲン生成工程(PU2-2)、イソシアネート生成工程(PU2-3)、ポリウレタン生成工程(PC2-4)における各化合物の生成方法は、公知の生成方法を用いることができ、特に限定されない。本開示のポリウレタンの製造方法を用いれば、COとオレフィンを元に、有機電解合成によりオレフィンオキシドと一酸化炭素を同時に生成できるため、COの再利用が可能であるとともに、設備の効率化(簡略化)が可能となり、製造コスト及び設備投資コストを低減できる。図6には、本開示のポリウレタンの製造方法を用いた場合の設備の例とフロー図を示した。
【0042】
また、ホスゲン生成工程(PU2-2)の原料となる塩素は、上述した本開示にかかる固体電解質形電解装置の処理体の代わりに塩水を用いた、第2の固体電解質形電解装置によって電気分解することで、得ることが可能となる。この点で、さらにCOの再利用が可能となると同時に、設備の効率化(簡略化)が可能となり、さらに設備投資コストが低減できる。ここで、塩素は第2の固体電解質形電解装置のアノードにおいて塩水の電気分解により生成される。第2の固体電解質形電解装置は、還元反応を行う第2のカソードと、前記第2のカソードと1対の電極を構成する第2のアノードと、前記第2のアノードにおける電気分解の処理体である塩水を保持する第2の電解槽と、前記第2のカソードと前記第2のアノードとの間に接触状態にて介在する第2の固体電解質と、前記第2のカソードと前記第2のアノードとの間に電圧を印加する第2の電圧印加部と、を有する。第2の固体電解質形電解装置は、処理体を塩水とする以外は、本開示にかかる固体電解質形電解装置と同様のものとすることができる。
【実施例0043】
以下に、上述した本実施形態を用いた場合の実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
【0044】
以下の部材を用いて、固体電解質形電解装置を組み立てた。カソードは導電性を有するカーボンブラックと、銀ナノ触媒を混合したものをカーボン紙に付着してカソードとして用いた。アノードは酸化イリジウムを担持したチタンメッシュを用いた。固体電解質としては、陽イオン交換膜を用い、各実施例及び比較例の処理体として、ベンゼン(実施例1)、エチレン(実施例2)、プロピレン(実施例3)、イオン交換水(比較例1)を用いた。
【0045】
固体電解質形電解装置を稼働させ、カソードとアノード全体に3.5Vを印加し、CO還元反応を1時間継続させたのちアノードの印加電圧を測定した。結果を表1に示した。
また、ベンゼンを用いた場合のアノードにおいて電気分解されたあとの電解槽内の溶液をGC-MS分析装置で分析したところフェノールが生成していることが確認された。また、エチレン、プロピレンを用いた場合についても、同様にエチレンオキサイド、プロピオンオキサイドがそれぞれ確認された。また、いずれの実施例及び比較例においても、カソードからの排出気体をGC-MS分析装置で分析したところ一酸化炭素が生成していることが確認された。
【0046】
【表1】
【0047】
処理体として、ベンゼンをベンゼンの濃度が4体積%となるように溶解させた1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートを用い、各実施例と同様の電気分解を行った(実施例4)。図7は、実施例4におけるサイクリックボルタモグラムの一部を拡大した図を表しており、図中Aのピークは固体電解質形電解装置のアノードにおいて酸化反応が生じていることを示し、図中Bのピークは固体電解質形電解装置のカソードにおいて還元反応が生じていることを示している。また、図8に、アノードにおける酸化反応(電気分解)前後の処理体、フェノールの標準水溶液、イオン交換水をFID-GCで分析した結果を示した。酸化反応後の処理体には、フェノール標準水溶液のピークと同じ位置にピークが発生しており、処理体の酸化反応によってフェノールが生じていることが確認できた。
【符号の説明】
【0048】
100 固体電解質形電解装置
101 陰極(カソード)
101-1 陰極の固体電解質と接する面
101-2 陰極の集電板と接する面
102 陽極(アノード)
102-1 陽極の支持板と接する面
102-2 陽極の固体電解質と接する面
103 固体電解質
104 集電板
104-1 集電板のガス供給孔
104-2 集電板のガス回収孔
105 支持板
105-1 支持板のガス流路
106 電圧印加部
107 固体塩基
108 電解槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8