(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146440
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルムロール
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220928BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220928BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220928BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20220928BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20220928BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/18 Z
B32B27/36
B32B7/022
B29C55/12
B28B1/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047398
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 雄太
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F210
4G052
【Fターム(参考)】
4F071AA22X
4F071AA46
4F071AA88
4F071AB18
4F071AB21
4F071AB26
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4F071BC14
4F071BC15
4F071BC16
4F100AA21A
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100BA01
4F100BA03
4F100BA10A
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4F100BA15
4F100DD07A
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4F210AA24
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4F210QG01
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4F210QG18
4F210QW07
4F210QW36
4G052DA02
4G052DB01
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】高い平滑性を有するとともに、切断・断裁工程における切断刃の長寿命化に貢献できる、ポリエステルフィルムロールを提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムを巻き取ってなり、前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05μm~0.4μmの粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を同時に満足するポリエステルフィルムロール。
(1)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
(2)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、粒子占有率が4.0%以上であること。
(3)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、ナノインデンター測定による、突起部の表面弾性率が4.0GPa以下であること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、
前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05μm~0.4μmの粒子を含有し、
前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を同時に満足する、ポリエステルフィルムロール。
(1)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
(2)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、粒子占有率が4.0%以上であること。
(3)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、ナノインデンター測定による、突起部の表面弾性率が4.0GPa以下であること。
【請求項2】
前記粒子が有機粒子である、請求項1に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムが、少なくとも3層構成のポリエステルフィルムである、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項4】
少なくとも一方の面に前記粒子を含有する表面層を有する請求項3に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項5】
前記表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)が、0.50dL/g以上である、請求項4に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項6】
前記表面層は、チタン化合物を含む、請求項4又は5に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項7】
前記表面層は、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である、請求項4~6のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項8】
前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に離型層を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項9】
積層セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムロール。
【請求項10】
自動車セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリエステルフィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサーの製造工程において使用される工程用離型フィルムの支持体に好適なポリエステルフィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電装化やスマートフォンの高機能化等に伴い、積層セラミックコンデンサー(Multi-Layered-Ceramic-Capacitor;MLCC)の小型化及び高容量化が進んでいる。
積層セラミックコンデンサーは、次のようにして製造される。
まず、離型フィルム上に、セラミック成分及びバインダー樹脂を含むセラミックスラリーを塗工し、乾燥することでセラミックグリーンシート(誘電体シート)を作製し、これに電極をスクリーン印刷法等により印刷して内部電極とし、乾燥した後に印刷済のセラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離し、このようなグリーンシートを多数積層させる。積層させたグリーンシートをプレスして一体化させた後、個々のチップに切断する。
その後、焼成炉で内部電極及び誘電体層を焼結させ、積層セラミックコンデンサーが製造される。
【0003】
MLCCの小型及び高容量化に際して、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでいる。セラミックグリーンシートの薄膜化が0.5μm(乾燥後の厚み)以下と更に進行するとキャリアフィルムとしての離型フィルムの表面に微小な突起があれば、これに起因して、セラミックグリーンシートにピンホール等が発生する。このため当該離型フィルムには、更に高度な表面平滑性が求められている。
【0004】
従来、この種の離型フィルムの支持体として、特許文献1には、第1の面と第2の面とを有する基材と、前記基材の前記第1の面側に設けられた平滑化層と、前記平滑化層の前記基材と反対の面側に設けられた剥離剤層とを有し、前記平滑化層は、重量平均分子量が950以下の熱硬化性化合物を含む平滑化層形成用組成物を加熱して硬化させることにより形成されており、前記剥離剤層の外表面の算術平均粗さRa1が8nm以下であり、かつ、前記剥離剤層の外表面の最大突起高さRp1が50nm以下であることを特徴とするグリーンシート製造用剥離フィルムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ない離型用ポリエステルフィルムとして、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m2以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15~35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である離型用ポリエステルフィルムが開示されている。
【0006】
グリーンシートの薄膜化が大きく進む中、薄膜化されたグリーンシートを多層に積層させる際の積層精度が、更に高く要求されている。このため離型フィルムの平面性についても重要度が高まってきており、熱しわの制御等が図られている。
【0007】
この種のフィルムとして、特許文献3には、ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムに存在するスラック欠点が、100m2あたり5個未満である、ポリエステルフィルムロールが開示されている。
【0008】
ところで、セラミックグリーンシートの薄肉化に伴い、誘電体層はより高い平滑性が求められる。
また、セラミックグリーンシートの切断・剥離工程では、吸引保持機能を備えたカットテーブルに、前記キャリアフィルム付きセラミックグリーンシートを送り込み、該カットテーブル上にキャリア付きセラミックグリーンシートを吸引保持した状態で、切断刃を用いてセラミックグリーンシートを所定の形状に切断後、セラミックグリーンシートを吸着盤にて吸着保持してキャリアフィルムから剥離される(特許文献3等)。切断・剥離工程において、セラミックグリーンシートの切断が不十分である場合、キャリアフィルムから剥離するのが困難な場合がある。そのため、切断刃の改良が鋭意検討されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-177093号公報
【特許文献2】特開2013-7054号公報
【特許文献3】特開2002-273719号公報
【特許文献4】特開2020-131652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の通り、さらなるコンデンサーチップの良品歩留の向上が望まれる状況にある。そのため、コンデンサーチップの良品歩留向上に寄与できるような、高平滑性と切断・断裁工程における、切断刃の長寿命化に貢献できるポリエステルフィルムが必要とされている。
【0011】
そこで、本発明の目的は、高い平滑性を有するとともに、切断・断裁工程における切断刃の長寿命化に貢献できる、ポリエステルフィルムロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定の構成からなるポリエステルフィルムロールを用いれば、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供するものである。
【0013】
[1]ポリエステルフィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロールであって、前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05μm~0.4μmの粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を同時に満足する、ポリエステルフィルムロール。
(1)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
(2)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、粒子占有率が4.0%以上であること。
(3)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、ナノインデンター測定による、突起部の表面弾性率が4.0GPa以下であること。
[2]前記粒子が有機粒子である、[1]に記載のポリエステルフィルムロール。
[3]前記ポリエステルフィルムが、少なくとも3層構成のポリエステルフィルムである、[1]又は[2]に記載のポリエステルフィルムロール。
[4]少なくとも一方の面に前記粒子を含有する表面層を有する[3]に記載のポリエステルフィルムロール。
[5]前記表面層を構成するポリエステルの極限粘度(IV)が、0.50dL/g以上である、[4]に記載のポリエステルフィルムロール。
[6]前記表面層は、チタン化合物を含む、[4]又は[5]に記載のポリエステルフィルムロール。
[7]前記表面層は、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である、[4]~[6]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[8]前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)上に離型層を有する、[1]~[7]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[9]積層セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項[1]~[8]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
[10]自動車セラミックコンデンサーの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、[1]~[9]のいずれかに記載のポリエステルフィルムロール。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリエステルフィルムロールは、極めて優れた表面平滑性を有することから、当該フィルムを、例えば積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、当該フィルム表面の微細な凹凸によってセラミックグリーンシートに欠陥が生じる虞が少ないという利点がある。
【0015】
また、本発明のポリエステルフィルムロールは、極めて優れた表面平滑性を有し、且つ、切断・断裁時のカット性が改善されているため、当該フィルムを、例えば積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、セラミックスラリーを均一に塗布できることで均一な誘電体層を形成することができ、かつ切断・断裁時のセラミックグリーンシートの剥離不良を低減するとともに、切断刃の長寿命化に貢献できる利点がある。
以上のように、本発明のポリエステルフィルムロールは、フィルム表面への傷つき防止という点での「硬さ」と、切断刃の刃こぼれ防止という点での「柔らかさ」という、相反する特性の両立を、微細な凹凸を有するフィルム表面設計の最適化により達成したものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。((a)は得られた画像データ、(b)は(a)を2値化処理した画像データを示す。)
【
図2】比較例1で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。((a)は得られた画像データ、(b)は(a)を2値化処理した画像データを示す。)
【
図3】比較例2で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。((a)は得られた画像データ、(b)は(a)を2値化処理した画像データを示す。)
【
図4】比較例3で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。((a)は得られた画像データ、(b)は(a)を2値化処理した画像データを示す。)
【
図5】比較例4で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。((a)は得られた画像データ、(b)は(a)を2値化処理した画像データを示す。)
【
図6】比較例5で得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子の分布状態を示す。((a)は得られた画像データ、(b)は(a)を2値化処理した画像データを示す。)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0018】
<ポリエステルフィルムロール>
本発明のポリエステルフィルムロールは、ポリエステルフィルムを巻き取ってなり、前記ポリエステルフィルムが、平均粒径が0.05μm~0.4μmの粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を同時に満足することを特徴としている。
(1)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
(2)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、粒子占有率が4.0%以上であること。
(3)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、ナノインデンター測定による、突起部表面弾性率が4.0GPa以下であること。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムロールにおける、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)とは、例えば、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いる際に、セラミックグリーンシートを積層する面側のことをいう。ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、上記(1)~(3)を同時に満たすことにより、積層コンデンサーを好適な状態で製造することができる。また、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の表面は、セラミックグリーンシートの支持体として用いる観点から、後述の離型層を設ける表面として好適である。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムロール(以下「本ロール」とも称する)は、ポリエステルフィルム(以下「本フィルム」とも称する)を巻き取ってなるものである。
本ロールは、紙管、金属管、プラスチック管等のコアに巻き取られたポリエステルフィルムロールであり、幅0.2m以上であることが好ましく、0.3m以上であることがより好ましく、1.0m以上であることが特に好ましく、1.5m以上であることが最も好ましい。フィルムの幅の上限は、特に限定されないが、取り扱い性の観点から好ましくは2.3m以下であり、より好ましくは2.0m以下である。
また、本ロールに巻き取られる本フィルムの長さは、特に限定されないが、好ましくは1000m以上、より好ましくは6000m以上、更に好ましくは12000m以上である。
更に、本フィルムの厚さは、好ましくは19μm以上38μm以下、より好ましくは25μm以上32μm以下である。
【0021】
(ポリエステルフィルム)
(表面粗さ特性)
ポリエステルフィルムは、平均粒径が0.05μm~0.4μmの粒子を含有し、前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)が、以下の(1)~(3)を同時に満足することが必要である。
(1)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであること。
(2)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、粒子占有率が4.0%以上であること。
(3)前記ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の、ナノインデンター測定による、表面弾性率が4.0GPa以下であること。
【0022】
(1)フィルム表面の平均表面粗さ(Sa)
ポリエステルフィルムは、平均表面粗さ(Sa)が20nmより大きくなると、ポリエステルフィルム表面の微細な凹凸によってピンホールなどの欠陥が生じやすくなる。
一方、平均表面粗さ(Sa)が5nmより小さくなると、フィルム表面が極端に平坦化しすぎて、フィルムの滑り性が低下し、傷がつきやすくなる。
【0023】
ポリエステルフィルムは、セラミック層の薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の平均表面粗さ(Sa)が5~20nmであり、8~18nmが好ましく、10~16nmが最も好ましい。
【0024】
また、ポリエステルフィルムは、ピンホール抑制の観点から、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が300nm以下であることが好ましく、280nm以下であることがより好ましい。最大山高さ(Sp)の下限については特に制限はされないが、フィルム巻取り性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは150nm以上である。
【0025】
平均表面粗さ(Sa)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、二次元のRaを三次元に拡張したもので、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、以下の式(1)から求められる。
表面をXY面,高さ方向をZ軸とした時、A:定義された領域(画像全体とする)、Z(x,y):画像点(x,y)の高さ0の面からの高さとすると、以下のように表される。
【0026】
【0027】
また、最大山高さ(Sp)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、表面の平均面からの高さの最大値を表し、以下の式(2)ように表される。
【0028】
【0029】
また、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)のSaとSpとの関係は、高Spと低Saとのバランスを調整する観点から、Sp/Sa値が20以下であることが好ましい。
【0030】
(2)ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子占有率
ポリエステルフィルムの表面は、ポリエステルフィルムロールの長尺化に伴う傷つき防止の観点及びセラミックグリーンシートを形成する工程において、セラミック粒子に対する耐摩耗性を付与する観点から、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子占有率が4.0%以上であることが必要であり、好ましくは4.5%以上、より好ましくは5.0%以上である。粒子占有率が4.0%以上であることにより、上記範囲を満足することにより、フィルム表面に弾性率が小さめの微細な粒子が適度に敷き詰められた、緻密な状態を形成することによって、傷つき防止性を付与できる程度に、フィルム表面の表面弾性率を確保できる。
また、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子占有率の上限については特に限定はされないが、セラミックグリーンシートを好適に製造する観点から、10.0%以下が好ましく、8.0%以下がより好ましく、6.0%以下が更に好ましい。
【0031】
上記の本ポリエステルフィルムの表面粗さ特性は、例えばフィルム表面を構成するポリエステル層中に粒子を含有させ、その平均粒径や粒子種や含有量を制御することで調整することができる。
【0032】
(ポリエステルフィルムに含有される粒子)
例えば、本発明のポリエステルフィルムロールを用いて、セラミックグリーンシートを製造する際に、セラミックグリーンシートを備えた状態でハーフカットする場合があることから、カット性を良好とする観点から、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)において、平均粒径が0.05μm~0.4μmの粒子を含有することが必要である。
平均粒径の範囲は、好ましくは0.1μm~0.4μm、より好ましくは0.15μm~0.35μm、更に好ましくは0.2μm~0.3μmの範囲である。
前記粒子としては、無機粒子及び有機粒子が挙げられ、有機粒子が好ましい。無機粒子及び有機粒子としては、後述のポリエステルフィルムの表面層Aに含まれる粒子として例示されている無機粒子及び有機粒子が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0033】
(3)ポリエステルフィルムの一方の表面(A)のナノインデンター測定による、突起部の表面弾性率
セラミックグリーンシートの製造工程では、例えば、ポリエステルフィルム上に形成された離型層上に、セラミックグリーンシートを備えた状態で、切断刃で切り込みを入れて、離型層表面からセラミックグリーンシートを剥離するためのきっかけを作る、いわゆる、ハーフカットする工程がある。切断刃の長寿命化及びカット性を良好とする観点から、離型層を設ける、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)に関して、ナノインデンター測定による、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の突起部の表面弾性率が4.0GPa以下であることが必要であり、好ましくは3.9GPa以下、より好ましくは3.8GPa以下である。前記範囲を満足することで、前述のハーフカットする工程を繰り返した際、切断刃の刃こぼれの発生を抑制しやすくでき、切断刃の長寿命化に貢献でき、また、セラミックシートの製造工程の遅延を防ぐことができると推察される。
また、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)の突起部の表面弾性率の下限については特に限定はされないが、セラミックグリーンシートを好適に製造する観点から、1.0GPa以上が好ましく、2.0GPa以上がより好ましく、3.0GPa以上が更に好ましい。
【0034】
セラミックグリーンシートの切断刃は、一般的に、断裁工程において、セラミックグリーンシートの積層数に応じて、繰り返し、所定のサイズに断裁するために利用される。その断裁過程において、切断刃は厚み方向において、セラミックグリーンシートを通過した後はすぐ下の基材フィルムに刃先が侵入していく。基材フィルムの表面弾性率が4.0GPaを超える場合、切断刃の刃先に加わる力(ダメージ)が顕著となり、切断刃のライフ(寿命)が短くなる課題があった。断裁過程における切断刃の刃こぼれ発生メカニズムは以下のように推定される。断裁過程で刃先の進行方向の先に例えば、アルミナ粒子のような、硬い粒子がフィルム中に存在する場合、アルミナ粒子と刃先とが衝突する度に、刃先には力(ダメージ)が加わる。更に、繰り返し断裁する、セラミックグリーンシートの枚数分だけ、刃先への力(ダメージ)が累積して加わり、刃先の耐久性の限界を超えると強度の弱い刃先部分が欠けた、いわゆる、刃こぼれが発生する。更に刃こぼれした状態でセラミックグリーンシートの断裁を継続すると、今度はセラミックグリーンシートをフィルムから剥離する際に剥離不良を誘発する。
本願発明のように、薄膜(2μm程度)のセラミックグリーンシートと基材フィルムとの合計厚みに占める、基材フィルムの厚みの割合は往々にして、9割以上であるため、基材フィルムの表面硬度(表面弾性率)が、切断刃の刃こぼれ延命に大きく影響すると考えられる。そのため、本願発明は新たにフィルム側から、切断刃のライフ延命対策を提案するものである。
【0035】
(ポリエステル)
本発明のポリエステルロールにおけるポリエステルとは、ポリエステルフィルムの原料となるポリエステルのことをいい、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいい、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよく、具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られるポリエステルを挙げることができる。
【0036】
なお、本発明においては、ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸を50%よりも多く含有するポリエステルを使用することが好ましい。
【0037】
前記ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらのエステル誘導体等の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0038】
前記ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート及びスピログリコール等を挙げることができる。
【0039】
上記ポリエステルがホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができる。
【0040】
一方、上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。第三成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分となる化合物と、ジオール成分の主成分となる化合物以外の成分であり、ポリエチレンテレフタレートではテレフタル酸及びエチレングリコール以外の成分である。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸等の一種又は二種以上を挙げることができる。
共重合ポリエステルのグリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の一種又は二種以上を挙げることができる。
【0041】
また、上記ポリエステルとしては、80モル%以上、好ましくは90モル%以上が、エチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレートや、エチレン-2,6-ナフタレート単位であるポリエチレン-2,6-ナフタレート等が好ましい。
【0042】
(ポリエステル重縮合触媒)
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物等が挙げられる。これらの中では、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかが好ましく、とりわけ、チタン化合物を用いて得られるポリエステルを使用することが好ましい。
したがって、ポリエステルフィルムは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、ポリエステルフィルムは、チタン化合物を含むことがより好ましい。
前記チタン化合物を使用することで、フィルム中に当該チタン化合物に由来する金属含有凝集体、いわゆる粗大異物の個数を低減化することができ、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が小さい本フィルムを得ることができる。
【0043】
本フィルムの最外層(「表面層」ともいう、例えば、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)等、離型層が積層される表面層)を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用することが好ましい。
当該最外層中に当該チタン化合物に由来するチタン元素含有量が3ppm以上40ppm以下であることが好ましく、4ppm以上35ppm以下であることがより好ましい。
上記範囲内であれば、ポリエステルの製造効率を低下させることなく、触媒起因の異物を低減化することができる。
また、生産性の観点から、中間層(後述するベース層B)を構成するポリエステルは、その重縮合触媒としてチタン化合物を使用しないことが好ましい。
また、同様の観点から、本フィルムの最外層中のアンチモン化合物の含有量は100ppm以下であることが好ましい。
例えば、後述する表面層Aは、アンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含み、表面層Aにおけるアンチモン化合物の含有量が100ppm以下であることが好ましい。この際、表面層Aはアンチモン化合物を含有しなくてもよい。
【0044】
(ポリエステルの極限粘度(IV))
本フィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)は0.50dL/g以上であることが好ましく、0.55dL/g以上であることがより好ましく、0.60dL/g以上であることが更に好ましい。
本フィルムを構成する樹脂として、極限粘度(IV)が0.50dL/g以上のポリエステルを使用すると混練中のせん断応力が増大することによって粒子が高分散する等の利点がある。
【0045】
なお、「本フィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)」とは、極限粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを使用する場合には、これら混合樹脂の極限粘度(IV)を意味するものとする。
【0046】
上記の観点から、とりわけ、本フィルムが積層構造の場合、表面層、具体的には本フィルムの最外層(例えば、ポリエステルフィルムの一方の表面(A)等、離型層が積層される表面層)を構成するポリエステルの極限粘度(IV)は0.50dL/g以上であることが好ましく、0.55dL/g以上であることがより好ましく、0.60dL/g以上であることが更に好ましい。また、該ポリエステルの極限粘度(IV)の上限としては、例えば、1.00dL/g以下である。
【0047】
(ポリエステルフィルムの構成)
ポリエステルフィルムは、単層及び2以上の層を有する積層構造(積層フィルム)のいずれも採用することができるが、とりわけ、3層以上の積層構造を有することが好ましい。
【0048】
(粒子)
本フィルムは、少なくとも一方の面に粒子を含有する表面層Aを有することが好ましい。係る構成を採用することによりフィルムの取扱い性を向上させることができる。また、本フィルムは、両方の面が粒子を含有する表面層Aであってもよいし、一方の面が表面層Aで、他方の面が後述する表面層Cであってもよい。表面層Cは、粒子を含有することが好ましい。
【0049】
前記粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム及び酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。これらの中では、有機粒子、シリカ、酸化アルミニウムなどが好ましく、中でも有機粒子が特に好ましい。有機粒子の具体例としては、架橋高分子粒子が挙げられる。架橋高分子粒子の組成として例示すると、ジビニルベンゼン重合体、エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、スチレン-エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼン共重合体、エチレングリコールジメタクリレート重合体、スチレン-エチレングリコールジメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート-ジビニルベンゼン共重合体などの架橋高分子粒子が挙げられる。更に架橋高分子粒子は3成分以上の系から構成されるものを用いてもよい。
セラミック積層コンデンサーの製造工程中、切断・断裁工程において、セラミックグリーンシートを切断刃による切断に対して、切断刃に追従するように、適度な弾力性を付与する点から、有機粒子を選択するのが好ましい。
【0050】
本フィルム中の粒子含有量は、ハンドリング性付与の観点から、質量割合で好ましくは900ppm以上であり、より好ましくは2000ppm以上10000ppm以下、更に好ましくは2500ppm以上9500ppm以下、最も好ましくは3000ppm以上9000ppm以下である。
【0051】
(本フィルムの積層構造)
本フィルムが2以上の層を有する積層構造を備える場合、ベース層Bと表面層A及び表面層Cから構成されるA/B/C及びベース層Bと表面層Aから構成されるA/B/Aの3層構造が好ましく、A/B/Cの3層構造であってもよい。
【0052】
また、前記表面層Cは、前記表面層Aよりも平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)のいずれもが同等以下であることが好ましい。
【0053】
上記A/B/Cの積層構造において、表面層Cは、平均表面粗さ(Sa)が5nm以上又は最大山高さ(Sp)が220nm以下であることが好ましい。この場合、平均表面粗さ(Sa)は20nm以下程度であってもよい。
係る積層構成を採用することにより、表面層Cには取扱い性を向上させるために必要な粗面を具備することができ、表面層Aには肉薄なセラミック層を付与させるために必要な平滑性を具備することができる。
以上の観点から、表面層Aの平均表面粗さ(Sa)は、8nm以上であることがより好ましく、また、最大山高さ(Sp)は、200nm以下とすることがより好ましい。
【0054】
上記A/B/C及び上記A/B/Aの3層構造において、表面層A及び表面層Cは、ハンドリング性を確保するために粒子を含有することが好ましい。
【0055】
また、上記A/B/C及びA/B/Aの3層構造において、表面層A及び表面層Cそれぞれは、粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する(いわゆる単分散性を有する)粒子を含有することが特に好ましい。
係る構成を採用することで、本フィルムのハンドリング性を維持しながら、高い表面平滑性、とりわけ、離型層を設ける側の表面層Aの平均表面粗さ(Sa)は高く(適度に粗面化していて)、それでいて、最大山高さ(Sp)が小さい特徴を有する、本ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0056】
上記粒度分布が狭い略均一な平均粒径を有する粒子としては、該粒子の粒度分布において、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下となる粒子が好ましく、0.2以下となる粒子が特に好ましい。
係る関係式(D90-D10)/D50は、D50を基準とした粒子径のバラツキを示すものであり、(D90-D10)/D50が0.4以下の粒子は、D90とD10との差が小さいシャープな粒度分布を有するものであり、本フィルムに対して、優れたハンドリング性を維持しながら、極めて高い平滑性を付与することができる。
前記粒子の粒度分布は、レーザー回折式測定装置によって測定される。
【0057】
前記粒子の平均粒径は、平均表面粗さ(Sa)の増大及び最大山高さ(Sp)の抑制、即ち、ハンドリング性の向上及びピンホール抑制の観点から、例えば0.05μm~0.4μmであり、好ましくは0.1μm~0.4μm、より好ましくは0.15μm~0.35μm、更に好ましくは0.2μm~0.3μmの範囲である。
【0058】
また、前記表面層Aに含まれる粒子の平均粒径は、好ましくは0.05μm~0.4μmであり、より好ましくは0.1μm~0.4μm、更に好ましくは0.15μm~0.35μm、より更に好ましくは0.2μm~0.3μmの範囲である。
表面層Cは、平均粒径0.1μm~0.5μmの粒子を含有することが好ましい。
【0059】
なお、粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0060】
また、本フィルムは、前記粒子を質量割合で900ppm以上含むことが好ましく、2000ppm以上10000ppm以下で含むことがより好ましく、2500ppm以上9500ppm以下で含むことが更に好ましく、3000ppm以上9000ppm以下で含むことがより更に好ましい。なお、ここでいう質量割合とは、各表面層における粒子の割合である。
【0061】
また、前記表面層Aは、前記粒子を900ppm以上6000ppm以下の質量割合で含むことがとりわけ好ましい。
前記表面層Aが、係る範囲で粒子を含むことでフィルムの取扱い性が良く、ピンホールを抑制することができる。
【0062】
また、前記表面層Cは、前記粒子を5000ppm未満の質量割合で含むことがとりわけ好ましく、前記粒子を2000ppm以上4000ppm以下の質量割合で含むことが最も好ましい。
【0063】
前記ベース層Bは、最も厚みの厚い主層として機能させることが好ましく、コストダウンするために、粒子を実質的に含まないか、或いは、少なくとも表面層Cよりも低濃度で粒子を含むことが好ましい。
【0064】
なお、「実質的に含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子濃度)が200ppm以下、より好ましくは150ppm以下のことを指す。
【0065】
上述のとおり、表面層Aは上記表面層Cとは異なる層であるが、具体的には、粒子の種類、平均粒径及び配合量が異なる形態の他、層厚みが異なる形態を例示することができる。
【0066】
また、次の(X)及び(Y)に示した表面層A及び/又は表面層Cを備える構成が特に好ましい。
係る構成を採用することで、本フィルムが、優れたハンドリング性と表面平滑性を具備することができる。
【0067】
(X)特に好ましい実施形態1
(1)前記A/B/Cの構成において、表面層Aが粒子及びチタン化合物を含み、表面層Aが平均粒径0.05μm~0.4μmの粒子を含む形態
(2)前記(1)において、表面層Aが少なくとも平均粒径が0.1μm~0.4μmの無機粒子を含む形態
(3)前記(1)又は(2)において、表面層Cが有機粒子を含む形態
(4)前記(3)において、表面層A及び表面層Cが有機粒子を含有し、表面層Aに含有される該無機粒子と表面層Cに含有される無機粒子との平均粒径が異なる形態
(5)前記(1)~(4)の何れかにおいて、表面層Cが、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である形態
(6)前記(1)~(5)の何れかにおいて、前記粒子は、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である形態
(7)前記(6)において、前記有機粒子は、ジビニルベンゼン-スチレン系粒子である形態。
【0068】
上記(X)では、表面層A及び表面層Cそれぞれにおいて、チタン化合物を触媒として重縮合されたポリエステルを使用することで触媒起因の異物を低減化することができ、高い表面平滑性を具備させることができる。
【0069】
(Y)特に好ましい実施形態2
(1)前記A/B/Aの構成において、表面層Aは、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である粒子を含む形態
(2)前記(1)において、表面層Aが、アンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下である形態
(3)前記(1)又は(2)において、前記表面層Aを構成するポリエステルの極限粘度(IV)が0.50dL/g以上、好ましくは0.55dL/g以上の形態
(4)前記(1)~(3)の何れかにおいて、前記粒子は、有機粒子である形態
【0070】
上記(Y)では、表面層Aが略均一な平均粒径を有する粒子、より詳しくは、累積個数が10%となる粒子径をD10、累積個数が50%となる粒子径をD50、累積個数が90%となる粒子径をD90としたときに、(D90-D10)/D50が0.4以下である粒子を含むことでハンドリング性を維持しながら、高い表面平滑性、とりわけ、少なくとも片面の最大山高さ(Sp)が小さい本フィルムを得ることができる。
【0071】
(製造方法)
以下、本フィルムの製造方法の一例を示す。
先ずは、公知の方法により、原料例えばポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上に加熱し、溶融ポリマーをダイから押し出し、回転冷却ドラム上でポリマーのガラス転移点以下の温度となるように冷却固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得るようにすればよい。
【0072】
次に、当該未配向シートを、一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。この際、延伸温度は、通常25~120℃、好ましくは35~100℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは2.8~6倍である。
【0073】
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸する。この際、延伸温度は通常50~140℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは4.5倍以上であり、より好ましくは4.5~5.0倍である。
【0074】
そして、引き続き180~220℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱固定処理を行い、二軸配向フィルムとしての本共重合ポリエステルフィルムを得ることができる。この熱固定処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱固定処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、フィルムを構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
なお、前記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。
【0075】
(離型層)
本フィルムは、少なくとも片面に離型層を有する形態で使用することが可能である。
当該離型層は、本フィルムにおいて、本フィルムの一方の表面(A)の面側に積層されることが好ましい。
したがって、例えばA/B/C構成の場合には、A層表面側に離型層が積層され、離型層/A/B/Cの構成となる。
本フィルムの高平滑面側に離型層を積層することで、離型層上に超薄層セラミック層を積層してグリーンシートを成型する際にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。
【0076】
前記離型層は、直接又は他の層を介して本フィルムに積層される。
他の層としては、例えば、本フィルムへの密着性を改良するための易接着コート層の他、帯電防止層やブロッキング防止層等を挙げることができる。
【0077】
前記離型層は、離型剤を含む離型剤組成物から形成されるが、良好な離型性能を得る観点から、とりわけ、該離型剤組成物中にシリコーン樹脂を含有することが好ましい。具体的には、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプや、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ、或いはフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。
【0078】
前記硬化型シリコーン樹脂としては、付加型、縮合型等の熱硬化型や紫外線硬化型等の電子線硬化型等、既存の何れの硬化反応タイプでも用いることができ、また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用しても良い。
また、離型層を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限は無く、有機溶剤に溶解している形態、水系エマルジョンの形態、無溶剤の形態の何れであっても良い。
【0079】
前記離型層を形成する離型剤組成物には、その他にも、必要に応じてバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機系有機系粒子、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料及び顔料等が含有されてもよい。
【0080】
離型層の形成は、本フィルムに離型剤組成物をコーティングすることにより設けられ、フィルム製膜工程内で行うインラインコーティング、或いは、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングのいずれを採用してもよい。
【0081】
本フィルム上に離型層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
【0082】
離型層を形成する際の硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80℃以上で10秒間以上、好ましくは100~200℃で3~40秒間、より好ましくは120~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0083】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、公知の装置、エネルギー源を用いることができる。
【0084】
離型層の塗工量(乾燥後)は塗工性の面から、通常、0.005~5g/m2、好ましくは0.005~1g/m2、更に好ましくは0.005~0.1g/m2の範囲である。塗工量(乾燥後)が0.005g/m2未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。
【0085】
一方、5g/m2を超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0086】
なお、塗布量は、塗布した時間あたりの液質量(乾燥前)、塗工液不揮発分濃度、塗布幅、延伸倍率、ライン速度等から計算で求める。
【0087】
(用途)
本フィルムは、各種の離型用途に好適に用いることができる。
例えばドライフィルムレジスト(DFR)用、多層回路基板用、積層セラミックコンデンサーのセラミックグリーンシート製造用等の各種離型・工程用途として使用できる。本フィルムは、離型用途、工程用途では、例えば支持体として使用され、例えば支持体上にセラミックスラリーなどの様々な材料が塗布、積層などされるとよい。
【0088】
とりわけ、本フィルムは、前述したように、平滑性に優れている一方、それでいて、セラミックグリーンシートの切断・断裁工程における、切断刃の長寿命化に貢献できることから、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。
【0089】
今後、電装化が進む自動車向け積層セラミックコンデンサーにおいては、とりわけ、当該コンデンサーの小型化・高容量化に伴い、使用するセラミックグリーンシートの薄膜化が進み、切断・断裁工程における、切断・断裁回数の増加に伴い、切断刃の短寿命化が進行していくと予測される。
したがって、とりわけ、本フィルムは、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。
【実施例0090】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0091】
<ポリエステルの製造>
(1)ポリエステルAの製造
ジメチルテレフタレート100質量部及びエチレングリコール65質量部を、攪拌装置、昇温装置及び留出液分離塔を備えたエステル交換反応槽に仕込み、150℃に加熱してジメチルテレフタレートを溶融させた。
【0092】
次いで、得られるポリエステルに対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を添加した。
その後、常圧下で3時間かけて225℃まで昇温させ、更に225℃で1時間15分間攪拌保持すると共にメタノールを留去しながらエステル交換反応を行ない、実質的にエステル交換反応を終了してポリエステル低重合体(オリゴマー)を得た。
【0093】
次いで、前記オリゴマーを留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽へ移送した。
得られるポリエステル樹脂分に対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を、移送後のオリゴマーに添加した。
その後、得られるポリエステルに対するリン酸の添加量が0.017質量%となるように、熱安定剤としてリン酸のエチレングリコール溶液を添加した。
【0094】
次いで、得られるポリエステルに対してチタン原子として4.5質量ppmとなるように、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、前記オリゴマーに添加した。
その後、101.3kPaから0.4kPaまで85分間で減圧し0.4kPaに保持するとともに、225℃から280℃まで2時間かけて昇温させ280℃で1.5時間保持して溶融重縮合反応を行い、極限粘度(IV)が0.63dL/gのポリエステルAを得た。
【0095】
(2)ポリエステルBの製造
上記ポリエステルAを固相重合し、極限粘度(IV)が0.70dL/gのポリエステルBを得た。
【0096】
(3)ポリエステルCの製造
上記ポリエステルAでテトラブチルチタネートを添加する代わりに、得られるポリエステル樹脂分に対してアンチモン原子として300質量ppmとなるように、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加すること以外はポリエステルAと同様にして、極限粘度(IV)が0.63dL/gのポリエステルCを得た。
【0097】
(4)ポリエステルDの製造
上記ポリエステルAで、得られるポリエステルに対してチタン原子として210質量ppmとなるようにテトラブチルチタネートを添加すること以外はポリエステルAと同様にして、極限粘度(IV)が0.63dL/gのポリエステルDを得た。
【0098】
(5)ポリエステルEの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径0.5μmの単分散球状シリカを1.0質量%((D90-D10)/D50=0.27)添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルEを得た。
【0099】
(6)ポリエステルFの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径0.05μmのアルミナ粒子を0.75質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルFを得た。
【0100】
(7)ポリエステルGの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径0.7μmの炭酸カルシウム粒子を2.0質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルGを得た。
【0101】
(8)ポリエステルHの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径0.3μmの有機粒子((D90-D10)/D50=0.46:ジビニルベンゼン・エチルスチレン・メタクリル酸・スチレン共重合物)を1.0質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルHを得た。
【0102】
(9)ポリエステルIの製造
上記の実質的に粒子を含有しないポリエステルD中に、平均一次粒径2μmの有機粒子(ジビニルベンゼン・エチルスチレン・メタクリル酸・スチレン共重合物)を0.5質量%添加し、ベント式二軸混練機を用いて練り込みポリエステルIを得た。
【0103】
[実施例1]
ポリエステルDを70%、ポリエステルHを30%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルDが100%の原料を中間層(ベース層B)の原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、A層を二分配して最外層(表層)、B層を中間層とする2種三層(A/B/A)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/A=2/27/2となるよう共押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して無定形フィルムを得た。
【0104】
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に、すなわちMD方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムをテンターに導き、横方向、すなわちTD方向に120℃で4.6倍延伸し、テンター内の熱処理(固定)ゾーン1、2、冷却ゾーン3、4において、それぞれ215℃、205℃、150℃、110℃で熱処理を行った後、フィルムを6インチのプラスチック芯にロール状に巻き上げ、厚さ31μm、フィルム幅1420mm、巻長さ13500mの実施例1のポリエステルフィルムロールを得た。
【0105】
[比較例1]
実施例1において、ポリエステルCを75%、ポリエステルG25%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルCが100%の原料を中間層(ベース層B)の原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、A層を二分配して最外層(表層)、B層を中間層とする2種三層(A/B/A)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/A=2.4/26.2/2.4となるよう共押出する以外は実施例1と同様にして、比較例1のポリエステルフィルムロールを得た。
【0106】
[比較例2]
実施例1において、ポリエステルCを49%、ポリエステルGを20%、ポリエステルIを31%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルCが100%の原料を中間層(ベース層B)の原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、A層を二分配して最外層(表層)、B層を中間層とする2種三層(A/B/A)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/A=1/29/1となるよう共押出する以外は実施例1と同様にして比較例2のポリエステルフィルムロールを得た。
【0107】
[比較例3]
比較例2において、ポリエステルCを57%、ポリエステルEを30%、ポリエステルIを13%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とする以外は比較例2と同様にして比較例3のポリエステルフィルムロールを得た。
【0108】
[比較例4]
比較例2において、ポリエステルBを75%、ポリエステルEを25%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とする以外は比較例2と同様にして比較例4のポリエステルフィルムロールを得た。
【0109】
[比較例5]
実施例1において、ポリエステルAを87%、ポリエステルFを13%の質量割合でブレンドした原料を表面層Aの原料とし、ポリエステルDが100%の原料を中間層(ベース層B)の原料とし、ポリエステルCを28%、ポリエステルGを22%、ポリエステルHを50%の質量割合でブレンドした原料を表面層Cの原料としベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、A層、C層を最外層(表層)、B層を中間層とする3種三層(A/B/C)の層構成で、押出条件で厚み構成比がA/B/C=4/25/2となるよう共押出する以外は実施例1と同様にして比較例5のポリエステルフィルムロールを得た。
得られた各フィルムロールの特性を下記表1に示す。
【0110】
<測定及び評価方法>
実施例及び比較例で用いた測定法及び評価方法を次のとおりである。測定及び評価結果は、表1にまとめた。
【0111】
(1)極限粘度(IV)
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度(IV)測定装置(離合社製「VMS-022UPC・F10」)を用いて、30℃で測定した。
【0112】
(2)粒子の平均粒径及び粒度分布
走査型電子顕微鏡(HITACHI製、「S3400N」)を用いて、実施例及び比較例のポリエステルフィルムの各表面より、粉体を観察した。
得られた画像データから粒子1個の大きさを測定し、10点の平均値を平均一次粒径とした。
また、粒子にフェノール/テトラクロロエタン=2/3の混合溶剤を添加した固形分0.03g/mLの分散液を調製し、当該分散液について、マイクロトラックベル社製「MT3300EXII」を用いてレーザー回折散乱法により、累積個数が10%となる粒子径D10、累積個数が50%となる粒子径D50及び累積個数が90%となる粒子径D90を測定し、(D90-D10)/D50を算出した。
【0113】
(3)平均表面粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)
表面粗さ測定器(アメテック株式会社、「NewView」(登録商標))を用いて実施例及び比較例のポリエステルフィルムロールのA層側の表面を測定し、得られた表面のプロファイル曲線より、平均表面粗さSa値、最大山高さSp値を求めた。
【0114】
(4)粒子占有率
実施例及び比較例のポリエステルフィルムにおいて観察面(A層側)にアルミニウム蒸着し、試料サンプルとした。次いで、デジタルハイビジョン(キーエンス社製)を用いて、試料サンプルのA層側の表面を倍率400倍で撮影し得られた画像について、解析ソフト(ImageProPlus 7.0J)を用いて2値化処理し、粒子の占有面積を求めた。また、撮影した画像及び2値化画像を
図1~6としてそれぞれ示す。
【0115】
(5)突起部の表面弾性率の測定
ナノインデンター(Bluker社製、「TI980」)を用い、最大荷重20μN、2秒の条件により、SPMモードでサンプル表面の形態像を取得し、突起部の表面弾性率を測定した。
【0116】
(6)傷つき防止性
フィルム表面のキズ欠陥に関して、実施例及び比較例のポリエステルロールをA4サイズの試料フィルムとし、「室内三波長蛍光灯下の透過光」及び「暗室でのハロゲンランプの反射光」で傷(微細な傷、傷状欠陥、ツブ状模様等)が目視で認識できるかを確認した。傷が確認できた場合は、その個数を求め、下記評価基準により判定を行った。
<評価基準>
A:室内三波長蛍光灯下の透過光又はハロゲンランプの反射光で確認できる深さ0.3μm以上のキズが0~4個。
B:室内三波長蛍光灯下の透過光又はハロゲンランプの反射光で確認できる深さ0.3μm以上のキズが5個以上。
【0117】
(7)刃こぼれ防止性
以下の評価基準を基に、刃こぼれ防止性を評価した。
<評価基準>
A:突起部の表面弾性率が4.0GPa以下
B:突起部の表面弾性率が4.0GPaより大きい
【0118】
【0119】
実施例1のポリエステルフィルムロールは、高い平滑性を有するとともに、微細な有機粒子を用いて、表面層の粒子占有率を大きくすることにより、適度な表面弾性率を有するため、比較的やわらかい有機粒子を用いているにも関わらず、傷つき防止が良好であった。
また、実施例1のポリエステルフィルムロールは、突起部の表面弾性率が4.0GPa以下であることから、例えば、セラミックグリーンシートの切断・断裁工程における切断刃の刃こぼれ発生をより抑制することができる。
【0120】
また、実施例1の結果により、表面層Aが高Saかつ低Spを得るための調整には、表面層に用いる粒子の平均粒径は、表面層Aでは0.05~0.4μmであることが必要であること、A/B/A構成において、表面層Aに用いる粒子は有機粒子が好ましいことがわかった。
更に、表面層Aがアンチモン化合物及び/又はチタン化合物を含み、該アンチモン化合物の含有量が100ppm以下であることが好ましいこと、表面層Aを構成するポリエステルの極限粘度(IV)が0.50dL/g以上であることが好ましいことが分かった。
【0121】
また、
図1~6に、実施例1及び比較例1~5のそれぞれで得られたポリエステルフィルムの一方の表面(A)の粒子占有率の測定の際に得られた画像データ(a)及び得られた画像データを2値化した画像データを示す。
図1より、本願の要件である、平均表面粗さが5~20nmであり、かつ、粒子占有率が4.0%以上であることを満たす実施例1の表面は、粒子が密に敷き詰められており、微小に粗い状態になっていることが確認される。このような表面構造を有することから、実施例1は、粒子1個あたりに外部から加わる力を低減させることができるため、傷つき防止性を向上することが確認できる。更に、実施例1は、フィルム表面に有機粒子を用いたことから、本願の要件である、突起部の表面弾性率が4.0GPa以下であるため、例えば実施例1の構成をもつフィルムを用いてグリーンシート製造する際に、切断時の刃こぼれ発生抑制を抑制し、切断刃を延命することができる。
一方、
図2~5より、本願の要件を満たさない比較例1~4の表面は、凹凸が大きく、粒子と粒子との間の隙間が広い状態であることが確認できる。そのため、比較例1~4は、粒子1個あたりに外部から加わる力が大きくなることから、傷つき防止性に劣る結果となった。また、比較例1~4は、突起部の表面弾性率が4.0GPaより大きいため、刃こぼれ防止性も劣る結果となった。
また、
図6より、本願の要件を満たさない比較例5は、凹凸が小さかったことから、傷つき防止には一定の効果が得られたものの、突起部の表面弾性率が4.0GPaより大きいため、刃こぼれ防止性は劣る結果となった。
本発明のポリエステルフィルムロールは、高い平滑性を有するとともに、傷つき防止性が改善されていることから、生産性向上に伴い、ポリエステルフィルムロールの長尺化に対応可能となる利点を有する。更に、積層セラミックコンデンサーの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として用いれば、均一な薄膜の誘電体層を形成することができ、かつ、セラミックグリーンシートの切断・断裁工程における切断刃の刃こぼれ発生の遅延による長寿命化に貢献できる。とりわけ、自動車向け積層セラミックコンデンサーに用いるセラミックグリーンシート用支持体として好適に用いることができる。