(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014656
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/32 20060101AFI20220113BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H01L23/32 D
H01L23/14 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117118
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
(72)【発明者】
【氏名】竹野 博
(57)【要約】
【課題】伝送損失特性が改善された半導体装置を製造できる半導体装置の製造方法、及び改善された伝送損失特性を示すことができる半導体装置を提供すること。
【解決手段】シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続するインターポーザ基板を用いた半導体装置の製造方法であって、ドーパントを含む前記シリコン単結晶基板を準備する工程と、前記シリコン単結晶基板に前記半導体素子及び前記貫通電極を形成して前記インターポーザ基板を得る工程と、前記シリコン単結晶基板のうち少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することにより、前記貫通電極の形成部周辺領域の前記ドーパントを不活性化する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続するインターポーザ基板を用いた半導体装置の製造方法であって、
ドーパントを含む前記シリコン単結晶基板を準備する工程と、
前記シリコン単結晶基板に前記半導体素子及び前記貫通電極を形成して前記インターポーザ基板を得る工程と、
前記シリコン単結晶基板のうち少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することにより、前記貫通電極の形成部周辺領域の前記ドーパントを不活性化する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン単結晶基板として、抵抗率が500Ω・cm以上のシリコン単結晶基板を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン単結晶基板の少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に前記粒子線を照射した後に、前記半導体素子及び前記貫通電極を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体素子及び前記貫通電極を形成した後に、前記シリコン単結晶基板の少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に前記粒子線を照射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記粒子線として電子線を照射することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続したインターポーザ基板を具備する半導体装置であって、前記シリコン単結晶基板がドーパントを含み、前記シリコン単結晶基板の少なくとも前記貫通電極の形成部周辺において、粒子線の照射により前記ドーパントが不活性化されているものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記シリコン単結晶基板が、抵抗率が500Ω・cm以上のものであることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
5Gを迎え、端末は幅広い周波数帯域に対応することが必要となりフィルター等、数多くの高周波部品が必要となってきている。特に高周波数領域で使用する半導体装置は、その高性能化とともに、モバイル情報端末として小型化、薄型化、高密度化が要求されている。
【0003】
また、CPUの高クロック化によりGHz帯での動作が要求されている。また、メモリにおいても、高密度化を目的として例えばDRAMを何層にもスタックした、HBM(High Bandwidth Memory)が製品化されており、この場合は層ごとのメモリの接続にはTSV(貫通配線)が採用されている。
【0004】
このようなことを背景として、ウエーハレベルパッケージとしてシリコン基板を使用したシリコンインターポーザが使用されている。従来のガラスエポキシ基板を用いた実装と比較してシリコン基板を使用することで、微細化が可能となり、近年様々な用途に利用されている(例えば特許文献1)。
【0005】
ここで、このようなCPUや、メモリ、高周波素子では金属配線内に広帯域で信号を通過させる必要があるが、高周波になるに従い、また微細化の進展によって配線間での出力ロス(伝送損失)が問題となってくる。
【0006】
従来のシリコンインターポーザは、絶縁膜が形成されていれば、特に問題にはならなかったが、このようにデバイス間で高周波・広帯域での通信が必要となる用途に用いられるシリコンインターポーザは、信号の広帯域化に伴って絶縁膜だけでは対応できなくなってきている。
【0007】
このような基板の高周波伝送特性として、絶縁層を形成した基板にAl電極で
図6及び
図7に示すようなCo-Planar Waveguide(CPW)5を形成して、このCPW5により入力パワーと出力パワーの差として測定される、伝送損失特性がある。
【0008】
CPW5は、
図6及び
図7に示す一例のように、金属電極50aを隙間を開けて並列に並べて、その隙間の中央にこれら金属電極50aと並列に線状の中央金属電極50bを形成した構造を持ち、中央金属電極50bから
図7における左右両側の金属電極50a及び評価基板30内部に向かう方向の電界50cと、評価基板30内部において中央金属電極50bを囲む方向の磁界50dによって電磁波を伝送する構造の素子5をいう。
【0009】
実際に、例えば非特許文献1には、ポリシリコンを基板材料としてかつ、高抵抗率とすることで、シリコンインターポーザとして使用したときに、高周波信号の伝送損失を改善できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004-79701号公報
【特許文献2】特開平01-169984号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M. Bartek et al., “Characterization of high-resistivity polycrystalline silicon substrates for wafer-level packaging and integration of RF passives”, The Fifth International Conference on Advanced Semiconductor Devices and Microsystems, 2004. ASDAM 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記のように高抵抗率化は伝送損失改善に効果的であるが、シリコン基板の高抵抗率化は非常に難しく、例えば1000Ω・cmよりも高い電気抵抗率を得ようとすると、P型のボロンの場合、1×1013atoms/cm3という極めて低いドーパント濃度とすることが必要であり、原料中の不純物の影響によりさらに高抵抗率化することは困難であった。
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、伝送損失特性が改善された半導体装置を製造できる半導体装置の製造方法、及び改善された伝送損失特性を示すことができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続するインターポーザ基板を用いた半導体装置の製造方法であって、ドーパントを含む前記シリコン単結晶基板を準備する工程と、前記シリコン単結晶基板に前記半導体素子及び前記貫通電極を形成して前記インターポーザ基板を得る工程と、前記シリコン単結晶基板のうち少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することにより、前記貫通電極の形成部周辺領域の前記ドーパントを不活性化する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0015】
このような製造方法では、ドーパントを含むシリコン単結晶基板のうちの少なくとも貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することにより、シリコン単結晶基板の貫通電極の形成部周辺において点欠陥を導入してキャリアをトラップすることができ、それによりこの部分のドーパントを不活性化することができる。それにより、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺の高抵抗率化を達成でき、その結果、伝送損失特性が改善された半導体装置を製造できる。
【0016】
また、本発明の製造方法で製造した半導体装置は、少なくとも貫通電極の形成部周辺においてキャリアがトラップされているため、たとえ伝送信号が高周波であったとしても、高周波に追随するキャリアが少なく、それにより伝送損失を抑えることができる。よって、本発明の製造方法で製造した半導体装置は、優れた高周波特性を示すことができる。
【0017】
このとき、前記シリコン単結晶基板として、抵抗率が500Ω・cm以上のシリコン単結晶基板を用いることが好ましい。
【0018】
このようにすることで、より優れた伝送損失特性を示すことができる半導体装置を製造できる。
【0019】
例えば、前記シリコン単結晶基板の少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に前記粒子線を照射した後に、前記半導体素子及び前記貫通電極を形成することができる。
【0020】
或いは、前記半導体素子及び前記貫通電極を形成した後に、前記シリコン単結晶基板の少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に前記粒子線を照射してもよい。
【0021】
このように、粒子線を照射する工程は、半導体素子及び貫通電極の形成前及び後のいずれに行っても構わない。
【0022】
前記粒子線として電子線を照射することが好ましい。
【0023】
電子線は他の粒子線と比較して、パワーデバイスのライフタイム制御に一般的に使用されており、また透過性が高く半導体基板の深さ方向に均一に照射できるなど利点が多い。
【0024】
また、本発明では、シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続したインターポーザ基板を具備する半導体装置であって、前記シリコン単結晶基板がドーパントを含み、前記シリコン単結晶基板の少なくとも前記貫通電極の形成部周辺において、粒子線の照射により前記ドーパントが不活性化されているものであることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0025】
このような半導体装置は、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺においてドーパントが不活性化されたものであるため、シリコン単結晶基板の貫通電極の形成部周辺が高い抵抗率を示すことができる。したがって、本発明の半導体装置は、改善された伝送損失特性を示すことができる。
【0026】
また、このような半導体装置は、少なくとも貫通電極の形成部周辺においてキャリアがトラップされているため、たとえ伝送信号が高周波であったとしても、高周波に追随するキャリアが少なく、それにより伝送損失を抑えることができる。よって、本発明の半導体装置は、優れた高周波特性を示すことができる。
【0027】
このとき、前記シリコン単結晶基板が、抵抗率が500Ω・cm以上のものであることが好ましい。
【0028】
このような半導体装置は、より優れた伝送損失特性を示すことができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の半導体装置の製造方法であれば、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺の高抵抗率化を達成できるので、伝送損失特性が改善された半導体装置を製造できる。また、本発明の半導体装置の製造方法であれば、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺において、高周波に追随し得るキャリアを減らすことができるので、高周波特性が改善された半導体装置を製造できる。
【0030】
また、本発明の半導体装置であれば、シリコン単結晶基板の貫通電極の形成部周辺が高い抵抗率を示すことができるので、改善された伝送損失特性を示すことができる。また、本発明の半導体装置であれば、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺において、高周波に追随し得るキャリアが減らされているので、改善された高周波特性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の半導体装置の一例を示す概略図である。
【
図5】実施例1及び比較例のそれぞれで得られた各評価用基板の伝送損失を示すグラフである。
【
図6】伝送損失特性を評価するために用いる一例のCo-Planar Waveguide(CPW)の概略平面図である。
【
図7】
図6のCPWの線分X-Xに沿った断面図である。
【
図8】インターポーザ基板による伝送損失を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関し、特にパッケージ技術に関するものであり、より詳細には、シリコンに貫通配線を行い3次元実装やSiP(System in Package)に用いるシリコンインターポーザ基板を具備する半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【0033】
まず、先に述べた伝送損失を、インターポーザ基板による伝送損失を示す概念図である
図8を参照しながらより詳細に説明する。
【0034】
図8は、ウエーハレベルパッケージ等に使用されるシリコンインターポーザ基板10を用いた第1半導体素子2Aと第2半導体素子2Bとの接続概念を示している。第1半導体素子2Aから出た信号は、シリコンインターポーザ基板10を介して第2半導体素子2Bに伝送されるが、第1半導体素子2Aからシリコンインターポーザ基板10への入力パワーよりも、シリコンインターポーザ基板10から第2半導体素子2Bへの出力パワーが小さくなり得る。すなわち、このシリコンインターポーザ基板10を介することで、伝送損失が生じ得る。
【0035】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ドーパントを含むシリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することにより、シリコン単結晶基板の貫通電極の形成部周辺においてドーパントを不活性化して、貫通電極の形成部周辺を高抵抗率化でき、その結果シリコンインターポーザ基板での伝送損失を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0036】
即ち、本発明は、シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続するインターポーザ基板を用いた半導体装置の製造方法であって、ドーパントを含む前記シリコン単結晶基板を準備する工程と、前記シリコン単結晶基板に前記半導体素子及び前記貫通電極を形成して前記インターポーザ基板を得る工程と、前記シリコン単結晶基板のうち少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することにより、前記貫通電極の形成部周辺領域の前記ドーパントを不活性化する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0037】
また、本発明は、シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続したインターポーザ基板を具備する半導体装置であって、前記シリコン単結晶基板がドーパントを含み、前記シリコン単結晶基板の少なくとも前記貫通電極の形成部周辺において、粒子線の照射により前記ドーパントが不活性化されているものであることを特徴とする半導体装置である。
【0038】
なお、特許文献2には、電子線照射等の手法を用いて、p形InPを絶縁化あるいは高抵抗化することにより、高効率・高出力・高速変調動作が可能となることが記載されている。しかしながら、特許文献2には、インターポーザ基板の貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射して高抵抗率化することは開示されていない。
【0039】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続したインターポーザ基板を具備する半導体装置であって、前記シリコン単結晶基板がドーパントを含み、前記シリコン単結晶基板の少なくとも前記貫通電極の形成部周辺において、粒子線の照射により前記ドーパントが不活性化されているものであることを特徴とする。
【0041】
ここでの不活性化は、粒子線を照射することで、ドーパントが不活性化されたものである。理論により縛られることは望まないが、このように不活性化された貫通電極の形成部周辺では、シリコン単結晶基板中に点欠陥が形成されており、これらがキャリアトラップとして働くことで、シリコン単結晶基板中のキャリアがトラップされ、ドーパントが不活性化されていると考えられる。このように粒子線の照射によりドーパントが不活性化されている部分は、キャリアがトラップされて減少しているために、高い抵抗率を示すことができると考えられる。本発明の半導体装置は、このようにキャリアが減少されている(高抵抗率化されている)ことで、たとえ伝送信号が高周波であっても、シリコン単結晶基板のうち伝送部(半導体素子間を接続した貫通電極の形成部)周辺に存在するキャリアが高周波に追従しなくなる半導体装置となり、このような半導体装置は、貫通電極の形成部以外での伝送損失を抑えることができ、場合によっては貫通電極の形成部以外での伝送損失をなくすることができると考えられる。
【0042】
すなわち、本発明の半導体装置は、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺においてドーパントが不活性化されたものであるため、シリコン単結晶基板の貫通電極の形成部周辺が高い抵抗率を示すことができ、その結果、改善された伝送損失特性を示すことができる。
【0043】
また、本発明の半導体装置は、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺において、高周波に追随し得るキャリアが減らされているので、改善された高周波特性を示すことができる。
【0044】
以下、本発明の半導体装置をより詳細に説明する。
【0045】
本発明の半導体装置は、インターポーザ基板を具備する。インターポーザ基板では、シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続されている。そのため、インターポーザ基板は、シリコン単結晶基板と、シリコン単結晶基板に形成された半導体素子と、半導体素子間を接続した貫通電極とを具備することができる。
【0046】
シリコン単結晶基板は、ドーパントを含むものであれば、特に限定されない。ドーパントは、シリコン単結晶基板が含有できるものであれば特に限定されない。ドーパントとしては、例えば、B、Ga、P、Sb、As等を挙げることができる。
【0047】
シリコン単結晶基板は、抵抗率が500Ω・cm以上のものであると好ましい。
このような抵抗率を示すシリコン単結晶基板を具備することにより、より優れた伝送損失特性を示すことができる。
【0048】
半導体素子は、シリコン単結晶基板に形成されている。半導体素子は、受動素子であっても良いし、能動素子であっても良いし、又は受動素子及び能動素子の組み合わせであっても良い。
【0049】
貫通電極は、シリコン単結晶基板に形成されている。貫通電極の材料は、特に限定されず、例えばSi貫通電極(TSV)として一般に用いられる電極の材料から構成されたものとすることができる。
【0050】
本発明の半導体装置は、シリコン単結晶基板、貫通電極及び半導体素子以外の部材を具備することもできる。
【0051】
次に、
図1を参照しながら、本発明の半導体装置の一例を具体的に説明する。
【0052】
図1に示した半導体装置100は、インターポーザ基板10と、接続基板20と、バンプ22とを具備する。バンプ22は、インターポーザ基板10と接続基板20との間に設けられている。
【0053】
インターポーザ基板10は、シリコン単結晶基板1を含む。シリコン単結晶基板1は、ドーパントを含んでいる。
【0054】
シリコン単結晶基板1には、この基板1を厚さ方向に貫く貫通電極3が形成されている。
図1では、シリコン単結晶基板1に形成された、6つの貫通電極31、32、33、34、35及び36を図示している。
【0055】
また、シリコン単結晶基板1の一方の主面には、第1半導体素子2A及び第2半導体素子2Bを含む半導体素子2が形成されている。第1半導体素子2Aには、貫通電極31、32及び33のそれぞれの一端が接続されている。同様に、第2半導体素子2Bには、貫通電極34、35及び36のそれぞれの一端が接続されている。
【0056】
接続基板20は、例えば、ガラスエポキシ基板などであり得る。接続基板20は、複数の内部配線21を含んでいる。内部配線21は、接続基板20のインターポーザ基板10に対向する主面上付近に位置する1つの内部配線21aを含んでいる。
【0057】
貫通電極31、32及び33の第1半導体素子2Aに接続されていない方の端部は、シリコン単結晶基板1から突出し、接続基板20に達している。同様に、貫通電極34、35及び36の第2半導体素子2Bに接続されていない方の端部は、シリコン単結晶基板1から突出し、接続基板20に達している。
【0058】
図1に示すように、貫通電極33の一方の端部は、接続基板20の1つの内部配線21aに接している。また、貫通電極35の一方の端部も、内部配線21aに接している。したがって、第1半導体素子2A及び第2半導体素子2Bは、少なくとも、貫通電極33及び35、並びに内部配線21aを介して接続されている。
【0059】
シリコン単結晶基板1のうち、貫通電極31、32及び33の形成部1aの周辺1bは、粒子線の照射によりドーパントが不活性化されている。
【0060】
[半導体装置の製造方法]
本発明の半導体装置の製造方法は、シリコン単結晶基板に形成された半導体素子間を貫通電極で接続するインターポーザ基板を用いた半導体装置の製造方法であって、ドーパントを含む前記シリコン単結晶基板を準備する工程と、前記シリコン単結晶基板に前記半導体素子及び前記貫通電極を形成して前記インターポーザ基板を得る工程と、前記シリコン単結晶基板のうち少なくとも前記貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することにより、前記貫通電極の形成部周辺領域の前記ドーパントを不活性化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0061】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、例えば、先に説明した、本発明の半導体装置を製造することができる。
【0062】
本発明の半導体装置の製造方法における不活性化の工程は、粒子線を照射することで、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺のドーパントを不活性化することである。理論により縛られることは望まないが、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することにより、シリコン単結晶基板中に点欠陥が形成され、これらが、キャリアトラップとして働くことで、シリコン単結晶基板中のキャリアをトラップし、ドーパントを不活性化すると考えられる。このように粒子線の照射によってドーパントが不活性化された部分は、キャリアがトラップされて減少しているために、高い抵抗率を示すことができると考えられる。本発明の半導体装置の製造方法では、少なくとも貫通電極の形成部付近においてこのようにキャリアを減少させる(高抵抗率化する)ことで、たとえ伝送信号が高周波であっても、シリコン単結晶基板のうち伝送部(半導体素子間を接続する貫通電極の形成部)周辺に存在するキャリアが高周波に追従しなくなる半導体装置を製造することができ、このような半導体装置は、貫通電極の形成部以外(周辺部)での伝送損失を抑えることができ、場合によっては貫通電極の形成部以外での伝送損失をなくすることができると考えられる。
【0063】
すなわち、本発明の半導体装置の製造方法は、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺においてドーパントを不活性化するので、シリコン単結晶基板の貫通電極の形成部周辺が高い抵抗率を示すことができ、その結果、特には改善された伝送損失特性を示すことができる半導体装置を製造できる。
【0064】
また、本発明の半導体装置の製造方法は、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺において、高周波に追随し得るキャリアを減らすことができるので、高周波特性が改善された半導体装置を製造できる。
【0065】
電子線は他の粒子線と比較して、パワーデバイスのライフタイム制御に一般的に使用されており、また透過性が高く半導体基板の深さ方向に均一に照射できるなど利点が多い。そのため、粒子線として電子線を照射することが好ましい。
【0066】
粒子線は素子を形成する基板表面の全面に照射してもよく、この場合は半導体素子の形成位置を考慮せずに粒子線を照射することができるので、より簡便である。
【0067】
また、シリコン単結晶基板の少なくとも貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射した後に、半導体素子及び貫通電極を形成することができる。
【0068】
或いは、半導体素子及び貫通電極を形成した後に、シリコン単結晶基板の少なくとも貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射してもよい。
【0069】
すなわち、半導体素子及び貫通電極を形成する前に粒子線の照射を行なっても良いし、半導体素子及び貫通電極を形成した後に粒子線の照射を行っても良い。
【0070】
このとき、シリコン単結晶基板として抵抗率が500Ω・cm以上のシリコン単結晶基板を用いれば、より優れた伝送損失特性示すことができるシリコンインターポーザ基板を得ることができる。
【0071】
なお、本発明の半導体装置の製造方法によって、高抵抗率シリコン単結晶基板を使用すれば従来よりも伝送損失特性の良好なシリコンインターポーザ基板を作製することが可能なだけでなく、比較的低抵抗率の基板であっても高抵抗率化することが可能になる。さらに、シリコン単結晶基板の面内の伝送損失特性にばらつきが存在する場合(シリコン単結晶基板の場合、結晶成長時の固液界面形状に起因した、基板の中心と外周部で抵抗率の違いが生じてしまう)も電子線のような粒子線の照射によって面内のばらつきを低減することも可能になる。
【実施例0072】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
実施例1では、以下の手順で、
図2に示すフローに従い、評価用基板を作製した。
まず、CZ法で作製した直径200mmのボロンドープの高抵抗率シリコン単結晶基板(5000、8000、13000Ω・cm)1を準備し、これらの基板1の伝送損失特性評価のために、シリコン単結晶基板1の表面に厚さ400nmの熱酸化膜6を形成した。
【0074】
次いで、各基板1上の貫通電極を形成する部分及びその周辺を含む領域1cに、
図6及び
図7を参照しながら説明したのと同様の構造を有するCPW5(路線長:2200μm)をアルミニウム電極で形成した素子を作製した。
【0075】
その後、電子線4を基板1全面に照射(加速:2MeV、ドーズ量:1×1014~1×1016/cm2)を行った。これにより、実施例1の評価用基板を得た。
【0076】
実施例1の各評価用基板について、伝送損失(周波数:1GHz、入力:-10dBmとしたときの、出力側の電力を測定しその差分)を測定した。
【0077】
(実施例2)
実施例2では、以下の手順で、
図3に示すフローに従い、評価用基板を作製した。
まず、CZ法で作製した直径200mmのボロンドープの高抵抗率シリコン単結晶基板(5000、8000、13000Ω・cm)1を準備し、これらの基板1の伝送損失特性評価のために、シリコン単結晶基板1の表面に厚さ400nmの熱酸化膜6を形成した。
【0078】
その後、電子線4を各基板1全面に照射(加速:2MeV、ドーズ量:1×1014~1×1016/cm2)を行った。
【0079】
次いで、各基板1上の貫通電極を形成する部分及びその周辺を含む領域1cに、
図6及び
図7を参照しながら説明したのと同様の構造を有するCPW5(路線長:2200μm)をアルミニウム電極で形成した素子を作製した。これにより、実施例2の評価用基板を得た。
【0080】
実施例2の各評価用基板について、伝送損失(周波数:1GHz、入力:-10dBmとしたときの、出力側の電力を測定しその差分)を測定した。
【0081】
(比較例)
比較例では、以下の手順で、
図4に示すように、評価用基板を作製した。
まず、CZ法で作製した直径200mmのボロンドープの高抵抗率シリコン単結晶基板(5000、8000、13000Ω・cm)1を準備し、これらの基板1に伝送損失特性評価のために、シリコン単結晶基板1の表面に厚さ400nmの熱酸化膜6を形成した。
【0082】
次いで、各基板1上の貫通電極を形成する部分及びその周辺を含む領域1cに、
図6及び
図7を参照しながら説明したのと同様の構造を有するCPW5(路線長:2200μm)をアルミニウム電極で形成した素子を作製した。これにより、比較例の評価用基板を得た。すなわち、比較例の評価用基板は、電子線を照射せずに作製した。
【0083】
比較例の各評価用基板について、伝送損失(周波数:1GHz、入力:-10dBmとしたときの、出力側の電力を測定しその差分)を測定した。
【0084】
(結果)
実施例1及び比較例1の各評価用基板の伝送損失(Total Loss(dB/mm))を
図5に示す。
図5に示す伝送損失は周波数:1GHzでの伝送損失なので、伝送損失の低い値を示す基板ほど、特に高周波を伝送した際の伝送損失特性に優れていることを示している。
【0085】
図5に示した実施例1の結果から、伝送損失特性はシリコン単結晶基板1の抵抗率と粒子線(電子線)照射量に依存するが、同じ抵抗率のシリコン単結晶基板1であっても、粒子線照射をすることによって、粒子線を照射しない比較例(従来)の方法よりも低い伝送損失特性を示した評価用基板を作製することができる、すなわち従来の方法に対して伝送損失特性を改善することができることが分かる。
【0086】
また、実施例2は、実施例1と同様の結果となった。すなわち、実施例2の結果からも、伝送損失特性はシリコン単結晶基板1の抵抗率と粒子線(電子線)照射量に依存するが、同じ抵抗率のシリコン単結晶基板1であっても、粒子線照射をすることによって、粒子線を照射しない比較例(従来)の方法よりも低い伝送損失特性を示した評価用基板を作製することができる、すなわち従来の方法に対して伝送損失特性を改善することができることが分かる。
【0087】
一方、粒子線を照射しなかった比較例の各評価用基板は、同じ抵抗率のシリコン単結晶基板1を用いた実施例1及び2の各評価用基板よりも、伝送損失が大きかった、すなわち伝送損失特性が劣っていたことが分かる。
【0088】
これらの結果は、本発明のように、ドーパントを含むシリコン単結晶基板のうち、少なくとも貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射することで、貫通電極の形成部周辺領域のドーパントを不活性化でき、それにより、シリコン単結晶基板のうち少なくとも貫通電極の形成部周辺の抵抗率を高めることができたことによると考えられる。
【0089】
また、実施例1及び2のように、配線を行った後でも、配線前でも電子線照射の効果は同じであった。これらの結果から、ドーパントを含むシリコン単結晶基板の貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射してから貫通電極及び半導体素子を形成しても、或いは貫通電極及び半導体素子を形成してからドーパントを含むシリコン単結晶基板の貫通電極の形成部周辺に粒子線を照射しても、同様に、伝送損失特性に優れた半導体装置を製造することができることが分かる。
【0090】
そして、上記実施例1及び2では、CPW5及び熱酸化膜6を形成した評価用基板1の伝送損失特性を評価しているが、上記実施例1及び2の結果は、CPW5及び熱酸化膜6の形成に代えて、領域1cに貫通電極を形成し且つ貫通電極で接続した半導体素子を形成すること以外は実施例1又は2と同様の手順で製造した半導体装置が、改善された伝送損失特性を示すことができることを実証するものである。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…シリコン単結晶基板、 1a…貫通電極の形成部、 1b…貫通電極の形成部周辺、 1c…貫通電極の形成部とその周辺とを含む領域、 2…半導体素子、 2A…第1半導体素子、 2B…第2半導体素子、 3、31、32、33、34、35及び36…貫通電極、 4…電子線、 5…CPW、 6…熱酸化膜、 10…インターポーザ基板、 20…接続基板、 21及び21a…内部配線、 22…バンプ、 30…評価基板、 50a…金属電極、 50b…中央金属電極、 50c…電界、 50d…磁界、 100…半導体装置。