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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146714
(43)【公開日】2022-10-05
(54)【発明の名称】受信装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/462 20110101AFI20220928BHJP
   H04N 21/431 20110101ALI20220928BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H04N21/462
H04N21/431
G06F13/00 550L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021047822
(22)【出願日】2021-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】藤井 翔子
(72)【発明者】
【氏名】関口 頌一朗
(72)【発明者】
【氏名】森 翔平
(72)【発明者】
【氏名】西村 敏
【テーマコード(参考)】
5B084
5C164
【Fターム(参考)】
5B084AA01
5B084AA12
5B084AB07
5B084AB30
5B084AB31
5B084BB11
5B084BB19
5B084DC02
5B084DC13
5C164FA06
5C164MB44S
5C164PA33
5C164UB10S
5C164UB82P
5C164UC21P
(57)【要約】
【課題】動画ストリーミングの再生開始までの遅延を短縮しつつ、再生開始時の画質低下を抑制する。
【解決手段】受信装置1は、最高の映像品質のセグメントの受信に必要な第1時間、最高でない各映像品質のセグメントの受信に必要な1以上の第2時間、及び最高でない各映像品質のセグメントを受信して超解像処理するのに必要な1以上の第3時間を、動画コンテンツの再生前に算出し、第1時間が第1閾値未満の場合、初期映像品質を第1時間に対応する映像品質とし、第1時間が第1閾値以上の場合、初期映像品質を第2時間及び第3時間のうち第2閾値以下となる時間に対応する映像品質とする初期映像品質決定部13と、決定された映像品質のセグメントを取得するセグメント取得部14と、セグメントをデコードするデコード部16と、初期映像品質として第3時間に対応する映像品質が決定された場合、超解像処理を行う超解像処理部17と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の映像品質から選択したセグメントを受信する受信装置であって、
最高の映像品質のセグメントの受信に必要な第1時間、最高でない各映像品質のセグメントの受信に必要な1以上の第2時間、及び最高でない各映像品質のセグメントを受信して超解像処理するのに必要な1以上の第3時間を動画コンテンツの再生前に算出し、前記第1時間が第1閾値未満である場合には、初期映像品質を前記第1時間に対応する映像品質に決定し、前記第1時間が前記第1閾値以上である場合には、初期映像品質を前記第2時間及び前記第3時間のうち第2閾値以下となる時間に対応する映像品質に決定する初期映像品質決定部と、
前記初期映像品質決定部により決定された映像品質のセグメントを取得するセグメント取得部と、
前記セグメント取得部によって取得されたセグメントをデコードしてデコードデータを生成するデコード部と、
前記初期映像品質決定部により初期映像品質として前記第3時間に対応する映像品質が決定された場合には、前記デコードデータに対して超解像処理を行う超解像処理部と、
を備える、受信装置。
【請求項2】
前記第1時間は、高品質映像のバッファリングに必要な時間であり、
前記第2時間は、低品質映像のバッファリングに必要な時間であり、
前記第3時間は、前記低品質映像を超解像処理した場合に再生開始までに必要となる遅延時間、及び前記第2時間の和であり、
前記初期映像品質決定部は、前記第1時間が前記第1閾値未満である場合には初期映像品質を前記高品質映像に決定し、前記第1時間が前記第1閾値以上である場合には初期映像品質を前記低品質映像に決定し、
前記超解像処理部は、前記第1時間が前記第1閾値以上であり且つ前記第3時間が前記第2閾値未満である場合には超解像処理を行う、請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
映像の表示解像度ごとに超解像処理に必要な処理時間を示す超解像処理時間リストを管理する超解像処理時間管理部を備え、
前記初期映像品質決定部は、前記超解像処理時間リストに基づいて、前記遅延時間を決定する、請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
マニフェストファイルを取得して解析し、セグメントの再生時刻及びセグメントのURLを対応付けたセグメントURLリストを生成するとともに、各映像品質のセグメントのビットレート及び解像度を対応付けた映像品質リストを生成するマニフェスト取得部を備え、
前記初期映像品質決定部は、前記映像品質リストに基づいて、前記第1時間及び前記第2時間を算出し、
前記セグメント取得部は、前記セグメントURLリストから、前記初期映像品質決定部により決定された映像品質のセグメントのURLを抽出し、該URLを含むセグメント要求を生成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか一項に記載の受信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のインターネットにおけるストリーミング動画配信では、汎用的なWebサーバによりHTTPプロトコルを用いてストリーミング配信する方式が主流となっている。このようなHTTPプロトコルによるストリーミング配信方式(アダプティブストリーミング)の一例としては、国際標準規格のMPEG-DASH(ISO/IEC23009-1)がある。
【0003】
MPEG-DASHでは、Webサーバに、動画コンテンツを一つ又は複数の映像品質(画面サイズやビットレート)でエンコードしたストリームをそれぞれ数秒から数十秒程度のファイルに分割したセグメントと、それらの動画コンテンツの属性やURLを記述したマニフェストファイルとを用意する。受信装置は、マニフェストファイルから当該受信装置の画面サイズや伝送路のネットワーク帯域の状態等を考慮して、適時映像品質を選択して次々とセグメントを受信し、1本の動画コンテンツにつなぎ合わせて再生する(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、このアダプティブストリーミングにおいては、再生の最初の段階では低ビットレートのセグメントを選択して受信することで、再生開始までの遅延を短縮できることが一般的に知られている。その他にも再生開始までの遅延を短縮する手法として、特許文献1には、ネットワークの種類や通信状況に応じた最大遅延時間を計測し、再生区間情報に対応する複数のメディアデータのうち、再生順序が最後のメディアデータからの再生区間長の和が最大遅延時間を超える範囲で最も少数のメディアデータを取得することで、再生開始までの待ち時間を短くしつつ再生が途切れないようにする手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2015-041800号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“次世代動画配信技術「MPEG-DASH」技術概要と標準化・関連技術動向”,映像情報メディア学会誌,Vol.67, No.2, 2013, p.109-115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のアダプティブストリーミングでは、再生開始時の遅延短縮のために低品質映像を選択することで、再生開始時の画質が低下してしまうという課題がある。特許文献1に記載の技術を用いても、再生開始時の画質低下を抑制することができない。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、動画のストリーミング再生において、再生開始までの遅延を短縮しつつ、再生開始時の画質低下を抑制することが可能な受信装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る受信装置は、複数種類の映像品質から選択したセグメントを受信する受信装置であって、最高の映像品質のセグメントの受信に必要な第1時間、最高でない各映像品質のセグメントの受信に必要な1以上の第2時間、及び最高でない各映像品質のセグメントを受信して超解像処理するのに必要な1以上の第3時間を動画コンテンツの再生前に算出し、前記第1時間が第1閾値未満である場合には、初期映像品質を前記第1時間に対応する映像品質に決定し、前記第1時間が前記第1閾値以上である場合には、初期映像品質を前記第2時間及び前記第3時間のうち第2閾値以下で最長時間となる時間に対応する映像品質に決定する初期映像品質決定部と、前記初期映像品質決定部により決定された映像品質のセグメントを取得するセグメント取得部と、前記セグメント取得部によって取得されたセグメントをデコードしてデコードデータを生成するデコード部と、前記初期映像品質決定部により初期映像品質として前記第3時間に対応する映像品質が決定された場合には、前記デコードデータに対して超解像処理を行う超解像処理部と、を備える。
【0010】
さらに、一実施形態において、前記第1時間は、高品質映像のバッファリングに必要な時間であり、前記第2時間は、低品質映像のバッファリングに必要な時間であり、前記第3時間は、前記低品質映像を超解像処理した場合に再生開始までに必要となる遅延時間、及び前記第2時間の和であり、前記初期映像品質決定部は、前記第1時間が前記第1閾値未満である場合には初期映像品質を前記高品質映像に決定し、前記第1時間が前記第1閾値以上である場合には初期映像品質を前記低品質映像に決定し、前記超解像処理部は、前記第1時間が前記第1閾値以上であり且つ前記第3時間が前記第2閾値未満である場合には超解像処理を行うようにしてもよい。
【0011】
さらに、一実施形態において、映像の表示解像度ごとに超解像処理に必要な処理時間を示す超解像処理時間リストを管理する超解像処理時間管理部を備え、前記初期映像品質決定部は、前記超解像処理時間リストに基づいて、前記超解像処理時の遅延時間を決定してもよい。
【0012】
さらに、一実施形態において、マニフェストファイルを取得して解析し、セグメントの再生時刻及びセグメントのURLを対応付けたセグメントURLリストを生成するとともに、各映像品質のセグメントのビットレート及び解像度を対応付けた映像品質リストを生成するマニフェスト取得部を備え、前記初期映像品質決定部は、前記映像品質リストに基づいて、前記第1時間及び前記第2時間を算出し、前記セグメント取得部は、前記セグメントURLリストから、前記初期映像品質決定部により決定された映像品質のセグメントのURLを抽出し、該URLを含むセグメント要求を生成してもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上記受信装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アダプティブストリーミングにおいて、再生開始までの遅延を短縮しつつ、再生開始時の画質低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る受信装置を備えるコンテンツ配信システムの概略を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る受信装置の再生開始時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る受信装置を備えるコンテンツ配信システムの概略を示す。コンテンツ配信システムは、複数のセグメントとマニフェストファイルにより構成される動画コンテンツを、セグメントごとに配信するシステムである。インターネットを介して、受信装置1と配信サーバ3とが接続される。コンテンツ生成装置2と配信サーバ3とは、専用のローカルネットワークで接続されてもよいし、インターネットを介して接続されてもよい。
【0018】
受信装置1は、配信サーバ3から動画コンテンツのセグメント及びマニフェストファイルを受信し、ストリーミング再生を行う。セグメントには複数種類の映像品質が存在し、受信装置1は複数種類の映像品質から選択したセグメントを受信する。
【0019】
コンテンツ生成装置2は、動画コンテンツのセグメント及びマニフェストファイルを生成し、配信サーバ3に供給する。
【0020】
配信サーバ3は、受信装置1によって指定されたURLのマニフェストファイル及びセグメントを受信装置1に配信するサーバであり、例えば一般的なWebサーバとすることができる。
【0021】
(受信装置)
次に、受信装置1の構成について説明する。図2は、受信装置1の構成例を示すブロック図である。図2に示す受信装置1は、マニフェスト取得部11と、超解像処理時間管理部12と、初期映像品質決定部13と、セグメント取得部14と、バッファ15と、デコード部16と、超解像処理部17と、再生部18と、を備える。
【0022】
マニフェスト取得部11は、番組選択時に、マニフェスト要求(リクエスト)を生成し、配信サーバ3に送信する。そして、配信サーバ3から該要求に対するレスポンスとして所望の番組のマニフェストファイルを受信する。マニフェストファイルは、例えば、MPEG-DASH(ISO/IEC23009-1)に準拠したMPD(Media Presentation Description)形式のファイルである。
【0023】
そして、マニフェスト取得部11は、受信したマニフェストファイルを解析し、セグメントの再生時刻及びセグメントのURLを対応付けたセグメントURLリストを生成し、セグメント取得部14に出力する。
【0024】
また、マニフェスト取得部11は、各映像品質のセグメントのビットレート及び解像度を対応付けた映像品質リストを生成し、初期映像品質決定部13に出力する。表1に、映像品質リストの一例を示す。なお、表1では、セグメントの映像品質が低品質と高品質の2種類である場合の映像品質リストを示しているが、セグメントの映像品質は3種類以上であってもよい。
【0025】
【表1】
【0026】
超解像処理時間管理部12は、受信装置1における映像の表示解像度(再生部18の画面解像度)ごとに、超解像処理に必要な処理時間(超解像処理時間)を示す超解像処理時間リストを管理する。超解像処理時間は、あらかじめ測定される。超解像処理時間管理部12は、超解像処理時間リストを初期映像品質決定部13に出力する。表2に、超解像処理時間リストの一例を示す。表示解像度が大きくなるほど、超解像処理時間も増加する。なお、表2では、超解像処理時間を実時間の何倍かで示しているが、これに限られるものではない。
【0027】
【表2】
【0028】
初期映像品質決定部13は、動画ストリーム受信時のスループットを示すスループット情報、及びマニフェスト取得部11から入力した映像品質リストに基づいて、最高の映像品質のセグメントの受信に必要な第1時間、及び最高でない各映像品質のセグメントの受信に必要な1以上の第2時間を動画コンテンツの再生前に算出する。スループットはあらかじめ計測したもの(前回再生時のスループット)としてもよい。また、初期映像品質決定部13は、超解像処理時間管理部12から入力した超解像処理時間リストに基づいて、最高でない各映像品質のセグメントを受信して超解像処理するのに必要な1以上の第3時間を、動画コンテンツの再生前に算出する。
【0029】
そして、初期映像品質決定部13は、第1時間が第1閾値未満である場合には、再生開始時の初期映像品質を、第1時間に対応する映像品質(すなわち、最高の映像品質)に決定する。第1時間が第1閾値以上である場合には、再生開始時の初期映像品質を、第2時間及び第3時間のうち、第2閾値以下で最長時間となる時間に対応する映像品質に決定する。あるいは、第1時間が第1閾値以上である場合には、再生開始時の初期映像品質を、第2時間及び第3時間のうち、第2閾値以下となる時間に対応する映像品質であって、最も解像度が高い映像品質に決定する。なお、第1閾値及び第2閾値は同じ値であってもよい。そして、初期映像品質決定部13は、決定した映像品質を示す初期映像品質情報をセグメント取得部14に出力する。
【0030】
また、初期映像品質決定部13は、初期映像品質を第1時間又は第2時間に対応する映像品質に決定した場合には、超解像処理を行わないと判定し、初期映像品質を第3時間に対応する映像品質に決定した場合には、超解像処理を行うと判定する。そして、初期映像品質決定部13は、該判定結果を示す超解像判定情報を超解像処理部17に出力する。
【0031】
例えば、セグメントの映像品質が高品質、中品質、及び低品質の3種類である場合には、初期映像品質決定部13は、第1時間として高品質のセグメントの受信に必要な時間t1を算出し、第2時間として中品質のセグメントの受信に必要な時間t2及び低品質のセグメントの受信に必要な時間t3を算出し、第3時間として中品質のセグメントを受信して超解像処理するのに必要な時間t4及び低品質のセグメントを受信して超解像処理するのに必要な時間t5を算出する。そして、時間t1が第1閾値T1未満である場合には、初期映像品質を高品質映像に決定する。時間t1が第1閾値T1以上である場合には、初期映像品質を時間t2~t5のうち第2閾値T2以下で最長である時間に対応する映像品質に決定する。そして、初期映像品質決定部13は、決定した初期映像品質を示す初期映像品質情報をセグメント取得部14に出力する。また、初期映像品質決定部13は、初期映像品質を第1時間(t1)又は第2時間(t2,t3)に対応する映像品質に決定した場合には、超解像処理を行わないと判定し、初期映像品質を第3時間(t4,t5)に対応する映像品質に決定した場合には、超解像処理を行うと判定する。
【0032】
説明の便宜上、以下ではセグメントの映像品質が高品質及び低品質の2種類である場合について詳細に説明する。初期映像品質決定部13は、動画ストリーム受信時のスループットを示すスループット情報、及びマニフェスト取得部11から入力した映像品質リストに基づいて、高品質映像受信時間及び低品質映像受信時間を動画コンテンツの再生前に算出する。ここで、「高品質映像受信時間」とは、高品質映像(映像品質が高品質であるセグメント)のバッファリングに必要な時間(第1時間)のことをいう。「低品質映像受信時間」とは、低品質映像(映像品質が低品質であるセグメント)のバッファリングに必要な時間(第2時間)のことをいう。また、初期映像品質決定部13は、超解像処理時間管理部12から入力した超解像処理時間リストに基づいて、超解像処理時間を動画コンテンツの再生前に算出する。ここで、「超解像処理時間」とは、低品質映像を超解像処理した場合に再生開始までに必要となる遅延時間(滞ることなく再生を行うために必要となる、超解像処理を開始してから再生を開始するまでの時間)及び低品質映像受信時間の和(第3時間)のことをいう。
【0033】
初期映像品質決定部13は、高品質映像受信時間が第1閾値T1未満である場合には、再生開始時の初期映像品質を高品質映像に決定するとともに、超解像処理を行わないと判定する。初期映像品質決定部13は、高品質映像受信時間が第1閾値T1以上であり、且つ超解像処理時間が第2閾値T2未満である場合には、再生開始時の初期映像品質を低品質映像に決定するとともに、低品質映像に対して超解像処理を行うと判定する。初期映像品質決定部13は、高品質映像受信時間が第1閾値T1以上であり、且つ超解像処理時間が第2閾値T2以上である場合には、再生開始時の初期映像品質を低品質映像に決定するとともに、超解像処理を行わないと判定する。
【0034】
具体例として、映像品質リストには、5Mbps高ビットレートと、500kbpsの低ビットレートの2種類の映像品質があり、受信装置1で再生開始までに溜めておくべきバッファ量を4秒分とする。また、スループットを10Mbpsとする。この条件において、4秒分をバッファに溜めるために必要な時間は、低ビットレート(500kbps)であれば0.2秒、高ビットレート(5Mbps)であれば2.0秒となる。表2に示す例では、表示解像度が1920x1080とすると、超解像処理時間は実時間の1.2倍なので、4秒分の超解像処理には4.8秒かかる。つまり、超解像処理を開始してから0.8秒後に再生を開始すれば、滞ることなく再生が可能となることから、超解像処理時の遅延時間は0.8秒となる。すなわち、この場合は低品質映像受信時間が0.2秒であり、高品質映像受信時間が2.0秒であり、超解像処理時間が0.2秒と0.8秒の和で1.0秒である。例えば第1閾値及び第2閾値が1.2秒である場合、高品質映像受信時間が第1閾値以上であり、且つ超解像処理時間が第2閾値未満であるため、初期映像品質決定部13は、初期映像品質を低品質映像に決定するとともに、超解像処理を行うと判定する。
【0035】
セグメント取得部14は、マニフェスト取得部11から入力したセグメントURLリストから、再生時刻に対応付けられたセグメントのURLであって、初期映像品質決定部13により選択された映像品質のセグメントのURLを抽出する。そして、セグメント取得部14は、該URLを含むセグメント要求を生成し、配信サーバ3に送信する。セグメント取得部14は、該要求に対するレスポンスとして、配信サーバ3から対応するセグメントを取得すると、バッファ15に蓄積する。
【0036】
バッファ15は、セグメント取得部14から入力したセグメントを一時的に蓄積しておくメモリである。
【0037】
デコード部16は、セグメント取得部14によって取得されたセグメントであって、再生部18から要求されたセグメントを、バッファ15から読み出す。そして、デコード部16は、バッファ15から読み出したセグメントをメディアの形式(映像、音声、テキスト等)に従ってデコードしてデコードデータを生成し、超解像処理部17に出力する。
【0038】
超解像処理部17は、初期映像品質決定部13から入力した超解像判定情報が超解像処理を行うとの判定結果である場合には、デコード部16から入力したデコードデータに対して超解像処理を行う。すなわち、超解像処理部17は、高品質映像受信時間(第1時間)が第1閾値T1以上であり、且つ超解像処理時間(第3時間)が第2閾値T2未満である場合には、超解像処理を行う。超解像処理部17は、学習型超解像手法のSRCNN(super-resolution convolutional neural network)等の任意の既知の超解像手法を用いることができる。なお、超解像技術は、デジタル映像を綺麗に高解像度化する技術として近年盛んに研究開発されており、下記参考文献に記載するように学習型超解像と再構成型超解像が存在する。ディープラーニングを用いた様々な学習型超解像手法も提案されており、これらは従来の学習型超解像手法が達成してきた画質を担保し、かつ大幅な処理時間の短縮を可能とする。
[参考文献]
“4K・8Kテレビと超解像技術”、映像情報メディア学会誌、Vol. 69、No.6、2015、p.548-552
【0039】
再生部18は、再生開始時刻情報を含む再生命令をユーザインターフェースから入力すると、再生開始時刻に基づいてセグメントを再生して表示する。
【0040】
なお、上述した受信方法は、動画のストリーミング開始時や、シーク操作などにより再生が一旦中断し、新たに再生を開始する場合において機能するものであり、それ以降についてはアダプティブストリーミングが従来もつ仕組みによって行われる。
【0041】
(再生開始時の処理)
次に、受信装置1の再生開始時の処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。図3に示すフローチャートは、既にマニフェストファイル、映像品質リスト、及び超解像処理時間リストを取得している状態から開始するものとする。
【0042】
ステップS101では、初期映像品質決定部13により、低品質映像のバッファリングに必要な時間である低品質映像受信時間を算出する。
【0043】
ステップS102では、初期映像品質決定部13により、低品質映像受信時間と超解像処理時の遅延時間の和である超解像処理時間を算出する。
【0044】
ステップS103では、初期映像品質決定部13により、高品質映像のバッファリングに必要な時間である高品質映像受信時間を算出する。なお、ステップS103の処理をステップS101よりも先に行ってもよい。
【0045】
ステップS104では、初期映像品質決定部13により、高品質映像受信時間が第1閾値未満であるか否かを判定する。高品質映像受信時間が第1閾値未満である場合には処理をステップS105に進め、高品質映像受信時間が第1閾値以上である場合には処理をステップS106に進める。
【0046】
ステップS105では、セグメント取得部14により、高品質映像のセグメントを取得する。
【0047】
ステップS106では、セグメント取得部14により、低品質映像のセグメントを取得する。
【0048】
ステップS107では、バッファ15により、ステップS105で取得した高品質映像のセグメントデータ、又はステップS106で取得した低品質映像のセグメントデータをバッファリングする。そして、デコード部16により、バッファリングされたセグメントデータをデコードする。
【0049】
ステップS108では、超解像処理時間が第2閾値未満であるか否かを判定する。超解像処理時間が第2閾値未満である場合には処理をステップS109に進め、超解像処理時間が第2閾値以上である場合にはステップS109の処理を行わない。
【0050】
ステップS109では、超解像処理部17により、超解像処理を実施する。
【0051】
ステップS110では、デコードされたセグメントデータを再生する。
【0052】
図3では、セグメントの映像品質が高品質及び低品質の2種類である場合について説明した。動画のストリーミング開始時や、シーク操作などにより再生が一旦中断し、新たに再生を再開する場合において、このような閾値比較を行うことにより、再生開始までの遅延を短縮することができる。また、閾値を超えない場合には超解像処理を行うことが可能であるため、再生開始時の画質低下を抑制することができる。なお、再生の開始時又は再開時以降については、従来と同様に、伝送路のネットワーク帯域の状態等を考慮してマニフェストファイルから適時映像品質を選択し、選択した映像品質のセグメントを取得してデコードする。
【0053】
(プログラム)
上述した受信装置1として機能させるために、それぞれプログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0054】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0055】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0056】
上述したように、受信装置1又は受信装置1として機能させるためのプログラムは、第1時間、第2時間、及び第3時間を動画コンテンツの再生前に算出し、第1時間が第1閾値未満である場合には、初期映像品質を第1時間に対応する映像品質に決定し、第1時間が第1閾値以上である場合には、初期映像品質を第2時間及び前記第3時間のうち第2閾値以下で最長時間となる時間に対応する映像品質に決定し、初期映像品質のセグメントを取得してデコードし、初期映像品質が第3時間に対応する映像品質である場合には、デコードしたデータに対してさらに超解像処理を行う。これにより、動画のストリーミング再生において、再生開始までの遅延を短縮しつつ、再生開始時の画質低下を抑制することが可能となる。
【0057】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の構成ブロック又は処理ステップについて、複数を1つに組み合わせたり、1つを複数に分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 受信装置
2 コンテンツ生成装置
3 配信サーバ
11 マニフェスト取得部
12 超解像処理時間管理部
13 初期映像品質決定部
14 セグメント取得部
15 バッファ
16 デコード部
17 超解像処理部
18 再生部
図1
図2
図3