IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧 ▶ 公益財団法人相模中央化学研究所の特許一覧

特開2022-146969フェナントロリン配位子を有する希土類錯体
<>
  • 特開-フェナントロリン配位子を有する希土類錯体 図1
  • 特開-フェナントロリン配位子を有する希土類錯体 図2
  • 特開-フェナントロリン配位子を有する希土類錯体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146969
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】フェナントロリン配位子を有する希土類錯体
(51)【国際特許分類】
   C07C 49/167 20060101AFI20220929BHJP
   C07F 5/00 20060101ALI20220929BHJP
   C07C 49/15 20060101ALI20220929BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220929BHJP
【FI】
C07C49/167
C07F5/00 D CSP
C07C49/15
C07D471/04 112T
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048019
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】本田 寛哉
(72)【発明者】
【氏名】小礒 尚之
【テーマコード(参考)】
4C065
4H006
4H048
5F142
【Fターム(参考)】
4C065AA04
4C065AA19
4C065BB09
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065HH02
4C065JJ01
4C065KK01
4C065KK02
4C065LL01
4C065PP01
4C065QQ10
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB82
4H048AA01
4H048AA02
4H048VA11
4H048VA20
4H048VA32
4H048VA70
4H048VB10
5F142AA02
5F142DA49
5F142DA53
5F142DA55
(57)【要約】
【課題】発光強度の高い希土類錯体を提供することである。
【解決手段】一般式(1)で示される希土類錯体を用いる。
【化1】
(式中、Xは水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。複数のXは、同一又は相異なっていてもよい。ただし全てのXは同時に水素原子にはなりえない。Wは炭素数1から3のフルオロアルキル基、tert-ブチル基、フラニル基、チエニル基又はフェニル基を表す。複数のWは、同一又は相異なっていてもよい。Lnは希土類金属原子を表す。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される希土類錯体。
【化1】
(式中、Xは水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。複数のXは、同一又は相異なっていてもよい。ただし全てのXは同時に水素原子にはなりえない。Wは炭素数1から3のフルオロアルキル基、tert-ブチル基、フリル基、チエニル基又はフェニルを表す。複数のWは、同一又は相異なっていてもよい。Lnは希土類金属原子を表す。)
【請求項2】
Wがトリフルオロメチル基である請求項1に記載の希土類錯体。
【請求項3】
Lnがユウロピウム原子である請求項1又は2に記載の希土類錯体。
【請求項4】
一般式(1)が、下記式(1-1)から(1-3)のいずれか一つの式で示される請求項1から3のいずれか第1項に記載の希土類錯体。
【化2】
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の希土類錯体を含む光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光強度の高い希土類錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信やディスプレイ等のオプトエレクトロニクスや太陽電池等のエネルギー産業は次代の基幹技術であり、それらに用いる各種の無機ガラス材料やセラミック材料、レーザー材料、有機低分子発光材料、波長変換材料等が創出されている。
【0003】
波長変換材料は、特定の波長の光を吸収して別の波長で発光する材料であり、樹脂材料に添加することで光学材料として用いることができる。
【0004】
このような波長変換材料としてβ-ジケトナト配位子を持つ希土類錯体(例えば、非特許文献1)が報告されている。これら希土類錯体は、紫外光などの短波長域の光を吸収し、より長波長域の可視光を発光することができるため、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子と組み合わせることで、種々の発光色の発光装置が実現できると期待される。しかし、現行の波長変換材料は発光強度が低く、さらなる強度向上が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Inorganic and Nuclear Chemistry、第30巻、第5号、1275ページ(1968年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は発光強度の高い希土類錯体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の配位子を導入した希土類錯体が強い発光を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、
[1]一般式(1)で示される希土類錯体(以下、希土類錯体(1)ともいう。);
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Xは水素原子、メチル基又はフェニル基を表す。複数のXは、同一又は相異なっていてもよい。ただし全てのXは同時に水素原子にはなりえない。Wは炭素数1から3のフルオロアルキル基、tert-ブチル基、フリル基、チエニル基又はフェニルを表す。複数のWは、同一又は相異なっていてもよい。Lnは希土類金属原子を表す。)

[2]Wがトリフルオロメチル基である前記[1]に記載の希土類錯体;
[3]Lnがユウロピウム原子である前記[1]又は[2]に記載の希土類錯体;
[4]前記一般式(1)が、下記式(1-1)から(1-3)のいずれか一つの式で示される希土類錯体である前記[1]から[3]のいずれか1項に記載の希土類錯体;
【0011】
【化2】
【0012】
[5]前記[1]から[4]のいずれか1項に記載の希土類錯体含む光学材料;
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の希土類錯体は高い発光強度を有する優れた波長変換材料となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得た本発明の希土類錯体(1-1)の発光スペクトルである。
図2】実施例2で得た本発明の希土類錯体(1-2)の発光スペクトルである。
図3】実施例3で得た本発明の希土類錯体(1-3)の発光スペクトルである。
【0015】
本発明の一般式(1)におけるW、Ln、及びXの定義についてそれぞれ説明する。
【0016】
一般式(1)のWで示される炭素数1から3のフルオロアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基等を例示できる。原料が容易に入手できる点でトリフルオロメチル基が好ましい。
【0017】
一般式(1)のLnで示される希土類金属原子としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウ、及びルテチウムの希土類原子を挙げることができる。一般式(1)におけるLnとしては、合成が容易な点で、サマリウム原子、ユウロピウム原子、テルビウム原子又はガドリニウム原子が好ましく、光学機能材料として好適な光物性を持つ点で、ユウロピウム原子がさらに好ましい。
【0018】
希土類錯体(1)としては、具体的には下記式(1-1)から(1-10)で示される希土類錯体を例示することができる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
【化3】
【0020】
希土類錯体(1)としては、光学機能材料として好適な光物性を持つ点で式(1-1)、(1-2)又は(1-3)示される化合物が好ましい。
【0021】
次に、希土類錯体(1)の製造方法(以下、本発明の製造方法と呼ぶ。)について説明する。
【0022】
本発明の製造方法として、下記一般式(3)で示されるジケトナト錯体(以下、ジケトナト錯体(3)と呼ぶ。)と、一般式(2)で示される置換フェナントロリン(以下、フェナントロリン配位子(2)と呼ぶ。)と、を反応させることを特徴とする製造方法を挙げることができる。
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、W、Ln及びXは一般式(1)のW、Ln及びXと同じ意味を表す。Qは配位分子を表す。mは0~3の整数を表す。)
本発明の製造方法において、X、W及びLnに示した定義及び具体例については、前記一般式(1)におけるX、W及びLnと同じである。)
【0025】
本発明の製造方法において、Qで示される配位分子としては、具体的には、水、重水、テトラヒドロフラン、ピリジン、イミダゾール、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、1-メチルエチルアルコールのほか、アセトニトリルやプロピオニトリルなどのニトリル類、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類などを例示することができ、ジケトナト錯体(3)の合成が容易な点で水が好ましい。
【0026】
ジケトナト錯体(3)のmは、合成容易な点で2が好ましい。
【0027】
本発明の製造方法に用いるジケトナト錯体(3)は、後記する参考例1に記載の方法やJournal of the American Chemical Society,第87巻,5254-5256ページ,1965年などに記載の方法によって入手することができる。
【0028】
本発明の製造方法に用いるジケトナト錯体(3)の具体的な例としては、トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)、トリス[4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニル-1,3-ヘキサンジオナト)ユウロピウム(III)、トリス[1,3-ジ-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)ユウロピウム(III)、トリス[1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス[4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ヘキサンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス[1-(2-チエニル)-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス[1-フェニル-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)、又はそれらの水和物などを例示することができる。
【0029】
本発明の製造方法におけるフェナントロリン配位子(2)としては、4-メチル-1,10-フェナントロリン、5-メチル-1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン、4,5,6,7-テトラメチル-1,10-フェナントロリン、4-フェニル-1,10-フェナントロリン、5-フェニル-1,10-フェナントロリン、5,6-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,5,6,7-テトラフェニル-1,10-フェナントロリンを例示することができる。原料が容易に入手できる点で4-メチル-1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン又は4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリンが好ましい。本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の製造方法で用いるフェナントロリン配位子(2)は、公知の合成方法により合成したものを用いてもよく、又、市販品を用いてもよい。
【0030】
本発明の製造方法は、希土類錯体(1)の収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;又は水を挙げることができる。これら溶媒を単独、又は二種類以上を任意の比率で混合して用いることもできる。希土類錯体(1)の反応収率が良い点で、ジクロロメタン、クロロホルム、メチルシクロヘキサン、アセトン、メタノール、エタノール又は水が好ましい。
【0031】
本発明の製造方法における、ジケトナト錯体(3)及びフェナントロリン配位子(2)のモル等量に関して説明する。ジケトナト錯体(3)1モルに対して0.25から2.5モルのフェナントロリン配位子(2)を用いることが好ましく、0.5から2.0モルのフェナントロリン配位子(2)を用いることが更に好ましい。
【0032】
本発明の製造方法において、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることができる。具体例としては、-80℃から120℃の範囲から適宜選ばれる反応温度において、1分間から120時間の範囲から適宜選ばれる反応時間反応させることによって希土類錯体(1)を収率よく製造することができる。
【0033】
本発明の製造方法で製造した希土類錯体(1)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、濃縮、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、昇華、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0034】
ジケトナト錯体(3)は、互変異性化を起こしてジケトナト錯体(3i)を形成しうることから、ジケトナト錯体(3)及びジケトナト錯体(3i)の両方を包含するものであるが、便宜上、本明細書においては、これらの異性体を一般式(3)として表記する。同様に本発明の希土類錯体(1)は、互変異性体である希土類錯体(1i)を含むものであるが、本明細書においては、これらの異性体を一般式(1)として表記する。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
本発明の希土類錯体(1)は発光強度が高い。そのため、希土類錯体(1)を含む材料は強発光性の光学材料として有用であり、該光学材料としては、太陽電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体、セキュリティインクなどの発光材料やそれらに用いられる波長変換材料に好適に用いられる。
【0038】
また、本発明の希土類錯体(1)は、樹脂材料、無機ガラス、有機低分子材料からなる群から選ばれる1つ以上を含む光学材料として用いることができ、該材料への希土類錯体の分散性が高いことから、樹脂材料を含む光学材料とすることが特に好ましい。該樹脂材料として、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリメチルメタクリレート、含フッ素ポリエチルメタクリレート、含フッ素ポリプロピルメタクリレート、含フッ素ポリイソプロピルメタクリレート、含フッ素ポリブチルメタクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリイソブチルメタクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルメタクリレート等のポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、含フッ素ポリメチルアクリレート、含フッ素ポリエチルアクリレート、含フッ素ポリプロピルアクリレート、含フッ素ポリイソプロピルアクリレート、含フッ素ポリブチルアクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルアクリレート、含フッ素ポリイソブチルアクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルアクリレート等のポリアクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、含フッ素ポリエチレン、含フッ素ポリプロピレン、含フッ素ポリブテン等のポリオレフィン、ポリビニルエーテル、含フッ素ポリビニルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、又はそれらの共重合体;セルロース;ポリアセタール;ポリエステル;ポリカーボネイト;エポキシ樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリウレタン;ナフィオン;石油樹脂;ロジン;シリコーン樹脂等が例示される。
【0039】
その中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;シリコーン樹脂等が好ましく、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;シリコーン樹脂が更に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0040】
本発明の希土類錯体(1)と樹脂材料を含む光学材料における該希土類錯体(1)の含有割合は、好ましくは0.001から99重量%の範囲であり、更に好ましくは0.01から50重量%の範囲である。
【0041】
上述の無機ガラスとしては、当業者が通常用いるものでよく、例えば、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、リン酸塩ガラス等が例示される。
【0042】
上述の有機低分子材料としては、当業者が通常用いるものでよく、例えば、アミルトリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラアミルアンモニウムクロリド等のイオン液体;又はペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、パラフィン等の炭化水素類等が挙げられる。
【0043】
本発明の希土類錯体(1)を含む光学材料を得る方法としては、希土類錯体(1)を単独で用い光学材料とする方法、希土類錯体(1)を、樹脂材料、無機ガラス、及び有機低分子材料からなる群から選ばれる1つ以上を含む材料に含有させ光学材料とする方法、上記樹脂材料の重合原料に相当するモノマーと希土類錯体(1)を混合し該混合物を重合することにより光学材料とする方法、希土類錯体(1)を溶媒に溶解又は分散させ光学材料とする方法等が挙げられる。
【0044】
本発明の希土類錯体(1)を溶媒に溶解又は分散させ光学材料とする場合、用いることが出来る溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;又は水を挙げることができる。その中でも、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、グリコールエーテル類、エーテル類、ケトン類又は炭化水素類が好ましい。これら溶媒は単独又は2種類以上を任意の比率で混合して用いることができる。
【実施例0045】
以下、実施例、比較例及び評価結果により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0046】
希土類錯体(1)の同定には、以下の分析方法を用いた。
【0047】
19F-NMRスペクトルの測定には、BRUKER社製 ULTRASHIELD PLUS AVANCE III(376MHz)又はASCEND AVANCE III HD(376MHz)を用いた。19F-NMRスペクトルは、重クロロホルム(CDCl)又は重アセトン(Acetone-d)を測定溶媒として測定した。
【0048】
質量スペクトルの測定には、waters社製 waters2695-micromassZQ4000を用いて行い、イオン化法はエレクトロスプレー法、溶媒はメタノールを用いた。
【0049】
また、試薬類は市販品を用いた。
【0050】
なお、本明細書中ではhfaはヘキサフルオロアセチルアセトナト配位子を表す。
(比較例1)
【0051】
【化7】
【0052】
酢酸ユウロピウムn水和物(8.00g,2.5水和物として21.4mmol)に純水(100mL)を加え、室温で10分撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトン(16.7g,80.2mmol)を滴下後、50℃で3時間撹拌した。得られた白色懸濁液をろ別し、得られた白色固体を水(200mL)、トルエン(200mL)で洗浄することで、ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-a)を白色固体として得た(収量11.6g,酢酸ユウロピウム2.5水和物を21.4mmol使用したとして収率68%)。19F-NMR(376MHz,Acetone-d),δ(ppm):-81.2(brs).ESI-MS(m/z):566.8[M-hfa]
(実施例1)
【0053】
【化8】
【0054】
ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(240mg,300μmol)と5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン(62.5mg,300μmol)にメタノール(3.0mL)を加え、室温で3時間撹拌した。その後、反応液を減圧濃縮し、メタノールで再結晶することで、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)(5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(III)(1-1)の白色粉末を得た(収量111mg,収率38%)。19F-NMR(376Hz,CDCl)δ(ppm):-79.3.ESI-MS:(m/z)720.1[M-hfa]
(実施例2)
【0055】
【化9】
【0056】
ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(242mg,300mmol)と4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン(62.6mg,300mmol)にメタノール(3.0mL)を加え、室温で2時間撹拌した。その後、反応液を減圧濃縮し、メタノールで再結晶することで、(4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(1-2)の白色固体を得た(収量111mg,収率40%)。19F-NMR(376Hz,CDCl)δ(ppm):-79.2.ESI-MS:(m/z)772.3[M-hfa]
(参考例1)
【0057】
【化10】
【0058】
1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオン(3.68g,16.4mmol)にエタノール(41mL)と塩化ユウロピウム六水和物(2.00g,5.46mmol)の水溶液(54mL)を加えた。反応混合物に1Mの水酸化ナトリウム水溶液(16.0mL,16.0mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。生じた固体をろ取し、水とエタノールで洗浄し、減圧下50℃で加熱乾燥した。得られた粗生成物にアセトンを入れ、不溶物をろ過にて除去し、ろ液を濃縮することで、ジアクアトリス(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)の黄色固体を得た(収量2.76g,収率59%)。ESI-MS(m/z):634.0[M-(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)]
(実施例3)
【0059】
【化11】
【0060】
参考例1で得たジアクアトリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)ユウロピウム(III)(265mg,304mmol)と4-メチル-1,10-フェナントロリン(58.9mg,304mmol)にメタノール(3.0mL)を加え、室温で3時間撹拌した。反応液をろ過し、ろ物をクロロホルムで再結晶することで(4-メチル-1,10-フェナントロリン)トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)ユウロピウム(III)(1-1)の黄色固体を得た(収量133mg,収率43%)。ESIMS:(m/z)1039.0[M+Na]
(評価結果)
発光スペクトル及び発光量子収率の測定には絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C11347-01)を用いて測定した。
【0061】
実施例で得た希土類錯体(1)の発光スペクトルの測定結果を図1及び図2に表す。発光スペクトルの測定条件は、励起波長465nmとした。Eu(III)錯体に特徴的な約593nm、615nm、653nm及び699nmの発光が観察された。
【0062】
実施例1、3及び比較例1で得た希土類錯体の励起波長465nmでの発光量子収率の測定結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示したように、本発明の希土類錯体(1)は、比較例の化合物1-aと比べて高い発光量子収率を示すことから、高い発光強度を有する材料である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の希土類錯体(1)は発光強度が高い。そのため、太陽電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体及びセキュリティインクなどの発光材料やそれらに用いられる波長変換材料として有用である。
図1
図2
図3