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  • 特開-耐熱性テルビウム錯体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022146977
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】耐熱性テルビウム錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20220929BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20220929BHJP
   C07F 5/00 20060101ALN20220929BHJP
   C07F 9/53 20060101ALN20220929BHJP
   C07C 49/12 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
C07F19/00
C09K11/06
C09K11/06 660
C07F5/00 D
C07F9/53
C07C49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048029
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】本田 寛哉
(72)【発明者】
【氏名】小礒 尚之
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB92
4H048AA01
4H048AB92
4H048AD15
4H048BB14
4H048VA70
4H048VB10
4H050AA01
4H050AB92
4H050AD15
4H050BB14
(57)【要約】
【課題】
発光強度が高く耐熱性に優れたテルビウム錯体を提供することである。
【解決手段】一般式(1)で示されるテルビウム錯体を用いる。
【化1】
(式中、Rはフェニル基又は炭素数4から6の環状アルキル基を表す。複数のRは、同一又は相異なっていてもよい。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるテルビウム錯体。
【化1】
(式中、Rはフェニル基又は炭素数4から6の環状アルキル基を表す。複数のRは、同一又は相異なっていてもよい。)
【請求項2】
Rがシクロヘキシル基である請求項1に記載のテルビウム錯体
【請求項3】
請求項1又は2に記載のテルビウム錯体(1)を含む光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性の高いテルビウム錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信やディスプレイ等のオプトエレクトロニクスや太陽電池等のエネルギー産業は次代の基幹技術であり、それらに用いる各種の無機ガラス材料やセラミック材料、レーザー材料、有機低分子発光材料、波長変換材料等が創出されている。
【0003】
波長変換材料は、特定の波長の光を吸収して別の波長で発光する材料であり、樹脂材料に添加することで光学材料として用いることができる。
【0004】
このような波長変換材料としてβ-ジケトナト配位子を持つテルビウム錯体(例えば、非特許文献1)が報告されている。これらテルビウム錯体は、紫外光などの短波長域の光を吸収し、より長波長域の可視光を発光することができるため、発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子と組み合わせることで、種々の発光色の発光装置が実現できると期待される。一方、これら素子の実装工程では高い耐熱性が求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】The Journal of Physical Chemistry、第68巻、第11号、3324ページ(1964年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は発光強度の高い耐熱性に優れたテルビウム錯体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の配位子を導入したテルビウム錯体が高い発光強度と耐熱性を併せ持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、
[1]一般式(1)で示されるテルビウム錯体(以下、テルビウム錯体(1)ともいう。);
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rはフェニル基又は炭素数4から6の環状アルキル基を表す。複数のRは、同一又は相異なっていてもよい。);
[2]Rがシクロヘキシル基である前記[1]に記載のテルビウム錯体;
[3]前記[1]又は[2]に記載の希土類錯体(1)を含む光学材料;
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のテルビウム錯体は高い耐熱性を有する優れた波長変換材料となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得た本発明のテルビウム錯体(1-1)の発光スペクトルである。
図2】比較例1、及び実施例1で得た本発明のテルビウム錯体(1-1)の熱重量分析測定結果である。
【0013】
本発明の一般式(1)におけるRの定義について説明する。
【0014】
一般式(1)のRで示される炭素数4から6の環状アルキル基としては、シクロブチル基、1,2-ジメチルシクロブチル基、1,3-ジメチルシクロブチル基、シクロペンチル基、1-メチルシクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示することができる。原料が容易に入手できる点でシクロヘキシル基が好ましい。
【0015】
テルビウム錯体(1)としては、具体的には下記式(1-1)から(1-9)で示されるテルビウム錯体を例示することができる。
【0016】
【化2】
【0017】
上記式(1-1)~(1-9)のうち、光学機能材料として好適な光物性を持つ点で式(1-3)にて示される化合物が好ましい。
【0018】
次に、テルビウム錯体(1)の製造方法(以下、本発明の製造方法と呼ぶ。)について説明する。
【0019】
本発明の製造方法として、下記一般式(3)で示されるエノール(以下、エノール(3)と呼ぶ。)と、一般式(2)で示されるリン系配位子と、テルビウム化合物を反応させることを特徴とする製造方法を挙げることができる。
【0020】
【化3】
【0021】
本発明の製造方法において、Rに示した定義及び具体例については、前記一般式(1)におけるRと同じである。
【0022】
一般式(2)で示されるリン系配位子(以下、リン系配位子(2)と呼ぶ。)は、Chemical Reviews、第60巻、243-260ページ、1960年に記載の方法などによって製造し用いることができる。また、市販品を用いてもよい。
【0023】
本発明の製造方法におけるリン系配位子(2)としては、具体的には、下記式(2-1)から(2-9)で示されるリン系配位子を例示することができる。
【0024】
【化4】
【0025】
上記式(2-1)から(2-9)のうち、原料が容易に入手できる点で式(2-3)にて示されるリン系配位子が好ましい。
【0026】
本発明の製造方法で用いるエノール(3)は、公知の合成方法により合成したものを用いてもよく、又、市販品を用いてもよい。
【0027】
本発明の製造方法に用いるテルビウム化合物としては、例えば、フッ化テルビウム(III)、塩化テルビウム(III)、臭化テルビウム(III)、ヨウ化テルビウム(III)等のハロゲン化物塩若しくはそれらの水和物;シュウ酸テルビウム(III)、酢酸テルビウム(III)、トリフルオロ酢酸テルビウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸テルビウム(III)等の有機酸塩若しくはそれらの水和物;トリス[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド]テルビウム(III)、テルビウム(III)トリメトキシド、テルビウム(III)トリエトキシド、テルビウム(III)トリ(イソプロピルオキシド)等の金属アルコキシド;又はリン酸テルビウム(III)、硫酸テルビウム(III)、硝酸テルビウム(III)等の無機オキソ酸塩若しくはそれらの水和物を挙げることができる。中でも反応収率が良い点で、塩化テルビウム(III)、硝酸テルビウム(III)等の無機オキソ酸塩若しくはそれらの水和物;又はシュウ酸テルビウム(III)、酢酸テルビウム(III)、トリフルオロ酢酸テルビウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸テルビウム(III)等の有機酸塩若しくはそれらの水和物が好ましく、酢酸テルビウム(III)、塩化テルビウム(III);又は硝酸テルビウム(III)若しくはそれらの水和物がさらに好ましい。本発明の製造方法で用いるテルビウム化合物は、市販品を用いることができる。
【0028】
本発明の製造方法は、テルビウム錯体(1)の収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;又は水を挙げることができる。これら溶媒を単独、又は二種類以上を任意の比率で混合して用いることもできる。テルビウム錯体(1)の反応収率が良い点で、ジクロロメタン、クロロホルム、メチルシクロヘキサン、アセトン、メタノール、エタノール又は水が好ましい。
【0029】
本発明の製造方法における、テルビウム化合物及びエノール(3)のモル等量に関して説明する。テルビウム化合物1モルに対して1.0から5.0モルエノール(3)を用いることが好ましく、3.0から4.0モルのエノール(3)を用いることが更に好ましい。
【0030】
本発明の製造方法における、テルビウム化合物及びリン系配位子(2)のモル等量に関して説明する。テルビウム化合物1モルに対して0.5から5.0モルのリン系配位子(2)を用いることが好ましく、1.0から3.0モルのリン系配位子(2)を用いることが更に好ましい。
【0031】
本発明の製造方法において、反応を促進するために、塩基を加えて実施してもよい。該塩基として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、キノリンなどの有機アミン類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化物塩、又はアンモニアなどの無機塩基を例示することができる。該塩基の当量としては、エノール(3)1モルに対して1.0から10モルの塩基を用いるのが好ましく、2.0から8.0モルの塩基を用いることがより好ましく、3.0から5.0モルの塩基を用いることが更に好ましい。
【0032】
本発明の製造方法に用いるエノール(3)は、塩基を作用させると活性プロトンを喪失し、下記式(3a)に示す有機塩となる。この有機塩(3a)をエノール(3)として用いてもよく、その際の有機塩(3a)のカウンターカチオンとして示されるMは、具体的には、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルエチルアンモニウムイオン等の第3級アンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルアンモニウムイオン等の第2級アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、2,6-ジメチルピリジニウムイオン等のピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、N-メチルイミダゾリウムイオンなどのイミダゾリウムイオン、アンモニウムイオン等を例示することができる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化5】
【0034】
本発明の製造方法において、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることができる。具体例としては、-80℃から120℃の範囲から適宜選ばれる反応温度において、1分間から120時間の範囲から適宜選ばれる反応時間反応させることによってテルビウム錯体(1)を収率よく製造することができる。
【0035】
本発明の製造方法で製造したテルビウム錯体(1)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、濃縮、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0036】
エノール(3)は、互変異性化を起こしてエノール(3i)又はβ-ジケトン(3ii)を形成しうる。本発明はエノール(3)、エノール(3i)及びβ-ジケトン(3ii)の全てを包含するものであるが、便宜上、本明細書においては、これらの異性体を一般式(3)として表記する。同様にテルビウム錯体(1)は、共鳴異性体であるテルビウム錯体(1i)を含むものであるが、本明細書においては、便宜上、これらの異性体を一般式(1)として表記する。
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
本発明のテルビウム錯体(1)は耐熱性が高い。そのため、テルビウム錯体(1)を含む材料は強発光性の光学材料として有用であり、該光学材料としては、太陽電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体等の波長変換材料、セキュリティインク等の発光材料に好適に用いられる。
【0040】
また、本発明のテルビウム錯体(1)は、樹脂材料、無機ガラス、有機低分子材料からなる群から選ばれる1つ以上を含む光学材料として用いることができ、該材料へのテルビウム錯体の分散性が高いことから、樹脂材料を含む光学材料とすることが特に好ましい。該樹脂材料として、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリメチルメタクリレート、含フッ素ポリエチルメタクリレート、含フッ素ポリプロピルメタクリレート、含フッ素ポリイソプロピルメタクリレート、含フッ素ポリブチルメタクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリイソブチルメタクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルメタクリレート等のポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、含フッ素ポリメチルアクリレート、含フッ素ポリエチルアクリレート、含フッ素ポリプロピルアクリレート、含フッ素ポリイソプロピルアクリレート、含フッ素ポリブチルアクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルアクリレート、含フッ素ポリイソブチルアクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルアクリレート等のポリアクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、含フッ素ポリエチレン、含フッ素ポリプロピレン、含フッ素ポリブテン等のポリオレフィン、ポリビニルエーテル、含フッ素ポリビニルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、又はそれらの共重合体;セルロース;ポリアセタール;ポリエステル;ポリカーボネイト;エポキシ樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリウレタン;ナフィオン;石油樹脂;ロジン;シリコーン樹脂等が例示される。
【0041】
その中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;シリコーン樹脂等が好ましく、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;シリコーン樹脂が特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0042】
本発明のテルビウム錯体(1)と樹脂材料を含む光学材料における該テルビウム錯体(1)の含有割合は、好ましくは0.001から99重量%の範囲であり、さらに好ましくは0.01から50重量%の範囲である。
【0043】
無機ガラスとしては、当業者が通常用いるものでよく、例えば、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラス、リン酸塩ガラス等が挙げられる。
【0044】
有機低分子材料としては、当業者が通常用いるものでよく、例えば、アミルトリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラアミルアンモニウムクロリド等のイオン液体;又はペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、パラフィン等の炭化水素類等が挙げられる。
【0045】
本発明のテルビウム錯体(1)を含む光学材料を得る方法としては、テルビウム錯体(1)を単独で用い光学材料とする方法、テルビウム錯体(1)を、樹脂材料、無機ガラス、及び有機低分子材料からなる群から選ばれる1つ以上を含む材料に含有させ光学材料とする方法、上記樹脂材料の重合原料に相当するモノマーとテルビウム錯体(1)を混合し該混合物を重合することにより光学材料とする方法、テルビウム錯体(1)を溶媒に溶解又は分散させ光学材料とする方法等が挙げられる。
【0046】
本発明のテルビウム錯体(1)を溶媒に溶解又は分散させ光学材料とする場合、用いることが出来る溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;又は水を挙げることができる。その中でも、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、グリコールエーテル類、エーテル類、ケトン類又は炭化水素類が好ましい。これら溶媒は単独又は2種類以上を任意の比率で混合して用いることができる。
【実施例0047】
以下、実施例、比較例及び評価結果により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0048】
テルビウム錯体(1)の同定には、以下の分析方法を用いた。
【0049】
19F-NMRの測定には、BRUKER社製 ULTRASHIELD PLUS AVANCE III(376MHz)又はASCEND AVANCE III HD(376MHz)を用いた。19F-NMRは、重クロロホルム(CDCl)又は重ジメチルスルホキシド-d(DMSO-d)を測定溶媒として測定した。
【0050】
質量スペクトルの測定には、waters社製 waters2695-micromassZQ4000を用いて行い、イオン化法はエレクトロスプレー法、溶媒はメタノールを用いた。
【0051】
また、試薬類は市販品を用いた。
【0052】
なお、本明細書中では、Cyはシクロヘキシル基、Acはアセチル基、hfaはヘキサフルオロアセチルアセトナト配位子を表す。
(比較例1)
【0053】
【化8】
【0054】
酢酸テルビウム(III)四水和物(1.22g,3.00mmol)に水(8.0mL)を加え、ここに25%アンモニア水(5滴)を入れた。前記混合物にヘキサフルオロアセチルアセトン(1.30mL,9.31mmol)を滴下後、室温で2時間撹拌した。生じた沈殿物をろ取し、水、次いでヘキサンで洗浄後、得られた粉末を減圧乾燥することで、ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)テルビウム(III)(1-a)の白色粉末を得た(収量1.64g,収率67%)。19F-NMR(376MHz,DMSO-d)δ(ppm):-75.2(brs)。
(実施例1)
【0055】
【化9】
【0056】
ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)テルビウム(III)(163mg,200μmol)とトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(119mg,401μmol)にメタノール(4.0mL)を加え、室温で1時間撹拌し反応させた。反応液を減圧濃縮し、ジクロロメタン/メタノールで再沈殿することで、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)テルビウム(III)(1-3)の白色粉末を得た(収量200mg,収率73%)。19F-NMR(376MHz,CDCl)δ(ppm):-86.5(brs)。ESI-MS:(m/z)1395.0[M+Na]
(評価結果)
発光スペクトルの測定には絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C11347-01)を用いて測定した。
【0057】
実施例で得たテルビウム錯体(1)の発光スペクトルの測定結果を図1に表す。発光スペクトルの測定条件は、励起波長380nmとした。テルビウム(III)錯体に特徴的な約490nm、545nm、585nm及び620nmの発光が観察された。
【0058】
参考例1、及び実施例1で得た本発明のテルビウム錯体(1-a)、及び(1-1)の熱重量分析測定結果を図2に表す。
【0059】
熱重量分析測定にはSIIナノテクノロジーズ社製、EX STAR7020を用いて以下の測定条件にて測定した。
【0060】
測定条件:窒素気流下、30℃→600℃(昇温速度10℃/分)
熱重量分析測定の結果、本発明のテルビウム錯体(1)は高い耐熱性を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のテルビウム錯体(1)は耐熱性が高い。そのため、太陽電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体及びセキュリティインクなどの発光材料やそれらに用いられる波長変換材料として有用である。
図1
図2