(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014739
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】スモールセル基地局
(51)【国際特許分類】
H04B 1/38 20150101AFI20220113BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20220113BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20220113BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H04B1/38
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117260
(22)【出願日】2020-07-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】307020545
【氏名又は名称】公立大学法人岡山県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】515226250
【氏名又は名称】株式会社ポコアポコネットワークス
(71)【出願人】
【識別番号】501326067
【氏名又は名称】株式会社サイバー創研
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】230116643
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏
(72)【発明者】
【氏名】坂本 龍一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】有本 和民
(72)【発明者】
【氏名】武部 秀治
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】吉川 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】木下 研作
【テーマコード(参考)】
5G066
5K011
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AE05
5G066AE07
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB09
5K011AA08
5K011DA29
5K011KA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、電力供給の安定性を向上させたスモールセル基地局の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のスモールセル基地局は、再生可能エネルギーにより発電する電源部と、無線通信機器との通信を行う通信部と、上記電源部から上記通信部への電源供給を制御する制御部とを備え、上記通信部が、単体で上記無線通信機器と通信可能に構成された複数のビルディングブロックを有し、上記制御部の制御が、上記ビルディングブロック単位で行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーにより発電する電源部と、
無線通信機器との通信を行う通信部と、
上記電源部から上記通信部への電源供給を制御する制御部と
を備え、
上記通信部が、単体で上記無線通信機器と通信可能に構成された複数のビルディングブロックを有し、
上記制御部の制御が、上記ビルディングブロック単位で行われるスモールセル基地局。
【請求項2】
上記制御部の制御が、電源遮断を含む請求項1に記載のスモールセル基地局。
【請求項3】
上記ビルディングブロックが、ノーマリーオフ型である請求項1又は請求項2に記載のスモールセル基地局。
【請求項4】
上記制御部が、
第1基準時刻より過去の時刻から上記第1基準時刻までの所定期間の気象予報データ及び上記電源部の発電量を第1入力データとして受付け、上記第1基準時刻より未来の上記電源部の発電量を第1出力データとして出力する第1ニューラルネットワークと、
上記第1ニューラルネットワークに現在時刻を第1基準時刻として上記第1入力データを入力し、現在時刻が第1基準時刻である第1出力データに基づいて未来の発電量推定値を求める発電量推定部と、
第2基準時刻より過去の時刻から上記第2基準時刻までの所定期間のトラフィックデータ及び上記通信部の消費電力量を第2入力データとして受付け、上記第2基準時刻より未来の上記通信部の消費電力量を第2出力データとして出力する第2ニューラルネットワークと、
上記第2ニューラルネットワークに現在時刻を第2基準時刻として上記第2入力データを入力し、現在時刻が第2基準時刻である第2出力データに基づいて未来の消費電力量推定値を求める消費電力量推定部と
を有し、
上記第1ニューラルネットワークが、上記第1入力データ及び上記第1出力データの実績値を教師データとして機械学習された発電量予測モデルを用い、
上記第2ニューラルネットワークが、上記第2入力データ及び上記第2出力データの実績値を教師データとして機械学習された消費電力量予測モデルを用いており、
上記制御部の制御に、上記発電量推定値及び上記消費電力量推定値が用いられる請求項1、請求項2又は請求項3に記載のスモールセル基地局。
【請求項5】
上記制御部の制御が、伝送能力を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスモールセル基地局。
【請求項6】
上記伝送能力が、通信カバレッジ及び通信スループットの少なくとも一方を含む請求項5に記載のスモールセル基地局。
【請求項7】
上記ビルディングブロックが、上記制御部の制御が時間差を設けて行われる複数の要素回路を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の基地局。
【請求項8】
最大カバレッジエリアが半径250m以上1.5km以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のスモールセル基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スモールセル基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末など屋外での使用が可能な無線通信機器は、いまや生活利便性の向上に不可欠となっている。このような無線通信機器はモバイル通信用の基地局を介して通信が行われる。このため、地域によらず、つまり離島も含め人口密度の疎密に依存せず利用でき、また災害時の等緊急時にリアルタイムで現地の状況を把握する等の目的での幅広い活用を実現していくためには、場所を問わずに基地局を設置できることが必要となる。また、イベントドリブン型のサービスがユビキタスに普及していく中で、電源供給及びメンテナンスの容易さ等の設置のフレキシビリティが確保されなければならない。さらに、環境の観点から、多数の設置が予測されるモバイル基地局は環境負荷への影響を最小限に留める必要がある。
【0003】
このような条件下にあっては、再生可能エネルギー、特に太陽光発電を用いることが提案されている(例えば特開2016-12617号公報、特開2018-78772号公報参照)。このように再生可能エネルギーを電源とするので、系統電源からの電源供給がなくとも動作可能となる。このため、系統電源に場所を縛られることなく設置可能であり、また災害等で系統電源が機能していなくとも動作可能とできるから、活用の範囲が広がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-12617号公報
【特許文献2】特開2018-78772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば太陽光発電を用いる場合、その発電量は天候に依存する。また、夜間は発電を行うことができない。このため、一般に発電したエネルギーを蓄電池に充電して用いる構成が採用され、電力の安定供給が図られている。
【0006】
さらに、上記特許文献1に記載の発明では、気象予報データに基づいて蓄電池の蓄電量を予測し、蓄電池に充電された電力を効率良く長期にわたって負荷に供給し、蓄電池の過放電に伴う運転停止を回避している。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の発明では、事前に消費されると見込まれる電力である予測需要電力量と、実際に消費された電力である実績需要電力量との間に乖離(インバランス)が生じた際、蓄電池に対してこのインバランスに基づいた充放電を行わせることで、インバランスを抑制している。
【0008】
しかし、これらの手法を採用してとしても、電力の安定供給には限界があり、さらなる電力供給の安定性が求められている。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、電力供給の安定性を向上させたスモールセル基地局の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るスモールセル基地局は、再生可能エネルギーにより発電する電源部と、無線通信機器との通信を行う通信部と、上記電源部から上記通信部への電源供給を制御する制御部とを備え、上記通信部が、単体で上記無線通信機器と通信可能に構成された複数のビルディングブロックを有し、上記制御部の制御が、上記ビルディングブロック単位で行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスモールセル基地局は、電力供給の安定性が高く、系統電源の確保が困難場所であっても、安定して動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るスモールセル基地局の全体構成を示す模式的ブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の電源部及び制御部の構成を示す模式的ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の通信部の構成を示す模式的ブロック図である。
【
図4】
図4は、バイアス発生回路の構成例を示す回路図である。
【
図5】
図5は、クロスカップル型の増幅器の構成例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、実施例における伝送速度をパラメータとした場合の通信カバリッジとパワーアンプの消費電力との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例における通信スループットが24Mbpsである場合の稼働ブロック数と通信部の消費電力との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例におけるデータトラフィック量と通信部の消費電力の変化との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例における音声トラフィック量と通信部の消費電力の変化との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例における消費電力を可変にした場合の太陽光発電の発電量実測値と蓄電量との関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施例における10日間経過時点での蓄電量と稼働可能日数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0014】
本発明の一態様に係るスモールセル基地局は、再生可能エネルギーにより発電する電源部と、無線通信機器との通信を行う通信部と、上記電源部から上記通信部への電源供給を制御する制御部とを備え、上記通信部が、単体で上記無線通信機器と通信可能に構成された複数のビルディングブロックを有し、上記制御部の制御が、上記ビルディングブロック単位で行われる。
【0015】
当該スモールセル基地局は、電源部が再生可能エネルギーにより発電するので、系統電源を使用しなくとも動作可能である。また、通信部がビルディングブロックを有し、電源供給の制御をビルディングブロック単位で行うので、きめ細かな制御が可能となり、電力供給の安定性を向上できる。従って、当該スモールセル基地局は、系統電源の確保が困難場所であっても、安定して動作させることができる。
【0016】
上記制御部の制御が、電源遮断を含むとよい。このように上記制御部の制御に電源遮断を含めることで、通信部の消費電力をさらに低減できるので、電力供給の安定性を向上できる。
【0017】
上記ビルディングブロックが、ノーマリーオフ型であるとよい。このように上記ビルディングブロックをノーマリーオフ型とすることで、通信部の消費電力をさらに低減できるので、電力供給の安定性を向上できる。
【0018】
上記制御部が、第1基準時刻より過去の時刻から上記第1基準時刻までの所定期間の気象予報データ及び上記電源部の発電量を第1入力データとして受付け、上記第1基準時刻より未来の上記電源部の発電量を第1出力データとして出力する第1ニューラルネットワークと、上記第1ニューラルネットワークに現在時刻を第1基準時刻として上記第1入力データを入力し、現在時刻が第1基準時刻である第1出力データに基づいて未来の発電量推定値を求める発電量推定部と、第2基準時刻より過去の時刻から上記第2基準時刻までの所定期間のトラフィックデータ及び上記通信部の消費電力量を第2入力データとして受付け、上記第2基準時刻より未来の上記通信部の消費電力量を第2出力データとして出力する第2ニューラルネットワークと、上記第2ニューラルネットワークに現在時刻を第2基準時刻として上記第2入力データを入力し、現在時刻が第2基準時刻である第2出力データに基づいて未来の消費電力量推定値を求める消費電力量推定部とを有し、上記第1ニューラルネットワークが、上記第1入力データ及び上記第1出力データの実績値を教師データとして機械学習された発電量予測モデルを用い、上記第2ニューラルネットワークが、上記第2入力データ及び上記第2出力データの実績値を教師データとして機械学習された消費電力量予測モデルを用いており、上記制御部の制御に、上記発電量推定値及び上記消費電力量推定値が用いられるとよい。このように上記制御部の制御に、いわゆる人工知能(AI)により高い精度で推定した発電量推定値及び消費電力量推定値を用いることで、通信部の消費電力をさらに低減できるので、電力供給の安定性を向上できる。
【0019】
上記制御部の制御が、伝送能力を含むとよい。一般に伝送能力と消費電力とはトレードオフの関係にあるため、上記制御部の制御に伝送能力を含めることで、電力供給の安定性をさらに向上できる。
【0020】
上記伝送能力が、通信カバレッジ及び通信スループットの少なくとも一方を含むとよい。このように上記伝送能力に通信カバレッジ及び通信スループットの少なくとも一方を含めることで、伝送能力の低下を抑止しつつ、通信部の消費電力をさらに低減できる。
【0021】
上記ビルディングブロックが、上記制御部の制御が時間差を設けて行われる複数の要素回路を有するとよい。例えばデジタル回路とアナログ回路とでは、立ち上がり時間が異なる。機能の異なるアナログ回路間でも同様である。このため、両者の立ち上がり時間を考慮して時間差を設けて制御することで、通信部の消費電力をさらに低減できる。
【0022】
最大カバレッジエリアとしては、半径250m以上1.5km以下が好ましい。本発明の基地局は、最大カバレッジエリアが上記範囲内である基地局に好適に用いることができる。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る車両用安全支援システムについて、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1に示すスモールセル基地局1は、再生可能エネルギーにより発電する電源部10と、無線通信機器Xとの通信を行う通信部20と、電源部10から通信部20への電源供給を制御する制御部30とを備える。
【0025】
当該スモールセル基地局1は、コアネットワークとインターネット経由で接続して、カバレッジエリア内の例えば携帯端末といった無線通信機器Xと通信を行う。
【0026】
当該スモールセル基地局1がカバーする最大カバレッジエリアの下限としては、半径250mが好ましく、半径500mがより好ましい。一方、上記最大カバレッジエリアの上限としては、半径1500mが好ましく、半径1000mがより好ましい。上記最大カバレッジエリアが上記下限未満であると、消費電力の変動比が大きくなり、電源制御が困難となるおそれがある。逆に、上記最大カバレッジエリアが上記上限を超えると、消費電力の最大値が大きくなり、再生可能エネルギーによる発電では電力不足となるおそれがある。これに対し、当該スモールセル基地局1は、最大カバレッジエリアが上記範囲内である、いわゆるスモールセル基地局に好適に用いることができる。
【0027】
<電源部>
電源部10は、
図2に示すように、環境発電素子11と、2次電池12と、DC/DC変換器13と、スイッチ14と、発電量測定部15と、電力残量測定部16とを有する。
【0028】
環境発電素子11は、再生可能エネルギーより発電する。再生可能エネルギーとは、絶えず資源が補充されて枯渇することのないエネルギーを指す。具体的には、太陽光、風力、波力、潮力、流水、潮汐、地熱などを挙げることができる。
【0029】
これらの再生可能エネルギーの中でも太陽光により発電することが好ましい。つまり、環境発電素子11が、太陽光発電機であるとよい。環境発電素子11が太陽光発電機である場合、その発電量は太陽電池パネルが受光する光の強度、太陽電池の動作温度、及び天気の変化により、精度よく給電能力を予測できるので、当該スモールセル基地局1の動作安定性をさらに向上できる。以下、環境発電素子11が太陽光発電機である場合を例にとり説明するが、本発明は、環境発電素子11が太陽光発電機である場合に限定されるものではない。
【0030】
2次電池12は、環境発電素子11が発電した電力を蓄積する。2次電池12としては、例えば放電後に再び充電して反復使用できる化学電池を挙げることができる。上記化学電池としては、特に限定されないが、公知の鉛蓄電池、ニッケル-カドミウムやニッケル-水素等のアルカリ蓄電池、リチウムイオン電池などを挙げることができる。
【0031】
DC/DC変換器13は、2次電池12から供給される電源電圧を所望の電圧に変換する。例えば2次電池12が24Vである場合、通信部20に含まれるデジタル回路用の1.5V、プリアンプ等のアナログ回路用の3V又は5V、パワーアンプ等のアナログ回路用の5V又は12Vに変換され、通信部20へ給電する。
【0032】
スイッチ14は、制御部30からの制御により後述する通信部20のビルディングブロック21単位で電源のオン/オフ、つまり電源遮断を行えるように複数のスイッチ群で構成されている。
【0033】
発電量測定部15は、環境発電素子11の発電量をリアルタイムに測定する。また、電力残量測定部16は、2次電池12の電力残量をリアルタイムに測定する。測定した発電量及び電力残量は制御部30へ送られる。なお、「リアルタイムに測定する」とは、逐次測定に加え、所定の間隔をおいて測定を行う場合を含み、上記所定の間隔は、60分以下、好ましくは10分以下とされる。
【0034】
<通信部>
通信部20は、
図1及び
図3に示すように、単体で無線通信機器Xと通信可能に構成された複数のビルディングブロック21を有する。また、通信部20は、複数のビルディングブロック21以外に共通部22と、アンテナ23とを有する。
【0035】
(ビルディングブロック)
個々のビルディングブロック21は、ベースバンド部21aと、送信部21bと、電力増幅部21cと、受信部21dと、アンテナ共用部21eと、消費電力量測定部21fとを有する。
【0036】
ベースバンド部21aは、無線通信機器Xとの間のアクセス用チャネルの変復調や符号化を行う。送信部21bは、変調波の周波数をアップコンバートして送信波を生成する。電力増幅部21cは、アップコンバートされた送信波の電力を増幅する。受信部21dは、無線通信機器Xから受信した電波をダウンコンバートする。
【0037】
アンテナ共用部21eは、増幅した送信波のアンテナ23への送出及びアンテナ23から受信部21dで受信すべき受信波を抽出する。つまり、アンテナ23で送受信されるデータには個々のビルディングブロック21で処理すべきデータが重畳して受信されるから、送信時はアンテナ23から送信されるデータに増幅した上記送信波を合成する必要があり、受信時にはアンテナ23で受信されるデータからこのビルディングブロック21で処理すべき受信波を分配する必要がある。アンテナ共用部21eは、この処理を行う。
【0038】
消費電力量測定部21fは、このビルディングブロック21で消費される消費電力量を測定する。消費電力量の測定は、例えば電源部10のスイッチ14からこのビルディングブロック21に供給される電圧及び電流の積を所望の期間で積分することで算出することができる。
【0039】
複数のビルディングブロック21の基本構成は同様であり、どのビルディングブロック21も無線通信機器Xと同様に通信を行うことができる。また、1つのビルディングブロック21は複数の無線通信機器Xと同時に通信を行えるように構成されている。
【0040】
ビルディングブロック21のブロック数は、当該スモールセル基地局1に求められる最大処理能力等に応じて適宜決定されるが、例えば2以上16以下とされる。
【0041】
ビルディングブロック21は、デジタル回路とアナログ回路とを有する。例えば電力増幅部21cのパワーアンプはアナログ回路で構成される。一方、ベースバンド部21aは、主にデジタル回路で構成される。上記デジタル回路と上記アナログ回路とでは、立ち上がり時間が異なる。このようにビルディングブロック21は、立ち上がり時間が異なる要素回路を有する。このような立ち上がり時間が異なる要素回路には、機能の異なる複数のアナログ回路も含まれる。
【0042】
ビルディングブロック21が、ノーマリーオフ型であるとよい。このようにビルディングブロック21をノーマリーオフ型とすることで、通信部20の消費電力をさらに低減できるので、電力供給の安定性を向上できる。なお、「ノーマリーオフ型」とは、電源を投入した状態においても、動作しない機能については原則として電源供給を行わず、必要に応じて電源を即座にオンする電源管理方法を指す。
【0043】
(共通部)
共通部22は、通信部20に共通の制御を行う。共通部22の共通の制御には、例えばインターネットを介したコアネットワークへの中継を行うクラウド中継機能、通信チャネルに共通のシーケンス制御機能、通信部20に搭載されているROM及びRAMの制御機能などが含まれる。
【0044】
また、共通部22は、消費電力量積算部22aを有する。消費電力量積算部22aは、各ビルディングブロック21の消費電力量測定部21fが測定した消費電力量を積算し、通信部20の消費電力量を求める。求めた消費電力量は制御部30へ送られる。
【0045】
(アンテナ)
アンテナ23は、無線通信機器Xとの間で情報の送受信を行う。アンテナ23は、例えばビルディングブロック21ごとに設けることも可能であるが、
図1に示すように通信部20全体で1つであってもよい。
【0046】
<制御部>
制御部30は、
図2に示すように、気象予報データ31と、トラフィックデータ32と、第1ニューラルネットワーク33と、第2ニューラルネットワーク34と、発電量予測モデル35と、消費電力量予測モデル36と、機械学習部37と、発電量推定部38と、消費電力量推定部39と、設定部40とを有する。
【0047】
(気象予報データ)
気象予報データ31は、ある基準時刻におけるその基準時刻以降の時刻に予測される気象データをいい、天候、気温、雲量、日照量の全部又は一部を含む。気象予報データ31は、例えばコアネットワークを介して入手される。予報される期間としては、例えば1時間以上10日以下程度とすることができ、予報精度の高い現在時刻から近いものほど短い間隔で予報されていることが好ましい。具体的には、例えば現在時刻から1日以内は1時間毎の予報とし、1日超は1日毎の予報とされているとよい。
【0048】
(トラフィックデータ)
トラフィックデータ32は、当該スモールセル基地局1を介して送受信される情報量を指す。トラフィックデータ32は、コアネットワークを介して入手することもできるが、共通部22で処理されているトラフィック量から算出してもよい。
【0049】
トラフィックデータ32は、総量のみとしてもよいが、データトラフィック量と音声トラフィック量とを分けてデータとすることが好ましい。両者はトラフィック量の変化の時刻依存性が異なるため、分離してデータ管理することで、後述する消費電力量予測モデル36の精度が向上する。
【0050】
(第1ニューラルネットワーク及び発電量予測モデル)
第1ニューラルネットワーク33は、第1基準時刻より過去の時刻から上記第1基準時刻までの所定期間の気象予報データ31及び電源部10の発電量を第1入力データとして受付け、上記第1基準時刻より未来の電源部10の発電量を第1出力データとして出力する。この第1ニューラルネットワーク33は、上記第1入力データ及び上記第1出力データの実績値を教師データとして機械学習された発電量予測モデル35を用いている。
【0051】
(第2ニューラルネットワーク及び消費電力量予測モデル)
第2ニューラルネットワーク34は、第2基準時刻より過去の時刻から上記第2基準時刻までの所定期間のトラフィックデータ32及び通信部20の消費電力量を第2入力データとして受付け、上記第2基準時刻より未来の通信部20の消費電力量を第2出力データとして出力する。この第2ニューラルネットワーク34は、上記第2入力データ及び上記第2出力データの実績値を教師データとして機械学習された消費電力量予測モデル36を用いている。
【0052】
(機械学習部)
機械学習部37は、上記第1入力データ及び上記第1出力データの実績値を教師データとし、上記第1入力データから所定期間経過後の電源部10の発電量を予測する発電量予測モデル35を機械学習により生成する。再生可能エネルギーにより発電する電源部10の発電量は、気象条件に左右される場合が多い。このため、第1基準時刻以降の上記発電量は気象予報データ31との相関関係が推認される。従って、機械学習アルゴリズムを利用して発電量予測モデル35を生成可能である。なお、教師データに、上記第1入力データ及び上記第1出力データの実績値に加えて、実際に観測された気象データを加えるとよい。このように実際に観測された気象データを教師データに加えることで、気象予報データと実際の気象データとの関係と、実際の気象データと発電量との関係とを踏まえて機械学習を行うことができるので、発電量予測モデル35の精度を高めることができる。
【0053】
また、機械学習部37は、上記第2入力データ及び上記第2出力データの実績値を教師データとし、上記第2入力データから所定期間経過後の通信部20の消費電力量を予測する消費電力量予測モデル36を機械学習により生成する。トラフィック量の変化は、第2基準時刻(現実の24時制の時刻)と過去の実績値とから推定可能である。トラフィック量と消費電力量とには一定の相関があるから、機械学習アルゴリズムを利用して消費電力量予測モデル36を生成可能である。なお、このモデルで予測される消費電力量は、複数のビルディングブロック21の伝送能力等の設定を第2基準時刻における状態に維持した場合の予測電力に加え、後述する設定部40で設定され得る動作モードの設定に変更した場合の予測電力も含み得る。この場合、教師データには、通信部20の消費電力量等に加えて、その消費電力量が測定されたときの動作モードが含まれる。
【0054】
上記所定期間は、実用的な範囲で適宜設定されるが、例えば第1基準時刻又は第2基準時刻から1時間経過後から1日経過後までの期間とすることができる。また、上記所定期間は、予測量の取扱性の観点から、発電量予測モデル35及び消費電力量予測モデル36(第1ニューラルネットワーク33及び第2ニューラルネットワーク34)の両者で同じ期間とすることもできるが、両者で異なるものとすることが好ましい。例えば消費電力量は、その直前の時間区間の制御結果等にも依存するため、消費電力量予測モデル36の上記所定期間を発電量予測モデル35の上記所定期間より手前にとる方が、予測精度が向上する。
【0055】
機械学習部37は、当該スモールセル基地局1での実績の追加に応じて追加学習を行ってもよい。具体的には、発電量予測モデル35の教師データである上記第1入力データ及び上記第1出力データの履歴と、消費電力量予測モデル36の教師データである上記第2入力データ及び上記第2出力データの履歴とを保存しておき、機械学習部37がこれらを新たな実績値として定期的に追加学習を行い、発電量予測モデル35及び消費電力量予測モデル36をそれぞれ更新する。このように追加学習を行うことで、発電量予測モデル35及び消費電力量予測モデル36の予測精度を高めることができる。
【0056】
(発電量推定部)
発電量推定部38は、第1ニューラルネットワーク33に現在時刻を第1基準時刻として上記第1入力データを入力し、現在時刻が第1基準時刻である第1出力データに基づいて未来の発電量推定値を求める。つまり、発電量推定部38は、第1ニューラルネットワーク33を用いて、現在時刻までの所定期間の気象予報データ31及び電源部10の発電量から、現在時刻より未来の電源部10の発電量を求める。
【0057】
(消費電力量推定部)
消費電力量推定部39は、第2ニューラルネットワーク34に現在時刻を第2基準時刻として上記第2入力データを入力し、現在時刻が第2基準時刻である第2出力データに基づいて未来の消費電力量推定値を求める。つまり、消費電力量推定部39は、第2ニューラルネットワーク34を用いて、現在時刻までの所定期間のトラフィックデータ32及び通信部20の消費電力量から、現在時刻より未来の通信部20の消費電力量を求める。
【0058】
(設定部)
制御部30の制御には、上記発電量推定値及び上記消費電力量推定値が用いられる。具体的には、設定部40が、電力残量測定部16が測定した2次電池12の電力残量と、上記所定期間までの電源部10の発電量推定値及び通信部20の消費電力量推定値とから、上記所定期間までの電力残量を予測する。この予測は、2次電池12の電力残量に上記発電量推定値を加算し、上記消費電力量推定値を減算すればよい。ただし、電力残量の予測値が2次電池12の蓄電容量を超える場合、上記予測値は2次電池12の蓄電容量とされる。
【0059】
さらに、設定部40は、その電力残量の予測値をもとに上記所定期間までの間に上記電力残量がなくならず、かつ伝送能力ができるだけ高く維持されるように動作モードの設定を行う。この動作モードの設定にも、例えば機械学習された予測モデルを用いたニューラルネットワークを利用してもよい。
【0060】
設定部40は、
図3に示すように、その機能として例えば電源供給制御41と、通信品質制御42とを有する。この制御部30の制御は、ビルディングブロック21単位で行われる。
【0061】
電源供給制御41では、電源遮断41aを制御する。つまり、制御部30の制御が、電源遮断41aを含む。このように制御部30の制御に電源遮断41aを含めることで、通信部20の消費電力をさらに低減できるので、電力供給の安定性を向上できる。
【0062】
電源供給制御41は、各ビルディングブロック21に対する電源遮断の有無を決定し、電源部10のスイッチ14を制御することで、各ビルディングブロック21の電源供給のON/OFFを切り替える。
【0063】
通信品質制御42では、伝送能力42aを制御する。つまり、制御部30の制御が、伝送能力42aを含む。一般に伝送能力42aと消費電力とはトレードオフの関係にあるため、制御部30の制御に伝送能力42aを含めることで、電力供給の安定性をさらに向上できる。
【0064】
上記伝送能力としては、ビット誤り率、通信カバレッジ、通信スループットなどを挙げることができる。中でも、上記伝送能力が、通信カバレッジ及び通信スループットの少なくとも一方を含むとよい。このように上記伝送能力に通信カバレッジ及び通信スループットの少なくとも一方を含めることで、伝送能力の低下を抑止しつつ、通信部20の消費電力をさらに低減できる。
【0065】
この設定部40による動作モードの設定は、所定間隔をおいて実行される。上記所定間隔としては、10分以上60分以下とすることが好ましい。上記所定間隔を上記下限以上とすることで、トラフィック量の時間変動や各ビルディングブロック21を構成するベースバンド部21a、送信部21b、電力増幅部21c及び受信部21dがOFF状態からON状態へ移行した際の正常な出力や周波数が復旧するまでの時間を確保できる。また、上記所定間隔を上記上限以下とすることで、トラフィック量の変化に追従した電力供給を行うことができるようになる。
【0066】
上述のようにビルディングブロック21は、立ち上がり時間が異なる複数の要素回路を有する。制御部30の制御は、この複数の要素回路に対して時間差を設けて行われるとよい。このように複数の要素回路の立ち上がり時間を考慮して時間差を設けて制御することで、通信部20の消費電力をさらに低減できる。例えばバイアス回路とアンプ回路が含まれている場合を例にとり説明する。バイアス回路は、スタンドバイ状態でもアクティブ状態でも同じ状態で電流が流れる。このバイアス回路のようなスタンドバイ時に電流を流れてしまう回路では、電源を投入してからその回路が動作安定するまでの時間とスタンドバイ時とアクティブ時に流れる電流値とはトレードオフになる。このため、電流値を減らすためには、安定動作になるまでの時間を長く設定する必要がある。一方、アンプ回路は、スタンドバイ状態では動作を停止することが可能であり、電源を投入してからその回路が動作安定するまでの時間は短い。このような場合においては、制御部30は、バイアス回路を事前に立ち上げて動作を安定させておき、その後にアンプ回路を立ち上げるとよい。このように時間差を設けて制御すれば、バイアス回路が安定するまでの間にアンプ回路に不必要な電流が流れることを抑止できるので、通信部20の消費電力を低減することができる。
【0067】
例えば電力増幅部21cのパワーアンプ等のアナログ回路は、一般的にバイアス回路、差動増幅器(アンプ回路)、オペアンプ回路、チャージシェアリング回路、オープンドレイン回路等から構成されている。当該スモールセル基地局1では、省電力化の観点から、各ビルディングブロック21で電源遮断の制御が行われ、動作しない回路ブロックの電源をシャットダウンさせる技術が利用されている。この電源遮断としてパワーゲーティングやノーマリーオフ動作を適用させている場合、バイアス発生回路を例にとると、バイアス発生回路のセットアップに長い時間を要するため、省電力化と起動速度との間にはトレードオフが発生する。つまり、回路のトランジスタサイズを大きくすれば、電源投入時の時間追随性が上がるが、一方でトランジスタのリーク電流増加による消費電流増加を招く。逆に、トランジスタのサイズを小さくすれば、時間追随性が下がり、安定なバイアス電圧発生までに時間がかかってしまうこととなる。差動増幅器においても、上記バイアス回路からのバイアス電圧が必要となっているとともに、電源投入時にラッチ回路でのクロスカップル部のノードの電圧が安定するまで、過渡的に貫通電流が発生する。これらの回路においては、電源遮断により電源供給のON/OFFの頻度が上がれば、時間追随性の低下又は消費電流増加によるオーバーヘッドが大きくなる。
【0068】
このオーバーヘッドを回避する方法として、例えばバイアス発生回路の場合は、設定部40による動作モードの設定のタイミングに対し、それよりも早いタイミングで電力供給信号を発生させて、バイアス回路を活性化させる方法を採用することができる。バイアス回路を活性化させるタイミングを早めることで、電源遮断からの復帰を迅速に実行することができるようになる。この早めるタイミングはトラフィック量に依存するので、消費電力量推定部39での予測結果をもとに決定するとよい。
【0069】
また、差動増幅器では、ラッチ回路のクロスカップルノードに、パワーオンリセット回路を付加するとよい。バイアス発生回路と同様に設定部40による動作モードの設定のタイミングより早いタイミング(以下、「事前のタイミング」ともいう)で電力供給信号を発生させて、電源遮断からの復帰前にクロスカップルのノードを強制的に相補の電圧レベルに固定することで、貫通電流を削減することができる。
【0070】
チャージシェアリング回路においても、事前のタイミングで、チャージトランスファーすることで、電源遮断からの復帰時の初期電圧を事前に設定することが可能となる。オペアンプ回路においても、事前のタイミングで、貫通電流が発生する箇所への初期電圧の設定やパワーオンリセット回路を付加することで、同様の効果を得ることが可能となる。
【0071】
以下、さらに具体的な回路構成を説明する。
図4は、バイアス発生回路の一例であり、温度依存性を小さくした定電圧を発生させるバンドギャップリファレンス回路である。この電流値は、上述のように電源遮断からの復帰に要する遷移時間を決めるとともに、回路を構成するトランジスのサイズに依存する。電源遮断からの復帰タイミングが事前に分かっている場合、まずバンドギャップリファレンス回路の電圧(Vref)を立ち上げる。この時、回路中の抵抗値を大きくしておくことで、貫通電流を少なくする。その後、負荷の電源を立ち上げるが、そのタイミングでは、Vrefはすでに安定しているので、これにより、貫通電流を削減しつつ、負荷に電源が供給されたタイミングで、安定なVrefを供給可能となる。この構成は、電源供給のON/OFFを頻繁に行うスモールセル基地局1で、特に有効となる。
【0072】
具体的には、
図4において、第1スイッチ14aを最初にONとして、バンドギャップリファレンス回路を活性化する。その後、一定時間後(負荷に電源供給されるタイミング)で第2スイッチ14bをONとすればよい。
【0073】
図5は、一般的なクロスカップル型の増幅器であり、トランジスタN1、N2、P1、P2によりクロスカップル回路が構成されている。この回路の電源(Vdd)をONした場合、電源投入とともにトランジスタN11、N12のノードの電圧はともに立ち上がっていくが、トランジスタのバラツキ等に依存してやがて一方が論理1(Vdd電位)に、他方が論理0(Gnd電位)になる。このとき、安定動作になるまでは、トランジスタN11、N12は、その電位が上昇するので、回路に貫通電流が流れてしまう。この貫通電流は、電源供給のON/OFFする頻度が高いほど、大きなオーバーヘッドとなる。
【0074】
これを回避する方法としては、電源投入時にワンショットパルスを発生するパワーオンリセット回路POR0、POR1をトランジスタN11、N12それぞれに付加して、電源投入時に強制的に例えばトランジスタN11を論理1に、トランジスタN12を論理0にすればよい。これにより、電源投入時には、クロスカップル回路では、トランジスタN11、N12が決められた論理値となるので、貫通電流が流れなくなる。
図5の回路では、電源投入後の一定時間、POR1は1を出力し、POR0は0を出力する。
【0075】
<利点>
当該スモールセル基地局1は、電源部10が再生可能エネルギーにより発電するので、系統電源を使用しなくとも動作可能である。また、通信部20がビルディングブロック21を有し、電源供給の制御をビルディングブロック21単位で行うので、きめ細かな制御が可能となり、電力供給の安定性を向上できる。従って、当該スモールセル基地局1は、系統電源の確保が困難場所であっても、安定して動作させることができる。
【0076】
また、当該スモールセル基地局1は、実績値を教師データとして機械学習された発電量予測モデル35及び消費電力量予測モデル36をそれぞれ用いる第1ニューラルネットワーク33及び第2ニューラルネットワーク34により予測した発電量推定値及び消費電力量推定値を制御部30の制御に用いる。このように制御部30の制御に、いわゆる人工知能(AI)により高い精度で推定した発電量推定値及び消費電力量推定値を用いることで、通信部20の消費電力をさらに低減できるので、電力供給の安定性を向上できる。
【0077】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0078】
上記実施形態では、制御部が機械学習部を有する場合を説明したが、機械学習部は必須の構成要素ではなく省略可能である。この場合、予め機械学習済みの発電量予測モデル及び消費電力量予測モデルが搭載される。また、機械学習部有さない基地局では、追加学習は行われず、当初搭載した発電量予測モデル及び消費電力量予測モデルに基づいて発電量及び消費電力量が予測されることとなる。なお、発電量予測モデル及び消費電力量予測モデルの一方のみを機械学習部により機械学習させてもよい。
【0079】
また、第1ニューラルネットワーク及び第2ニューラルネットワークは、そのいずれか一方又は両方を備えなくともよい。発電量予測及び消費電力量予測に機械学習を行っていない決定論的に予測する方式を用いたものも本発明の意図するところである。
【0080】
上記実施形態では、制御部の制御が、電源遮断を含む場合を説明したが、電源遮断に代えて供給電圧を制御してもよい。ビルディングブロックへ供給する電圧を下げることでも対応するビルディングブロックの消費電力を低減できるので、電力供給の安定性を向上させることができる。
【0081】
上記実施形態では、制御部の制御が、伝送能力を含む場合を説明したが、伝送能力の制御は必須の構成要素ではない。制御部の制御が電源供給のみである場合も本発明の意図するところである。
【実施例0082】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、当該発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
<受信電力算出工程>
まず、受信電力算出工程として、変調方式をQPSKとし、ビット誤り率を与えた場合の所要の受信電力を算出した。
【0084】
QPSK変調方式の場合のビット誤り率Pbの理論式は、下記式1となる。ここで、N
0は熱雑音[dBm]、E
bは受信電力[dBm]である。
【数1】
【0085】
上記式1から、Pb及びN
0が与えられた場合の所要のE
b/N
0は、下記式2で表される。
【数2】
【0086】
一方、受信電力[dBm]について、伝送効率をm[bit/Hz]として、下記式3の関係があるから、下記式4が成立する。
【数3】
【0087】
ここでPb=1×10
-5、m=2bit/Hzとすると、上記式4から、下記式5が得られる。
【数4】
【0088】
ここで、熱雑音N
0は、ボルツマン定数k=1.38×10
-23[J/K]、絶対温度T[K]、帯域幅B[Hz]、受信NFを用いて、下記式6で表される。
【数5】
【0089】
また帯域Bは、伝送速度をS[Mbps]、符号化率をrとすると、下記式7で表される。
【数6】
【0090】
上記式6及び上記式7で、T=300K、NF=10、r=1.5として、伝送速度Sが6Mbps、12Mbps、24MbpsのときのそれぞれのN0を算出すると、
N0=-96dBm( 6Mbps伝送時)、
-93dBm(12Mbps伝送時)、
-90dBm(24Mbps伝送時)
となる。これと上記式5から、QPSK変調方式でビット誤り率Pb=1×10-5を満足する受信レベルは、
C=-83.4dBm( 6Mbps伝送時)、
-80.4dBm(12Mbps伝送時)、
-77.4dBm(24Mbps伝送時)
と求められる。
【0091】
<送信電力算出工程>
次に、送信電力算出工程として、上記受信電力算出工程で算出した受信電力を得るために必要な送信電力を送受信間の伝搬損失から算出した。
【0092】
電力増幅部21c、つまりパワーアンプ(PA)の送信電力Prf[dBm]、伝搬損失L[dB]、アンテナ利得G[dB]、伝搬・機器マージンσ[dB]とすると、下記式8が成立する。
【数7】
【0093】
セルカバレッジに相当する伝搬距離d[m]に対する伝搬損失Lは、波長をλ[m]として、下記式9で与えられ、自由空間伝搬ではn=2とできる。
【数8】
【0094】
従って、通信カバリッジ(伝搬距離d)を与えれば、伝送速度Sに対して必要な送信電力は上記式8及び上記式9を用いて算出できる。例えば、周波数f=4.7GHz(波長λ=0.064m)、伝搬距離d=500mに対する伝搬損失は、上記式9からL=100dBとなる。アンテナ利得G=6dB、伝搬マージンσ=10dBとすれば、送信電力Prfは、6Mbps伝送時の場合で、20.4dBm(=110mW)となる。パワーアンプの効率ηを20%とすると、パワーアンプの消費電力Pwは、550mWとなる。
【0095】
図6に、パワーアンプの効率ηを20%とした場合について、伝送速度Sをパラメータとした際のカバリッジdと算出した消費電力Pwとの関係を示す。
【0096】
<消費電力算出工程>
さらに、電力算出工程として、複数のビルディングブロック21を有する通信部20で、通信スループットに対応してビルディングブロック21の電源遮断を行う場合の当該スモールセル基地局1の消費電力を算出した。
【0097】
例えば通信スループットV=0~24Mbpsと変化させ、通信部20を伝送速度Sが6Mbpsのビルディングブロック21で構成する場合は、通信スループットの変化に対応して6Mbpsのブロック数を1~4の範囲で切り替えて稼働させることとなる。当該スモールセル基地局1の消費電力は、稼働するブロック数により変化しない固定分P1(通信部20以外の消費電力)と、上記ブロック数に依存するブロック依存分P2(パワーアンプ部、送受信部等の電力)に分離して算出する。
【0098】
ここで、固定分P1は、稼働ブロック数によらず一定で500mWとする。また、P2は、下記式10により算出する。なお、下記式10では、稼働ブロック数が最大ブロック数と等しくなった場合、分割損は最大ブロック数倍でなく(最大ブロック数)
0.5になるとして算出した。
【数9】
【0099】
例えば、通信スループットV=24Mbpsでブロック毎の伝送速度S=6Mbpsの場合、最大ブロック数は4(=24/6)であり、このうちの1ブロックが稼働とすれば、消費電力P2は、P2=500×(1/40.5)=250[mW]と算出できる。
【0100】
図7に通信スループットV=24Mbpsの場合の稼働ブロック数と通信部の消費電力との関係を示す。
【0101】
当該スモールセル基地局1のトラフィック量が時間とともに変化する場合に、複数のビルディングブロックを切り替えて運用することで、全体として消費電力を削減する効果を算出した。通信カバリッジを500mとし、各ビルディングブロック21の通信スループットを最大24Mbpsとした。これは郊外地でのトラフィック密度を25Mbps/km2と想定した場合に相当する。この場合のトラフィック量とビルディングブロック21の消費電力との関係を表1に示す。例えばトラフィック量が12~18Mbpsである場合、通信スループットが6Mbpsの設定では3ブロック、12Mbpsの設定では2ブロック、24Mbpsの設定では1ブロックのビルディングブロック21が稼働することとなる。
【0102】
【0103】
データトラフィック量と音声トラフィック量との時間変動に応じて通信部20の各ビルディングブロック21を60分ごとに電源供給のON/OFF制御を行った時の消費電力の変化をそれぞれ
図8及び
図9に示す。
【0104】
トラフィック量の変動パターンはデータトラフィックと音声トラフィックにより異なる。例えば、データトラフィック量は午後10時ころ最大となっているのに対して音声トラフィック量は、午前8時から18時の間が大きくなっている。データトラフィックはたとえば人が固定した場所でのデータのダウンロードやアップロードが主であり、音声トラフィックは人が活動している時間帯でのオンラインでのトラフィックが主であるためと想定される。
【0105】
データトラフィックの場合と音声トラフィックの場合の24時間の平均消費電力量を表2に示す。複数のビルディングブロック21をトラフィック量に基づいて切り替えた際の24時間の平均の消費電力は6Mbps/4ブロックを用いて電源供給を制御した場合は3.9W、12Mbps/2ブロックを用いて電源供給を制御した場合は4.0Wとなり、24Mbps/1ブロックを用いた場合、すなわち電源供給を制御しない場合の4.2Wより省電力化が図られることが分かる。
【0106】
【0107】
図10は、蓄電量の初期値を700Whとして通信部の消費電力を可変にした場合の10日間の太陽光発電の発電量実測値と蓄電量の関係例を示す。
図10では蓄電容量は22kWhとしている。
図10では、70W定格出力の太陽光発電素子と二次電池とを用いて充電した電力を通信部20に供給する場合、10日後の蓄電量は、通信部20の消費電力が20Wの場合、8日0時以降、蓄電されない状態となることが分かる。当該スモールセル基地局1では、ビルディングブロック21単位で電源供給の制御や制御部30による伝送能力の制御により、蓄電されない状態とならない制御が可能である。
【0108】
図11に10日間経過時点での蓄電量と稼働可能日数との関係を示す。例えば、通信部20の消費電力が10Wの場合、10日経過後の蓄電量は1459Whで、この日以降、仮に雨天や災害等で発電がなくても6日間(=1459/24/10)程度、稼働可能であることが分かる。すなわち、当該スモールセル基地局1は、電力供給の安定性が高いものといえる。