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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147719
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】散水・生物ろ過方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/04 20060101AFI20220929BHJP
   C02F 3/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C02F3/04
C02F3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049096
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506239304
【氏名又は名称】高知市
(71)【出願人】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 篤
(72)【発明者】
【氏名】中沢 仁吾
(72)【発明者】
【氏名】大和 信大
(72)【発明者】
【氏名】米津 直紀
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AA02
4D003AB02
4D003BA03
4D003CA02
4D003CA03
4D003DA21
4D003DA29
4D003EA15
4D003EA23
4D003EA24
4D003EA30
4D003FA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エネルギーコストを低減しつつ、被処理水中の有機物や懸濁物質の除去効果を高める、散水・生物ろ過方法を提供する。
【解決手段】散水・生物ろ過装置100は、ろ材103が充填されたろ床104と、前記ろ床の上方に配置された被処理水の散水部108と、前記ろ床の下方に配置された処理水の流出部136とを備え、前記ろ床の下部及び下方に前記散水部から散水された被処理水が前記ろ床を流下して滞留する貯留部105が設けられ、前記ろ床の前記貯留部の水に浸漬されていない部分が、前記散水部から散水された被処理水が流下する散水ろ床106をなし、前記ろ床の前記貯留部の水に浸漬された部分が生物ろ過部107をなしており、前記散水ろ床の内部に空気を流通させるための空気流通手段109が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ材が充填されたろ床と、
前記ろ床の上方に配置された被処理水の散水部と、
前記ろ床の下方に配置された処理水の流出部とを備え、
前記ろ床の下部及び下方に前記散水部から散水された被処理水が前記ろ床を流下して滞留する貯留部が設けられ、
前記ろ床の前記貯留部の水に浸漬されていない部分が、前記散水部から散水された被処理水が流下する散水ろ床をなし、
前記ろ床の前記貯留部の水に浸漬された部分が生物ろ過部をなしており、
前記散水ろ床の内部に空気を流通させるための空気流通手段が設けられ、
前記生物ろ過部の下部又は下方に曝気手段が設けられ、前記ろ床の下方に洗浄排水の流出部が設けられている散水・生物ろ過装置を用い、
前記空気流通手段により、前記散水ろ床に空気を流通させつつ、被処理水を前記散水部から前記散水ろ床の上部に散水させ、前記散水ろ床、前記生物ろ過部を通過させ、前記貯留部で所定時間滞留させた後、前記流出部から取出す通常運転と、
前記処理水の流出部及び前記洗浄排水の流出部を閉じ、前記空気流通手段を停止して、前記ろ床全体が水没するまで水張りを行う水張り工程、前記曝気手段から空気を供給して、前記ろ床に充填されたろ材を流動洗浄する曝気洗浄工程、及び前記洗浄排水の流出部を開いて洗浄排液を排水する排水工程からなる曝気洗浄とを、所定のタイミングで交互に行い、
前記曝気洗浄工程の際に、前記生物ろ過部に位置していたろ材がその表面に生物膜を付着させたままろ床全体へと分散するように、曝気量を調整することを特徴とする散水・生物ろ過方法。
【請求項2】
前記散水ろ床及び前記生物ろ過部の少なくとも何れか一方におけるろ材に対する生物付着量(Bm)を測定し、この生物付着量(Bm)に基づいて、前記曝気洗浄工程における曝気量を調整する、請求項1記載の散水・生物ろ過方法。
【請求項3】
前記散水ろ床及び前記生物ろ過部の少なくとも何れか一方の空隙率(VRo)を測定し、この空隙率に基づいて前記生物付着量(Bm)を求める、請求項2に記載の散水・生物ろ過方法。
【請求項4】
前記散水ろ床の下部にも曝気手段を設け、前記生物ろ過部の下部に配置された曝気手段と、前記散水ろ床の下部に配置された曝気手段とを、選択的にあるいは同時に作動させることにより、前記曝気洗浄工程を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の散水・生物ろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水処理施設などにおいて、被処理水から有機物や懸濁物質を除去するために用いられる散水・生物ろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
散水ろ床型水処理装置は、ろ材を充填したろ材層を設けた水槽を有し、被処理水をろ材層の上方から散水して、被処理水がろ材層を通過する過程で、ろ材層のろ材表面に付着した微生物による有機物の分解や、浮遊する懸濁物質のろ材層による捕捉作用によって、被処理水に含まれる有機物や懸濁物質を除去するものである。
【0003】
散水ろ床型水処理装置は、曝気を必要としない省エネルギー型の水処理装置であるが、処理水の水質は活性汚泥法と概ね同程度であり、更なる処理性向上の余地があった。
【0004】
この問題に対処するため、下記特許文献1には、被処理水を処理する水処理装置であって;被処理水の散水手段、ろ材層、一次処理水の排出口および気体流入口を備える散水ろ床槽と;一次処理水の流入口、二次処理水の排出口、酸素を含む気体の供給手段および気体排出口を備える生物処理槽と;散水ろ床槽の気体流入口と、生物処理槽の気体排出口との間の接続部材とを有し;ろ材層の内部に、ろ材層を通過する被処理水の流れ方向と、生物処理槽から排出されて散水ろ床槽に流入する気体の流れ方向とが向流となる領域を有する、水処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-69183号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法によれば、散水ろ床槽を通過した水を、更に曝気がなされている生物処理槽に通過させることにより、被処理水中の有機物をより効果的に分解除去できると考えられる。
【0007】
しかしながら、生物処理槽で曝気を行うことによって、有機物の分解を行うために、エネルギーコストがかかるという問題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、エネルギーコストを低減しつつ、被処理水中の有機物や懸濁物質の除去効果を高めることができる、散水・生物ろ過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の散水・生物ろ過方法は、
ろ材が充填されたろ床と、
前記ろ床の上方に配置された被処理水の散水部と、
前記ろ床の下方に配置された処理水の流出部とを備え、
前記ろ床の下部及び下方に前記散水部から散水された被処理水が前記ろ床を流下して滞留する貯留部が設けられ、
前記ろ床の前記貯留部の水に浸漬されていない部分が、前記散水部から散水された被処理水が流下する散水ろ床をなし、
前記ろ床の前記貯留部の水に浸漬された部分が生物ろ過部をなしており、
前記散水ろ床の内部に空気を流通させるための空気流通手段が設けられ、
前記生物ろ過部の下部に曝気手段が設けられ、前記ろ床の下方に洗浄排水の流出部が設けられている散水・生物ろ過装置を用い、
前記空気流通手段により、前記散水ろ床に空気を流通させつつ、被処理水を前記散水部から前記散水ろ床の上部に散水させ、前記散水ろ床、前記生物ろ過部を通過させ、前記貯留部で所定時間滞留させた後、前記流出部から取出す通常運転と、
前記処理水の流出部及び前記洗浄排水の流出部を閉じ、前記空気流通手段を停止して、前記ろ床全体が水没するまで水張りを行う水張り工程、前記曝気手段から空気を供給して、前記ろ床に充填されたろ材を流動洗浄する曝気洗浄工程、及び前記洗浄排水の流出部を開いて洗浄排液を排水する排水工程からなる曝気洗浄とを、所定のタイミングで交互に行い、
前記曝気洗浄工程の際に、前記生物ろ過部に位置していたろ材がその表面に生物膜を付着させたままろ床全体へと分散するように、曝気量を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ろ床の下部を貯留部の水に浸漬させて、生物ろ過部を設けたので、散水ろ床を通過した水に含まれる溶存酸素を利用して、生物ろ過部において微生物による有機物の分解とアンモニアの硝化がなされる。また、生物ろ過部において、懸濁物質(以下「SS」と略称する)の除去効果も高められる。したがって、散水ろ床と生物ろ過部との両方で、有機物の分解とアンモニアの硝化、及びSSの除去がなされるので、より浄化された処理水を得ることができる。
【0011】
また、曝気洗浄時には、水張り工程、曝気洗浄工程、及び排水工程を行うことにより、ろ材に過剰に付着した汚泥を除去して処理性能を維持することができる。その際、生物ろ過部のろ材には、蛋白質などの有機物を分解する微生物や、蛋白質の分解によって生じるアンモニアを硝化する微生物などの生物膜が形成されている。このろ材を、流動洗浄の曝気量を調整することにより、ろ床全体へと広げる。このことにより、生物ろ過部で過剰であった生物膜量を適正に低減しつつ、散水ろ床での生物膜量は増加し、ろ床全体としての有機物分解やアンモニアの硝化を促進することができる。この流動洗浄の際に、併せてろ床内の老廃した生物膜も排出できる。
【0012】
また、過剰に付着した生物膜を排出することのみを目的としていた従来の洗浄よりも、本法のように弱めの流動洗浄条件に調整することにより、曝気にかかる電気代を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による散水・生物ろ過方法の一実施形態に適用される散水・生物ろ過装置を示す概略構成図である。
図2】本発明による散水・生物ろ過方法の一実施形態における洗浄工程を示す説明図である。
図3】本発明による散水・生物ろ過方法の他の実施形態に適用される散水・生物ろ過装置を示す概略構成図である。
図4】本発明による散水・生物ろ過装置が適用された下水処理装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図5】試験例で用いた下水処理装置の概略構成を示す説明図である。
図6】試験例における汚泥付着率の経日変化を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明による散水・生物ろ過方法の実施形態を説明する。
【0015】
図1には、本発明による散水・生物ろ過方法の一実施形態に適用される散水・生物ろ過装置が示されている。この散水・生物ろ過装置100は、被処理水が上方から散水されるろ過槽101を有している。ろ過槽101内の下方には多孔板102が配置され、この多孔板102上に多数のろ材103が積層されて、ろ床104が形成されている。ろ材103としては、特に限定されないが、例えばポリウレタンやポリプロピレン等の樹脂、セラミックス、石などでできたものを採用することができる。好ましい例としては、両端が開口する円筒状に形成された樹脂を用いることができる。
【0016】
ろ過槽101内の下方には、ろ床104を通過した水の貯留部105が設けられている。そして、ろ床104の下方部分が貯留部105の水に浸漬されており、ろ床104は、水に浸漬されていない散水ろ床106と、水に浸漬された生物ろ過部107とに分かれている。
【0017】
ろ過槽101の上方には、例えば、回転軸を中心として放射状に伸びた複数の散水管などで構成される散水部108が配置されており、被処理水が散水ろ床106の上面に散水されるようになっている。なお、散水部108には、被処理水の供給管135が接続されており、供給管135の途中には流量計137が取付けられていて、被処理水の供給量が経時的に測定できるようになっている。
【0018】
散水ろ床106の下部には、ろ過槽101内の空気を抜き出して、外部の空気を散水ろ床106に流通させる空気流通手段109が設けられている。したがって、散水ろ床106内は、空気が流通しており、散水ろ床106を通過する被処理水に空気を接触させて、被処理水の溶存酸素濃度が高まるようになっている。
【0019】
貯留部105は、連通部110を介して調整槽111に連通されている。貯留部105の水位と、調整槽111の水位は、パスカルの原理により同じ水位となる。したがって、どちらの水位が変化しても、最終的には同じ水位になるように水の移動がなされる。
【0020】
調整槽111には、第1ポンプ112が設けられ、第1ポンプ112によって処理水が次の処理工程に送り出されるようになっている。また、調整槽111には水面の高さを測定するレベル計113が取付けられており、測定された水面の高さは制御装置114に送信されるようになっている。
【0021】
制御装置114は、レベル計113で測定された水位に基づいてろ過槽101の水位を求め、ろ過槽101の水位が所定の範囲から外れたときは、第1ポンプ112に作動信号を送って調整槽111の水の流出量を制御し、ろ過槽101の水位が所定の範囲に維持されるように制御する。ろ過槽101の水位によって、生物ろ過部107の高さ方向の長さが設定されることになる。
【0022】
散水・生物ろ過装置100は、ブロア120を有している。ブロア120には、弁121を介して曝気管122が接続されており、曝気管122は、ろ過槽101の生物ろ過部107の最下部に挿入されて、多孔板102の上方に配置されている。なお、曝気管122は、生物ろ過部107の下部又は下方に配置されていればよく、例えば多孔板102の下方に配置されていてもよい。この実施形態では、ブロア120、弁121、曝気管122が、本発明における曝気手段を構成している。ろ床104のろ材103に微生物やハエなどの生物や懸濁粒子等が付着して、散水される被処理水の通過抵抗が高くなったとき、連通部110を図示しないバルブや仕切り板などによって閉じ、散水ろ床106のろ材103も水に浸漬されるように、ろ過槽101に水を貯留させ、ブロア120を作動させて曝気管122から空気を噴出させることにより、ろ材103を攪拌洗浄できるようになっている。
【0023】
ろ過槽101の底部には、貯留部105の水を排出する排出管136が連結されており、排出管136に連結された第2ポンプ115によって貯留部105の水を流出できるようになっている。攪拌洗浄によってろ材103表面から剥離した汚泥を含有する洗浄排水は、第2ポンプ115によって排出管136を通して取出すことができるようになっている。ろ過槽101の底部の排出管136が連結された部分が、本発明における洗浄排水の流出部をなしている。洗浄排水の流出部は、ろ過槽101の底部に限らず、ろ床104の下方に配置されていればよい。
【0024】
また、排出管136の途中には、三方弁116を介して返送路117が連結されており、返送路117の先端は、供給管135に連結されていて、貯留部105の水を、返送路117及び供給管135を介して、散水部108に循環できるようになっている。この実施形態では、三方弁116、返送路117が、本発明における循環手段を構成している。
【0025】
ろ過槽101の貯留部105には、溶存酸素計118が取付けられており、貯留部105の水の溶存酸素濃度を測定できるようになっている。溶存酸素計118で測定された溶存酸素濃度は、循環量制御装置119に送られ、循環量制御装置119は、貯留部105内の水の溶存酸素濃度が所定値より低くなったときに、第2ポンプ115及び三方弁116に信号を送って、貯留部105内の水を、返送路117を通して散水部108に送り、散水ろ床106に循環させるようになっている。なお、この溶存酸素計118は取り付けてあることが望ましいが、なくても問題はない。あらかじめ循環率を変化させた実験を行うことにより、循環率と溶存酸素濃度(DO)の関係を求め、その結果に基づいて循環率を設定できる。
【0026】
一方、前述した制御装置114は、ブロア120、弁121、第2ポンプ115、三方弁116にも接続されており、ろ過槽101の水位だけでなく、ろ材103の洗浄操作を制御する洗浄制御装置を兼ねている。
【0027】
次に、この散水・生物ろ過装置100を用いた、本発明の被処理水の散水・生物ろ過方法の一実施形態を説明する。
【0028】
本発明において、被処理水としては、例えば、下水処理施設で処理される水であって、有機物や懸濁物質を含有する水が適用でき、例えば下水処理施設における最初沈殿池からの流出水や、流入下水を前段ろ過装置に通した水などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
被処理水は、散水部108から散水ろ床106上面に散水され、散水ろ床106のろ材103の隙間を通って流下する。このとき、空気流通手段109によって、散水ろ床106のろ材103の隙間を流れる空気流が発生しており、被処理水はこの空気流に接触して溶存酸素濃度が高められる。そして、被処理水は、ろ材103の表面に接触して、ろ材103の表面に付着している微生物層によって有機物の分解やアンモニアの硝化がなされると共に、含有する懸濁物質(SS)のろ過除去がなされる。
【0030】
散水ろ床106を通過した被処理水は、次に貯留部105の水中に浸漬された生物ろ過部107を通過する。生物ろ過部107のろ材103には、散水ろ床106のろ材103よりも、より多くの微生物が付着しており、散水ろ床106を通過するときに増加した水中の溶存酸素を利用して、有機物分解やアンモニアの硝化が更に効果的になされる。また、生物ろ過部107のろ材103の表面に付着した微生物によってSSの除去効果も高められる。
【0031】
また、生物ろ過部107は貯留部105の水に浸漬されているので、被処理水の通過速度が低下し、被処理水は、貯留部105に所定時間滞留することとなる。これによって、微生物による有機物分解やアンモニアの硝化を時間をかけて進行させると共に、散水部108から供給される被処理水の流入量が変動したときのバッファー槽としての役割を果たすこともできる。
【0032】
ろ床104の高さ方向における散水ろ床106の長さと、生物ろ過部107の長さは、特に限定されないが、高さ方向において、ろ床104の全体の長さを10としたとき、散水ろ床106の長さ:生物ろ過部107の長さ=5~9.5:0.5~5となるようにすることが好ましく、8~9.5:0.5~2となるようにすることがより好ましい。上記範囲に設定することにより、散水ろ床106及び生物ろ過部107の両者において、有機物分解やアンモニアの硝化作用並びにSSの除去作用が良好に得られるようにすることができる。
【0033】
そして、この実施形態では、レベル計113によって調整槽111の水面の水位(ろ過槽101の水位と同じになる)が測定され、この水位が所定の範囲から外れたときは、水位制御装置114が第1ポンプ112に作動信号を送って調整槽111の水の流出量を制御し、ろ過槽101の水位が所定の範囲に維持されるように制御するので、生物ろ過部107の高さ方向の長さを常に好ましい範囲に保つことができる。
【0034】
また、被処理水が散水ろ床106を通過するときに増加した溶存酸素は、散水ろ床106のろ材103や、生物ろ過部107のろ材103の表面に付着する微生物が有機物を分解したり、アンモニアを硝化したりするのに利用されるのであるが、溶存酸素が不足すると、生物ろ過部107における有機物の分解やアンモニアの硝化作用が弱まる。
【0035】
そこで、この実施形態では、溶存酸素計118によって貯留部105の水の溶存酸素濃度が測定され、その測定値が循環量制御装置119に送られ、循環量制御装置119は、貯留部105内の水の溶存酸素濃度が所定値より低くなったときに、第2ポンプ115及び三方弁116に信号を送って、貯留部105内の水を、返送路117を通して散水部108に送り、散水ろ床106に循環させるようになっている。貯留部105内の水の循環量を増大させることにより、一部の水が散水ろ床106を複数回通過することとなり、散水ろ床106を流通する空気流に触れる時間が長くなって、貯留部105の水の溶存酸素濃度を高めることができる。
【0036】
一方、被処理水を散水ろ床106,生物ろ過部107に通してろ過処理運転を続けると、散水ろ床106のろ材103や、生物ろ過部107のろ材103の表面に付着した微生物やSSが汚泥となって溜まっていくことになる。この汚泥付着率には適切な範囲があり、汚泥が過剰に付着すると、処理性能が低下したり、被処理水の通過圧損が増大してろ過効率が低下したりすることになる。また、散水ろ床106のろ材103には、ハエの幼虫や卵が付着して悪臭を放つことがある。このため、所定のタイミングで、ろ材103の洗浄が必要となる。
【0037】
その場合には、以下の洗浄操作を行う。この洗浄操作を図1,2を参照して説明する。
【0038】
図2におけるSTEP1は、通常運転時の状態を示している。この状態で、洗浄操作を開始する際には、STEP2に示すように、排出管136を閉じ、空気流通手段109を停止して閉じる。そして、散水部108から散水をして貯留部105に貯留されていた水の水位を上昇させていく(水張り工程)。なお、貯留部105の水の水位と一緒に調製槽11の水位も上昇していく。
【0039】
このとき、制御装置114により、レベル計113によって測定される水位の変化と、流量計137によって測定される被処理水の流量とから、ろ床104及び調整槽111に充填される水の体積を求めることができる。そして、両者に充填された水の体積から、調整槽111に充填された水の体積を差し引くことにより、ろ過槽101に充填された水の体積を求めることができる。
【0040】
この場合、生物ろ過部107が水没した状態から被処理水を供給する場合には、散水ろ床106に充填される水の体積を求めることができる。また、洗浄操作の開始時に、三方弁116を開いて第2ポンプ115を作動させることにより、全ての貯留水を一度排出してから、散水部108から被処理水を供給すれば、ろ床104全体に充填される水の体積と、生物ろ過部107に充填される水の体積と、散水ろ床106に充填される水の体積をそれぞれ求めることができる。
【0041】
上記体積は、ろ材103及びそれに付着した生物付着部を除いた空間の体積に相当する。そして、この空間の体積と、その部分のろ過槽101の容積とから、空隙率(VRo)を求めることができる。
【0042】
なお、充填した水は洗浄排水として排出されるが、排水量は少ないほうが好ましい。このため、調整槽111よりも容積の小さい、例えばパイプなどを水深測定用に貯留部105と連結して設けて、そのパイプ内にレベル計113を挿入して、連結部110にはバルブを設ける構造としてもよい。その場合には、ろ床104と調整槽111とを連結する流路を遮断して、ろ床104及び並設したパイプに水を充填することになる。
【0043】
そして、上記と同様な方法により、初期状態での空隙率(VRo1)を求めておくことより、初期状態での空隙率(VRo1)に対して減った空隙率(VRo1-VRo)を求めることができる。この減った空隙率(VRo1-VRo)は、その空間における生物付着量Bmによって減少した空隙率に相当するので、これを生物付着率(%)として定義する。なお、上記生物付着率の測定方法については、特許第6545857号公報に詳しく説明されているので、同文献を参照されたい。
【0044】
すなわち、生物ろ過部107が水没した状態から被処理水を供給する場合には、散水ろ床106に充填される水の体積を求めることにより、散水ろ床106の生物付着率(%)を求めることができ、全ての貯留水を一度排出してから、散水部108から被処理水を供給すれば、ろ床104全体の生物付着率(%)と、生物ろ過部107の生物付着率(%)と、散水ろ床106の生物付着率(%)を求めることができる。
【0045】
そして、STEP2に示すように、ろ床104が完全に浸漬された状態になったら、散水部108からの散水を停止する。
【0046】
次に、STEP3で示すように、曝気操作を開始する(曝気洗浄工程)。曝気操作は、弁121を開き、ブロア120を作動させて、曝気管122から空気を噴出させることにより行う。これによって、ろ材103が撹拌され、ろ材103の表面に付着した微生物の膜や、ハエの卵や幼虫などの生物や、ろ材に付着した懸濁物質などが剥がし落とされる。
【0047】
しかしながら、ろ材表面に付着している微生物は、通常運転に戻った際に、被処理水中の有機物を分解したり、アンモニアの硝化を行ったりする生物処理に必要なものであるため、除去しすぎると、微生物による浄化作用が損なわれてしまう。
【0048】
そこで、本発明では、洗浄制御装置142により、STEP2で求めた生物付着率に応じて、曝気の条件(曝気量及び曝気時間)を制御する。すなわち、生物付着率が多い場合は、曝気の条件を強くし、生物付着率が少ない場合は、曝気の条件を弱くする。これによって、ろ材103表面における生物付着率が最適な状態になるように、洗浄操作を行うことができる。
【0049】
なお、ろ過槽101の平面視における単位面積当たりの曝気風量は、特に限定されないが、0.25m3/(m2・分)以上1.5m3/(m2・分)以下であることが好ましく、0.25m3/(m2・分)以上0.5m3/(m2・分)以下であることがより好ましい。
【0050】
また、曝気時間は、特に限定されないが、0.5~20分が好ましく、0.5~5分がより好ましい。
【0051】
そして、曝気洗浄後にろ材103の表面に付着して残る生物付着率が、好ましくは5%~25%、より好ましくは10%~20%の範囲に維持されるように曝気条件を制御することが好ましい。
【0052】
こうして所定の条件で曝気撹拌作業を行った後、STEP4にて、ブロア120を停止して曝気撹拌作業を終了する。このとき、散水ろ床106にあったろ材103と、生物ろ過部107にあったろ材103とが入り混じり、それぞれのろ材103が全体的に分散した状態となる。その結果、生物ろ過部107にあった、微生物層が比較的豊富に付着したろ材103が、散水ろ床106にも拡散して、散水ろ床106における微生物を豊富にすることができる。
【0053】
そして、洗浄操作が終了すると、STEP5において、三方弁116が排出方向に開き、ポンプ115が作動して、洗浄排水が排出される(排水工程)。洗浄排水が全て排出されると、三方弁116が閉じ、再びSTEP1に戻って散水部108から散水が始まり、通常運転が開始される。
【0054】
このように、本発明の散水・生物ろ過方法によれば、曝気洗浄工程(STEP3)において、生物ろ過部107にあったろ材103が散水ろ床106にも拡散するので、生物ろ過部107で過剰であった生物膜量を適正に低減しつつ、散水ろ床106での生物膜量は増加し、ろ床104全体としての有機物分解やアンモニアの硝化を促進することができる。この流動洗浄の際に、併せてろ床内の老廃した生物膜も排出することができる。
【0055】
また、ろ材103への生物付着量(Bm)を測定し、この生物付着量(Bm)に基づいて、曝気洗浄工程における曝気量を調整することによって、ろ材103の表面に残存する生物膜の量をより正確に調整することができる。
【0056】
そして、生物付着量(Bm)は、ろ床の空隙率(VRo)によって求めることができ、初期状態の空隙率(VRo1)からの差によって、生物付着率を求めることができるので、この生物付着率に応じて曝気撹拌条件を制御することができる。
【0057】
図3には、本発明を実施するための散水・生物ろ過装置の他の実施形態が示されている。なお、図1の実施形態と実質的に同一部分には、同符号を付して、その説明を省略することにする。
【0058】
この散水・生物ろ過装置100aでは、曝気手段が前記実施形態と異なっている。すなわち、ブロア120に連結された送気管126が、第1分岐管127と第2分岐管128とに分岐している。そして、第1分岐管127は第1弁129を介して第1曝気管130に連結され、第1曝気管130は貯留部105に挿入されて、生物ろ過部107の下部に配置されている。なお、第1曝気管130は、生物ろ過部107の下部又は下方に配置されていればよく、例えば多孔板102の下方に配置されていてもよい。また、第2分岐管128は、第2弁131を介して第2曝気管132に連結され、第2曝気管132は、ろ過槽101内の散水ろ床106の下部に挿入配置されている。
【0059】
また、この実施形態では、調整槽111及びレベル計113が設けられておらず、その代わりに、3つの水面検出装置が取付けられている。すなわち、生物ろ過部107の下部又は下方に第1の水面検出装置140、散水ろ床106の下部又は下方に第2の水面検出装置141、散水ろ床106の上部又は上方に第3の水面検出装置142が設置され、これらが制御装置114に接続されている。また、制御装置114は、ブロア120、第1弁129、第2弁131にも接続されている。
【0060】
したがって、ろ材103の洗浄操作時に、全ての貯留水を一度排出してから被処理水を供給すれば、水面が上昇して、第1の水面検出装置140、第2の水面検出装置141、第3の水面検出装置142を水面が通過する時間と、その間の流量計137の流量とから、前述した計算方法によって、生物ろ過部107の空隙率と、散水ろ床106の空隙率とを求めることができ、初期状態の空隙率(VRo1)からの差によって、それぞれの生物付着率(Bm)を求めることができる。
【0061】
こうして、ろ過槽101に水を貯めて散水ろ床106のろ材103も水没する状態にし、第2弁131を閉じて第1弁129を開き、第1曝気管130のみから曝気すれば、ろ床104全体のろ材103を撹拌することができる。また、第1弁129を閉じて第2弁131を開き、第2曝気管132のみから曝気すれば、散水ろ床106のろ材103のみを撹拌することができる。更に、第1弁129,第2弁131を両方開き、第1曝気管130と第2曝気管132の両方から曝気すれば、生物ろ過部107のろ材103よりも散水ろ床106のろ材103の方が強く撹拌されるようにすることができる。
【0062】
そして、この実施形態では、前述の方法によって求めた、生物ろ過部107の生物付着率(Bm)と、散水ろ床106の生物付着率(Bm)とにより、上記曝気条件を調整することができる。すなわち、散水ろ床106のろ材103の汚泥やハエの幼虫や卵による生物付着率(Bm)、生物ろ過部107の汚泥による生物付着率(Bm)に応じて、それぞれのろ材103の洗浄効果を調整することができる。例えば、生物ろ過部107のろ材103に付着した微生物などの汚泥は、ある程度残存するように洗浄した方が、運転を再開したときに有機物の分解やアンモニアの硝化作用が迅速に立ち上がるので好ましい。これに対して、散水ろ床106のろ材103には、汚泥だけでなく、ハエの幼虫や卵などが付着していることがあり、生物ろ過部107のろ材103よりも強く洗浄する必要が生じることがある。したがって、散水ろ床106のろ材103の洗浄強度と、生物ろ過部107のろ材103の洗浄強度を調整することによって、それぞれのろ材103を適切な状態に維持することができる。
【0063】
例えば、曝気洗浄工程の際、最初に第1弁129を閉じて第2弁131を開き、第2曝気管132のみから曝気して、散水ろ床106のろ材103のみを撹拌することにより、散水ろ床106のろ材103に付着している汚泥や、ハエの幼虫や卵などを剥離し、次いで、第2弁131を閉じて第1弁129を開き、第1曝気管130のみから曝気することにより、ろ床104全体のろ材103を撹拌洗浄し、生物ろ過部107のろ材103も洗浄すると共に、生物ろ過部107のろ材103を散水ろ床106に拡散するようにしてもよい。
【0064】
図4には、本発明の散水・生物ろ過方法を実施するための下水処理装置の一実施形態が示されている。なお、図1の実施形態と実質的に同一部分には、同符号を付して、その説明を省略することにする。
【0065】
この下水処理装置200は、第1の固液分離装置210と、散水・生物ろ過装置100と、第2の固液分離装置220とを備えている。第1の固液分離装置210は、例えば下水処理施設における最終沈殿池から流出する被処理水から、SSを除去するための前段ろ過装置である。この第1の固液分離装置210は、被処理水導入路211と、ろ材層213を有するろ過槽212とを有している。被処理水導入路211から流入した被処理水は、被処理水導入路211内を下降してろ過槽212に入り、ろ材層213の下方から上方に通過してろ過された後、越流によって次の散水・生物ろ過装置100に送られるようになっている。ろ材層213としては、例えば浮上型のろ材を用いることができる。
【0066】
散水・生物ろ過装置100は、特に限定されないが、この実施形態の場合、複数のろ過槽101が生物処理槽133内に並んで配置されている。各ろ過槽101には、散水ろ床106,生物ろ過部107を有するろ床104と、生物ろ過部107を水没状態に保つ貯留部105とが設けられている。また、各ろ過槽101の散水ろ床106の上方には、散水部108がそれぞれ配置されている。各ろ過槽101の貯留部105には、図示しないが、生物処理槽133と連結する管およびバルブがそれぞれ設けてあり、各ろ過槽101の洗浄が可能となっている。散水ろ床106、生物ろ過部107を通過した処理水は、共通の生物処理槽133内に貯留されるようになっている。生物処理槽133内には、第1ポンプ112が設けられ、散水ろ床106及び生物ろ過部107を通過した水を第2の固液分離装置220に送るようになっている。また、生物処理槽133内には第3ポンプ134が設けられ、散水ろ床106及び生物ろ過部107を通過して生物処理槽133内に貯留された水の一部を返送路117を通して散水部108に返送し、循環できるようになっている。
【0067】
第2の固液分離装置220は、ろ過槽221と、ろ材層222とを備え、散水・生物ろ過装置100で処理された水をろ過槽221の下方から導入して、ろ材層222を下方から上方に通過させ、残存するSSを更に除去して清浄化するようになっている。
【0068】
次に、この下水処理装置200を用いた、本発明による下水処理方法の一実施形態を説明する。
【0069】
例えば下水処理場の流入下水を被処理水として、この被処理水を第1の固液分離装置210の被処理水導入路211に導入し、ろ過槽212の下方に流入させて、ろ材層213を下方から上方に通過させることにより、被処理水に含まれるSSを除去する。
【0070】
次に、第1の固液分離装置210で処理された被処理水を散水・生物ろ過装置100の散水部108から散水ろ床106上に散水し、散水ろ床106を通過させた後、更に貯留部105の水に浸漬された生物ろ過部107を通過させる。これによって、前述したように、散水ろ床106のろ材103や、生物ろ過部107のろ材103の表面に付着した微生物による有機物の分解やアンモニアの硝化、被処理水に含まれるSSの更なる除去がなされる。なお、前述した態様で、貯留部105の水の溶存酸素濃度を測定し、溶存酸素濃度が不足するときは、第3ポンプ134によって貯留部105の水を散水部108に循環させ、生物ろ過部107における微生物の活性を維持するようにする。
【0071】
更に、処理された被処理水を第1ポンプ112により第2の固液分離装置220に送り、ろ材層222を下方から上方に通過させてろ過することにより、残存するSSを更に徹底的に除去して、放流することができる。
【0072】
上記実施形態において、第1の固液分離装置210は、大きなSSを除去する役割をなし、この実施形態で示すような浮上ろ材を用いた上向きろ過装置に限定されることなく、例えば最初沈殿池のような沈殿池を用いることもできる。また、第2の固液分離装置220は、散水・生物ろ過装置100で処理された後も残存する細かいSSを除去する役割をなし、この実施形態で示されるような上向きろ過装置に限定されることなく、例えば最終沈殿池のような沈殿池を用いることもできる。
【0073】
また、散水・生物ろ過装置100での処理によって、被処理水中の有機物やSSが許容範囲まで低減されるのであれば、第2の固液分離装置220を設けることなく、散水・生物ろ過装置100で処理された水をそのまま放流することも可能である。それによって設備コストを低減することができる。
【0074】
なお、説明を省略したが、この実施形態においても、散水・生物ろ過装置100には、曝気手段と、洗浄制御手段とが設けられており、前述したようなろ材の洗浄操作が定期的になされるようになっている。
【実施例0075】
図5に示される下水処理装置200を用いて以下の試験を行った。この下水処理装置200は、図4に示した下水処理装置200を実験レベルで再現したものである。したがって、図4と共通する部分には、同符号を付してその説明を省略することにする。
【0076】
第1貯留槽214は、被処理水が導入される水槽であり、被処理水は第4ポンプ215を介して第1の固液分離装置210に送られるようになっている。第1の固液分離装置210は、ろ材層213を有し、被処理水はろ材層213を下方から上方に通過してろ過される。第2貯留槽216は、第1の固液分離装置210を通過した被処理水が貯留される水槽であり、ここに貯留された被処理水の一部は、第6ポンプ218により、本発明の実施例である散水・生物ろ過装置100に送られる。また、第2貯留槽216に貯留された被処理水の一部は、第7ポンプ219により、従来の散水ろ過装置300に送られる。
【0077】
散水・生物ろ過装置100においては、前述した態様で、第6ポンプ218によって導入された被処理水が散水ろ床106上に散水され、散水ろ床106、生物ろ過部107を通過して処理される。こうして処理された水は、第2ポンプ115により第2の固液分離装置220に送られ、更に第2の固液分離装置220のろ材層222を下方から上方に通過して、自然流下で排出されるようになっている。
【0078】
散水ろ過装置300においては、第7ポンプ219によって導入された被処理水が、多孔板303上に多数のろ材303が充填されてなる散水ろ床304上に散水され、散水ろ床304を上方から下方に通過して、第9ポンプ315により取出されるようになっている。
【0079】
なお、図示を省略したが、散水・生物ろ過装置100及び散水ろ過装置300のいずれにも、図1に示したブロア120、弁121、曝気管122からなる曝気手段が設けられており、定期的にろ材103、303の曝気洗浄を行うようにした。
【0080】
下記表1に、散水・生物ろ過装置100及び散水ろ過装置300におけるろ過槽101、ろ過槽301の大きさと、運転条件を示す。なお、表1における散水ろ床法は、散水ろ過装置300のろ過槽301を用いたろ過(比較例)を意味し、散水・生物ろ過法は、散水・生物ろ過装置100のろ過槽101を用いたろ過(実施例)を意味する。なお、実験は実下水で行ったので、降雨などによって流入する被処理水の量やSS濃度は日々変化している。
【0081】
【表1】
【0082】
上記条件で被処理水の処理性能評価試験を行った。ここでは特に、ろ床の生物付着率の測定結果を図6に示す。
【0083】
図6はろ床の生物付着率の変化を示し、「散水ろ床法 全体」は、散水ろ過装置300(比較例)における生物付着率(汚泥付着率)を示し、「散水・生物ろ過法 散水ろ床」は、散水・生物ろ過装置100(実施例)における散水ろ床106の生物付着率を示し、「散水・生物ろ過法 生物ろ過部」は散水・生物ろ過装置100(実施例)における生物ろ過部107における生物付着率を示し、「散水・生物ろ過法 全体」は散水・生物ろ過装置100(実施例)におけるろ床104全体の生物付着率を示す。
【0084】
図6に示すように、運転を継続することにより、生物ろ過部の生物付着率は特に増大していく。このように、散水・生物ろ過法において、散水ろ床よりも生物ろ過部の方が、生物付着率の増加は速いことを、実験的に確認している。
【符号の説明】
【0085】
100 散水・生物ろ過装置
101 ろ過槽
102 多孔板
103 ろ材
104 ろ床
105 貯留部
106 散水ろ床
107 生物ろ過部
108 散水部
109 空気流通手段
110 連通部
111 調整槽
112 第1ポンプ
113 レベル計
114 制御装置
115 第2ポンプ
116 三方弁
117 返送路
118 溶存酸素計
119 循環量制御装置
120 ブロア
121 弁
122 曝気管
123 排水管
124 伸縮管
125 流出部
126 送気管
127 第1分岐管
128 第2分岐管
129 第1弁
130 第1曝気管
131 第2弁
132 第2曝気管
133 生物処理槽
134 第3ポンプ
135 供給管
136 排出管
137 流量計
140 第1の水面検出装置
141 第2の水面検出装置
142 第3の水面検出装置
200 下水処理装置
211 被処理水導入路
212 ろ過槽
213 ろ材層
214 第1貯留槽
215 第4ポンプ
216 第2貯留槽
217 第5ポンプ
218 第6ポンプ
219 第7ポンプ
220 第2の固液分離装置
221 ろ過槽
222 ろ材層
図1
図2
図3
図4
図5
図6