(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014775
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】セラミックス構造体、静電チャック、基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220113BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20220113BHJP
C04B 35/111 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
C04B35/111
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117316
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】峯村 知剛
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA01
5F131CA69
5F131DA33
5F131DA42
5F131EB11
5F131EB12
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131KA23
5F131KA54
5F131KA62
5F131KA63
(57)【要約】
【課題】セラミックスと熱電素子との密着性を向上したセラミックス構造体を提供する。
【解決手段】本セラミックス構造体は、基体と、前記基体と接する部分を有する熱電素子と、を有し、前記基体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、前記熱電素子は、タングステンとレニウムとの合金を主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である導体部を含むセラミックス構造体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体と接する部分を有する熱電素子と、を有し、
前記基体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、
前記熱電素子は、タングステンとレニウムとの合金を主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である導体部を含むセラミックス構造体。
【請求項2】
前記導体部は、タングステンに対して酸化ニッケルの添加量が0.2~1.0wt%である請求項1に記載のセラミックス構造体。
【請求項3】
前記導体部は、タングステンに対して酸化アルミニウムの添加量が0.2~3.0wt%、二酸化ケイ素の添加量が0.2~3.0wt%である請求項1又は2に記載のセラミックス構造体。
【請求項4】
前記導体部に含まれるタングステンの平均粒径が0.5μm~3.0μm、レニウムの平均粒径が1.5μm~4.5μm、酸化ニッケルの平均粒径が5.0μm~15.0μm、酸化アルミニウムの平均粒径が0.1μm~4.0μm、二酸化ケイ素の平均粒径が0.1μm~12.0μmである請求項1乃至3の何れか一項に記載のセラミックス構造体。
【請求項5】
タングステンの成分、レニウムの成分、及びニッケルの成分は前記基体内には存在せずに前記導体部内のみに存在し、アルミニウムの成分及びケイ素の成分は前記基体内と前記導体部内の両方に存在する請求項1乃至4の何れか一項に記載のセラミックス構造体。
【請求項6】
前記基体内において、ケイ素の成分は前記基体と前記導体部との境界から20μmの範囲内のみに存在する請求項5に記載のセラミックス構造体。
【請求項7】
前記基体と前記導体部との境界から20μmの範囲内に、アルミニウムとケイ素の複合酸化物層が形成されている請求項6に記載のセラミックス構造体。
【請求項8】
前記複合酸化物層は、ムライト層、シリマイト層、又はムライト層とシリマイト層とが混在した層である請求項7に記載のセラミックス構造体。
【請求項9】
前記基体は、酸化アルミニウムの純度が99.5%以上である請求項1乃至8の何れか一項に記載のセラミックス構造体。
【請求項10】
前記基体は、酸化アルミニウムに対する相対密度が97%以上である請求項1乃至9の何れか一項に記載のセラミックス構造体。
【請求項11】
前記基体は、酸化アルミニウムの平均粒径が1.0μm~3.0μmである請求項1乃至10の何れか一項に記載のセラミックス構造体。
【請求項12】
前記導体部は、第1導体部及び第2導体部を含み、
前記熱電素子は、前記第1導体部と前記第2導体部の一端同士が接合されて測温接点を形成する熱電対であり、
前記第1導体部は、タングステンとレニウムとの合金(Re5重量%)を主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体であり、
前記第2導体部は、タングステンとレニウムとの合金(Re26重量%)を主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である請求項1乃至11の何れか一項に記載のセラミックス構造体。
【請求項13】
前記第1導体部及び前記第2導体部は複数個ずつ設けられ、前記第1導体部と前記第2導体部は隣接して交互に配置されている請求項12に記載のセラミックス構造体。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れか一項に記載のセラミックス構造体において、前記基体に内蔵された静電電極を有する静電チャック。
【請求項15】
ベースプレートと、
前記ベースプレートの一方の面に搭載された請求項14に記載の静電チャックと、を有する基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス構造体、静電チャック、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を製造する際に使用される成膜装置やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックによりウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。
【0003】
静電チャックには、ウェハの温度調節をするための発熱体を設けた構造のものがある。この場合、例えば、静電チャックに熱電対を埋設し、熱電対で検出した静電チャックの温度に基づいて発熱体を制御し、ウェハの温度調節が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的にアルミナセラミックスには焼結助剤(例えば、シリカ、マグネシア、カルシア、イットリア等)が含まれることが多い。このように焼結助剤を含むセラミックスは、使用環境の温度上昇に伴って絶縁抵抗の値が低下し易い。そこで、絶縁抵抗の温度依存性の小さい、焼結助剤を含まないアルミナセラミックスが望まれる。しかし、焼成時に液相となる焼結助剤がないため、静電チャック等のセラミックス構造体において、基体を構成するセラミックスと熱電対等の熱電素子との密着性(接合強度)が得られない場合がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、セラミックスと熱電素子との密着性を向上したセラミックス構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本セラミックス構造体は、基体と、前記基体と接する部分を有する熱電素子と、を有し、前記基体は、酸化アルミニウムからなるセラミックスであり、前記熱電素子は、タングステンとレニウムとの合金を主成分とし、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含む焼成体である導体部を含む。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、セラミックスと熱電素子との密着性を向上したセラミックス構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する図である。
【
図2】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図3】第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図4】第2実施形態に係る熱電部品を例示する図である。
【
図5】熱電対のサンプルのパターンを示す図である。
【
図6】熱電対の各サンプルの起電力を示す図である。
【
図7】サンプル300Cの+脚の断面のEPMA分析結果である。
【
図8】サンプル300Cの-脚の断面のEPMA分析結果である。
【
図9】サンプル300Cの+脚及び-脚のXRD分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
[基板固定装置の構造]
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する図であり、
図1(a)は断面図、
図1(b)は
図1(a)の熱電対のみを示す部分拡大斜視図である。
【0012】
図1を参照すると、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、静電チャック30と、制御部40とを有している。
基板固定装置1は、ベースプレート10の一方の面10aに搭載された静電チャック30により吸着対象物である基板(ウェハ等)を吸着保持する装置である。
【0013】
ベースプレート10は、静電チャック30を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20~40mm程度である。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムや超硬合金等の金属材料や、その金属材料とセラミックス材料との複合材料等から形成され、プラズマを制御するための電極等として利用できる。例えば、入手のし易さ、加工のし易さ、熱伝導性が良好である等の点から、アルミニウム又はその合金を使用し、その表面にアルマイト処理(絶縁層形成)を施したものが好適に使用できる。
【0014】
例えば、ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック30上に吸着された基板に衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0015】
ベースプレート10の内部に、静電チャック30上に吸着された基板を冷却する不活性ガスを導入するガス供給路が設けられてもよい。基板固定装置1の外部からガス供給路に、例えば、HeやAr等の不活性ガスが導入され、静電チャック30上に吸着された基板の裏面に不活性ガスが供給されると、基板を冷却できる。
【0016】
ベースプレート10の内部に、冷媒流路が設けられてもよい。冷媒流路は、例えば、ベースプレート10の内部に環状に形成された孔である。基板固定装置1の外部から冷媒流路に、例えば、冷却水やガルデン等の冷媒が導入される。冷媒流路に冷媒を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック30上に吸着された基板を冷却できる。
【0017】
静電チャック30は、吸着対象物である基板を吸着保持するセラミックス構造体である。静電チャック30の平面形状は、基板の形状に応じて形成されるが、例えば、円形である。静電チャック30の吸着対象物である基板の直径は、例えば、8、12、又は18インチである。
【0018】
なお、平面視とは対象物をベースプレート10の一方の面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をベースプレート10の一方の面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0019】
静電チャック30は、接着層20を介して、ベースプレート10上に固着されている。接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20の厚さは、例えば、0.1~2.0mm程度とすることができる。接着層20の熱伝導率は2W/mK以上とすることが好ましい。接着層20は、1層から形成してもよいが、熱伝導率が高い接着剤と弾性率が低い接着剤とを組み合わせた2層構造とすることが好ましい。これにより、セラミックス製の静電チャック30とアルミニウム製のベースプレート10との熱膨張率の差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。なお、ベースプレート10に対して静電チャック30をネジにより固定してもよい。
【0020】
静電チャック30は、主要な構成要素として、基体31と、静電電極32と、発熱体33と、熱電対34とを有するセラミックス構造体である。基体31の上面は、吸着対象物が載置される載置面31aである。静電チャック30は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック30は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0021】
基体31は誘電体であり、具体的には、基体31は酸化アルミニウム(Al2O3)からなるセラミックスである。ここで、「酸化アルミニウムからなるセラミックス」とは、酸化アルミニウム以外の無機成分を添加していないセラミックスを意味する。基体31の厚さは、例えば、5~10mm程度、基体31の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度である。
【0022】
基体31は、酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であることが好ましい。純度が99.5%以上であることは、焼結助剤を添加することなく形成されることを示す。又、純度が99.5%以上であることは、製造工程等において意図しない不純物を含む場合もあることを意味している。基体31は、酸化アルミニウムに対する相対密度が97%以上であることが好ましい。基体31は、酸化アルミニウムの平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下であることが好ましい。平均粒径は、例えば、レーザー回折・散乱光の装置を用いて測定できる。
【0023】
静電電極32は、薄膜電極であり、基体31に内蔵されている。静電電極32は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、電源から所定の電圧を印加することで吸着対象物との間に静電気による吸着力(クーロン力)を発生させる。これにより、基体31の載置面31a上に基板を吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極32に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極32は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極32の材料は、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を含む焼成体とすることが好ましい。
【0024】
発熱体33は、基体31に内蔵され、図示しない配線により制御部40と電気的に接続されている。発熱体33は、制御部40から電圧を印加することで発熱し、基体31の載置面31aが所定の温度となるように加熱する。発熱体33は、例えば、基体31の載置面31aの温度を250℃~300℃程度まで加熱することができる。発熱体33の材料としては、例えば、銅(Cu)やタングステン(W)、ニッケル(Ni)等を用いることができる。
【0025】
熱電対34は、基体31の温度を検出する熱電素子であり、少なくとも一部が基体31に内蔵されている。すなわち、熱電対34は、基体31と接する部分を有している。熱電対34は、第1導体部341と、第2導体部342と、第1線材部343と、第2線材部344とを有している。第1導体部341及び第2導体部342は、略L字形に形成され、基体31に内蔵されている。第1導体部341及び第2導体部342は、基体31により被覆されている。第1導体部341の一端と第2導体部342の一端とは、互いに接合されて測温接点34cを形成している。
【0026】
第1導体部341は、載置面31aと平行な方向に延伸し一端が測温接点34cである第1水平部341aと、第1水平部341aの他端から載置面31aと垂直な方向に延伸して端部が基体31から露出する第1垂直部341bとを有している。第1水平部341aと第1垂直部341bとは、同一材料により一体に形成されている。第1垂直部341bの断面形状は例えば円形である。この場合、第1垂直部341bの直径を第1水平部341aの幅よりも太く形成してもよい。
【0027】
第2導体部342は、載置面31aと平行な方向に延伸し一端が測温接点34cである第2水平部342aと、第2水平部342aの他端から載置面31aと垂直な方向に延伸して端部が基体31から露出する第2垂直部342bとを有している。第2水平部342aと第2垂直部342bとは、同一材料により一体に形成されている。第2垂直部342bの断面形状は例えば円形である。この場合、第2垂直部342bの直径を第2水平部342aの幅よりも太く形成してもよい。
【0028】
図1(b)では、第1水平部341aと第2水平部342aとが載置面31aの法線方向から視て一直線となるように接合されているが、これは一例である。第1水平部341aと第2水平部342aとは、載置面31aの法線方向から視て任意の角度となるように接合することができる。又、第1水平部341a及び第2水平部342aは、載置面31aの法線方向から視て屈曲する部分や湾曲する部分を有していても構わない。
【0029】
第1水平部341a及び第2水平部342aは、例えば、基体31の厚さ方向の静電電極32及び発熱体33とは異なる位置(基体31内の異なる平面)に配置することができる。
【0030】
なお、ここでいう載置面31aと平行や載置面31aと垂直は、載置面31aと厳密に平行や載置面31aと厳密に垂直である場合のみではなく、載置面31aとおおよそ平行や載置面31aとおおよそ垂直である場合も含むものとする。載置面31aとおおよそ平行とは、載置面31aと厳密に平行な場合から±10度程度ずれたものも含む意味合いである。同様に、載置面31aとおおよそ垂直とは、載置面31aと厳密に垂直な場合から±10度程度ずれたものも含む意味合いである。
【0031】
第1線材部343は、一端が基体31の内部で第1導体部341の他端(第1垂直部341bの端部)と接合され、他端が基体31の外部に延伸している。基体31の外部に延伸する第1線材部343は、接着層20を通ってベースプレート10に設けられた貫通孔10xに挿入され、他端がベースプレート10の他方の面10b側に配置された制御部40と電気的に接続されている。なお、貫通孔10xの内壁と第1線材部343との間に絶縁材を配置することが好ましい。
【0032】
第2線材部344は、一端が基体31の内部で第2導体部342の他端(第2垂直部342bの端部)と接合され、他端が基体31の外部に延伸している。基体31の外部に延伸する第2線材部344は、接着層20を通ってベースプレート10に設けられた貫通孔10yに挿入され、他端がベースプレート10の他方の面10b側に配置された制御部40と電気的に接続されている。なお、貫通孔10yの内壁と第2線材部344との間に絶縁材を配置することが好ましい。
【0033】
第1導体部341は、所定の抵抗温度係数を有する材料から形成されている。又、第2導体部342は、第1導体部341とは異なる抵抗温度係数を有する材料から形成されている。これにより、熱電対34は、第1導体部341と第2導体部342との接続部である測温接点34cと、第1導体部341の他端及び第2導体部342の他端との温度差により熱起電力を発生することができる。第1線材部343及び第2線材部344の材料としては、例えば、銅等を用いることができる。
【0034】
第1導体部341及び第2導体部342の材料は、基体31の焼成温度(1500℃程度)よりも融点が高い導電材料であることが好ましい。これにより、第1導体部341及び第2導体部342を基体31と同時焼成することが可能となる。基体31の焼成温度よりも融点が高い導電材料としては、例えば、下記の材料が挙げられる。
【0035】
第1導体部341は、例えば、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re5重量%)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を含む導電性ペーストの焼成体である。第2導体部342は、例えば、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re26重量%)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を含む焼結体である。
【0036】
第1導体部341及び第2導体部342の各々において、タングステンの平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。又、レニウムの平均粒径は、1.5μm以上4.5μm以下であることが好ましい。
【0037】
酸化ニッケルの添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上1.0wt%以下であることが好ましい。酸化ニッケルの平均粒径は、5.0μm以上15.0μm以下であることが好ましい。
【0038】
酸化アルミニウムの添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上3.0wt%以下であることが好ましい。酸化アルミニウムの平均粒径は、0.1μm以上4.0μm以下であることが好ましい。
【0039】
二酸化ケイ素の添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上3.0wt%以下であることが好ましい。二酸化ケイ素の平均粒径は、0.1μm以上12.0μm以下であることが好ましい。
【0040】
第1導体部341及び第2導体部342の各々に含まれるタングステンの成分は、第1導体部341及び第2導体部342のみに存在し、基体31には存在していない。又、第1導体部341及び第2導体部342の各々に含まれるレニウムの成分は、第1導体部341及び第2導体部342のみに存在し、基体31には存在していない。又、第1導体部341及び第2導体部342の各々に含まれるニッケルの成分は、第1導体部341及び第2導体部342のみに存在し、基体31には存在していない。
【0041】
これに対して、第1導体部341及び第2導体部342の各々に含まれるアルミニウムの成分は、第1導体部341及び第2導体部342と基体31との両方に存在する。又、第1導体部341及び第2導体部342の各々に含まれるケイ素の成分は、第1導体部341及び第2導体部342と基体31との両方に存在する。
【0042】
特に、基体31を構成するセラミックス内において、ケイ素の成分は基体31を構成するセラミックスと熱電対を構成する第1導体部341及び第2導体部342との境界から20μmの範囲内のみに存在している。そして、その範囲内には、アルミニウムとケイ素の複合酸化物層(ムライト層、シリマイト層、又はムライト層とシリマイト層とが混在した層)が形成される。そのため、ケイ素の成分が複合酸化物層より以遠に拡散しないため、基体31を構成するセラミックスの特性を劣化させるおそれを低減できる。なお、複合酸化物層の範囲は、導電性ペーストに添加するアルミナとシリカの添加量によって可変可能である。
【0043】
なお、
図1では基板固定装置1が1つの熱電対34を有する例を図示しているが、基板固定装置1は複数の熱電対34を有してもよい。これにより、基体31の温度制御を高精度で行うことができる。その場合、基体31の厚さ方向の異なる位置に熱電対34が配置されてもよい。
【0044】
制御部40は、熱電対34から得られる熱起電力に基づいて基体31の温度を算出し、発熱体33に印加する電圧を制御して、基体31の載置面31aを所定の温度に調整する機能を有している。制御部40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む構成とすることができる。制御部40は、例えば、基板上に実装されてベースプレート10に固定することができる。
【0045】
[基板固定装置の製造方法]
図2及び
図3は、第1実施形態に係る基板固定装置の製造工程を例示する図である。
図2及び
図3を参照しながら、基板固定装置1の製造工程について説明する。
【0046】
まず、
図2(a)に示す工程では、複数枚(ここでは一例として5枚)のグリーンシート311、312、313、314、及び315を作製する。そして、グリーンシート311、312、及び313の熱電対34を形成する部分に貫通孔を形成する。なお、グリーンシート311、312、及び313に形成する貫通孔は、例えば、焼成後の径が50~300μm程度になるように形成することができる。
【0047】
なお、グリーンシート311、312、313、314、及び315は、セラミックス材料である酸化アルミニウムと有機材料とからなり、焼結助剤を含まない。グリーンシート311、312、313、314、及び315は、有機成分が除去されセラミックス材料が焼結し、緻密化することにより、
図1に示す基体31となるものである。
【0048】
次に、グリーンシート312の一方の面に焼成後に発熱体33となる金属ペースト33Pを、グリーンシート314の一方の面に焼成後に静電電極32となる金属ペースト32Pを
図1のパターンになるように形成する。又、グリーンシート311及び312の貫通孔内、並びにグリーンシート313の一方の面及び貫通孔内に、焼成後に第1導体部341及び第2導体部342となる金属ペースト341P及び342Pを
図1のパターンになるように形成する。
【0049】
金属ペースト341Pは、例えば、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re5重量%)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)と有機材料とを混合したものである。金属ペースト342Pは、例えば、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re26重量%)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)と有機材料とを混合したものである。
【0050】
金属ペースト341P及び342Pの各々において、酸化ニッケルの添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上1.0wt%以下であることが好ましい。酸化ニッケルは、タングステン及びレニウムの焼結性を向上させるため、0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、1.0wt%以上添加すると、タングステンの結晶が大きくなりすぎ、基体31との十分な密着が得られない。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、タングステンの平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。同様に、酸化ニッケルの平均粒径は、5.0μm以上15.0μm以下であることが好ましい。
【0051】
酸化アルミニウムの添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上3.0wt%以下であることが好ましい。酸化アルミニウムは、熱電対34と酸化アルミニウムからなるセラミックスの基体31との密着性を向上させるため0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、3.0wt%より多く添加すると、焼結性が低下する。また、抵抗率が増加する。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、酸化アルミニウムの平均粒径は、0.1μm以上4.0μm以下であることが好ましい。
【0052】
二酸化ケイ素の添加量は、タングステンに対して、0.2wt%以上3.0wt%以下であることが好ましい。二酸化ケイ素は、焼成時に液相となり、タングステン及びレニウムの焼結性、及び基体31との密着性を向上させるため、0.2wt%以上添加することが好ましい。一方、3.0wt%より多く添加すると、焼結性、密着性が低下する。また、抵抗率が増加する。導電性ペーストとグリーンシートとを同時焼成する上で、二酸化ケイ素の平均粒径は、0.1μm以上12.0μm以下であることが好ましい。
【0053】
金属ペースト32P、33P、341P、及び342Pは、例えば、スクリーン印刷法により形成できる。なお、グリーンシート313の一方の面に形成する金属ペースト341P及び342Pは、例えば、焼成後の厚さが10~30μm程度、焼成後の幅が50~300μm程度になるように形成することができる。
【0054】
次に、
図2(b)に示す工程では、
図2(a)に示す工程で作製したグリーンシート311、312、313、314、及び315を順次積層した積層体を作製する。
【0055】
次に、
図2(c)に示す工程では、第1線材部343及び第2線材部344を準備する。そして、
図2(b)に示す積層体のグリーンシート311の貫通孔内に充填された金属ペースト341Pに第1線材部343の一端を、グリーンシート311の貫通孔内に充填された金属ペースト342Pに第2線材部344の一端を挿入する。第1線材部343及び第2線材部344の線径は、例えば、50~300μm程度とすることができる。
【0056】
次に、
図3(a)に示す工程では、
図2(c)に示す積層体を焼成することにより、グリーンシート311、312、313、314、及び315が一体化して基体31となる。又、金属ペースト32P、33P、341P、及び342Pから、静電電極32、発熱体33、第1導体部341、及び第2導体部342が形成される。又、第1導体部341と第1線材部343とが接合され、第2導体部342と第2線材部344とが接合される。以上により、静電チャック30が完成する。積層体の焼成は、例えば、常圧で行うことができる。なお、焼成後の静電チャック30の体積は、焼成前に比べて10数%程度収縮する。
【0057】
次に、
図3(b)に示す工程では、貫通孔10x及び10yが形成されたベースプレート10を準備し、ベースプレート10の一方の面10aに接着層20(未硬化)を形成する。そして、
図3(a)で完成した静電チャック30の第1線材部343を貫通孔10xに、第2線材部344を貫通孔10yに挿入しながら、接着層20を介して、ベースプレート10の一方の面10aに静電チャック30を配置し、接着層20を硬化させる。
【0058】
次に、
図3(c)に示す工程では、例えば図示しない基板上に実装された制御部40を、ベースプレート10の他方の面10b側に固定する。この際、第1線材部343の他端及び第2線材部344の他端を、はんだ等を用いて、制御部40と電気的に接続する。これにより、ベースプレート10の一方の面10aに接着層20を介して静電チャック30が搭載された基板固定装置1が完成する。
【0059】
このように、基板固定装置1の静電チャック30において、基体31は酸化アルミニウム(Al2O3)からなるセラミックスであり、熱電対34を有している。そして、熱電対34の一方の脚である第1導体部341は、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re5重量%)を主成分とする焼結体である。又、他方の脚である第2導体部342は、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re26重量%)を主成分とする焼結体である。更に、熱電対34の各々の脚は、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を含んでいる。
【0060】
熱電対34の各々の脚となる導電性ペーストに酸化ニッケルを添加することにより、熱電対34の起電力を大幅に低下させることなく、熱電対34を構成する導電体におけるタングステン及びレニウムの焼結性が向上する。なお、熱電対は起電力が大きいほど精度良く測温が可能となるが、その起電力は材料の組み合わせによって決定される。従来は、タングステン(W)とレニウム(Re)とを主成分とする熱電対に他の成分が混ざると起電力が低下することが懸念されており、熱電対となる導電性ペーストに他の成分を添加することは行われていなかった。タングステン及びレニウムに酸化ニッケル等を添加しても熱電対の起電力を大幅に低下させないことは、発明者らによる新たな知見である。
【0061】
又、熱電対34の各々の脚となる導電性ペーストに酸化アルミニウムと二酸化ケイ素を添加することにより、基体31を構成するセラミックスとタングステンとの密着性、すなわち基体31と熱電対34との密着性が向上する。従って、焼結助剤を用いる必要がないため、基体31を構成するセラミックスの特性を劣化させるおそれを低減できる。具体的には、例えば、焼結助剤を含むことによってセラミックスの絶縁抵抗の温度依存性が大きくなり、使用環境の温度上昇に伴って体積抵抗率が大きく低下するが、焼結助剤を用いないことで、使用環境の温度上昇に伴う体積抵抗率の低下を抑制できる。
【0062】
又、タングステンの成分及び酸化ニッケルの成分は基体31を構成するセラミックス内には存在せずに熱電対34の各々の脚のみに存在する。そして、酸化アルミニウムの成分及び二酸化ケイ素の成分は基体31を構成するセラミックス内と熱電対34の各々の脚内の両方に存在する。具体的には、基体31を構成するセラミックス内において、二酸化ケイ素の成分は基体31を構成するセラミックスと熱電対34の各々の脚との境界から20μmの範囲内のみに存在する。そして、その範囲内にアルミニウムとケイ素の複合酸化物層(ムライト層、シリマイト層、又はムライト層とシリマイト層とが混在した層)が形成される。そのため、Si成分が複合酸化物層より以遠に拡散しないため、基体31を構成するセラミックスの特性を劣化させるおそれを低減できる。なお、複合酸化物層の範囲は、導電性ペーストに添加するアルミナとシリカの添加量によって可変可能である。
【0063】
更に、静電電極32は、タングステン(W)を主成分とし、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を含む焼成体であることが好ましい。
【0064】
静電電極32となる導電性ペーストに酸化ニッケルを添加することにより、静電電極32を構成する導電体におけるタングステンの焼結性が向上する。又、静電電極32となる導電性ペーストに酸化アルミニウムと二酸化ケイ素を添加することにより、基体31を構成するセラミックスとタングステンとの密着性が向上する。従って、焼結助剤を用いる必要がないため、基体31を構成するセラミックスの特性を劣化させるおそれを低減できる。
【0065】
又、基体31を構成するセラミックスは、酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であることが好ましい。これにより、基体31において、絶縁抵抗の温度依存性が少なく、温度上昇に対する絶縁抵抗の低下を抑制できる。
【0066】
又、基体31を構成するセラミックスは、酸化アルミニウムに対する相対密度が97%以上であることが好ましい。このような基体31は、表面及び内部の気孔が少ない。気孔は、基体31の吸着に影響する。従って、高い相対密度の基体31は、基板固定装置1として特性上好ましいものとなる。
【0067】
又、基板固定装置1では、静電チャック30の基体31と熱電対34とを同時焼成により形成するため、製造工程の簡略化が可能となる。同時焼成は、大気圧下で行うことができる。
【0068】
又、基板固定装置1では、第1導体部341と第1線材部343、及び第2導体部342と第2線材部344を、基体31との同時焼成により直接接合する。従って、従来の基板固定装置のように、これらの接合にパッドを用いる必要がないため、基体31内に熱電対34を高密度に配置することができる。又、基体に溝を設けて市販の熱電対を挿入する構造の周知の基板固定装置と比較した場合も、基体31内に熱電対34を高密度に配置することができる。
【0069】
又、基板固定装置1では、セラミックスに焼結助剤を含まないため、1300℃以上の温度環境下や酸系の雰囲気下でも使用可能である。
【0070】
なお、基板固定装置1を完成品として出荷することができるが、
図3(a)に示す静電チャック30を完成品として出荷してもよい。この場合には、静電チャック30を入手した者が、必要なときに
図3(b)及び
図3(c)の工程を実行することで、基板固定装置1を得ることができる。
【0071】
又、基板固定装置1は、制御部を有していなくてもよい。つまり、熱電対34から得られる熱起電力に基づいて基体31の温度を算出し、発熱体33に印加する電圧を制御する制御部を基板固定装置1と別体としてもよい。この場合、第1線材部343及び第2線材部344の第1導体部341及び第2導体部342と接合されていない側の端部(第1線材部343の他端及び第2線材部344の他端)がベースプレート10の他方の面10bから突出する。ベースプレート10の他方の面10bから突出する第1線材部343及び第2線材部344の端部は、必要なときに必要な位置で制御部と電気的に接続することができる。
【0072】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、セラミックス基板と熱電素子とを備えた熱電部品の例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0073】
図4は、第2実施形態に係る熱電部品を例示する図であり、
図4(a)は斜視図、
図4(b)は断面図である。
図4に示すように、熱電部品5は、基体となるセラミックス基板51と、セラミックス基板51の中の厚さ方向の異なる位置に配置された第1導体層及び第2導体層と、第1導体層と第2導体層とを電気的に接続するビア53及び54とを有するセラミックス構造体である。
【0074】
セラミックス基板51は、複数枚(例えば3枚)のグリーンシートを焼結して作製することができる。セラミックス基板51内の第1導体層及び第2導体層に、複数の熱電対+脚55(第1導体部)及び複数の熱電対-脚56(第2導体部)が形成されている。
【0075】
複数の熱電対+脚55と複数の熱電対-脚56は、隣接して交互に配置されている。そして、第1導体層及び第2導体層において、熱電対+脚55と熱電対-脚56が接合し電気的に接続されている。そして、例えば第1導体層において、直列に接続された複数の熱電対素子対の一端側には外部電極端子57が設けられ、他端側には外部電極端子58が設けられている。なお、
図4では、便宜上、熱電対+脚55と複数の熱電対-脚56とを異なる梨地模様で示している。ビア53は熱電対+脚55と同じ材料で形成され、ビア54は熱電対-脚56と同じ材料で形成されている。
【0076】
セラミックス基板51は、酸化アルミニウム(Al2O3)からなるセラミックスである。セラミックス基板51は、酸化アルミニウムの純度が99.5%以上であることが好ましい。セラミックス基板51は、酸化アルミニウムに対する相対密度が97%以上であることが好ましい。セラミックス基板51は、酸化アルミニウムの平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
【0077】
熱電対+脚55は、例えば、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re5重量%)を主成分とする焼結体であり、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を含んでいる。熱電対-脚56は、例えば、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re26重量%)を主成分とする焼結体であり、酸化ニッケル(NiO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)を含んでいる。各成分の好ましい平均粒径や好ましい添加量等は、第1導体部341及び第2導体部342の場合と同様である。
【0078】
熱電部品5において、セラミックス基板51の上面側を高温にし、セラミックス基板51の下面側を低温にすると、熱電部品5に熱起電力が発生し、外部電極端子57と外部電極端子58との間から電流を取り出すことができる。
【0079】
このように、熱電対+脚55と熱電対-脚56に酸化ニッケルを添加することにより、熱電対の起電力を大幅に低下させることなく、熱電対の各脚を構成する導電体におけるタングステン及びレニウムの焼結性が向上する。
【0080】
又、熱電対+脚55と熱電対-脚56に酸化アルミニウムと二酸化ケイ素を添加することにより、基体となるセラミックス基板51を構成するセラミックスとタングステン及びレニウムとの密着性、すなわち基体と熱電対の各脚との密着性が向上する。従って、焼結助剤を用いる必要がないため、基体を構成するセラミックスの特性を劣化させるおそれを低減できる。その他の効果についても、第1実施形態の場合と同様である。
【0081】
以下、実施例及び比較例を挙げてセラミックス構造体について更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0082】
セラミックス材料が酸化アルミニウムからなり、焼結助剤を含む、グリーンシートを準備した。そして、このグリーンシートの表面に、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re5重量%)を主成分とし、タングステン粉末量に対して酸化ニッケル粉末を0.5wt%添加した導電性ペースト(+脚用)を印刷した。又、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re26重量%)を主成分とし、タングステン粉末量に対して酸化ニッケル粉末を0.5wt%添加した導電性ペースト(-脚用)を印刷した。そして、グリーンシートと2種類の導電性ペーストを大気圧下で同時に焼成し、
図5に示すパターンの熱電対のサンプル300Aを作製した。
【0083】
同様に、セラミックス材料が酸化アルミニウムからなり、焼結助剤を含む、グリーンシートを準備した。そして、このグリーンシートの表面に、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re5重量%)を主成分とする導電性ペースト(+脚用)を印刷した。又、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金(Re26重量%)を主成分とする導電性ペースト(-脚用)を印刷した。そして、グリーンシートと2種類の導電性ペーストを大気圧下で同時に焼成し、
図5に示すパターンの熱電対のサンプル300Bを作製した。
【0084】
次に、
図5に示すM1~M4を測定点とし、サンプル300A及び300Bの各々について、各測定点における起電力を測定した。
図6(a)はサンプル300Aの測定結果、
図6(b)はサンプル300Bの測定結果である。
図6(a)に示すようにサンプル300Aは平均で約10.2μV/℃、
図6(b)に示すようにサンプル300Bは平均で約9.9μV/℃であった。この結果から、タングステン(W)とレニウム(Re)との合金に酸化ニッケルを添加しても、十分な起電力が発生していることがわかる。
【0085】
次に、セラミックス材料が酸化アルミニウムからなり、焼結助剤を含まない、グリーンシートを準備した。そして、このグリーンシートの表面に、タングステン粉末量に対して酸化ニッケル粉末を0.5wt%、酸化アルミニウム粉末を2.0wt%、二酸化ケイ素粉末を2.0wt%添加した導電性ペーストを印刷し、大気圧下で同時に焼成し、実施例に係るサンプル300Cを作製した。
【0086】
図7は、サンプル300Cの+脚の断面のEPMA分析結果である。
図8は、サンプル300Cの-脚の断面のEPMA分析結果である。
図7及び
図8より、サンプル300Cにおいては、Si成分が導電体(焼成後の導電性ペースト)とセラミックス(焼成後のグリーンシート)の両者に存在し、特にセラミックスにおいては境界近傍(境界を含んでセラミックス側に20μm以内の範囲)にのみ存在することを確認した。
【0087】
このように、Si成分は境界を含んでセラミックス側に20μm以内の範囲にのみ存在し、それ以遠に拡散しないため、セラミックスの特性を劣化させるおそれを低減できる。
【0088】
次に、サンプル300Cの導電体(焼成後の導電性ペースト)を表面から削り、セラミックスが露出した部分のXRD分析を行った。結果を
図9(a)及び
図9(b)に示す。
図9(a)は+脚のデータ、
図9(b)は-脚のデータである。
図9(a)及び
図9(b)より、サンプル300Cのセラミックスが露出した部分に、ムライト、シリマナイト、又はその両者が混在する結晶相が形成されていることを確認した。
【0089】
導電性ペーストに添加したシリカのSi成分は、焼成後に導電体に留まるものとセラミックス側に拡散するものに分かれる。導電体からセラミックス側に拡散したSi成分は、導電体とセラミックスとの境界近傍のAlとSiの複合酸化物層の形成に消費されるため、セラミックスの内部へは拡散していかない。導電体とセラミックスとの境界近傍に形成されるAlとSiの複合酸化物層は、導電体とセラミックスとの密着性の向上に大きく寄与していると考えられる。
【0090】
又、ムライトの化学式は3Al2O3・2SiO2(Al6Si2O13)、シリマナイトの化学式はAl2O3・SiO2(Al2SiO5)である。上記AlとSiの複合酸化物層の範囲は、導電性ペーストに添加するアルミナとシリカの添加量によって、ある程度のコントロールが可能である。
【0091】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0092】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 基板固定装置
5 熱電部品
10 ベースプレート
10x、10y 貫通孔
20 接着層
30 静電チャック
31 基体
31a 載置面
32 静電電極
32P、33P、341P、342P 金属ペースト
33 発熱体
34 熱電対
34c 測温接点
40 制御部
51 セラミックス基板
53、54 ビア
55 熱電対+脚
56 熱電対-脚
57、58 外部電極端子
311、312、313、314、315 グリーンシート
341 第1導体部
341a 第1水平部
341b 第1垂直部
342 第2導体部
342a 第2水平部
342b 第2垂直部
343 第1線材部
344 第2線材部