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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148146
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】仕分け装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/46 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B65G47/46 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049715
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】若林 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 賢司
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀生
(72)【発明者】
【氏名】小原 生光
(72)【発明者】
【氏名】野田 五十樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀彦
【テーマコード(参考)】
3F015
【Fターム(参考)】
3F015AA06
3F015FA01
3F015GA02
(57)【要約】
【課題】適切な経路にて搬送物の仕分けを行うことができる仕分け装置を提供する。
【解決手段】経路探索部12が、最短経路探索手法を用いて各搬送物の経路を探索することで、適切な経路を設定することが可能になる。ここで、経路探索部12は、他の搬送物による影響がないと仮定した場合における、各搬送物が目的地へ移動するのに必要なコストをそれぞれ演算する。これにより、経路探索部12は、複数の搬送物を同時に仕分ける場合に、どの搬送物が目的地まで遠いかを把握することが可能となる。そして、経路探索部12は、所定個数の搬送物の中から、コストが最も大きくなる搬送物を選択すると共に当該搬送物のコストを基準値とし、選択した搬送物以外についても、基準値を適用して経路探索を行う。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入手段における搬入口と、
水平方向移動手段を有する搬送機を少なくとも含む仕分け部と、
搬出手段における搬出口と、
前記搬入口から搬入された搬送物を前記仕分け部で仕分けして前記搬出口から搬出する制御を行う制御部と、を備える仕分け装置であって、
前記制御部は、所定個数の前記搬送物を前記仕分け部で仕分けをするときに、少なくとも前記搬入口、及び前記仕分け部の各部位を探索ノードとして、最短経路探索手法を用いて各搬送物の経路を探索する、経路探索部を備え、
前記経路探索部は、
他の搬送物による影響がないと仮定した場合における、各搬送物が目的地へ移動するのに必要なコストをそれぞれ演算し、
所定個数の前記搬送物の中から、前記コストが最も大きくなる搬送物を選択すると共に当該搬送物のコストを基準値とし、選択した搬送物以外についても、前記基準値を適用して経路探索を行う、仕分け装置。
【請求項2】
前記経路探索部は、前記最短経路探索手法としてエースターアルゴリズムを用い、
前記コストとして、各搬送物が前記目的地に到達するまでにかかるステップ数に基づく推定コストを演算し、
所定個数の前記搬送物の中から、前記推定コストが最も大きくなる搬送物を選択すると共に当該搬送物の前記推定コストをヒューリスティック関数の値とし、選択した搬送物以外についても、前記ヒューリスティック関数の値を適用して経路探索を行う、請求項1に記載の仕分け装置。
【請求項3】
前記経路探索部は、
所定タイミングにおける各前記搬送物の配置状態から、次のタイミングに発生し得る各前記搬送物の次状態候補を複数演算し、
複数の前記次状態候補に対して、動作ステップ数と前記基準値との和による状態評価値を演算し、
複数の前記次状態候補の中から、前記状態評価値が最も小さくなるものを経路探索に採用する、請求項1又は2に記載の仕分け装置。
【請求項4】
経路探索において、所定個数の前記搬送物の配置状態の候補として同率に評価される候補が複数表れた場合、前記経路探索部は、前記仕分け部中の前記搬送物が少ない方の候補を優先する、請求項1~3の何れか一項に記載の仕分け装置。
【請求項5】
経路探索において、所定個数の前記搬送物の配置状態の候補として同率に評価される候補が複数表れた場合、前記経路探索部は、各前記搬送物が前記目的地へ到達するまでの見積値の合計値を演算し、前記合計値が少ない候補を優先する、請求項1~4の何れか一項に記載の仕分け装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記搬送物の配置状態に対する最適な経路探索情報が予め準備された最適化テーブルを取得する最適化テーブル取得部を備え、
前記経路探索部は、前記搬送物の配置状態を前記最適化テーブルへ問い合わせ、当該最適化テーブルから返送された最適解に基づいて、経路探索を行う、請求項1~5の何れか一項に記載の仕分け装置。
【請求項7】
前記最適化テーブルは、前記搬送物の搬送状態に対して予め規則化された添え字値が紐付けられたハッシュテーブルを有し、
前記経路探索部は、前記搬送物の配置状態に対応する添え字値を演算し、演算した添え字値を用いて前記ハッシュテーブルを参照する、請求項6に記載の仕分け装置。
【請求項8】
前記経路探索部が、前記搬出口側の範囲において、設定値以下の個数の前記搬送物の配置状態を前記最適化テーブルへ問い合わせる場合、前記搬入口からの新たな搬送物の搬入に制限を設ける、請求項6または7に記載の仕分け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕分け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送物を搬送するシステムとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このシステムは、搬送物を搬入して、所定の階数の棚に仕分ける。仕分けられた搬送物は、各階にて、保管されて、出庫のタイミングになったら、搬送されて出庫される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-81008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、搬入コンベアから搬入した搬送物を仕分ける場合、仕分け装置が、搬送機を用いて、複数の搬送物を同時に仕分けることで、作業効率を向上させることがある。しかしながら、このような仕分け装置においては、搬送機の動作上の制約、その他の制約などが存在することによって、適切な経路で搬送を行わなくては、仕分け時間が長くなる場合がある。
【0005】
従って、本発明は、適切な経路にて搬送物の仕分けを行うことができる仕分け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る仕分け装置は、搬入手段における搬入口と、水平方向移動手段を有する搬送機を少なくとも含む仕分け部と、搬出手段における搬出口と、搬入口から搬入された搬送物を仕分け部で仕分けして搬出口から搬出する制御を行う制御部と、を備える仕分け装置であって、制御部は、所定個数の搬送物を前記仕分け部で仕分けをするときに、少なくとも搬入口、及び仕分け部の各部位を探索ノードとして、最短経路探索手法を用いて各搬送物の経路を探索する、経路探索部を備え、経路探索部は、他の搬送物による影響がないと仮定した場合における、各搬送物が目的地へ移動するのに必要なコストをそれぞれ演算し、所定個数の搬送物の中から、コストが最も大きくなる搬送物を選択すると共に当該搬送物のコストを基準値とし、選択した搬送物以外についても、基準値を適用して経路探索を行う。
【0007】
制御部の経路探索部は、所定個数の搬送物を仕分け部で仕分けをするときに、少なくとも搬入口、及び仕分け部の各部位を探索ノードとして、最短経路探索手法を用いて各搬送物の経路を探索する。このように、経路探索部が、最短経路探索手法を用いて各搬送物の経路を探索することで、適切な経路を設定することが可能になる。ここで、経路探索部は、他の搬送物による影響がないと仮定した場合における、各搬送物が目的地へ移動するのに必要なコストをそれぞれ演算する。これにより、経路探索部は、複数の搬送物を同時に仕分ける場合に、どの搬送物が目的地まで遠いかを把握することが可能となる。そして、経路探索部は、所定個数の搬送物の中から、コストが最も大きくなる搬送物を選択すると共に当該搬送物のコストを基準値とし、選択した搬送物以外についても、基準値を適用して経路探索を行う。これにより、経路探索部は、複数の搬送物を同時に仕分ける上で、時間を短縮できる経路を設定することができる。以上より、適切な経路にて搬送物の仕分けを行うことができる。
【0008】
経路探索部は、最短経路探索手法としてエースターアルゴリズムを用い、コストとして、各搬送物が目的地に到達するまでにかかるステップ数に基づく推定コストを演算し、所定個数の搬送物の中から、推定コストが最も大きくなる搬送物を選択すると共に当該搬送物の推定コストをヒューリスティック関数の値とし、選択した搬送物以外についても、ヒューリスティック関数の値を適用して経路探索を行ってよい。エースターアルゴリズムは、最適解が必ず見つかる最短経路探索方法として、経路探索において有効に用いられている方法である。経路探索部が、このようなエースターアルゴリズムを用いことで、最適な経路を探索することができる。
【0009】
経路探索部は、所定タイミングにおける各搬送物の配置状態から、次のタイミングに発生し得る各搬送物の次状態候補を複数演算し、複数の次状態候補に対して、動作ステップ数と基準値との和による状態評価値を演算し、複数の次状態候補の中から、状態評価値が最も小さくなるものを経路探索に採用してよい。この場合、経路探索部は、状態評価値を比較することで、複数の次状態候補の中から、適切なものを採用することができる。
【0010】
経路探索において、所定個数の搬送物の配置状態の候補として同率に評価される候補が複数表れた場合、経路探索部は、仕分け部中の搬送物が少ない方の候補を優先してよい。先に目的地に搬送物が到達した候補を選ぶことで、その後の経路の探索がやりやすくなるため、経路探索部は、そのような候補を優先することができる。
【0011】
経路探索において、所定個数の搬送物の配置状態の候補として同率に評価される候補が複数表れた場合、経路探索部は、各搬送物が前記目的地へ到達するまでの見積値の合計値を演算し、合計値が少ない候補を優先してよい。この場合、経路探索部は、複数の搬送物の目的地までの遠さを全体的に考慮した候補を優先することができる。
【0012】
制御部は、搬送物の配置状態に対する最適な経路探索情報が予め準備された最適化テーブルを取得する最適化テーブル取得部を備え、経路探索部は、搬送物の配置状態を最適化テーブルへ問い合わせ、当該最適化テーブルから返送された最適解に基づいて、経路探索を行ってよい。この場合、経路探索部は、準備された最適化テーブルを用いることで、速やかに経路を探索できる。
【0013】
最適化テーブルは、搬送物の搬送状態に対して予め規則化された添え字値が紐付けられたハッシュテーブルを有し、経路探索部は、搬送物の配置状態に対応する添え字値を演算し、演算した添え字値を用いてハッシュテーブルを参照してよい。この場合、経路探索部は、添え字値を用いることで、処理時間を短縮して最適化テーブルから、適切な経路を取得できる。
【0014】
経路探索部が、搬出口側の範囲において、設定値以下の個数の搬送物の配置状態を最適化テーブルへ問い合わせる場合、搬入口からの新たな搬送物の搬入に制限を設けてよい。この場合、経路探索部は、搬入手段から新たな搬送物が搬入されてても、問い合わせ対象の搬送物の個数を設定値以下に抑制できるので、最適化テーブルを利用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、適切な経路にて搬送物の仕分けを行うことができる仕分け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る仕分け装置が適用される倉庫システムを示す概略側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る仕分け装置の構成を示す概略構成図である。
図3】搬送系をモデル化した図である。
図4】本実施形態に係る仕分け装置のブロック構成図である。
図5】仕分け部における経路を示す概念図である。
図6】経路探索部の処理内容を示す概念図である。
図7】見積値について説明する概念図である。
図8】最適化テーブルについて説明する概念図である。
図9】最適化テーブルについて説明する概念図である。
図10】最適化テーブルの一例である。
図11】添え時値を説明するための概念図である。
図12】添え字値を用いた処理内容を示す概念図である。
図13】最適化テーブルに保存される残りステップを説明する概念図である。
図14】搬入される搬送物を規制する様子を示す概念図である。
図15】経路探索部の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る仕分け装置1が適用される倉庫システム100を示す概略側面図である。図1に示すように、倉庫システム100は、複数の搬送物150を入庫して保管し、保管された各搬送物150のうち、出庫すべきものを出庫可能なシステムである。倉庫システム100は、倉庫本体部101と、入庫渡り通路103と、出庫渡り通路102と、入庫エレベータ105と、出庫エレベータ104と、を備える。倉庫本体部101は、複数段の棚110を有している。棚110は、倉庫本体部101の一方側の端部から他方側の端部へ延在している。棚110では、移載装置111にて、入庫経路から出庫経路への搬送物の移載動作が行われる。入庫渡り通路103は、倉庫本体部101の一方側の端部に設けられ、各段の棚110に対して搬送物150を入庫する機構である。出庫渡り通路102は、倉庫本体部101の他方側の端部に設けられ、各段の棚110から搬送物150を出庫する機構である。入庫エレベータ105は、搬入コンベア21から入庫される搬送物150を上下させて、所望の棚110に対応する段の入庫渡り通路103へ搬送物150を供給する。出庫エレベータ104は、出庫対象となる搬送物150を棚110及び出庫渡り通路102から受け取り、図示しない出庫口へ昇降させる。出庫エレベータ104から出庫された搬送物150は、搬出コンベア121へ搬出される。このうち、入庫エレベータ105付近に、本実施形態に係る仕分け装置1が適用される。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る仕分け装置1の構成を示す概略構成図である。図2に示すように、仕分け装置1は、搬送物150を搬送する搬送系2と、搬送系2を制御する制御部10と、を備える。搬送系2は、搬入コンベア21(搬入手段)と、搬送機22と、搬出コンベア23(搬出手段)と、を備える。このうち、搬送機22は、前述の入庫エレベータ105を構成する機器である。搬入コンベア21は、搬送機22に搬入される搬送物150を当該搬送機22側へ水平に搬送する装置である。搬入コンベア21は、搬送機22の所定の段に対して設けられている。搬出コンベア23は、搬送機22から搬出される搬送物150を水平に搬送する装置である。搬出コンベア23は、入庫渡り通路103の各階(ここでは四階)に設けられる。
【0020】
搬送機22は、水平方向移動手段(例えばコンベア)と、上下移動手段と、を備え、搬送物150を上下方向及び水平方向に移動させる装置である。これにより、搬送機22は、各搬送物150を入庫渡り通路103における目的階へ移動させる。なお、図では、「n階」を目的地とした搬送物150に対して、「n」の数字が付されている。以降の図においても同様である。また、以降の説明では、n階を目的値とした搬送物150を「n階への搬送物」と称する場合がある。
【0021】
。搬送機22は、交互動作式の昇降装置であり、搬入コンベア21側の搬送棚22Aと、搬出コンベア23側の搬送棚22Bを有している。搬送棚22A、22Bは、それぞれ「仕分けの階数+一階」分の段数の収容可能エリアCEを有している。そして、「仕分けの階数」分の段数(ここでは四段)で連続した搬送箱22aを有している。連続した搬送箱22aは、同時に上下移動する。連続した搬送箱22aが下側へ移動すると、下から順に一段目から四段目の収容可能エリアCEに各搬送箱22aが配置される。連続した搬送箱22aが上側へ移動すると、下から順に二段目から五段目の収容可能エリアCEに各搬送箱22aが配置される。なお、以降の説明において、単に段数について述べた場合、特に注意が無い限り、下からカウントした段数を示すものとする。また、搬送棚22Aの搬送箱22aと搬送棚22Bの搬送箱22aは、交互に上下移動する。すなわち、搬送棚22Aの搬送箱22aが上側へ移動すると、搬送棚22Bの搬送箱22aが下側へ移動し、搬送棚22Aの搬送箱22aが下側へ移動すると、搬送棚22Bの搬送箱22aが上側へ移動する。また、同じ段数において、搬送棚22Aの搬送箱22aと搬送棚22Bの搬送箱22aとの間にて、搬送物150を水平方向に移動させることができ、相互に搬送物150の受け渡しと受け取りを行うことができる。
【0022】
本実施形態では、下から二段目の収容可能エリアCEに対して搬入コンベア21が設けられ、下から二段目~五段目の収容可能エリアCEに対して四つの搬出コンベア23が設けられる。なお、図2において収容可能エリアCEの中で「L」「R」と示された箇所は、搬送棚22A,22Bが昇降動作をするために設けられたスペースである。ただし、収容可能エリアCE、搬入コンベア21、及び搬出コンベア23との位置関係は特に限定されるものではなく、倉庫システム100の構成に応じて、適宜設定されてよい。
【0023】
上述のような装置構成により、仕分け装置1の搬送系2は、搬入口30と、仕分け部31と、搬出口32と、を備える。搬入口30は、搬入コンベア21のうち、搬送方向の最も下流側の搬送物配置エリアに設定される。搬出口32は、各階の搬出コンベア23のうち、搬送方向の最も上流側の搬送物配置エリアに設定される。仕分け部31は、搬送機22を少なくとも含む。更に、三階分の搬出コンベア23のうち、搬送方向の最も上流側の搬送物配置エリアは、搬送物150の仕分けに用いることができる。例えば、一階の搬出コンベア23は、一階への搬送物150にとっては目的地であるが、三階への搬送物150にとっては目的地ではない。従って、三階の搬送物150を一階の搬出コンベア23に一時的に配置してよい。このようなエリアは、仕分け部31の一部である一時配置エリア34となる。なお一時配置エリア34は、搬入口30に設けられていてもよい。
【0024】
上述のような搬送系2の動作の一例について説明する。ここでは、搬送棚22Aが下がった状態(搬送棚22Bが上がった状態)で、搬送物150を四階の搬出コンベア23へ移動させる場合の動作の一例について説明する。まず、搬送棚22Aは、二段目の収容可能エリアCEにて、二段目の搬送箱22aで搬送物150を受容する(M1)。搬送棚22Aは、搬送箱22aと共に搬送物150を一段上昇させる(M2)。搬送棚22Aの二段目の搬送箱22aは、三段目の収容可能エリアCEにて搬送棚22Bの三段目の搬送箱22aへ搬送物150を受け渡す(M3)。搬送棚22Bは、搬送箱22aと共に搬送物150を一段上昇させる(M4)。搬送棚22Bの三段目の搬送箱22aは、三段目の一時配置エリア34へ搬送物150を受け渡して(M5)、一段下がる。三段目の搬出コンベア23は、搬送棚22Bの四段目の搬送箱22aへ搬送物150を受け渡す(M6)。搬送棚22Bは、搬送箱22aと共に搬送物150を一段上昇させる(M7)。搬送棚22Bの四段目の搬送箱22aは、五段目の収容可能エリアCEにて、四階の搬出コンベア23の搬出口32へ搬送物150を受け渡す(M8)。これにより、四階の搬送物150が目的地に到達する。なお、搬送物150を移動させる際に、搬送棚22A,22Bの状態と搬送物150の目的地によっては、一時配置エリア34へ搬送物150を受け渡さず、搬送棚22A,22Bのやり取りだけで目的地に搬送する場合もある。
【0025】
以降の説明においては、仕分け装置1の搬送系2を図3のようにモデル化して示す場合がある。一つの搬送物150を配置可能なエリアが、一つの四角形で示されている。なお、各搬送物150は、干渉物がないかぎり、水平方向に同時動作が可能である。垂直動作としては、搬送機22の搬送棚の垂直動作中は、搬送機22内の搬送物150は動作不可である。搬送機22の垂直動作中は、搬入コンベア21及び搬出コンベア23は水平動作可能である。動作速度は特に限定されないが、水平動作は約1.0秒に設定され、垂直動作は約1.75秒に設定されてよい。
【0026】
次に、図4を参照して、仕分け装置1のブロック構成について説明する。図4は、本実施形態に係る仕分け装置1のブロック構成図である。制御部10は、搬送系2を制御するユニットである。制御部10は、搬入口30から搬入された搬送物150を仕分け部31で仕分けして搬出口32から搬出する。制御部10は、仕分け装置1を統括的に管理するECU[ElectronicControl Unit]を備えている。ECUは、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]、通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECUでは、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部10は、動作制御部11、経路探索部12と、最適化テーブル取得部13と、を備える。
【0027】
動作制御部11は、経路探索部12で探索した経路に従って各搬送物150が搬送されるように、搬送系2の動作を制御するユニットである。動作制御部11は、搬送系2の搬入コンベア21、搬送機22、及び搬出コンベア23の各駆動部へ制御信号を送信することで、各駆動部を動作させる。
【0028】
経路探索部12は、搬送系2の仕分け部31における、各搬送物150の経路を探索するユニットである。ここで、仕分け部31における経路について図5を参照して説明する。例えば、図5の左上に示す状態をスタート状態とし、図5の右下に示すように、全ての搬送物150が状態をゴール状態とする。スタート状態とゴール状態との間では、仕分け装置1は、各搬送物の水平移動、及び垂直移動を同時に行い、各動作を組み合わせることによって、各搬送物150の目的地まで搬送する。このとき、仕分け装置1は、複数の搬送物150を仕分け部31によって、搬送機22の動作的制限下において、互いの搬送物150が干渉しないように、且つ、速やかに仕分けできるように、搬送物150を移動させる。この際、経路探索部12は、各搬送物150が仕分け部31内にてどのような経路を通って、目的地まで到達するかを演算する。
【0029】
経路探索部12は、所定個数の搬送物150を仕分け部31で仕分けをするときに、少なくとも搬入口30、及び仕分け部31の各部位を探索ノードとして、最短経路探索手法を用いて各搬送物150の経路を探索する。図3のモデルでは、仕分け部31の収容可能エリアCEや、搬入口30、搬出口32、すなわち一つ当たりの四角形を、一つの探索ノードとして取り扱うことができる。経路探索部12は、他の搬送物150による影響がないと仮定した場合における、各搬送物150が目的地へ移動するのに必要なコストをそれぞれ演算する。なお、コストを示す値の単位は特に限定されず、時間、または距離などで示されてよい。コストは、ある搬送物150が、目的地へ到達するために、最低限必要になる条件(時間的条件、距離的条件)を示す。ここで、一つの移動物が、一つの目的地へ到達するための経路を探索するときは、一つの移動物のコストだけを考慮して経路を探索すればよい。しかし、仕分け装置1では、複数の搬送物150が、複数の目的地へ到達し、且つ、同じ候補経路の中で複数の搬送物150が同時に存在する。そこで、経路探索部12は、所定個数の搬送物150の中から、コストが最も大きくなる搬送物150を選択すると共に当該搬送物のコストを基準値とし、選択した搬送物以外についても、基準値を適用して経路探索を行う。すなわち、経路探索部12は、最も距離が遠い搬送物150の最短経路のコストの下限値を、搬送物150すべてのコストに適用することで経路探索を行う。例えば、図7の例では、経路探索部12は、最も距離が遠い「見積値10」の搬送物150の最短経路のコストの下限値(見積値10)を、他の搬送物150の全てのコストに適用して、経路検索を行う。
【0030】
具体的に、経路探索部12は、最短経路探索手法としてエースターアルゴリズム(A*アルゴリズム)を用いる。エースターアルゴリズムは、グラフ上でスタートからゴールまでの道を見つけるという、グラフ探索の場面において、ヒューリスティック関数と称される探索の道標となる関数を用いて探索を行うアルゴリズムである。ヒューリスティック関数は、各探索ノードから目的値までのコストのある妥当な推定値を返す関数である。ここでは、コストとして、各搬送物150が目的地に到達するまでにかかるステップ数に基づく推定コストが採用される。
【0031】
仕分け装置1では、ある搬送物150に対する推定コストは、搬送物150が仕分け部31を通過するまでに要すると見積もられるステップ数で示される。このステップ数は、搬送物150が、寄り道することなく仕分け部31内の探索ノードを移動し、最短で仕分け部31を通過するのに要するステップ数で与えられる。なお、推定コストは、このようなステップ数を移動するのに要する時間で示されてもよく、当該ステップ数を移動する距離などで示されてもよい。例えば、図6の「現在状態」で示す図では、一階への搬送物150は、三回のステップ数で仕分け部31を通過する。従って、「現在状態」の一階への搬送物150の推定コストは、「3」となる。二階への搬送物150は、二回のステップ数で仕分け部31を通過する。従って、「現在状態」の二階への搬送物150の推定コストは、「2」となる。なお、図6では、矢印一つ分が一ステップを示している。なお、前述の図2の例においても、M1~M8の矢印の一つが一ステップを示している。
【0032】
これに対し、経路探索部12は、所定個数の搬送物150の中から、推定コストが最も大きくなる搬送物150を選択すると共に当該搬送物の推定コストをヒューリスティック関数の値とする。そして、経路探索部12は、選択した搬送物以外についても、ヒューリスティック関数の値を適用して経路探索を行う。図6の「現在状態」では、一階への搬送物150が、推定コストが最も大きくなる搬送物150に該当する。経路探索部12は、一階への搬送物150の推定コストである「3」をヒューリスティック関数の値(コストの基準値)とする。経路探索部12は、選択した搬送物150以外の二階への搬送物150についても、ヒューリスティック関数の値である「3」を適用して経路探索を行う。このとき、経路探索部12は、各状態における評価を行うために、状態評価値を演算する。状態評価値は、基準から演算時における状態に至るまでの動作ステップ数と、ヒューリスティック関数の値との和によって求められる。図6に示す「現在状態」は、ステップ数の基準となる状態であるため、「ステップ数:0」である。前述のように「ヒューリスティック関数の値:3」である。従って、「状態評価値:3」となる。
【0033】
経路探索部12は、所定タイミングにおける各搬送物150の配置状態から、次のタイミングに発生し得る各搬送物150の次状態候補を複数演算する。経路探索部12は、複数の次状態候補に対して、状態評価値を演算する。そして、経路探索部12は、複数の次状態候補の中から、状態評価値が最も小さくなるものを経路探索に採用する。具体的に、図6には、「現在状態」から一ステップ進んだ状態として、「次状態」の欄に記載された状態候補A1~A3などが例示される。経路探索部12は、各状態候補A1~A3についての状態評価値を演算する。なお、経路探索部12は、各状態候補A1~A3について、ヒューリスティック関数の値を再び演算する。このとき、二階への搬送物150の推定コストが最も大きくなる場合、二階への搬送物150の推定コストがヒューリスティック関数の値となってよい。ここでは、状態候補A3の状態評価値が最も小さくなる。よって、経路探索部12は、各搬送物150について、「現在状態」の探索ノードから状態候補A3の探索ノードへ向かう経路を採用する。
【0034】
図6には、「次状態」から一ステップ進んだ状態として、「次々状態」の欄に記載された状態候補B1~B4などが例示される。経路探索部12は、各状態候補B1~B4についての状態評価値を演算する。なお、経路探索部12は、各状態候補B1~B3について、ヒューリスティック関数の値を再び演算する。ここでは、状態候補B3,B4の状態評価値が最も小さくなる。経路探索部12は、状態評価値が同率になった場合は、例えば後述のような方法によって優先順位を設け、一つの状態を選ぶ。このように、経路探索部12は、複数の次状態候補の演算と、採用する状態候補の選択をゴール状態に至るまで繰り返すことで、各搬送物150の経路を設定する。以上のようにエースターアルゴリズムを用いる場合、前述のコストは各搬送物150の推定コストで示される。
【0035】
ここで、経路探索において、所定個数の搬送物150の配置状態の候補として同率に評価される候補が複数表れた場合、経路探索部12は、仕分け部31中の搬送物150が少ない方の候補を優先する。上述のように、最小の状態評価値が、複数の状態候補に表れた場合、経路探索部12は、当該優先順位付けの処理を行う。図6の「次々状態」に示す例では、状態候補B3,B4の状態評価値が採用となる。このうち、状態候補B3では、一階への搬送物150及び二階への搬送物150は両方とも目的地へ到達していない。すなわち、仕分け部31に搬送物150が二つ存在する。一方、状態候補B4では、二階への搬送物150は目的地へ到達している。すなわち、仕分け部31に搬送物150が一つだけ存在している。この場合、経路探索部12は、仕分け部31内の搬送物150が少ない方の状態候補B4を優先して選択する。
【0036】
また、経路探索において、所定個数の搬送物150の配置状態の候補として同率に評価される候補が複数表れた場合、各搬送物150が目的地へ到達するまでの見積値の合計値を演算し、合計値が少ない候補を優先してよい。例えば、図7に示すように、経路探索部12は、探索対象となる搬送物150の全てについて、見積値を演算する。図7には、各搬送物150の見積値が示されている。なお、図7に示される例では、見積値として、搬送物150が目的地まで到達するのに必要なステップ数が採用される。ここでは、搬出コンベア23の探索ノードのうち、搬出口32より更に一段進んだ探索ノードまで到達するまでのステップ数が見積値として採用される。
【0037】
図4に戻り、最適化テーブル取得部13は、搬送物150の配置状態に対する最適な経路探索情報が予め準備された最適化テーブルを取得するユニットである。このような最適化テーブルは、記憶部3に記憶されている。従って、最適化テーブル取得部13は、記憶部3から最適化テーブルを読み出して取得する。
【0038】
例えば、図8の上段側に示すように、仕分け装置1は、事前処理として、配置状態S1に示すような配列の搬送物150を、前述のようなエースターアルゴリズムを用いた探索方法によって、最適な経路を探索する。仕分け装置1は、このような最適な経路を最適解AS1として最適化テーブルに保存する。仕分け装置1は、その他にも様々な配置状態に対する最適解を求めると共に、最適化テーブルに保存する。そして、図8の下段側に示すように、経路探索部12は、搬送物150の配置状態を最適化テーブルへ問い合わせ、当該最適化テーブルから返送された最適解に基づいて、経路探索を行う。すなわち、経路探索部12が、運用時において配置状態S1に対する経路を探索する場合、配置状態S1に対応する最適解がないかを最適化テーブルに問い合わせる。最適化テーブルには、配置状態S1に対応する最適解AS1が保存されている。従って、最適化テーブルは、保存しておいた最適解AS1を返送する。
【0039】
最適化テーブルは、図9に示すように、スタート状態からゴール状態の全ての経路をまとまったパターン情報として保存してもよいが、図9に示すように、ある配置状態に対して一ステップ先の最適経路を保存してもよい。この場合、経路探索部12は、スタート状態からゴール状態に至るまでの間、最適化テーブル(逆順テーブル)に再帰的に問い合わせをしてよい。例えば、経路探索部12が配置状態S1について最適化テーブルに問い合わせたら、最適化テーブルは、一ステップ先の配置状態S2を最適解AS1として返送する。次に、経路探索部12は配置状態S1について最適化テーブルに問い合わせ、最適化テーブルは、一ステップ先の配置状態S3を最適解AS2として返送する。経路探索部12は、このような問い合わせを繰り返すことで、ゴール状態までの経路を取得する。
【0040】
上述のような一ステップ先の配置状態を保存したデータとして、図10のようなデータベースが例示される。図10の最適化テーブルは、経路探索の範囲内に最大四つ(n=4)の搬送物150が存在する配置状態のパターンに対し、一ステップ先の最適解に係る配置状態が保存されている。このようなパターンとして、760600個のパターンのデータが保存されている。
【0041】
ここで、図10の最適化テーブルには、「添え字値」の項目にて、各配置状態に対して添え字値が紐付けられている。このように、最適化テーブルは、搬送物150の搬送状態に対して予め規則化された添え字値が紐付けられたハッシュテーブルを有していてよい。例えば、図11に示すように、経路探索の対象範囲となる探索ノードに対して、探索ノード番号を設定する(1~15)。また、16番目の探索ノード番号として、垂直搬送機の昇降状態(搬送棚22Aが下がった状態である、搬送棚22Bが下がった状態であるか)が割り当てられている。探索ノード番号と各探索ノードに存在する搬送物150の目的地の階数とに基づき、数字の列Xが設定される。探索ノード番号は、列Xの列数に対応する。また、搬送物150の目的地の階数は列Xに挿入される数字に対応する。例えば、探索ノード番号1,2,3,4に対して、「目標階数1,3,4,2」の搬送物150が存在している。従って、列Xの1,2,3,4列目には、「1,3,4,2」という数字が挿入される。なお、搬送物150が存在していない場合は「0」が挿入される。経路探索部12は、このような列Xに対して任意の行を掛け合わせることで、添え字値を算出する。なお、添え字値をどのように計算するかは特に限定されず、所定の規則に従って算出可能であればよい。
【0042】
例えば、図12に示すように、経路探索部12は、現在の配置状態に対応する添え字値を演算し、演算した添え字値を用いてハッシュテーブルを参照する。これにより、経路探索部12は、最適解に係る配置状態に対応する添え字値をハッシュテーブルから取得する。そして、経路探索部12は、取得した添え字値を逆算することで、最適解としての配置状態を算出する。
【0043】
図10に示すように、最適化テーブルには、ゴール状態へ到達するまでの残りステップ数も保存されている。この残りステップは、上述のヒューリスティック関数の値として用いることができる。この場合、経路探索部12は、ある配置状態から次の配置状態の経路探索を行うときに、最適解を最適化テーブルから取得すると共に、残りステップヒューリスティック関数の値として取得することができる。例えば、図13に示すように、経路探索部12は、最適化テーブルから残りステップを取得できなかった場合は、残りのステップをカウントして、ヒューリスティック関数の値を「4」と算出する。しかし、探索の演算をそのまま継続すると、実際には「4」でゴールに到達できないことが分かり、実際のヒューリスティック関数の値は「5」が正しいということが事後的に分かることもある。一方、最適化テーブルは、実際の経路探索に基づいて作成されたものであるので、このような正しい残りステップを保存することができる。従って、経路探索部12は、最適化テーブルに問い合わせることで、正しいヒューリスティック関数の値「5」を直ちに取得することができる。
【0044】
ここで、図10に示す例では、経路探索の対象範囲内において、最大四つの搬送物150の配置状態について、最適解が保存されていた。これに対し、経路探索部12が四つより多い搬送物150の経路を探索しようとすると、最適化テーブルを用いて経路探索ができなくなってしまう。一方、搬入コンベアからは、連続的に新しい搬送物150が搬入される場合もある。従って、図14に示すように、経路探索部12は、搬出口32側の領域にて、設定値(n=4)以下の個数の搬送物150の配置状態を最適化テーブルへ問い合わせる場合、搬入口30からの新たな搬送物150の搬入に制限を設けてよい。図14(a)に示すように、経路探索部12は、搬出口32に近い順から四個のみの搬送物150(領域E1参照)についての配置状態を取り出し、最適化テーブルに問い合わせる。このとき、五個目の搬送物150(領域E2参照)は考慮されない。図14(b)に示すように、一つステップが進むと、経路探索部12は、四個のみの搬送物150(領域E1参照)の新しい配置状態について、最適化テーブルに問い合わせる。このとき、五個目の搬送物150は、配置状態として考慮はしないが、搬入コンベア21上の位置は進めてもよい。しかし、図14(c)に示すように、制御部10は、五個目の搬送物150が、搬入コンベア21の最下流の探索ノードに配置されないように、搬入を制限する。当該位置における検索ノードは、四個の配置状態の最適解として、搬送物150が配置される可能性がある位置であるためである。一方、一つの搬送物150が目的地に到達したら、図14(d)に示すように、経路探索部12は、最適化テーブルの問い合わせ対象となる四個の搬送物150の組み合わせを更新する(領域E1参照)。
【0045】
図15を参照して、仕分け装置1の制御部10の処理内容の一例について説明する。図15に示すように、経路探索部12は、経路探索対象物として、搬出口32付近の所定個数の搬送物150を特定する(ステップS10)。次に、経路探索部12は、次の状態候補を複数演算する(ステップS20)。次に、経路探索部12は、各状態候補について、所定個数の搬送物150の推定コストを演算して比較することで、ヒューリスティック関数の値を設定する(ステップS30)。そして、経路探索部12は、ヒューリスティック関数の値を用いて各状態候補の評価を行うと共に、優先順位が最も高いものを経路として採用する(ステップS40)。次に、経路探索部12は、特定した搬送物150が全て目的地に到達したか判定する(ステップS50)。S50において、到達していないと判定したら、ステップS20から処理が繰り返される。S50において、到達したと判定されたら、図15に示す処理を終了する。次の搬送物150が搬入されたら、再び図15の処理が実行される。
【0046】
次に、本実施形態に係る仕分け装置1の作用・効果について説明する。
【0047】
制御部10の経路探索部12は、所定個数の搬送物を仕分け部31で仕分けをするときに、少なくとも搬入口30、及び仕分け部31の各部位を探索ノードとして、最短経路探索手法を用いて各搬送物の経路を探索する。このように、経路探索部12が、最短経路探索手法を用いて各搬送物の経路を探索することで、適切な経路を設定することが可能になる。ここで、経路探索部12は、他の搬送物による影響がないと仮定した場合における、各搬送物が目的地へ移動するのに必要なコストをそれぞれ演算する。これにより、経路探索部12は、複数の搬送物を同時に仕分ける場合に、どの搬送物が目的地まで遠いかを把握することが可能となる。そして、経路探索部12は、所定個数の搬送物の中から、コストが最も大きくなる搬送物を選択すると共に当該搬送物のコストを基準値とし、選択した搬送物以外についても、基準値を適用して経路探索を行う。これにより、経路探索部12は、複数の搬送物を同時に仕分ける上で、時間を短縮できる経路を設定することができる。以上より、適切な経路にて搬送物の仕分けを行うことができる。
【0048】
経路探索部12は、最短経路探索手法としてエースターアルゴリズムを用い、コストとして、各搬送物が目的地まで到達するまでにかかるステップ数に基づく推定コストを演算し、所定個数の搬送物の中から、推定コストが最も大きくなる搬送物を選択すると共に当該搬送物の推定コストをヒューリスティック関数の値とし、選択した搬送物以外についても、ヒューリスティック関数の値を適用して経路探索を行ってよい。エースターアルゴリズムは、最適解が必ず見つかる最短経路探索方法として、経路探索において有効に用いられている方法である。経路探索部12が、このようなエースターアルゴリズムを用いことで、最適な経路を探索することができる。
【0049】
なお、ヒューリスティック関数の値を0とすることでも最適解が求まる。これは幅優先探索と同じであり、短いステップで動作できるパターンを優先して調べていくため、莫大な時間がかかるが、初めに見つけた解が最短ステップの解、すなわち最適解となる。最適解を求めるために寄与するのはコストを真の値より低く見積もることである。一方で、本実施形態のように、最も大きなコストを基準値に選ぶことは最適解導出時間に寄与する。真の値より低くかつ近い値を求めていくことがエースターアルゴリズムでは重要となる。その中で、本実施形態では、この条件を満たす単純で強力な知識であると言える。
【0050】
経路探索部12は、所定タイミングにおける各搬送物の配置状態から、次のタイミングに発生し得る各搬送物の次状態候補を複数演算し、複数の次状態候補に対して、動作ステップ数と基準値との和による状態評価値を演算し、複数の次状態候補の中から、状態評価値が最も小さくなるものを経路探索に採用してよい。この場合、経路探索部12は、状態評価値を比較することで、複数の次状態候補の中から、適切なものを採用することができる。
【0051】
経路探索において、所定個数の搬送物の配置状態の候補として同率に評価される候補が複数表れた場合、経路探索部12は、仕分け部中の搬送物が少ない方の候補を優先してよい。先に目的地に搬送物が到達した候補を選ぶことで、その後の経路の探索がやりやすくなるため、経路探索部12は、そのような候補を優先することができる。
【0052】
経路探索において、所定個数の搬送物の配置状態の候補として同率に評価される候補が複数表れた場合、経路探索部12は、各搬送物が前記目的地へ到達するまでの見積値の合計値を演算し、合計値が少ない候補を優先してよい。この場合、経路探索部12は、複数の搬送物の目的地までの遠さを全体的に考慮した候補を優先することができる。
【0053】
制御部は、搬送物の配置状態に対する最適な経路探索情報が予め準備された最適化テーブルを取得する最適化テーブル取得部を備え、経路探索部12は、搬送物の配置状態を最適化テーブルへ問い合わせ、当該最適化テーブルから返送された最適解に基づいて、経路探索を行ってよい。この場合、経路探索部12は、準備された最適化テーブルを用いることで、速やかに経路を探索できる。
【0054】
最適化テーブルは、搬送物の搬送状態に対して予め規則化された添え字値が紐付けられたハッシュテーブルを有し、経路探索部12は、搬送物の配置状態に対応する添え字値を演算し、演算した添え字値を用いてハッシュテーブルを参照してよい。この場合、経路探索部12は、添え字値を用いることで、処理時間を短縮して最適化テーブルから、適切な経路を取得できる。
【0055】
経路探索部12が、搬出口側の範囲において、設定値以下の個数の搬送物の配置状態を最適化テーブルへ問い合わせる場合、搬入口からの新たな搬送物の搬入に制限を設けてよい。この場合、経路探索部12は、搬入手段から新たな搬送物が搬入されてても、問い合わせ対象の搬送物の個数を設定値以下に抑制できるので、最適化テーブルを利用することができる。
【0056】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0057】
例えば、仕分け装置が適用されるシステムは、図1に示す倉庫システムに限定されない。また、仕分け部の搬送機は、図2に示すような交互に上下動するような一対の収容棚を有するタイプのものでなくてよい。例えば、ロータリー式の搬送機(収容棚が一段ずつ一定方向に周回移動するとともに、収容棚が周回移動しない際には、搬送物が収容棚間で移動可能な搬送機)を採用してよい。
【0058】
また、最短経路探索手法としてエースターアルゴリズムを用いたが、手法は限定されず、例えば、ダイクストラ法に代表される様々な探索アルゴリズムを用いてよい。
【0059】
本実施形態では、搬入コンベア21から入庫される搬送物150を各階の搬出コンベア23に移動させる形態に関して説明したが、各階のコンベアから出庫される搬送物150を搬出コンベア121に移動させる形態に、本発明の仕分け装置の処理が適用されてもよい。
【0060】
また、搬出コンベアや搬出口は4段に限らず、2段や3段、5段より多くてもよい。また搬入口も1つではなく複数設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…仕分け装置、10…制御部、12…経路探索部、21…搬入コンベア(搬入手段)、22…搬送機、23…搬出コンベア(搬出手段)、30…搬入口、31・・仕分け部、32…搬出口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15