IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148595
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】血管新生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20220929BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 31/175 20060101ALI20220929BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61K31/167
A61P9/00
A61K31/175
A61P9/10 101
A61K31/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050340
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】相原 彩子
(72)【発明者】
【氏名】西野 泰斗
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA44
4C086ZA45
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA08
4C206HA29
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA44
4C206ZA45
(57)【要約】
【課題】血管新生を促進するための新しい手段の提供。
【解決手段】
下記式(I)で表される化合物またはその塩を含む血管新生の促進剤。

{式中、各記号は明細書中で定義される通りである。}
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

{式中、Xは、-NHCO-であり、Rは、-Y-NH-Z-Arであり(式中、Y、およびZは、単結合、または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基であり、Arは、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基である。)、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、水酸基であり、nは、0、1または2である。}で表される化合物またはその塩を含む、血管新生の促進剤。
【請求項2】
が、メチル基、エチル基、またはイソブチル基であり、
nが0であり、
Arが、ハロゲン原子、水酸基およびメチル基から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよいフェニル基、または、ハロゲン原子、水酸基およびメチル基から選ばれる1~4個の置換基を有していてもよいピリジル基であり、
Y、およびZが、単結合、またはメチル基およびエチル基から選ばれる1~2個の置換基を有していてもよいメチレン基である、
請求項1記載の剤。
【請求項3】
前記化合物が、以下からなる群より選択される化合物である、請求項1または請求項2に記載の剤。
【化2】

および、
【化3】
【請求項4】
前記化合物が、以下からなる群より選択される化合物である、請求項1または請求項2に記載の剤。
【化4】

【化5】

および、
【化6】
【請求項5】
前記化合物が、以下の化合物である、請求項1または請求項2に記載の剤。
【化7】
【請求項6】
予防または治療有効量の請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の化合物またはその塩を含む、血流障害を伴う疾患の予防または治療剤。
【請求項7】
予防または治療有効量の請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の化合物またはその塩を含む、末梢動脈疾患の予防または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管新生促進剤、血管新生を促進することを特徴とした末梢動脈疾患の予防または治療剤などに関する。
【背景技術】
【0002】
末梢動脈疾患とは、末梢の動脈が動脈硬化等によって狭窄や閉塞を起こし、血流障害を起こす病気である。当該疾患には閉塞性動脈硬化症(ASO)、慢性動脈閉塞症、バージャー病、閉塞性血栓血管炎などが含まれる。これらの疾患の病因は、高齢、高血圧、糖尿病,脂質異常症、喫煙などである。その症状としては、特に下肢の末梢動脈の狭窄や閉塞により、安静時の痛みとそれに随伴する皮膚萎縮、脱毛、チアノーゼ,虚血性潰瘍、壊疽、間歇性跛行が引き起こされ、重度の場合には、血管形成術または外科的バイパス術が必要であり、下肢切断が必要になることもある。
【0003】
このような背景から、当該疾患から生じる血流障害を早期に回復させる治療薬が求められており、例えば、抗血小板薬やプロスタグランジンなどが使用されることがある(非特許文献1、2)。また、近年になり、側副血行路(迂回路)の発達を促進するため、血管新生剤である血管内皮増殖因子や肝細胞増殖因子の遺伝子を用いた治療が報告されている(非特許文献3、4)。更に、骨髄単核球や脂肪細胞などの自己細胞を移植して血管新生を促進する治療が報告されている(特許文献1)。しかしながら、未だ十分に満足できる血流障害の回復効果を示す治療薬は得られておらず、新しい治療薬の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-87141号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J Am Geriatr Soc, 50, 1939-1946 (2002)
【非特許文献2】Ther Apher Dial, 18, 1-8 (2014)
【非特許文献3】Circulation, 97, 1114-1123 (1998)
【非特許文献4】Hypertension, 44, 203-209 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、血管新生を促進するための新規手段などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、特定の化合物が、血管内皮細胞による血管新生を促進することを見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
[1]下記式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
{式中、Xは、-NHCO-であり、Rは、-Y-NH-Z-Arであり(式中、Y、およびZは、単結合、または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基であり、Arは、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基である。)、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、水酸基であり、nは、0、1または2である。}で表される化合物またはその塩を含む、血管新生の促進剤。
[2]Rが、メチル基、エチル基、またはイソブチル基であり、
nが0であり、
Arが、ハロゲン原子、水酸基およびメチル基から選ばれる1~5個の置換基を有していてもよいフェニル基、または、ハロゲン原子、水酸基およびメチル基から選ばれる1~4個の置換基を有していてもよいピリジル基であり、
Y、およびZが、単結合、またはメチル基およびエチル基から選ばれる1~2個の置換基を有していてもよいメチレン基である、
[1]記載の剤。
[3]前記化合物が、以下からなる群より選択される化合物である、[1]または[2]に記載の剤。
【0011】
【化2】
【0012】
および、
【0013】
【化3】
【0014】
[4]前記化合物が、以下からなる群より選択される化合物である、[1]または[2]に記載の剤。
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
および、
【0018】
【化6】
【0019】
[5]前記化合物が、以下の化合物である、[1]または[2]に記載の剤。
【0020】
【化7】
【0021】
[6]予防または治療有効量の[1]乃至[5]のいずれかに記載の化合物またはその塩を含む、血流障害を伴う疾患の予防または治療剤。
[7]予防または治療有効量の[1]乃至[5]のいずれかに記載の化合物またはその塩を含む、末梢動脈疾患の予防または治療剤。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、血管新生を効率的に促進することができる。従って、本発明によれば、血流障害を伴う各種疾患や病態を予防または治療することができる。具体的には、末梢動脈疾患を予防または治療することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において使用する用語を以下に定義する。
【0024】
本明細書において、n-はノルマル、sec-はセカンダリー及びtert-はターシャリーを各々意味する。また、本明細書において、m-はメタを意味する。
【0025】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
【0026】
「炭素数1~6のアルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル等の基が挙げられる。かかるアルキル基としては、炭素数1~4の低級アルキル基、特にメチル基及びエチル基が好ましい。
【0027】
「アリール基」とは、少なくとも1つの環が芳香族であり、各環が5~8の環原子を有する単環式、二環式、三環式および四環式炭素環式基が挙げられ、具体的には、フェニル、インデニル、ナフチル、フルオレニル等が挙げられる。特に、アリール基は、C6-10の芳香族のフェニル、インデニル、ナフチルであり得る。
【0028】
「ヘテロアリール基」とは、炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基であり、具体的には、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、キノリニル基、ピラジニル基、ナフチリジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0029】
「炭素数1~6のアルキレン基」とは、炭素数1~6の直鎖の炭素鎖を意味し、具体的には、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等の基が挙げられる。
【0030】
「炭素数1~6のアルキル基」、「アリール基」、「ヘテロアリール基」及び「炭素数1~6のアルキレン基」は、それぞれ置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、例えば以下が挙げられる。尚、「炭素数1~6のアルキル基」に対する置換基としては下記(1)~(40)が挙げられ、「アリール基」、「ヘテロアリール基」及び「炭素数1~6のアルキレン基」に対する置換基としては下記(1)~(41)が挙げられる。
(1)ハロゲン原子、
(2)水酸基、
(3)シアノ基、
(4)ニトロ基、
(5)カルボキシル基、
(6)アルケニル基(C2-10アルケニル基;例、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、へキセニル、ヘプテニル、ブタジエニル、ヘキサトリエニル、およびその各異性体)、
(7)アルキニル基(C2-10アルキニル基;例、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、および、その各異性体)、
(8)ハロゲノアルキル基(例、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、モノフルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル、クロロメチル、クロロエチル、ジクロロエチル、およびその各異性体)、
(9)環状アルキル基(環中にヘテロ原子を含んでもよい)(例、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル)、
(10)アリール基(例、フェニル、ナフチル)、
(11)ヘテロアリール基(例、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、フリル、チオフェニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル(例、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル)、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル(例、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(例、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル)、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、プテリジニル、イミダゾオキサゾリル、イミダゾチアゾリル、イミダゾイミダゾリル)、
(12)アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、tert-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、2-ペンチルオキシ、3-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、2-ヘキシルオキシ)、
(13)アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、イソペンチルチオ、tert-ペンチルチオ、ネオペンチルチオ、2-ペンチルチオ、3-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、2-ヘキシルチオ)、
(14)アリール基(上記(10)と同義)で置換された、アルコキシ基(上記(12)と同義)、
(15)アリール基(上記(10)と同義)で置換された、アルキルチオ基(上記(13)と同義)、
(16)ヘテロアリール基(上記(11)と同義)で置換された、アルコキシ基(上記(12)と同義)、
(17)ヘテロアリール基(上記(11)と同義)で置換された、アルキルチオ基(上記(13)と同義)、
(18)環状アルキル(環中にヘテロ原子を含んでもよい)オキシ基(例、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、アジリジニルオキシ、アゼチジニルオキシ、ピロリジニルオキシ、ピペリジニルオキシ、モルホリニルオキシ)、
(19)アリールオキシ基(例、アリール基(上記(10)と同義)が酸素原子に結合した基)、
(20)ヘテロアリールオキシ基(例、ヘテロアリール基(上記(11)と同義)が酸素原子に結合した基)、
(21)ハロゲノアルコキシ基(例、ハロゲノアルキル基(上記(8)と同義)が酸素原子に結合した基)、
(22)ハロゲノアルキルチオ基(例、ハロゲノアルキル基(上記(8)と同義)が硫黄原子に結合した基)、
(23)水酸基で置換された、アルコキシ基(上記(12)と同義)、
(24)アルコキシ基(上記(12)と同義)で置換された、アルコキシ基(上記(12)と同義)、
(25)アミノ基、
(26)アルキル基でモノまたはジ置換されたアミノ基、
ここで、「アルキル基」とは、C1-6アルキル基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル等が挙げられる。
(27)カルバモイル基、
(28)アルキル基(上記(26)における「アルキル基」と同義)でモノまたはジ置換されたカルバモイル基(例、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、エチルメチルカルバモイル)、
(29)スルファモイル基、
(30)アルキル基(上記(26)における「アルキル基」と同義)でモノまたはジ置換されたスルファモイル基(例、メチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、エチルメチルスルファモイル)、
(31)アルカノイル基(例、水素原子若しくはアルキル基(上記(26)における「アルキル基」と同義)が炭素原子に結合したカルボニル基)、
(32)アロイル基(例、アリール基(上記(10)と同義)が炭素原子に結合したカルボニル基)、
(33)アルキルスルホニルアミノ基(例、アルキル基(上記(26)における「アルキル基」と同義)で置換されたスルホニルアミノ基)、
(34)アリールスルホニルアミノ基(例、アリール基(上記(10)と同義)で置換されたスルホニルアミノ基)、
(35)へテロアリールスルホニルアミノ基(例、ヘテロアリール基(上記(11)と同義)で置換されたスルホニルアミノ基)、
(36)アシルアミノ基(例、アシル基で置換されたアミノ基)、
ここで、「アシル基」とは、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、またはC6-10アリール基を有するアシル基である。ここで、「C1-6アルキル基」とは、上記(26)における「アルキル基」と同義であり、「C2-5アルケニル基」とは、上記(6)の「アルケニル基」のうち、炭素数が2~6のものであり、「C6-10アリール基」とは、上記(10)の「アリール基」のうち、炭素数が6~10のものである。アシル基としては、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、バレロイル基、イソバレロイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等が挙げられる、
(37)アルコキシカルボニルアミノ基(例、アルコキシ基(上記(12)と同義)で置換されたカルボニルアミノ基)、
(38)アルキルスルホニル基(例、アルキル基(上記(26)における「アルキル基」と同義)で置換されたスルホニル基)、
(39)アルキルスルフィニル基(例、アルキル基(上記(26)における「アルキル基」と同義)で置換されたスルフィニル基)、
(40)アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基)、
(41)アルキル基(C1-6アルキル基;例、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、2-ヘキシル等)等が挙げられる。
置換基が2以上存在する場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0031】
式(I)で表される化合物は、塩の形態であってもよい。前記式(I)で表される化合物の塩としては、例えば、塩酸及び臭化水素酸等の無機酸との塩ならびに酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸及び安息香酸等の有機酸との塩が挙げられる。これらの塩は、自体公知の方法によって製造される。
【0032】
式(I)で表される化合物は、置換基の種類によってはEの立体配置を有するE体及びZの立体配置を有するZ体の幾何異性体が存在する場合がある。本発明はこれらE体、Z体またはE体およびZ体を任意の割合で含む混合物を包含するものである。
【0033】
また、式(I)で表される化合物は、1個又は2個以上の不斉炭素原子の存在に起因する光学活性体が存在する場合があるが、式(I)で表される化合物は全ての光学活性体又はラセミ体を包含する。
【0034】
[式(I)で表される化合物の合成]
式(I)で表される化合物は、国際公開公報第2019/022222号、国際公開公報第2019/235569号及び国際公開公報第2020/158841号などに記載の方法に従ってまたはそれらに準じて得ることができる。例えば、式(I)で表される化合物は、下記反応式1で表されるようにして得ることができる。ここで、ケトン化合物とHN-X-R(式中、X及びRは前記の意味を表し、例えば、ヒドラジド化合物、セミカルバジド化合物等)、それぞれを1当量ずつ用い、トルエン、1,4-ジオキサン、N、N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶媒中、100℃以上の温度範囲で、1時間から3日間反応を行なうのが好ましい。
[反応式1]
【0035】
【化8】
【0036】
反応終了後の反応混合物は、蒸留水を加えて析出させる、又は析出しない場合は、有機溶媒抽出後濃縮といった通常の後処理を行ない、目的の特定化合物を得ることができる。また、精製の必要が生じたときには、再結晶、カラムクロマトグラフ、薄層クロマトグラフ、液体クロマトグラフ分取等の任意の精製方法によって分離、精製することができる。
【0037】
[光学活性体の取得]
上述の方法により合成される化合物のうち、光学異性体を有するものについては、光学活性体(ユートマー)が存在し得る。光学活性体の取得は、結晶化による方法、酵素反応を用いる方法、又はHPLCを用いる方法(例、光学活性担持法)等の自体公知の方法を用いて行うことができる。また、光学活性体を、不斉合成法等を用いて調製することもできる。
【0038】
[血管新生の促進剤]
本発明は、以下の特定化合物またはその塩を含む、血管新生の促進剤(以下、「本発明の促進剤」と称することがある)を提供する。本剤を用いることにより、血流障害を伴う疾患や病態の予防または治療を達成することができる:
【0039】
本発明の促進剤に含まれる化合物は、式(I):
【0040】
【化9】
【0041】
{式中、Xは、-NHCO-であり、Rは、-Y-NH-Z-Arであり(式中、Y、およびZは、単結合、または置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基であり、Arは、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基である。)、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基であり、Rは、水酸基であり、nは、0、1または2である。}で表される化合物、またはその塩である(以下、式(I)で表される化合物またはその塩を総称して、単に「特定化合物」等と称する場合がある)。
【0042】
Yで示される「置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基」の「炭素数1~6のアルキレン基」としては、前記例示したものが挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基またはプロピレン基、より好ましくはメチレン基である。
Yで示される「置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基」の「置換基」としては、前記例示したものが挙げられ、好ましくは、炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは、メチル基またはエチル基である。
Yは、好ましくは、CHR(Rは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基(例、メチル基、エチル基)を示す。)である。
Zで示される「置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基」の「炭素数1~6のアルキレン基」としては、前記例示したものが挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基またはプロピレン基、より好ましくはメチレン基である。
Zで示される「置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基」の「置換基」としては、前記例示したものが挙げられ、好ましくは、炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは、メチル基である。
Zは、好ましくは、CHR(Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基(例、メチル基)を示す。)である。
好適な態様として、Yが、単結合であり、かつZが、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基である態様、または、Zが、単結合であり、かつYが、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基である態様が挙げられる。
Arで示される「置換基を有していてもよいアリール基」の「アリール基」としては、前記例示したものが挙げられ、好ましくは、フェニル基である。
Arで示される「置換基を有していてもよいアリール基」の「置換基」としては、前記例示したものが挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、水酸基および炭素数1~6のアルコキシ基から選ばれる置換基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、メチル基、水酸基およびメトキシ基から選ばれる置換基であり、さらに好ましくは、ハロゲン原子および水酸基から選ばれる置換基である。Arで示される「置換基を有していてもよいアリール基」の「アリール基」がフェニル基である場合、「置換基」の数は、0、1、2、3、4または5であり、好ましくは、0、1または2である。「置換基を有していてもよいアリール基」の「置換基」の数が2以上である場合は、置換基はそれぞれ同一であってもよく、または異っていてもよい。
Arで示される「置換基を有していてもよいアリール基」としては、好ましくは、フェニル基、水酸基を有するフェニル基、水酸基およびハロゲン原子を有するフェニル基(例、5-フルオロ-3-ヒドロキシフェニル)である。
Arで示される「置換基を有していてもよいヘテロアリール基」の「ヘテロアリール基」としては、前記例示したものが挙げられ、好ましくは、ピリジル基である。
Arで示される「置換基を有していてもよいヘテロアリール基」の「置換基」としては、前記例示したものが挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、より好ましくは、塩素原子およびフッ素原子から選ばれる置換基である。Arで示される「置換基を有していてもよいヘテロアリール基」の「ヘテロアリール基」がピリジル基である場合、「置換基」の数は、0、1、2、3または4であり、好ましくは、0、1または2であり、より好ましくは0または1である。「置換基を有していてもよいヘテロアリール基」の「置換基」の数が2以上である場合は、置換基はそれぞれ同一であってもよく、または異っていてもよい。
Arで示される「置換基を有していてもよいヘテロアリール基」としては、好ましくは、ピリジル基、ハロゲン原子を有するピリジル基(例、クロロピリジル、フルオロピリジル)である。
は、水酸基である。
nは、0、1、2であり、好ましくは、0である。
【0043】
一態様において、Yが、単結合である場合は、Zは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基(より好ましくは、置換基を有していない炭素数1~6のアルキレン基、特に好ましくは、メチレン基)であり、Arは、置換基(より好ましくは、ハロゲン原子、メチル基、水酸基、およびメトキシ基から選ばれる置換基)を有していてもよいアリール基(より好ましくは、水酸基を有するアリール基、水酸基およびハロゲン原子を有するアリール基、または置換基を有していないアリール基、特に好ましくはフェニル基、水酸基を有するフェニル基、または水酸基およびハロゲン原子を有するフェニル基(例、5-フルオロ-3-ヒドロキシフェニル))、または置換基(より好ましくは、ハロゲン原子、メチル基、水酸基、およびメトキシ基から選ばれる置換基)を有していてもよいヘテロアリール基(より好ましくは、置換基を有していてもよいピリジル基、特に好ましくは、置換基を有していないピリジル基、ハロゲン原子を有するピリジル基(例、クロロ基を有するピリジル基またはフルオロ基を有するピリジル基))であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基(より好ましくは、置換基を有していない炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基、特に好ましくは、エチル基)であり、nは、0、1または2であり、好ましくは、nは0である。
【0044】
また、一態様において、Yが、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基(より好ましくは、置換基を有していない炭素数1~6のアルキレン基、特に好ましくはメチレン基、エチレン基またはプロピレン基)である場合は、Zは、単結合であり、Arは、置換基を有していてもよいアリール基(より好ましくは、置換基を有するアリール基、特に好ましくは、ハロゲン原子、メチル基、水酸基およびエトキシ基から選ばれる置換基を有するフェニル基、またはナフチル基)、または置換基を有していてもよいヘテロアリール基(より好ましくは、ハロゲン原子を有していてもよいヘテロアリール基、特に好ましくは、置換基を有していないピリジル基、ハロゲン原子を有するピリジル基(例、クロロ基を有するピリジル基またはフルオロ基を有するピリジル基))であり、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基(より好ましくは、置換基を有していない炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基、特に好ましくはエチル基)であり、nは、0、1または2であり、好ましくは、nは0である。
【0045】
式(I)で表される化合物またはその塩は、一態様において、式(I-1):
【0046】
【化10】
【0047】
{式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基(より好ましくは、置換基を有していない炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基、特に好ましくは、エチル基)であり、
は、水酸基であり、
nは、0、1または2(好ましくは、0)であり、
は、水素原子、または炭素数1~6のアルキル基(好ましくは、水素原子、メチル基、またはエチル基)であり、
5aは、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、水酸基または炭素数1~6のアルコキシ基(好ましくは、ハロゲン原子、メチル基、水酸基またはエトキシ基、より好ましくは、ハロゲン原子または水酸基)であり、
maは、0、1、2、3、4または5(好ましくは、0、1または2)である。maが2以上である場合、Rは、それぞれ同一であってもよく、または異なっていてもよい。}
で表される化合物またはその塩であり得る。
一態様において、式(I-1)で表される化合物またはその塩は、式(I-1’):
【0048】
【化11】

(式中、各記号の定義は、式(I-1)における各記号の定義と同じである。)で表される化合物またはその塩であり得る。
【0049】
式(I)で表される化合物またはその塩は、一態様において、式(I-2):
【0050】
【化12】
【0051】
{式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基(より好ましくは、置換基を有していない炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基、特に好ましくは、エチル基)であり、
は、水酸基であり、
nは、0、1または2(好ましくは、0)であり、
は、水素原子、または炭素数1~6のアルキル基(好ましくは、水素原子、メチル基、またはエチル基)であり、
5aは、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、水酸基または炭素数1~6のアルコキシ基(好ましくは、ハロゲン原子、メチル基、水酸基またはエトキシ基、より好ましくは、ハロゲン原子または水酸基)であり、
maは、0、1、2、3、4または5(好ましくは、0、1または2)である。maが2以上である場合、Rは、それぞれ同一であってもよく、または異なっていてもよい。}
で表される化合物またはその塩であり得る。
【0052】
式(I)で表される化合物またはその塩は、一態様において、式(I-3):
【0053】
【化13】
【0054】
{式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基(より好ましくは、置換基を有していない炭素数1~6のアルキル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基、特に好ましくは、エチル基)であり、
は、水酸基であり、
nは、0、1または2(好ましくは、0)であり、
は、水素原子、または炭素数1~6のアルキル基(好ましくは、水素原子、メチル基、またはエチル基)であり、
5bは、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子またはフッ素原子)であり、
mbは、0、1、2、3または4(好ましくは、0、1または2、より好ましくは、0または1)である。mbが2以上である場合、Rは、それぞれ同一であってもよく、または異なっていてもよい。}
で表される化合物またはその塩であり得る。
【0055】
本明細書における「血流障害」とは、血栓、コレステロール、脂肪、炎症、膠原病や動脈硬化等により血管が狭窄または閉塞し、局所組織において血流が低下した状態を表す。血流障害を引き起こす要因としては、加齢、喫煙、薬剤の投与、透析、糖尿病、高血圧、腎不全、脂質異常症、感染症等が挙げられるが、これらに制限されない。「血流障害の回復」とは、低下した血流の一部または全てが回復することを表す。血流障害の回復により、例えば血流障害に起因する冷感、しびれ、間欠性跛行、痛み、歩行障害、潰瘍、壊疽等の末梢動脈疾患等でみられる症状を緩和または治癒することができる。「血流障害の回復促進」とは、血流障害が回復に至るまでの期間の短縮または低下した血流の増加の促進を意味する。
【0056】
本明細書における「血管新生」とは、既存の血管から新しい血管が形成される現象を表し、例えば生体内では血管の閉塞時における側副血行路(迂回路)の形成の際にも起こる。「血管新生の促進」とは、新しい血管形成の頻度が増えること、新しい血管数が最終的に増えること、新しい血管長が最終的に大きくなること、形成された血管が太くなること、側副血行路での血流が増えることなどを表す。「血管新生の促進」により血流障害の回復が促進されるため、血流障害を伴う疾患(例えば、狭心症、網膜血管閉塞症、末梢動脈疾患等)でみられる症状を緩和または治癒することができる。
【0057】
本発明の促進剤の適用対象は、血流障害を罹患する可能性のある動物であれば特に限定されないが、本発明の促進剤の適用対象は通常哺乳動物であり、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、マウス、ラット等が例示される。好ましくは、本発明の促進剤の適用対象はヒトである。
【0058】
本発明の促進剤は、提供時あるいは保存時に任意の形状であり得る。本発明の促進剤は、固形状、液体状、及びゲル状等の形状であり得る。本発明の促進剤は、通常錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、シロップ剤などの経口投与剤、直腸投与剤、経皮吸収剤あるいは注射剤として投与できる。本剤は1個の治療薬として、あるいはほかの治療薬との混合物として投与できる。それらは有効成分単体で投与してもよいが、一般的には医薬組成物の形態で投与する。それらの医薬組成物は、薬理的、製剤学的に許容しうる添加物を加え、常法により製造することができる。すなわち、経口剤には通常の賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、可塑剤、コーティング剤などの添加物を使用することができる。経口用液剤は、水性または油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、エリキシルなどの形態であってもよく、あるいは使用前に水またはほかの適当な溶媒で調製するドライシロップとして供されてもよい。前記の液剤は、懸濁化剤、香料、希釈剤あるいは乳化剤のような通常の添加剤を含むことができる。直腸内投与する場合は座剤として投与することができる。座剤はカカオ脂、ラウリン脂、マクロゴール、グリセロゼラチン、ウィテップゾール、ステアリン酸ナトリウムまたはそれらの混合物など、適当な物質を基剤として用い、必要に応じて乳化剤、懸濁化剤、保存剤などを加えることができる。注射剤は、水性剤形あるいは用時溶解型剤形を形成するために、注射用蒸留水、生理食塩水、5%ブドウ糖溶液、プロピレングリコールなどの溶解剤ないし溶解補助剤、無機塩、有機酸やアミノ酸などのpH調節剤、等張化剤、安定化剤、防腐剤などの製剤成分が使用される。以下に、本発明の促進剤の製剤例およびその調製方法を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0059】
製剤例1
以下の成分を含有する顆粒剤を製造する。
成分
式(I)で表される化合物 10mg
乳糖 700mg
コーンスターチ 274mg
HPC-L 16mg
計 1000mg
【0060】
式(I)で表される化合物と乳糖を60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを120メッシュのふるいに通す。これらをV型混合機にて混合する。混合末に低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L)水溶液を添加し、練合、造粒(押し出し造粒 孔径0.5~1mm)した後、乾燥する。得られた乾燥顆粒を振動ふるい(12/60メッシュ)で篩過し顆粒剤を得る。
【0061】
製剤例2
以下の成分を含有するカプセル充填用散剤を製造する。
成分
式(I)で表される化合物 10mg
乳糖 79mg
コーンスターチ 10mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
計 100mg
【0062】
式(I)で表される化合物と乳糖を60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを120メッシュのふるいに通す。これらとステアリン酸マグネシウムをV型混合機にて混合する。10倍散100mgを5号硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0063】
製剤例3
以下の成分を含有するカプセル充填用顆粒剤を製造する。
成分
式(I)で表される化合物 15mg
乳糖 90mg
コーンスターチ 42mg
HPC-L 3mg
計 150mg
【0064】
式(I)で表される化合物と乳糖を60メッシュのふるいに通す。コーンスターチを120メッシュのふるいに通す。これらをV型混合機にて混合する。混合末に低粘度ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L)水溶液を添加し、練合、造粒した後、乾燥する。得られた乾燥顆粒を振動ふるい(12/60メッシュ)で篩過し整粒し、その150mgを4号硬ゼラチンカプセルに充填する。
【0065】
製剤例4
以下の成分を含有する錠剤を製造する。
成分
式(I)で表される化合物 10mg
乳糖 90mg
微結晶セルロース 30mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
CMC-Na 15mg
計 150mg
【0066】
式(I)で表される化合物と乳糖と微結晶セルロース、CMC-Na(カルボキシメチルセルロース ナトリウム塩)を60メッシュのふるいに通し、混合する。混合末にステアリン酸マグネシウムを添加し、製剤用混合末を得る。本混合末を直打し錠剤を得る。
【0067】
製剤例5
静脈用製剤は次のように製造する。
式(I)で表される化合物 100mg
飽和脂肪酸グリセリド 1000mL
【0068】
式(I)で表される化合物を飽和脂肪酸グリセリドに添加し、静脈用製剤を得る。上記成分の溶液は通常、1分間に1mLの速度で患者に静脈内投与されるが、これに限定されない。
【0069】
本発明の促進剤をヒトに投与する場合は、その投与量を患者の年齢、性別、状態により決定するが、通常成人の場合は、一般に、1日当たり、患者の体重1kg当たり有効成分が約0.01mgから約500mgとなるように投与される。投与は、単回投与又は複数回投与であり得る。好ましくは、有効成分の投与量は、1日当たり約0.1mg/kgから約250mg/kg、さらに好ましくは1日当たり約0.5mg/kgから約100mg/kgである。一態様において、有効成分の投与量は、1日当たり約0.01mg/kgから約250mg/kg、1日当たり約0.05mg/kgから約100mg/kg、又は1日当たり約0.1mg/kgから約50mg/kgとすることができる。この範囲内において、有効成分の投与量は1日当たり0.05mg/kgから0.5mg/kg、0.5mg/kgから5mg/kg、又は5mg/kgから50mg/kgであってもよい。治療対象の患者の症状を調節するために、経口投与において、有効成分を1mgから1000mg、特に1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg、600mg、750mg、800mg、900mg、又は1000mgの用量で含有する製剤を提供することができる。本発明の促進剤は、1日当たり1から4回の計画、好ましくは1日当たり1回又は2回の計画で投与可能である。これらの数値はあくまでも例示であり、投与量は患者の症状などにあわせて決定されるものである。
【0070】
本発明の促進剤は、血流障害が発現した際の治療処置として投与することができる。また、本発明の促進剤は、血流障害の発現を防止または抑制するために予防処置として投与することができる。さらに、本発明の促進剤は、予防処置と治療処置を組み合わせて投与することができる。例えば、糖尿病に起因する血流障害を予防及び/または治療する目的で本発明の促進剤を投与する場合、糖尿病により血流障害が起きる前から本発明の促進剤を投与することができる。さらに糖尿病により血流障害が起きた後でも本発明の促進剤を投与することができる。
【0071】
また、本発明の促進剤は既存の促進剤と組み合わせて投与し、その効果を強化することができる。既存の促進剤の例としては、血管内皮増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子などが挙げられる。
【0072】
本発明の促進剤は、血流障害を引き起こす疾患の治療薬と組み合わせて投与することができる。この様な治療薬の例としては、抗血小板薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、末梢血管拡張薬、降圧薬、脂質異常症治療薬、抗糖尿病薬、抗肥満薬、ニコチン代替薬などが挙げられる。
【0073】
加溶媒分解によりまたは生理的条件下のインビボにおいて本発明の薬理学的に活性な化合物を生成する、化学的または代謝的に分解できる基を有する特定化合物の誘導体を、プロドラッグとして利用し得る。適当なプロドラッグを選択する方法および製造する方法は、例えばDesign of Prodrugs(Elsevier,Amsterdam 1985)に記載されている。特定化合物が水酸基を有する化合物である場合は、該化合物と適当なアシルハライドまたは適当な酸無水物とを反応させることによって得られるアシルオキシ誘導体がプロドラッグとして例示される。プロドラッグとして特に好ましいアシルオキシとしては-OCOC、-OCO(t-Bu)、-OCOC1531、-OCO(m-CONa-Ph)、-OCOCHCHCONa、-OCOCH(NH)CH、-OCOCHN(CHなどが挙げられる。特定化合物がアミノ基を有する化合物である場合は、該化合物と適当な酸ハロゲン化物または適当な混合酸無水物とを反応させることによって得られるアミド誘導体がプロドラッグとして例示される。プロドラッグとして特に好ましいアミドとしては、-NHCO(CH20OCH、-NHCOCH(NH)CH等が挙げられる。
【0074】
本発明の促進剤が適用され得る血流障害を伴う疾患を引き起こす疾患または病態としては、血流の低下を誘引するものであれば特に制限されない。その例としては、加齢、喫煙、薬剤の投与、透析、糖尿病、高血圧、腎不全、脂質異常症等が挙げられる。
【0075】
[末梢動脈疾患の予防または治療剤]
本発明はまた、予防または治療有効量の下記式(I)で表される化合物またはその塩を含む、それを必要とする対象に投与するための、末梢動脈疾患の予防または治療剤(以下、「本発明の予防または治療剤」と称することがある)を提供する。
【0076】
【化14】
【0077】
本発明の予防または治療剤における、式(I)で表される化合物またはその塩の好ましい形態、治療対象、投与量、投与経路、投与回数、投与時期等は、[血管新生の促進剤]に記載したものと同様である。
【0078】
本発明の予防または治療剤が適用される末梢動脈疾患としては、慢性動脈閉塞症、閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病、ビュルガー病、頸動脈狭窄、頭蓋外椎骨動狭窄、血管腫、血管奇形、血管損傷、急性腸間膜動脈閉塞、腹腔動脈起始部圧迫症候群、非閉塞性腸管虚血症、閉塞性血栓血管炎、高安動脈炎、結節性多発動脈炎、好酸球性多発血管性肉芽腫症、多発血管性肉芽腫症、全身性エリテマドーデス、全身性強皮症、糖尿病性足病変、ベーチェット病、胸郭出口症候群、膝窩動脈外膜嚢腫、膝窩動脈捕捉症候群等が挙げられる。
【0079】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例0080】
式(I)で表される化合物は、国際公開公報第2019/022222号、国際公開公報第2019/235569号及び国際公開公報第2020/158841号などに記載されている。本発明において用いた化合物の例を第1乃至4表に示すが、本発明に用いることが可能な化合物はこれらのみに限定されるものではない。
【0081】
表中、Meとの記載はメチルを表し、以下同様に、Etとの記載はエチルを表す。OHはヒドロキシ基を、Fはフルオロ基を、Clはクロロ基を表す。なお、Rにおける「-」との記載は無置換を表す。構造式に記載された番号は、RまたはR5aもしくはR5bの置換位置を表す。
【0082】
〔第1表〕
【0083】
【化15】
【0084】
【表1】
【0085】
〔第2表〕
【0086】
【化16】
【0087】
【表2】
【0088】
〔第3表〕
【0089】
【化17】
【0090】
【表3】
【0091】
〔第4表〕
【0092】
【化18】
【0093】
【表4】
【0094】
式(I)で表される化合物のうち、第1表乃至第4表に記載の化合物のH-NMRデータを以下に示す。
【0095】
プロトン核磁気共鳴ケミカルシフト値は、重ジメチルスルホキシドの値を2.49ppmとして、重ジメチルスルホキシド中で、270MHzまたは400MHzにて測定した。尚、表中の記号は下記の意味を表す。s:シングレット、brs:ブロードシングレット、d:ダブレット、dd:ダブルダブレット、t:トリプレット、q:カルテット、m:マルチプレット。
【0096】
k-1:D-1;270MHz
δ 13.66(s, 1H), 10.76(s, 1H), 9.70(s, 1H), 8.98(s, 1H), 7.25(d, J=10.8Hz, 1H), 6.86(t, J=10.8Hz, 1H), 6.40(d, J=8.1Hz, 1H), 6.20-5.95(m, 3H), 5.87(t, J=5.4Hz, NH), 3.88(d, J=5.4Hz, 2H), 2.78(q, J=8.0Hz, 2H), 1.97(s, 3H), 1.05(t, J=8.1Hz, 3H).
【0097】
GA-005A;270MHz
δ13.65(s, 1H), 10.75(s, 1H), 9.70(s, 1H), 8.97(s, 1H), 7.25(d, J=8.1Hz, 1H), 6.83(t, J=8.1Hz, 1H), 6.39(d, J=8.1Hz, 1H), 6.15-5.95(m, 3H), 5.81(d, J=8.1Hz, 1H), 4.18(m, 1H), 2.78(q, J=8.1Hz, 2H), 1.95(s, 3H), 1.37(d, J=8.1Hz, 3H), 1.03(t, J=8.1Hz, 3H).
【0098】
k-1:J-1;270MHz
δ13.45(br, 1H), 9.57(s, 1H), 9.53(s, 1H), 9.36(s, 1H), 7.17(d, J=8.1Hz, 1H), 7.11(d, J=8.1Hz, 1H), 6.80-6.70(m, 3H), 6.64(br, NH), 6.37(d, J=8.1Hz, 1H), 4.25(d, J=5.4Hz, 2H), 2.65(q, J=8.1Hz, 2H), 1.97(s, 3H), 1.08(t, J=8.1Hz, 3H).
【0099】
k-1:I-10;270MHz
δ13.50(s, 1H), 9.51(s, 1H), 9.46(s, 1H), 9.37(s, 1H), 7.16(d, J=8.1Hz, 1H), 7.13(d, J=8.1Hz, 1H), 6.80-6.70(m, 3H), 6.65(d, J=8.1Hz, NH), 6.35(d, J=8.1Hz, 1H), 4.74(m, 1H), 2.63(q, J=8.1Hz, 2H), 1.96(s, 3H), 1.38(d, J=5.4Hz, 3H), 1.06(t, J=8.1Hz, 3H).
【0100】
CE-001;270MHz
δ 13.41(s, 1H), 9.87(s, 1H), 9.61(s, 1H), 9.54(s, 1H), 7.17(d, J=8.1Hz, 1H), 6.84(t, J=8.1Hz, 1H), 6.60-6.40(m, 3H), 6.37(d, J=8.1Hz, 1H), 4.26(d, J=8.1Hz, 2H), 2.66(q, J=8.1Hz, 2H), 1.97(s, 3H), 1.08(t, J=8.1Hz, 3H).
【0101】
A-012;270MHz
δ13.63(s, 1H), 10.95(s, 1H), 9.72(s, 1H), 7.79(d, J=2.7Hz, 1H), 7.27(d, J=8.1Hz, 1H), 7.20(d, J=8.1Hz, 1H), 7.06(m, 1H), 6.48(d, J=8.1Hz, 1H), 6.40(d, J=8.1Hz, 1H), 4.33(m, 1H), 2.82(q, J=5.4Hz, 2H), 1.95(s, 3H), 1.41(d, J=5.4Hz, 3H), 1.07(t, J=8.1Hz, 3H).
【0102】
[実施例1]ヒト及びマウス血管内皮細胞の血管新生に対する特定化合物の作用
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、PromoCell社製)をEndothelial growth medium(PromoCell社製)にて前培養を行った後、Detach kit(PromoCell社製)を用いて細胞を単離した。μ-Slide Angiogenesis(Idibi社製)にマトリゲル(Corning社製)を10μL/ウェルとなるよう添加し、37℃にて30分間インキュベートし固化させた。HUVECを2.2×10cells/mLになるよう培地で調製し、マトリゲル上に45μL/ウェルとなるよう播種した。続いて、10倍濃度に培地で希釈した特定化合物溶液を5μL/ウェル添加し(終濃度各10μM)、37℃、5%COインキュベーターにて24時間培養した。また、マウス脳微小血管細胞株(bEND.3、ATCC社製)を10%FBS/DMEM培地(富士フイルム和光純薬社製)にて前培養した後、0.25(w/v)% トリプシン―1mmol/L EDTA・4Na溶液(富士フイルム和光純薬社製)を用いて細胞を単離した。上記のHUVECと同様にμ-Slide Angiogenesis(Idibi社製)を用いてbEND.3をマトリゲル上で培養した。尚、この際の特定化合物の終濃度は各20μM、特定化合物添加後の培養時間は5時間とした。
【0103】
培養後、上清を静かに除去し、PBS 50μL/ウェルで洗浄した。Calcein-AM(同仁化学研究所社製、1mg/mL)をPBSで500倍希釈し、50μL/ウェル添加した後、37℃インキュベーターにて30分間インキュベーションした。EVOS Cell Imaging System(Thermo Fisher Scientific社製)にて蛍光画像を撮影し、ImageJ Angiogenesis Analyzer tool(参考文献;Carpentier G.、 ImageJ Contribution: Angiogenesis Analyzer. ImageJ News(2012))を用いて画像解析を行い、単位面積あたりの血管分岐点数や総血管長のコントロール(化合物非添加群)に対する相対値を算出した。なお、ここに記載した血管新生試験の参考文献としては、WO2014/028762;Oncotarget(2017)、8、p107033-;J.Vasc.Surg.(2016)、64、p746-;Stem Cell Research & Therapy(2017)、8、p182-などが挙げられる。化合物非添加群に対して血管分岐点数が1.5倍以上、総血管長が1.2倍以上となった特定化合物の化合物番号を下記に記載する。
【0104】
HUVECでの血管分岐点数(1.5倍以上):
化合物番号(10μM);k-1:D-1、k-1:J-1、k-1:I-10、GA-005A、A-012、CE-001
bEND.3での血管分岐点数(1.5倍以上):
化合物番号(20μM);k-1:D-1、k-1:J-1、CE-001
HUVECでの総血管長(1.2倍以上):
化合物番号(10μM);k-1:D-1、k-1:J-1、k-1:I-10、GA-005A、A-012、CE-001
bEND.3での総血管長(1.2倍以上):
化合物番号(20μM);k-1:D-1、k-1:J-1、CE-001
【0105】
上記結果より、本発明に用いられる特定化合物の血管分岐点数及び総血管長に対する促進効果が明らかとなり、血管新生促進作用が示された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の血管新生の促進剤により、血流障害を回復させることができる。従って、本発明の血管新生の促進剤は、末梢動脈疾患の予防または治療に好適に用いられ、医療分野において極めて有益である。