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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148779
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電線保護装置および車載システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 5/04 20060101AFI20220929BHJP
   H02H 9/02 20060101ALI20220929BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20220929BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02H5/04 110
H02H9/02
H02H3/087
B60R16/02 650S
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050592
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【弁理士】
【氏名又は名称】森 昌康
(72)【発明者】
【氏名】安井 崇博
【テーマコード(参考)】
5G004
5G013
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004AB03
5G004DA02
5G004EA01
5G013AA11
5G013BA01
5G013CA10
(57)【要約】
【課題】電線を過熱から適切に保護できる電線保護装置および車載システムを提供する。
【解決手段】電線保護装置10は、電流検出部12、電圧検出部13、および電力供給コントローラ18を備える。電流検出部12は、電源装置4を負荷6に接続する電線8の電流値を検出電流値Aとして検出する。電圧検出部13は、電源装置4と電線8との間に設けられる第1電圧検出点8Uにおける電圧値を第1検出電圧値VUとして検出する。電圧検出部13は、電線8と負荷6との間に設けられる第2電圧検出点8Dにおける電圧値を第2検出電圧値VDとして検出する。電力供給コントローラ18は、検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDに基づいて電線8の抵抗値を算出抵抗値RCとして算出し、算出抵抗値RCに基づいて電線8を介して行われる電力供給を制限する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置を負荷に接続する電線の電流値を検出電流値として検出する電流検出部と、
前記電源装置と前記電線との間に設けられる第1電圧検出点における電圧値を第1検出電圧値として検出し、前記電線と前記負荷との間に設けられる第2電圧検出点における電圧値を第2検出電圧値として検出する電圧検出部と、
前記検出電流値、前記第1検出電圧値、および前記第2検出電圧値に基づいて前記電線の抵抗値を算出抵抗値として算出し、前記算出抵抗値に基づいて前記電線を介して行われる電力供給を制限する電力供給コントローラと、
を備える電線保護装置。
【請求項2】
前記電力供給コントローラは、前記電線の抵抗値と温度との関係を示す抵抗温度特性と、前記算出抵抗値と、に基づいて前記電線の温度を算出電線温度として算出し、前記算出電線温度に基づいて前記電線を介して行われる前記電力供給を制限する、
請求項1に記載の電線保護装置。
【請求項3】
前記電力供給コントローラは、前記算出電線温度が温度閾値を超える場合、前記電線を介して行われる前記電力供給を遮断する、
請求項2に記載の電線保護装置。
【請求項4】
前記電力供給コントローラは、前記算出電線温度が前記温度閾値以下の場合、前記電線を介して行われる前記電力供給を許容する、
請求項2または3に記載の電線保護装置。
【請求項5】
前記電力供給コントローラは、前記抵抗温度特性を記憶するメモリを含む、
請求項2から4のいずれか1項に記載の電線保護装置。
【請求項6】
前記電力供給コントローラは、前記検出電流値、前記第1検出電圧値、および前記第2検出電圧値の関係を示す抵抗値算出式に基づいて前記算出抵抗値を算出する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電線保護装置。
【請求項7】
前記電力供給コントローラは、前記電線を介して行われる前記電力供給が遮断されている状態において前記電圧検出部から出力される前記第1検出電圧値および前記第2検出電圧値に基づいて前記抵抗値算出式の誤差を補正する、
請求項6に記載の電線保護装置。
【請求項8】
前記電力供給コントローラは、複数の異なる検出タイミングで前記電流検出部から出力される複数の異なる検出電流値と、前記複数の異なる検出タイミングで前記電圧検出部から出力される複数の異なる第1検出電圧値と、前記複数の異なる検出タイミングで前記電圧検出部から出力される複数の異なる第2検出電圧値と、に基づいて、前記抵抗値算出式の誤差を補正する、
請求項6または7に記載の電線保護装置。
【請求項9】
前記電力供給コントローラは、前記検出電流値が基準電流値以下である第1判定期間において前記複数の異なる検出タイミングで前記電流検出部から出力される前記複数の異なる検出電流値と、前記第1判定期間において前記複数の異なる検出タイミングで前記電圧検出部から出力される前記複数の異なる第1検出電圧値と、前記第1判定期間において前記複数の異なる検出タイミングで前記電圧検出部から出力される複数の異なる第2検出電圧値と、に基づいて、前記抵抗値算出式の誤差を補正する、
請求項8に記載の電線保護装置。
【請求項10】
前記電力供給コントローラは、前記検出電流値が基準電流値以下である前記第1判定期間および前記車両の起動から所定の時間が経過するまでの第2判定期間において前記複数の異なる検出タイミングで前記電流検出部から出力される前記複数の異なる検出電流値と、前記第1判定期間および前記第2判定期間において前記複数の異なる検出タイミングで前記電圧検出部から出力される前記複数の異なる第1検出電圧値と、前記第1判定期間および前記第2判定期間において前記複数の異なる検出タイミングで前記電圧検出部から出力される複数の異なる第2検出電圧値と、に基づいて、前記抵抗値算出式の誤差を補正する、
請求項9に記載の電線保護装置。
【請求項11】
前記第2判定期間は、前記電流検出部が突入電流値を検出する突入電流期間と、前記突入電流期間の後に前記電流検出部が定常電流値を検出する定常電流期間と、を含み、
前記複数の異なる検出電流値は、前記突入電流値および前記定常電流値を含み、
前記複数の異なる第1検出電圧値は、前記突入電流値および前記定常電流値にそれぞれ対応する第1突入電圧値および第1定常電圧値を含み、
前記複数の異なる第2検出電圧値は、前記突入電流値および前記定常電流値にそれぞれ対応する第2突入電圧値および第2定常電圧値を含み、
前記電力供給コントローラは、前記突入電流値、前記定常電流値、前記第1突入電圧値、前記第1定常電圧値、前記第2突入電圧値、および前記第2定常電圧値に基づいて、前記抵抗値算出式の誤差を補正する、
請求項10に記載の電線保護装置。
【請求項12】
前記電線の環境温度を検出環境温度として検出する温度センサをさらに備え、
前記電力供給コントローラは、前記複数の異なる検出電流値、前記複数の異なる第1検出電圧値、前記複数の異なる第2検出電圧値、および前記第2判定期間において前記温度センサから出力される前記検出環境温度に基づいて、前記抵抗値算出式の誤差を補正する、
請求項10または11に記載の電線保護装置。
【請求項13】
前記電線の環境温度を検出環境温度として検出する温度センサをさらに備え、
前記電力供給コントローラは、前記複数の異なる検出電流値、前記複数の異なる第1検出電圧値、前記複数の異なる第2検出電圧値、および前記検出環境温度に基づいて、前記抵抗値算出式の誤差を補正する、
請求項8から12のいずれか1項に記載の電線保護装置。
【請求項14】
前記電圧検出部は、前記第1電圧検出点における電圧値を前記第1検出電圧値として検出する第1電圧検出部と、前記第2電圧検出点における電圧値を前記第2検出電圧値として検出する第2電圧検出部と、を含む、
請求項1から13のいずれか1項に記載の電線保護装置。
【請求項15】
前記第1電圧検出部は、前記電源装置と前記負荷との間に設けられる電圧ライン上に配置される前記第1電圧検出点と、前記電源装置と前記負荷との間に設けられるグランドライン上に配置され前記第1検出電圧値の基準となる第1基準点と、に接続され、
前記第2電圧検出部は、前記電圧ライン上に配置される前記第2電圧検出点と、前記グランドライン上に配置され前記第2検出電圧値の基準となる第2基準点と、に接続される、
請求項14に記載の電線保護装置。
【請求項16】
前記第2基準点は、前記グランドライン上において前記第1基準点の位置と異なる位置に設けられる、
請求項15に記載の電線保護装置。
【請求項17】
前記第2電圧検出部は、前記第1電圧検出部と前記第1基準点とを接続するラインに接続され、前記第1基準点と前記第2基準点との間の電位差に基づいて前記第2検出電圧値を補正する、
請求項16に記載の電線保護装置。
【請求項18】
前記第2基準点は、前記第1電圧検出部と前記第1基準点とを接続するライン上に設けられる、
請求項15に記載の電線保護装置。
【請求項19】
前記第2基準点は、前記第1基準点の位置と同じ位置に設けられる、
請求項18に記載の電線保護装置。
【請求項20】
前記第1電圧検出部および前記第2電圧検出部は、一体のユニットとして構成される、
請求項14から19のいずれか1項に記載の電線保護装置。
【請求項21】
第1ユニットと、
前記第1ユニットから離れた位置に配置される第2ユニットと、をさらに備え、
前記第1ユニットは、前記第1電圧検出部を含み、
前記第2ユニットは、前記第2電圧検出部を含む、
請求項14から19のいずれか1項に記載の電線保護装置。
【請求項22】
前記電源装置と、
前記負荷と、
前記電線と、
請求項1から21のいずれか1項に記載の前記電線保護装置と、を備え、
前記電線保護装置は、前記電源装置と電気的に接続され、
前記電線保護装置は、前記負荷と電気的に接続され、
前記電源装置と前記電線保護装置との間には、他の機器は電気的に接続されておらず、
前記電線保護装置と前記負荷との間には、他の機器は電気的に接続されていない、
車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される技術は、電線保護装置および車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、負荷への電力供給が遮断された後に電力供給を復帰するための装置が記載される。特許文献1に記載の装置は、通電路保護回路を有する。通電路保護回路は、通電路の発熱および放熱に基づいて通電路の温度を推定する。通電路保護回路は、推定温度が所定の上限値に達した場合に、通電を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5660358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的に、通電電流から通電路の温度を推定すると、推定温度の誤差が生じやすい。さらに、特許文献1に記載の温度推定手法では、所定の周期で通電電流をサンプリングし、最新の通電電流と前回算出された電線上昇温度とを算出式に代入することで最新の電線上昇温度を算出する。したがって、算出された電線上昇温度の誤差が計算するたびに累積し、その結果、推定温度の誤差が大きくなる可能性がある。推定温度の誤差が大きくなると、通電路を適切に保護できない。
【0005】
本願に開示される技術の課題は、電線を過熱から適切に保護できる電線保護装置および車載システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の特徴によれば、電線保護装置は、電流検出部、電圧検出部、および電力供給コントローラを備える。電流検出部は、電源装置を負荷に接続する電線の電流値を検出電流値として検出する。電圧検出部は、電源装置と電線との間に設けられる第1電圧検出点における電圧値を第1検出電圧値として検出する。電圧検出部は、電線と負荷との間に設けられる第2電圧検出点における電圧値を第2検出電圧値として検出する。電力供給コントローラは、検出電流値、第1検出電圧値、および第2検出電圧値に基づいて電線の抵抗値を算出抵抗値として算出し、算出抵抗値に基づいて電線を介して行われる電力供給を制限する。
【0007】
第1の特徴に係る電線保護装置では、算出抵抗値に基づいて電線の状態を比較的正確に把握でき、電線を過熱から適切に保護できる。
【0008】
第2の特徴によれば、第1の特徴に係る電線保護装置において、電力供給コントローラは、電線の抵抗値と温度との関係を示す抵抗温度特性と、算出抵抗値と、に基づいて電線の温度を算出電線温度として算出し、算出電線温度に基づいて電線を介して行われる電力供給を制限する。
【0009】
第2の特徴に係る電線保護装置では、算出電線温度に基づいて電線の状態をより正確に把握でき、より適切に電線を過熱から保護できる。
【0010】
第3の特徴によれば、第2の特徴に係る電線保護装置において、電力供給コントローラは、算出電線温度が温度閾値を超える場合、電線を介して行われる電力供給を遮断する、
第3の特徴に係る電線保護装置では、より適切に電線を過熱から保護できる。
【0011】
第4の特徴によれば、第2または第3の特徴に係る電線保護装置において、電力供給コントローラは、算出電線温度が温度閾値以下の場合、電線を介して行われる電力供給を許容する。
【0012】
第4の特徴に係る電線保護装置では、電線により電力供給を行いつつ、より適切に電線を過熱から保護できる。
【0013】
第5の特徴によれば、第2から第4の特徴のいずれか1つに係る電線保護装置において、電力供給コントローラは、抵抗温度特性を記憶するメモリを含む。
【0014】
第5の特徴に係る電線保護装置では、電線に対応する抵抗温度特性をメモリに記憶しておくことで、より適切に電線を過熱から保護できる。
【0015】
第6の特徴によれば、第1から第5の特徴のいずれか1つに係る電線保護装置において、
電力供給コントローラは、検出電流値、第1検出電圧値、および第2検出電圧値の関係を示す抵抗値算出式に基づいて算出抵抗値を算出する。
【0016】
第6の特徴に係る電線保護装置では、抵抗値算出式を用いることで電線の算出抵抗値をより適切に算出することができ、より適切に電線を過熱から保護できる。
【0017】
第7の特徴によれば、第6の特徴に係る電線保護装置において、電力供給コントローラは、電線を介して行われる電力供給が遮断されている状態において電圧検出部から出力される第1検出電圧値および第2検出電圧値に基づいて抵抗値算出式の誤差を補正する。
【0018】
第7の特徴に係る電線保護装置では、電線を介して行われる電力供給が遮断されている状態における第1検出電圧値および第2検出電圧値を用いることで、抵抗値算出式の誤差を適切に補正でき、より適切に電線を過熱から保護できる。
【0019】
第8の特徴によれば、第6または第7の特徴に係る電線保護装置において、電力供給コントローラは、複数の異なる検出タイミングで電流検出部から出力される複数の異なる検出電流値と、複数の異なる検出タイミングで電圧検出部から出力される複数の異なる第1検出電圧値と、複数の異なる検出タイミングで電圧検出部から出力される複数の異なる第2検出電圧値と、に基づいて、抵抗値算出式の誤差を補正する。
【0020】
第8の特徴に係る電線保護装置では、抵抗値算出式の誤差を適切に補正でき、より適切に電線を過熱から保護できる。
【0021】
第9の特徴によれば、第8の特徴に係る電線保護装置において、電力供給コントローラは、検出電流値が基準電流値以下である第1判定期間において複数の異なる検出タイミングで電流検出部から出力される複数の異なる検出電流値と、第1判定期間において複数の異なる検出タイミングで電圧検出部から出力される複数の異なる第1検出電圧値と、第1判定期間において複数の異なる検出タイミングで電圧検出部から出力される複数の異なる第2検出電圧値と、に基づいて、抵抗値算出式の誤差を補正する。
【0022】
第9の特徴に係る電線保護装置では、検出電流値が基準電流値以下である場合、電線の温度は比較的低いので、抵抗値算出式の精度は電線温度の影響を比較的受けにくい傾向にある。したがって、第1判定期間における複数の異なる検出電流値、複数の異なる第1検出電圧値、および複数の異なる第2検出電圧値に基づいて抵抗値算出式の誤差を補正することで、抵抗値算出式の誤差をより適切に補正できる。
【0023】
第10の特徴によれば、第9の特徴に係る電線保護装置において、電力供給コントローラは、検出電流値が基準電流値以下である第1判定期間および車両の起動から所定の時間が経過するまでの第2判定期間において複数の異なる検出タイミングで電流検出部から出力される複数の異なる検出電流値と、第1判定期間および第2判定期間において複数の異なる検出タイミングで電圧検出部から出力される複数の異なる第1検出電圧値と、第1判定期間および第2判定期間において複数の異なる検出タイミングで電圧検出部から出力される複数の異なる第2検出電圧値と、に基づいて、抵抗値算出式の誤差を補正する。
【0024】
第10の特徴に係る電線保護装置では、車両の起動から所定の時間が経過するまでは、電線の温度が比較的低いので、抵抗値算出式の精度は電線温度の影響をより受けにくくなる。したがって、第1判定期間および第2判定期間における複数の異なる検出電流値、複数の異なる第1検出電圧値、および複数の異なる第2検出電圧値に基づいて抵抗値算出式の誤差を補正することで、抵抗値算出式の誤差をより適切に補正できる。
【0025】
第11の特徴によれば、第10の特徴に係る電線保護装置において、第2判定期間は、電流検出部が突入電流値を検出する突入電流期間と、突入電流期間の後に電流検出部が定常電流値を検出する定常電流期間と、を含む。複数の異なる検出電流値は、突入電流値および定常電流値を含む。複数の異なる第1検出電圧値は、突入電流値および定常電流値にそれぞれ対応する第1突入電圧値および第1定常電圧値を含む。複数の異なる第2検出電圧値は、突入電流値および定常電流値にそれぞれ対応する第2突入電圧値および第2定常電圧値を含む。電力供給コントローラは、突入電流値、定常電流値、第1突入電圧値、第1定常電圧値、第2突入電圧値、および第2定常電圧値に基づいて、抵抗値算出式の誤差を補正する。
【0026】
第11の特徴に係る電線保護装置では、突入電流値および定常電流値の差分は比較的大きいので、抵抗値算出式の誤差を広範囲のデータに基づいて補正できる。
【0027】
第12の特徴によれば、第10または第11の特徴に係る電線保護装置は、電線の環境温度を検出環境温度として検出する温度センサをさらに備える。電力供給コントローラは、複数の異なる検出電流値、複数の異なる第1検出電圧値、複数の異なる第2検出電圧値、および第2判定期間において温度センサから出力される検出環境温度に基づいて、抵抗値算出式の誤差を補正する。
【0028】
第12の特徴に係る電線保護装置では、電線の環境温度も考慮して抵抗値算出式の誤差をより適切に補正できる。
【0029】
第13の特徴によれば、第8から第12の特徴のいずれか1つに係る電線保護装置は、電線の環境温度を検出環境温度として検出する温度センサをさらに備える。電力供給コントローラは、複数の異なる検出電流値、複数の異なる第1検出電圧値、複数の異なる第2検出電圧値、および検出環境温度に基づいて、抵抗値算出式の誤差を補正する。
【0030】
第13の特徴に係る電線保護装置では、電線の環境温度も考慮して抵抗値算出式の誤差をより適切に補正できる。
【0031】
第14の特徴によれば、第1から第13の特徴のいずれか1つに係る電線保護装置において、電圧検出部は、第1電圧検出点における電圧値を第1検出電圧値として検出する第1電圧検出部と、第2電圧検出点における電圧値を第2検出電圧値として検出する第2電圧検出部と、を含む。
【0032】
第14の特徴に係る電線保護装置では、第1電圧検出点と第2電圧検出点とが離れている場合であっても、第1電圧検出部および第2電圧検出部により第1電圧検出点および第2電圧検出点における電圧値を検出できる。
【0033】
第15の特徴によれば、第14の特徴に係る電線保護装置において、第1電圧検出部は、電源装置と負荷との間に設けられる電圧ライン上に配置される第1電圧検出点と、電源装置と負荷との間に設けられるグランドライン上に配置され第1検出電圧値の基準となる第1基準点と、に接続される。第2電圧検出部は、電圧ライン上に配置される第2電圧検出点と、グランドライン上に配置され第2検出電圧値の基準となる第2基準点と、に接続される。
【0034】
第15の特徴に係る電線保護装置では、第1電圧検出部および第2電圧検出部により第1電圧検出点および第2電圧検出点における電圧値を正確に検出できる。
【0035】
第16の特徴によれば、第15の特徴に係る電線保護装置において、第2基準点は、グランドライン上において第1基準点の位置と異なる位置に設けられる。
【0036】
第16の特徴に係る電線保護装置では、第1電圧検出部および第2電圧検出部の配置の自由度を高めることができる。
【0037】
第17の特徴によれば、第16の特徴に係る電線保護装置において、第2電圧検出部は、第1電圧検出部と第1基準点とを接続するラインに接続され、第1基準点と第2基準点との間の電位差に基づいて第2検出電圧値を補正する。
【0038】
第17の特徴に係る電線保護装置では、第1電圧検出部および第2電圧検出部の配置の自由度を高めつつ、第2電圧検出部の検出精度を高めることができる。
【0039】
第18の特徴によれば、第15の特徴に係る電線保護装置において、第2基準点は、第1電圧検出部と第1基準点とを接続するライン上に設けられる。
【0040】
第18の特徴に係る電線保護装置では、第2電圧検出部の検出精度を高めることができる。
【0041】
第19の特徴によれば、第18の特徴に係る電線保護装置において、第2基準点は、第1基準点の位置と同じ位置に設けられる。
【0042】
第19の特徴に係る電線保護装置では、第2電圧検出部の検出精度をより高めることができる。
【0043】
第20の特徴によれば、第14から第19の特徴のいずれか1つに係る電線保護装置において、第1電圧検出部および第2電圧検出部は、一体のユニットとして構成される。
【0044】
第20の特徴に係る電線保護装置では、構造の簡素化を図りつつ、より適切に電線を過熱から保護できる。
【0045】
第21の特徴によれば、第14から第19の特徴のいずれか1つに係る電線保護装置は、第1ユニットと、第1ユニットから離れた位置に配置される第2ユニットと、をさらに備える。第1ユニットは、第1電圧検出部を含む。第2ユニットは、第2電圧検出部を含む。
【0046】
第21の特徴に係る電線保護装置では、第1電圧検出部および第2電圧検出部を別ユニットとして設けることで、電源および負荷の様々な配置に電線保護装置を適用できる。
【0047】
第22の特徴によれば、車載システムは、電源装置と、負荷と、電線と、第1から第21の特徴のいずれか1つに係る電線保護装置と、を備える。電線保護装置は、電源装置と電気的に接続される。電線保護装置は、負荷と電気的に接続される。電源装置と電線保護装置との間には、他の機器は電気的に接続されていない。電線保護装置と負荷との間には、他の機器は電気的に接続されていない。
【0048】
第22の特徴に係る車載システムでは、電源装置と電線保護装置との間には、他の機器は電気的に接続されておらず、電線保護装置と負荷との間には、他の機器は電気的に接続されていない。すなわち、電線保護装置は、電源装置と負荷との間の専用線上に配置される。したがって、検出電流値、第1検出電圧値、および第2検出電圧値の少なくとも1つが他の負荷へ供給される電流の影響を受けにくくなり、検出電流値、第1検出電圧値、および第2検出電圧値の少なくとも1つの検出精度を高めることができる。例えば、電線保護装置を専用線に適用することで、グランド電位の変動が誤差ではなく検出信号に含まれる。したがって、検出信号が大きくなり、検出精度が向上する。
【発明の効果】
【0049】
本願に開示される技術によれば、電線を過熱から適切に保護できる電線保護装置および車載システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、実施形態に係る電線保護装置を含む車両の概略ブロック図である。
図2図2は、図1に示す電線保護装置で用いられる抵抗温度特性のグラフの一例を示す。
図3図3は、第1変形例に係る電線保護装置を含む車両の概略ブロック図である。
図4図4は、第2変形例に係る電線保護装置を含む車両の概略ブロック図である。
図5図5は、第3変形例に係る電線保護装置を含む車両の概略ブロック図である。
図6図6は、図1に示す電線保護装置で用いられる抵抗値算出式のグラフの一例を示す。
図7図7は、図1に示す電線保護装置のタイミングチャートの一例を示す。
図8図8は、図1に示す電線保護装置のタイミングチャートの一例を示す。
図9図9は、図1に示す電線保護装置で用いられる抵抗値算出式のグラフの一例を示す。
図10図10は、図1に示す電線保護装置の動作のフローチャートの一例を示す。
図11図11は、図1に示す電線保護装置の動作のフローチャートの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図中において同じ符号は、対応するまたは同一の構成を示している。
【0052】
図1に示すように、車両2は、車載システム3を含む。車載システム3は、電源装置4、負荷6、電線8、および電線保護装置10を備える。車両2の例は、自動車を含む。自動車の例は、動力源としてエンジン(内燃機関)が搭載される自動車、動力源としてエンジンおよび車両駆動モータが搭載されるハイブリッド車、および動力源として車両駆動モータが搭載される電気自動車または燃料電池自動車を含む。しかし、車両2は上記の車両に限定されない。
【0053】
負荷6は、電線8および電線保護装置10を介して電源装置4に電気的に接続される。電源装置4は、電線8および電線保護装置10を介して負荷6に電力(電気)を供給する。電線8を保護するために、電線保護装置10は、電線8の状態に応じて電源装置4および負荷6の間の電力供給を制限する。
【0054】
負荷6は、電源装置4から供給される電気により動作する。負荷6の例は、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)、ライト、ヒータ、オーディオ機器、センサ、およびカメラを含む。電源装置4は、複数の負荷6に接続されてもよい。負荷6は、車載機器6とも称し得る。
【0055】
電源装置4は、バッテリおよび電源回路を含む。電源回路は、バッテリから供給される電圧(例えば、12V)を所定の制御電圧(例えば、3Vまたは5V)に変換する。電源装置4は、電線8および電線保護装置10を介して負荷6に電気的に接続される。電源装置4は、電線8および電線保護装置10を介して制御電圧を負荷6に供給する。電源装置4は、車両2の起動操作部2Aに電気的に接続される。起動操作部2Aは、ユーザが車両2を起動する起動操作を受けるように構成される。起動操作部2Aは、ユーザが車両2のシステムを停止する停止操作を受けるように構成される。
【0056】
起動操作部2Aは、例えば、エンジンスタートキーおよびスタートボタンの少なくとも1つを含む。ユーザの起動操作の例は、ユーザが起動操作部2Aのエンジンスタートキーを起動側に回す操作、および、ユーザが起動操作部2Aのスタートボタンを押す操作を含む。ユーザの停止操作の例は、ユーザが起動操作部2Aのエンジンスタートキーを停止側に回す操作、および、ユーザが起動操作部2Aのスタートボタンを再度押す操作を含む。起動操作部2Aは、ユーザの起動操作を受けると、起動信号を出力する。起動操作部2Aは、ユーザの停止操作を受けると、停止信号を出力する。電源装置4は、起動操作部2Aから起動信号を受信すると、電線保護装置10への電力の供給を開始する。電源装置4は、起動操作部2Aから停止信号を受信すると、電線保護装置10への電力の供給を停止する。
【0057】
電線保護装置10は、電源装置4と電気的に接続される。電線保護装置10は、負荷6と電気的に接続される。本実施形態では、電源装置4と電線保護装置10との間には、他の機器は電気的に接続されていない。電線保護装置10と負荷6との間には、他の機器は電気的に接続されていない。すなわち、電線保護装置10は、電源装置4と負荷6との間の専用線上に配置される。しかし、電線保護装置10と電源装置4との間に、他の機器が電気的に接続されてもよい。電線保護装置10と負荷6との間に、他の機器が電気的に接続されてもよい。
【0058】
電線保護装置10は、電流検出部12および電圧検出部13を備える。電流検出部12は、電源装置4を負荷6に接続する電線8の電流値を検出電流値Aとして検出する。電圧検出部13は、電源装置4と電線8との間に設けられる第1電圧検出点8Uにおける電圧値を第1検出電圧値VUとして検出する。電圧検出部13は、電線8と負荷6との間に設けられる第2電圧検出点8Dにおける電圧値を第2検出電圧値VUとして検出する。
【0059】
本実施形態では、電圧検出部13は、第1電圧検出部14および第2電圧検出部16を含む。第1電圧検出部14は、第1電圧検出点8Uにおける電圧値を第1検出電圧値VUとして検出する。第2電圧検出部16は、第2電圧検出点8Dにおける電圧値を第2検出電圧値VDとして検出する。第1電圧検出点8Uは、上流電圧検出点8Uとも称し得る。第2電圧検出点8Dは、下流電圧検出点8Dとも称し得る。第1電圧検出部14は、上流電圧検出部14とも称し得る。第2電圧検出部16は、下流電圧検出部16とも称し得る。第1検出電圧値VUは、検出上流電圧値VUとも称し得る。第2検出電圧値VDは、検出下流電圧値VDとも称し得る。
【0060】
電線保護装置10は電力供給コントローラ18を備える。電力供給コントローラ18は、検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDに基づいて電線8を介して行われる電力供給を制限する。電力供給コントローラ18は、検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDに基づいて電線8の抵抗値を算出抵抗値RCとして算出し、算出抵抗値RCに基づいて電線8を介して行われる電力供給を制限する。本実施形態では、電力供給コントローラ18は、電線8の抵抗値と温度との関係を示す抵抗温度特性D1(例えば、図2参照)と、算出抵抗値RCと、に基づいて電線8の温度を算出電線温度TCとして算出する。電力供給コントローラ18は、算出電線温度TCに基づいて電線8を介して行われる電力供給を制限する。しかし、電力供給コントローラ18は、抵抗温度特性D1を用いることなく算出抵抗値RCを直接用いて電線8を介して行われる電力供給を制限するように構成されてもよい。電力供給コントローラ18はメモリ18Mを含む。メモリ18Mは抵抗温度特性D1を記憶する。
【0061】
電線保護装置10は、第1ユニット20および第2ユニット22を含む。第2ユニット22は、第1ユニット20から離れた位置に配置される。第1ユニット20は、第2ユニット22に対して上流側に配置される。第1ユニット20は、電流検出部12、第1電圧検出部14、および電力供給コントローラ18を含む。第2ユニット22は第2電圧検出部16を含む。第1ユニット20は、上流ユニット20とも称し得る。第2ユニット22は、下流ユニット22とも称し得る。なお、電流検出部12および電力供給コントローラ18の少なくとも1つは第2ユニット20に設けられてもよい。
【0062】
本願においては、プラス(電圧の高い側)からマイナス(電圧の低い側)への電流の流れ方向において、プラス側を「上流」または「上流側」、マイナス側を「下流」または「下流側」とする。
【0063】
電力供給コントローラ18は、スイッチ回路24、プロセッサ18P、回路基板18C、およびバス18Bを含む。スイッチ回路24は、電源装置4と負荷6との間に設けられ、電源装置4から負荷6への電力供給を許容および遮断する。スイッチ回路24は、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)24Fおよびゲートドライバ24Gを含む。
【0064】
FET24Fは、例えば、金属酸化膜半導体(MOS)FETである。より詳細には、FET24Fは、NチャンネルMOSFETである。しかし、FET24Fは、NチャンネルMOSFETに限定されない。FET24Fは、ドレイン電極D、ソース電極S、およびゲート電極Gを含む。ドレイン電極Dは、電線8を介して電源装置4に電気的に接続される。ソース電極Sは、電線8を介して負荷6に電気的に接続される。ゲート電極Gは、ゲートドライバ24Gに電気的に接続される。
【0065】
閾値よりも高いゲート電圧がゲート電極Gに供給される状態では、FET24Fはソース電極Sからドレイン電極Dへの電流の流れを許容する。閾値よりも高いゲート電圧がゲート電極Gに供給されない状態では、FET24Fはソース電極Sからドレイン電極Dへの電流の流れを遮断する。
【0066】
ゲートドライバ24Gは、回路基板18Cおよびバス18Bを介してプロセッサ18Pに電気的に接続される。ゲートドライバ24Gは、プロセッサ18Pからの指令に基づいてFET24Fのゲート電極Gに閾値よりも高いゲート電圧を供給する。
【0067】
プロセッサ18Pは、例えば、CPU(Central Processing Unit)および/またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。メモリ18Mは、例えば、揮発性および/不揮発性メモリを含む。揮発性メモリの例は、RAM(Random Access Memory)を含む。不揮発性メモリの例は、ROM(Read Only Memory)およびEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)を含む。
【0068】
電力供給コントローラ18のメモリ18Mは、電力供給コントローラ18の制御アルゴリズムを実現するための制御プログラムおよびファームウェアなどの情報を記憶する。プロセッサ18Pは、メモリ18Mに記憶される制御プログラムを読み出して実行することにより、電力供給コントローラ18の制御アルゴリズムを実現する。電力供給コントローラ18の構成は、プロセッサ18Pおよびメモリ18Mに限定されない。電力供給コントローラ18の構成は、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、およびハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせにより実現可能である。
【0069】
スイッチ回路24、プロセッサ18P、およびメモリ18Mは、回路基板18C上に電気的に搭載される。スイッチ回路24は、プロセッサ18P、およびメモリ18Mは、回路基板18Cおよびバス18Bを介して互いに電気的に接続される。
【0070】
電流検出部12および第1電圧検出部14は、電力供給コントローラ18に電気的に接続される。電流検出部12および第1電圧検出部14は、回路基板18C上に電気的に搭載される。電流検出部12および第1電圧検出部14は、回路基板18Cおよびバス18Bを介してプロセッサ18Pおよびメモリ18Mに電気的に接続される。電流検出部12から出力される検出電流値Aは、回路基板18Cおよびバス18Bを介して電力供給コントローラ18に入力される。第1電圧検出部14から出力される第1検出電圧値VUは、回路基板18Cおよびバス18Bを介して電力供給コントローラ18に入力される。
【0071】
電線保護装置10は、電線8の環境温度を検出環境温度TEとして検出する温度センサ26をさらに備える。温度センサ26は、第1ユニット20に設けられる。温度センサ26は、電力供給コントローラ18に電気的に接続される。温度センサ26は、回路基板18Cおよびバス18Bを介してプロセッサ18Pおよびメモリ18Mに電気的に接続される。温度センサ26から出力される検出環境温度TEは、回路基板18Cおよびバス18Bを介して電力供給コントローラ18に入力される。温度センサ26は、第1ユニット20以外の場所に設けられてもよい。温度センサ26は、電線保護装置10から省略されてもよい。
【0072】
第2ユニット22は回路基板22Cを含む。第2電圧検出部16は、回路基板22C上に電気的に搭載される。電線保護装置10は電気ケーブル28を含む。第2ユニット22は、電気ケーブル28を介して第1ユニット20に電気的に接続される。第2電圧検出部16は、回路基板22C、電気ケーブル28、バス18B、および回路基板18Cを介してプロセッサ18Pおよびメモリ18Mに電気的に接続される。第2電圧検出部16から出力される第2検出電圧値VDは、回路基板22Cおよび電気ケーブル28を介して電力供給コントローラ18に入力される。
【0073】
車両2は、電線81、82、84、および85をさらに備える。電源装置4は、電線81を介して第1ユニット20に電気的に接続される。電線82は、第1ユニット20に設けられる。第1ユニット20は、電線8を介して第2ユニット22に電気的に接続される。電線84は、第2ユニット22に設けられる。第2ユニット22は、電線85を介して負荷6に電気的に接続される。
【0074】
電線81は、電気コネクタ81Aおよび81B、電圧ラインVL1、およびグランドラインGL1を含む。電気コネクタ81Aは、電源装置4に取り外し可能に接続される。電気コネクタ81Bは、電線保護装置10の第1ユニット20に取り外し可能に接続される。電気コネクタ81Aは、電圧ラインVL1およびグランドラインGL1を介して電気コネクタ81Bに接続される。
【0075】
電線82は第1ユニット20に設けられる。第1電圧検出点8Uは第1ユニット20に設けられる。電線82は、電気コネクタ82Aおよび82B、電圧ラインVL2、およびグランドラインGL2を含む。電気コネクタ82Aおよび82Bは、回路基板18Cに電気的に接続される。電圧ラインVL2およびグランドラインGL2は、回路基板18Cに設けられる。電気コネクタ82Aは、電圧ラインVL2およびグランドラインGL2を介して電気コネクタ82Bに接続される。電線81の電気コネクタ81Bは、電線82の電気コネクタ82Aに取り外し可能に接続される。電圧ラインVL2は、電気コネクタ81Bおよび82Aを介して電圧ラインVL1に電気的に接続される。グランドラインGL2は、電気コネクタ81Bおよび82Aを介してグランドラインGL1に電気的に接続される。電圧ラインVL2およびグランドラインGL2は、電源装置4から負荷6への電力供給に関係なく電源装置4から電力供給コントローラ18へ電力が供給されるように、回路基板18Cに電気的に接続される。したがって、電源装置4から電線保護装置10へ電力が供給されている間は、電力供給コントローラ18は電源装置4からの電力供給により動作する。
【0076】
電線8は、電気コネクタ83Aおよび83B、電圧ラインVL3、およびグランドラインGL3を含む。電気コネクタ83Aは、電圧ラインVL3およびグランドラインGL3を介して電気コネクタ83Bに接続される。電気コネクタ83Aは、電線保護装置10の第1ユニット20に取り外し可能に接続される。電線8の電気コネクタ83Aは、電線82の電気コネクタ82Bに取り外し可能に接続される。電圧ラインVL3は、電気コネクタ82Bおよび83Aを介して電圧ラインVL2に電気的に接続される。グランドラインGL3は、電気コネクタ82Bおよび83Aを介してグランドラインGL2に電気的に接続される。電気コネクタ83Bは、電線保護装置10の第2ユニット22に取り外し可能に接続される。
【0077】
電線84は第2ユニット22に設けられる。第2電圧検出点8Dは電線84に設けられる。電線84は、電気コネクタ84Aおよび84B、電圧ラインVL4、およびグランドラインGL4を含む。電気コネクタ84Aおよび84Bは、回路基板18Cに電気的に接続される。電圧ラインVL4およびグランドラインGL4は、回路基板18Cに設けられる。電気コネクタ84Aは、電圧ラインVL4およびグランドラインGL4を介して電気コネクタ84Bに接続される。電線8の電気コネクタ83Bは、電線84の電気コネクタ84Aに取り外し可能に接続される。電圧ラインVL4は、電気コネクタ83Bおよび84Aを介して電圧ラインVL3に電気的に接続される。グランドラインGL4は、電気コネクタ83Bおよび84Aを介してグランドラインGL3に電気的に接続される。
【0078】
電線85は、電気コネクタ85Aおよび85B、電圧ラインVL5、およびグランドラインGL5を含む。電気コネクタ85Aは、電圧ラインVL5およびグランドラインGL5を介して電気コネクタ85Bに接続される。電気コネクタ85Aは、電線保護装置10の第1ユニット20に取り外し可能に接続される。電線85の電気コネクタ85Aは、電線84の電気コネクタ84Bに取り外し可能に接続される。電圧ラインVL5は、電気コネクタ84Bおよび85Aを介して電圧ラインVL4に電気的に接続される。グランドラインGL5は、電気コネクタ84Bおよび85Aを介してグランドラインGL4に電気的に接続される。電気コネクタ85Bは、負荷6に取り外し可能に接続される。
【0079】
スイッチ回路24のFET24Fは、電圧ラインVL2上に配置される。電流検出部12は、電圧ラインVL2を流れる電流の電流値を検出電流値Aとして検出する。第1電圧検出部14は、電圧ラインVL2およびグランドラインGL2間に印可される電圧値を第1検出電圧値VUとして検出する。第2電圧検出部16は、電圧ラインVL4およびグランドラインGL4間に印可される電圧値を第2検出電圧値VDとして検出する。
【0080】
第1電圧検出部14は、電源装置4と負荷6との間に設けられる電圧ラインVL2上に配置される第1電圧検出点8Uと、電源装置4と負荷6との間に設けられるグランドラインGL2上に配置され第1検出電圧値VUの基準となる第1基準点RP1と、に接続される。第2電圧検出部16は、電圧ラインVL4上に配置される第2電圧検出点8Dと、グランドラインGL4上に配置され第2検出電圧値VDの基準となる第2基準点RP2と、に接続される。本実施形態では、第2基準点RP2は、グランドライン上において第1基準点RP1の位置と異なる位置に設けられる。第1基準点RP1の位置は、第2基準点RP2の位置から離れている。しかし、図3に示すように、第2基準点RP2は、第1電圧検出部14と第1基準点RP1とを接続するライン上に設けられてもよい。図3に示す変形例では、第2基準点RP2は、第1基準点RP1の位置と同じ位置に設けられる。しかし、第2基準点RP2は、第1電圧検出部14と第1基準点RP1とを接続するライン上において、第1基準点RP1の位置と異なる位置に設けられてもよい。また、図4に示すように、第2基準点RP2がグランドライン上において第1基準点RP1の位置と異なる位置に設けられる場合に、第2電圧検出部16は、第1電圧検出部14と第1基準点RP1とを接続するラインに接続されてもよい。この場合、第2電圧検出部16は、第1基準点RP1と第2基準点RP2との間の電位差に基づいて第2検出電圧値VDを補正する。さらに、本実施形態では、第1電圧検出部14および第2電圧検出部16が第1ユニット20および第2ユニット22にそれぞれ設けられているが、図5に示すように、第1電圧検出部14および第2電圧検出部16は一体のユニットとして構成されてもよい。
【0081】
図1および図6に示すように、電力供給コントローラ18は、検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDの関係を示す抵抗値算出式D2に基づいて算出抵抗値RCを算出する。電力供給コントローラ18のメモリ18Mは、抵抗値算出式D2を記憶する。メモリ18Mは、最新の算出抵抗値RCを記憶する。
【0082】
例えば、電流検出部12は検出電流値Aを常時または所定の周期で出力する。第1電圧検出部14は第1検出電圧値VUを常時または所定の周期で出力する。第2電圧検出部16は第2検出電圧値VDを常時または所定の周期で出力する。電力供給コントローラ18は、最新の検出電流値A、最新の第1検出電圧値VU、および最新の第2検出電圧値VDをメモリ18Mに記憶する。電力供給コントローラ18は、最新の検出電流値A、最新の第1検出電圧値VU、最新の第2検出電圧値VD、および抵抗値算出式D2に基づいて、所定の周期で算出抵抗値RCを算出する。電力供給コントローラ18は、抵抗温度特性D1および算出抵抗値RCに基づいて、電線8の温度を算出電線温度TCとして所定の周期で算出する。メモリ18Mは、最新の算出電線温度TCを記憶する。
【0083】
図7に示すように、電力供給コントローラ18は、算出電線温度TCが温度閾値T0以下の場合、電線8を介して行われる電力供給を許容する。具体的には、電力供給コントローラ18のプロセッサ18Pは、算出電線温度TCが温度閾値T0以下の場合、スイッチ回路24のゲートドライバ24Gに通電指令を送信する。ゲートドライバ24Gは、通電指令に基づいてスイッチ回路24のFET24Fへゲート電圧を供給する。ゲート電圧の供給により、FET24Fは電源装置4から負荷6への電力供給を許容する。これにより、電源装置4から負荷6へ電力が供給される。
【0084】
一方、電力供給コントローラ18は、算出電線温度TCが温度閾値T0を超える場合、電線8を介して行われる電力供給を遮断する。電力供給コントローラ18のプロセッサ18Pは、算出電線温度TCが温度閾値T0を超える場合、スイッチ回路24のゲートドライバ24Gに電力供給停止指令を送信する。ゲートドライバ24Gは、電力供給停止指令に基づいてスイッチ回路24のFET24Fへのゲート電圧の供給を停止する。ゲート電圧の供給停止により、スイッチ回路24のFET24Fは電源装置4から負荷6への電力供給を遮断する。
【0085】
図6に示すように、例えば、検出電流値A、第1検出電圧値VU、第2検出電圧値VD、および抵抗値Rの関係は、以下の数式(1)で表される。
【0086】
ΔV=VU-VD=A×R (1)
しかし、抵抗値Rを一定とした場合、以下の数式(2)のように、検出電流値Aがゼロのときに電圧誤差ΔVE1が生じてしまう場合がある。
【0087】
ΔV=VU-VD=A×R+ΔVE1 (2)
数式(2)を式変形すると、以下の数式(3)が得られる。
【0088】
R=(ΔV-ΔVE1)/A (3)
数式(2)および(3)を抵抗値算出式D2とする。
【0089】
電力供給コントローラ18は、電線8を介して行われる電力供給が遮断されている状態において電圧検出部13から出力される第1検出電圧値VU0および第2検出電圧値VD0に基づいて抵抗値算出式D2の誤差を補正する。この場合、抵抗値算出式D2の検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDに、ゼロ、第1検出電圧値VU0、および第2検出電圧値VD0をそれぞれ代入することで、電圧誤差ΔVE1(=VU0-VD0)を算出できる。これにより、抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE1を補正できる。すなわち、電圧検出部13(本実施形態では、第1電圧検出部14および第2電圧検出部16)のゼロ点補正を行える。
【0090】
また、電力供給コントローラ18は、複数の異なる検出タイミングで電流検出部12から出力される複数の異なる検出電流値Aと、複数の異なる検出タイミングで電圧検出部13(本実施形態では、第1電圧検出部14)から出力される複数の異なる第1検出電圧値VUと、複数の異なる検出タイミングで電圧検出部13(本実施形態では、第2電圧検出部16)から出力される複数の異なる第2検出電圧値VDと、に基づいて、抵抗値算出式D2の誤差を補正する。
【0091】
例えば、電力供給コントローラ18は、複数の異なる検出タイミングで電流検出部12から出力される複数の異なる検出電流値A1およびA2と、複数の異なる第1検出電圧値VU1およびVU2と、複数の異なる第2検出電圧値VD1およびVD2と、に基づいて、抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE2を補正する。第1検出電圧値VU1および第2検出電圧値VD1の差分をΔV1とした場合、差分ΔV1、検出電流値A1、および抵抗値Rの関係は、以下の数式(4)で表される。
【0092】
R=(ΔV1―ΔVE2)/A1 (4)
第1検出電圧値VU2および第2検出電圧値VD2の差分をΔV2とした場合、差分ΔV2、検出電流値A2、および抵抗値Rの関係は、以下の数式(5)で表される。
【0093】
R=(ΔV2―ΔVE2)/A2 (5)
数式(4)および(5)より数式(2)の電圧誤差ΔVE2は以下の数式(6)で表される。
【0094】
ΔVE2=(ΔV2×A1-ΔV1×A2)/(A1-A2) (6)
数式(6)で表される電圧誤差ΔVE2を用いることで、数式(2)で表される抵抗値算出式D2の誤差を補正できる。すなわち、電力供給コントローラ18は、複数の異なる検出電流値A1およびA2、複数の異なる第1検出電圧値VU1およびVU2、複数の異なる第2検出電圧値VD1およびVD2に基づいて、抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE2を補正することができる。
【0095】
しかし、上記の誤差補正は、抵抗値Rが一定であることが前提であるが、電線8の温度変化に応じて電線8の抵抗値算出式D2における抵抗値Rが変化する。
【0096】
そこで、電力供給コントローラ18は、電線8の温度が比較的低いと想定される期間に、電圧誤差ΔVE2の補正を行う。電線8の温度が比較的低いと想定される期間として、例えば、検出電流値Aが比較的低い期間が考えられる。
【0097】
例えば、電力供給コントローラ18は、検出電流値Aが基準電流値A0以下である第1判定期間P1において複数の異なる検出タイミングで電流検出部12から出力される複数の異なる検出電流値Aと、第1判定期間P1において複数の異なる検出タイミングで電圧検出部13(本実施形態では、第1電圧検出部14)から出力される複数の異なる第1検出電圧値VUと、第1判定期間P1において複数の異なる検出タイミングで電圧検出部13(本実施形態では、第2電圧検出部16)から出力される複数の異なる第2検出電圧値VDと、に基づいて、抵抗値算出式D2の誤差を補正する。
【0098】
また、電線8の温度が比較的低いと想定される期間として、例えば、車両2の起動直後(例えば、車両2の起動から所定の時間が経過するまでの期間)が考えられる。ここで、車両2の起動とは、例えば、ユーザの起動操作部2A(例えば、図1参照)への操作に応じて車両2の駆動システムが起動することを含む。車両2の駆動システムの起動の例は、車両2のシステムがオフの状態から車両2が走行可能な状態に切り替わることを含む。より詳細には、車両2の駆動システムの起動の例は、車両2のエンジンの始動、および、車両2のシステムがオフの状態から車両駆動モータへの電力供給が開始可能な状態に切り替わることを含む。
【0099】
図8に示すように、電力供給コントローラ18は、検出電流値Aが基準電流値A0以下である第1判定期間P1および車両2の起動から所定の時間が経過するまでの第2判定期間P2において複数の異なる検出タイミングで電流検出部12から出力される複数の異なる検出電流値Aと、第1判定期間P1および第2判定期間P2において複数の異なる検出タイミングで電圧検出部13(本実施形態では、第1電圧検出部14)から出力される複数の異なる第1検出電圧値VUと、第1判定期間P1および第2判定期間P2において複数の異なる検出タイミングで電圧検出部13(本実施形態では、第2電圧検出部16)から出力される複数の異なる第2検出電圧値VDと、に基づいて、抵抗値算出式D2の誤差を補正する。
【0100】
ここで、第2判定期間P2は、電流検出部12が突入電流値を検出する突入電流期間P21と、突入電流期間P21の後に電流検出部12が定常電流値を検出する定常電流期間P22と、を含む。突入電流値は定常電流値と異なる。例えば、突入電流値はピークを有しており、突入電流値の最大値は定常電流値の最大値よりも高い。突入電流値および定常電流値の差分は比較的大きいので、突入電流値に対応する突入電圧値と定常電流値に対応する定常電圧値との差分も比較的大きくなる。突入電流値および定常電流値の差分が大きいほど電圧誤差ΔVE2の補正の精度が高まることが期待できる。
【0101】
したがって、電力供給コントローラ18は、突入電流期間P21および定常電流期間P22それぞれにおける検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDを用いて、抵抗値算出式D2の誤差を補正する。具体的には、複数の異なる検出電流値Aは、突入電流値(例えば、A1)および定常電流値(例えば、A2)を含む。複数の異なる第1検出電圧値VUは、突入電流値A1および定常電流値A2にそれぞれ対応する第1突入電圧値(例えば、VU1)および第1定常電圧値(例えば、VD1)を含む。複数の異なる第2検出電圧値VDは、突入電流値A1および定常電流値A2にそれぞれ対応する第2突入電圧値(例えば、VU2)および第2定常電圧値(例えば、VD2)を含む。電力供給コントローラ18は、突入電流値A1、定常電流値A2、第1突入電圧値VU1、第1定常電圧値VD1、第2突入電圧値VU2、および第2定常電圧値VD2に基づいて、抵抗値算出式D2の誤差を補正する。この場合、抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE2の補正には、前述の数式(5)が用いられる。
【0102】
例えば、電力供給コントローラ18は、車両2の起動から第2判定期間P2が経過するまでの間、検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDを監視する。電力供給コントローラ18は、検出電流値Aの最大値A1、検出電流値Aの最大値A1に対応する第1検出電圧値VU1、および検出電流値Aの最大値A1に対応する第2検出電圧値VD1をメモリ18Mに記憶する。検出電流値Aの最大値A1は、通常、突入電流期間P21において検出される。
【0103】
また、検出電流値Aの最大値の検出後、電力供給コントローラ18は、検出電流値Aの最小値A2、検出電流値Aの最小値A2に対応する第1検出電圧値VU2、および検出電流値Aの最小値A2に対応する第2検出電圧値VD2をメモリ18Mに記憶する。検出電流値Aの最小値A2は、通常、定常電流期間P22において検出される。
【0104】
第2判定期間P2の経過後、電力供給コントローラ18は、数式(5)を用いて抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE2を算出する。こうして、電力供給コントローラ18は、車両2の起動直後に、抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE2の補正を行う。
【0105】
また、電線8の抵抗値算出式D2における抵抗値Rは、環境温度の影響を受ける場合もある。したがって、図6および図9に示すように、電力供給コントローラ18は、複数の異なる検出電流値A、複数の異なる第1検出電圧値VU、複数の異なる第2検出電圧値VD、および検出環境温度TEに基づいて、抵抗値算出式D2の誤差を補正する。具体的には、電力供給コントローラ18は、複数の異なる検出電流値A、複数の異なる第1検出電圧値VU、複数の異なる第2検出電圧値VD、および第2判定期間P2において温度センサ26から出力される検出環境温度TEに基づいて、抵抗値算出式D2の誤差を補正する。
【0106】
例えば、電力供給コントローラ18は、複数の抵抗値算出式D2をメモリ18Mに記憶する。複数の抵抗値算出式D2は、検出環境温度TE1に対応する抵抗値算出式D21と、検出環境温度TE2に対応する抵抗値算出式D22と、を含む。電力供給コントローラ18は、抵抗値算出式D21およびD22をそれぞれ検出環境温度TEと関連付けてメモリ18Mに記憶する。検出環境温度TE1は、基準環境温度TE0よりも低い。検出環境温度TE2は、基準環境温度TE0以上である。しかし、複数の抵抗値算出式D2は、抵抗値算出式D21およびD22に限定されない。電力供給コントローラ18は、1つの抵抗値算出式D2をメモリ18Mに記憶してもよいし、3つ以上の抵抗値算出式D2をメモリ18Mに記憶してもよい。
【0107】
図6に示すように、検出環境温度TE1に対応する抵抗値算出式D21の抵抗値RをR1とすると、以下の数式(6)を抵抗値算出式D21として記憶する。
【0108】
ΔV=A×R1+ΔVE2 (6)
図9に示すように、検出環境温度TE2に対応する抵抗値算出式D22の抵抗値RをR2とすると、以下の数式(7)を抵抗値算出式D22として記憶する。
【0109】
ΔV=A×R2+ΔVE2 (7)
図6および図9に示すように、前述の電圧誤差ΔVE2の補正は、検出環境温度TE1の場合は抵抗値算出式D21に対して実行され、検出環境温度TE2の場合は抵抗値算出式D22に対して実行される。例えば、車両2の起動後、温度センサ26は環境温度の検出を開始する。電力供給コントローラ18は、温度センサ26から出力される検出環境温度TEに対応する抵抗値算出式D2を選択する。例えば、電力供給コントローラ18は、所定の周期で検出環境温度TEを基準環境温度TE0と比較し、比較結果に基づいて検出環境温度TEに対応する抵抗値算出式D2として抵抗値算出式D21およびD22の一方を選択する。なお、抵抗値算出式D2の数は、抵抗値算出式D21およびD22の2つに限定されない。
【0110】
図10および図11を参照しながら、電線保護装置10の動作について説明する。
【0111】
図10に示すように、車両2の起動後、電線保護装置10への電力供給が開始される(ステップS1およびS2)。このとき、負荷6への電力供給は電線保護装置10により遮断されている。電線保護装置10において、電流値A、電圧値VU、電圧値VD、および環境温度TEの検出が電流検出部12、電圧検出部13(本実施形態では、第1電圧検出部14および第2電圧検出部16)、および温度センサ26により開始される(ステップS3)。
【0112】
電流検出部12、第1電圧検出部14、第2電圧検出部16、および温度センサ26から出力される検出電流値A、第1検出電圧値VU、第2検出電圧値VD、および検出環境温度TEは、所定の周期で電力供給コントローラ18に入力される。同じタイミングで電力供給コントローラ18に入力される検出電流値A、第1検出電圧値VU、第2検出電圧値VD、および検出環境温度TEは、互いに関連付けられて電力供給コントローラ18のメモリ18Mに記憶される。最新の検出電流値A、最新の第1検出電圧値VU、最新の第2検出電圧値VD、および最新の検出環境温度TEは、電力供給コントローラ18のメモリ18Mに互いに関連付けられて記憶される。
【0113】
負荷6への電力供給が開始される前に、抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE1が第1検出電圧値VUおよび第2検出電圧値VDに基づいて電力供給コントローラ18により補正される(ステップS5)。本実施形態では、複数の抵抗値算出式D2(抵抗値算出式D21およびD22)それぞれの電圧誤差ΔVE1が第1検出電圧値VUおよび第2検出電圧値VDに基づいて電力供給コントローラ18により補正される。
【0114】
抵抗値算出式D2の誤差補正後、電力供給コントローラ18のスイッチ回路24により電圧ラインVL4が接続され、負荷6への電力供給が開始される(ステップS5)。負荷6への電力供給の開始後、突入電流期間P21において突入電流値の最大値が電力供給コントローラ18により判定される(ステップS6)。突入電流値の最大値と同じタイミングで電力供給コントローラ18に入力された第1検出電圧値VUが、突入電流値の最大値に対応する第1検出電圧値VUとして電力供給コントローラ18により選択される(ステップS7)。同様に、突入電流値の最大値と同じタイミングで電力供給コントローラ18に入力された第2検出電圧値VDが、突入電流値の最大値に対応する第2検出電圧値VDとして電力供給コントローラ18により選択される(ステップS8)。突入電流値の最大値、突入電流値の最大値に対応する第1検出電圧値VU、突入電流値の最大値に対応する第2検出電圧値VDは、電力供給コントローラ18のメモリ18Mに記憶される。
【0115】
突入電流期間P21の経過後、定常電流期間P22において定常電流値の最小値が電力供給コントローラ18により判定される(ステップS9)。定常電流値の最小値と同じタイミングで電力供給コントローラ18に入力された第1検出電圧値VUが、定常電流値の最小値に対応する第1検出電圧値VUとして電力供給コントローラ18により選択される(ステップS10)。同様に、定常電流値の最小値と同じタイミングで電力供給コントローラ18に入力された第2検出電圧値VDが、定常電流値の最小値に対応する第2検出電圧値VDとして電力供給コントローラ18により選択される(ステップS11)。定常電流値の最小値、定常電流値の最小値に対応する第1検出電圧値VU、定常電流値の最小値に対応する第2検出電圧値VDは、電力供給コントローラ18のメモリ18Mに記憶される。
【0116】
図11に示すように、検出環境温度TEに基づいて、検出環境温度TEに対応する抵抗値算出式D2が複数の抵抗値算出式D2(本実施形態では、抵抗値算出式D21およびD22)から電力供給コントローラ18により選択される(ステップS12)。検出電流値Aが基準電流値A0以下であるか否かが電力供給コントローラ18により判定される(ステップS13)。検出電流値Aが基準電流値A0以下である場合、検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDに基づいて、抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE2が電力供給コントローラ18により補正される(ステップS13およびS14)。一方、検出電流値Aが基準電流値A0を超える場合、抵抗値算出式D2の電圧誤差ΔVE2は電力供給コントローラ18により補正されない(ステップS13)。
【0117】
抵抗値算出式D2、検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDに基づいて電力供給コントローラ18により抵抗値RCが算出される(ステップS15)。算出抵抗値RCおよび抵抗温度特性D1に基づいて電力供給コントローラ18により電線8の温度TCが算出される(ステップS16)。算出電線温度TCが温度閾値T0を超える場合、負荷6への電力供給が遮断される(ステップS17)。算出電線温度TCが温度閾値T0以下の場合、負荷6への電力供給が遮断されることなく、処理がステップS12に戻る。算出電線温度TCが温度閾値T0を超えるまで、あるいは、車両2がOFFになるまで、ステップS12~S17が繰り返される。
【0118】
このように、電線保護装置10では、電力供給コントローラ18が、検出電流値A、第1検出電圧値VU、および第2検出電圧値VDに基づいて電線8の抵抗値を算出抵抗値RCとして算出し、算出抵抗値RCに基づいて電線8を介して行われる電力供給を制限する。したがって、電線8の状態をより正確に把握することができ、より適切に電線8を過熱から保護できる。
【0119】
なお、本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0120】
本願において、「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在していることを暗に意味しているわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在していることを暗に意味しているわけではない。
【0121】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0122】
また、本開示における「AおよびBのうち少なくとも1つ」という表現は、例えば、(1)Aのみ、(2)Bのみ、および(3)AおよびBの両方、のいずれも包含している。「A、BおよびCのうち少なくとも1つ」という表現は、例えば、(1)Aのみ、(2)Bのみ、(3)Cのみ、(4)AおよびB、(5)BおよびC、(6)AおよびC、(7)A、BおよびCの全て、のいずれも包含している。本開示では、「AおよびBのうち少なくとも1つ」という表現は、「Aのうち少なくとも1つおよびBのうち少なくとも1つ」とは解釈されない。
【0123】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
【符号の説明】
【0124】
2 :車両
4 :電源装置
6 :負荷
8 :電線
8U :第1電圧検出点
8D :第2電圧検出点
10 :電線保護装置
12 :電流検出部
13 :電圧検出部
14 :第1電圧検出部
16 :第2電圧検出部
18 :電力供給コントローラ
20 :第1ユニット
22 :第2ユニット
26 :温度センサ
A、A1、A2 :検出電流値
A0 :基準電流値
D1 :抵抗温度特性
D2、D21、D22 :抵抗値算出式
P1 :第1判定期間
P2 :第2判定期間
P21 :突入電流期間
P22 :定常電流期間
RC :算出抵抗値
RP1 :第1基準点
RP2 :第2基準点
T0 :温度閾値
TC :算出電線温度
TE、TE1、TE2:検出環境温度
TE0 :基準環境温度
VU、VU1、VU2:第1検出電圧値
VD、VD1、VD2:第2検出電圧値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11