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特開2022-148939有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物の製造方法、及び当該製造方法によって得られる液状組成物
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  • 特開-有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物の製造方法、及び当該製造方法によって得られる液状組成物 図1
  • 特開-有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物の製造方法、及び当該製造方法によって得られる液状組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148939
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物の製造方法、及び当該製造方法によって得られる液状組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20220929BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08G61/12
C08L65/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050822
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 定快
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4J002CE001
4J002HA01
4J032BA03
4J032BB01
4J032CG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】工業的に実現可能な有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)

(式中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Mは、[NH(R)(Rで表されるアンモニウムイオンなどを表す。RおよびRは、置換/非置換のアルキル基を表す。mは1~6の整数を表す。)で表される構造単位を含むポリチオフェンの固体と、高極性有機溶媒と、水を混合することを特徴とする導電性高分子液状組成物の製造方法を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)及び(2)
【化1】
【化2】
{上記一般式(1)及び(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Mは、[NH(R)(Rで表されるアンモニウムイオン、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは、炭素数7~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基を表す。Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。mは1~6の整数を表す。}
で表される構造単位を含むポリチオフェンの固体と、高極性有機溶媒と、水を混合することを特徴とする導電性高分子液状組成物の製造方法。
【請求項2】
得られる導電性高分子液状組成物中の水の含有量が3~40重量%となるように水を混合することを特徴とする、請求項1に記載の導電性高分子液状組成物の製造方法。
【請求項3】
前記のmが、2又は3である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記のRが、メチル基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記の高極性有機溶媒が、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、グリコール溶媒、グリコールエステル溶媒、グリコールエーテル溶媒、グライム溶媒、アミド溶媒、及び含硫黄溶媒からなる群より選ばれる1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
少なくとも下記一般式(1)及び(2)
【化3】
【化4】
{上記一般式(1)及び(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Mは、[NH(R)(Rで表されるアンモニウムイオン、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは、炭素数7~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基を表す。Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。mは1~6の整数を表す。}
で表される構造単位を含むポリチオフェンと、高極性有機溶媒と、水を含む導電性高分子液状組成物であって、前記のポリチオフェンの含有量が0.1~25重量%であり、前記の高極性有機溶媒の含有量が50~97重量%であり、前記の水の含有量が3~40重量%であることを特徴とする導電性高分子液状組成物。
【請求項7】
前記のmが、2又は3である、請求項6に記載の導電性高分子液状組成物。
【請求項8】
前記のRが、メチル基である、請求項6に記載の導電性高分子液状組成物。
【請求項9】
前記の高極性有機溶媒が、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、グリコール溶媒、グリコールエステル溶媒、グリコールエーテル溶媒、グライム溶媒、アミド溶媒、及び含硫黄溶媒からなる群より選ばれる1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒である、請求項6に記載の導電性高分子液状組成物。
【請求項10】
前記の水の含有量が5~30重量%であることを特徴とする、請求項6に記載の導電性高分子液状組成物。
【請求項11】
前記の液状組成物が、前記のポリチオフェンと、前記の高極性有機溶媒と、前記の水からなる液状組成物である、請求項6に記載の導電性高分子液状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物の製造方法、及び当該製造方法によって得られる液状組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリチオフェンは、高い導電性を有することから固体電解コンデンサ、帯電防止、太陽電池用正孔注入剤、透明電極等の広い分野で検討されている。ポリチオフェン系導電性材料としては、一般的にポリスチレンスルホン酸、又はポリビニルスルホン酸等の水溶性酸性ポリマーを外部トーパントとした水分散体のものと、外部ドーパントを必要としない自己ドープ型導電性ポリマー含有水溶液に分類される。前者の代表例としては、ポリスチレンスルホン酸(PSS)の存在下に、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を重合させた導電性ポリマーであるPEDOT:PSSが報告されており、後者の例では、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ポリマーのような直鎖又は分岐のアルキレンスルホン酸が置換したポリチオフェン(特許文献1)が報告されており、いずれも数百S/cm以上の導電率を有している。
【0003】
一方で、高極性溶媒に分散又は溶解する高導電性ポリチオフェンに関する報告例は少ない。例えば、Luebbenらは、トルエンスルホナト基又は過塩素酸塩を外部ドーパントとするPEDOTおよびポリエチレングリコールのブロック共重合体を報告している(非特許文献1)。このブロック共重合体は炭酸プロピレンおよびニトロメタンなどの極性の有機溶媒に分散可能であり、その導電率は10-4S/cm~1S/cmである。非特許文献2には、自己ドープ型導電性ポリマーであるポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸)(PEDOT-S)の第4級アンモニウム塩化合物を報告している。この化合物はメタノールとクロロホルムの混合液に分散可能であり、その導電率は0.4S/cm~0.8S/cmである。
【0004】
有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物については、特許文献2にも報告されているが、その製造方法については、長時間の超音波照射を行うという点で、工業的には実施困難なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2014/007299パンフレット
【特許文献2】特開2019-210356号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Polymeric Materials:Science & Engineering、2004年、第91巻、979頁
【非特許文献2】Scientific Reports、2015年、第5巻、11242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、工業的に実現可能な有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下に示す製造方法が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]に存する。
[1] 少なくとも下記一般式(1)及び(2)
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
{上記一般式(1)及び(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Mは、[NH(R)(Rで表されるアンモニウムイオン、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは、炭素数7~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基を表す。Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。mは1~6の整数を表す。}
で表される構造単位を含むポリチオフェンの固体と、高極性有機溶媒と、水を混合することを特徴とする導電性高分子液状組成物の製造方法。
[2]得られる導電性高分子液状組成物中の水の含有量が3~40重量%となるように水を混合することを特徴とする、[1]に記載の導電性高分子液状組成物の製造方法。
[3]前記のmが、2又は3である、[1]に記載の製造方法。
[4]前記のRが、メチル基である、[1]に記載の製造方法。
[5]前記の高極性有機溶媒が、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、グリコール溶媒、グリコールエステル溶媒、グリコールエーテル溶媒、グライム溶媒、アミド溶媒、及び含硫黄溶媒からなる群より選ばれる1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒である、[1]に記載の製造方法。
[6] 少なくとも下記一般式(1)及び(2)
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
{上記一般式(1)及び(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Mは、[NH(R)(Rで表されるアンモニウムイオン、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは、炭素数7~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基を表す。Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。mは1~6の整数を表す。}
で表される構造単位を含むポリチオフェンと、高極性有機溶媒と、水を含む導電性高分子液状組成物であって、前記のポリチオフェンの含有量が0.1~25重量%であり、前記の高極性有機溶媒の含有量が50~97重量%であり、前記の水の含有量が3~40重量%であることを特徴とする導電性高分子液状組成物。
[7]前記のmが、2又は3である、[6]に記載の導電性高分子液状組成物。
[8]前記のRが、メチル基である、[6]に記載の導電性高分子液状組成物。
[9]前記の高極性有機溶媒が、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、グリコール溶媒、グリコールエステル溶媒、グリコールエーテル溶媒、グライム溶媒、アミド溶媒、及び含硫黄溶媒からなる群より選ばれる1種の溶媒又は2種以上の混合溶媒である、[6]に記載の導電性高分子液状組成物。
[10]前記の水の含有量が5~30重量%であることを特徴とする、[6]に記載の導電性高分子液状組成物。
[11]前記の液状組成物が、前記のポリチオフェンと、前記の高極性有機溶媒と、前記の水からなる液状組成物である、[6]に記載の導電性高分子液状組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によって、従来工業的に製造することが困難であった有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物を、工業的に製造することが可能となった。
【0017】
また、少量の水を含有することを特徴とする本発明の有機溶媒型ポリチオフェン系導電性高分子液状組成物は、水を全く含まない液状組成物に比べて、高濃度に調製することが可能である。そのため、導電性や操作性を損なうことなく、成膜性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明は、上記の通り、少なくとも前記の一般式(1)及び(2)で表される構造単位を含むポリチオフェンの固体と、高極性有機溶媒と、水を混合することを特徴とする導電性高分子液状組成物の製造方法、及び当該製造方法によって得られる導電性高分子液状組成物に係る。
【0020】
本発明のポリチオフェンは、上記一般式(1)及び(2)で表される構造単位で表される構造単位を含有するポリチオフェンである。
【0021】
上記一般式(2)で表される構造単位は、上記一般式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表し、そのドーピング状態は、上記一般式(1)で表される構造単位中のスルホ基又はスルホナート基がp型ドーパントとして作用することにより発現する。
【0022】
上記一般式(1)又は(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
【0023】
上記の炭素数1~6のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
上記のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等が挙げられる。
【0025】
これらのうち、置換基Rについては、成膜性の点で、水素原子、メチル基、エチル基、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であることが好ましく、水素原子、メチル基、又はフッ素原子であることがより好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0026】
は、[NH(R)(Rで表されるアンモニウムイオン、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンを表す。
【0027】
前記のアンモニウムイオンとしては、[N(R)(R]で表されるアミン化合物にヒドロン(H)が付加してカチオン種になったもの(共役酸)を示し、当該アミン化合物についてはスルホン酸基と反応して共役酸を形成し、前記のアンモニウムイオンとなる。
【0028】
また、前記の第4級アンモニウムカチオン([N(R)(R)は、[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオン化合物からMで表されるアニオンが脱離してカチオン種になったもの(共役酸)を示す。前記の第4級アンモニウムカチオン化合物は、スルホン酸基と反応してMで表されるアニオンが脱離して第4級アンモニウムカチオンとなる。
【0029】
前記の置換基Rは、炭素数7~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基を表す。
【0030】
前記の炭素数7~20のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、メチルヘキシル基、エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、エチルオクチル基、ブチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、オクチルノニル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、又はオクチルドデカン基等が挙げられる。
【0031】
前記の置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、又はヒドロキシ基を有する総炭素数7~20のアルキル基が挙げられ、具体的には、8-ヒドロキシオクチル基、又は9-アミノノニル基等が例示される。
【0032】
これらのうち、置換基Rとしては、入手容易性の観点から、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、メチルヘプチル基、n-ノニル基、n-デシル基、又はn-ドデシル基が好ましい。
【0033】
前記の置換基Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0034】
前記の炭素数1~20のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、メチルヘプチル基、エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、エチルオクチル基、ブチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、オクチルノニル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、オクチルドデカン基等が挙げられる。
【0035】
前記の置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、又はヒドロキシ基を有する総炭素数7~20のアルキル基が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、2-ヒドロキシエチル基、8-ヒドロキシオクチル基、又は9-アミノノニル基等が例示される。
【0036】
これらのうち、置換基Rとしては、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、メチルヘプチル基、n-ノニル基、n-デシル基、又はn-ドデシル基が好ましい。
【0037】
前記の[N(R)(R]で表されるアミン化合物としては、特に限定するものではないが、n-ヘプチルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、n-(2-エチルヘキシル)アミン、ジ-n-(2-エチルヘキシル)アミン、トリ-n-(2-エチルヘキシル)アミン、トリ-n-オクチルアミン、N-メチル-ジ-n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、ジ-n-ノニルアミン、トリ-n-ノニルアミン、n-デシルアミン、ジ-n-デシルアミン、トリ-n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、ジ-n-ドデシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ジ-n-ヘキサデシルアミン、トリ-n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、ジ-n-オクタデシルアミン、トリ-n-オクタデシルアミン、n-イコシルアミン、ジ-n-イコシルアミン、トリ-n-イコシルアミン、N,N-ジメチル-n-ヘプチルアミン、N,N-ジメチル-n-オクチルアミン、N,N-ジメチル-n-ノニルアミン、N,N-ジメチル-n-デシルアミン、N,N-ジメチル-n-ドデシルアミン、N,N-ジメチル-n-ヘキサデシルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジメチル-n-イコシルアミン、N,N-ジエチル-n-ヘプチルアミン、N,N-ジエチル-n-オクチルアミン、N,N-ジエチル-n-ノニルアミン、N,N-ジエチル-n-デシルアミン、N,N-ジエチル-n-ドデシルアミン、N,N-ジエチル-n-ヘキサデシルアミン、N,N-ジエチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジエチル-n-イコシルアミン、N-メチルヘキシルアミン、2-オクチルアミン、N,N-ジメチル-2-エチルヘキサン-1-アミン、N,N-ジイソプロピル-2-エチルヘキサン-1-アミン、6-メチル-1-ヘプチルアミン、ジ(6-メチル-1-ヘプチル)アミン、トリス(6-メチル-1-ヘプチル)アミン、2-エチルヘキシルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、メチルオクチルアミン、メチルノニルアミン、メチルドデシルアミン、メチルヘキサデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、エチルヘプチルアミン、エチルオクチルアミン、エチルノニルアミン、エチルドデシルアミン、エチルヘキサデシルアミン、エチルオクタデシルアミン、7-ヒドロキシヘプチルアミン、8-ヒドロキシオクチルアミン、9-ヒドロキシノニルアミン、10-ヒドロキシデシルアミン、12-ヒドロキシドデシルアミン、16-ヒドロキシヘキサデシルアミン、18-ヒドロキシオクタデシルアミン、20-ヒドロキシイコシルアミン、7-アミノヘプチルアミン、8-アミノオクチルアミン、9-アミノノニルアミン、10-アミノデシルアミン、12-アミノドデシルアミン、16-アミノヘキサデシルアミン、18-アミノオクタデシルアミン、又は20-アミノイコシルアミン等が挙げられる。
【0038】
前記の[NH(R)(Rで表されるアンモニウムイオンとしては、特に限定するものではないが、n-ヘプチルアンモニウム、ジ-n-ヘプチルアンモニウム、トリ-n-ヘプチルアンモニウム、n-オクチルアンモニウム、ジ-n-オクチルアンモニウム、n-(2-エチルヘキシル)アンモニウム、ジ-n-(2-エチルヘキシル)アンモニウム、トリ-n-(2-エチルヘキシル)アンモニウム、トリ-n-オクチルアンモニウム、N-メチル-ジ-n-オクチルアンモニウム、n-ノニルアンモニウム、ジ-n-ノニルアンモニウム、トリ-n-ノニルアンモニウム、n-デシルアンモニウム、ジ-n-デシルアンモニウム、トリ-n-デシルアンモニウム、n-ドデシルアンモニウム、ジ-n-ドデシルアンモニウム、トリ-n-ドデシルアンモニウム、n-ヘキサデシルアンモニウム、ジ-n-ヘキサデシルアンモニウム、トリ-n-ヘキサデシルアンモニウム、n-オクタデシルアンモニウム、ジ-n-オクタデシルアンモニウム、トリ-n-オクタデシルアンモニウム、n-イコシルアンモニウム、ジ-n-イコシルアンモニウム、トリ-n-イコシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-ヘプチルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-オクチルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-ノニルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-デシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-ドデシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-ヘキサデシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-イコシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-ヘプチルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-オクチルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-ノニルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-デシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-ドデシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-ヘキサデシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-オクタデシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-イコシルアンモニウム、N-メチルヘキシルアンモニウム、2-オクチルアンモニウム、N,N-ジメチル-2-エチルヘキサン-1-アンモニウム、N,N-ジイソプロピル-2-エチルヘキサン-1-アンモニウム、6-メチル-1-ヘプチルアンモニウム、ジ(6-メチル-1-ヘプチル)アンモニウム、トリス(6-メチル-1-ヘプチル)アンモニウム、2-エチルヘキシルアンモニウム、ジ(2-エチルヘキシル)アンモニウム、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウム、メチルオクチルアンモニウム、メチルノニルアンモニウム、メチルドデシルアンモニウム、メチルヘキサデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム、エチルヘプチルアンモニウム、エチルオクチルアンモニウム、エチルノニルアンモニウム、エチルドデシルアンモニウム、エチルヘキサデシルアンモニウム、エチルオクタデシルアンモニウム、7-ヒドロキシヘプチルアンモニウム、8-ヒドロキシオクチルアンモニウム、9-ヒドロキシノニルアンモニウム、10-ヒドロキシデシルアンモニウム、12-ヒドロキシドデシルアンモニウム、16-ヒドロキシヘキサデシルアンモニウム、18-ヒドロキシオクタデシルアンモニウム、20-ヒドロキシイコシルアンモニウム、7-アミノヘプチルアンモニウム、8-アミノオクチルアンモニウム、9-アミノノニルアンモニウム、10-アミノデシルアンモニウム、12-アミノドデシルアンモニウム、16-アミノヘキサデシルアンモニウム、18-アミノオクタデシルアンモニウム、又は20-アミノイコシルアンモニウム等が挙げられる。
【0039】
前記の[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンとしては、特に限定するものではないが、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、テトラノニルアンモニウムカチオン、テトラデシルアンモニウムカチオン、テトラドデシルアンモニウムカチオン、テトラヘキサデシルアンモニウムカチオン、テトラオクタデシルアンモニウムカチオン、テトライコシルアンモニウムカチオン、又はテトラエチルヘキシルアンモニウムカチオン等を挙げられる。
【0040】
前記の[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンについては、[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオン化合物と、上記一般式(1)及び(2)で表される構造単位で表される構造単位を含有するポリチオフェンを反応させることによって生成される。
【0041】
上記のMで表されるアニオンとしては、特に限定するものではないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、又はパラトルエンスルホン酸イオンなどを挙げることができる。
【0042】
前記の[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルプロピルアンモニウムクロリド、テトラノルマルブチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルヘキシルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラノルマルプロピルアンモニウムブロミド、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド、テトラノルマルヘキシルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラノルマルプロピルアンモニウムヨージド、テトラノルマルブチルアンモニウムヨージド、テトラノルマルヘキシルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラノルマルプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラノルマルブチルアンモニウムヒドロキシド、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(1)又は(2)中、mは、1~6の整数を表し、好ましくは1~4の整数であり、より好ましくは2~3である。
【0044】
本発明のポリチオフェンの原料となるポリマーは、少なくとも下記一般式(3)及び(4)で表される構造単位を含むポリチオフェンと、[N(R)(R]で表されるアミン化合物、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオン化合物とを反応させることによって製造することができる。また、その反応の後、必要に応じて、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、イオン交換樹脂処理等の操作を組み合わせることが好ましい。
【0045】
【化5】
【0046】
【化6】
【0047】
[上記一般式(3)及び(4)中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。mは1~6の整数を表す。Mは、水素イオン、又はアルカリ金属イオンを表す。]
上記一般式(3)中、Mは、水素イオン、又はアルカリ金属イオンを表す。
【0048】
前記のアルカリ金属イオンとしては、例えば、Liイオン、Naイオン、又はKイオンが好ましい。
【0049】
上記一般式(3)又は(4)で表されるポリチオフェンとしては、特に限定するものではないが、具体的には、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ポリマー、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸カリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウムポリマー、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸アンモニウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウムポリマー、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸トリエチルアンモニウムポリマー、又は3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウムポリマー等が挙げられる。
【0050】
繰り返しになるが、本発明は、上記の通り、少なくとも前記の一般式(1)及び(2)で表される構造単位を含むポリチオフェンの固体と、高極性有機溶媒と、水を混合することを特徴とする導電性高分子液状組成物の製造方法に係る。
【0051】
前記のポリチオフェンについては、上記の通り固体であることを特徴とするが、当該固体の状態については、特に限定するものではなく、例えば、結晶状、粒状、塊状、粉末状、ゲル状、ペースト状、ガラス状、又はその他の固体状のいずれであってもよい。
【0052】
前記の高極性有機溶媒は、水との相溶性が高い溶媒を表し、室温における水への溶解性がほとんどない(溶解性1重量%未満)有機溶媒は包含されない。このような高極性有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、室温における水への溶解性が1重量%以上で尚且つRohrschneiderの極性パラメータが3.9以上の高極性有機溶媒が好ましい。
【0053】
前記の高極性有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、アルコール溶媒(例えばメタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等)、ケトン溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等)、エーテル溶媒(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1,4-ジオキサン等)、エステル溶媒(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等)、グリコール溶媒(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等)、グリコールエステル溶媒(エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等)、グリコールエーテル溶媒(メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グライム溶媒(モノグライム、ジグライム、トリグライム、エチルグライム、エチルジグライム、ブチルジグライム、テトラグライム等)、アミド溶媒(N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等)若しくは含硫黄溶媒(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)が挙げられる。
【0054】
これらの高極性有機溶媒は、単独で用いてもよく、あるいは2種類以上の高極性有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0055】
本発明の導電性高分子液状組成物の製造方法は、上記の通り、少なくとも前記の一般式(1)及び(2)で表される構造単位を含むポリチオフェンの固体と、高極性有機溶媒と、水を混合することを特徴とするが、当該製造方法において、前記のポリチオフェンの固体の添加量については、製造される組成物全体の0.1~25重量%であることが好ましく、組成物全体の0.1~15重量%であることがより好ましく、組成物全体の0.1~10重量%であることがより好ましい。
【0056】
また、本発明の製造方法において、前記の高極性有機溶媒の添加量については、製造される組成物全体の60~97重量%であることが好ましく、組成物全体の70~96重量%であることがより好ましく、組成物全体の80~95重量%であることがより好ましい。
【0057】
また、本発明の製造方法において、前記の水の添加量については、製造される組成物全体の3~40重量%であることが好ましく、組成物全体の4~30重量%であることがより好ましく、組成物全体の5~20重量%であることがより好ましい。
【0058】
本発明の導電性高分子液状組成物の製造方法は、上記の通り、少なくとも前記の一般式(1)及び(2)で表される構造単位を含むポリチオフェンの固体と、高極性有機溶媒と、水を混合することを特徴とするが、前記の混合の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、スターラーチップによる撹拌混合、攪拌羽根等による一般的な撹拌混合、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)による撹拌混合を挙げることができる。
【0059】
なお、当該混合については、適度に温調して行うこともでき、特に限定するものではないが、例えば、10~80℃の範囲で混合することができ、15~60℃の範囲が好ましく、20~50℃の範囲がより好ましい。
【0060】
また、当該混合については、酸素脱気した後に行うことが好ましく、当該酸素脱気の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、減圧処理や窒素バブリング等が挙げられる。
【0061】
当該撹拌の時間については、特に限定するものではないが、例えば、1分~12時間の範囲であることが好ましく、1分~6時間の範囲であることがより好ましい。
【0062】
このような混合操作を行うことによって、本願発明の、少なくとも上記一般式(1)及び(2)で表される構造単位を含むポリチオフェンと、高極性有機溶媒と、水を含む導電性高分子液状組成物であって、前記のポリチオフェンの含有量が0.1~25重量%であり、前記の高極性有機溶媒の含有量が50~97重量%であり、前記の水の含有量が3~40重量%であることを特徴とする導電性高分子液状組成物が得られる。
【0063】
本発明の導電性高分子液状組成物におけるポリチオフェン又は高極性有機溶媒の定義及び好ましい範囲については、上記の通りである。
【0064】
本発明の導電性高分子液状組成物において、ポリチオフェンの含有量は、組成物全体の0.1~25重量%であることを特徴とするが、成膜性に優れる点で、組成物全体の0.1~15重量%であることが好ましく、組成物全体の0.1~10重量%であることがより好ましい。
【0065】
本発明の導電性高分子液状組成物において、高極性有機溶媒の含有量は、組成物全体の50~97重量%であることを特徴とするが、成膜性に優れる点で、組成物全体の60~96重量%であることが好ましく、組成物全体の50~95重量%であることがより好ましい。
【0066】
本発明の導電性高分子液状組成物において、水の含有量は、組成物全体の3~40重量%であることを特徴とするが、成膜性に優れる点で、組成物全体の4~30重量%であることが好ましく、組成物全体の5~20重量%であることがより好ましい。
【0067】
本発明の液状組成物の中のポリチオフェンについては、動的光散乱法で測定すると約数nmから数百nmの粒子径(D50)を持つ微粒子で形成されている。かかる微粒子は可視光領域において透明であって、溶媒中に微粒子が溶解しているように見える。実際には、当該微粒子は溶媒中に溶解または分散しており、本願ではこの状態を「溶解又は分散」の状態と称している。
【0068】
本発明のポリチオフェン又は当該ポリチオフェンを含む液状組成物は、コンデンサ、タッチセンサー、帯電防止、有機薄膜太陽電池、有機EL、又は電極等の用途で期待できる。本発明のポリチオフェンを含む液状組成物については、用途に応じて、公知の界面活性剤、滑剤、及び/又はバインダー等の添加剤を含有していてもよい。
【0069】
前記の界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、高分子型非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はアセチレングリコール型界面活性剤等で例示される。より具体的には、高分子型非イオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンの共重合体等が挙げられる。ポリビニルピロリドンの平均分子量として、1千~200万であることが好ましく、より好ましくは1万~150万である。ポリビニルピロリドンの共重合体としては、特に限定するものではないが、親水性部と疎水性部をポリマー鎖中に併せ持つものが好ましく、例えば、ポリビニルピロリドンをポリビニルアルコールにグラフトしたコポリマーや、[ビニルピロリドン-酢酸ビニル]ブロック共重合体、[ビニルピロリドン-メチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン-ノルマルブチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン-アクリルアミド]共重合体などが例示できる。
【0070】
前記両性界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、又はラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
【0071】
前記フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0072】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
【0073】
フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤はレベリング剤として塗膜の平坦性を改善するのに有効である。
【0074】
前記の滑剤については、一般的な樹脂添加剤として用いられる滑剤(プラスチック用滑剤、樹脂用滑剤)のことを表し、当該滑剤については、プラスチックの成形加工において、プラスチックと成形加工機の摩擦およびプラスチック粒子間の摩擦を低減させる効果を有するものが挙げられる。当該滑剤としては、外部滑剤として働くものと、内部滑性に効果を発揮するものがあり、本発明においては、どちらか単独であってもよいし、両方を用いてもよい。としては、特に限定するものではないが、例えば、炭化水素系滑剤(パラフィンワックス、合成ポリエチレン、流動パラフィン)、脂肪酸系滑剤(ステアリン酸、ベヘニン酸、12ヒドロキシステアリン酸)、高級アルコール系滑剤(ステアリルアルコール)、脂肪酸アミド系滑剤(ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド)、エステル系滑剤(グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ブチルステアレート)等が挙げられる。
【0075】
前記のバインダー樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド、ニトロセルロース若しくはその他のセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレンスルホン酸樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、又はポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0076】
本発明の導電性高分子液状組成物については、例えば、支持体に塗布して塗膜を形成させ、これを乾燥させることによって、導電性高分子膜を製造することができ、当該製造方法によって導電性高分子膜で被覆された支持体を製造することができる(以下、その支持体と導電性高分子膜を合わせて「被覆物品」と称する。)
前記の支持体としては、本発明の液状組成物が塗布可能なものであれば特に限定するものではないが、例えば、高分子基材又は無機基材が挙げられる。高分子基材としては、特に限定するものではないが、例えば、樹脂、不織布、紙等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート等が挙げられる。不織布としては、例えば、天然繊維、又は合成繊維のいずれでもよい。紙としては一般的なセルロースを主成分とするものでよい。無機基材としては、特に限定するものではないが、例えば、ガラス、ガラス繊維製、セラミックス、酸化アルミニウム、又は酸化タンタル等が挙げられる。
【0077】
導電性高分子液状組成物の塗布方法としては、特に限定するものではないが、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、インクジェット法等が挙げられる。好ましくはスピンコート法である。
【0078】
塗膜の乾燥温度は、均一な導電性高分子膜が得られる温度及び基材の耐熱温度以下であれば特に限定するものではないが、室温~300℃の範囲であり、好ましくは室温~250℃の範囲であり、さらに好ましくは室温~200℃の範囲である。
【0079】
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】実施例1でポリチオフェン P1が溶解又は分散した状態を撮影した写真。
図2】参考例1でポリチオフェン P1が完全には溶解又は分散しなかった状態を撮影した写真。
【実施例0081】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[溶解・分散性評価]
下記の実施例などで製造した導電性高分子液状組成物について、さらに室温で10分間、回転子による撹拌をした後の沈降の有無で評価した。溶解又は分散とは、沈降物等が無い状態を、沈降とは、沈降物が存在している状態を、夫々意味する。
[表面抵抗率測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600。
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
[自己ドープ型導電性高分子の導電率測定]
本発明の導電性高分子液状組成物 2mlを50mm角の無アルカリガラス板にキャストし、ホットプレート上で200℃にて60分加熱して導電性高分子膜を得た。膜厚及び表面抵抗値から、以下の式に基づき算出した。
【0082】
導電率[S/cm]=10/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm])
実施例1
特開2019-210356に基づいて得られたポリチオフェン[前記一般式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=ジオクチルアンモニウム、m=2である。以下、P1と略す)]0.1gを、酢酸エチル(高極性有機溶媒) 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gに添加し、マグネチックスターラーを用いて20℃で30分撹拌したところ、ポリチオフェン P1は溶解又は分散し、導電性高分子液状組成物が得られた。得られた組成物中の前記ポリチオフェンの濃度は1.0重量%であった。
【0083】
尚、本実施例で得られた導電性高分子液状組成物の導電率は、326S/cmであった。
【0084】
実施例2~11
実施例1において、高極性有機溶媒の酢酸エチル 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gの代わりに、表1に記載した高極性有機溶媒 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gを用いた以外、実施例1と同じ条件にて混合を行った。
【0085】
いずれの場合も、ポリチオフェン P1は混合液に溶解又は分散し、本発明の導電性高分子液状組成物が得られた。各導電性高分子液状組成物の導電率測定結果を表1に示した。
【0086】
実施例12
実施例1において、ポリチオフェン P1の代わりに、ポリチオフェン P2[前記一般式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=トリオクチルアンモニウム、m=2である。)]を用いた以外、実施例1と同じ条件にて行った。
【0087】
ポリチオフェン P2は溶解又は分散し、本発明の導電性高分子液状組成物が得られた。得られた導電性高分子液状組成物の導電率測定結果を表1に示した。
【0088】
実施例13~15
実施例12において、高極性有機溶媒の酢酸エチル 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gの代わりに、表1に記載した高極性有機溶媒 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gを用いた以外、実施例12と同じ条件にて混合を行った。
【0089】
いずれの場合も、ポリチオフェン P2は混合液に溶解又は分散し、本発明の導電性高分子液状組成物が得られた。得られた導電性高分子液状組成物の導電率測定結果を表1に示した。
【0090】
実施例16
実施例1において、ポリチオフェン P1の代わりに、ポリチオフェン P3[前記一般式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=ジ(2-エチルヘキシル)アンモニウム、m=2である。)]を用いた以外、実施例1と同じ条件にて行った。
【0091】
ポリチオフェン P3は溶解又は分散し、本発明の導電性高分子液状組成物が得られた。得られた導電性高分子液状組成物の導電率測定結果を表1に示した。
【0092】
実施例17~19
実施例16において、高極性有機溶媒の酢酸エチル 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gの代わりに、表1に記載した高極性有機溶媒 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gを用いた以外、実施例16と同じ条件にて混合を行った。
【0093】
いずれの場合も、ポリチオフェン P3は混合液に溶解又は分散し、本発明の導電性高分子液状組成物が得られた。得られた導電性高分子液状組成物の導電率測定結果を表1に示した。
【0094】
実施例20
実施例1において、ポリチオフェン P1の代わりに、ポリチオフェン P4[前記一般式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=デシルアンモニウム、m=2である。)]を用いた以外、実施例1と同じ条件にて行った。
【0095】
ポリチオフェン P4は溶解又は分散し、本発明の導電性高分子液状組成物が得られた。得られた導電性高分子液状組成物の導電率測定結果を表1に示した。
【0096】
実施例21~23
実施例20において、高極性有機溶媒の酢酸エチル 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gの代わりに、表1に記載した高極性有機溶媒 90重量%と水 10重量%からなる混合液 9.9gを用いた以外、実施例20と同じ条件にて混合を行った。
【0097】
いずれの場合も、ポリチオフェン P4は混合液に溶解又は分散し、本発明の導電性高分子液状組成物が得られた。得られた導電性高分子液状組成物の導電率測定結果を表1に示した。
【0098】
参考例1
ポリチオフェン P1 0.1gを、酢酸エチル9.9gに添加し、20℃で30分撹拌したところ、ポリチオフェン P1が完全には溶解又は分散できず、溶液中にポリチオフェン P1が一部析出した。不溶物をろ過して得られた溶液組成物中のポリチオフェン濃度は、0.1重量%であった。
【0099】
【表1】
【0100】
上記の通り、本発明によれば、従来法では高濃度の導電性高分子溶液を得ることが困難であった有機溶媒を用いて、高濃度の有機溶媒系導電性高分子溶液を製造することが可能になる。このような本願発明の技術を用いることによって、高濃度の有機溶媒系導電性高分子組成物を提供することが可能になる。導電性高分子の濃度が高ければ高いほど一回の成膜操作においてより膜厚の厚い導電性高分子膜が得られるようになる。このため、本発明の組成物を用いることによって、目的の膜厚を得るための重ね塗り回数を削減できるという、成膜プロセス簡略化や作業効率化の効果が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の製造方法は、有機溶媒系の導電性高分子液状組成物を工業的に製造する方法を提供する。
【0102】
本発明の有機溶媒系の導電性高分子液状組成物は、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、帯電防止フィルム、固体電解コンデンサの固体電解質、巻回型アルミ電解コンデンサ用のセパレータ等への利用が可能である。その他、有機薄膜太陽電池、有機EL、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、熱電変換材料、化学センサ、アクチュエータ、電磁波シールド材、導電性塗料、導電性インク等への応用も期待できる。
図1
図2