(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149692
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】透明ゲル状水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20220929BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20220929BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20220929BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20220929BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220929BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220929BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/06
A61K8/891
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/44
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051957
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 輝一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真由子
(72)【発明者】
【氏名】今泉 佑貴
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB282
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD171
4C083AD172
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD572
4C083AD622
4C083AD642
4C083BB13
4C083BB51
4C083DD01
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】硬度及び経時安定性に優れる透明ゲル状水中油型乳化組成物の提供。
【解決手段】ニコチン酸アミドと、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して15質量%以上の25℃で液体のオイルと、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して5質量%以上のノニオン性乳化剤と、アニオン性乳化剤と、水と、を含む、透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン酸アミドと、
透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して15質量%以上の25℃で液体のオイルと、
透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して5質量%以上のノニオン性乳化剤と、
アニオン性乳化剤と、
水と、
を含む、透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【請求項2】
光路長1cmで測定される波長625nmにおける吸光度が、0.08未満である、請求項1に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【請求項3】
透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する前記ニコチン酸アミドの含有率が、2質量%~5質量%である、請求項1又は請求項2に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【請求項4】
透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する前記25℃で液体のオイルの含有率が、20質量%以上である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【請求項5】
コレステロール及びフィトステロールの少なくとも一方をさらに含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【請求項6】
フィトステロールを含み、
前記フィトステロールが、フィトステロールポリグリセリルエーテルである、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【請求項7】
水溶性保湿剤を含み、
前記水溶性保湿剤が糖である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【請求項8】
前記糖が、トレハロースである、請求項7に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【請求項9】
化粧料である、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透明ゲル状水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、食品、医薬品等の分野では、製品に対して粘性又は弾性を付与するために、ゲル化剤が汎用されている。例えば、化粧品分野においては、化粧料を肌に塗布したときの使用感を高めたり、垂れ落ちを防いだりする等の目的で、ゲル化剤を使用し、化粧料に対して粘性又は弾性を付与している。
【0003】
化粧料の透明性の観点から、カルボキシビニルポリマー等のポリマー増粘剤がゲル化剤として使用されているが、ポリマー増粘剤を含む化粧料はべたつきが強く、化粧料の使用感の低下を招くおそれがあった。
【0004】
近年、高圧乳化装置を用いて、油相成分を微細な乳化粒子とすることで、優れた透明性を有するゲル状水中油型乳化組成物が調製できることが報告されている。
上記方法によれば、ポリマー増粘剤を使用する必要がないため、べたつきが抑えられた優れた使用感を有する化粧料を得ることができる。
【0005】
ゲル状水中油型乳化組成物として、特許文献1には、ニコチン酸アミド、単糖及びオリゴ糖からなる群から選択される少なくとも1種以上及び水溶性の皮膜形成性高分子を含む化粧料が提案されている。
また、特許文献2には、ニコチン酸アミド、液状油、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤及び水を含む皮膚外用剤及び化粧料が提案されている。
また、特許文献3には、ニコチン酸アミド、液状油、ノニオン性乳化剤及び水を含む水中油型乳化組成物が提案されている。
また、特許文献4には、液状油、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤及び水を含むゲル状水中油型乳化組成物が提案されている。
また、特許文献5には、液状油、アニオン性乳化剤及び水を含む水中油型乳化組成物を含む化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-22051号公報
【特許文献2】特開2019-131492号公報
【特許文献3】特開2018-168105号公報
【特許文献4】特開2017-105766号公報
【特許文献5】特開2008-137956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化粧料は、見た目も重要であり、優れた透明性が求められることが多い。しかし、ポリマー増粘剤を使用しない場合、ゲル状水中油型乳化組成物に含まれる乳化粒子の経時的に合一が生じ、ゲル状水中油型乳化組成物の透明性が低下するおそれがあった。
そして、特許文献1及び特許文献2において提案される化粧料、並びに特許文献3において提案される水中油型乳化組成物は、経時的に乳化粒子の合一が生じるおそれがあり、経時安定性には改善の余地があった。
【0008】
また、ゲル状水中油型乳化組成物の硬度が十分ではない場合、ゲル構造の維持が難しくなるおそれがあるため、ゲル状水中油型乳化組成物は、高い硬度を有していることが求められる。
そして、特許文献4~特許文献5において提案される水中油型乳化組成物は、硬度が十分ではなく、改善の余地があった。
【0009】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、硬度及び経時安定性に優れる透明ゲル状水中油型乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<1> ニコチン酸アミドと、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して15質量%以上の25℃で液体のオイルと、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して5質量%以上のノニオン性乳化剤と、アニオン性乳化剤と、水と、を含む、透明ゲル状水中油型乳化組成物。
<2> 光路長1cmで測定される波長625nmにおける吸光度が、0.08未満である、上記<1>に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
<3> 透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する上記ニコチン酸アミドの含有率が、2質量%~5質量%である、上記<1>又は<2>に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
<4> 透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する上記25℃で液体のオイルの含有率が、20質量%以上である、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
<5> コレステロール及びフィトステロールの少なくとも一方をさらに含む、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
<6> フィトステロールを含み、上記フィトステロールが、フィトステロールポリグリセリルエーテルである、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
<7> 水溶性保湿剤を含み、上記水溶性保湿剤が糖である、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
<8> 上記糖が、トレハロースである、上記<7>に記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
<9> 化粧料である、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の透明ゲル状水中油型乳化組成物。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、硬度及び経時安定性に優れる透明ゲル状水中油型乳化組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、透明ゲル状水中油型乳化組成物を収容する化粧製品の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。下記実施形態において、その構成要素は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0014】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
【0016】
本開示において、透明ゲル状水中油型乳化組成物の「透明」とは、分光光度計及び光路長1cmのセルを用いて測定する、波長625nmにおける吸光度が0.1以下である状態を意味する。
吸光度の測定は、以下のように行う。
まず、測定対象物100gを、直径47mm×高さ90mmのガラス製の容器に入れ、キャップをした状態で、室温(例えば、25℃)で24時間保存する。
次いで、室温で24時間保存した後の測定対象物に対して脱泡処理を施す。脱泡処理としては、特に限定されず、遠心脱泡処理、真空脱泡処理、真空遠心脱泡処理等が挙げられる。
一例としては、光路長1cmのポリスチレン製ディスポセルに入れ、セルごと、小型冷却遠心機を用いて、4000rpm(revolutions per minute)で2分間遠心分離を行い、脱泡処理を行う。
脱泡処理後の測定対象物について、波長625nmの光に対する吸光度を、分光光度計を用いて測定する。
小型冷却遠心機としては、特に限定されないが、例えば、日立工機株式会社製のCF5RXを好適に用いることができる。
また、分光光度計としては、特に限定されないが、例えば、株式会社日立製作所製のU-3310を好適に用いることができる。
【0017】
本開示において、透明ゲル状水中油型乳化組成物の「ゲル状水中油型乳化組成物」とは、連続相を構成する水相中に、分散相(乳化粒子)である油相が存在し、応力を掛けない状態では、25℃にて流動性を示さず、形状を保持する組成物を指す。
【0018】
本開示において、25℃で液体のオイルの「オイル」とは、液温が20℃である100gの水に対して0.1g未満の量が溶解する性質を有する油性成分を意味する。
【0019】
本開示において、「コレステロール」とは、動物に含まれるステロール化合物の総称であり、「フィトステロール」とは、植物に含まれるステロール化合物の総称である。また、本開示において、「コレステロール」及び「フィトステロール」には、これらの誘導体が含まれる。
【0020】
本開示において、「水溶性」とは、液温22℃、pH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0021】
(透明ゲル状水中油型乳化組成物)
本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、ニコチン酸アミドと、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して15質量%以上の25℃で液体のオイルと、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して5質量%以上のノニオン性乳化剤と、アニオン性乳化剤と、水と、を含む。
【0022】
本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物によれば、硬度及び経時安定性に優れる透明ゲル状水中油型乳化組成物を提供することができる。
【0023】
上記効果が奏される理由は以下のように推測されるが、これに限定されない。
本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して15質量%以上の25℃で液体のオイルを含み、これにより、乳化粒子(オイル粒子ともいう)の総体積が大きくなり、乳化粒子間の相互作用が増大する。上記乳化粒子間の相互作用の増大により、透明ゲル状水中油型乳化組成物の硬度が向上され、ゲル構造の長期的な維持が可能となると推測される。
また、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対して5質量%以上のノニオン性乳化剤を含み、乳化粒子の総表面積が大きくなり、乳化粒子間の相互作用が増大する。上記乳化粒子間の相互作用の増大により、透明ゲル状水中油型乳化組成物の硬度が向上され、ゲル構造の長期的な維持が可能となると推測される。
また、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、ニコチン酸アミドを含む。透明ゲル状水中油型乳化組成物が、ニコチン酸アミドを含むことにより、乳化粒子の経時的な合一が抑制され、長期にわたり優れた透明性が維持されると推測される。
【0024】
ゲル構造の安定性の観点から、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物の硬度は、10g以上であることが好ましく、40g以上であることがより好ましく、50g以上であることがさらに好ましく、55g以上であることが特に好ましく、65g以上であることが最も好ましい。
硬度の上限値は、特に限定されるものではないが、例えば、150g以下とすることができる。
なお、本開示において、硬度の測定は、以下のように行う。
まず、測定対象物100gを直径47mm×高さ90mmのガラス製の容器に入れ、キャップをした状態で、室温(例えば、25℃)で24時間保存する。
次いで、室温で24時間保存した測定対象物の硬度を、上記ガラス製の容器に入れた状態で、粘弾性測定装置(所謂、レオメーター)を用いて測定する。
具体的には、室温で24時間保存した測定対象物に対して、雰囲気温度25℃の環境下、60mm/分の速度で、直径20mmのアダプターの先端を200gの荷重で20mm挿入し、挿入したときに測定される応力のピーク値を硬度の測定値(単位:g)とする。
レオメーターとしては、特に限定されないが、例えば、株式会社レオテック製のFUDOH REHOMETERを好適に用いることができる。
【0025】
透明性の観点から、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、路長1cmで測定される波長625nmにおける吸光度が、0.08未満であることが好ましく、0.07未満であることがより好ましく、0.05未満であることがさらに好ましく、0.04未満であることが特に好ましい。
なお、吸光度の測定方法は上記した通りである。
【0026】
透明性の観点から、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物に含まれる乳化粒子の平均粒子径は、20nm~200nmであることが好ましく、30nm~150nmであることがより好ましく、40nm~100nmであることがさらに好ましく、50nm~80nmであることが特に好ましい。
なお、本開示において、「平均粒子径」とは、動的光散乱法により求める体積平均粒径を意味する。
動的光散乱式粒径測定機としては、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子株式会社製)、ナノトラックUPA(日機装株式会社製)、動的光散乱式粒径分布測定装置LB-550(株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
平均粒子径の測定は、透明ゲル状水中油型乳化組成物を純水で100質量倍に希釈し、室温(例えば、25℃)において行う。
なお、「純水」は、メルク株式会社製の超純水製造装置等による得られる純水を使用する。
【0027】
(ニコチン酸アミド)
ニコチン酸アミドは、水溶性のビタミンであり、ニコチン酸アミドを含む透明ゲル状水中油型乳化組成物は、シワ改善効果、肌荒れ改善効果、美白効果等を有する。
また、上記したように、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物がニコチン酸アミドを含むことにより、透明ゲル状水中油型乳化組成物の経時安定性が向上する。
【0028】
硬度及び経時安定性の観点から、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対するニコチン酸アミドの含有率は、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~7質量%であることがより好ましく、2質量%~5質量%であることがさらに好ましい。
また、ニコチン酸アミドの含有率を上記数値範囲とすることにより、透明ゲル状水中油型乳化組成物のべたつきを抑制することができる。
【0029】
(25℃で液体のオイル)
べたつき抑制の観点から、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物に含まれる25℃で液体のオイルとして、炭化水素油及びシリコーン油からなる群より選択される1種以上を使用することが好ましい。
また、べたつき抑制の観点から、炭化水素油及びシリコーン油を併用することが好ましい。
【0030】
炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、水添ポリイソブテン、シクロヘキサン等が挙げられる。上記した中でも、保湿性の観点からスクワランが好ましい。
【0031】
シリコーン油としては、シロキサン構造を含み、25℃で液体のシリコーン油であれば特に限定されるものではない。
シリコーン油としては、ジメチコン、トリシロキサン、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、カプリリルメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等が挙げられる。
上記した中でも、べたつきが少なく、使用感が良好であるため、ジメチコン、メチルトリメチコン、カプリリルメチコン及びシクロペンタシロキサンからなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0032】
25℃で液体のオイルの粘度は、特に限定されるものではないが、0.1mPa・s~10000mPa・sであってもよく、1mPa・s~1000mPa・sであってもよい。
なお、本開示において、25℃で液体のオイルの粘度は、25℃、1気圧下において、回転式粘度計(例えば、東機産業社製の製品名「VISCOMETER TV-22」)を用いて測定されるものである。
【0033】
硬度及び経時安定性の観点から、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する25℃で液体のオイルの含有率は、18質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
べたつき抑制の観点からは、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する25℃で液体のオイルの含有率は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
炭化水素油及びシリコーン油を併用する場合、硬度及び経時安定性の観点から、シリコーン油の含有率に対する炭化水素油の含有率の比(炭化水素油の含有率/シリコーン油の含有率)は、0.1~10であることが好ましく、0.3~3であることがより好ましい。
【0035】
(ノニオン性乳化剤)
ノニオン性乳化剤としては、脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。硬度及び経時安定性の観点から、上記した中でも、ノニオン性乳化剤は、脂肪酸エステルであることが好ましい。
脂肪酸エステルとしては、脂肪酸スクロース、脂肪酸グリセリル、脂肪酸ポリグリセリル等が挙げられる。
脂肪酸スクロースとしては、ステアリン酸スクロース、ジステアリン酸スクロース、トリステアリン酸スクロース、テトラステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ジラウリン酸スクロース、トリラウリン酸スクロース、テトララウリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ジパルミチン酸スクロース、トリパルミチン酸スクロース、テトラパルミチン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、ジミリスチン酸スクロース、トリミリスチン酸スクロース、テトラミリスチン酸スクロース等が挙げられる。
脂肪酸グリセリルとしては、ステアリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル等が挙げられる。
脂肪酸ポリグリセリルとしては、オレイン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10等が挙げられる。
【0036】
硬度、経時安定性及びべたつき抑制の観点からは、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対するノニオン性乳化剤の含有率は、5.3質量%~8質量%であることが好ましく、5.5質量%~7質量%であることがより好ましい。
【0037】
(アニオン性乳化剤)
アニオン性乳化剤としては、グルタミン酸塩、炭素数12~24の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩等が挙げられる。上記した中でも、硬度及び経時安定性の観点からは、グルタミン酸塩が好ましい。
【0038】
グルタミン酸塩としては、アシルグルタミン酸塩、サーファクチンナトリウム等が挙げられ、硬度及び経時安定性の観点からは、アシルグルタミン酸塩が好ましい。
【0039】
アシルグルタミン酸塩としては、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸二ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸二ナトリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸カリウム、N-ラウロイル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸カリウム、パーム脂肪酸グルタミン酸ナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム等が挙げられる。上記した中でも、ステアロイルグルタミン酸ナトリウムが、経時安定性の観点から好ましい。ステアロイルグルタミン酸ナトリウムとしては、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸二ナトリウム等が挙げられる。
【0040】
経時安定性の観点から、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対するアニオン性乳化剤の含有率は、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.3質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0041】
(水)
水としては、イオン交換水、純水、精製水、水道水などが挙げられ、これらの中でも化粧料への適用性から精製水が好ましい。
【0042】
透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する水の含有率は、特に限定されるものではなく、30質量%~70質量%とすることができる。
【0043】
(コレステロール及びフィトステロール)
経時安定性の観点から、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、コレステロール及びフィトステロールの少なくとも一方をさらに含むことが好ましい。
【0044】
コレステロールしては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、デヒドロコレステロール、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル等が挙げられる。
【0045】
フィトステロールは、フィトステロールポリグリセリルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレン基を有するフィトステロールポリグリセリルエーテル(以下、ポリオキシエチレンフィトステロールともいう)がより好ましい。
フィトステロールとしては、シトステロール、スチグマステロール、フコステロール、スピナステロール、ブラシカステロール等が挙げられる。
【0046】
経時安定性の観点から、ポリオキシエチレンフィトステロールが有するオキシエチレン基の平均付加モル数が、5以上であることが好ましい。なお、ポリオキシエチレンフィトステロールのオキシエチレン基の平均付加モル数は、カタログ値を参照することができる。
【0047】
経時安定性及びべたつき抑制の観点から、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する、コレステロール及びフィトステロールの少なくとも一方の含有率は、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.2質量%~5質量%であることがより好ましく、0.5質量%~2質量%であることがさらに好ましい。
また、本開示において、「透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する、コレステロール及びフィトステロールの少なくとも一方の含有率」とは、透明ゲル状水中油型乳化組成物が、コレステロールのみ含む場合には、コレステロールの含有率を意味し、透明ゲル状水中油型乳化組成物が、フィトステロールのみ含む場合には、フィトステロールの含有率を意味し、透明ゲル状水中油型乳化組成物が、コレステロール及びフィトステロールを含む場合には、これらの含有率の和を意味する。
【0048】
(水溶性保湿剤)
本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、水溶性保湿剤を含むことができる。
べたつき抑制の観点から、水溶性保湿剤は、糖及びアミノ酸の少なくとも一方であることが好ましく、糖がより好ましい。なお、本開示において、糖には誘導体が含まれる。糖の誘導体としては、例えば、オキシエチレン基により修飾した糖が挙げられる。
【0049】
糖としては、グルコース、スクロース、ソルビトール、トレハロース、マルトース、マンニトール、マルトトリオース等が挙げられる。アミノ酸としては、アルギニン、アラニン、グリシン、メチオニン、アスパラギン酸、リシン、セリン、サルコシン、トリメチルグリシン等が挙げられる。上記した中でも、透明性及び経時安定性の観点からは、スクロース、ソルビトール及びトレハロースの少なくとも1つであることが好ましく、トレハロースがより好ましい。
【0050】
べたつき抑制の観点から、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する水溶性保湿剤の含有率は、2質量%~20質量%であることが好ましく、4質量%~15質量%であることがより好ましく、6質量%~13質量%であることがさらに好ましい。
【0051】
経時安定性及びべたつき抑制の観点から、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対するニコチン酸アミド及び水溶性保湿剤の含有率の和は、10質量%以上であることが好ましく、11質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましい。
また、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対するニコチン酸アミド及び水溶性保湿剤の含有率の和は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、17質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
(その他)
本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、エタノール等のその他の溶媒、香料、pH調整剤、pH緩衝剤、抗炎症剤、角質軟化剤、血行促進剤、抗酸化剤、防腐剤、キレート剤、紫外線吸収剤、着色剤、コレステロール及びフィトステロール以外の脂質(例えば、レシチン等)、カロテノイド(アスタキサンチン、βカロテン、ゼアキサンチン、リコピン、ルテイン等)などのその他の成分を含むことができる。
また、本開示のゲル状水中油型乳化組成物は、カフェイン、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド等の美容成分を内包するリポソームを含んでいてもよい。リポソームは、脂質二重膜が1重であるシングルラメラ構造を有するものであってもよく、脂質二重膜が多重であるマルチラメラ構造を有するものであってもよいが、成分内包量の観点からは、シングルラメラ構造を有するものであることが好ましい。
【0053】
(ポリマー増粘剤)
べたつき抑制の観点から、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物がポリマー増粘剤を含む場合には、透明ゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対するポリマー増粘剤の含有率は、1質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましく、0.01質量%未満であることがさらに好ましい。
また、本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は、ポリマー増粘剤を含まないことが特に好ましい。
【0054】
(用途)
本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物は化粧料として使用することができる。
化粧料としては、スキンケア化粧料(化粧水及び美容液等)、ボディ用化粧料(ボディ用ローション等)、頭皮用化粧料などの化粧料を挙げることができる。
【0055】
(透明ゲル状水中油型乳化組成物の製造方法)
本開示の透明ゲル状水中油型乳化組成物の製造方法を以下に説明するが、これに限定されるものではない。
【0056】
透明ゲル状水中油型乳化組成物は、25℃で液体のオイル、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤を少なくとも含む油相組成物と、ニコチン酸アミド及び水を少なくとも含む水相組成物とを、混合して得られる混合物に対し、乳化処理を施すことにより製造することができる。
【0057】
油相組成物は、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤を25℃で液体のオイルに添加し、加熱することにより溶解させることにより得ることができる。
上記オイルへは、コレステロール、フィトステロール、コレステロール及びフィトステロール以外の脂質、カロテノイド等を添加してもよい。
【0058】
水相組成物は、ニコチン酸アミドを水に添加し、加熱することにより溶解させることにより得ることができる。
水へは、エタノール、水溶性保湿剤、防腐剤、香料等を添加してもよい。
【0059】
微細な乳化粒子を得ることができ、透明ゲル状水中油型乳化組成物の透明性を向上することができるため、乳化処理は、高圧条件において行うことが好ましい。
乳化処理において、混合物に加えられる剪断力は、100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましく、200MPa以上であることがさらに好ましい。
【0060】
上記高圧条件の乳化処理において使用する攪拌装置は、特に限定されるものではなく、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー等を用いる高速撹拌法、超音波ホモジナイザーを用いる超音波法及び高圧ホモジナイザーにより高剪断力をかける高圧ホモジナイザー法などが挙げられる。
【0061】
超音波ホモジナイザーとしては、株式会社日本精機製作所製の超音波ホモジナイザーUS-600、US-1200T、RUS-1200T、MUS-1200T、ヒールッシャー社製の超音波プロセッサーUIP2000、UIP-4000、UIP-8000、UIP-16000等が挙げられる。
これらの高出力超音波照射装置は、好ましくは25kHz以下、より好ましくは15kHz~20kHzの周波数で使用される。
【0062】
高圧ホモジナイザーとしては、チャンバー型高圧ホモジナイザー、均質バルブ型高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
チャンバー型高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイ
ディクス社製)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社製)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン製)等が挙げられる。
均質バルブ型高圧ホモジナイザーとしては、ゴーリンタイプホモジナイザー(APV社
製)、ラニエタイプホモジナイザー(ラニエ社製)、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ
社製)、ホモゲナイザー(三和機械株式会社製)、高圧ホモゲナイザー(イズミフードマシナリ株式会社製)、超高圧ホモジナイザー(イカ社製)等が挙げられる。
【0063】
製造した透明ゲル状水中油型乳化組成物に対し、滅菌処理を行ってもよい。
また、滅菌処理は、上記した油相組成物及び水相組成物に対して行ってもよい。
滅菌処理としては、オートクレーブ滅菌処理、濾過滅菌処理、プラズマ滅菌処理、滅菌剤等の薬品を用いた滅菌処理、エチレンオキシドガス等の滅菌ガスを用いる滅菌処理、ガンマ線等の放射線を照射する滅菌処理などが挙げられる。
【0064】
(化粧製品)
本開示の化粧製品10は、吐出口11を備えるポンプ12及びポンプ12に連結する吸液管13を備えるヘッド部14と、本体部15とを備える収容容器16、並びに、前記本体部15に収容される上記ゲル状水中油型乳化組成物17を備える(
図1参照)。吸液管13は、ポンプ12と連結する(
図1中の点線部)
本開示において、吸液管の長さとは、吸液管の本体部側先端部から、ポンプとの連結部までの長さを指す(
図1中、符号αで示す)。
なお、
図1中の符号18は、ヘッド部14を本体部15に装着するための結合部を示す。
【0065】
使用開始時において、吐出までに必要なポンプを押す回数を少なくすることができるため、吸液管の長さは短いことが好ましい。
具体的には、ヘッド部の長さに対する吸液管の長さの割合は、10%~100%であることが好ましく、15%~80であることがより好ましく、30%~60%であることがさらに好ましい。
本開示において、ヘッド部の長さとは、吸液管の本体部側先端部から、ポンプの上端部までの長さを指す(
図1中、符号βで示す)。なお、ポンプの上端部とは、吸液管の本体部側先端部からの長さが最大となるポンプの部位を指す。
【0066】
収容容器は、収容される透明ゲル状水中油型乳化組成物の硬度及び経時安定性の観点、並びに容器の吐出性の観点から、エアレスポンプ容器であることが好ましい。
エアレスポンプ容器とは、ポンプを押すことにより、本体部内の空気が抜け、化粧料が吸液管により吸い上げられる機構を有する。上記機構を容器が備えることにより、本体部の気密性が向上し、外気からの雑菌の侵入を抑制することができるため、化粧料の経時安定性を向上することができる。
また、経時安定性の観点から、エアレスポンプ容器は、ポンプの吐出口に弁を備えることが好ましい(以下、ポンプの吐出口に弁を備えるエアレスポンプ容器を、シャットオフエアレスポンプ容器ともいう)。
また、使用後の透明ゲル状水中油型乳化組成物の残量を少なくするという観点から、収容容器は、デラミネーション多層構造を有することが好ましい。デラミネーション多層構造を有する容器とは、互いに接着又は溶着されていない内層体及び外層体を備える、容器を指す。
また、収容容器は、ヘッド部に装着するキャップを備えていてもよい。
デラミネーション多層構造を有するエアレス容器としては、株式会社吉野工業所製のSP-200-HVDが挙げられ、デラミネーション多層構造を有するシャットオフエアレス容器としては、株式会社吉野工業所製のNP-200-HVD等が挙げられる。
【0067】
透明ゲル状水中油型乳化組成物の容器への充填は、無菌充填により行われることが好ましい。
【0068】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願お及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【実施例0069】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、表1における各成分の数値はゲル状水中油型乳化組成物の全質量に対する含有率(質量%)を示す。
【0070】
<実施例1~実施例14>
(油相組成物Aの調製)
下記表1に記載のノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、レシチン、アスタキサンチンを、25℃で液体のオイルに添加し、70℃で30分間加熱し、溶解させ、油相組成物Aを得た。なお、実施例4~実施例6、実施例11~実施例12及び実施例14においては、フィトステロール又はコレステロールも添加した。
【0071】
(水相組成物Aの調製)
下記表1に記載のニコチン酸アミド、水溶性保湿剤、防腐剤及び香料を、水及びエタノールの混合溶媒に添加し、70℃で45分間加熱し、溶解させ、水相組成物Aを得た。
【0072】
(ゲル状水中油型乳化組成物の製造)
上記水相組成物を攪拌しながら、上記油相組成物Aを上記水相組成物Aに添加し、超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製、US-600)を用いて、100g当り1分間の超音波処理することで予備乳化物を得た。
次いで、得られた予備乳化物を超高圧乳化装置(株式会社スギノマシン製、アルティマイザーHJP-25001)を用いて、245MPaの剪断力で乳化処理を行い、ゲル状水中油型乳化組成物を得た。
【0073】
なお、表1における各成分の詳細は以下の通りである。
・ニコチン酸アミド:DSM社製、ナイアシンアミドPC
・ノニオン性乳化剤A:ステアリン酸スクロース
・ノニオン性乳化剤B:ステアリン酸グリセリル
・ノニオン性乳化剤C:オレイン酸ポリグリセリル-5
・ノニオン性乳化剤D:ラウリン酸ポリグリセリル-10
・ノニオン性乳化剤E:オレイン酸ポリグリセリル-10
・ノニオン性乳化剤F:パルミチン酸ポリグリセリル-10
・アニオン性乳化剤:N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム
・フィトステロールA:ポリオキシエチレンフィトステロール、日光ケミカルズ株式会社製、Nikkol(登録商標)BPS-5
・コレステロールA:日本エマルジョン工業株式会社製、EMALEX(登録商標)CS-5
・レシチンA:エイチ・ホルスタイン社製、LIPOID P-75
・アスタキサンチン:株式会社マリン大王製、Astax-ST
・25℃で液体のオイルA:ジメチコン
・25℃で液体のオイルB:シクロペンタシロキサン
・25℃で液体のオイルC:スクワラン
・水溶性保湿剤:トレハロース
・防腐剤:メチルパラベン
・エタノール:日本アルコール産業株式会社製、トレーサブル99(品種1級)
【0074】
<実施例15>
水2質量%を以下のようにして調製したカフェイン含有リポソーム組成物に置き換えた以外は実施例11と同様にして、ゲル状水中油型乳化組成物を得た。
【0075】
(カフェイン含有リポソーム組成物の調製)
(油相組成物の調製)
下記の成分を混合し、60℃で10分間加熱することにより溶解させ、油相組成物Bを得た。
-油相組成物B-
・レシチンB 55.0g
・フィトステロールB 11.5g
・コレステロールB 15.0g
・無水エタノール 1005.0g
・アスコルビン酸 5.0g
【0076】
下記成分を混合し、60℃で10分間加熱することにより溶解させ、水相組成物Bを得た。
-水相組成物B-
・無水カフェイン 50.0g
・ニコチン酸アミド 5.0g
・無水リン酸一水素ナトリウム 6.5g
・リン酸二水素ナトリウム 0.3g
・精製水 3847.0g
【0077】
下記の成分を混合し、60℃で10分間加熱することにより溶解させ、水相組成物Cを得た。
-水相組成物C-
・パラオキシ安息香酸メチル 20.0g
・精製水 4980.0g
【0078】
水相組成物Bを60℃に保ったままホモミキサー(株式会社プライミクス製、オートミクサー40型)により攪拌した(4000rpm)。次いで、水相組成物Bへ油相組成物Bを添加し、4000rpmで60分攪拌を継続した。
攪拌後、水相組成物Cをさらに添加し、5分間均一攪拌を行い、35℃以下まで冷却した。
冷却後、230メッシュろ布でろ過して、カフェインを内包するリポソームを含む、カフェイン含有リポソーム組成物を得た。得られたカフェイン含有リポソーム組成物の倍率50000倍TEM(Transmission Electron Microscope)画像を、透過型電子顕微鏡を用いて取得し、観察したところ、シングルラメラ構造を有するリポソームが観察された。
【0079】
なお、上記各成分の詳細は以下である。
・レシチンB:水素添加大豆リン脂質、日油株式会社製、COATSOME NC-21
・フィトステロールB:ポリオキシエチレンフィトステロール、日光ケミカルズ株式会社製、Nikkol(登録商標)BPS-20
・コレステロールB:日本精化株式会社製、コレステロールJSQI
・無水エタノール:関東化学株式会社製、トレーサブル99(品種1級)
・アスコルビン酸:テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、日光ケミカルズ株式会社製、Nikkol(登録商標)VC-IP
・無水カフェイン:三菱ケミカルフーズ株式会社製
・ニコチン酸アミド:DSM社製、ナイアシンアミドPC
・無水リン酸一水素ナトリウム:太平化学産業株式会社製(医薬部外品原料規格)
・リン酸二水素ナトリウム:太平化学産業株式会社製
・パラオキシ安息香酸メチル:上野製薬株式会社製、メッキンスーM
【0080】
<比較例1>
ニコチン酸アミドを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、ゲル状水中油型乳化組成物を得た。
【0081】
<比較例2>
ニコチン酸アミドを使用せず、25℃で液体のオイルの含有率を15質量%未満とした以外は、実施例1と同様にして、ゲル状水中油型乳化組成物を得た。
【0082】
<比較例3>
ノニオン性乳化剤の含有率を5質量%未満とした以外は、実施例1と同様にして、ゲル状水中油型乳化組成物を得た。
【0083】
<<硬度評価>>
上記実施例及び比較例において得られたゲル状水中油型乳化組成物100gを、直径47mm×高さ90mmのガラス製の容器に入れ、キャップをした状態で、25℃で24時間保存した。なお、ゲル状水中油型乳化組成物は製造直後(製造後24時間以内)のゲル状水中油型乳化組成物を使用した。
次いで、25℃で24時間保存したゲル状水中油型乳化組成物の硬度を、上記ガラス製の容器に入れた状態で、粘弾性測定装置(株式会社レオテック製、FUDOH REHOMETER)を用いて測定した。
具体的には、25℃で24時間保存したゲル状水中油型乳化組成物に対して、雰囲気温度25℃の環境下、60mm/分の速度で、直径20mmのアダプターの先端を200gの荷重で20mm挿入し、挿入したときに測定される応力のピーク値を硬度として測定した。
測定された硬度を、下記評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1にまとめた。
なお、比較例2及び比較例3において得られたゲル状水中油型乳化組成物の硬度は10g未満であり、以降の評価は実施しなかった。
(評価基準)
A:硬度が65g以上であり、ゲル構造の安定性に極めて優れるゲル状水中油型乳化組成物であると認められた。
B:硬度が40g以上、65g未満であり、ゲル構造の安定性に優れるゲル状水中油型乳化組成物であると認められた。
C:硬度が10g以上、40g未満であり、実用上問題のないゲル構造の安定性を有するゲル状水中油型乳化組成物であると認められた。
D:硬度が10g未満であり、ゲル構造の安定性が十分ではないゲル状水中油型乳化組成物であった。
【0084】
<<透明性評価-1>>
上記実施例及び比較例において得られたゲル状水中油型乳化組成物100gを、直径47mm×高さ90mmのガラス製の容器に入れ、キャップをした状態で、25℃で24時間保存した。25℃で24時間保存した後のゲル状水中油型乳化組成物を、光路長1cmのポリスチレン製ディスポセルに入れ、セルごと、小型冷却遠心機(日立工機株式会社製、CF5RX、スイングローター:T4SS31)を用いて、4000rpmで2分間遠心分離を行い、脱泡処理した。なお、ゲル状水中油型乳化組成物は製造直後(製造後24時間以内)のゲル状水中油型乳化組成物を使用した。
脱泡処理後のゲル状水中油型乳化組成物について、波長625nmの光に対する吸光度を、分光光度計(株式会社日立製作所製、U-3310)を用いて測定した。
下記評価基準に基づいて、上記実施例及び比較例において得られたゲル状水中油型乳化組成物の透明性を評価し、評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:吸光度が0.04未満であり、極めて優れた透明性が確認された。
B:吸光度が0.04以上、0.08未満であり、優れた透明性が確認された。
C:吸光度が0.08以上、0.1以下であり、透明性が確認された。
D:吸光度が0.1超であり、透明性が不十分であった。
【0085】
<<透明性評価-2>>
上記実施例及び比較例において得られたゲル状水中油型乳化組成物を、50℃の環境に14日間保存した。保存後、上記透明性評価と同様にして、ゲル状水中油型乳化組成物の吸光度を測定した。
下記評価基準に基づいて、上記実施例及び比較例において得られたゲル状水中油型乳化組成物の透明性を評価し、評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:吸光度が0.04未満であり、極めて優れた透明性が確認された。
B:吸光度が0.04以上、0.08未満であり、優れた透明性が確認された。
C:吸光度が0.08以上、0.1以下であり、透明性が確認された。
D:吸光度が0.1超であり、透明性が不十分であった。
【0086】
<<経時安定性評価>>
上記透明性評価-1において得られた製造直後のゲル状水中油型乳化組成物の吸光度と、上記透明性評価-2において得られた保存後のゲル状水中油型乳化組成物の吸光度との差(製造直後のゲル状水中油型乳化組成物の吸光度-保存後のゲル状水中油型乳化組成物の吸光度)を求め、下記評価基準に基づいて、経時安定性を評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
A:吸光度差が0.01以下であった。
B:吸光度差が0.01超、0.03以下であった。
C:吸光度差が0.03超であった。
【0087】
【0088】
表1の結果から、実施例において得られたゲル状水中油型乳化組成物は、25℃で液体のオイルの含有率を15質量%未満とした比較例2及びノニオン性乳化剤の含有率を5質量%未満とした比較例3と比べ、優れた硬度を有しており、ゲル構造の安定性に優れることがわかる。
また、表1の結果から、実施例において得られたゲル状水中油型乳化組成物は、ニコチン酸アミドを使用しない比較例1と比べ、経時安定性に優れ、長期にわたり優れた透明性を維持することができることがわかる。
【0089】
<<乳化粒子の平均粒子径の測定>>
実施例15において得られたゲル状水中油型乳化組成物を、純水で100質量倍に希釈し、動的光散乱式粒径測定機(大塚電子株式会社製、濃厚系粒径アナライザーFPAR-1000)を用いて、ゲル状水中油型乳化組成物に含まれる乳化粒子の平均粒子径を測定したところ、59nmであった。
【0090】
<<吐出性の評価>>
デラミネーション多層構造を有するシャットオフエアレス容器A(株式会社吉野工業所製、NP-200-HVD)を準備した。
シャットオフエアレス容器Aが備えるヘッド部の長さは30mmであり、吸液管の長さは43.5mmであり、本体部の内容量(オーバーフロー量)は52.0mLであった。
また、吸液管の長さを32.0mmに変更したデラミネーション多層構造を有するシャットオフエアレス容器B及び吸液管の長さを18.5mmに変更したデラミネーション多層構造を有するシャットオフエアレス容器Cを準備した。
【0091】
上記シャットオフエアレス容器A~シャットオフエアレス容器C(表中では、それぞれ、容器A~容器Cと記載する)へ、実施例15において得られたゲル状水中油型乳化組成物を47.25g充填した。
シャットオフエアレス容器からゲル状水中油型乳化組成物が吐出されるまでに必要なポンプを押す回数を確認し、表2に示す。
【0092】
【0093】
上記シャットオフエアレス容器A~シャットオフエアレス容器Cのいずれからも、ポンプを押す回数が10回以内にゲル状水中油型乳化組成物を吐出することができ、良好な吐出性能が確認された。
10:化粧製品、11:吐出口、12:ポンプ、13:吸液管、14:ヘッド部、15:本体部、16:収容容器、17:ゲル状水中油型乳化組成物、18:結合部、α:吸液管の長さ、β:ヘッド部の長さ