(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150042
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】風味付与剤及び風味付与方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/26 20160101AFI20220929BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220929BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20220929BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20220929BHJP
【FI】
A23L27/26
A23L5/00 M
A23J3/14
A23L27/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052452
(22)【出願日】2021-03-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 由美子
(72)【発明者】
【氏名】青木 崇幸
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LG04
4B035LG15
4B035LK02
4B035LP24
4B047LB08
4B047LG05
(57)【要約】
【課題】植物性タンパク質を原料として使用する食品に対する新たな脂肪香付与剤を提供する。
【解決手段】
(E)-6-ノネナールを含有させることで植物性タンパク質を使用した食品の畜肉風味を増強することができる。また、同時に酪酸及び/又はデルタデカラクトンを併用することによってさらに増強することができる。本願においては、(E)-6-ノネナールを含有する植物性タンパク質含有食品の畜肉風味付与剤とともに、植物性タンパク質を使用する食品の製造方法であって、(E)-6-ノネナールを含有させる工程を含む食品の製造方法及び風味増強方法も意図している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(E)-6-ノネナールを含有することを特徴とする、植物性タンパク質含有食品に対する畜肉風味付与剤。
【請求項2】
(E)-6-ノネナールを含有する植物性タンパク質含有食品。
【請求項3】
前記食品が乾燥食品である請求項2に記載の植物性タンパク質含有食品。
【請求項4】
植物性タンパク質含有食品の製造方法であって、(E)-6-ノネナールを添加する工程を含む植物性タンパク質含有食品の製造方法。
【請求項5】
植物性タンパク質を使用する食品において、(E)-6-ノネナールを含有させることによって畜肉風味を付与する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性タンパク質を原料として使用する食品に添加して、当該食品に対して畜肉風味を付与することができる風味付与剤等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工食品をはじめとする各種食品においては、大豆タンパク等の植物性タンパク質が利用される場合がある。このような植物性タンパク質は将来の畜肉原料の不足等の状況が予想されることから、代替肉として重要に考えられるようになってきている。そして、その使用量が増加してきており、将来的にはさらに多く使用されていくことが予想される。
一方、植物性タンパク質と畜肉類のタンパク質とは、生物種の違いやアミノ酸組成、付随する油脂等の違いから風味や味が相違する。
【0003】
このような状況下において、植物性タンパク質に対して畜肉風味を効果的に付与することができれば、一層の植物性タンパク質の利用を促進することができる。
植物性タンパク質の風味を改善する素材として例えば、以下の特許文献1に記載の発酵調味料組成物が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
上記の発酵調味料組成物は、植物性タンパク質の特有の臭いのマスキングに有効な物質である。一方、積極的に植物性タンパク質に対して畜肉の脂肪香の風味を付与するものではない。
このため、上述のように植物性タンパク質に対しては代替肉の問題からも畜肉風味を付与する方法があれば有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の発明者らは植物性タンパク質を原料として使用する食品に対する新たな畜肉風味の付与剤を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々の素材を用いてその香気成分について実験を繰り返し実施した。本発明者の鋭意研究の結果、(E)-6-ノネナールを利用することで、植物性タンパク質を使用する食品に対する畜肉風味を付与する効果を見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本願第一の発明は、
「(E)-6-ノネナールを含有することを特徴とする、植物性タンパク質含有食品に対する畜肉風味付与剤。」、である。
【0008】
次に、本出願人は、(E)-6-ノネナールを含有する植物性タンパク質含有食品も意図している。すなわち、本願第二の発明は、
「(E)-6-ノネナールを含有する植物性タンパク質含有食品。」、である。
【0009】
次に、前記植物性タンパク質含有食品は、乾燥タイプの食品であることが好ましい。すなわち、本願第三の発明は、
「前記食品が乾燥食品である請求項2に記載の植物性タンパク質含有食品。」、である。
【0010】
次に、本出願人は、植物性タンパク質含有食品の製造方法において、(E)-6-ノネナールを添加する工程を含む植物性タンパク質含有食品の製造方法についても意図している。
すなわち、本願第四の発明は、
「植物性タンパク質含有食品の製造方法であって、(E)-6-ノネナールを添加する工程を含む植物性タンパク質含有食品の製造方法。」、である。
【0011】
次に、本出願人は、植物性タンパク質を使用する食品において、(E)-6-ノネナールを含有させることによって畜肉風味を増強させる方法についても意図している。
すなわち、本願第六の発明は、
“植物性タンパク質を使用する食品において、(E)-6-ノネナールを含有させることによって畜肉風味を付与する方法。”、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の畜肉風味付与剤を利用することで、植物性タンパク質を使用する食品、特に加工食品を始めとする各種食品の畜肉風味を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施の形態に準じて詳細に説明する。但し、本発明はこれらの実施態
様に限定されるものではない。本発明の有効成分は以下の物質である。
【0014】
─(E)-6-ノネナール─
本発明でいう(E)-6-ノネナール(トランス-6-ノネナール:trans-6-nonenal)(CAS2277-20-5)とは、以下の構造式を有する。
【0015】
【0016】
本発明に利用する(E)-6-ノネナール(トランス-6-ノネナール:trans-6-nonenal)については、市販のタイプを入手等することができ食品用香料化合物として使用することができる。食品用香料化合物は、食品衛生法施行規則 別表第一で指定され、着香を目的として使用される食品添加物として指定されている。(E)-6-ノネナール(トランス-6-ノネナール:trans-6-nonenal)は、これらのうち、類又は誘導体として指定されている18項目の香料(いわゆる18類)に該当すると判断された具体的品目に含まれている。
【0017】
本発明に利用する(E)-6-ノネナール(トランス-6-ノネナール:trans-6-nonenal)については、市販のタイプを購入することができる。また、合成したものを利用することもできる。さらに、食品等から抽出(蒸留等)により、その香気成分を抽出したものを用いることもできる。
尚、本(E)-6-ノネナール(トランス-6-ノネナール:trans-6-nonenal)を食品の製造において使用する場合は、液体油脂等の溶剤に溶解させた状態のタイプのものを利用することが好ましい。
【0018】
─植物性タンパク質─
本発明にいう植物性タンパク質とは、植物に含まれるタンパク質をいう。植物性タンパク質は、動物性のタンパク質(牛、豚、鶏、卵、魚等)に比べて、脂質量が少なく、カロリー摂取を抑える面からは有利である。また、種々の食品に添加しやすいという特徴を有している。
主な植物性タンパク質については、大豆、エンドウ豆、そら豆等の豆類や、とうもろこし、そば、小麦等の穀類が原料となる各種タンパク質が挙げられる。その他、植物自体に含まれる量は比較的少ないが、アスパラガス、ブロッコリー等の野菜類や、アボカド、バナナ等の果実類にも含まれている。
【0019】
本発明にいう植物性タンパク質は、主としては大豆やエンドウ豆、そら豆等の豆類や、とうもろこし、そば、小麦等の穀類由来の植物性タンパク質をいうが、これに限定されず、野菜類、果実類の植物性タンパク質も含まれる。
次に、当該植物性タンパク質については、例えば、当該植物体から抽出、分離等された状態から得られたタイプのものが挙げられる。但し、抽出については、厳密な精製等のレベルでなく、粗抽出でもよいことは勿論である。
【0020】
また、大豆等の植物体をそのまま使用することも可能であり、当該植物体に含む植物性タンパク質を利用することもできる。上記のように種々の方法で植物性タンパク質を利用した食品を製造することができる。
植物性タンパク質としては、乾燥タイプやウエットタイプのいずれも利用することができる。特に乾燥タイプの植物性タンパク質を利用する場合、一旦、水と混合してパテ状にしたものを利用する場合もある。
【0021】
─植物性タンパク質含有食品─
本発明にいう植物性タンパク質含有食品とは、上述の植物性タンパク質を原料として用いた食品という。当該植物性タンパク質が原料として一部に利用されていればよく、当該植物性タンパク質以外の原料が含まれていてもよい。より具体的には、植物性タンパク質以外に動物性タンパク質(牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉等)、炭水化物(穀類、野菜等)、脂質、食物繊維、水分、ミネラル、ビタミン、色素、食品添加物等を含んでいてもよい。
【0022】
次に、本発明における植物性タンパク質含有食品において植物性タンパク質の使用量は特に限定されない。少量若しくは微量であっても植物性タンパク質含有食品に含まれることは勿論である。
また、植物性タンパク質含有食品は、固体状又は液体状のいずれの形態も可能であることは勿論である。植物性タンパク質を使用した具体的な食品名としては、例えば、即席食品(即席カップ麺や即席袋麺等の即席麺、即席カップライス、即席スープ等)が挙げられる。
【0023】
特に、即席麺(即席カップ麺)や即席カップライスでは、具材として、大豆タンパク等の植物性タンパク質を一部に使用した乾燥具材(熱風乾燥や凍結乾燥による乾燥具材)を使用する場合があるが、本発明は、これらの乾燥具材に好適に適用できる。
【0024】
また、大豆タンパク及び/又はエンドウ豆タンパク等の植物性タンパク質を利用した疑似肉(ハンバーグ、ミンチボール等)にも好適に適用することができる。
尚、当該乾燥具材や疑似肉を構成する他の成分として澱粉等の糖質、動物性タンパク質(牛、豚、鶏等)、塩、醤油及びソース等の調味料並びに香辛料が用いられてもよいことは勿論である。
【0025】
─(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を含有する畜肉風味付与剤─
本発明においては、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を含有する畜肉風味付与剤について意図しているが、当該畜肉風味付与剤は(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を植物性タンパク質含有食品に対して添加又は含有させるものであれば、あらゆる態様を含むものとする。
また、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)以外の他の香料や各種添加物、香辛料等の様々な食品に利用できる成分を含んでいてもよいことは勿論である。
【0026】
─(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を含有する植物性タンパク質含有食品─
本発明においては、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を含有する植物性タンパク質含有食品についても意図している。ここで、植物性タンパク質含有食品が(E)-6-ノネナールを含有するとは、まず、植物性タンパク質含有食品の製造過程のいずれかにおいて、(E)-6-ノネナールが添加される場合が挙げられる。
【0027】
植物性タンパク質含有食品の製造過程については、当該植物性タンパク質含有食品が乾燥するタイプの乾燥食品であれば、例えば、植物性タンパク質を含む原料を混合→加熱→乾燥等のステップを経て完成させる製造プロセスの例が挙げられる。この場合においては、原料段階で添加してもよいし、混合中に添加してもよい。また、加熱前に添加してもよいし、加熱後に添加してもよい。
【0028】
または、例えば、即席麺や即席ライス等の加工食品等で喫食時に添付フレーバーとして、喫食者が付属のスープパック等を開封して加える場合には、当該スープパック等に含有しているものでもよく、喫食時に植物性タンパク質含有食品と(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)が同時に含有する態様であれば、あらゆる態様を含むものとする。
さらに、添加される(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)は精製されたものである必要はなく、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)をその一部の成分として含む、香料、食品素材等であれば、あらゆる態様を含むことは勿論である。
【0029】
─畜肉風味ついて─
本発明にいう畜肉風味とは、主として畜肉の有する脂肪香をいう、ここでの脂肪香とは、畜肉に特有の脂っこい香りであり、通常、牛肉、豚肉、鶏肉等の畜産物について加熱調理等を行った場合に強く呈する香りである。本発明にいう畜肉風味(脂肪香)とは、主としてこのような匂いのことをいう。当該畜肉風味(脂肪香)を呈するようにすることで植物性タンパク質含有食品に独特の畜肉様のコクを与えることができる。
【0030】
─風味付与剤─
本発明の風味付与剤とは、使用する植物性タンパク質含有食品に対して上述の畜肉風味である脂肪香を付与したり、又は当該植物性タンパク質含有食品が既に畜肉等の原料を利用していることによってすでに畜肉風味を有する場合には、当該畜肉風味を高め、当該脂肪香を増強させることをいう。
【0031】
すなわち、本発明における風味付与剤における“付与”とは、畜肉風味を有さないものに畜肉風味を付与するという意味とともに、畜肉風味をすでに有している場合において当該畜肉風味を増強させるという意味のいずれも有するものとする。
また、本発明の風味付与剤については、少なくとも(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を含有していればよく、他の成分として各種の油脂、溶媒、香料、調味料等を含んでいてもよいことは勿論である。
【0032】
さらに、風味付与剤の剤形態は必ずしも所定の形式の容器等に収納されている場合のみならず、植物性タンパク質含有食品を製造等する際に、畜肉風味の増強のために、少なくとも(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を含む素材(粉状物、粒状物等の添加用の各種食材)が存在すればよく、当該素材を植物性タンパク質含有食品の製造の際や喫食時に植物性タンパク質含有食品に添加や混合する態様であれば、本発明にいう風味付与剤に該当するものとする。
【0033】
─本発明の風味付与剤を使用する食品─
本発明の風味付与剤は、植物性タンパク質を使用する各種食品に添加して当該食品の畜肉風味を増強することができる。例えば、植物性タンパク質を一部又は全部に使用した疑似肉類に利用することができる。具体的には、ハンバーグやミンチボール等の種々に利用することができる。特に、加工食品である即席麺(即席カップ麺、即席袋めん)、即席スープ、即席カップライス等の即席食品に好適に利用することができる。これらの即席食品の添付スープ(粉末スープ、液体スープ)や添付の乾燥具材等にも好適に利用することができる。
【0034】
─酪酸(butanoic acid)─
本発明の植物性タンパク質含有食品の風味付与剤は、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を含有することを必須とするが、他に香料として酪酸(butanoic acid)を含有することが好ましい。酪酸は特有の匂いを有する物質であり、牛乳を原料とするバターやチーズに含まれている。
【0035】
─デルタデカラクトン(δ-デカラクトン:delta-decalactone)─
本発明の植物性タンパク質含有食品の風味付与剤は、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を含有することを必須とするが、他に香料としてデルタデカラクトン(δ-デカラクトン delta-decalactone)を含有することが好ましい。δ-デカラクトンは特有の匂いを有する物質であり、乳製品やフルーツに含まれている。デルタデカラクトンについては、上述の酪酸と同時に利用してもよい。
【0036】
─本発明の風味付与剤の有効成分の配合濃度─
本発明においては、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)を必須の構成要素としている。(E)-6-ノネナールの添加対象である植物性タンパク質含有食品の重量対して、喫食時の最終濃度として0.01ppt~100ppbが好ましく、より好ましくは1ppt~1ppbである。
さらに、酪酸やデルタデカラクトンを併用する場合においても、(E)-6-ノネナールの添加濃度は0.01ppt~100ppbが良く、より好ましくは1ppt~1ppbである。
【0037】
また、酪酸の使用量は、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)の喫食時の最終濃度に対して概ね103倍~107倍、さらに好ましくは、104倍~106倍程度の濃度範囲である。
さらに、デルタデカラクトンの使用量は、(E)-6-ノネナール(trans-6-nonenal)の喫食時の最終濃度に対して概ね1倍~10000倍さらに好ましくは、10倍~1000倍程度の濃度範囲である。
【0038】
─(E)-6-ノネナールを含有させる工程を含む食品の製造方法─
本発明においては、植物性タンパク質の風味増強を目的として、食品の製造工程において(E)-6-ノネナールを含有させる工程を含む食品の製造方法も意図している。すなわち、当該食品の製造過程のいずれかの工程で(E)-6-ノネナールを含有させる工程を含む工程が存在すればよく、その使用量については限定されない。
【0039】
─(E)-6-ノネナールを含有させることによって畜肉風味を増強させる方法─
本発明においては、植物性タンパク質含有食品の畜肉風味の増強を目的として、(E)-6-ノネナールを含有させることによって畜肉風味を増強させる方法についても意図している。
【実施例0040】
以下の本発明の実施例について説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
[試験例1] 種々の植物性タンパク質に対する(E)-6-nonenal の効果
種々の植物性タンパク質に対して、(E)-6-nonenal (CAS: 2277-20-5)を添加してその効果を調べた。市販の植物性タンパク質として、粉末ダイズタンパク、粉末ヒヨコマメタンパク、粉末エンドウマメタンパク、粉末リョクトウタンパク、粉末ソラマメタンパク、をそれぞれ使用した。
【0041】
上記各種の植物性タンパク質10gに水90mlを加えて(合計100g)、練り込むとともに、(E)-6-nonenalを100pptとなるように添加し、さらに練り込んだ。
当該添加後の植物性タンパク質について匂いを評価した。評価は熟練のパネラー5人によって行い、匂いを次のように11段階:0(無添加と同等)⇔10(畜肉風味付与効果(畜肉の脂肪香付与効果)が非常に高い)で評価した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
結果としていずれの植物性タンパク質においても、畜肉風味(脂肪香)が付与された。特にダイズタンパクにおいては、素材由来の青臭い匂いが効果的にマスキングされていう効果も奏していた。
【0043】
[試験例2]ダイズタンパクに対して(E)-6-nonenal(トランス-6-ノネナール)が効果を発揮する濃度の検討
ダイズタンパクに水を加えて練り、各種の濃度となるように(E)-6-nonenal(トランス-6-ノネナール)を添加した。粉末ダイズタンパク10gに水90mlを加えて練り込むとともに、(E)-6-nonenal(トランス-6-ノネナール)を表2に記載の各試験区の濃度となるように添加し、さらに練り込んだ。
当該添加後の植物性タンパク質について匂いを評価した。評価は熟練のパネラー5人によって行い、匂いを次のように11段階:0(無添加と同等)⇔10(畜肉風味付与効果(脂肪香付与効果)が非常に高い)で評価した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
植物性タンパク質(ダイズタンパク)に添加する好ましい範囲として、好ましくは0.01ppt ~100ppbであることがわかった。さらに最も効果を奏する範囲として1ppt~1ppbがより好ましいことが分かった。
【0045】
[試験例3] ダイズタンパクに対する(Z)-6-nonenal(シス-6-ノネナール)の添加効果
(E)-6-nonenalに対する比較対象として、(Z)-6-nonenal(シス-6-ノネナール)を添加した効果について試験した。粉末ダイズタンパクを用いて試験例1の場合と同様に水を加えて練り、表3に記載の各試験区の濃度となるように添加し、さらに練り込んだ。官能評価は試験例1の場合と同様である。結果を表3に示す。尚、試験区2は(E)-6-nonenal(トランス-6-ノネナール)の場合である。
【0046】
【表3】
(Z)-6-nonenal(シス-6-ノネナール)濃度が低いと効果がなく、濃度を高くすると畜肉風味(脂肪香)ではない(Z)-6-nonenal由来のグリーン香になり、脂肪香付与効果はみられなかった。
【0047】
[試験例4] 香料化合物の組み合わせ:ダイズタンパクに対する(E)-6-nonenal以外の香料化合物の添加効果
(E)-6-nonenal(トランス-6-ノネナール)とともに使用することで脂肪香付与効果を高める香料化合物について試験した。試験例1と同様にダイズタンパクに水を加えて練り、表4に
示す濃度で(E)-6-nonenalを添加するとともに、酪酸(butanoic acid、CAS: 107-92-6)又はデルタデカラクトン(delta-decalactone、CAS: 705-86-2)についても添加し、さらに練り込んだ。官能評価は試験例1の場合と同様である。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】
(E)-6-nonenal(トランス-6-ノネナール)に加えてbutanoic acid(酪酸)やdelta-decalactone(デルタデカラクトン)を併用することで、より畜肉風味付与効果(脂肪香付与効果)が大きくなった。
【0049】
[試験例5] 粒状ダイズタンパク使用パテに対する(E)-6-nonenal(トランス-6-ノネナール)ほか2種の香料化合物の添加効果
表5に記載のように市販の粒状ダイズタンパク50gに2倍量水を加えて戻した後、そのうち50gを採取し(粒状ダイズタンパク17g、水33gに相当)、これに豆乳、パン粉、鶏卵、食塩、パーム油及び香料((E)-6-nonenal等)を配合して練った後、整形し、フライパンで焼いて調理を行い、これによって得られたダイズタンパクの調理品について試験例1と同様に官能評価した。結果を表6に示す。
【0050】
【0051】
【表6】
植物性
タンパク質として粒状ダイズタンパクを使用したパテに対しても、試験例1~4で使用した粉末ダイズタンパクの場合と同様に畜肉風味(脂肪香)の付与効果が見られた。
【0052】
[試験例6] 香料化合物の組み合わせ:ダイズタンパク+畜肉タンパクに対する(E)-6-nonenal以外の香料化合物の添加効果
試験例5とは異なり、ダイズタンパクのみではなく、これに畜肉タンパク(豚挽き肉)を添加したパテを利用して当該パテに対する(E)-6-nonenalほか2種の香料化合物を添加した場合の畜肉風味(脂肪香)の付与の効果について調べた。
表7に記載のように粒状ダイズタンパクに加えて畜肉である豚挽き肉を加えて試験例5の場合と同様に調理し、これによって得られたダイズタンパクの調理品について試験例1と同様に官能評価した。結果を表8に示す。
【0053】
【0054】
【表8】
原料として植物性タンパク質のみの場合ではなく、畜肉タンパク質を含む場合であっても畜肉風味(脂肪香)の増強効果を奏することが分かった。
【0055】
[試験例7] 添加後において熱風乾燥した場合の(E)-6-nonenalほか2種の香料化合物の添加効果
試験例5の場合と同様に、市販の粒状ダイズタンパクに各種成分を加え、表9に記載の濃度となるように添加し、さらに練り込んだ。その後、使用パテをシート状(約10mm×約20mm×約5mm)となるように成型した後、熱風乾燥(60℃、60分間)を行った。
当該熱風乾燥後の乾燥品について、10gに対して熱湯を100g加えて湯戻し後に、官能評価を行った。官能評価は試験例1の場合と同様である。結果を表9に示す。
【0056】
【表9】
乾燥後においても脂肪香は十分残存しており、本件発明が乾燥具材に対して好適に適用できることが分かった。
【0057】
[試験例8] 乾燥具材(ダイズタンパク及び豚肉含有)に対する(E)-6-nonenal ほか2種の香料化合物の後添加した場合の効果
ダイズタンパクと豚肉を半量ずつ使用し、醤油、砂糖等の調味料で味付けし、加熱後、乾燥した乾燥具材を利用して(E)-6-nonenalの添加効果について調べた。
当該乾燥具材に対して、(E)-6-nonenalほか2種の香料(酪酸、デルタデカラクトン)を添加して、その効果について調べた。前記乾燥具材(ダイズタンパク及び豚肉含有)について、10gに対して熱湯を100g加えて
湯戻し後に、官能評価を行った。官能評価は試験例1の場合と同様である。結果を表10に示す。
【0058】
【表10】
ダイズタンパク及び豚肉を含有する乾燥具材に対し、乾燥後に(E)-6-nonenal添加した場合、湯戻し後も、脂肪香が増強し好ましい具材となった。