(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150096
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】加工システム
(51)【国際特許分類】
B24B 49/02 20060101AFI20220929BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220929BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20220929BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20220929BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B24B49/02 Z
B24B41/06 L
B24B41/06 A
B24B49/12
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052535
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 創
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB82
3C034BB92
3C034BB93
3C034CA03
3C034CA22
3C034CB08
3C034CB14
3C034DD10
3C043BA04
3C043BA09
3C043BA14
3C043BA15
3C043BA16
3C043CC04
3C043CC12
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD14
5F057AA02
5F057AA12
5F057AA19
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA14
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5F057DA11
5F057EB17
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5F057FA46
5F057GA01
5F057GA13
5F057GA16
5F057GA27
5F057GB01
5F057GB02
5F057GB13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ワークを精度良く加工可能な加工システムを提供する。
【解決手段】加工システムは、ワークW1を保持するチャック3の回転軸3aを傾斜可能なチルト装置と、精研削後のワークW1の膜厚を非接触で測定する膜厚測定装置7と、膜厚測定装置7の測定値に基づいて精研削後のワークW1の形状を演算し、精研削後のワークW1において最大厚みと最小厚みの差が小さくなるようにチルト装置の傾斜角を算出し、傾斜角だけチャック3を傾斜させる制御装置と、を備え、精研削後のワークW1に対して、傾斜角だけチャック3を傾斜させた状態で、粗研削、中研削及び精研削の順に再加工するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前研削及び精研削の順にワークを加工する加工システムであって、
前記ワークを保持するチャックの回転軸を傾斜可能なチルト装置と、
精研削後の前記ワークの膜厚を非接触で測定する測定装置と、
前記測定装置の測定値に基づいて前記精研削後のワークの形状を演算し、前記精研削後のワークにおいて最大厚みと最小厚みの差が小さくなるように前記チルト装置の傾斜角を算出し、前記傾斜角だけ前記チャックを傾斜させる制御装置と、
を備え、
前記精研削後のワークに対して、前記傾斜角だけ前記チャックを傾斜させた状態で、前研削及び精研削の順に再加工することを特徴とする加工システム。
【請求項2】
前記チャックを所定軌道上で回転移動させるインデックステーブルをさらに備え、
前記測定装置は、平面から視て前記軌道上に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを薄く加工する加工システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ワーク」という)を薄く平坦に研削するものとして、回転する研削砥石の研削面をワークに押し当て、ワークの研削を行う研削装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、粗研削加工及び精研削加工の順にワークを加工し、保護テープ及びワーク裏面の洗浄を行った後に、静電容量センサによってワークの厚みを測定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワークを精度良く加工するために、ワークの精研削を一時停止して、ワークの厚み測定を行い、その測定結果に基づき同一ワークに対して再び精研削を行う場合がある。しかしながら、昨今では、砥石の粒度が細かくなっており、厚み測定後に精研削を再開しても、砥石の目立てが不十分で砥石の切れが悪くなり、再研削後のワークの形状が不安定になったり面焼けする虞があった。
【0006】
そこで、ワークを精度良く加工するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る加工システムは、前研削及び精研削の順にワークを加工する加工システムであって、前記ワークを保持するチャックの回転軸を傾斜可能なチルト装置と、精研削後の前記ワークの膜厚を非接触で測定する測定装置と、前記測定装置の測定値に基づいて前記精研削後のワークの形状を演算し、前記精研削後のワークにおいて最大厚みと最小厚みの差が小さくなるように前記チルト装置の傾斜角を算出し、前記傾斜角だけ前記チャックを傾斜させる制御装置と、を備え、前記精研削後のワークに対して、前記傾斜角だけ前記チャックを傾斜させた状態で、前研削及び精研削の順に再加工する。
【0008】
この構成によれば、測定装置が、1段階目の加工が終えたワークの膜厚を測定し、制御装置が、1段階目の加工後のワークの形状からワークを略平坦に加工可能なチャックの回転軸の傾斜角度を算出し、この傾斜角度だけチャックの回転軸を傾斜させた状態で、ワークに対して前研削及び精研削を再度行うことにより、精研削砥石が細かい場合であっても、前研削により精研削砥石が目立てされて砥石の切れが維持されるため、ワークを効率良く且つ高精度に加工することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ワークを精度良く加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加工システムを示す平面図。
【
図2】ワーク上における測定装置の測定点の位置関係を示す模式図。
【
図3】ワークに対して1段階目の加工を行う様子を示す模式図。
【
図4】ワークに対して2段階目の加工を行う様子を示す模式図。
【
図5】2枚目のワークに対して加工を行う様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0012】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0013】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0014】
図1は、加工システム1の基本的構成を示す平面図である。加工システム1は、ワークWに対して複数の研削工程を連続して行うものである。なお、加工システム1は、研削加工又は研磨加工の何れか一方のみを行うものであっても構わない。
【0015】
加工システム1には、プラットフォームステージST1、粗研削ステージST2、中研削ステージST3及び精研削ステージST4の4つのステージが設けられている。なお、精研削ステージST4より上流側でワークWを順に加工するステージ(前研削ステージ)の数は、粗研削ステージST2及び中研削ステージST3の2つに限定されず、1又は3以上であっても構わない。
【0016】
加工システム1は、
図1の紙面を時計回りに回動可能なインデックステーブル2と、インデックステーブル2の回転軸2aを中心に同心円上で等間隔に離間して配置された4つのチャック3と、を備えている。インデックステーブル2が、90°ずつステップ回転することにより、チャック3は、プラットフォームステージST1、粗研削ステージST2、中研削ステージST3、精研削ステージST4の順に移動可能である。
【0017】
チャック3は、回転テーブル31の上面にアルミナ等の多孔質材料からなる後述の吸着体32が埋設されている。チャック3は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、チャック3に載置されたワークWがチャック3に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ワークWとチャック3との吸着が解除される。
【0018】
回転テーブル31は、図示しないチャックスピンドルに接続されている。チャックスピンドルは、回転テーブル31に垂直な回転軸回りに回転駆動可能に構成されている。なお、チャック3は、回転テーブル31を傾斜可能で公知の構成から成る図示しないチルト機構を備えていても構わない。
【0019】
プラットフォームステージST1では、研削前のワークWが図示しない搬送アームによってチャック3上に搬送される。ワークWには、その向きを所定方向に一致させる位置出しが予め行われている。また、研削後のワークWが搬送アームによってチャック3から図示しない洗浄装置に搬出される。
【0020】
粗研削ステージST2には,粗研削装置4が設けられている。粗研削装置4は、図示しない粗研削砥石と、粗研削砥石が下端に取り付けられるとともに粗研削砥石を回転可能に支持する第1のスピンドル41と、第1のスピンドル41を鉛直方向に昇降させる第1のスピンドル送り機構42と、を備えている。
【0021】
粗研削砥石には、例えば#8000のカップ型砥石が用いられる。第1のスピンドル送り機構42は、第1のスピンドル41の移動方向を案内する2本のリニアガイド43と、第1のスピンドル41を昇降させるボールネジスライダ機構44と、で構成されている。
【0022】
また、粗研削装置4には、第1の接触式厚み測定装置45が設けられている。第1の接触式厚み測定装置45は、先端に接触子が設けられた一対の検出アーム46、47を備えている。
【0023】
粗研削加工中に、検出アーム46の接触子がワークWの上面に当接し、検出アーム47の接触子がチャック3の上面に当接することにより、検出アーム46、47の各接触子が検出する高さの差分からワークWの厚みを測定可能である。なお、第1の接触式厚み測定装置45が測定したワークWの厚みには、ワークWの一面に形成されたデバイスや一面に貼着された保護テープ等の厚みが含まれている。
【0024】
中研削ステージST3には、中研削装置5が設けられている。中研削装置5は、図示しない中研削砥石と、中研削砥石が下端に取り付けられるとともに中研削砥石を回転可能に支持する第2のスピンドル51と、第2のスピンドル51を鉛直方向に昇降させる第2のスピンドル送り機構52と、を備えている。
【0025】
中研削砥石には、例えば#8000のカップ型砥石が用いられる。第2のスピンドル送り機構52は、第2のスピンドル51の移動方向を案内する2本のリニアガイド53と、第2のスピンドル51を昇降させるボールネジスライダ機構54と、で構成されている。
【0026】
また、中研削装置5には、第2の接触式厚み測定装置55が設けられている。第2の接触式厚み測定装置55は、先端に接触子が設けられた一対の検出アーム56、57を備えている。
【0027】
中研削加工中に、検出アーム56の接触子がワークWの上面に当接し、検出アーム57の接触子がチャック3の上面に当接することにより、検出アーム56、57の各接触子が検出する高さの差分からワークWの厚みを測定可能である。なお、第2の接触式厚み測定装置55が測定したワークWの厚みには、ワークWの一面に形成されたデバイスや裏面に貼着された保護テープ等の厚みが含まれている。
【0028】
精研削ステージST4には、精研削装置6が設けられている。精研削装置6は、精研削砥石61と、精研削砥石61が下端に取り付けられるとともに精研削砥石61を回転可能に支持する第3のスピンドル62と、第3のスピンドル62を鉛直方向に昇降させる図示しない第3のスピンドル送り機構と、を備えている。
【0029】
精研削砥石61は、例えば#8000のカップ型砥石である。また、精研削ステージST4には、後述する非接触式厚み測定装置63が設けられている。非接触式厚み測定装置63は、精研削中にワークWの厚み(膜厚)を測定する。
【0030】
加工システム1には、膜厚測定装置7が設けられている。膜厚測定装置7は、ワークWの厚み(膜厚)を非接触で測定する。なお、膜厚測定装置7が測定したワークWの膜厚には、ワークWの一面に形成されたデバイスや一面に貼着された保護テープ等の厚みは含まれない。膜厚測定装置7は、例えば、分光干渉式の膜厚測定器である。
【0031】
膜厚測定装置7は、加工システム1内に架設されたフレーム1aに固定され、インデックステーブル2の上方に設置されている。膜厚測定装置7がワークWの膜厚を測定する測定点は、平面から視てチャック3の中心軸の回転軌道O上に設定されている。
【0032】
図2は、ワークW上における膜厚測定装置7の測定点の位置関係を示す模式図である。なお、
図2では、インデックステーブル2の回転数を20deg/s、チャック3の回転数を400rpm、膜厚測定装置7のサンプリング周期を4msecに設定した場合の膜厚測定装置7の測定点の位置関係を例示している。ワークWは、膜厚測定装置7の直下を回転しながら通過するため、膜厚測定装置7の測定点の軌跡は、ワークWの中心を含みワークW全面に拡がる。なお、膜厚測定装置7の測定点の軌跡は、インデックステーブル2の回転数、チャック3の回転数、膜厚測定装置7のサンプリング周期によって適宜変更可能である。
【0033】
膜厚測定装置7は、インデックステーブル2の回転方向において、精研削ステージST4の上流側及び下流側にそれぞれ1台ずつ設けられている。これは、加工後のワークWを精研削ステージST4からプラットフォームステージST1に移送するときに、インデックステーブル2の回転機構の関係上、インデックステーブル2が
図1紙面上で時計回りに回転する場合と反時計回りに回転する場合があり、インデックステーブル2の各回転方向に対応するために、膜厚測定装置7が、精研削ステージST4の上流側及び下流側にそれぞれ1台ずつ設けられている。
【0034】
加工システム1の動作は、制御装置8によって制御される。制御装置8は、加工システム1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置8は、例えば、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置8の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0035】
次に、同一チャックで2枚のワークWを順に加工する手順について説明する。以下、2枚のワークWを区別する場合には、符号W1、W2を付して区別する。
【0036】
<1枚目のワーク(1段階目の加工)>
プラットフォームステージST1にて、ワークW1がチャック3上に載置される。そして、真空源が起動すると、ワークW1とチャック3との間に負圧が供給されて、ワークW1がチャック3に吸着保持される。
【0037】
次に、インデックステーブル2が回転して、チャック3が粗研削ステージST2に向けて移動する。
【0038】
チャック3が粗研削ステージST2に移動し、ワークW1に対する粗研削加工が行われる。粗研削加工では、粗研削砥石及びチャック3をそれぞれ回転させた状態で、粗研削砥石の研削面をワークW1に押し当てて、ワークW1の粗研削を行う。第1の接触式厚み測定装置45の測定値が所望の厚みに達すると、粗研削装置4は、粗研削砥石及びチャック3の回転を停止させ、粗研削砥石を上方に退避させて、粗研削を終了する。
【0039】
次に、インデックステーブル2が回転して、チャック3が中研削ステージST3に向けて移動する。中研削ステージST3では、ワークW1に対する中研削加工が行われる。中研削加工では、中研削砥石及びチャック3をそれぞれ回転させた状態で、中研削砥石の研削面をワークW1に押し当てて、ワークW1の中研削を行う。第2の接触式厚み測定装置55の測定値が所望の厚みに達すると、中研削装置5は、中研削砥石及びチャック3の回転を停止させ、中研削砥石を上方に退避させて、中研削を終了する。
【0040】
次に、インデックステーブル2が回転して、チャック3が精研削ステージST4に向けて移動する。精研削ステージST4では、ワークW1に対する精研削加工が行われる。具体的には、
図3(a)~(c)に示すように、精研削加工では、精研削砥石61及びチャック3をそれぞれ回転させた状態で、精研削砥石61の研削面をワークW1に押し当てて、ワークW1の精研削を行う。非接触式厚み測定装置63の測定値が所望の厚みに達すると、精研削装置6は、精研削砥石61及びチャック3の回転を停止させ、精研削砥石61を上方に退避させて、精研削を終了する。なお、精研削を終える非接触式厚み測定装置63の測定値は、最終目標厚みに所定のオフセット厚みを加えたものに設定される。
【0041】
次に、インデックステーブル2が回転して、チャック3がプラットフォームステージST1に向けて移動する際に、
図3(d)に示すように、膜厚測定装置7が、ワークWの全面に亘る複数の測定点におけるワークW1の膜厚を測定する。ワークW1上の膜厚測定装置7の測定点は、例えば200点に設定される。測定点が平面から視てチャック3の中心軸の回転軌道O上に設定されている膜厚測定装置7は、ワークW1がチャック3の中心軸回りに自転するワークW1がプラットフォームステージST1に戻る途中で、ワークW1の研削加工のスループットを低下させることなく、ワークW1の膜厚測定を行うことができる。
【0042】
次に、制御装置8は、膜厚測定装置7の測定値に基づいて、精研削加工後のワークW1の形状を演算する。例えば、
図3(d)に図示されたワークW1は、周縁が中央より厚い中凹形状である。制御装置8は、1枚目に加工したワークW1において膜厚の最大値及び最小値の差が小さくなるようにチルト機構の傾斜角を算出する。なお、ワークW1の形状とチルト機構の傾斜角との関係については、実験等により予め設定されている。
【0043】
<1枚目のワーク(2段階目の加工)>
次に、精研削後のワークW1に対して、再び粗研削、中研削及び精研削を行う。
【0044】
具体的には、精研削後のワークW1を保持するチャック3が、上述した1段階目の加工と同様に、粗研削ステージST2、中研削ステージST3及び精研削ステージST4の順に移動し、精研削後のワークW1に対して粗研加工、中研削加工及び精研削加工が順に行われる。
【0045】
粗研削ステージST2、中研削ステージST3及び精研削ステージST4における精研削後のワークW1に対する2段階目の加工では、
図4(a)、(b)に示すように、チャック3の回転軸3aは、ワークW1の1段階目の精研削後の形状に基づいて算出されたチルト機構の傾斜角だけ傾斜された状態で、粗研削、中研削及び精研削が行われる。
【0046】
そして、
図4(c)に示すように、非接触式厚み測定装置63の測定値が所望の厚みに達すると、精研削を終了する。なお、精研削を終える非接触式厚み測定装置63の測定値は、最終目標厚みに設定される。
【0047】
次に、インデックステーブル2が回転して、チャック3がプラットフォームステージST1に向けて移動する際に、
図4(d)に示すように、膜厚測定装置7が、ワークW1の全面に亘る複数の測定点における膜厚を測定する。
【0048】
そして、制御装置8は、膜厚測定装置7の測定値に基づいて、精研削後のワークW1の形状を演算する。例えば、
図4(d)に図示されたワークW1は、最大厚みと最小厚みの差が1段階目の精研削後のワークW1より小さく略平坦に形成されている。さらに、制御装置8は、2段階目の加工後のワークW1において膜厚の最大値及び最小値の差が小さくなるようにチルト機構の傾斜角を算出する。
【0049】
このようにして、精研削砥石61の表面粗さが従来の値(約10~13nm)より細かい値(約3~4nm)に設定された場合に、従来のように1段階目の加工後のワークW1に対して、精研削砥石61で2段階目の加工を行う場合、精研削砥石61の切れが悪く、2段階目の加工後のワークW1の形状が不安定になったり面焼けする虞があるが、1段階目の加工後のワークW1に対して、粗研削、中研削及び精研削の順で2段階目の加工を行うことにより、精研削砥石61が目立てされて切れが維持されるため、ワークW1を安定して加工することができる。
【0050】
そして、プラットフォームステージST1にて、ワークW1とチャック3との間に吸着保持が解除されて、ワークW1がチャック3から洗浄装置に移送される。
【0051】
<2枚目のワーク>
次に、1枚目のワークW1と同一のチャック3に2枚目のワークW2が吸着保持され、上述した1枚目のワークW1に対する粗研削加工、中研削加工と同様にして2枚目のワークW2に対して粗研削加工、中研削加工が行われる。なお、粗研削ステージST2及び中研削ステージST3では、チャック3の回転軸3aの傾斜角度は、1枚目のワークW1を加工した際と略同一に設定されている。
【0052】
その後、インデックステーブル2が回転して、チャック3が精研削ステージST4に向けて移動する。精研削ステージST4では、ワークW1に対する精研削加工が行われる。
【0053】
具体的には、
図5(a)に示すように、まず、2段階目の研削後のワークW1の形状に基づいて算出されたチルト機構の傾斜角だけチャック3の回転軸3aを傾斜させる。すなわち、ワークWの大凡の形状が定まる粗研削ステージST2及び中研削ステージST3では、ワークWに対してチャック3の回転軸3aの傾斜角度は略同一に設定された状態で加工を実施するのに対して、ワークWの細かい形状が定める精研削ステージST4では、2枚目のワークW2を加工する際に、1枚目のワークW1の加工結果を考慮したチャック3の回転軸3aの傾斜角度に設定される。
【0054】
次に、
図5(b)に示すように、精研削砥石61及びチャック3をそれぞれ回転させた状態で、精研削砥石61の研削面をワークW2に押し当てて、ワークW2の精研削を行う。
【0055】
そして、非接触式厚み測定装置63の測定値が所望の厚みに達すると、
図5(c)に示すように、精研削装置6は、精研削砥石61及びチャック3の回転を停止させ、精研削砥石61が上方に退避させて、精研削を終了する。
【0056】
このようにして、膜厚測定装置7が、同一のチャック3で連続して加工されるワークW1、2に対して、先行して加工されたワークW1の膜厚を加工後に速やかに測定し、制御装置8が、ワークW1の形状からワークW1を略平坦に加工可能なチャック3の回転軸3aの傾斜角度を算出し、精研削装置6が、この傾斜角度だけチャック3の回転軸3aを傾斜させた状態で、ワークW2を精研削することにより、ワークW1の加工結果を踏まえてワークW2を効率良く且つ高精度に加工することができる。
【0057】
さらに、ワークWの大凡の形状が定まる粗研削ステージST2及び中研削ステージST3では、何れのワークWに対しても同様の条件で加工を行い、ワークWの細かい形状が定める精研削ステージST4では、先行して加工されたワークWの形状を考慮して、その後に加工されるワークWを傾斜させた状態で精研削するため、複数のワークWを安定して高精度に加工することができる。
【0058】
次に、インデックステーブル2が回転して、チャック3がプラットフォームステージST1に向けて移動する際に、
図5(d)に示すように、膜厚測定装置7が、ワークW2の全面に亘る複数の測定点におけるワークW2の膜厚を測定する。ワークW2上の膜厚測定装置7の測定点は、例えば200点に設定される。
【0059】
そして、制御装置8は、膜厚測定装置7の測定値に基づいて、精研削加工後のワークW2の形状を演算する。例えば、
図5(d)に図示されたワークW2は、最大厚みと最小厚みの差がワークW1より小さく略平坦に形成されている。
【0060】
以下、必要に応じて、3枚目以降のワークWに対しても同様に、同一のチャック3で直近に加工されたワークWの形状に基づいて、直近に加工されたワークWにおいて最大厚みと最小厚みの差が小さくなるように加工可能なチャック3の回転軸3aの傾斜角度を算出し、その傾斜角度だけチャック3の回転軸3aを傾斜させた状態で直後のワークWの研削を行う。
【0061】
このようにして、本発明に係る加工システム1は、粗研削、中研削及び精研削の順にワークWを加工する加工システム1であって、ワークWを保持するチャック3の回転軸3aを傾斜可能なチルト装置と、精研削後のワークWの膜厚を非接触で測定する膜厚測定装置7と、膜厚測定装置7の測定値に基づいて精研削後のワークWの形状を演算し、精研削後のワークWにおいて最大厚みと最小厚みの差が小さくなるようにチルト装置の傾斜角を算出し、傾斜角だけチャック3を傾斜させる制御装置8と、を備え、精研削後のワークWに対して、傾斜角だけチャック3を傾斜させた状態で、粗研削、中研削及び精研削の順に再加工するように構成されている。
【0062】
この構成により、膜厚測定装置7が、1段階目の加工が終えたワークW1の膜厚を速やかに測定し、制御装置8が、ワークW1の形状からワークW1を略平坦に加工可能なチャック3の回転軸3aの傾斜角度を算出し、この傾斜角度だけチャック3の回転軸3aを傾斜させた状態で、ワークW1に対して粗研削、中研削及び精研削を再度行うことにより、精研削装置6の砥石が細かい場合であっても、粗研削及び中研削を経ることにより精研削砥石61の切れが維持されるため、ワークW1を効率良く且つ高精度に加工することができる。
【0063】
さらに、同一のワークW1に対して、2段階で加工を行うことにより、1段階目の膜厚測定時には、研削時の加工熱によるチャック3等の熱膨張や熱収縮が収束していない虞があるのに対して、2段階目の膜厚測定時には、研削時の加工熱によるチャック3等の熱膨張や熱収縮が収束しており、ワークW1の形状を精度良く演算することができる。
【0064】
また、本発明に係る加工システム1は、チャック3を軌道O上で回転移動させるインデックステーブル2をさらに備え、膜厚測定装置7は、平面から視て軌道O上に設置されるように構成されている。
【0065】
この構成により、膜厚測定装置7の測定点が、平面から視てインデックステーブル2の軌道O上に設定されていることにより、ワークWの研削加工のスループットを低下させることなく、ワークWの膜厚測定を行うことができる。
【0066】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0067】
1 :加工システム
2 :インデックステーブル
2a :(インデックステーブル2の)回転軸
3 :チャック
3a :(チャックの)回転軸
31 :回転テーブル
32 :吸着体
4 :粗研削装置
41 :第1のスピンドル
42 :第1のスピンドル送り機構
43 :(粗研削装置の)リニアガイド
44 :(粗研削装置の)ボールネジスライダ機構
45 :第1の接触式厚み測定装置
46、47:検出アーム
5 :中研削装置
51 :第2のスピンドル
52 :第2のスピンドル送り機構
53 :(中研削装置の)リニアガイド
54 :(中研削装置の)ボールネジスライダ機構
55 :第2の接触式厚み測定装置
56、57 :検出アーム
6 :精研削装置
61 :精研削砥石
62 :第3のスピンドル
63 :非接触式厚み測定装置
7 :膜厚測定装置
8 :制御装置
ST1:プラットフォームステージ
ST2:粗研削ステージ
ST3:中研削ステージ
ST4:精研削ステージ
W、W1、W2 :ワーク