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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150122
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20220929BHJP
   G01B 9/02 20220101ALI20220929BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 21/68 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G01B9/02
G01B11/00 G
H01L21/68 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052581
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼津 将彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 淑人
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064BB01
2F064CC04
2F064FF01
2F065AA02
2F065AA03
2F065DD03
2F065FF51
2F065GG04
2F065MM02
2H197AA09
2H197CD12
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD43
2H197CD48
2H197DB16
2H197DB17
2H197HA03
2H197HA05
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA13
5F131CA18
5F131DA02
5F131EA02
5F131FA17
5F131JA10
5F131JA14
5F131JA15
5F131JA16
5F131JA24
5F131KA17
5F131KA63
5F131KB12
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】 基板ステージの位置計測精度を向上する。
【解決手段】 基板上に露光光を照射して、前記基板を露光する露光装置であって、物体を保持して移動可能な移動体と、前記移動体の位置情報を計測するレーザ干渉計と、を含む露光本体部と、前記露光本体部を収納するチャンバと、浄化した気体を前記チャンバ内に吐出する吐出口を備える空調装置と、圧縮空気を導入する導入口と、前記チャンバ内の気体を取り込む取込口と、気体を吹き出す吹出口と、を有し、前記レーザ干渉計が射出するレーザ光の光路を通過する気流を生成する気流生成部と、を備え、前記気流生成部は、前記空調装置の前記吐出口の近傍に設けられる、露光装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に露光光を照射して、前記基板を露光する露光装置であって、
物体を保持して移動可能な移動体と、前記移動体の位置情報を計測するレーザ干渉計と、を含む露光本体部と、
前記露光本体部を収納するチャンバと、
浄化した気体を前記チャンバ内に吐出する吐出口を備える空調装置と、
圧縮空気を導入する導入口と、前記チャンバ内の気体を取り込む取込口と、気体を吹き出す吹出口と、を有し、前記レーザ干渉計が射出するレーザ光の光路を通過する気流を生成する気流生成部と、
を備え、
前記気流生成部は、前記空調装置の前記吐出口の近傍に設けられる、
露光装置。
【請求項2】
前記気流生成部の前記取込口は、前記空調装置の前記吐出口と対向する、
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記気流生成部は、前記空調装置の前記吐出口に固定されている、
請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記気流生成部は、前記レーザ干渉計を収容する筐体に固定されている、
請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項5】
前記物体が移動される方向において、前記レーザ干渉計と、前記気流生成部と、は、前記移動体と前記空調装置の前記吐出口との間に配置される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記気流生成部は、前記導入口から前記圧縮空気を導入することにより前記取込口に負圧を生じさせ、当該取込口から前記圧縮空気よりも大量の気体を吸引し、前記吹出口から噴出する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記物体は、前記基板である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記物体は、露光によって前記基板に形成されるパターンが形成されたマスクである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記基板は、フラットパネルディスプレイ装置に用いられる基板である請求項1から請求項9に記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、例えばステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが主として用いられている。
【0003】
近年、露光対象の基板の大型化及び描画パターンの高精細化に伴い、露光精度の向上が求められている。そのため、基板を保持する基板ステージの位置決め精度の向上が要求されており、基板ステージの位置を精度よく計測することが求められている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-133398号公報
【発明の概要】
【0005】
開示の態様によれば、基板上に露光光を照射して、前記基板を露光する露光装置であって、物体を保持して移動可能な移動体と、前記移動体の位置情報を計測するレーザ干渉計と、を含む露光本体部と、前記露光本体部を収納するチャンバと、浄化した気体を前記チャンバ内に吐出する吐出口を備える空調装置と、圧縮空気を導入する導入口と、前記チャンバ内の気体を取り込む取込口と、気体を吹き出す吹出口と、を有し、前記レーザ干渉計が射出するレーザ光の光路を通過する気流を生成する気流生成部と、を備える露光装置が提供される。
【0006】
なお、後述の実施形態の構成を適宜改良しても良く、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させても良い。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1実施形態に係る露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る気体流量増幅型エアノズルの構造を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態における気体流量増幅型エアノズルの設置位置について説明するための図である。
図4図4は、第2実施形態における気体流量増幅型エアノズルの設置位置について説明するための図である。
図5図5(A)は、変形例1に係る気体流量増幅型エアノズルの概略構成を示す図であり、図5(B)は、変形例2に係る気体流量増幅型エアノズルの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《第1実施形態》
第1実施形態に係る露光装置について、図1図3に基づいて説明する。図1は、第1実施形態に係る露光装置EXの構成を概略的に示す図である。なお、図1において、矢印は、気体の流れを示している。
【0009】
露光装置EXは、液晶露光装置本体10(以下、露光装置本体10と記載する)と、床F上に設置された箱状の気密性の高いチャンバ50と、チャンバ50の内部全体の空調を行うための空調システム70と、を備える。
【0010】
空調システム70は、チャンバ50内に供給された空気を回収するリターンダクト75と、空調装置71と、を備える。
【0011】
空調装置71は、リターンダクト75で回収された空気が流入する調整装置74と、複数の防塵フィルタ72と、調整装置74と防塵フィルタ72とを接続するダクト73と、を備える。
【0012】
調整装置74は、リターンダクト75で回収された空気の温度及び湿度を目標温度及び目標湿度に調整し、ケミカルフィルタにより所定の不純物を除去した空気を送風ファンによりチャンバ50側に送風する。
【0013】
防塵フィルタ72は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ又はULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタ等であり、空気中の塵埃を除去する。各防塵フィルタ72は、ダクト73を介して調整装置74に接続されている。調整装置74が送出した空気は、防塵フィルタ72により塵埃が除去されて、吐出口71aからチャンバ50内に供給される。このチャンバ50内に供給された空気の大部分は、リターンダクト75によって回収され、再び空調装置71に戻されて循環使用される。
【0014】
露光装置本体10は、全体がチャンバ50内に設置されている。露光装置本体10は、照明系12、回路パターンなどが形成されたマスクMを保持するマスクステージ14、投影光学系16、光学定盤18、表面にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを保持する基板ステージ装置20、及びこれらの制御系等を有している。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系16に対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向として説明を行うとともに、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
【0015】
照明系12は、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。照明系12は、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。
【0016】
マスクステージ14は、光透過型のマスクMを保持している。マスクステージ14は、例えばリニアモータを含む駆動系(不図示)を介してマスクMを照明系12(照明光IL)に対してX軸方向(スキャン方向)に所定の長ストロークで駆動するとともに、Y軸方向、及びθz方向に微少駆動する。マスクMの水平面内の位置情報は、例えばレーザ干渉計またはエンコーダを含むマスクステージ位置計測系(不図示)により求められる。
【0017】
投影光学系16は、マスクステージ14の下方に配置されている。投影光学系16は、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される投影光学系と同様な構成の、いわゆるマルチレンズ投影光学系であり、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成する複数の光学系を備えている。
【0018】
露光装置本体10では、照明系12からの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光により、投影光学系16を介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、基板P上の照明領域に共役な照明光の照射領域(露光領域)に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動することで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。
【0019】
光学定盤18は、上記マスクステージ14、及び投影光学系16を支持している。
【0020】
基板ステージ装置20は、基板Pを投影光学系16(照明光IL)に対して高精度で位置決めするためのものであり、基板Pを水平面(X軸方向、及びY軸方向)に沿って所定の長ストロークで駆動するとともに、該基板Pを6自由度方向に微少駆動する。基板ステージ装置20の構成は、特に限定されないが、例えば特開2004-14915号公報、あるいは米国特許出願公開第2012/0057140号明細書などに開示されるような、ガントリタイプの2次元粗動ステージと、該2次元粗動ステージに対して微少駆動される微動ステージとを含む、いわゆる粗微動構成のステージ装置を用いることが好ましい。
【0021】
基板ステージ装置20は、基板Pを保持する基板ステージ21を備え、基板ステージ21の+X側の側面には、ミラーベース23Xを介して、X軸に直交する反射面を有するX移動鏡(バーミラー)22Xが固定されている。
【0022】
光学定盤18の+X方向の端部には、基板Pを保持する基板ステージ21のX軸方向の位置を計測するレーザ干渉計システム81が取り付けられている。
【0023】
レーザ干渉計システム81は、レーザ干渉計81aと、レーザ干渉計81aおよびその他の構成を収容する筐体81bと、を備える。レーザ干渉計81aは、X移動鏡22Xと、投影光学系16の近傍に固定されたX固定鏡24Xと、に計測ビームを照射する。なお、図3では、レーザ干渉計81aがX移動鏡22Xに照射する計測ビームの光路をIPX1、レーザ干渉計81aがX固定鏡24Xに照射する計測ビームの光路をIPX2と表記している。レーザ干渉計81aは、X固定鏡24Xの位置を基準として、基板ステージ21のX軸方向の位置情報を計測する。
【0024】
また、不図示ではあるが、基板ステージ21の+Y側の側面には、ミラーベースを介して、Y軸に直交する反射面を有するY移動鏡が固定されている。また、光学定盤18の+Y方向の端部には基板ステージ21のY軸方向の位置情報を計測するレーザ干渉計システム(不図示)が取り付けられている。レーザ干渉計システムのレーザ干渉計は、Y移動鏡と、投影光学系16の近傍に固定されたY固定鏡と、に計測ビームを照射し、Y固定鏡の位置を基準として、基板ステージ21のY軸方向の位置情報を計測する。
【0025】
レーザ干渉計では、計測光路上の気体の温度や圧力、湿度等のゆらぎに起因する計測光路上の屈折率の変化が計測誤差の要因になりうる。そこで、光路上の屈折率の変化を低減するために、レーザ干渉計から射出されたレーザ光の光路に気体を流す干渉計光路空調装置を設けることが行われている。例えば、レーザ光の光路に対して、上方から空気を吹き付ける干渉計光路空調装置が知られている。
【0026】
しかしながら、干渉計光路空調装置から流す気体の温度とチャンバ50内の雰囲気温度とが異なると、計測光路上の温度を安定化することが出来ない場合がある。また、干渉計光路空調装置から流す気体にパーティクルが含まれていると、チャンバ50内のパーティクルを増やしてしまう。さらに、光路全体にわたって温度や圧力、湿度等を安定化させる場合、干渉計光路空調装置から流す気体の流量を増やす必要があるため、大きな圧縮空気の用力が必要である。
【0027】
そこで、本第1実施形態では、干渉計光路空調装置として、気体流量増幅型エアノズル91を用いる。図2は、気体流量増幅型エアノズル91の構造を示す断面図である。気体流量増幅型エアノズル91は、ベルヌーイ効果を利用して、気体流量を増幅させるエアノズルである。
【0028】
図2に示すように、気体流量増幅型エアノズル91は、第1本体部92と、第2本体部93と、を備える。第1本体部92は、圧縮空気A2を導入する導入口92aと、チャンバ50内の気体A1を取り込む取込口92bと、を有する。第2本体部93は、気体を吹き出す吹出口93aを有する。
【0029】
第1本体部92と第2本体部93との間には、スリット94が形成されている。導入口92aから導入された圧縮空気A2がスリット94を通過することにより、その流速が増加される。そして、第2本体部93に入った高速の圧縮空気A2が第2本体部93の内壁面に沿って流れることで真空状態(負圧状態)が作られる。これにより、取込口92bからチャンバ50内へ気体A1が引き込まれるとともに、取込口92bから取り込まれた気体A1の移動が加速される。気体全体の流速が増すことで、吹出口93aから吹き出される気体A4の流量と風速が大きく上昇する。さらに、吹出口93aから吹き出された気体A4が、吹出口93a周辺の気体A3を誘引する。これにより、大量の気体を気体流量増幅型エアノズル91から噴出することができる。気体流量増幅型エアノズル91から噴出される気体の流量は、導入口92aから導入された圧縮空気A2の流量の、例えば4~20倍である。
【0030】
次に、気体流量増幅型エアノズル91の設置位置について説明する。図1に示すように、気体流量増幅型エアノズル91は、基板Pが移動される走査方向(X軸方向)において、基板ステージ21と空調装置71の吐出口71aとの間に設けられている。より具体的には、気体流量増幅型エアノズル91は、空調装置71の吐出口71aの近傍に設けられている。なお、レーザ干渉計81aも、走査方向において基板ステージ21と空調装置71の吐出口71aとの間に設けられている。
【0031】
図3は、気体流量増幅型エアノズル91の設置位置について説明するための図である。図3に示すように、第1実施形態では、気体流量増幅型エアノズル91は、取付部材96を用いて、空調装置71の吐出口71aに固定されている。より具体的には、気体流量増幅型エアノズル91は、取込口92bが空調装置71の吐出口71aと対向するように、空調装置71の吐出口71aに固定されている。
【0032】
また、気体流量増幅型エアノズル91は、基板ステージ21の走査方向(X軸方向)と水平面内で直交する方向(Y軸方向)において、2か所に設けられている。各気体流量増幅型エアノズル91は、気体流量増幅型エアノズル91が噴出した気体が、X移動鏡22Xとレーザ干渉計81aとの間の光路IPX1と、X固定鏡24Xとレーザ干渉計81aとの間の光路IPX2と、を通過するよう、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向において位置決めされる。なお、図3において、矢印FLは、気体流量増幅型エアノズル91から噴出された気体の流れを示している。
【0033】
このように、第1実施形態では、防塵フィルタ72により浄化した気体をチャンバ50内へ吐出する吐出口71aの近傍に気体流量増幅型エアノズル91が設置されている。これにより、気体流量増幅型エアノズル91には、チャンバ50内へ供給される気体が取込口92bから取り込まれる。また、気体流量増幅型エアノズル91の吹出口93aから吹き出される気体A4に誘引される気体A3も、チャンバ50内へ供給される気体である。このため、チャンバ50内の雰囲気温度とほぼ同じ温度の気体を、光路IPX1及びIPX2に流すことが出来る。これにより、光路IPX1及びIPX2上の温度を安定化することが出来、計測光路上における気体の温度や圧力、湿度等のゆらぎに起因する計測光路上の屈折率の変化を抑制し、基板ステージ21の位置計測精度を向上させることができる。
【0034】
また、本第1実施形態では、防塵フィルタ72を通過したクリーンな気体を気体流量増幅型エアノズル91の吹出口93aから吹き出すことができるため、光路IPX1及びIPX2に流す気体に含まれる単位流量当たりのパーティクル量を低減させることができる。また、気体流量増幅型エアノズル91の駆動源は圧縮空気であり、電気部品・回転部品を有さないため、気体流量増幅型エアノズル91からパーティクルが発生しない。このため、チャンバ50内におけるパーティクルの増加を抑制することができる。
【0035】
また、気体流量増幅型エアノズル91は、導入口92aから導入された圧縮空気A2の流量の、例えば4~20倍の流量の気体を噴出する。したがって、圧縮空気の用力を節約することが出来る。
【0036】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、露光装置EXは、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ21と、基板ステージ21の位置情報を計測するレーザ干渉計81aと、を含む露光装置本体10と、露光装置本体10を収納するチャンバ50と、浄化した気体をチャンバ50内に吐出する吐出口71aを備える空調装置71と、気体流量増幅型エアノズル91と、を備える。気体流量増幅型エアノズル91は、圧縮空気を導入する導入口92aと、チャンバ50内の気体を取り込む取込口92bと、気体を吹き出す吹出口93aと、を有し、レーザ干渉計81aが射出するレーザ光の光路IPX1,IPX2を通過する気流を生成する。さらに、気体流量増幅型エアノズル91は、空調装置71の吐出口71aの近傍に設けられている。
【0037】
気体流量増幅型エアノズル91が、空調装置71の吐出口71aの近傍に設けられているため、気体流量増幅型エアノズル91には、チャンバ50内へ供給される気体が取込口92bから取り込まれる。また、気体流量増幅型エアノズル91の吹出口93aから吹き出される気体A4に誘引される気体A3も、チャンバ50内へ供給される気体となる。このため、チャンバ50内の雰囲気温度とほぼ同じ温度の気体を、光路IPX1及びIPX2に流すことが出来る。これにより、光路IPX1及びIPX2上の温度を安定化することが出来、計測光路上における気体の温度や圧力、湿度等のゆらぎに起因する計測光路上の屈折率の変化を抑制することができる。この結果、基板ステージ21の位置計測精度が向上する。
【0038】
また、本第1実施形態において、気体流量増幅型エアノズル91の取込口92bは、空調装置71の吐出口71aと対向する。これにより、吐出口71aから吐出されたクリーンな気体を、確実に気体流量増幅型エアノズル91に取り込むことができる。
【0039】
また、本第1実施形態において、気体流量増幅型エアノズル91は、空調装置71の吐出口71aに固定されている。気体流量増幅型エアノズル91に圧縮空気を導入するときに、気体流量増幅型エアノズル91が振動する場合がある。本第1実施形態では、露光装置本体10と物理的に分離されている空調装置71の吐出口71aに気体流量増幅型エアノズル91が固定されているため、気体流量増幅型エアノズル91の振動が露光装置本体10に伝搬しない。したがって、気体流量増幅型エアノズル91の駆動によってレーザ干渉計81aが振動することにより、基板ステージ21の位置計測精度が低下することがない。
【0040】
《第2実施形態》
上記第1実施形態では、気体流量増幅型エアノズル91を、空調装置71の吐出口71aに固定していたが、気体流量増幅型エアノズル91の駆動が基板ステージ21の位置計測精度に与える影響が少ない場合には、気体流量増幅型エアノズル91をレーザ干渉計システム81の筐体81bに取り付けてもよい。
【0041】
図4は、第2実施形態における気体流量増幅型エアノズル91の設置位置について説明するための図である。図4に示すように、第2実施形態では、気体流量増幅型エアノズル91は、取付部材96Aを用いて、レーザ干渉計システム81の筐体81bに固定されている。より具体的には、気体流量増幅型エアノズル91は、取込口92bが空調装置71の吐出口71aと対向するように、レーザ干渉計システム81の筐体81bに固定されている。
【0042】
第2実施形態においても、気体流量増幅型エアノズル91は、基板ステージ21の走査方向(X軸方向)と水平面内で直交する方向(Y軸方向)において、2か所に設けられている。気体流量増幅型エアノズル91は、気体流量増幅型エアノズル91が噴出した気体が、X移動鏡22Xとレーザ干渉計81aとの間の光路IPX1と、X固定鏡24Xとレーザ干渉計81aとの間の光路IPX2と、を通過するよう、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向において位置決めされる。なお、図4においても、矢印FLは、気体流量増幅型エアノズル91から噴出された気体の流れを示している。
【0043】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、防塵フィルタ72により浄化した気体をチャンバ50内へ吐出する吐出口71aの近くに気体流量増幅型エアノズル91の取込口92bが配置されている。このため、気体流量増幅型エアノズル91には、チャンバ50内へ供給される気体が取込口92bから取り込まれる。また、気体流量増幅型エアノズル91の吹出口93aから吹き出される気体A4に誘引される気体A3も、チャンバ50内へ供給される気体となる。このため、チャンバ50内の雰囲気温度とほぼ同じ温度の気体を、光路IPX1及びIPX2に流すことが出来る。これにより、光路IPX1及びIPX2上の温度を安定化することが出来るため、計測光路上における気体の温度や圧力、湿度等のゆらぎに起因する計測光路上の屈折率の変化を抑制し、基板ステージ21の位置計測精度を向上させることができる。
【0044】
なお、上記第1及び第2実施形態において、基板ステージ21のY軸方向の位置情報を計測するためのレーザ干渉計の光路空調に気体流量増幅型エアノズル91を用いてもよい。
【0045】
また、上記第1及び第2実施形態では、気体流量増幅型エアノズル91から噴出された気体が、基板ステージ21の位置情報を計測するためのレーザ干渉計81aの光路を通過するように気体流量増幅型エアノズル91を設置したが、これに限られるものではない。例えば、気体流量増幅型エアノズル91から噴出された気体が、マスクMを保持するマスクステージ14の位置情報を計測するためのレーザ干渉計の光路を通過するように気体流量増幅型エアノズル91を設置してもよい。すなわち、気体流量増幅型エアノズル91を、マスクMを保持するマスクステージ14の位置情報を計測するためのレーザ干渉計の光路空調に用いてもよい。
【0046】
(変形例1)
気体流量増幅型エアノズル91の構成は、図2に示す構成に限られるものではない。図5(A)は、変形例1に係る気体流量増幅型エアノズル91Aの概略構成を示す図である。
【0047】
気体流量増幅型エアノズル91Aは、本体部97と、ノズル95と、を有する。本体部97の内部は、気体A1の取込口97aから中央部に向かって先細り、中央部から気体A4の吹出口97bに向かって拡大している。ノズル95の導入口95aから導入された圧縮空気A2が本体部97内に吹き込まれると、本体部97内の気体の流速が高まる。これにより、本体部97内の気体の流量が増え、エジェクター原理によって、吹出口97bから吹き出される気体の量が増加する。
【0048】
(変形例2)
図5(B)は、変形例2に係る気体流量増幅型エアノズル91Bの概略構成を示す図である。
【0049】
気体流量増幅型エアノズル91Bは、圧縮空気A2を導入するノズル本体98と、本体部99と、を有する。本体部99の側壁には、気体A1の取込口99aが設けられている。
【0050】
ノズル本体98の導入口98aから本体部99内に圧縮空気A2が導入されると、取込口99aに負圧が生じる。この負圧吸引作用によって、取込口99aから圧縮空気A2よりも大量の気体A1が吸引される。その結果、吹出口99bから大量の気体A4が噴出される。
【0051】
なお、気体流量増幅型エアノズルは、電気部品及び回転部品を用いずに気体の流量を増幅できるエアノズルであれば、第1及び第2実施形態及びその変形例の構成に限定されるものではない。
【0052】
なお、上記各実施形態では、投影光学系16として、等倍系が用いられたが、これに限られず、縮小系、あるいは拡大系を用いても良い。
【0053】
また、上記実施形態及びその変形例ではFPD露光装置を例に用いて説明したが、上記実施形態及びその変形例を半導体露光装置に適用してもよい。
【0054】
また、露光対象となる基板はガラスプレートに限られず、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。また、露光対象の基板が可撓性を有するシート状である場合には、該シートがロール状に形成されていても良い。
【0055】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 液晶露光装置本体
14 マスクステージ
21 基板ステージ
50 チャンバ
71 空調装置
71a 吐出口
72 防塵フィルタ
73 ダクト
74 調整装置
81a レーザ干渉計
81b 筐体
91,91A,91B 気体流量増幅型エアノズル
92a,95a,98a 導入口
92b,97a,99a 取込口
93a,97b,99b 吹出口
A1 チャンバ内の気体
A2 圧縮空気
A4 気体
EX 露光装置
IPX1,IPX2 光路
M マスク
P 基板
図1
図2
図3
図4
図5