(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150229
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】デバイスと皮膚との接続構造及びデバイスと皮膚との接続方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/268 20210101AFI20220929BHJP
【FI】
A61B5/268
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052733
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 晋司
(72)【発明者】
【氏名】小出 史代
(72)【発明者】
【氏名】二宮 直哉
(72)【発明者】
【氏名】久保田 綾
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127LL18
4C127LL22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】皮膚表面に形成させた導電性金属層と外部デバイスとの間で電気的接続を行う際に、電気信号の授受に問題を生じさせない接続構造を提供する。
【解決手段】生体皮膚10上に配置された導電性物質層11と、前記導電性物質層11と電気的に接続し得る電極13を有し、前記皮膚10との間で電気信号を授受し得るデバイス14と、の接続構造であって、前記導電性物質層11と、前記デバイスの電極13とが、導電性緩衝層12を介して電気的に接続される、接続構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体皮膚上に配置された導電性物質層と、
前記導電性物質層と電気的に接続し得る電極を有し、前記皮膚との間で電気信号を授受し得るデバイスと、の接続構造であって、
前記導電性物質層と、前記デバイスの電極とが、導電性緩衝層を介して電気的に接続される、接続構造。
【請求項2】
前記導電性緩衝層が、導電性エラストマーを含む、請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
前記導電性エラストマーの弾性率が1kPa~20MPaであり、厚さが0.01~10mmである、請求項2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記導電性エラストマーの導電性物質層への接着強度が、導電性物質層の肌への接着強度よりも小さい、請求項2又は3に記載の接続構造。
【請求項5】
前記導電性緩衝層が、導電性潤滑材を含む、請求項1に記載の接続構造。
【請求項6】
前記導電性潤滑材のちょう度が200~400である、請求項5に記載の接続構造。
【請求項7】
前記導電性物質層の膜厚方向の抵抗が1000Ω以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の接続構造。
【請求項8】
前記導電性物質層が、網目状の導電性物質層である、請求項1~7のいずれか1項に記載の接続構造。
【請求項9】
生体皮膚上に配置された導電性物質層と、
前記導電性物質層と電気的に接続し得る電極を有し、前記皮膚との間で電気信号を授受し得るデバイスと、を接続する方法であって、
前記導電性物質層と、前記デバイスの電極とを、導電性緩衝層を介して電気的に接続するステップ、を含む、接続方法。
【請求項10】
前記導電性緩衝層が、導電性エラストマーを含む、請求項9に記載の接続方法。
【請求項11】
前記導電性エラストマーの弾性率が1kPa~20MPaであり、厚さが0.01~10mmである、請求項10に記載の接続方法。
【請求項12】
前記導電性エラストマーの導電性物質層への接着強度が、導電性物質層の肌への接着強度よりも小さい、請求項10又は11に記載の接続方法。
【請求項13】
前記導電性緩衝層が、導電性潤滑材を含む、請求項9に記載の接続方法。
【請求項14】
前記導電性潤滑材のちょう度が200~400である、請求項13に記載の接続方法。
【請求項15】
前記導電性物質層の膜厚方向の抵抗が1000Ω以下である、請求項9~14のいずれか1項に記載の接続方法。
【請求項16】
前記導電性物質層が、網目状の導電性物質層である、請求項9~15のいずれか1項に記載の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデバイスと皮膚との接続構造と、デバイスと皮膚との接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルな基材上にエレクトロニクスデバイスを形成する、フレキシブルエレクトロニクスが研究されており、生体への適用についても研究が進んでいる。
例えば、高い表面追従性を有し、長期間安定的に使用可能なものとして、開口部を有する基材と、開口部の周囲を外枠として懸架された繊維網を有する電子機能部材が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、網状基材とポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を主成分とするナノメッシュ層とが隣接して積層されたナノメッシュ積層体が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2に開示されたナノメッシュ積層体は、エレクトロスピニング法により網状基材上に作成されたPVAナノファイバーのメッシュの一方の面に、導電性の金属等をコートしたものである。このナノメッシュ積層体を、所望の場所に戴置した後に水などを用いて貼り付けることで、導電性物質層が固定される。
固定された導電性物質層は、皮膚の変形等に追随し、関節等への適用が可能で、皮膚の電気信号をセンシングしたり、皮膚に電極からの刺激を与える電極や各種センサーへの配線等に使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-112246号公報
【特許文献2】国際公開第2020/241685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示された方法のように、水を吹きかけてPVAナノファイバーのような水溶解性樹脂を溶解させることで導電性金属等を皮膚表面に接着させ、皮膚表面に導電性金属層を形成させることができる。この導電性金属層に外部デバイスの電極を接触させることで、皮膚とデバイスとの間で電気信号の授受を行うことが可能になる。
【0007】
皮膚表面に導電性金属層を形成すると、導電性金属層が皮膚の微細な凹凸に追従するため、導電性金属層も凹凸を有する形状となる。該導電性金属層に外部デバイスの電極を接触させた際には、導電性金属層と、電極とが、面ではなく点で接触する部分が存在する。かかる状況下では、導電性金属層の装着者が静止している場合には、皮膚とデバイスとの間で電気信号の授受を問題無く行うことができるものの、装着者が生活のために動く際には電気信号の授受に問題が生じる。さらに、皮膚と導電性金属層との密着性が弱いものが多く、その場合電極との摩擦により導電性金属層が摩耗、劣化してしまい、電気信号授受の経時変化が生じる場合がある。
【0008】
すなわち、装着者の動作によって導電性金属層と電極との接続が途切れる、授受する電気信号にノイズが発生するなど、装着者が動く場合の使い勝手に改善の余地があった。導電性金属層を長時間装着する場合、装着者が動くことは避けられないため、装着者が動く際にも電気信号の授受に問題を生じさせない接続構造が求められる。特に、小型化のデバイスと導電性金属層を接続する場合、装着者はデバイスを装着したまま自由に活動できる
ことが望まれる。
【0009】
このような課題の解決のために、電極を直接導電性金属層に接触させ、その上から粘着テープで固定することが考えられる。しかしながら、粘着テープによる固定方法を用いると、電極の導電性金属層への押し付け圧などの粘着テープの貼り方により、得られる信号がばらつくという問題があった。また、固定に医療用の粘着テープを用いたとしても、長時間装着した場合には、粘着テープにより皮膚にかぶれを生じてしまう可能性があるという問題もあった。このような問題を鑑みると、電極を導電性金属層に接触させる際に、上から粘着テープによって固定することは好ましくない。他方、別の方法としては、電極と導電性金属層間を導電性粘着テープで固定する方法が考えられるが、導電性粘着テープの粘着力が強過ぎるために、皮膚に形成した導電性金属層固定が皮膚から剥がれてしまうという問題があり、この方法を用いることも好ましくない。
【0010】
本発明は、皮膚表面に形成させた導電性金属層と外部デバイスとの間で電気的接続を行う際に初めて生じる、上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく改良を重ね、導電性金属層とデバイスの電極との間に導電性緩衝層を設けた接続構造を用いることで上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、以下のものを含む。
[1] 生体皮膚上に配置された導電性物質層と、
前記導電性物質層と電気的に接続し得る電極を有し、前記皮膚との間で電気信号を授受し得るデバイスと、の接続構造であって、
前記導電性物質層と、前記デバイスの電極とが、導電性緩衝層を介して電気的に接続される、接続構造。
[2] 前記導電性緩衝層が、導電性エラストマーを含む、[1]に記載の接続構造。
[3] 前記導電性エラストマーの弾性率が1kPa~20MPaであり、厚さが0.01~10mmである、[2]に記載の接続構造。
[4] 前記導電性エラストマーの導電性物質層への接着強度が、導電性物質層の肌への接着強度よりも小さい、[2]又は[3]に記載の接続構造。
[5] 前記導電性緩衝層が、導電性潤滑材を含む、[1]に記載の接続構造。
[6] 前記導電性潤滑材のちょう度が200~400である、[5]に記載の接続構造。
[7] 前記導電性物質層の膜厚方向の抵抗が1000Ω以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の接続構造。
[8] 前記導電性物質層が、網目状の導電性物質層である、[1]~[7]のいずれかに記載の接続構造。
[9] 生体皮膚上に配置された導電性物質層と、
前記導電性物質層と電気的に接続し得る電極を有し、前記皮膚との間で電気信号を授受し得るデバイスと、を接続する方法であって、
前記導電性物質層と、前記デバイスの電極とを、導電性緩衝層を介して電気的に接続するステップ、を含む、接続方法。
[10] 前記導電性緩衝層が、導電性エラストマーを含む、[9]に記載の接続方法。[11] 前記導電性エラストマーの弾性率が1kPa~20MPaであり、厚さが0.01~10mmである、[10]に記載の接続方法。
[12] 前記導電性エラストマーの導電性物質層への接着強度が、導電性物質層の肌への接着強度よりも小さい、[10]又は[11]に記載の接続方法。
[13] 前記導電性緩衝層が、導電性潤滑材を含む、[9]に記載の接続方法。
[14] 前記導電性潤滑材のちょう度が200~400である、[13]に記載の接続方法。
[15] 前記導電性物質層の膜厚方向の抵抗が1000Ω以下である、[9]~[14]のいずれかに記載の接続方法。
[16] 前記導電性物質層が、網目状の導電性物質層である、請求項[9]~[15]のいずれかに記載の接続方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、生体皮膚上に配置された導電性物質層を用い、皮膚とデバイスとの間で電気信号の授受を行う際に発生する、電極との接続の途切れ、電気信号のノイズといった課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本発明の一実施形態は、生体皮膚上に配置された導電性物質層と、
前記導電性物質層と電気的に接続し得る電極を有し、前記皮膚との間で電気信号を授受し得るデバイスと、の接続構造であって、
前記導電性物質層と、前記デバイスの電極とが、導電性緩衝層を介して電気的に接続される、接続構造である。
【0017】
図を用いて本実施形態に係る接続構造を説明する。
図1に、本実施形態に係る接続構造の断面模式図を示す。
接続構造100は、生体皮膚10上に、導電性物質層11、導電性緩衝層12、及びデバイスの電極13が積層された積層構造と、デバイス14とを有する。
【0018】
導電性物質層11は、導電性材料からなる。導電性材料は、導電性を有する限り特段限定されないが、電気信号の伝達の妨げにならない程度に体積抵抗率が低いことが望まれる。また、導電性材料の体積抵抗率が低いと、導電性物質層を厚くしても抵抗値が所望の範囲に収まりやすいことから、導電性物質層の抵抗値を所望の範囲に保ちつつ耐久性を向上させることができる。導電性材料の体積抵抗率は、通常は1×1012Ωcm以下であり、より好ましくは1×105Ωcm以下であり、特に好ましくは1×10-1Ωcm以下である。また、通常は1×10-6Ωcm以上である。
【0019】
具体的には金、白金、銀、塩化銀、銅、チタン、パラジウム、クロム又はコバルト等の金属あるいはその合金、カーボン(炭素)等を用いることができ、導電性材料を透明にしたい場合にはITO(酸化インジウムスズ)を使用してもよい。これ以外の、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化インジウム、インジウム-ジルコニウム酸化物(IZO)、酸化チタン、又は酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を使用してもよい。ポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PSSや、ポリチオフェン誘導体にパラトルエンスルホン酸をドーピングしたPEDOT:PTS、ポリピロール又はポリアニリン等にヨウ素等をドーピングした導電性高分子材料を用いてもよい。これらのうち、生体への適用を考慮すると、金、カーボン、チタン、PEDOT:PSS、およびPEDOT:PTSが好ましく、特に好ましくは金である。
【0020】
生体皮膚10上への導電性物質層11の形成方法は特に限定されない。例えば、特許文献2のような、水溶性樹脂のナノメッシュ層上に導電性物質層を形成したナノメッシュ積層体を、生体皮膚10上に載置し、該ナノメッシュ積層体と水系媒体とを接触させる方法が挙げられる。
【0021】
導電性物質層11の厚さは目的に応じて適宜設定すればよく、特段限定されないが、通常5nm以上であり、10nm以上であってよく、また通常2μm以下であり、1μm以下であってよく、500nm以下であってよい。また、膜厚方向の抵抗値は電気信号の伝達の妨げにならない程度に低い事が望まれ、通常は1000Ω以下であり、より好ましくは500Ω以下であり、特に好ましくは200Ω以下である。また、面内方向の抵抗も低いほうが望ましく、シート抵抗は通常は10000Ω/以下、好ましくは1000Ω/以下、特に好ましくは、1000Ω/以下である。
【0022】
導電性物質層11は、好ましくは網目状の導電性物質層である。導電性物質層11が網目状であることで、生体皮膚10上に導電性物質層11を形成した際に、通気性が向上するという効果が得られる。更に、網目状であることによって導電パスが増加するため、完全に断線するリスクを低減できるという効果が得られる。網目状の導電性物質層の面方向断面における空隙率は特に限定されないが、通常90%以下であり、70%以下であってよく、50%以下であってよい。
一方で、導電性物質が網目状であると、電極との間での接触が点接触となる傾向にあり、部分的な切断やノイズが起こりやすい。そのため、本願発明は特に有用である。
特に導電性物質層の面方向に多数の空隙を有する場合、例えば面方向断面において空隙率が90%以下の導電性物質層などの場合に有用である。
【0023】
導電性緩衝層12は、導電性物質層11と電極13との電気的接続を補助する導電性緩衝材からなる。導電性緩衝材は、例えば、導電性エラストマー、導電性潤滑材、金属薄膜、炭素繊維材、導電性フィラーなどを含有する導電性プラスチック、PEDOT:PSSのような導電性高分子、などが挙げられる。前記導電性緩衝層12を有する接続構造とすることで、導電性物質層11と電極13との接続の途切れや電気信号のノイズの発生を抑制することができる。また、コストや追従性の観点から、導電性エラストマー又は導電性潤滑材からなることが好ましい。導電性緩衝層は、導電性物質層よりも硬度が低いことで、電極との間での電気的接続点が増えることから、好ましい。
導電性緩衝層の電気抵抗は、電気信号の伝達の妨げにならない程度に低い事が望まれる、電気信号の損失につながるため、その抵抗値は低いほうが望ましい。1cm2の面積での抵抗値は通常は10000Ω以下、好ましくは1000Ω以下であり、より好ましくは200Ω以下である。抵抗値を小さくするには膜厚を小さくすればよいが、機械的強度の面からある程度の膜厚は必要であることから、通常は10mΩ以上、好ましくは1Ω以上、さらには10Ω以上でもよい。
【0024】
導電性エラストマーは、エラストマー材料に導電性材料を均一に混練したものを指す。導電性緩衝層12として導電性エラストマーを用いると、装着者の動作に伴って導電性物質層11が動く際に生じる電極13とのずれを該導電性エラストマーが吸収するため、該導電性物質層11に対する摩擦力が生じない。
【0025】
前記エラストマー材料は特段限定されないが、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、CRゴム、フッ素ゴムなどのゴム材料やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーなどの熱可塑性エラストマーが挙げられる。さらに柔らかい材料としては、ハイドロゲルのような、溶媒を含んだゲル材料も挙げられる。また、前記導電性材料は特段限定されないが、カーボンブラック、カー
ボンナノチューブ、金属粒子、金属ロッドなどの導電性フィラー、導電性繊維、リチウムイオンなどのイオン導電剤、イオン液体などが挙げられる。前記導電性材料は、エラストマー材料中に微分散あるいは溶解されることで、エラストマーに導電性を付与することができる。
【0026】
導電性エラストマーの弾性率は目的に応じて適宜設定すればよく、特段限定されないが、通常は20MPa以下であるが、好ましくは10MPa以下、さらには1MPa以下が
より好ましい。一方、あまり低すぎると取り扱いが困難になるため、通常は1kPa以上、好ましくは3kPa以上、さらには5kPa以上がより好ましい。なお、エラストマーの弾性率は25℃で測定した値である。
【0027】
導電性エラストマーの厚さは目的に応じて適宜設定すればよく、特段限定されないが、厚すぎると電気抵抗値が大きくなったり、かさばって装着しにくくなるため、通常10mm以下であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下である。一方、膜厚が小さくなりすぎると、エラストマーの緩衝効果が減じられたり、取り扱いが難しくなるため、通常は10μm以上、好ましくは50μm以上、さらには100μm以上である。
導電性エラストマーの導電性物質層11への接着強度は、導電性物質層11の肌への接着強度よりも小さい事が望ましい。導電性エラストマーが導電性物質層から剥離される力が加わった場合、導電性エラストマーの導電性物質層11への接着強度が、導電性物質層11の肌への接着強度よりも大きければ、肌から導電性物質層11が剥離してしまい、導電性物質層11の劣化に繋がる。一方、導電性エラストマーの導電性物質層11への接着強度が、導電性物質層11の肌への接着強度以下であれば、肌から導電性物質層11が剥離せず、導電性物質層11が劣化しない。
【0028】
導電性潤滑材は、潤滑剤に導電性材料を配合したものや、潤滑剤の基材が導電性を示すものを指す。導電性緩衝層12として導電性潤滑材を用いると、装着者の動作に伴って導電性物質層11が動く際に電極13とずれて摩擦力が生じても、導電性潤滑材が該摩擦力を低下させる。これにより、導電性物質層が摩耗、劣化することや、導電性物質層と電極との電気的接続が途切れることがない。
【0029】
前記潤滑剤は特段限定されないが、シリコーングリース、ポリアルキレングリコールグリース、ポリαオレフィングリース、ジエステル系グリース、ポリフェニルエーテルグリース、リチウム石けんグリースなどの石けん系グリース、鉱油などが挙げられる。また、前記導電性材料は特段限定されないが、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属粒子、金属ロッドなどの導電性フィラー、導電性繊維、リチウムイオンなどのイオン導電剤、イオン液体などが挙げられる。
【0030】
導電性潤滑材の粘性は目的に応じて適宜設定すればよく、特段限定されないが、小さすぎると流れてしまい、大きすぎると電極へのストレスが大きく緩衝材としての機能は果たさなくなってしまう。グリースのちょう度で表した場合、NLGIちょう度番号が0~3号(ちょう度200~400)の範囲のものが好ましい。なお、グリースのちょう度は25℃で測定した値である。
【0031】
デバイスは、皮膚との間で電気信号を授受し得るデバイスである。生体からの情報を検知するデバイスであってもよく、生体に対して電気信号を供与するデバイスであってもよい。
生体からの情報としては、生体が発生する様々な生理学的・解剖学的情報(例えば、脈拍、血圧、体温、心拍、呼吸、皮膚抵抗など)に加えて、ユーザーの活動に関する情報(例えば、歩数、歩行距離、移動している時間、静止している時間、汗の蒸散量、消費カロリーなど)を含み得る。
電気信号は、高周波であってもよく、低周波であってもよい。更に、電気信号は、パルス波又は連続波とすることができる。
【0032】
デバイスは電極を有し、生体上に配置された導電性物質層と該電極が接することで、信号を授受する。電極の材料は導電性物質層と同一であっても、異なっていてもよい。デバイス中電極は1つであっても、複数であってもよい。
デバイスの種類は特段限定されないが、特にウエアラブルデバイスが好ましい。装着状態で動いても、信号の切断や、ノイズの混入が低減される。
【0033】
デバイスと電極との電気的接続方法は特段限定されない。具体的には、デバイスと電極とを直接電気的に接続させてもよく、導線のような導電部を介してデバイスと電極とを電気的に接続させてもよい。
デバイスと電極との位置関係は特段限定されない。電極がデバイスに直接接触してもよく、導電部を介してデバイスと電極とが電気的に接続していれば、電極とデバイスが離れていてもよい。
【実施例0034】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が実施例の記載により限定されないことはいうまでもない。
【0035】
特許文献2に記載の金ナノメッシュ電極を肌に貼り付け、銅箔を接合して電気的に接続する際に、ナノメッシュ電極と銅箔間に導電性エラストマーシートを配置したものは、直接接触させた場合よりも、接合部分の振動に対して安定に電気信号が取得でき、接合部分の劣化も小さくなる。
【0036】
特許文献2に記載の金ナノメッシュ電極を肌に貼り付け、銅箔を接合して電気的に接続する際に、ナノメッシュ電極と銅箔間に導電性グリースを配置したものは、直接接触させた場合よりも、接合部分の振動に対して安定に電気信号が取得でき、接合部分の劣化も小さくなる。