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特開2022-150243ダイシングダイアタッチフィルム及びその製造方法、並びに半導体パッケージ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150243
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ダイシングダイアタッチフィルム及びその製造方法、並びに半導体パッケージ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220929BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20220929BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220929BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220929BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220929BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220929BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/52 B
C09J163/00
C09J11/08
C09J11/06
C09J11/04
C09J7/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052761
(22)【出願日】2021-03-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】大谷 洋多
(72)【発明者】
【氏名】丸山 弘光
(72)【発明者】
【氏名】森田 稔
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F047
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA13
4J004AA17
4J004AA18
4J004BA03
4J004FA08
4J040EC061
4J040EC131
4J040EE062
4J040HA136
4J040HC23
4J040HD32
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA04
4J040MA10
4J040NA20
5F047AA17
5F047BA34
5F047BA53
5F047BA54
5F047BB03
5F047BB19
5F047CA01
5F063AA18
5F063AA33
5F063AA36
5F063AA46
5F063BA43
5F063BA45
5F063DD01
5F063DD85
5F063EE07
5F063EE13
5F063EE16
5F063EE18
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとを積層してなり、半導体装置の製造におけるピックアップ工程において、ピックアップコレットが蓄熱してもピックアップ不良を生じにくいダイシングダイアタッチフィルム及びその製造方法並びにそれに由来する半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】一方の面を半導体ウェハ1に貼り付けたダイシングフィルム3上のダイアタッチフィルム2は、ダイシングフィルムと接する面の算術平均粗さRa1が0.05~2.50μmであり、ダイアタッチフィルムのダイシングフィルムと接する面とは反対側の面の算術平均粗さRa2に対する、Ra1の比の値が1.05~28.00である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングフィルムと、該ダイシングフィルム上に積層されたダイアタッチフィルムとを有するダイシングダイアタッチフィルムであって、
前記ダイアタッチフィルムは、前記ダイシングフィルムと接する面の算術平均粗さRa1が0.05~2.50μmであり、
前記ダイアタッチフィルムの前記ダイシングフィルムと接する面とは反対側の面の算術平均粗さRa2に対する、前記Ra1の比の値が1.05~28.00である、ダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項2】
前記ダイアタッチフィルムは、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)及び無機充填材(D)を含有し、熱硬化後に熱伝導率1.0W/m・K以上の硬化体を与える、請求項1に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項3】
前記ダイアタッチフィルムは、25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が500~10000Pa・sの範囲に達する、請求項1又は2に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項4】
前記ダイシングフィルムがエネルギー線硬化性である、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項5】
前記ダイアタッチフィルム表面を、加圧ロールを用いて均すことにより、前記Ra1と記Ra2とを満たす表面状態を作り出すことを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムの製造方法。
【請求項6】
半導体チップと配線基板とが、及び/又は、半導体チップ間が、接着剤の熱硬化体により接着されてなり、該接着剤が請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムのダイアタッチフィルムに由来する、半導体パッケージ。
【請求項7】
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハの裏面に、請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムを、前記ダイアタッチフィルムが半導体ウェハの裏面に接するように熱圧着して設ける第1の工程と、
前記半導体ウェハと前記ダイアタッチフィルムとを一体にダイシングすることにより、ダイシングフィルム上に、ダイアタッチフィルム片と半導体チップとを備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層付き半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離して、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着する第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化する第4の工程と
を含む、半導体パッケージの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングダイアタッチフィルム及びその製造方法、並びに半導体パッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップを多段に積層したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及しており、携帯電話、携帯オーディオ機器用のメモリパッケージとして搭載されている。また、携帯電話等の多機能化に伴い、パッケージの高密度化・高集積化も推し進められている。これに伴い、半導体チップの多段積層化が進行している。
【0003】
このようなメモリパッケージの製造過程における配線基板と半導体チップとの接着や半導体チップ間の接着には、フィルム状接着剤(ダイアタッチフィルム、ダイボンドフィルム)が使用されており、チップの多段積層化に伴い、ダイアタッチフィルムの薄型化への要求が高まっている。また、ウェハ配線ルールの微細化に伴い半導体素子表面には熱が発生しやすく、熱をパッケージ外部へ逃がすために、ダイアタッチフィルムには高熱伝導性の要求が高まっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、熱伝導率が12W/m・K以上の熱伝導性粒子を、熱硬化型ダイボンドフィルム全体に対して75重量%以上含有し、一方の面の表面粗さRaが200nm以下であることを特徴とする熱硬化型ダイボンドフィルムが記載されている。特許文献1記載の技術によれば、熱硬化型ダイボンドフィルムが熱伝導性粒子を高充填しながらも、ダイシングシート上に積層された状態から剥離する際の剥離力を安定させることができるとされる。
また、特許文献2には、熱硬化性樹脂及びフィラーを含む樹脂組成物層と、前記樹脂組成物層の少なくとも一方の面上に配置され、前記樹脂組成物層とは対向しない面の算術平均表面粗さRaが1.5μm以下である接着材層とを有する多層樹脂シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-103580号公報
【特許文献2】特開2019-014261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイアタッチフィルムは通常、ダイアタッチフィルムの一方の面を半導体ウェハに貼り付け、他方の面をダイシングフィルムと密着させて、ダイシングフィルムを土台として半導体ウェハを個片化(ダイシング)して半導体チップとし、ダイボンダー装置上のピックアップコレットを用いてダイシングフィルムから半導体チップをダイアタッチフィルムごと剥離(ピックアップ)し、次いで半導体チップを配線基板上に熱圧着することにより、ダイアタッチフィルムを介して半導体チップが配線基板上に搭載される。
上記の熱圧着時にピックアップコレットは蓄熱し、熱圧着を繰り返すうちに蓄熱量は増大する。このような状態で次の半導体チップを搭載すると、ダイアタッチフィルムを介してダイシングフィルムとの界面まで熱が伝達する。結果、ピックアップしたときにダイシングフィルム上にダイアタッチフィルムの一部が残留しやすくなる問題がある(いわゆるピックアップ不良)。この問題は、ダイアタッチフィルムの熱伝導性が高まるほど顕在化する傾向にある。
【0007】
本発明は、ダイシングフィルムと、このダイシングフィルム上に積層されたダイアタッチフィルムとを有するダイシングダイアタッチフィルムであって、半導体装置の製造におけるピックアップ工程において、ピックアップコレットが蓄熱してもピックアップ不良を生じにくいダイシングダイアタッチフィルムを提供することを課題とする。また、本発明は、前記ダイシングダイアタッチフィルムの製造方法、前記ダイシングダイアタッチフィルムを用いた半導体パッケージ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ダイアタッチフィルムのダイシングフィルムとの密着面の表面粗さと、このダイアタッチフィルムの半導体ウェハとの密着面の表面粗さとを特定の関係に制御することにより、ピックアップ不良を生じにくいダイシングダイアタッチフィルムが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ねて完成されるに至ったものである。
【0009】
本発明の上記課題は下記の手段により解決される。
〔1〕
ダイシングフィルムと、該ダイシングフィルム上に積層されたダイアタッチフィルムとを有するダイシングダイアタッチフィルムであって、
前記ダイアタッチフィルムは、前記ダイシングフィルムと接する面の算術平均粗さRa1が0.05~2.50μmであり、
前記ダイアタッチフィルムの前記ダイシングフィルムと接する面とは反対側の面の算術平均粗さRa2に対する、前記Ra1の比の値が1.05~28.00である、ダイシングダイアタッチフィルム。
〔2〕
前記ダイアタッチフィルムは、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)及び無機充填材(D)を含有し、熱硬化後に熱伝導率1.0W/m・K以上の硬化体を与える、〔1〕に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
〔3〕
前記ダイアタッチフィルムは、25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が500~10000Pa・sの範囲に達する、請求項1又は2に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
〔4〕
前記ダイシングフィルムがエネルギー線硬化性である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のダイシングダイアタッチフィルム。
〔5〕
前記ダイアタッチフィルム表面を、加圧ロールを用いて均すことにより、前記Ra1と記Ra2とを満たす表面状態を作り出すことを含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のダイシングダイアタッチフィルムの製造方法。
〔6〕
半導体チップと配線基板とが、及び/又は、半導体チップ間が、接着剤の熱硬化体により接着されてなり、該接着剤が〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のダイシングダイアタッチフィルムのダイアタッチフィルムに由来する、半導体パッケージ。
〔7〕
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハの裏面に、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のダイシングダイアタッチフィルムを、前記ダイアタッチフィルムが半導体ウェハの裏面に接するように熱圧着して設ける第1の工程と、
前記半導体ウェハと前記ダイアタッチフィルムとを一体にダイシングすることにより、ダイシングフィルム上に、ダイアタッチフィルム片と半導体チップとを備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層付き半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離して、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着する第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化する第4の工程と
を含む、半導体パッケージの製造方法。
【0010】
本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタアクリルの一方又は両方を意味する。(メタ)アクリレートについても同様である。
本発明においてダイシングダイアタッチフィルムに対する「上」「下」の用語は、便宜上、ダイシングフィルム側が「下」、ダイアタッチフィルム側が「上」として使用している。
【発明の効果】
【0011】
本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、ダイシングフィルムと、このダイシングフィルム上に積層されたダイアタッチフィルムとを有し、半導体装置の製造におけるピックアップ工程において、ピックアップコレットが蓄熱してもピックアップ不良を生じにくい。本発明のダイシングダイアタッチフィルムの製造方法は、上記の本発明のダイシングダイアタッチフィルムを得るための好適な方法である。また、本発明の半導体パッケージは、本発明のダイシングダイアタッチフィルムを用いて製造され、製造工程においてピックアップ不良を生じにくく良品率に優れる。また、本発明の半導体パッケージの製造方法によれば、製造工程においてピックアップ不良を生じにくく、半導体パッケージの歩留まりを効果的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第1の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図2図2は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第2の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図3図3は、本発明の半導体パッケージの製造方法の第3の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図4図4は、本発明の半導体パッケージの製造方法のボンディングワイヤーを接続する工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
図5図5は、本発明の半導体パッケージの製造方法の多段積層実施形態例を示す概略縦断面図である。
図6図6は、本発明の半導体パッケージの製造方法の別の多段積層実施形態例を示す概略縦断面図である。
図7図7は、本発明の半導体パッケージの製造方法により製造される半導体パッケージの好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ダイシングダイアタッチフィルム]
本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、ダイシングフィルム(粘着剤フィルム)と、このダイシングフィルム上に積層されたダイアタッチフィルム(接着剤フィルム)とを有する。ダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとは互いに接して配されている。本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、基材(基材フィルムとも称す。)上にダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとがこの順に設けられた形態とすることができる。また、ダイアタッチフィルム上には剥離フィルムなどが設けられていてもよい。
【0014】
本発明において単に「ダイシングフィルム」という場合、粘着剤で構成されたフィルムそのものを意味する。すなわち、ダイシングフィルムが基材フィルムや剥離フィルム(剥離ライナー、離型フィルム)と積層構造を形成している場合、これら基材フィルムや剥離フィルムはダイシングフィルムとは異なる別の構成層としてみる。
同様に、本発明において単に「ダイアタッチフィルム」という場合、接着剤で構成されたフィルムそのものを意味する。すなわち、ダイアタッチフィルムが基材フィルムや剥離フィルムと積層構造を形成している場合、これら基材フィルムや剥離フィルムはダイアタッチフィルムとは異なる別の構成層としてみる。
他方、本発明において「ダイシングダイアタッチフィルム」とは、製品として市場に流通し得る形態をすべて包含する意味で用いている。すなわち、ダイシングフィルムと、このダイシングフィルム上に積層されたダイアタッチフィルムとからなる2層構成の積層体に限られず、上記の通り、基材フィルムや剥離フィルムがダイシングフィルム及び/又はダイアタッチフィルム上に積層されている場合には、これらの積層構造の全体を「ダイシングダイアタッチフィルム」としてみる。
【0015】
本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、ダイアタッチフィルムの表面粗さが制御されている。すなわち、上記ダイアタッチフィルムは、上記ダイシングフィルムと接する面の算術平均粗さRa(Ra1と称す。)が0.05~2.50μmの範囲の一定の粗さを有する形態へと制御され、かつ、上記ダイアタッチフィルムの上記ダイシングフィルムと接する面とは反対側の面の算術平均粗さRa(Ra2と称す。)に対する、上記Ra1の比の値(Ra1/Ra2)が1.05~28.00の範囲に制御されている。ダイアタッチフィルムの表面粗さを上記のように制御することにより、半導体装置(半導体パッケージ)の製造において、ダイシング工程後のピックアップ工程で、ダイシングフィルム上へのダイアタッチフィルムの残留を生じにくくすることができる。その結果、個片化されたダイアタッチフィルム片(接着剤層)を、個片化された半導体チップと一体に、ダイシングフィルムから剥離することができ、その後の配線基板への半導体チップの搭載において、ボイドの発生等の接着不良を抑えることができる。
【0016】
上記Ra1は、ピックアップ不良をより効果的に防ぐ観点から、0.08μm以上が好ましく、0.10μm以上がより好ましく、0.12μm以上がさらに好ましい。また、ダイシング時におけるダイシングフィルムとの密着性をより高める観点から、上記Ra1は2.30μm以下が好ましく、2.20μm以下がより好ましく、2.10μm以下がさらに好ましく、2.00μm以下とすることも好ましい。したがって、上記Ra1は0.08~2.30μmが好ましく、0.10~2.20μmがより好ましく、0.12~2.10μmがより好ましく、0.12~2.00μmがさらに好ましい。
上記Ra2は、通常は0.03μm以上であり、0.05μm以上がより好ましく、0.06μm以上がより好ましく、0.07μm以上がさらに好ましい。また、ウェハとの密着性の観点から、上記Ra2は2.00μm以下が好ましく、1.50μm以下がより好ましく、1.00μm以下がさらに好ましく、0.50μm以下がさらに好ましく、0.30μm以下がさらに好ましく、0.20μm以下とすることも好ましく、0.16μm以下とすることも好ましい。したがって、上記Ra2は0.03~2.00μmが好ましく、0.05~1.50μmがより好ましく、0.06~1.00μmがより好ましく、0.07~0.50μmがより好ましく、0.07~0.30μmがより好ましく、0.07~0.20μmとすることも好ましく、0.07~0.16μmとすることも好ましい。
上記のRa2に対するRa1の比の値(Ra1/Ra2)は、ピックアップ不良をより効果的の抑える観点から1.06以上が好ましく、1.08以上がより好ましく、1.10以上とすることも好ましく、1.50以上とすることも好ましく、2.00以上とすることも好ましく、2.50以上とすることも好ましい。また、Ra1/Ra2は、ダイシング時におけるダイシングフィルムとの十分な密着性をより確実に確保する観点からは、25.00以下が好ましく、20.00以下がより好ましく、18.00以下がさらに好ましく、15.00以下とすることも好ましく、12.00以下とすることも好ましい。したがって、Ra1/Ra2は1.06~25.00が好ましく、1.08~20.00がより好ましく、1.10~18.00がより好ましく、1.50~15.00とすることも好ましく、2.00~12.00とすることも好ましく、2.50~12.00とすることも好ましい。
以下、単に「表面粗さ」という場合、算術平均粗さを意味する。この算術平均粗さは後述する実施例に記載される方法で決定することができる。
【0017】
本発明のダイシングダイアタッチフィルムにおいて、上記ダイアタッチフィルムは、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)及び無機充填材(D)を含有することが好ましい。各成分について順に説明する。
【0018】
<エポキシ樹脂(A)>
上記エポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を持つ熱硬化型の樹脂であり、そのエポキシ当量は500g/eq以下である。エポキシ樹脂(A)は液体、固体または半固体のいずれであってもよい。本発明において液体とは、軟化点が25℃未満であることをいい、固体とは、軟化点が60℃以上であることをいい、半固体とは、軟化点が上記液体の軟化点と固体の軟化点との間(25℃以上60℃未満)にあることをいう。本発明で使用するエポキシ樹脂(A)としては、好適な温度範囲(例えば60~120℃)で低溶融粘度に到達することができるダイアタッチフィルムを得る観点から、軟化点が100℃以下であることが好ましい。なお、本発明において、軟化点とは、ASTM法(測定条件:ASTM D6090-17に準拠)により測定した値である。
【0019】
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)において、硬化体の架橋密度が高くなり、結果として、配合される無機充填材(D)同士の接触確率が高く接触面積が広くなることでより高い熱伝導率が得られるという観点から、エポキシ当量は150~450g/eqであることが好ましい。なお、本発明において、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)をいう。
エポキシ樹脂(A)の質量平均分子量は、通常、10000未満が好ましく、5000以下がより好ましい。下限値に特に制限はないが、300以上が実際的である。
質量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)分析による値である。
【0020】
エポキシ樹脂(A)の骨格としては、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、フルオレンビスフェノール型、トリアジン型、ナフトール型、ナフタレンジオール型、トリフェニルメタン型、テトラフェニル型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、トリメチロールメタン型等が挙げられる。このうち、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するダイアタッチフィルムを得られるという観点から、トリフェニルメタン型、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型が好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂(A)の含有量は、上記ダイアタッチフィルム中、3~70質量%が好ましく、3~30質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。含有量を上記好ましい範囲内とすることにより、治具痕の形成を抑制しつつ、ダイアタッチ性を高めることができる。また、上記好ましい上限値以下とすることにより、オリゴマー成分の生成を抑え、少しの温度変化ではフィルム状態(フィルムタック性等)の変化を生じにくくすることができる。
【0022】
<エポキシ樹脂硬化剤(B)>
上記エポキシ樹脂硬化剤(B)としては、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類等の任意の硬化剤を用いることができる。本発明では、低溶融粘度で、かつある温度を超える高温で硬化性を発揮し、速硬化性を有し、さらに、室温での長期保存が可能な保存安定性の高いダイアタッチフィルムとする観点から、潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド化合物、イミダゾール化合物、硬化触媒複合系多価フェノール化合物、ヒドラジド化合物、三弗化ホウ素-アミン錯体、アミンイミド化合物、ポリアミン塩、およびこれらの変性物やマイクロカプセル型のものを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても、もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。より優れた潜在性(室温での安定性に優れ、かつ、加熱により硬化性を発揮する性質)を有し、硬化速度がより速い観点から、イミダゾール化合物を用いることがより好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂(A)の含有量100質量部に対するエポキシ樹脂硬化剤(B)の含有量は、0.5~100質量部が好ましく、1~80質量部がより好ましく、2~50質量部がさらに好ましく、4~20質量部がさらに好ましい。含有量を上記好ましい下限値以上とすることにより硬化時間をより短くすることができ、他方、上記好ましい上限値以下とすることにより、過剰の硬化剤のダイアタッチフィルム中への残留を抑えることができる。結果、残留硬化剤の水分の吸着が抑えられ、半導体装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0024】
<高分子成分(C)>
上記高分子成分(C)としては、ダイアタッチフィルムを形成した際に、常温(25℃)でのフィルムタック性(少しの温度変化でもフィルム状態が変化しやすい性質)を抑制し、十分な接着性および造膜性(フィルム形成性)を付与する成分であればよい。天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはフッ素樹脂等が挙げられる。これらの高分子成分(C)は単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子成分(C)の質量平均分子量は、通常、10000以上である。上限値に特に制限はないが、5000000以下が実際的である。
上記高分子成分(C)の質量平均分子量は、GPC〔ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)〕によるポリスチレン換算で求めた値である。以降、具体的な高分子成分(C)の質量平均分子量の値も同義である。
また、上記高分子成分(C)のガラス転移温度(Tg)は、100℃未満が好ましく、90℃未満がより好ましい。下限は、-30℃以上が好ましく、0℃以上であることも好ましく、10℃以上がより好ましい。
上記高分子成分(C)のガラス転移温度は、昇温速度0.1℃/分でDSCにより測定されたガラス転移温度である。以降、具体的な高分子成分(C)のガラス転移温度の値も同義である。
なお、本発明においてエポキシ樹脂(A)と高分子成分(C)のうちフェノキシ樹脂等のエポキシ基を有し得る樹脂とは、エポキシ当量が500g/eq以下である樹脂がエポキ樹脂(A)に、該当しないものが成分(C)に、それぞれ分類される。
【0025】
上記高分子成分(C)として、少なくとも1種のフェノキシ樹脂を使用することが好ましく、上記高分子成分(C)がフェノキシ樹脂であることも好ましい。フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂(A)と構造が類似していることから相溶性がよく、樹脂溶融粘度も低く、接着性にも優れた効果を発揮することができる。また、フェノキシ樹脂は耐熱性が高く、飽和吸水率が小さく、半導体パッケージの信頼性を確保する観点からも好ましい。さらには、常温でのタック性、脆さなどを解消する点からも好ましい。
【0026】
フェノキシ樹脂は、ビスフェノールもしくはビフェノール化合物とエピクロルヒドリンのようなエピハロヒドリンとの反応、液状エポキシ樹脂とビスフェノールもしくはビフェノール化合物との反応で得ることができる。
いずれの反応においても、ビスフェノールもしくはビフェノール化合物としては、下記一般式(A)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
一般式(A)において、Lは、単結合または2価の連結基を表し、Ra1およびRa2は、各々独立に置換基を表す。maおよびnaは各々独立に、0~4の整数を表す。
【0029】
において、2価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-S-、-SO-、-SO-、または、アルキレン基とフェニレン基とが組み合わされた基が好ましい。
アルキレン基は、炭素数が1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましく、1または2が特に好ましく、1が最も好ましい。
アルキレン基は、-C(Rα)(Rβ)-が好ましく、ここで、RαおよびRβは各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。RαとRβが互いに結合して、環を形成してもよい。RαおよびRβは、水素原子またはアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル)が好ましい。アルキレン基は、なかでも-CH-、-CH(CH)、-C(CH-が好ましく、-CH-、-CH(CH)がより好ましく、-CH-がさらに好ましい。
【0030】
フェニレン基は、炭素数が6~12が好ましく、6~8がより好ましく、6がさらに好ましい。フェニレン基は、例えば、p-フェニレン、m-フェニレン、o-フェニレンが挙げられ、p-フェニレン、m-フェニレンが好ましい。
アルキレン基とフェニレン基が組み合わされた基としては、アルキレン-フェニレン-アルキレン基が好ましく、-C(Rα)(Rβ)-フェニレン-C(Rα)(Rβ)-がより好ましい。
αとRβが結合して形成する環は、5または6員環が好ましく、シクロペンタン環、シクロヘキサン環がより好ましく、シクロヘキサン環がさらに好ましい。
【0031】
は、単結合またはアルキレン基、-O-、-SO-が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
【0032】
a1およびRa2は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。
【0033】
maおよびnaは、0~2が好ましく、0または1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0034】
ビスフェノールもしくはビフェノール化合物は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZや、4,4’-ビフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-ビフェノール、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール、カルド骨格型ビスフェノール等が挙げられ、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、4,4’-ビフェノールが好ましく、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールFがより好ましく、ビスフェノールAが特に好ましい。
【0035】
上記の液状エポキシ樹脂としては、脂肪族ジオール化合物のジグリシジルエーテルが好ましく、下記一般式(B)で表される化合物がより好ましい。
【0036】
【化2】
【0037】
一般式(B)において、Xはアルキレン基を表し、nbは1~10の整数を表す。
【0038】
アルキレン基は、炭素数が2~10が好ましく、2~8がより好ましく、3~8がさらに好ましく、4~6が特に好ましく、6が最も好ましい。
例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレンが挙げられ、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘプタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレンが好ましい。
【0039】
nbは1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0040】
ここで、nbが2~10の場合、Xはエチレンまたはプロピレンが好ましく、エチレンがさらに好ましい。
【0041】
ジグリシジルエーテルにおける脂肪族ジオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオールが挙げられる。
【0042】
上記反応において、ビスフェノールもしくはビフェノール化合物や脂肪族ジオール化合物は各々において、単独で反応して得られたフェノキシ樹脂で、2種以上混合して反応して得られたフェノキシ樹脂でも構わない。例えば、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルとビスフェノールAとビスフェノールFの混合物との反応が挙げられる。
【0043】
フェノキシ樹脂(C)は、本発明では、液状エポキシ樹脂とビスフェノールもしくはビフェノール化合物との反応で得られたフェノキシ樹脂が好ましく、下記一般式(I)で表される繰り返し単位のフェノキシ樹脂がより好ましい。
【0044】
【化3】
【0045】
一般式(I)において、L、Ra1、Ra2、maおよびnaは、それぞれ、一般式(A)におけるL、Ra1、Ra2、maおよびnaと同義であり、好ましい範囲も同じである。Xおよびnbは、それぞれ、一般式(B)におけるXおよびnbと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0046】
本発明では、これらのなかでも、ビスフェノールAと1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルとの重合体が好ましい。
フェノキシ樹脂の骨格に着目すると、本発明では、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA・F型共重合型フェノキシ樹脂を好ましく用いることができる。また、低弾性高耐熱型フェノキシ樹脂を好ましく用いることができる。
【0047】
フェノキシ樹脂(C)の質量平均分子量は、10000以上が好ましく、10000~100000がより好ましい。
また、フェノキシ樹脂(C)中に僅かに残存するエポキシ基の量は、エポキシ当量で、5000g/eqを越えることが好ましい。
【0048】
フェノキシ樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、100℃未満が好ましく、90℃未満がより好ましい。下限は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
【0049】
フェノキシ樹脂(C)は、上記のような方法で合成してもよく、また市販品を使用しても構わない。市販品としては、例えば、1256(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、三菱化学(株)製)、YP-50(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、YP-70(ビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、FX-316(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、および、FX-280S(カルド骨格型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、4250(ビスフェノールA型/F型フェノキシ樹脂、三菱化学(株)製)、FX-310(低弾性高耐熱型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)等が挙げられる。
【0050】
上記高分子成分(C)として、少なくとも1種の(メタ)アクリル樹脂を用いることも好ましく、上記高分子成分(C)が(メタ)アクリル樹脂であることも好ましい。(メタ)アクリル樹脂としては、ダイアタッチフィルムに適用される公知の(メタ)アクリル共重合体からなる樹脂が用いられる。
(メタ)アクリル共重合体の質量平均分子量は10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。上記質量平均分子量を上記好ましい範囲内とすることにより、タック性を低減でき、溶融粘度の上昇も抑制することができる。
(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度は、好ましくは-10℃~50℃、より好ましくは0℃~40℃、さらに好ましくは0℃~30℃の範囲にある。上記ガラス転移温度を上記好ましい範囲内とすることにより、タック性を低減でき、半導体ウェハとダイアタッチフィルムとの間等におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0051】
上記(メタ)アクリル樹脂としては、ポリマーの構成成分として(メタ)アクリル酸エステル成分を含む共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂の構成成分として、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどに由来する成分が挙げられる。また、(メタ)アクリル樹脂は構成成分として環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート)成分を有してもよい。また、イミド(メタ)アクリレート成分、アルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸ブチル等)成分を有することもできる。また酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン等との共重合体でもよい。また水酸基を有しているほうが、エポキシ樹脂との相溶性がよいため好ましい。
【0052】
ダイアタッチフィルム中、エポキシ樹脂(A)の含有量100質量部に対する高分子成分(C)の含有量は、1~40質量部が好ましく、5~35質量部がより好ましく、7~30質量部がさらに好ましい。含有量をこのような範囲とすることで、熱硬化前のダイアタッチフィルムの剛性と柔軟性のバランスがとれ、フィルム状態が良好(フィルムタック性が低減)となり、フィルム脆弱性も抑制することができる。
【0053】
<無機充填材(D)>
無機充填材(D)は、ダイアタッチフィルムに通常使用され得る無機充填材を特に制限なく用いることができる。
無機充填材(D)としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鈴、錫、亜鉛、パラジウム、半田等の金属、又は合金類、カーボンナノチューブ、グラフェン等のカーボン類等の種々の無機粉末が挙げられる。
【0054】
無機充填材(D)の平均粒径(d50)は特に限定されず、治具痕の形成を抑制しつつ、ダイアタッチ性を高める観点から、0.01~6.0μmが好ましく、0.01~5.0μmが好ましく、0.1~3.5μmがより好ましい。平均粒径(d50)とは、いわゆるメジアン径であり、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し、累積分布において粒子の全体積を100%としたときに50%累積となるときの粒径を意味する。上記ダイアタッチフィルムの一態様は、無機充填材(D)に着目した場合、平均粒径(d50)が0.1~3.5μmの無機充填材を含む。また、別の好ましい態様は、平均粒径(d50)が3.5μmを超える無機充填材を含む。
【0055】
無機充填材のモース硬度は特に限定されないが、治具痕の発生を抑制しつつ、ダイアタッチ性を高める観点から、2以上であることが好ましく、2~9であることがより好ましい。モース硬度は、モース硬度計により測定することができる。
【0056】
上記無機充填材(D)は、熱伝導性を有する無機充填材(熱伝導率が12W/m・K以上の無機充填材)を含む態様でもよいし、熱伝導性を有さない無機充填材(熱伝導率が12W/m・K未満の無機充填材)を含む態様でもよい。
熱伝導性を有する無機充填材(D)は、熱伝導性材料からなる粒子または熱伝導性材料で表面被覆されてなる粒子であって、これらの熱伝導性材料の熱伝導率が12W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・K以上であることがより好ましい。
上記熱伝導性材料の熱伝導率が上記好ましい下限値以上であると、目的の熱伝導率を得るために配合する無機充填材(D)の量を低減することができ、ダイアタッチフィルムの溶融粘度の上昇が抑制されて、基板に圧着する際に基板の凹凸部への埋め込み性をより向上させることができる。結果、ボイドの発生をより確実に抑制できる。
本発明において、上記熱伝導性材料の熱伝導率は、25℃における熱伝導率を意味し、各材料の文献値を用いることができる。文献に記載がない場合にも、例えば、セラミックスであればJIS R 1611により測定される値、金属であれば、JIS H 7801により測定される値を代用することができる。
【0057】
熱伝導性を有する無機充填材(D)としては、例えば、熱伝導性のセラミックスがあげられ、アルミナ粒子(熱伝導率:36W/m・K)、窒化アルミニウム粒子(熱伝導率:150~290W/m・K)、窒化ホウ素粒子(熱伝導率:60W/m・K)、酸化亜鉛粒子(熱伝導率:54W/m・K)、窒化ケイ素フィラー(熱伝導率:27W/m・K)、炭化ケイ素粒子(熱伝導率:200W/m・K)および酸化マグネシウム粒子(熱伝導率:59W/m・K)が好ましく挙げられる。
特にアルミナ粒子は高熱伝導率を有し、分散性、入手容易性の点で好ましい。また、窒化アルミニウム粒子や窒化ホウ素粒子は、アルミナ粒子よりもさらに高い熱伝導率を有する観点で好ましい。本発明では、なかでもアルミナ粒子と窒化アルミニウム粒子がより好ましい。
また、セラミックより高い熱伝導性を有する金属粒子、もしくは金属で表面被覆された粒子も挙げられる。例えば、銀(熱伝導率:429W/m・K)、ニッケル(熱伝導率:91W/m・K)及び金(熱伝導率:329W/m・K)等の単一金属フィラーや、これら金属により表面被覆された、アクリルやシリコーン樹脂等の高分子粒子が好ましく挙げられる。
本発明では、なかでも高熱伝導率と耐酸化劣化の観点で金、もしくは銀粒子等がより好ましい。
【0058】
無機充填材(D)は、表面処理や表面改質されていてもよく、このような表面処理や表面改質としては、シランカップリング剤やリン酸もしくはリン酸化合物、界面活性剤が挙げられ、本明細書において記載する事項以外は、例えば、国際公開第2018/203527号における熱伝導フィラーの項又は国際公開第2017/158994号の窒化アルミニウム充填材の項における、シランカップリング剤、リン酸もしくはリン酸化合物及び界面活性剤の記載を適用することができる。
【0059】
無機充填材(D)を、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)及び高分子成分(C)等の樹脂成分に配合する方法としては、粉体状の無機充填材と必要に応じてシランカップリング剤、リン酸もしくはリン酸化合物や界面活性剤とを直接配合する方法(インテグラルブレンド法)、もしくはシランカップリング剤、リン酸もしくはリン酸化合物や界面活性剤等の表面処理剤で処理された無機充填材を有機溶剤に分散させたスラリー状無機充填材を配合する方法を使用することができる。
また、シランカップリング剤により無機充填材(D)を処理する方法としては特に限定されず、溶媒中で無機充填材(D)とシランカップリング剤を混合する湿式法、気相中で無機充填材(D)とシランカップリング剤を混合する乾式法、上記インテグラルブレンド法などが挙げられる。
【0060】
特に、窒化アルミニウム粒子は、高熱伝導化に貢献するものの、加水分解によりアンモニウムイオンを生成しやすいため、吸湿率が小さいフェノール樹脂と併用することや、表面改質により加水分解が抑制されていることが好ましい。窒化アルミニウムの表面改質方法としては、表面層に酸化アルミニウムの酸化物層を設け耐水性を向上させ、リン酸もしくはリン酸化合物による表面処理を行い樹脂との親和性を向上させる方法が特に好ましい。
【0061】
シランカップリング剤は、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基のような加水分解性基が少なくとも1つ結合したものであり、これに加えて、アルキル基、アルケニル基、アリール基が結合してもよい。アルキル基は、アミノ基、アルコキシ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基が置換したものが好ましく、アミノ基(好ましくはフェニルアミノ基)、アルコキシ基(好ましくはグリシジルオキシ基)、(メタ)アクリロイルオキシ基が置換したものがより好ましい。
シランカップリング剤は、例えば、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイルオキプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0062】
シランカップリング剤や界面活性剤は、無機充填材(D)100質量部に対し、0.1~25.0質量部含有させるのが好ましく、0.1~10質量部含有させるのがより好ましく、0.1~2.0質量部含有させるのがさらに好ましい。
シランカップリング剤や界面活性剤の含有量を上記好ましい範囲とすることにより、無機充填材(D)の凝集を抑制しながら、過剰なシランカップリング剤や界面活性剤の半導体組立加熱工程(例えばリフロー工程)における揮発による接着界面での剥離を抑制することができ、ボイドの発生が抑えられ、ダイアタッチ性を向上させることができる。
【0063】
無機充填材(D)の形状は、フレーク状、針状、フィラメント状、球状、鱗片状のものが挙げられるが、高充填化及び流動性の観点から球状粒子が好ましい。
【0064】
上記ダイアタッチフィルムは、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)および無機充填材(D)の各含有量の合計に占める無機充填材(D)の割合が、5~70体積%であることが好ましい。上記無機充填材(D)の含有割合が上記下限値以上であると、ダイアタッチフィルムにおける治具痕の発生を抑制しつつ、ダイアタッチ性を向上させることができる。さらに、所望とする溶融粘度を付与できる場合がある。また、上記上限値以下であると、ダイアタッチフィルムに所望とする溶融粘度を付与することができ、ボイドの発生をより抑制することができる。また、熱変化時に半導体パッケージに生じる内部応力を緩和することもでき、接着力も向上させることができる場合がある。
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)および無機充填材(D)の各含有量の合計に占める無機充填材(D)の割合は、10~70体積%が好ましく、20~60体積%がより好ましく、20~55体積%がさらに好ましい。
上記無機充填材(D)の含有量(体積%)は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)および無機充填材(D)の含有質量と比重から算出することができる。
上記ダイアタッチフィルムの好ましい形態は、無機充填材(D)の平均粒径(d50)が0.01~5.0μmであり、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)及び無機充填材(D)の各含有量の合計に占める無機充填材(D)の割合が、5~70体積%である形態である。
【0065】
<その他の成分>
上記ダイアタッチフィルムは、有機溶媒(メチルエチルケトン等)、イオントラップ剤(イオン捕捉剤)、硬化触媒、粘度調整剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤等をさらに含有していてもよい。例えば、国際公開第2017/158994号のその他の添加物を含むことができる。
【0066】
上記ダイアタッチフィルム中に占める、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)および無機充填材(D)の各含有量の合計の割合は、例えば、60質量%以上とすることができ、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上とすることもできる。また、上記割合は100質量%でもよく、95質量%以下とすることもできる。
【0067】
続いて、本発明のダイシングダイアタッチフィルムを構成するダイアタッチフィルムの好ましい特性について説明する。
【0068】
<ダイアタッチフィルムの特性>
-熱硬化後の熱伝導率-
本発明に用いるダイアタッチフィルムは、熱硬化後において、熱伝導率が0.8W/m・K以上であることが好ましく、1.0W/m・K以上であることがより好ましく、1.4W/m・K以上がより好ましい。ダイアタッチフィルムが熱硬化後に上記の熱伝導性を発揮することにより、半導体パッケージ外部への放熱効率に優れた半導体パッケージを得ることができる。
熱伝導率の上限は特に限定されず、通常は30W/m・K以下である。
ここで、熱伝導率の測定における熱硬化後とは、ダイアタッチフィルムの硬化が完了した状態を意味する。具体的には、昇温速度10℃/分でDSC(示差走査熱量計)測定を行った際に反応熱ピークが見られなくなった状態をいう。
本発明において、このような熱硬化後のダイアタッチフィルムの熱伝導率とは、熱伝導率測定装置(商品名:HC-110、英弘精機(株)製)を用いて、熱流計法(JIS-A1412に準拠)により熱伝導率を測定した値をいう。具体的には、実施例に記載の測定方法を参照することができる。
熱伝導率を上記の範囲とするには、例えば、無機充填剤(D)の種類や含有量などの調整により制御できる。
【0069】
-溶融粘度-
上記ダイアタッチフィルムは、ダイアタッチ性を高める観点から、熱硬化前のダイアタッチフィルムを25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃の範囲における溶融粘度が500~10000Pa・sの範囲にあることが好ましく、1000~10000Pa・sの範囲にあることがより好ましく、1500~9200Pa・sの範囲にあることがさらに好ましい。
溶融粘度は、後述する実施例に記載の方法により決定することができる。
【0070】
続いてダイアタッチフィルムの形成方法について説明する。
【0071】
<ダイアタッチフィルムの形成>
上記ダイアタッチフィルムは、ダイアタッチフィルムの構成成分を含有するダイアタッチフィルム形成用組成物(ワニス)を調製し、この組成物を、例えば、離型処理された剥離フィルム上に塗布し、乾燥させて形成することができる。ダイアタッチフィルム形成用組成物は、通常は溶媒を含有する。
ダイアタッチフィルムの厚みは200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下とすることも好ましく、20μm以下とすることも好ましい。接着剤層の厚みは通常は1μm以上であり、2μm以上とすることも好ましく、4μm以上としてもよい。
ダイアタッチフィルムの厚みは、接触・リニアゲージ方式(卓上型接触式厚み計測装置)により測定することができる。
離型処理された剥離フィルムとしては、得られるダイアタッチフィルムのカバーフィルムとして機能するものであればよく、公知のものを適宜採用することができる。例えば、離型処理されたポリプロピレン(PP)、離型処理されたポリエチレン(PE)、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。塗工方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーター等を用いた方法が挙げられる。
乾燥は、エポキシ樹脂(A)を硬化せずに、接着剤用組成物から有機溶媒を除去してダイアタッチフィルムとすることができればよく、例えば、80~150℃の温度で1~20分間保持することにより行うことができる。
【0072】
上記ダイアタッチフィルムの形成では、ダイシングフィルムと接する面の算術平均粗さRa(Ra1)を上述の通り0.05~2.50μmとする。Ra1の制御方法は特に制限されず、例えば、ダイアタッチフィルム表面を、加圧ロールを用いて均すことにより、Ra1を所望の範囲に制御することができる。
また、上記ダイアタッチフィルムの形成では、前記ダイシングフィルムと接する面とは反対側の面の算術平均粗さRa(Ra2)に対する、前記Ra1の比の値(Ra1/Ra2)が1.05~28.00となるようにRa2を制御する。Ra2についても、必要によりダイアタッチフィルム表面を、加圧ロールを用いて均すことにより、Ra2を所望の範囲に制御することができる。
上記Ra1、Ra2、及びRa1/Ra2の好ましい範囲は上述した通りである。
【0073】
<ダイシングフィルム>
本発明のダイシングダイアタッチフィルムを構成するダイシングフィルムは、ダイシングフィルム(ダイシングテープ)として用いられる一般的な構成を適宜に適用することができる。また、ダイシングフィルムの形成方法についても通常の方法を適宜に適用することができる。ダイシングフィルムを構成する粘着剤としては、ダイシングフィルム用途に用いられる一般的な粘着剤、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等を適宜に用いることができる。なかでも、ダイシングフィルムはエネルギー線硬化性であることが好ましい。
【0074】
上記アクリル系粘着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの共重合体からなる樹脂が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、およびそれらと共重合可能な不飽和単量体(例えば酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル等)との共重合体からなる樹脂も、上記アクリル系粘着剤として好ましい。また、これらの樹脂を2種類以上混合しても良い。これらの中でも(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ブチルから選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび酢酸ビニルの中から選ばれる1種以上との共重合体が好ましい。これにより、被着体との密着性や粘着性の制御が容易になる。
【0075】
本発明に用いるダイシングフィルムをエネルギー線硬化性とするために、ダイシングフィルムを構成するポリマー中に重合性基(例えば炭素-炭素不飽和結合)を導入したり、ダイシングフィルム中に重合性モノマーを配合したりすることができる。この重合性モノマーは、重合性基を2つ以上(好ましくは3つ以上)有することが好ましい。
エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。
【0076】
本発明に用いるダイシングフィルムの構成として、例えば、特開2010-232422号公報、特許第2661950号公報、特開2002-226796号公報、特開2005-303275号公報等を参照することができる。
【0077】
ダイシングフィルムの厚さは、1~200μmが好ましく、2~100μmがより好ましく、3~50μmがさらに好ましく、5~30μmとすることも好ましい。
【0078】
本発明のダイシングダイアタッチフィルムは、ダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとの間の25~80℃の範囲における剥離力は、0.40N/25mm以下であることが好ましい。この剥離力は、ダイシングフィルムがエネルギー線硬化性の場合には、エネルギー線照射後のダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとの間の剥離力である。
上記剥離力は、次の条件により決定される。
測定条件:JISZ0237準拠、180°剥離試験
測定装置:引張試験機(島津製作所製、型番:TCR1L型)
【0079】
<ダイシングダイアタッチフィルムの作製>
本発明のダイシングダイアタッチフィルムの作製方法は、ダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとを積層した構造とできれば特に制限されない。
例えば、離型処理した剥離ライナー上に粘着剤を含む塗布液を塗布し、乾燥することによりダイシングフィルムを形成し、ダイシングフィルムと基材フィルムとを貼り合わせることによって、基材フィルム、ダイシングフィルム、剥離ライナーが順に積層された積層体を得る。これとは別に、剥離フィルム(剥離ライナーと同義であるが、便宜上、ここでは表現を変えている。)上にダイアタッチフィルム形成用組成物を塗布し、乾燥して剥離フィルム上にダイアタッチフィルムを形成する。次いで、剥離ライナーを剥がして露出させたダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとが接するようにして、ダイシングフィルムとダイアタッチフィルムを貼り合わせることによって、基材フィルム、ダイシングフィルム、ダイアタッチフィルム、剥離フィルムが順に積層されたダイシングダイアタッチフィルムを得ることができる。
上記のダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとの貼り合わせは、加圧条件下で行うことが好ましい。
上記のダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとの貼り合わせにおいて、ダイシングフィルムの形状は、リングフレームの開口部を覆うことができる限り特に制限されないが、円形状であることが好ましく、ダイアタッチフィルムの形状は、ウェハの裏面を覆うことができる限り特に制限されないが、円形状であることが好ましい。ダイシングフィルムはダイアタッチフィルムよりも大きく、接着剤層の周囲に粘着剤層が露出した部分を有する形状であることが好ましい。このように、所望の形状に裁断されたダイシングフィルム及びダイアタッチフィルムを貼り合わせることが好ましい。
上記のようにして作製したダイシングダイアタッチフィルムは、使用時には、剥離フィルムを剥離して使用する。
【0080】
[半導体パッケージおよびその製造方法]
次いで、図面を参照しながら本発明の半導体パッケージおよびその製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1図7は、本発明の半導体パッケージの製造方法の各工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【0081】
本発明の半導体パッケージの製造方法においては、先ず、第1の工程として、図1に示すように、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハ1の裏面(すなわち、半導体ウェハ1の半導体回路が形成されていない面)に、本発明のダイシングダイアタッチフィルムのダイアタッチフィルム2の側を熱圧着し、半導体ウェハ1にダイアタッチフィルム2とダイシングフィルム3を設ける。図1では、ダイアタッチフィルム2をダイシングフィルム3よりも小さく示しているが、両フィルムの大きさ(面積)は、目的に応じて適宜に設定される。熱圧着の条件は、エポキシ樹脂(A)が事実上熱硬化しない温度で行う。例えば、70℃程度で、圧力0.3MPa程度の条件が挙げられる。
半導体ウェハ1としては、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハを適宜用いることができ、例えば、シリコンウェハ、SiCウェハ、GaAsウェハ、GaNウェハが挙げられる。本発明のダイシングダイアタッチフィルムを半導体ウェハ1の裏面に設けるには、例えば、ロールラミネーター、マニュアルラミネーターのような公知の装置を適宜用いることができる。
【0082】
次いで、第2の工程として、図2に示すように、半導体ウェハ1とダイアタッチフィルム2とを一体にダイシングすることにより、ダイシングフィルム3上に、半導体ウェハが個片化された半導体チップ4と、ダイアタッチフィルム2が個片化されたダイアタッチフィルム片2(接着剤層2)とを備える接着剤層付き半導体チップ5を得る。ダイシング装置は特に制限されず、通常のダイシング装置を適宜に用いることができる。
【0083】
次いで、第3の工程として、必要によりダイシングフィルムをエネルギー線で硬化して粘着力を低減し、ピックアップにより接着剤層2をダイシングフィルム3から剥離する。次いで、図3に示すように、接着剤層付き半導体チップ5と配線基板6とを接着剤層2を介して熱圧着し、配線基板6に接着剤層付き半導体チップ5を実装する。配線基板6としては、表面に半導体回路が形成された基板を適宜用いることができ、例えば、プリント回路基板(PCB)、各種リードフレーム、および、基板表面に抵抗素子やコンデンサー等の電子部品が搭載された基板が挙げられる。
このような配線基板6に接着剤層付き半導体チップ5を実装する方法としては特に制限されず、従来の熱圧着による実装方法を適宜に採用することができる。
【0084】
次いで、第4の工程として、接着剤層2を熱硬化させる。熱硬化の温度としては、接着剤層2の熱硬化開始温度以上であれば特に制限がなく、使用するエポキシ樹脂(A)、高分子成分(C)及びエポキシ硬化剤(B)の種類により適宜に調整される。例えば、100~180℃が好ましく、より短時間で硬化させる観点からは140~180℃がより好ましい。温度が高すぎると、硬化過程中に接着剤層2中の成分が揮発して発泡しやすくなる傾向にある。この熱硬化処理の時間は、加熱温度に応じて適宜に設定すればよく、例えば、10~120分間とすることができる。
【0085】
本発明の半導体パッケージの製造方法では、図4に示すように、配線基板6と接着剤層付き半導体チップ5とをボンディングワイヤー7を介して接続することが好ましい。このような接続方法としては特に制限されず、従来公知の方法、例えば、ワイヤーボンディング方式の方法、TAB(Tape Automated Bonding)方式の方法等を適宜採用することができる。
【0086】
また、搭載された半導体チップ4の表面に、別の半導体チップ4を熱圧着、熱硬化し、再度ワイヤーボンディング方式により配線基板6と接続することにより、複数個積層することもできる。例えば、図5に示すように半導体チップをずらして積層する方法、もしくは図6に示すように2層目以降の接着剤層2を厚くすることで、ボンディングワイヤー7を埋め込みながら積層する方法等がある。
【0087】
本発明の半導体パッケージの製造方法では、図7に示すように、封止樹脂8により配線基板6と接着剤層付き半導体チップ5とを封止することが好ましく、このようにして半導体パッケージ9を得ることができる。封止樹脂8としては特に制限されず、半導体パッケージの製造に用いることができる適宜公知の封止樹脂を用いることができる。また、封止樹脂8による封止方法としても特に制限されず、通常行われている方法を採用することができる。
【実施例0088】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、室温とは25℃を意味し、MEKはメチルエチルケトンを意味する。
【0089】
[実施例1]
<ダイシングフィルム(粘着剤層)の作製>
(1)基材フィルムの作製
低密度ポリエチレン(LDPE、密度0.92g/cm、融点110℃)の樹脂ペレットを230℃で溶融し、押出機を用いて厚さ70μmの長尺フィルム状に成形した。得られたフィルムに100kGyの電子線を照射し、基材フィルムを作製した。
【0090】
(2)ダイシングフィルムの形成
ブチルアクリレートを50モル%、2-ヒドロキシエチルアクリレートを45モル%およびメタクリル酸を5モル%用いて、質量平均分子量80万の共重合体を調製した。ヨウ素価が20となるように、2-イソシアナトエチルメタクリレートを添加して、ガラス転移温度-40℃、水酸基価30mgKOH/g、酸価5mgKOH/gのアクリル系共重合体を調製した。
次に、上記で調製したアクリル系共重合体100質量部に対して、ポリイソシアネートとしてコロネートL(商品名、日本ポリウレタン製)を5質量部加え、光重合開始剤としてEsacure KIP 150(商品名、Lamberti社製)を3質量部加えた混合物を、酢酸エチルに溶解させ、攪拌して粘着剤組成物を調製した。
次に、離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりなる剥離ライナー上に、この粘着剤組成物を乾燥後の厚さが20μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させてダイシングフィルムを形成した後、上記で調製した基材フィルムとダイシングフィルムとを貼り合わせ、剥離ライナー、ダイシングフィルム及び基材フィルムからなる3層積層フィルムを得た。
【0091】
<ダイアタッチフィルム(接着剤層)の作製>
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN-501H、質量平均分子量:1000、軟化点:55℃、半固体、エポキシ当量:167g/eq、日本化薬社製)56質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD-128、質量平均分子量:400、軟化点:25℃未満、液体、エポキシ当量:190g/eq、新日化エポキシ製造社製)49質量部、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP-50、質量平均分子量:70000、Tg:84℃、常温(25℃)弾性率:1700MPa、新日化エポキシ製造社製)10質量部及びMEK67質量部を1000mlのセパラブルフラスコ中において温度110℃で2時間加熱攪拌し、樹脂ワニスを得た。
次いで、この樹脂ワニスを800mlのプラネタリーミキサーに移し、アルミナフィラー(商品名:AO-502、アドマテックス社製、平均粒径(d50):0.6μm)205質量部を添加して、イミダゾール系硬化剤(商品名:2PHZ-PW、四国化成(株)製)8.5質量部、シランカップリング剤(商品名:サイラエースS-510、JNC社製)3.0質量部を加えて室温において1時間攪拌混合後、真空脱泡して混合ワニス(ダイアタッチフィルム形成用組成物)を得た。
次いで、得られた混合ワニスを厚み38μmの離型処理されたPETフィルム(剥離フィルム)上に塗布して、130℃で10分間加熱乾燥し、縦300mm、横200mm、厚みが10μmのダイアタッチフィルムが剥離フィルム上に形成された2層積層フィルムを得た。
次いで、ダイアタッチフィルムの剥離フィルム側とは反対側の面を、加圧ロール(型番:UNA-980BK,表面粗さRa5-8μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)にて、荷重0.4MPa、速度1.0m/minの条件にて均し、ダイアタッチフィルム表面の算術平均粗さRa(Ra1)を下表の通りに制御した。
【0092】
<ダイシングダイアタッチフィルムの作製>
次いで、ダイシングフィルムを含む上記の3層積層体を、リングフレームの開口部を覆うように貼り合わせることができるような円形状に裁断した。また、ダイアタッチフィルムを含む上記の2層積層体を、ウェハ裏面を覆うことができるような円形状に裁断した。
上記のように裁断した3層積層体から剥離ライナーを剥離して露出させたダイシングフィルムと、上記のように裁断した2層積層体のダイアタッチフィルムとを、ロールプレス機を用いて、荷重0.4MPa、速度1.0m/minの条件にて貼り合わせ、基材フィルム、ダイシングフィルム、ダイアタッチフィルム及び剥離フィルムがこの順に積層されたダイシングダイアタッチフィルムを作製した。このダイシングダイアタッチフィルムは、ダイシングフィルムがダイアタッチフィルムよりも大きく、ダイアタッチフィルムの周囲にダイシングフィルムが露出した部分を有する。
【0093】
[実施例2]
実施例1において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-800GY,表面粗さRa8-12μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0094】
[実施例3]
実施例1において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-900BK,表面粗さRa10-15μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0095】
[実施例4]
実施例1において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-340-X10,表面粗さRa35-45μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0096】
[実施例5]
実施例1において、ダイアタッチフィルムの成分であるアルミナフィラーの使用量を479質量部としたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0097】
[実施例6]
実施例5において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-800GY,表面粗さRa8-12μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例5と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0098】
[実施例7]
実施例5において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-900BK,表面粗さRa10-15μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例5と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0099】
[実施例8]
実施例5において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-340-X10,表面粗さRa35-45μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例5と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0100】
[実施例9]
実施例1において、ダイアタッチフィルムの成分であるアルミナフィラーに代えて、銀フィラー(商品名:AG-4-8F、DOWAエレクトロニクス社製、平均粒径(d50):2.0μm)360質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0101】
[実施例10]
実施例9において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-800GY,表面粗さRa8-12μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は実施例9と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0102】
[実施例11]
実施例9において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-900BK,表面粗さRa10-15μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例9と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0103】
[実施例12]
実施例9において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-340-X10,表面粗さRa35-45μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例9と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0104】
[実施例13]
実施例1において、ダイアタッチフィルムの成分であるアルミナフィラーに代えて、銀フィラー(商品名:AG-4-8F、DOWAエレクトロニクス社製、平均粒径(d50):2.0μm)950質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0105】
[実施例14]
実施例13において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-800GY,表面粗さRa8-12μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例13と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0106】
[実施例15]
実施例13において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-900BK,表面粗さRa10-15μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例13と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0107】
[実施例16]
実施例13において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-340-X10,表面粗さRa35-45μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例13と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0108】
[実施例17]
実施例2において、ダイアタッチフィルムの成分であるビスフェノールA型フェノキシ樹脂に代えて、アクリル樹脂溶液(商品名:S-2060、質量平均分子量:500000、Tg:-23℃、常温(25℃)弾性率:50MPa、固形分25%(有機溶媒:トルエン)、東亜合成(株)製)120質量部(うちアクリルポリマー質量部30質量部)を用いて、また、アルミナフィラーの使用量を320質量部としたこと以外は、実施例2と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0109】
[比較例1]
実施例1において、ダイアタッチフィルムの表面粗さの制御に用いた加圧ロールを、加圧ロール(型番:UNA-102CR,表面粗さRa0.5-1.5μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)に代えたこと以外は、実施例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0110】
[比較例2]
比較例1において、ダイアタッチフィルムの成分であるアルミナフィラーの使用量を479質量部としたこと以外は、比較例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0111】
[比較例3]
比較例1において、ダイアタッチフィルムの成分であるアルミナフィラーに代えて、銀フィラー(商品名:AG-4-8F、DOWAエレクトロニクス社製、平均粒径(d50):2.0μm)360質量部を用いたこと以外は、比較例1と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0112】
[比較例4]
比較例3において、ダイアタッチフィルムの成分である銀フィラーの使用量を950質量部としたこと以外は、比較例3と同様にしてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0113】
[比較例5]
実施例7で作製したダイシングダイアタッチフィルムにおいて、剥離フィルムを一度剥がし、加圧ロール(型番:UNA-900BK,表面粗さRa10-15μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)にて、ダイアタッチフィルムの剥離フィルムと接していた表面の算術平均粗さRa(Ra2)を下表の通りに制御し、次いで、剥離した剥離フィルムを再度貼り合わせてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0114】
[比較例6]
実施例16で作製したダイシングダイアタッチフィルムにおいて、剥離フィルムを一度剥がし、加圧ロール(型番:UNA-340-X10,表面粗さRa35-45μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)にて、ダイアタッチフィルムの剥離フィルムと接していた表面の表面粗さRa(Ra2)を下表の通りに制御し、次いで、剥離した剥離フィルムを再度貼り合わせてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0115】
[比較例7]
実施例17で作製したダイシングダイアタッチフィルムにおいて、剥離フィルムを一度剥がし、加圧ロール(型番:UNA-800GY,表面粗さRa8-12μm、商品名;トシカルロール、株式会社トシコ製)にて、ダイアタッチフィルムの剥離フィルムと接していた表面の表面粗さRa(Ra2)を下表の通りに制御し、次いで、剥離した剥離フィルムを再度貼り合わせてダイシングダイアタッチフィルムを作製した。
【0116】
[測定・試験・評価]
上記の各実施例及び比較例で得られた各ダイシングダイアタッチフィルムについて、下記項目について、測定、試験ないし評価を行った。
結果をまとめて下表に示す。
【0117】
<ダイアタッチフィルムの算術平均粗さRa1>
各ダイシングダイアタッチフィルムについて、ダイシングフィルム側から紫外線照射装置(商品名:RAD-2000F/8、リンテック株式会社製、照射量200mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、次いでダイシングフィルムをダイアタッチフィルムから剥離し、ダイアタッチフィルムのダイシングフィルム側表面の算術平均粗さRa1を、表面粗さ測定機(型式:SJ-201、ミツトヨ社製)を用い測定した。測定条件は下記のようにした。
カットオフ値:2.5mm
評価長さ:12.4mm
測定速度:0.5mm/s
触針先端半径(R):2μm
【0118】
<ダイアタッチフィルムの算術平均粗さRa2>
各ダイシングダイアタッチフィルムについて、ダイシングフィルム側から紫外線照射装置(商品名:RAD-2000F/8、リンテック株式会社製、照射量200mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、次いでダイシングフィルムをダイアタッチフィルムから剥離し、露出したダイアタッチフィルム表面を直径5インチ、厚み470μmのダミーシリコンウェハに貼合後、剥離フィルムを剥離し、ダイアタッチフィルムの剥離フィルム側表面の算術平均粗さRa2を、表面粗さ測定機(型式:SJ-201、ミツトヨ社製)を用い測定した。測定条件は下記のようにした。
カットオフ値:2.5mm
評価長さ:12.4mm
測定速度:0.5mm/s
触針先端半径(R):2μm
【0119】
<ダイアタッチフィルムの溶融粘度>
各ダイシングダイアタッチフィルムから縦5.0cm×横5.0cmのサイズを切り出し、ダイシングフィルム側から紫外線照射装置(商品名:RAD-2000F/8、リンテック株式会社製、照射量200mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、ダイシングフィルムと剥離フィルムとをダイアタッチフィルムから剥離し、残ったダイアタッチフィルム部分を試料とした。各ダイシングダイアタッチフィルムにつき、複数の試料を調製し、これらを積層し、ステージ70℃の熱板上で、ハンドローラーにて貼り合わせて、厚さが約1.0mmである接着剤層の試験片を得た。
この試験片について、レオメーター(RS6000、Haake社製)を用い、温度範囲20~250℃、昇温速度5℃/minでの粘性抵抗の変化を測定した。得られた温度-粘性抵抗曲線から、120℃における溶融粘度(Pa・s)を算出した。
【0120】
<ダイアタッチフィルムの熱硬化後の熱伝導率>
各ダイシングダイアタッチフィルムから一辺50mm以上の四角片を切り取り、ダイシングフィルム側から紫外線照射装置(商品名:RAD-2000F/8、リンテック株式会社製、照射量200mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、ダイシングフィルムと剥離フィルムとをダイアタッチフィルムから剥離し、残ったダイアタッチフィルム部分を試料とした。各ダイシングダイアタッチフィルムにつき、複数の試料を調製し、これらを積層して厚みが5mm以上の積層体を得た。
この積層体試料を、直径50mm、厚さ5mmの円盤状金型の上に置き、圧縮プレス成型機を用いて温度150℃、圧力2MPaにおいて10分間加熱して取り出した後、さらに乾燥機中において温度180℃で1時間加熱することにより接着剤層を熱硬化させ、直径50mm、厚さ5mmの円盤状試験片を得た。
この試験片について、熱伝導率測定装置(商品名:HC-110、英弘精機(株)製)を用いて、熱流計法(JIS-A1412に準拠)により熱伝導率(W/(m・K))を測定した。
【0121】
<連続ピックアップ性評価>
各ダイシングダイアタッチフィルムを、先ず、剥離フィルムを剥がして、マニュアルラミネーター(商品名:FM-114、テクノビジョン社製)を用いて、温度70℃、圧力0.3MPaの条件で、ダミーシリコンウェハ(8inchサイズ、厚さ100μm)の一方の面に、露出したダイアタッチフィルム表面を貼り合わせた。次いで、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC-ZH2050(27HEDD)、DISCO社製/Z2:NBC-ZH127F-SE(BC)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD-6340、DISCO社製)を用いて5mm×5mmの正方形のサイズになるようにダミーシリコンウェハ側からダイシングを実施して、ダイシングフィルム上に、個片化されたダイアタッチフィルム片(接着剤層)付きのダミーチップを得た。
次いで、ウェハ裏面側から紫外線照射装置(商品名:RAD-2000F/8、リンテック株式会社製、照射量200mJ/cm)を用いて紫外線を照射し、ダイボンダー(商品名:DB-800、日立ハイテクノロジーズ社製)にて、下記のピックアップ条件で上記接着剤層付きダミーチップをピックアップし、リードフレーム基板(42Arroy系、凸版印刷社製)の実装面側と貼り合わせるように、下記ダイアタッチ条件で熱圧着した。このピックアップして熱圧着する工程を連続的に繰り返し行い、下記評価基準に基づき、連続ピックアップ性を評価した。

- ピックアップ条件 -
ニードル本数5本(350R)、ニードルハイト 200μm、ピックアップタイマー100msec もしくは300msec

- ダイアタッチ条件 -
120℃、圧力0.1MPa(荷重400gf)、時間1.0秒

- 評価基準 -
AA:ピックアップタイマー100msecにて連続してピックアップ、熱圧着を行ったダミーチップ192個の全てにおいて、目視観察にてダイシングフィルム上への接着剤層残りが見られない。
A:上記AAには該当しないが、ピックアップタイマー300msecにて連続してピックアップ、熱圧着を行ったダミーチップ192個の全てにおいて、目視観察にてダイシングフィルム上への接着剤層残りが見られない。
B:上記AAには該当せず、かつピックアップタイマー300msecにて連続してピックアップ、熱圧着を行ったダミーチップ192個のうち、目視観察にてダイシングフィルム上への接着剤層残りが発生したチップが1~2個である。
C:上記AAには該当せず、かつピックアップタイマー300msecにて連続してピックアップ、熱圧着を行ったダミーチップ192個のうち、目視観察にてダイシングフィルム上への接着剤層残りが発生したチップが3~10個である。
D:上記AAには該当せず、かつピックアップタイマー300msecにて連続してピックアップ、熱圧着を行ったダミーチップ192個のうち、目視観察にてダイシングフィルム上への接着剤層残りが発生したチップが11個以上である。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
上記表1及び2に示されるように、Ra1/Ra2が本発明の規定よりも小さい比較例1~7のダイシングダイアタッチフィルムでは、ピックアップ不良が生じやすいものであった。これに対し、Ra1/Ra2が本発明の規定を満たす実施例1~17のダイシングダイアタッチフィルムはいずれも、ピックアップ不良の発生が格段に抑えられていることがわかる。また、これらの結果は、Ra1/Ra2を1.05以上とすることの上記の技術的意義が、Ra1の大小にかかわらず発現することを示している。
なお、実施例及び比較例のすべてのダイシングダイアタッチフィルムにおいて、ダイシングフィルムとダイアタッチフィルムとの間の紫外線照射前の剥離力(JISZ0237準拠、180°剥離試験)は十分に高く、ダイシング工程でダイシング精度の不具合などは生じなかった。また、ピックアップ後にリードフレーム基板に熱圧着したとき、実用上問題を生じるような目立ったボイドも認められなかった。
【符号の説明】
【0125】
1 半導体ウェハ
2 ダイアタッチフィルム(接着剤層)
3 ダイシングフィルム
4 半導体チップ
5 接着剤層付き半導体チップ
6 配線基板
7 ボンディングワイヤー
8 封止樹脂
9 半導体パッケージ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングフィルムと、該ダイシングフィルム上に積層されたダイアタッチフィルムとを有するダイシングダイアタッチフィルムであって、
前記ダイアタッチフィルムは、前記ダイシングフィルムと接する面の算術平均粗さRa1が0.05~2.50μmであり、前記ダイシングフィルムと接する面とは反対側の面の算術平均粗さRa2が0.20μm以下であり、
記Ra2に対する前記Ra1の比の値が1.05~28.00である、ダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項2】
前記ダイアタッチフィルムは、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)及び無機充填材(D)を含有し、熱硬化後に熱伝導率1.0W/m・K以上の硬化体を与える、請求項1に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項3】
前記ダイアタッチフィルムは、25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が500~10000Pa・sの範囲に達する、請求項1又は2に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項4】
前記ダイシングフィルムがエネルギー線硬化性である、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項5】
前記ダイアタッチフィルム表面を、加圧ロールを用いて均すことにより、前記Ra1と記Ra2とを満たす表面状態を作り出すことを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムの製造方法。
【請求項6】
半導体チップと配線基板とが、及び/又は、半導体チップ間が、接着剤の熱硬化体により接着されてなり、該接着剤が請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムのダイアタッチフィルムに由来する、半導体パッケージ。
【請求項7】
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハの裏面に、請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムを、前記ダイアタッチフィルムが半導体ウェハの裏面に接するように熱圧着して設ける第1の工程と、
前記半導体ウェハと前記ダイアタッチフィルムとを一体にダイシングすることにより、ダイシングフィルム上に、ダイアタッチフィルム片と半導体チップとを備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層付き半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離して、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着する第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化する第4の工程と
を含む、半導体パッケージの製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングフィルムと、該ダイシングフィルム上に積層されたダイアタッチフィルムとを有するダイシングダイアタッチフィルムであって、
前記ダイアタッチフィルムは、前記ダイシングフィルムと接する面の算術平均粗さRa1が0.05~2.50μmであり、前記ダイシングフィルムと接する面とは反対側の面の算術平均粗さRa2が0.09μm以下であり、
前記Ra2に対する前記Ra1の比の値が1.05~28.00である、ダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項2】
前記ダイアタッチフィルムは、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、高分子成分(C)及び無機充填材(D)を含有し、熱硬化後に熱伝導率1.0W/m・K以上の硬化体を与える、請求項1に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項3】
前記ダイアタッチフィルムは、25℃から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、120℃における溶融粘度が500~10000Pa・sの範囲に達する、請求項1又は2に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項4】
前記ダイシングフィルムがエネルギー線硬化性である、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルム。
【請求項5】
前記ダイアタッチフィルム表面を、加圧ロールを用いて均すことにより、前記Ra1と記Ra2とを満たす表面状態を作り出すことを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムの製造方法。
【請求項6】
半導体チップと配線基板とが、及び/又は、半導体チップ間が、接着剤の熱硬化体により接着されてなり、該接着剤が請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムのダイアタッチフィルムに由来する、半導体パッケージ。
【請求項7】
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成された半導体ウェハの裏面に、請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングダイアタッチフィルムを、前記ダイアタッチフィルムが半導体ウェハの裏面に接するように熱圧着して設ける第1の工程と、
前記半導体ウェハと前記ダイアタッチフィルムとを一体にダイシングすることにより、ダイシングフィルム上に、ダイアタッチフィルム片と半導体チップとを備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層付き半導体チップを前記ダイシングフィルムから剥離して、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着する第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化する第4の工程と
を含む、半導体パッケージの製造方法。