(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150357
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】光電変換素子及び発電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 51/46 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H01L31/04 168
H01L31/04 152G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052928
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 出
(72)【発明者】
【氏名】毛利 和弘
(72)【発明者】
【氏名】原田 千寛
(72)【発明者】
【氏名】上野 友徳
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151BA02
5F151BA03
5F151BA18
5F151CB13
5F151CB24
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリトリールアミン系半導体化合物を含む正孔輸送層を備える光電変換素子において、耐久性を向上させることを課題とする。
【解決手段】上部電極105と下部電極101とにより構成される一対の電極と、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層103と、バッファ層102,104を有し、バッファ層のいずれかが正孔輸送層である光電変換素子であって、正孔輸送層が、正孔輸送能を有するポリトリールアミンを含み、ポリトリアリールアミンにおける3級アミンの窒素原子に直接結合される芳香環の少なくとも1つが、2つのオルト位の少なくとも1つに電子吸引基が導入されたベンゼン環であることを特徴とする、光電変換素子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、
前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、
前記一対の電極間に位置する正孔輸送層と、を有する光電変換素子であって、
前記正孔輸送層が、正孔輸送能を有する有機半導体化合物を含み、かつ、
前記有機半導体化合物が、ポリトリールアミンであり、
前記ポリトリアリールアミンにおける3級アミンの窒素原子に直接結合される芳香環の少なくとも1つが、2つのオルト位の少なくとも1つに電子吸引基が導入されたベンゼン環であることを特徴とする、光電変換素子。
【請求項2】
前記ポリトリールアミンが、下記式(I)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1に記載の光電変換素子。
【化1】
(上記式(I)において、X
1及びX
2は、独立して水素原子、又は1価の有機基であり、かつ、X
1及びX
2の少なくとも1つが電子吸引基であり;R
1~R
3は、独立して水素原子、又は1価の有機基であり;nは、20以上の自然数である。)
【請求項3】
前記ベンゼン環が、パラ位に炭素数4以上のアルキル基を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記ベンゼン環のオルト位に導入される電子吸引基のうちの少なくとも一つが、フルオロ基であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記ポリトリールアミンの数平均分子量が、8,500以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記正孔輸送層が、さらにホウ素化合物を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記ホウ素化合物が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートであることを特徴とする、請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記有機無機ハイブリッド型半導体化合物が、ペロブスカイト構造を有する化合物であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする、発電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及び発電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子として、一対の電極の間に、活性層、及びバッファ層等が配置されたものが知られている。この光電変換効率の向上を目的として、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を活性層として用いることが検討されており、特に、ペロブスカイト構造を有する化合物が注目されている。
【0003】
このような光電変換素子の正孔輸送材料として、有機半導体化合物等が使用されており、有機半導体化合物としては、例えばポリトリールアミン系半導体化合物が挙げられる。ポリトリールアミン系半導体化合物を用いた光電変換素子として、例えば特許文献1には、ポリトリールアミン等の電荷注入抵抗増大型のホール輸送材と、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン]等の電子再結合増大型のホール輸送材とを組み合わせて含有する光電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
正孔輸送層中の有機半導体化合物として含まれるポリトリールアミン系半導体化合物では、高分子主鎖中に存在するアミンの窒素原子が隣接するベンゼン環との間においてπ電子が広く非局在化するのを防ぐ役割を果たすため、高分子の有効共役長が制限され、その結果としてHOMO(最高被占軌道)の位置エネルギーレベルが深くなり、非常に優れた耐酸化安定性を示す。しかしながら、ポリトリールアミン系半導体化合物では、自由に回転可能な、大きな結合角度を有する非平面状の主鎖により、分子間の最適な芳香族πスタッキングが阻害され、アモルファス状のミクロ構造が形成されるため、電荷キャリア移動度等の特性の熱や光による低下幅が高度な規則性を有する結晶性材料よりも顕著であり、改善の余地が残されていた。
本発明は、ポリトリールアミン系半導体化合物を含む正孔輸送層を備える光電変換素子において、耐久性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、特定の構造を有するポリトリールアミンを用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、
前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、
前記一対の電極間に位置する正孔輸送層と、を有する光電変換素子であって、
前記正孔輸送層が、正孔輸送能を有する有機半導体化合物を含み、かつ、
前記有機半導体化合物が、ポリトリールアミンであり、
前記ポリトリアリールアミンにおける3級アミンの窒素原子に直接結合される芳香環の少なくとも1つが、2つのオルト位の少なくとも1つに電子吸引基が導入されたベンゼン環であることを特徴とする、光電変換素子。
[2] 前記ポリトリールアミンが、下記式(I)で示される繰り返し単位を有することを特徴とする、[1]に記載の光電変換素子。
【化1】
(上記式(I)において、X
1及びX
2は、独立して水素原子、又は1価の有機基であり、かつ、X
1及びX
2の少なくとも1つが電子吸引基であり;R
1~R
3は、独立して水素原子、又は1価の有機基であり;nは、20以上の自然数である。)
[3] 前記ベンゼン環が、パラ位に炭素数4以上のアルキル基を有することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の光電変換素子。
[4] 前記ベンゼン環のオルト位に導入される電子吸引基のうちの少なくとも一つが、フルオロ基であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の光電変換素子。[5] 前記ポリトリールアミンの数平均分子量が、8,500以上であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の光電変換素子。
[6] 前記正孔輸送層が、さらにホウ素化合物を含むことを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の光電変換素子。
[7] 前記ホウ素化合物が、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートであることを特徴とする、[6]に記載の光電変換素子。
[8] 前記有機無機ハイブリッド型半導体化合物が、ペロブスカイト構造を有する化合物であることを特徴とする、[1]~[7]のいずれかに記載の光電変換素子。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の光電変換素子を有することを特徴とする、発電デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ポリトリールアミン系半導体化合物を含む正孔輸送層を備える光電変換素子において、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態としての光電変換素子を模式的に表す断面図である。
【
図2】一実施形態としての太陽電池を模式的に表す断面図である。
【
図3】一実施形態としての太陽電池モジュールを模式的に表す断面図である。
【
図4】実施例及び比較例に係る光電変換素子の耐久性の測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数
値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
また、本明細書において、2つ以上の対象を併せて説明する際に用いる「独立して」とは、それらの2つ以上の対象が同じであっても異なっていてもよいという意味で使用される。
【0011】
<1.光電変換素子>
本発明の一実施形態である光電変換素子は、
上部電極と下部電極とにより構成される一対の電極と、
前記一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有する活性層と、
前記一対の電極間に位置する正孔輸送層と、を有する光電変換素子であって、
前記正孔輸送層が、正孔輸送能を有する有機半導体化合物を含み、かつ、
前記有機半導体化合物が、ポリトリールアミンであり、
前記ポリトリアリールアミンにおける3級アミンの窒素原子に直接結合される芳香環の少なくとも1つが、2つのオルト位の少なくとも1つに電子吸引基が導入されたベンゼン環であることを特徴とする、光電変換素子である。
【0012】
図1は、光電変換素子の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図1に示される光電変換素子は、一般的な薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子であるが、本発明に係る光電変換素子が
図1に示されるものに限られるわけではない。
図1に示す光電変換素子100においては、下部電極101、活性層103、及び上部電極105がこの順に配置されている。また、光電変換素子100は、下部電極101と活性層103との間に存在するバッファ層102、及び上部電極105と活性層103との間に存在するバッファ層104を有するが、これらのバッファ層102及びバッファ層104の少なくともいずれか一方の層が正孔輸送層であり、該正孔輸送層は少なくとも有機半導体化合物を含有し、さらにドーパントを含有させることができる。また、
図1に示すように、光電変換素子100が、基材106を有していてもよく、絶縁体層、及び仕事関数チューニング層のようなその他の層を有していてもよい。
【0013】
[1-1.バッファ層]
光電変換素子は、一対の電極間に位置するバッファ層を有し、かつ、該バッファ層として少なくとも1層以上の正孔輸送層を有する。正孔輸送層は、正孔輸送能を有する有機半導体化合物、好ましくはさらに該有機半導体化合物に対するドーパントを含有する層である。
図1においては、バッファ層102及びバッファ層104の少なくともいずれか一方の層が正孔輸送層となる。ただし、正孔輸送層を塗布法により成膜する際には、塗布溶媒が活性層103を浸漬して、活性層103に影響を及ぼす可能性があるため、正孔輸送層は、下部電極101と、活性層103との間に位置していることが好ましい。
正孔輸送層とは別のバッファ層は、電子輸送層としての層であってよい。なお、アノードと活性層との間に設けられたバッファ層は正孔輸送層と呼ばれることがあり、カソードと活性層との間に設けられたバッファ層は電子輸送層と呼ばれることがある。
【0014】
[1-1-1.バッファ層(正孔輸送層)]
正孔輸送層としてのバッファ層は、正孔輸送能を有する有機半導体化合物を含有すれば特段制限されず、本発明の効果が得られる範囲で他の物質を含んでいてよい。n-i-p積層型光電変換素子の場合、正孔輸送層により輸送電荷量の制御が容易となる。以下、本項目において、バッファ層を正孔輸送層とも称する。
【0015】
(有機半導体化合物)
正孔輸送層に含まれる有機半導体化合物は、ポリトリールアミンであり、該ポリトリアリールアミンにおける3級アミンの窒素原子に直接結合される芳香環の少なくとも1つが、2つのオルト位の少なくとも1つに電子吸引基が導入されたベンゼン環であれば特段制限されないが、耐久性の向上の観点から、2つのオルト位のいずれにも電子吸引基が導入されることが好ましい。
上記の電子吸引基は、特段制限されず、例えば、ハロゲニル基、シアノ基、カルボキシ基、アセチル基、エトキシカルボニル基、ニトロ基、スルホニル基、アシル基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基等であり、R’、Ra、Rb、Rcは、独立して、水素、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表すものが挙げられるが、耐久性の向上の観点から、ハロゲニル基、シアノ基、又はカルボキシ基が好ましく、ハロゲニル基がより好ましく、フルオロ基がさらに好ましい。
上記のベンゼン環における2つのオルト位の炭素は、少なくとも1つの炭素が上記の電子吸引基と結合していればよく、電子吸引基と結合しない炭素は水素原子に結合する基は、上記の基以外の基であれば特段制限されず、例えば、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素1~20のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、ヒドロキシ基、-NRaRb、-SH、-SiRaRbRc、-BH2、-SeH、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素環基等であり、R’、Ra、Rb、Rcは、独立して、水素、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、及びアリール基を表すものが挙げられるが、耐久性の向上の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、又はアリール基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、又はアリール基がより好ましく、水素原子、メチル基、又はアリール基がさらに好ましく、水素原子、メチル基、アリール基が特に好ましい。
【0016】
上記のベンゼン環におけるメタ位及びパラ位の炭素に結合する基は、特段制限されず、水素原子又は1価の有機基であってよいが、耐久性の向上の観点から、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルケニル基、又は置換基を有していてもよい炭素1~20のアルキニル基、であることが好ましく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルケニル基、であることがより好ましい。
本明細書において、1価の有機基とは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素1~20のアルキニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲニル基、シアノ基、カルボキシ基、アセチル基、エトキシカルボニル基、ニトロ基、スルホニル基、アシル基、-NRaRb、-SH、-SiRaRbRc、-BH2、-SeH、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素環基、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基等であり、R’、Ra、Rb、Rcは、独立して、水素、又は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基を表すものが挙げられる。特に、パラ位の炭素に結合する基は、耐久性の向上の観点から、炭素数2以上のアルキル基であることが好ましく、該アルキル基の炭素数は、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましく、また、通常16以下であり、14以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。5また、メタ位の炭素に結合する基は、耐久性の向上の観点から、水素原子、アルキル基、又はハロゲニルキであることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0017】
ポリトリアリールアミンにおける3級アミンの窒素原子に直接結合される3つの芳香環
は、少なくとも1つが上記のベンゼン環であれば特段制限されず、他の芳香環は2価の芳香環であり、例えば、フェニレン基、フラニレン基、チオフェニレン基、ピローレン基、ピラゾーレン基、イミダゾーレン基、オキサジアゾーレン基、ピリジニレン基、ピラジニレン基、ピリダジニレン基、ピリミジニレン基、又はトリアジニレン基等の単芳香環基;ナフタレニレン基、アントラセニレン基、フェナントレニレン基、ジヒドロフェナントレニレン基、トリフェニレニン基、アセナフテニレン基、フルオランテニレン基、ナフタセニレン基、フルオレニレン基、スピロビフルオレニレン基、ピレニレン基、ペリレニレン基、クリセニレン基、インデニレン基、フルオランテニレン基、又はベンゾフルオランテニレン基、ベンゾフラニレン基、ベンゾチオフェニレン基、インドーレン基、カルバゾーレン基、ピロロイミダゾーレン基、ピロロピラゾーレン基、ピロロピローレン基、チエノピローレン基、チエノチオフェニレン基、フロピローレン基、フロフラニレン基、チエノフラニレン基、ベンゾイソオキサゾーレン基、ベンゾイソチゾーレン基、ベンゾイミダゾーレン基、キノレニレン基、イソキノリニレン基、シノリニレン基、キノキサレニレン基、フェナントリジニレン基、ベンゾイミダゾーレン基、ペリミジニレン基、キナゾリニレン基、キナゾリノニレン基、アズレニレン基等の縮合芳香環基等、又はこれらの組み合わせが挙げられ、耐久性の向上の観点から、フェニル基、フラニレン基、チオフェニレン基、ピローレン基、ピラゾーレン基、又はナフタレニレン基、又はフルオレニレン基であることが好ましく、フェニル基、フラニレン基、チオフェニレン基、又はフルオレニレン基であることがより好ましく、フェニル基又はフルオレニレン基であることがさらに好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。これらの芳香環は、置換基を有していてよい。
本明細書において、「置換基を有していてよい」の表現における置換基とは、ハロゲニル基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルケニル基、炭素1~20のアルキニル基、炭素数1~20のアルコキシ基、-C≡N、-NH3、-C(=O)OH、-C(=O)OR’、-C(=O)R’、-SH、-SiRaRbRc、-BH2、-SeH、1価の脂肪族炭化水素環基、1価の芳香族炭化水素環基、1価の芳香族複素環基等であり、R’、Ra、Rb、Rcは、独立して、水素、又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0018】
正孔輸送層に含まれる有機半導体化合物であるポリトリールアミンは、耐久性の向上の観点から、下記式(I)で示される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0019】
【0020】
上記式(I)において、X1及びX2は、独立して水素原子、又は1価の有機基であり、かつ、X1及びX2の少なくとも1つが電子吸引基であり;R1~R3は、独立して水素原子、又は1価の有機基であり;nは、20以上の自然数である。
【0021】
X1及びX2における電子吸引基は、好ましい態様を含め、上述した電子吸引基の条件を適用することができ、X1及びX2の少なくとも1つが電子吸引基であればよいが、耐
久性の向上の観点から、X1及びX2のいずれも電子吸引基であることが好ましい。
R1は、水素原子、又は1価の有機基であれば特段制限されないが、耐久性の向上の観点から、炭素数1~20のアルキル基、又はアリール基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましく、該アルキル基の炭素数は、2以上であることがより好ましく、3以上であることがさらに好ましく、4以上であることが特に好ましい。また、通常16以下であり、14以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。
R2及びR3は、独立して、水素原子、又は1価の有機基であれば特段制限されないが、耐久性の向上の観点から、水素原子、アルキル基、又はハロゲニル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
nは、20以上の自然数であれば特段制限されないが、耐久性の向上の観点から、通常20以上であり、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましく、また、通常10000以下であり、8000以下であることが好ましく、6000以下であることがより好ましく、5000以下であることがさらに好ましい。
【0022】
ポリトリアリールアミン1分子中の、前記式(I)で示される繰り返し単位の全重量の割合は、特段制限されないが、層間剥離を抑制する観点から、通常20重量%以上であり、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましく、70重量%以上であることが特に好ましい。
【0023】
正孔輸送層に含まれる有機半導体化合物であるポリトリールアミンは、具体的に、例えば、下記式で示される化合物である。
【0024】
【0025】
これらの化合物の中でも、耐久性の向上の観点から、下記の化合物が好ましい。
【0026】
【0027】
ポリトリアリールアミンの数平均分子量(Mn)は、特段制限されないが、耐久性の向上の観点から、通常6,000以上であり、8,500以上であることが好ましく、10,000以上であることが特に好ましく、また、通常100,000以下であり、80,000以下であることが好ましく、60,000以下であることが特に好ましい。
ポリトリアリールアミンの重量平均分子量(Mw)は、特段制限されないが、耐久性の向上の観点から、通常2,000以上であり、3,000以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましく、5,000以上であることが特に好ましく、また、通常100,000以下であり、80,000以下であることが好ましく、60,000以下であることが特に好ましい。
【0028】
正孔輸送層中の有機半導体化合物の含有量は、特段制限されないが、層間剥離を抑制する観点から、通常60重量%以上であり、70重量%以上であることが好ましく、75重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましく、また、通常99.5重量%以下であり、99重量%以下であることが好ましく、98.5重量%以下であることがより好ましく、98重量%以下であることが特に好ましい。
なお、光電変換素子が複数のバッファ層を有する場合、それらの中の正孔輸送層に相当するいずれか1つの層が上記の含有量の範囲を満たしていればよい。
【0029】
上述したポリトリアリールアミンの合成方法は、特段制限されず、公知の方法を組み合わせて合成することができる。例えば、特開2009-263665号公報に記載されているような方法で合成することができ、トリアリールアミンモノマーの酸化重合や遷移金属触媒を用いたカップリング反応により合成できる。
【0030】
上記の式(1)で表される構造単位を有する有機半導体化合物(ポリトリアリールアミン)、及び後述のドーパントを含め、正孔輸送層中の成分の含有量や構造は、例えば、1H-NMR、高効率液体クロマトグラフ(HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)等の方法により分析できる。
【0031】
(ドーパント)
正孔輸送層としてのバッファ層は、上記の有機半導体化合物(ポリトリアリールアミン)に対するドーパントを含有するが、その態様は特段制限されない。ドーパントは、正孔輸送層の導電性や正孔輸送能力を前記活性層に対して最適化するための物質である。
ドーパントとして使用できる物質としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートなどのホウ素化合物、トリス[1-(メトキシカルボニル)-2-(トリフルオロ
メチル)-エタン-1,2-ジチオレン]モリブデンなどのモリブデン化合物、2,3,4,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンといったテトラシアノキノジメタン骨格を有する有機化合物などが挙げられる。ドーパントは、正孔輸送層の成膜前または成膜後で、少なくとも一つの有機半導体化合物との間で電荷移動反応を起こすことが好ましい。ドーパントとしては、溶解性に優れ、加熱等により酸化剤として機能する電子受容活性部位を産生する点で、超原子価ヨウ素化合物が好ましい。
【0032】
この超原子価ヨウ素化合物は、有機半導体化合物に対するドーパントとして働き、電子受容性(すなわち酸化剤としての働き)を示すことが知られている。また、電子受容性のドーパントは、半導体化合物から電子を奪うことにより、半導体化合物の導電性又は正孔輸送能力を向上させることができる。このように、超原子価ヨウ素化合物は、半導体化合物の電荷輸送特性を向上させることができる。
【0033】
超原子価ヨウ素化合物とは、超原子価ヨウ素を含む化合物であり、酸化数が+3以上となっているヨウ素を含む化合物と定義される。例えば、ドーパントは、ヨウ素(III)化合物又はヨウ素(V)化合物でありうる。5価のヨウ素を含むヨウ素(V)化合物は、例えば、デス・マーチン・ペルヨージナンのようなペルヨージナン化合物でありうる。また、3価のヨウ素を含むヨウ素(III)化合物としては、(ジアセトキシヨード)ベンゼンのようなヨードベンゼンが酸化された構造を有する化合物、又はジアリールヨードニウム塩が挙げられる。良好な電子受容性を示し、また酸化過程において分子が破壊されると逆反応が起こりにくい点で、ドーパントは、3価のヨウ素を含む有機化合物が好ましく、中でもジアリールヨードニウム塩を用いるのがより好ましい。
【0034】
ジアリールヨードニウム塩とは、[Ar-I+-Ar]X-構造を有する塩のことである。ここで、2つのArはそれぞれアリール基を表す。アリール基(芳香族基)は特に限定されず、例えば有機半導体化合物に関して既に挙げたものでありうる。X-は、任意のアニオンを表す。X-としては、例えば、ハロゲン化物イオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、又はテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン等でありうる。溶解性が高く、塗布液の生成反応が円滑に進行しうる点で、X-はフッ素原子を有するアニオンであることが好ましい。
【0035】
ドーパントの好ましい例としては、一般式(I)に表されるものが挙げられる。式(I)において、X-は、任意のアニオンを表し、具体例としては上記の通りである。
[R11-I+ -R12]X- (I)
【0036】
式(I)において、R11及びR12は、それぞれ独立に1価の有機基である。1価の有機基の例としては、脂肪族基又は芳香族基が挙げられる。脂肪族基の例としては、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又は炭素数4~20の脂肪族複素環基が挙げられる。例えば、脂肪族基としては、シクロアルキル基を含むアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基等が挙げられ、具体例としてはメチル基、エチル基、ブチル基、シクロヘキシル基、又はテトラヒドロフリル基等が挙げられる。
【0037】
芳香族基の例としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素基又は炭素数2~20の芳香族複素環基が挙げられる。例えば、芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、チエニル基、又はピリジル基等が挙げられる。
【0038】
なお、上記の脂肪族基及び芳香族基は、置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基としては、特段の制限はないが、ハロゲニル基、水酸基、シアノ基、アミノ基、カ
ルボキシル基、エステル基、アルキルカルボニル基、アセチル基、スルホニル基、シリル基、ボリル基、ニトリル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、チオ基、セレノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基等が挙げられる。
【0039】
R11及びR12は、好ましくは炭素数6~20の芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニル基である。ここで、芳香族炭化水素基は置換基を有さない又は炭素数1~6のアルキル基を有することが好ましい。R11及びR12は、特に、パラ位にアルキル基を有するフェニル基であることが好ましい。
【0040】
正孔輸送層中のドーパントの含有量は、特段制限されないが、化学的に正孔輸送層中の電荷輸送を補助し、一定以上の正孔移動度を付与する一方で、電荷輸送を担う有機半導体化合物における電荷輸送経路(パス)を担保する観点から、通常0.01重量%以上であり、0.1重量%以上であることが好ましく、0.2重量%以上であることがより好ましく、0.3重量%以上であることがさらに好ましく、0.5重量%以上であることが特に好ましく、また、通常30重量%以下であり、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、12重量%以下であることがさらに好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
また、正孔輸送層において、上記の式(1)で表される構造単位を有する有機半導体化合物に対するドーパントの含有比率(ドーパント/有機半導体化合物)は、特段制限されないが、化学的に正孔輸送層中の電荷輸送を補助し、一定以上の正孔移動度を付与する一方で、電荷輸送を担う有機半導体化合物における電荷輸送経路(パス)を担保する観点から、通常0.01重量%以上であり、0.1重量%以上であることが好ましく、0.2重量%以上であることがより好ましく、0.3重量%以上であることがさらに好ましく、0.5重量%以上であることが特に好ましく、また、通常30重量%以下であり、20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、12重量%以下であることがさらに好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
なお、光電変換素子が複数のバッファ層を有する場合、それらの中の正孔輸送層に相当するいずれか1つの層が上記の含有量の範囲を満たしていればよい。
【0041】
(その他の物質)
正孔輸送層としてのバッファ層は、上記の有機半導体化合物及びドーパント以外の物質を含んでいてよく、例えば、光電変換(活性層)材料、接着性機能材料、フィラー、又は強度補助材等を含んでいてよい。
【0042】
[1-1-2.バッファ層(電子輸送層)]
光電変換素子は、上述した正孔輸送層としてのバッファ層以外にも電子輸送層としてのバッファ層を有していてもよい。以下、本項目において、バッファ層を電子輸送層とも称する。その態様は特段制限されず、活性層からカソードへの電子の取り出し効率を向上させることが可能な任意の材料を用いればよく、公知の物を用いることができる。具体的には、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の無機化合物、有機化合物、又は本発明に係る有機無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。例えば、無機化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウム等のアルカリ金属の塩、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化インジウム等の金属酸化物が挙げられる。有機化合物としては、バソキュプロイン(BCP)、バソフェナントレン(Bphen)、(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)、ホウ素化合物、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)、ペリレンテトラカルボン酸無水物(PTCDA)、フラーレン化合物、又はホスフィンオキシド化合物若しくはホスフィンスルフィド化合物等の周期表第16族元素と二重結合を有するホスフィン化合物が挙げられる。
【0043】
正孔輸送層としてのバッファ層の厚さ、及び電子輸送層としてのバッファ層の厚さは、特段制限されず、用途に応じて適宜設定することができるが、一実施形態において、独立に、0.5nm以上、別の実施形態において1nm以上、さらに別の実施形態において5nm以上とすることができ、一方、一実施形態において1μm以下、別の実施形態において500nm以下、さらに別の実施形態において200nm以下、さらに別の実施形態において150nm以下とすることができる。バッファ層の膜厚が上記の範囲内にあることで、正孔や電子のキャリアの移動効率が向上しやすくなり、光電変換効率が向上しうる。
【0044】
また、正孔輸送層としてのバッファ層、及び電子輸送層としてのバッファ層のいずれも、層の形成方法に制限はなく、材料の特性に合わせて形成方法を選択することができる。例えば、上述の有機半導体化合物、ドーパント、及び溶媒を含有する塗布液を作製し、スピンコート法やインクジェット法等の湿式成膜法を用いることにより、バッファ層を形成することができる。また、真空蒸着法等の乾式成膜法により、バッファ層を形成することもできる。
【0045】
[1-2.電極]
電極は、活性層103における光吸収により生じた正孔及び電子を捕集する機能を有する。本実施形態に係る光電変換素子100は一対の電極を有し、一対の電極のうち一方を上部電極と呼び、他方を下部電極と呼ぶ。光電変換素子100が基材を有するか又は基材上に設けられている場合、基材により近い電極を下部電極と、基材からより遠い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶことができる。また、透明電極を下部電極と、下部電極よりも透明性が低い電極を上部電極と、それぞれ呼ぶこともできる。
図1に示す光電変換素子100は、下部電極101及び上部電極105を有している。
【0046】
一対の電極としては、正孔の捕集に適したアノードと、電子の捕集に適したカソードとを用いることができる。この場合、光電変換素子100は、下部電極101がアノードであり上部電極105がカソードである順型構成を有していてもよいし、下部電極101がカソードであり上部電極105がアノードである逆型構成を有していてもよい。
【0047】
一対の電極は、いずれか一方が透光性であればよく、両方が透光性であっても構わない。透光性があるとは、太陽光が40%以上透過することを指す。また、透明電極の太陽光線透過率は70%以上であることが、より多くの光が透明電極を透過して活性層103に到達するために好ましい。光の透過率は、分光光度計(例えば、日立ハイテク社製U-4100)で測定できる。
【0048】
下部電極101及び上部電極105、又はアノード及びカソードの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の部材及びその製造方法を使用することができる。
【0049】
[1-3.活性層]
光電変換素子100は、一対の電極間に位置し、有機無機ハイブリッド型半導体化合物を含有し、光電変換を行う活性層103を有する。光電変換素子100が光を受けると、光が活性層103に吸収されてキャリアが発生し、発生したキャリアは下部電極101及び上部電極105から取り出される。
有機無機ハイブリッド型半導体材料とは、有機成分と無機成分とが分子レベル又はナノレベルで組み合わせられた材料であって、半導体特性を示す材料のことを指す。
【0050】
有機無機ハイブリッド型半導体材料は、ペロブスカイト構造を有する化合物(以下、ペ
ロブスカイト半導体化合物と呼ぶことがある)であることが好ましい。ペロブスカイト半導体化合物とは、ペロブスカイト構造を有する半導体化合物のことを指す。ペロブスカイト半導体化合物としては、特段の制限はないが、例えば、Galasso et al.
Structure and Properties of Inorganic Solids, Chapter 7 - Perovskite type and related structuresで挙げられているものから選ぶことができる。例えば、ペロブスカイト半導体化合物としては、一般式AMX3で表されるAMX3型のもの、又は一般式A2MX4で表されるA2MX4型のものが挙げられる。ここで、Mは2価のカチオンを、Aは1価のカチオンを、Xは1価のアニオンを指す。
【0051】
1価のカチオンAに特段の制限はないが、上記Galassoの著書に記載されているものを用いることができる。より具体的な例としては、周期表第1族及び第13族乃至第16族元素を含むカチオンが挙げられる。これらの中でも、セシウムイオン、ルビジウムイオン、カリウムイオン、置換基を有していてもよいアンモニウムイオン又は置換基を有していてもよいホスホニウムイオンが好ましい。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの例としては、1級アンモニウムイオン又は2級アンモニウムイオンが挙げられる。置換基にも特段の制限はない。置換基を有していてもよいアンモニウムイオンの具体例としては、アルキルアンモニウムイオン又はアリールアンモニウムイオンが挙げられる。特に、立体障害を避けるために、3次元の結晶構造となるモノアルキルアンモニウムイオンが好ましく、安定性向上の観点からは、一つ以上のフッ素基を置換したアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。また、カチオンAとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。
【0052】
1価のカチオンAの具体例としては、メチルアンモニウムイオン、モノフッ化メチルアンモニウムイオン、ジフッ化メチルアンモニウムイオン、トリフッ化メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン、n-プロピルアンモニウムイオン、イソブチルアンモニウムイオン、n-ブチルアンモニウムイオン、t-ブチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ベンジルアンモニウムイオン、フェネチルアンモニウムイオン、グアニジウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、アセトアミジニウムイオン又はイミダゾリウムイオン等が挙げられる。
【0053】
2価のカチオンMにも特段の制限はないが、2価の金属カチオン又は半金属カチオンであることが好ましい。具体的な例としては周期表第14族元素のカチオンが挙げられ、より具体的な例としては、鉛カチオン(Pb2+)、スズカチオン(Sn2+)、ゲルマニウムカチオン(Ge2+)が挙げられる。また、カチオンMとして2種類以上のカチオンの組み合わせを用いることもできる。なお、安定な光電変換素子を得る観点からは、鉛カチオン又は鉛カチオンを含む2種以上のカチオンを用いることが特に好ましい。
【0054】
1価のアニオンXの例としては、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、ホウ酸イオン、アセチルアセトナートイオン、炭酸イオン、クエン酸イオン、硫黄イオン、テルルイオン、チオシアン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、2,4-ペンタンジオナトイオン又はケイフッ素イオン等が挙げられる。バンドギャップを調整するためには、Xは1種類のアニオンであってもよいし、2種類以上のアニオンの組み合わせであってもよい。一実施形態において、Xとしてはハロゲン化物イオン、又はハロゲン化物イオンとその他のアニオンとの組み合わせが挙げられる。ハロゲン化物イオンXの例としては、塩化物イオン、臭化物イオン又はヨウ化物イオン等が挙げられる。半導体のバンドギャップを広げすぎない観点から、ヨウ化物イオンもしくは臭化物イオンを主に用いることが好ましいが、ヨウ化物イオンと臭化物イオンとを適当な比率で組み合わせてもよい。
【0055】
ペロブスカイト半導体化合物の好ましい例としては、有機-無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられ、特にハライド系有機-無機ペロブスカイト半導体化合物が挙げられる。ペロブスカイト半導体化合物の具体例としては、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3PbI(3-x)Clx、CH3NH3PbI(3-x)Brx、CH3NH3PbBr(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI3、CH3NH3Pb(1-y)SnyBr3、CH3NH3Pb(1-y)SnyCl3、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Brx、及びCH3NH3Pb(1-y)SnyBr(3-x)Clx、並びに、上記の化合物においてCH3NH3の代わりにCFH2NH3、CF2HNH3、又はCF3NH3を用いたもの、等が挙げられる。なお、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
【0056】
活性層103は、2種類以上のペロブスカイト半導体化合物を含有していてもよい。例えば、A、M及びXのうちの少なくとも1つが異なる2種類以上のペロブスカイト半導体化合物が活性層103に含まれていてもよい。また活性層103は、異なる材料を含み又は異なる成分を有する複数の層で形成される積層構造を有していてもよい。
【0057】
活性層103に含まれるペロブスカイト半導体化合物の量は、良好な半導体特性が得られるように、好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上限に特に制限はない。また、活性層103には、ペロブスカイト半導体化合物に加えて添加剤が含まれていてもよい。添加剤の例としては、ハロゲン化物、酸化物、又は硫化物、硫酸塩、硝酸塩若しくはアンモニウム塩等の無機塩のような、無機化合物、又は有機化合物が挙げられる。
【0058】
活性層103の厚さに特段の制限はない。より多くの光を吸収できる点で、活性層103の厚さは、一実施形態において10nm以上、別の実施形態において50nm以上、さらに別の実施形態において100nm以上、さらに別の実施形態において120nm以上である。一方で、直列抵抗が下がる点、又は電荷の取出し効率を高める点で、活性層103の厚さは、一実施形態において1500nm以下、別の実施形態において1200nm以下、さらに別の実施形態において800nm以下である。
【0059】
活性層103の形成方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができる。具体例としては、塗布法及び蒸着法(又は共蒸着法)が挙げられる。簡易に活性層103を形成できる点で、塗布法を用いることができる。例えば、ペロブスカイト半導体化合物又はその前駆体を含有する塗布液を塗布し、必要に応じて加熱乾燥することにより活性層103を形成する方法が挙げられる。また、このような塗布液を塗布した後で、ペロブスカイト半導体化合物の溶解性が低い溶媒をさらに塗布することにより、ペロブスカイト半導体化合物を析出させることもできる。
【0060】
ペロブスカイト半導体化合物の前駆体とは、塗布液を塗布した後にペロブスカイト半導体化合物へと変換可能な材料のことを指す。具体的な例として、加熱することによりペロブスカイト半導体化合物へと変換可能なペロブスカイト半導体化合物前駆体を用いることができる。例えば、一般式AXで表される化合物と、一般式MX2で表される化合物と、溶媒と、を混合して加熱攪拌することにより、塗布液を作製することができる。この塗布液を塗布して加熱乾燥を行うことにより、一般式AMX3で表されるペロブスカイト半導体化合物を含有する活性層103を作製することができる。溶媒としては、ペロブスカイト半導体化合物及び添加剤が溶解するのであれば特に限定されず、例えばN,N-ジメチルホルムアミドのような有機溶媒が挙げられる。
【0061】
塗布液の塗布方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、スピンコート法、インクジェット法、ドクターブレード法、ドロップキャスティング法、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法又はカーテンコート法等が挙げられる。
【0062】
活性層のイオン化ポテンシャルの範囲は特段限定されないが、好ましくは-5.5eV以上-4.0eV以下であり、より好ましくは-5.2eV以上-4.6eV以下であり、特に好ましくは-5.0eV以上-4.4eV以下である。
また、活性層のバンドギャップは、好ましくは2.6eV以上1.2eV以下であり、より好ましくは2.4eV以上1.4eV以下であり、特に好ましくは2.2eV以上1.6eV以下である。
活性層のイオン化ポテンシャル及びバンドギャップを上記範囲とすることによって、屋内や室内において広範に用いられる可視光光源である蛍光灯やLED灯に対する、発電効率を向上させることができるため、好ましい。
特に、活性層のバンドギャップが上記範囲だと、屋内光源を受けることによって発生するエネルギーが、半導体中に生成する励起子を正負電荷に分離するために十分なものとなり、かつ過剰とならず、発電効率を良好なものとすることができる。
【0063】
イオン化ポテンシャルは、サンプルに対して光を照射し、照射エネルギーが光電子をはじき出すのに必要な最低エネルギー(eV)を計測することで、算出することができる。測定機器は任意のものを用いることができるが、例えば、理研計器(株)のAC-2、AC-3等を用いることができる。
また、バンドギャップは、半導体化合物の吸収端波長と吸光度とから算出することができる。具体的には、透明ガラス基板等の適当な試料上に半導体化合物薄膜を成膜し、その透過スペクトルを測定し、横軸波長をeVに、縦軸透過率を√(ahν)に変換し、この吸収の立ち上がりを直線としてフィッティングし、ベースラインと交わるeV値をバンドギャップとして算出することができる。透過スペクトルは、例えば、日立ハイテク製U-4100等の分光光度計を使用して測定することができる。
【0064】
活性層のイオン化ポテンシャルを上記所望の範囲とするための方法としては、例えば、前記のペロブスカイト半導体化合物におけるカチオン成分を適宜変更することがあげられる。
また、活性層のバンドギャップを上記所望の範囲とするための方法としては、例えば、前記ペロブスカイト半導体化合物におけるハロゲン元素の構成比率を適宜変更することがあげられる。
【0065】
[1-4.基材]
光電変換素子100は、通常は支持体となる基材106を有する。もっとも、本実施形態に係る光電変換素子は基材106を有さなくてもよい。基材106の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されず、例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の材料を使用することができる。
【0066】
<2.光電変換素子の製造方法>
上述の方法に従って、光電変換素子100を構成する各層を形成することにより、光電変換素子100を作製することができる。光電変換素子100を構成する各層の形成方法に特段の制限はなく、シートツゥーシート(万葉)方式、又はロールツゥーロール方式で形成することができる。
【0067】
なお、ロールツゥーロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロールツゥーロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、ロールツゥーロール方式はシートツゥーシート方式に比べて量産化に適している。一方、ロールツゥーロール方式で各層を成膜しようとすると、その構造上、成膜面とロールとが接触することにより膜に傷がついたり、部分的に剥がれてしまったりする場合がある。
【0068】
ロールツゥーロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロールツゥーロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、外径の上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下である。一方、下限は好ましくは10cm以上、さらに好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。ロール芯の外径の上限は、好ましくは4m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは0.5m以下である。一方、下限は好ましくは1cm以上、さらに好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは各工程で成膜される層が曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅の下限は、好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上である。一方、上限は、好ましくは5m以下、さらに好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であることはロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であることは光電変換素子100の大きさの自由度が高くなるため好ましい。
【0069】
また、上部電極105を積層した後に、光電変換素子100を50℃以上または80℃以上、一方、300℃以下、280℃以下、または250℃以下の温度範囲において、加熱することができる(この工程をアニーリング処理工程と称する場合がある)。アニーリング処理工程を50℃以上の温度で行うことは、光電変換素子100の各層間の密着性、例えばバッファ層102と下部電極101、バッファ層102と活性層103等の層間の密着性が向上する効果が得られる。各層間の密着性が向上することにより、光電変換素子の熱安定性や耐久性等が向上しうる。アニーリング処理工程の温度を300℃以下にすることは、光電変換素子100に含まれる有機化合物が熱分解する可能性が低くなる。アニーリング処理工程においては、上記の温度範囲内において異なる温度を用いた段階的な加熱を行ってもよい。
【0070】
加熱時間としては、熱分解を抑えながら密着性を向上させるために、一実施形態において1分以上、別の実施形態において3分以上、一方、一実施形態において180分以下、別の実施形態において60分以下である。アニーリング処理工程は、太陽電池性能のパラメータである開放電圧、短絡電流及びフィルファクターが一定の値になったところで終了させることができる。また、アニーリング処理工程は、構成材料の熱酸化を防ぐ上でも、常圧下、かつ不活性ガス雰囲気中で実施することができる。加熱方法としては、ホットプレート等の熱源に光電変換素子を載せてもよいし、オーブン等の加熱雰囲気中に光電変換素子を入れてもよい。また、加熱はバッチ式で行っても連続方式で行ってもよい。
【0071】
<3.光電変換特性>
光電変換素子100の光電変換特性は次のようにして求めることができる。光電変換素子100に適当なスペクトルの光をある照射強度で照射して、電流-電圧特性を測定する。得られた電流-電圧曲線から、光電変換効率(PCE)、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクター(FF)、直列抵抗、シャント抵抗といった光電変換特性を求めることができる。一例として、光電変換素子100に色温度5000Kの白
色LED光を適当な照射強度(照度)で照射することで、各照度における電流-電圧特性を測定することができる。
【0072】
光電変換素子は低照度領域(10~5000ルクス)における発電効率に優れ、特に白色LED光等の光源を用いた場合において、光電変換効率を20%以上とすることができる。また、200ルクスにおける光電変換効率を25%以上とすることができる。この効率の上限に特段の制限はなく、高ければ高いほどよい。
なお、この光電変換効率(PCE)は、所定の照射光により測定される、光電変換素子の電流-電圧曲線の最適動作点における出力(最大出力)をこの照射光が有する総エネルギー量(例えば、強度AM1.5Gの太陽光であれば100mW/cm2)で除した値(%)である。
【0073】
<4.発電デバイス>
一実施形態において、光電変換素子100は、発電デバイス、中でも室内等の低照度環境用太陽電池として好適に使用される。
図2は本発明の一実施形態に係る太陽電池の構成を模式的に表す断面図であり、
図2には本発明の一実施形態に係る太陽電池である太陽電池が示されている。
図2に表すように、本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、耐候性保護フィルム1と、紫外線カットフィルム2と、ガスバリアフィルム3と、ゲッター材フィルム4と、封止材5と、太陽電池素子6と、封止材7と、ゲッター材フィルム8と、ガスバリアフィルム9と、バックシート10と、をこの順に備える。本実施形態に係る薄膜太陽電池14は、太陽電池素子6として、上述した光電変換素子を有している。そして、保護フィルム1が形成された側(
図2中下方)から光が照射されて、太陽電池素子6が発電するようになっている。なお、薄膜太陽電池14は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。
なお、本明細書において、低照度環境とは、10~5000ルクスを意味し、典型的には200ルクス周辺である。
【0074】
光電変換素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/171517号、国際公開第2013/180230号又は特開2012-191194号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
【0075】
本実施形態に係る太陽電池、特に上述した薄膜太陽電池14の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、一実施形態に係る太陽電池は、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池として用いることができる。上記説明したとおり、低照度環境下で優れた変更効率を有することから、特にエネルギーハーベスティング用途に、好適に適用できる。
【0076】
本実施形態に係る太陽電池、特に上述した薄膜太陽電池14はそのまま用いてもよいし、太陽電池モジュールの構成要素として用いられてもよい。例えば、
図3に示すように、本実施形態に係る太陽電池、特に上述した太陽電池14を基材12上に備える太陽電池モジュール13を作製し、この太陽電池モジュール13を使用場所に設置して用いることができる。
【実施例0077】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例>
[電子輸送層用塗布液の調整]
酸化スズ(IV)15質量%水分散液(Alfa Aesar社製)に超純水を加えることにより、7.5質量%の酸化スズ水分散液を調製した。
【0078】
[活性層用塗布液の調整]
ヨウ化鉛(II)をバイアル瓶に量りとりグローブボックスに導入した。ヨウ化鉛(II)の濃度が1.3mol/Lとなるように溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミドを加え、その後、100℃で1時間加熱撹拌することで活性層用塗布液1を調製した。
次に、別のバイアル瓶にホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)、メチルアミン臭化水素酸塩(MABr)、及びメチルアミン塩化水素酸塩(MACl)を7.25:1:1.5の質量比となるよう量りとり、グローブボックスに導入した。そこへ溶媒としてイソプロピルアルコールを加えることにより、FABr、MABr、及びMAClの合計濃度が0.49mol/Lである活性層用塗布液2を調製した。
【0079】
[界面修飾用塗布液]
2-Phenylethylamine Hydroiodide(TCI社製)をバイアル瓶に量りとりグローブボックスに導入した。2-Phenylethylamine Hydroiodideの濃度が1mg/mLとなるように、溶媒としてイソプロプルアルコールを加えることにより界面修飾層用塗布液を調液した。
【0080】
[ポリトリアリールアミンの合成]
モノマーとして、公知文献(Organic Letters 2008,10,2765)に記載の方法を参考にして得られた2-フルオロ-4-ヘキシルアニリンと4,4’-ジブロモビフェニル(TCI社)を用い、反応条件として、特許文献(特開2019-175970)に記載の方法を参考にして下記の式で表されるポリトリアリールアミン(A-1)(Mw:44100 PDI:1.58)を合成した。
【0081】
【0082】
[正孔輸送層用塗布液の調製]
64mgのポリトリアリールアミン(A-1)と、2.6mgの4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(TPFB,TCI社製)とをバイアル瓶に量りとり、グローブボックスに導入した。そこへ溶媒として1.6mLのオルトジクロロベンゼンを加えた。次に、得られた混合液を150℃で1時間加熱撹拌することにより、正孔輸送層用塗布液を調製した。
【0083】
[光電変換素子の作製]
パターニングされた酸化インジウムスズ(ITO)透明導電膜(下部電極)を備えるガラス基板(ジオマテック社製)に対して、超純水を用いた超音波洗浄、窒素ブローによる乾燥、及びUV-オゾン処理を行った。
【0084】
次に、上記のように調製した電子輸送層用塗布液を、室温で、上記の基板上に2000
rpmの速度でスピンコートすることにより、厚さ約35nmの電子輸送層を形成した。その後、基板をホットプレート上150℃で10分間加熱した。
【0085】
さらに、基板をグローブボックスに導入し、100℃に加熱した活性層用塗布液1を電子輸送層上に150μL滴下し、2000rpmの速度でスピンコートした。次に、基板をホットプレート上100℃で10分間加熱アニールすることにより、ヨウ化鉛層を形成した。次に、基板が室温に戻った後、ヨウ化鉛層上に活性層塗布液2(120μL)を2000rpmの速度でスピンコートし、150℃で20分間加熱することにより、有機無機ペロブスカイトの活性層(厚さ650nm)を形成した。さらに、活性層上に界面修飾用塗布液(150μL)を2000rpmの速度でスピンコートし、100℃で10分間加熱することにより、界面修飾層を形成した。
【0086】
次に、基板が室温に戻った後、活性層上に、正孔輸送層塗布液(150μL)を1000rpmの速度でスピンコートし、さらにホットプレート上90℃で5分間加熱することで、正孔輸送層(100nm)を形成した。
【0087】
次に、正孔輸送層上に、抵抗加熱型真空蒸着法により厚さ約10nmのMoO3、次いで約30nmのIZO及び約100nmの銀を蒸着させ、上部電極を形成した。
以上のようにして、光電変換素子を作製した。
【0088】
<比較例>
正孔輸送層塗布液として、ポリトリアリールアミン化合物Aを用いる代わりに、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](下記の式で表されるポリトリールアミン(A-2);シグマアルドリッチ社製;Mw:8300 PDI:1.7)を用いたこと以外は実施例と同様にして、光電変換素子を作製した。
【0089】
【0090】
耐久性試験実施のため、窒素雰囲気下、素子表面上にUV硬化樹脂を塗布し、ガラス板を貼り付けてからUV光を照射することで光電変換素子を窒素雰囲気にて封入した。
これらの光電変換素子における、白色LED光200ルクス照射条件下でのI-V測定結果(光電変換効率)を表1に示す。
【0091】
【0092】
<耐久性試験>
上記実施例、比較例の光電変換素子に対し、素子面における照度が5,000lxになるよう設定した白色LED光を開放回路にて連続照射し、200lxにおける光電変換素子のPCEを経時的に測定することにより耐久性を評価した。評価結果(白色LED光200lx照射条件におけるI-V測定結果)を
図4に示す。
【0093】
上記の表1及び
図4から、本願記載のポリトリールアミン系半導体化合物は、耐久性に優れた光電変換素子を供することが可能であることが明らかとなった。