(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022150505
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】端子付き電線、ワイヤハーネス及び端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20220929BHJP
H01R 4/72 20060101ALI20220929BHJP
H01R 4/62 20060101ALI20220929BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20220929BHJP
H01R 11/12 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H01R4/02 C
H01R4/72
H01R4/62 A
H01R43/02 B
H01R11/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053136
(22)【出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】小澤 正和
【テーマコード(参考)】
5E051
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA04
5E051LB03
5E085BB02
5E085BB12
5E085BB15
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD04
5E085FF01
5E085GG36
5E085JJ12
5E085JJ17
(57)【要約】
【課題】端子に接合された導体が端子を被覆するチューブを破損するのを防ぐ。
【解決手段】端子付き電線1Aは、複数の金属素線よりなる導体31を有する被覆電線3と、前記導体31が接合される端子2Aとを有し、前記導体31の先端から予め定められた範囲が前記端子に接合され、前記導体31の接合された部分の先端の厚みが前記導体31の接合された他の部分の厚み以下である。前記導体31の先端は、厚みが接合された他の部分の厚み以下であるため、跳ね上がりがなく、被覆するチューブを破損することがない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属素線よりなる導体を有する電線と、
前記導体が接合される端子とを有し、
前記導体の先端から予め定められた範囲が前記端子に接合され、
前記導体の接合された部分の先端の厚みが前記導体の接合された他の部分の厚み以下である
端子付き電線。
【請求項2】
前記導体と前記端子との接合部分が樹脂により被覆されている
請求項1に記載の端子付き電線。
【請求項3】
前記被覆は熱収縮チューブであり、当該熱収縮チューブの内部に接着剤を有する
請求項2に記載の端子付き電線。
【請求項4】
前記導体と前記端子は、溶接により接合されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項5】
前記導体の先端は、曲面となっている又は先端に向かうにつれて厚みが薄くなっている
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記導体は、銅又はアルミニウムを含み、
前記端子は、銅を含み、前記導体より高い融点であり、前記導体より硬い
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の端子付き電線。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の端子付き電線を含み、自動車に配索される
ワイヤハーネス。
【請求項8】
複数の金属素線よりなる導体を有する電線と、前記導体が接合された端子とを有する端子付き電線の製造方法であって、
前記導体の接合された部分の先端の厚みが前記導体の接合された他の部分の厚み以下となるように、前記導体の先端から予め定められた範囲を前記端子に接合する工程
を有する端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線、ワイヤハーネス及び端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端子に電線の芯線を溶接する発明として、例えば特許文献1に開示された接続構造がある。この接続構造においては、アルミ芯線が溶接される端子に線状の凸部からなるリブが設けられている。アルミ芯線を端子に溶接する際には、アルミ芯線を凸部に突き当てた状態で上方から超音波電極(ホーン)を下降させてアルミ芯線の上面を加圧し、この状態で超音波を付加してアルミ芯線を端子に溶接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された接続構造においては、アルミ芯線を溶接する際に、特許文献1の
図3に示されているように、先端部分を溶接しない構成としている。このようにアルミ芯線の先端を溶接しない場合、特許文献1の
図11(A)に記載されているように、アルミ芯線の先端が上方へ跳ね上がってしまう。アルミ芯線が接合された端子に対しては、絶縁及び防水のため、絶縁性及び防水性を有する熱収縮チューブが被せられるが、アルミ芯線の先端が上方へ跳ね上がった状態で端子を熱収縮チューブにより被覆すると、跳ね上がったアルミ芯線が熱収縮チューブを突き破る虞がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、端子に接合された導体が端子を被覆するチューブを破損するのを防ぐ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、複数の金属素線よりなる導体を有する電線と、前記導体が接合される端子とを有し、前記導体の先端から予め定められた範囲が前記端子に接合され、前記導体の接合された部分の先端の厚みが前記導体の接合された他の部分の厚み以下である。
【0007】
本発明の一態様に係る端子付き電線は、前記導体と前記端子との接合部分が樹脂により被覆されている構成であってもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る端子付き電線においては、前記被覆は熱収縮チューブであり、当該熱収縮チューブの内部に接着剤を有する構成であってもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る端子付き電線においては、前記導体と前記端子は、溶接により接合されている構成であってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る端子付き電線においては、前記導体の先端は、曲面となっている又は先端に向かうにつれて厚みが薄くなっている構成であってもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る端子付き電線においては、前記導体は、銅又はアルミニウムを含み、前記端子は、銅を含み、前記導体より高い融点であり、前記導体より硬い構成であってもよい。
【0012】
本発明の一態様に係るワイヤハーネスは、上記の構成のいずれかの端子付き電線を含み、自動車に配索される。
【0013】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法は、複数の金属素線よりなる導体を有する電線と、前記導体が接合された端子とを有する端子付き電線の製造方法であって、前記導体の接合された部分の先端の厚みが前記導体の接合された他の部分の厚み以下となるように、前記導体の先端から予め定められた範囲を前記端子に接合する工程を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、端子に接合された導体が端子を被覆するチューブを破損するのを防ぐことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係る端子付き電線の斜視図である。
【
図2】
図2は、端子に接合された導体の断面形状を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、熱収縮チューブで被覆された端子付き電線の斜視図である。
【
図4】
図4は、熱収縮チューブで被覆された端子付き電線の断面図である。
【
図5】
図5は、熱収縮チューブの外側にも止水層を有する端子付き電線の断面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る端子付き電線の斜視図である。
【
図7】
図7は、ホーンと導体断面の変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、ホーンと導体断面の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中では適宜XYZ座標軸を示し、これにより方向を説明する。XYZ座標軸で示される空間においてX成分が増加する方向を+X方向といい、X成分が減少する方向を-X方向という。同様に、Y、Z成分についても、+Y方向、-Y方向、+Z方向、-Z方向と定義する。なお、Z軸方向は、鉛直方向であって、+Z方向は鉛直上向きであり、-Z方向は鉛直下向きでもある。
【0017】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る端子付き電線1Aの斜視図である。端子付き電線1Aは、端子2Aと被覆電線3とから構成されている。
【0018】
被覆電線3は、導体31と、導体31を被覆する被覆部32からなる。導体31は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金製である複数の素線301が撚り合わせられた撚り線である。なお、導体31は、複数の素線301を撚り合わせたものではなく、複数の素線301を束ねたものであってもよい。導体31の公称断面積は、2mm2以上、200mm2以下であるのが好ましく、2mm2以上、20mm2以下であれば取り扱いが容易であり、5mm2以上、17mm2以下であるのがより好ましい。
【0019】
被覆部32は、例えば、絶縁性を有するポリ塩化ビニル(PVC)や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、この技術の分野において通常用いられるものを選択することができる。被覆部32は、導体31の外周を被覆している。被覆電線3の先端は、被覆部32が除去されて導体31が露出しており、露出している導体31が端子2Aに接合される。
【0020】
端子2Aは、導体31に電気的及び機械的に接合される端子である。端子2Aは、銅又は銅合金からなる板材をプレス加工することにより形成される。端子2Aを形成する銅合金としては、例えば、黄銅、りん青銅、コルソン系銅合金等が挙げられるが、導体31より高い融点であることが好ましい。また、端子2Aを形成する銅合金は、導体31を形成する材料より縦弾性係数が大きい材料、即ち、導体31を形成する材料より硬い材料であるのが好ましく、例えば縦弾性係数が118GPa以上であるのが好ましい。端子2Aは、-Y方向側から+Y方向側に向かって締結部21、接合部22及び圧着部23を有している。なお、端子2Aは、表面に錫メッキ処理が施された構成であってもよい。端子2Aに錫メッキ処理を施す場合、締結部21にのみ錫メッキ処理を施し、接合部22と圧着部23には錫メッキ処理を施さない構成としてもよい。
【0021】
圧着部23は、圧着片231Aと圧着片231Bを有する。圧着片231A、231Bは、圧着工具によりかしめられて被覆電線3に圧着される。
【0022】
接合部22は、板状の底部221と、底部221の-X方向側の端部に連なりYZ平面に沿った側壁部222Aと、底部221の+X方向側の端部に連なりYZ平面に沿った側壁部222Bを有する。底部221の+Z方向側の表面は、締結部21の+Z方向側の表面に連なり、導体31の先端を位置合わせするための刻印223が形成されている。導体31は、側壁部222Aと側壁部222Bの間に収められて底部221に接合され、底部221に接合された接合領域である接合領域310を形成する。側壁部222A、222BのZ軸方向の高さは、導体31の公称断面積に応じて設定される。
【0023】
締結部21は、端子付き電線1Aを他の端子付き電線または電源等の端子に接続するための部分である。締結部21は、+Y方向側から-Y方向側に向かって第1平坦部202、傾斜部203及び第2平坦部204を有する。
【0024】
第1平坦部202は、板状であり、+Z方向側の表面が底部221の+Z方向側の表面に段差なく連なっている。傾斜部203は、第1平坦部202に連なり、+Y方向側から-Y方向側に向かって-Z方向側に傾斜している。第2平坦部204は、傾斜部203に連なり、板状で-Y方向側の端部が+Z方向側から見て半円形状に形成されている。また、第2平坦部204においては、Z軸方向に貫通した穴211が-Y方向側の端部に形成されている。穴211には、端子2Aを接続相手に対して電気的及び機械的に接続するための端子ねじが挿入される。
【0025】
傾斜部203の高さ、即ち、第1平坦部202の-Z方向側の面と第2平坦部204の-Z方向側の面との段差は、6mm以下であるのが好ましい。段差を6mm以下とすることにより、端子2Aのサイズが大きくなることなく、端子2Aの形成に要する材料のコストを抑え、少ないスペースにも端子2Aを配置することができる。なお、第1平坦部202を備えず傾斜部203が底部221に連なる構成であってもよい。また、傾斜部203を備えず、第2平坦部204が傾斜して第1平坦部202又は底部221に連なる構成であってもよい。
【0026】
端子2Aは、予め所定の形状に切断されてXY平面に沿って展開された板材を例えばプレス加工することにより形成される。このプレス加工により板材が曲げられてYZ平面に沿うように側壁部222A、222Bが形成される。
【0027】
導体31を端子2Aに接合する際には、導体31の先端が刻印223の位置に位置し、被覆電線3において導体31が露出していない部分が圧着片231A、231Bとの間に位置するように、被覆電線3を端子2A上に配置する。
【0028】
次に、底部221の+Z方向側で側壁部222Aと側壁部222Bとの間に位置した導体31を、例えば超音波接合により底部221に接合する。
図2(a)は、本実施形態で超音波接合に用いられるホーンH1の形状と、このホーンH1により接合部22に接合された導体31の断面形状を模式的に示した図であり、
図2(b)は、従来の超音波接合に用いられるホーンH2の形状と、このホーンH2により接合部22に接合された導体31の断面形状を模式的に示した図である。
【0029】
導体31に対向する面がX軸方向に見て平坦であるホーンH2を導体31の先端から+Y方向側に離れた位置に接触させ、-Z方向に加圧して超音波接合を行うと、導体31の先端部分が接合されず、
図2(b)に示すように、導体31の先端部分が跳ね上がってしまう。
【0030】
一方、X軸方向に見て導体31に対向する面の-Y方向側の端部が-Z方向側に傾斜しているホーンH1を、-Z方向に加圧しつつ導体31の先端より-Y方向側にも変位するように振動させると、
図2(a)に示すように、導体31の先端部が-Z方向側に傾斜し、導体31の先端部のZ軸方向の厚みが、他の部分の厚み以下となり、導体31の先端が+Z方向に跳ね上がるのを防ぐことができる。
【0031】
なお、導体31が接合部22に接合されると導体31が+Y方向へ伸びるため、接合部22より+Y方向側にある導体31及び被覆部32に対して+Y方向にずらす力が作用する。しかしながら、この導体31を接合部22に接合した時点では、圧着片231A、231Bが被覆電線3に圧着されていないため、被覆電線3において接合部22より+Y方向側にある部分は、ずらす力に応じて+Y方向側へ移動し、ずらす力を逃がすことが可能となっている。このため、導体31を接合部22に接合する前に圧着片231A、231Bを被覆電線3に圧着する構成と比較すると、接合された部分より+Y方向側で導体31及び被覆部32に負荷がかかるのを抑え、被覆電線3が破損するのを防ぐことができる。
【0032】
導体31を接合部22に接触させた後、圧着片231Aと圧着片231Bをかしめ、圧着片231A、231Bを被覆電線3に圧着する。第1平坦部202、圧着部23及び導体31が接合された接合部22には、絶縁及び防水のため、熱収縮チューブ4が被せられる。
【0033】
図3は、圧着部23から第1平坦部202まで熱収縮チューブ4で被覆された端子付き電線1Aの斜視図であり、
図4は、熱収縮チューブ4で被覆された端子付き電線1AのYZ平面に沿った断面図である。
【0034】
熱収縮チューブ4は、熱が加えられることにより収縮する管状のチューブである。熱収縮チューブ4は、例えば架橋ポリオレフィンを含むポリマー材料がからなり、絶縁、防水、防食、耐熱などの性能を有する。熱収縮チューブ4の収縮率は、1%以上、30%以下であるのが好ましい。熱収縮チューブ4は、少なくとも圧着部23、接合部22、第1平坦部202及びこれらより+Z方向側にある被覆電線3を被覆する。
【0035】
熱収縮チューブ4の内面より内側には、水の侵入を防ぐ止水層5が形成されている。止水層5は、例えば止水剤の一例であるホットメルト接着剤を加熱して溶融させた後、冷却して固化させることにより形成される。止水剤は、素線301の隙間に浸透する構成であってもよい。熱収縮チューブ4の収縮率が1%以上、30%以下の場合には、熱収縮チューブ4を加熱して収縮させるときに止水剤を介して熱収縮チューブ4を接合部22、導体31及び被覆部32に密着させて止水層5を形成することができ、熱収縮チューブ4及び止水層5により、端子2A及び被覆電線3を保護することができる。また、熱収縮チューブ4の収縮率が1%以上、30%以下の場合、熱収縮チューブ4が収縮したときに止水剤を熱収縮チューブ4の外側に過剰に押し出すのを抑えることができる。
【0036】
なお、第1平坦部202の-Z方向側の面から傾斜部203の-Z方向側の面側に形成された止水層5の-Z方向側の端までのZ軸方向の距離は、5mm以下であるのが好ましい。また、熱収縮チューブ4の-Y方向側の端が第1平坦部202の+Y方向側の端までを覆う構成の場合、
図5に示すように、第1平坦部202の-Z方向側の面上において止水剤が液滴状に固化して止水層5が形成された構成であってもよい。
【0037】
また、熱収縮チューブ4は、例えば予め熱収縮チューブ4と同心円状にして熱収縮チューブ4の内周面に止水剤を層状に有する構成としてもよい。この場合、止水剤の層を構成する止水剤の量が、収縮後の熱収縮チューブ4の内周面に層状に収容された状態の厚さに換算して0.5mm以上、1.5mm以下であることが好ましい。ここで、止水剤の量は、熱収縮チューブ4を収縮させた後に、熱収縮チューブ4の内側に留まっている止水剤と、熱収縮チューブ4の外側に押し出されて、熱収縮チューブ4の外で止水層5を形成している止水剤とを合わせて、熱収縮チューブ4の内周面に層状に配置した状態での厚さに換算したものである。止水剤の量を、この換算値で、0.5mm以上、より好ましくは、0.7mm以上、さらに好ましくは1.0mm以上、一層好ましくは1.2mm以上としておけば、被覆電線3に対して十分な止水性能を示す止水層5を形成しやすくなる。一方、止水剤の量を、この換算値で、1.5mm以下としておけば、熱収縮時に熱収縮チューブ4から押し出されて熱収縮チューブ4の外で止水層5となる止水剤の量を少なく抑えることができる。
【0038】
また、接合部22から傾斜部203までの距離は、10mm以上であるのが好ましい。接合部22から傾斜部203までの距離が確保されることで、導体31の-Y方向側の先端部を、被覆層および止水剤の層で十分に被覆し、電線に対して高い止水性能を示すことができる。なお、接合部22から傾斜部203までの距離は、被覆層及び止水剤によっては10mm未満であってもよい。
【0039】
また、熱収縮チューブ4で被覆される端子2Aの板厚は、導体31を端子2Bに圧着する場合には、0.5mm以上、3.0mm以下であるのが好ましく、導体31を接合部22に超音波接合する場合には、0.5mm以上、10mm以下が好ましい。この構成によれば、段差Dがある場合に、熱収縮チューブ4から押し出されて熱収縮チューブ4の外側に形成された止水層5によって端子2Aの座面が浮くのを抑制することができ、導体31の先端部を十分な量の止水剤で被覆させ、止水性能を高めやすくなる。
【0040】
また、熱収縮チューブ4を有する端子付き電線1Aにおいて導体31の公称断面積は、2mm2以上、200mm2以下であれば、熱収縮チューブ4から押し出されて熱収縮チューブ4の外側に形成された止水層5によって端子2Aの座面が浮くのを抑制することができ、導体31の先端部を十分な量の止水剤で被覆させ、止水性能を高めやすくなる。
【0041】
以上説明したように本実施形態によれば、端子2Aに接合された導体31の先端が跳ね上がらないため、接合された導体31が熱収縮チューブ4を破損するのを防ぐことができる。
【0042】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0043】
上述した実施形態においては、底部221と導体31との接合は、超音波接合に限定されるものではなく、例えば抵抗溶接による接合であってもよい。抵抗溶接を行う場合、導体31に接触させる電極の形状をホーンH1と同様に、導体31に対向する面の-Y方向側の端部が-Z方向側に傾斜している形状とすれば、導体31の先端部が-Z方向側に傾斜し、導体31の先端が+Z方向に跳ね上がるのを防ぐことができる。
【0044】
上述した実施形態においては、被覆電線3は、XZ平面に沿った断面が円形の電線であるが、被覆電線3は、XZ平面に沿った断面が矩形である偏平電線であってもよい。
【0045】
上述した実施形態においては、端子2Aは、一つの締結部21を有する構成であるが、複数の締結部21を有する構成であってもよい。一つの締結部21を有する構成の場合、少ないスペースにも端子2Aを配置することができ、コストを抑えることができる。複数の締結部21を有する場合、例えば締結部21を中心に端子2Aが回転しないようにすることができる。
【0046】
上述した実施形態においては、端子2Aは、締結部21がZ軸方向に段差を有する構成であるが、Z軸方向に平坦な構成であってもよい。
図6は、本発明の変形例に係る端子付き電線1Bの斜視図である。端子付き電線1Bは、端子2Bと被覆電線3とで構成される。端子2Bは、-Y方向側から+Y方向側に向かって締結部21B、接合部22及び圧着部23を有している。締結部21Bは、Z軸方向に段差がない点で締結部21と相違する。端子2Bの接合部22に位置する導体31に対してホーンH1で超音波接合を行うと、導体31の先端部が-Z方向側に傾斜し、導体31の先端が+Z方向に跳ね上がるのを防ぐことができる。なお、締結部21Bは、傾斜部203のように傾斜して接合部22に連なる構成であってもよい。
【0047】
超音波接合に用いられるホーンの形状は、
図2に示す形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。例えば、
図7(a)に示すホーンH3のように、-Z方向側の面の-Y方向側の端部が曲面となっている形状であってもよい。また、
図7(b)に示すホーンH4のように、+Y方向側から-Y方向側に向かうにつれて-Z方向側の面が-Z方向に傾斜している形状であってもよい。また、
図7(c)に示すホーンH5のように、-Z方向側の面の-Y方向側の端部に段差がある形状であってもよい。これらの形状のホーンで超音波接合を行うと、導体31の先端が+Z方向に跳ね上がるのを防ぐことができる。
【0048】
本発明においては、接合部22において導体31の先端が位置する部分が+Y方向側から-Y方向側に向かうにつれて-Z方向に傾斜している構成であってもよい。
図8は、接合部22が傾斜している構成の場合の接合部22のYZ平面に沿った断面図である。
図8に示す構成の場合、導体31の先端が傾斜している部分に沿って-Z方向に傾斜するため、導体31が跳ね上がるのを防ぐことができる。
【0049】
上述した端子付き電線1A、1B又は端子2Cが圧着された電線と、例えば他の端子付き電線とを複数束ねることによりワイヤハーネスを形成してもよい。このワイヤハーネスは、例えば自動車に配索される。
【符号の説明】
【0050】
1A、1B 端子付き電線
2A、2B 端子
3 被覆電線
4 熱収縮チューブ
5 止水層
21、21B 締結部
22 接合部
23 圧着部
31 導体
32 被覆部
202 第1平坦部
203 傾斜部
204 第2平坦部
211 穴
221 底部
222A、222B 側壁部
223 刻印
301 素線
310 接合領域