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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151074
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】セメント組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/02 20060101AFI20220929BHJP
   C04B 7/52 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C04B7/02
C04B7/52
C04B22/10
C04B22/14 B
C04B24/02
C04B24/12 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021053980
(22)【出願日】2021-03-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 謙介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
(72)【発明者】
【氏名】今津 大貴
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB06
4G112MB23
(57)【要約】
【課題】高い強度を有し、流動性に優れるセメント組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%である普通ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、石灰石と、アルカノールアミンを含む助剤とを含み、前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記アルカノールアミンの含有量が10~210mg/kgであり、前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、前記助剤、及び前記石灰石の合計量中の前記石灰石の含有量が3~10質量%であり、前記CAFの格子体積が0.4290nmを超え、ブレーン比表面積が2800~3500cm/gであるセメント組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%である普通ポルトランドセメントクリンカと、
石膏と、
石灰石と、
アルカノールアミンを含む助剤
とを含み、
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記アルカノールアミンの含有量が10~210mg/kgであり、
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、前記助剤、及び前記石灰石の合計量中の前記石灰石の含有量が3~10質量%であり、
前記CAFの格子体積が0.4290nmを超え、
ブレーン比表面積が2800~3500cm/gであるセメント組成物。
【請求項2】
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記助剤の含有量が80~350mg/kgである請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記助剤が脂肪族多価アルコールを含む請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記石膏の含有量がSO換算で0.7~2.8質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項5】
前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びNn-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1~4のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項6】
前記脂肪族多価アルコールが、グリセリン及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つである請求項3~5のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項7】
ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%であり、前記CAFの格子体積が0.4290nmを超える普通ポルトランドセメントクリンカと、
石膏と、
石灰石と、
アルカノールアミンを含む助剤
とを、
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記アルカノールアミンの配合量を10~210mg/kg、かつ
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、前記助剤、及び前記石灰石の合計量中の前記石灰石の配合量を3~10質量%として混合し、請求項1~6のいずれか1項に記載のセメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタル及びコンクリートの強度を向上するために、種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1では、7日強度や28日強度を共に増大させる効果を奏する土木建築構造物やコンクリート二次製品に使用されるモルタル又はコンクリート用の混和剤やセメント組成物を提供するために、トリアルカノールアミンとジエチレングリコールとを含有してなる混和剤であり、セメントと該混和剤とを含有してなるセメント組成物を開示している。
また、例えば、特許文献2では、建築物や土木構造物やコンクリート二次製品を製造するにあたり、フライアッシュの低初期強度という欠点を克服して、使用するセメントにフライアッシュを積極的に配合できるように改良されたセメント混和材及びセメント組成物を提供するために、フライアッシュ、トリアルカノールアミン及びフライアッシュ100重量部に対して0.05~0.5重量部のジエチレングリコールを含有してなるセメント混和材或いはセメントとジエチレングリコールとトリアルカノールアミンを含有するセメント混和材であり、更にセメント、フライアッシュ、トリアルカノールアミン及びジエチレングリコールを含有してなるセメント組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-203909号公報
【特許文献2】特開2000-281404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び2に記載のセメント組成物は、流動性について検討がなされていない。
本発明は、高い強度を有し、流動性に優れるセメント組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の<1>~<7>を提供する。
<1> ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%である普通ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、石灰石と、アルカノールアミンを含む助剤とを含み、前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記アルカノールアミンの含有量が10~210mg/kgであり、前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、前記助剤、及び前記石灰石の合計量中の前記石灰石の含有量が3~10質量%であり、前記CAFの格子体積が0.4290nmを超え、ブレーン比表面積が2800~3500cm/gであるセメント組成物。
【0006】
<2> 前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記助剤の含有量が80~350mg/kgである<1>に記載のセメント組成物。
<3> 前記助剤が脂肪族多価アルコールを含む<1>または<2>に記載のセメント組成物。
<4> 前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記石膏の含有量がSO換算で0.7~2.8質量%である<1>~<3>のいずれか1つに記載のセメント組成物。
<5> 前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びNn-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである<1>~<4>のいずれか1つに記載のセメント組成物。
<6> 前記脂肪族多価アルコールが、グリセリン及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つである<3>~<5>のいずれか1つに記載のセメント組成物。
【0007】
<7> ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%であり、前記CAFの格子体積が0.4290nmを超える普通ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、石灰石と、アルカノールアミンを含む助剤とを含み、前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記アルカノールアミンの配合量を10~210mg/kg、かつ前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、前記助剤、及び前記石灰石の合計量中の前記石灰石の配合量を3~10質量%として混合し、<1>~<6>のいずれか1つに記載のセメント組成物に記載のセメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い強度を有し、流動性に優れるセメント組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
【0010】
<セメント組成物>
本発明のセメント組成物は、ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%である普通ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、石灰石と、アルカノールアミンを含む助剤とを含み、普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、及び助剤の合計量中のアルカノールアミンの含有量が10~210mg/kgであり、普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、助剤、及び石灰石の合計量中の石灰石の含有量が3~10質量%であり、CAFの格子体積が0.4290nmを超え、ブレーン比表面積が2800~3500cm/gである。
【0011】
セメント組成物は、通常、調合された原料をロータリーキルンにて焼成し、得られたクリンカに石こう、石灰石を添加し、仕上げミルにて所望のブレーン比表面積となるまで粉砕することで得られる。
仕上げミルによるセメントの粉砕には、被粉砕物に対してジエチレングリコール等の分散剤を添加することで、粒子同士の凝集によって生じる粉砕効率の低下防止策がとられるのが一般的である。普通ポルトランドセメントの主要な物性である強度発現性のコントロールは、一般に原料調合とセメントの粉末度(ブレーン比表面積)の調整で実施される。セメント組成物のブレーン比表面積は仕上ミルによる粉砕工程で調整され、各材齢の強度レベルをコントロールする因子となることから、品質管理項目とされている。
【0012】
ブレーン比表面積を増大させると、モルタル及びコンクリートの特に初期強度が増大する一方で、セメントペースト混錬時の流動性が低下することによって作業効率が低下する。流動性を維持するために化学混和剤を増量すればコスト増加となり、水量を増加すれば硬化体の乾燥収縮が増大し、硬化体のひび割れ発生を助長し耐久性を損ねることになる。
【0013】
また、セメントをサイロで貯蔵する場合、ブレーン比表面積が高いほど空気中の水分、二酸化炭素等とセメント粒子との反応性が増大し、セメント粒子表面の水和活性が低下し、いわゆる風化が起きやすくなる。風化したセメントは、注水後の凝結異常、流動性低下、硬化体の強度低下等を招く。
また、風化によってセメント粒子表面に生成した水酸化カルシウムは二酸化炭素との反応によって炭酸カルシウムとなり、セメント粒子同士の凝集を助長する。そのため、サイロ内で塊状物が生じ、いわゆる固結の発生原因ともなる。
【0014】
このことから、セメント組成物のブレーン比表面積は所望の強度が得られる範囲で、できるだけ低減させることが好ましい。また、製造面の観点からも、セメント組成物のブレーン比表面積は低減させることが好ましい。既述のように、セメント組成物のブレーン比表面積は仕上ミルによる粉砕工程で調整され、ブレーン比表面積を低減することは、仕上げミル運転時の電力削減につながる。
【0015】
また、強度発現性のコントロールは、ブレーン比表面積の調整のほか、原料中の石灰石割合の調整によっても行うことができる。例えば、原料中の石灰石割合を増加させることによってセメント鉱物中のエーライト量が増大し、特に水和初期の強度発現性が増大する。
このように、クリンカ原料中の石灰石量を相対的に増やし、生成するセメント鉱物中のエーライト量を増加させて強度を増進することができるが、エーライト量が増加すると、セメント原料が難焼成性となるため、焼成にかかる燃料が増大する。石灰石の原料原単位の増加と主燃料となっている石炭の増大は、二酸化炭素の排出増大の側面もある。
【0016】
これに対し、本発明のセメント組成物は、セメント組成物のブレーン比表面積を低く抑え、クリンカ原料中の石灰石量を抑制しながら、強度を増進し、流動性に優れる。かかる理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
【0017】
本発明のセメント組成物に含まれる助剤のアルカノールアミンは、主要セメント鉱物であるエーライト、ビーライト、アルミネート、フェライトの4鉱物のうち、特にフェライト相を溶解し、これによってセメントの強度を増進することができる。具体的には、各種鉱物で合成されたセメント粒子表面に存在するフェライト相を溶解させることにより、セメント粒子の表面積が増大し、内部のセメント鉱物が水と接触することによって水和促進する。また、フェライトの溶解によって生成した水酸化鉄はクリンカ粒子表面を覆い、エーライト等のクリンカ鉱物から溶出したCaイオン等の拡散を阻害することによって水和を阻害するが、アルカノールアミンはその水酸化鉄のFeイオンを溶解させる効果があることからもエーライトの水和を促進する効果を発揮すると考えられる。
以下、本発明のセメント組成物について詳細に説明する。
【0018】
〔ブレーン比表面積〕
本発明のセメント組成物は、ブレーン比表面積が2800~3500cm/gである。
ブレーン比表面積が2800cm/g未満であると、アルカノールアミンによる水和促進効果は得られるものの、モルタル強さが低下する。ブレーン比表面積が3500cm/gを超えると、流動性が低下し、また、アルカノールアミンによるCAFの溶解が限定的となり、強度増進効果が得られない。
強度をより増進する観点から、セメント組成物のブレーン比表面積は、3000~3400cm/gであることが好ましく、3150~3350cm/gであることがより好ましい。
セメント組成物のブレーン比表面積は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて測定すればよい。
【0019】
〔クリンカ〕
本発明のセメント組成物に使用されるクリンカは、ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%である普通ポルトランドセメントクリンカである。
クリンカ中のCS(3CaO・SiO)とCS(2CaO・SiO)との合計量はほぼ88質量%で一定であり、CSが51~62質量%のとき、CSの含有量は16~27質量%である。また、クリンカ中のCA(3CaO・Al)とCAF(4CaO・Al・FeO)との合計量はほぼ18.5質量%で一定であり、CAFが7~10質量%のとき、CAの含有量は8.5~12.5質量%である。
【0020】
(CS、CS)
クリンカ中のCSの含有量が51質量%未満であると、モルタル強さに優れず、モルタル強さを大きくすることができても、流動性に優れない。また、アルカノールアミンの添加による強度増進効果も以下の理由から期待できない。
【0021】
クリンカ中のCSの含有量が51質量%未満であると、相対的に被粉砕性が劣るCSの含有量が多くなる。その結果、セメント組成物を一定のブレーン比表面積にするまでに要する粉砕時間が長くなり、主に被粉砕性がよいCS以外の鉱物(CS、CA、及びCAF)が過粉砕されることによってブレーン比表面積が増大する。また、アルカノールアミンの添加による強度増進メカニズムは、クリンカ中のCAFを選択的に溶解させることでCAFに近隣するCAFの水との接触機会が増大し水和が促進され強度増進することになるが、クリンカが過粉砕されると、もともと各鉱物が複合して存在しているクリンカ粒子が単独の鉱物として存在しやすくなるため、CAFの溶解がCAFの水和促進に繋がらなくなる。したがって、アルカノールアミンの添加による強度増進効果が得られなくなる
【0022】
クリンカ中のCSの含有量が62質量%を超えると、クリンカの製造において、セメント原料が難焼成性となり、未反応石灰(f.CaO)が増加し、燃料消費量が増大するため好ましくない。
強度と流動性を増進し、燃料消費量を抑制する観点から、クリンカ中のCSの含有量は、53~61質量%であることが好ましく、55~59質量%であることがより好ましい。
【0023】
(CAF、CA)
クリンカ中のCAFの含有量が7質量%未満であると、CAFの含有量が少なすぎるため、アルカノールアミンを添加してもCAFの溶解促進によるCSの反応促進は限定的であり、顕著な強度増進効果を発揮できない。また、クリンカの効率的な製造において、液相量(CA+CAF)を一定とする必要があるためにCAFの減少は相対的にCAが増加することを意味し、CA量が増加すると初期水和時にCAと石膏との反応によって針状結晶のエトリンガイトを多量に生成することによって流動性が悪化する。
【0024】
クリンカ中のCAFの含有量が10質量%を超えると、アルカノールアミンによってクリンカ粒子表面のCAFが溶解し、CSの水和を一時的に促進するが、CAF中のFeイオンの溶解によって生じた多量の水酸化鉄ゲル量がクリンカ粒子表面を厚く覆うことにより水和が遅延する。
強度と流動性を増進し、燃料消費量を抑制する観点から、クリンカ中のCAFの含有量は、7~9質量%であることが好ましく、8~9質量%であることがより好ましい。
【0025】
[CAFの格子体積]
AFの格子体積は、0.4290nmを超える。
AFの格子体積が0.4290nm以下であると、アルカノールアミンによるCAFの溶解性が低くなるため、CSの水和促進の効果が得られず、モルタル強さが低下する。
AFの格子体積は、0.4295nm以上であることが好ましく、0.4300nm以上であることがより好ましい。CAFの格子体積の上限は特に制限されないが、通常、0.4320nm以下である。
AFの格子体積は、粉末X線回折を利用したリートベルト解析方法を用いて測定したCAFの格子定数から、WPF(Whole Pattern Fitting)解析法により算出することができる。
【0026】
〔助剤〕
本発明のセメント組成物は、アルカノールアミンを含む助剤を含み、普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、及び助剤の合計量中のアルカノールアミンの含有量が10~210mg/kgである。
助剤とは、具体的には粉砕助剤を意味し、アルカノールアミンは、また、強度増進剤として作用する。助剤は、アルカノールアミン以外の成分を含んでいてもよく、例えば、脂肪族多価アルコールが挙げられる。
本発明のセメント組成物中のアルカノールアミンの含有量が10mg/kg未満であると、CAFの溶解によってエーライトの水和を促進させるためには濃度が低すぎることから強度増進効果が得られない。本発明のセメント組成物中のアルカノールアミンの含有量が210mg/kgを超えると、初期強度の増進効果は顕著であるが、28日材齢では、初期の水和活性が活発であったことに起因して水和組織が粗となり強度増進効果が得られなくなる。
【0027】
(アルカノールアミン)
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、Nn-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、Nn-ブチルジエタノールアミン、N-メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリス(2-ヒドロキシブチル)アミン等が例示できる。
アルカノールアミンは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0028】
中でも、アルカノールアミンは、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、エタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、及びNn-ブチルジエタノールアミン(BDEA)からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)及びN-メチルジエタノールアミン(MDEA)からなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)が更に好ましい。
【0029】
(脂肪族多価アルコール)
助剤は、脂肪族多価アルコールを含むことが好ましい。
脂肪族多価アルコールは、炭素数が3~20であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。
脂肪族多価アルコールは、水酸基数が2~8であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
脂肪族多価アルコールは、分子量が70~420であることが好ましく、70~210であることがより好ましい。
【0030】
脂肪族多価アルコールは、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン等が挙げられる。脂肪族多価アルコールは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
脂肪族多価アルコールは、グリセリン及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、ジエチレングリコールを含むことがより好ましい。
【0031】
また、普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、及び助剤の合計量中の助剤の含有量は80~350mg/kgであることが好ましい。
以下、「助剤合計」とは、「普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、及び助剤の合計量中の助剤の含有量」を意味する。
助剤合計が80mg/kg以上であることで、セメント組成物の被粉砕性に優れる。すなわち、クリンカと石膏と石灰石を加えてボールミルにて粉砕する場合に、被粉砕物が媒体に付着しにくく、粉砕の阻害が抑制される。助剤合計が350mg/kg以下であることで、噴流性に優れる。すなわち、混錬物の空気連行性が抑えられ、強度低下を防止し、粉体の流動性が必要以上に大きくなりにくいため、ベルトコンベアでの輸送時に滑りにくく、上り勾配を搬送し易く、また、下り勾配では自重で滑り落ちることが抑制され、効率的にセメント組成物を輸送することができる。
助剤合計は、被粉砕性及び噴流性をより向上する観点から、100~350mg/kgであることがより好ましく、150~300mg/kgであることが更に好ましい。
【0032】
〔石灰石〕
本発明のセメント組成物は、石灰石を含む。
石灰石は、普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、助剤、及び石灰石の合計量中の含有量が3~10質量%である。
以下、「石灰石含有量」は「普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、助剤、及び石灰石の合計量中の石灰石の含有量」を意味する。
石灰石含有量が3質量%未満であると、強度増進効果が得られない。
通常、初期水和時に生成するエトリンガイトは、セメントの水和が進行するとモノサルフェートへ転化する反応を起こすが、石灰石とアルカノールアミンが共存すると、モノカーボネートまたはヘミハイドレートへの添加を促進することによって強度増進に寄与する。しかし、石灰石含有量が3質量%未満であると、その反応が顕著に起きないため、強度増進に繋がらない。
石灰石含有量が10質量%を超えると、セメント中の単位クリンカ量が減少することによりモルタル強さが低下する。
石灰石含有量は、強度をより増進する観点から、3~9質量%であることが好ましく、4~8質量%であることがより好ましい。
【0033】
〔石膏〕
本発明のセメント組成物は、石膏を含む。
石膏は、普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、及びアルカノールアミンの合計量中の含有量がSO換算で0.7~2.8質量%であることが好ましい。
以下、「石膏含有量」とは「普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、及びアルカノールアミンの合計量中の石膏の含有量」を意味する。
石膏含有量が上記範囲であることにより、セメント組成物の凝結時間および注水後の流動性とその経時変化を適切に保ち,硬化後の性状として強度発現性と乾燥収縮を適切にすることができる。
石膏含有量は、上記の観点から、SO換算で、0.8~2.5質量%であることがより好ましく、0.9~2.0質量%であることが更に好ましい。
石膏含有量は、JIS R 5202:2010「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定することができる。セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合は、石膏の配合量と石膏に含まれるSOの割合から求めることができる。
石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏のいずれも使用することができる。
【0034】
〔その他の成分〕
本発明のセメント組成物には、流動性、水和速度、強度発現性等の調節用として、フライアッシュ、高炉スラグあるいはシリカフュームなどをさらに添加することができる。
【0035】
<セメント組成物の製造方法>
本発明のセメント組成物の製造方法は、ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%であり、CAFの格子体積が0.4290nmを超える普通ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、石灰石と、アルカノールアミンを含む助剤とを、普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、及び助剤の合計量中のアルカノールアミンの配合量を10~210mg/kg、かつ普通ポルトランドセメントクリンカ、石膏、助剤、及び石灰石の合計量中の石灰石の配合量を3~10質量%として混合し、本発明のセメント組成物を製造する方法である。
アルカノールアミンの配合量は、本発明のセメント組成物におけるアルカノールアミンの含有量と同様であり、好ましい範囲も同様である。また、石灰石の配合量は、既述の石灰石含有量と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0036】
クリンカに助剤、石膏及び石灰石を添加する順序、タイミング等は特に制限されない。例えば、クリンカに石膏及び石灰石を添加し混合してから、更に助剤を添加して混合を行ってもよいし、クリンカに助剤を添加してから石膏及び石灰石を添加してもよい。
【0037】
本発明のセメント組成物の製造方法における各成分の混合の手段としては特に限定されない。例えば、ミキサー、ボールミル、ロッシェミル、エアーブレンディングサイロ等が挙げられる。混合時間は、通常のセメント組成物の製造において十分に混合が行われたと判断される範囲で設定することができる。
【0038】
本製造方法において、セメント組成物のブレーン比表面積が2800~3500cm/gとなるように粉砕が行われることが好ましい。
【0039】
本発明のセメント組成物の製造方法では、普通ポルトランドセメントクリンカと、石膏と、石灰石と、アルカノールアミンを含む助剤との添加に加え、高炉スラグ、シリカ質混合材及びフライアッシュをさらに添加することができる。
本発明では、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」に規定される高炉スラグ及びシリカ質混合材を使用することができる。フライアッシュに関しては、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」に規定されるフライアッシュI種及びフライアッシュII種の他、フライアッシュIII種及びフライアッシュIV種も使用することができる。
【実施例0040】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
<セメント組成物の製造>
セメント組成物の製造に下記の材料を使用した。
1.クリンカ
A~Gの7種の普通ポルトランドセメントクリンカ〔住友大阪セメント(株)製〕を用いた。化学組成及び鉱物組成を表1に示す。クリンカの化学組成は、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」に準じて蛍光X線測定装置(PRIMUS IV、株式会社リガク製)を用いて、ガラスビード法にて成分分析を行った。鉱物組成は、得られたCaO、SiO、Al及びFeの質量割合から、下記のボーグ式を用いて算出した。なお、表1中、HMは水硬率、SMは珪酸率、IMは鉄率を意味する。
S=(4.07×CaO)-(7.60×SiO)-(6.72×Al)-(1.43×Fe
S=(2.87×SiO)-(0.754×CS)
A=(2.65×Al)-(1.69×Fe
AF=3.04×Fe
【0042】
表1中の「CAF格子体積」は、粉末X線回折を利用したリートベルト解析方法を用いて測定したCAFの格子定数から、WPF解析法により計算した。
(測定条件)
・粉末X線回折装置:パナリティカル社製、X7Pert PRO
・リートベルト解析ソフト: パナリティカル社製、High Score Plus
・X線管球:Cu(管電圧;45kV、管電流;40mA )
・スリット: divergence slit-可変(照射幅- 12mm、Antiscatter slit- 2°)
・測定範囲:10~70°(ステップ幅:0.0167°)
・スキャン速度:0.1013°/s
【0043】
【表1】
【0044】
2.助剤
(1)アルカノールアミン
・DEIPA:ジエタノールイソプロパノールアミン〔東京化成工業(株)製〕
・TIPA:トリイソプロパノールアミン〔東京化成工業(株)製〕
・EDIPA:エタノールジイソプロパノールアミン
〔シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製〕
・MDEA:N-メチルジエタノールアミン〔東京化成工業(株)製〕
・BDEA:Nn-ブチルジエタノールアミン〔東京化成工業(株)製〕
(2)脂肪族多価アルコール
・DEG:ジエチレングリコール〔関東化学(株)製〕
【0045】
3.石灰石
関東化学(株)製、炭酸カルシウム 特級、CaCO:99.5%
4.石膏
半水石膏を用いた。具体的には、富士フィルム和光純薬(株)製、硫酸カルシウム二水和物 1級、CaSO:98.0+%、乾燥機内で120℃、12時間保持したものを使用した。石膏中のSO換算量は、JIS R 5202:2015「セメントの化学分析法」に従って測定した。
【0046】
〔実施例1〕
クリンカ種類Aのクリンカ92.8質量%(*)に対し、半水石膏2.7質量%(半水石膏SO換算で1.5質量%)及び石灰石4.5質量%を添加して、ミキサーで混合した。次いで、表2に示すように、助剤として、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)及びジエチレングリコール(DEG)を、クリンカと、石膏と、助剤との合計量に対して、それぞれ、10mg/kg及び190mg/kg配合した。次いで、ブレーン比表面積値が3200±50cm/gの範囲となるようにボールミルで混合粉砕し、実施例1のセメント組成物を得た。
なお、(*)に示す量に関し、クリンカと助剤との合計が92.8質量%であるが、助剤の量は、クリンカと助剤との合計の中の割合で考えると、ほとんどクリンカの量に影響を与えないほど、微量なものであり、クリンカ量は92.8質量%といえる。実施例1以外の実施例、及び比較例においても同様である。
【0047】
石膏の配合量は、石膏のSO換算量がクリンカに作用するため、いずれの実施例、比較例とも、半水石膏のSO換算量/(クリンカ+助剤+半水石膏合量)が1.5%となるように半水石膏を配合した。
【0048】
〔実施例2~19、23~26、比較例1~4、7~12〕
クリンカとして、表2~3に示す種類のクリンカを用い、石灰石を表2~3に示す量配合し、助剤として表2~3の「助剤」欄に示す種類及び量の助剤〔アルカノールアミン及び、必要に応じて、脂肪族多価アルコール(DEG)〕を配合し、ブレーン比表面積値が表2~3に示す値±50cm/gの範囲となるようにボールミルで混合粉砕した他は、実施例1と同様にしてセメント組成物を得た。
なお、比較例1と比較例2においては、アルカノールアミンを配合しなかった。また、「DEG」欄の数値が0である比較例2等においては、ジエチレングリコールを配合しなかった。
【0049】
〔比較例5〕
クリンカ種類Aのクリンカ96.2質量%に対し、半水石膏2.8質量%(半水石膏SO換算で1.5質量%)及び石灰石1.0質量%を添加して、ミキサーで混合した。次いで、表2に示すように、助剤として、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)及びジエチレングリコール(DEG)を、クリンカと、石膏と、助剤との合計量に対して、それぞれ、50mg/kg及び150mg/kg配合した。次いで、ブレーン比表面積値が3200±50cm/gの範囲となるようにボールミルで混合粉砕し、比較例5のセメント組成物を得た。
【0050】
〔実施例20〕
クリンカ種類Aのクリンカ94.1質量%に対し、半水石膏2.7質量%(半水石膏SO換算で1.5質量%)及び石灰石3.2質量%を添加して、ミキサーで混合した。次いで、表2に示すように、助剤として、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)及びジエチレングリコール(DEG)を、クリンカと、石膏と、助剤との合計量に対して、それぞれ、50mg/kg及び150mg/kg配合した。次いで、ブレーン比表面積値が3200±50cm/gの範囲となるようにボールミルで混合粉砕し、実施例20のセメント組成物を得た。
【0051】
〔実施例21〕
クリンカ種類Aのクリンカ90.9質量%に対し、半水石膏2.6質量%(半水石膏SO換算で1.5質量%)及び石灰石6.5質量%を添加して、ミキサーで混合した。次いで、表2に示すように、助剤として、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)及びジエチレングリコール(DEG)を、クリンカと、石膏と、助剤との合計量に対して、それぞれ、50mg/kg及び150mg/kg配合した。次いで、ブレーン比表面積値が3200±50cm/gの範囲となるようにボールミルで混合粉砕し、実施例21のセメント組成物を得た。
【0052】
〔実施例22〕
クリンカ種類Aのクリンカ88.0質量%に対し、半水石膏2.5質量%(半水石膏SO換算で1.5質量%)及び石灰石9.5質量%を添加して、ミキサーで混合した。次いで、表2に示すように、助剤として、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)及びジエチレングリコール(DEG)を、クリンカと、石膏と、助剤との合計量に対して、それぞれ、50mg/kg及び150mg/kg配合した。次いで、ブレーン比表面積値が3200±50cm/gの範囲となるようにボールミルで混合粉砕し、実施例22のセメント組成物を得た。
【0053】
〔比較例6〕
クリンカ種類Aのクリンカ86.5質量%に対し、半水石膏2.5質量%(半水石膏SO換算で1.5質量%)及び石灰石11.0質量%を添加して、ミキサーで混合した。次いで、表2に示すように、助剤として、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)及びジエチレングリコール(DEG)を、クリンカと、石膏と、助剤との合計量に対して、それぞれ、50mg/kg及び150mg/kg配合した。次いで、ブレーン比表面積値が3200±50cm/gの範囲となるようにボールミルで混合粉砕し、比較例6のセメント組成物を得た。
【0054】
<セメント組成物の評価>
1.被粉砕性
φ0.4m×0.72m(容積約90L)のボールミルに粉砕媒体としてφ9.5mmの高クロム球10kgを投入し、被粉砕物として、実施例及び比較例のセメント組成物を添加した。ミル回転数を60回/分とし、ブレーン比表面積が3200cm/gとなるまでの粉砕時間を測定した。
粉砕時間が短いほどセメント組成物は被粉砕性に優れる。粉砕時間は68分未満であることが好ましい。結果を表2~3の「粉砕効果」欄に示した。
【0055】
2.噴流性
ホソカワミクロン株式会社製のパウダーテスター(TP-X)を使用し、実施例及び比較例のセメント組成物の安息角、崩壊角、及び分散度を測定し、同装置の噴流性指数表に当てはめて噴流性指数を求めた。
噴流性指数が小さいほど、セメント組成物は噴流性に優れる。指数は75未満であることが好ましい。結果を表2~3の「噴流性指数」欄に示した。
【0056】
3.モルタル強さ
JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」に準拠して、実施例及び比較例のセメントを用いて得られたモルタルの強度を評価した。
数値が大きいほど、セメント組成物を用いて得られるモルタルは強度が高く、許容範囲は60N/mm超である。結果を表2~3の「モルタル強さ」欄に示した。
【0057】
4.流動性
JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」に準拠してセメント組成物から得られるモルタルの流動性を評価した。
具体的には、実施例及び比較例のセメント組成物に対して、高性能減水剤〔花王(株)製、商品名「マイティー150」)を外割で1.0%添加して、モルタルを調製し、得られたモルタルについて、15回の落下運動は実施せず、コーンを引き抜いた後にモルタルの広がりが停止した時点のフロー値を測定した。
フロー値が大きいほど、セメント組成物から得られるモルタルは流動性に優れる。許容範囲は160mm超である。結果を表2~3の「0打フロー」欄に示した。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2021-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%である普通ポルトランドセメントクリンカと、
石膏と、
石灰石と、
アルカノールアミンを含む助剤
とを含み、
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記アルカノールアミンの含有量が10~210mg/kgであり、
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、前記助剤、及び前記石灰石の合計量中の前記石灰石の含有量が3~10質量%であり、
前記CAFの格子体積が0.4290nmを超え、
ブレーン比表面積が2800~3500cm/gであるセメント組成物。
【請求項2】
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記助剤の含有量が80~350mg/kgである請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記助剤が脂肪族多価アルコールを含む請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記石膏の含有量がSO換算で0.7~2.8質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項5】
前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びNn-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1~4のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項6】
前記脂肪族多価アルコールが、グリセリン及びジエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つである請求項3に記載のセメント組成物。
【請求項7】
ボーグ式で算出されるCSが51~62質量%、CAFが7~10質量%であり、前記CAFの格子体積が0.4290nmを超える普通ポルトランドセメントクリンカと、
石膏と、
石灰石と、
アルカノールアミンを含む助剤
とを、
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、及び前記助剤の合計量中の前記アルカノールアミンの配合量を10~210mg/kg、かつ
前記普通ポルトランドセメントクリンカ、前記石膏、前記助剤、及び前記石灰石の合計量中の前記石灰石の配合量を3~10質量%として混合し、請求項1~6のいずれか1項に記載のセメント組成物を製造するセメント組成物の製造方法。