(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151223
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】血球系細胞の精製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20220929BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20220929BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20220929BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20220929BHJP
【FI】
C12N5/078 ZNA
C07K14/195
C12N15/31
C12N5/074
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054193
(22)【出願日】2021-03-26
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】丸山 高廣
(72)【発明者】
【氏名】林 政浩
(72)【発明者】
【氏名】栗原 桃
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博之
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BD50
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA11
4H045DA80
4H045EA65
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】
ヒトiPS細胞から分化誘導された血球系細胞を効率よく精製する方法を提供すること。
【解決手段】
フコース結合性タンパク質が水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤に、ヒトiPS細胞から分化誘導された血球系細胞を含む細胞集団を接触させる工程と、吸着剤に結合しなかった細胞を取得する工程を含む方法により、前記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコース結合性タンパク質が水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤に、血球系細胞を含む細胞集団を接触させる工程と、吸着剤に結合しなかった細胞を取得する工程を含むことを特徴とする、血球系細胞の精製方法。
【請求項2】
血球系細胞を含む細胞集団に、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖を有する細胞が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖を有する細胞が、ヒトiPS細胞および/またはヒトiPS細胞より派生した細胞であることを特徴とする、請求項2に記載の精製方法。
【請求項4】
血球系細胞が、ヒトiPS細胞を分化誘導することにより得られる巨核球、赤血球、白血球、血小板、造血幹細胞のいずれか1種である、請求項1から3のいずれかに記載の精製方法。
【請求項5】
フコース結合性タンパク質が以下の(a)から(d)のいずれかである、請求項1から4のいずれかに記載の精製方法。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列を含むフコース結合性タンパク質であって、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むフコース結合性タンパク質であって、かつ、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合親和性を有し、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質。
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、以下の(1)から(3)に記載のアミノ酸置換のいずれか1つ以上を含むアミノ酸配列を含み、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列の39番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(2)配列番号1で示されるアミノ酸配列の72番目のシステイン残基の、グリシン残基およびアラニン残基から選ばれる1種類のアミノ酸残基への置換
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列の65番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(d)前記(c)のフコース結合性タンパク質のアミノ酸配列において、配列番号1の39番目、65番目および72番目以外の領域に1個若しくは複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合親和性を有する、フコース結合性タンパク質。
【請求項6】
フコース結合性タンパク質が、以下の(e)から(h)のいずれかである、請求項1から4のいずれかに記載の精製方法。
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列に対し、さらにN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドが付加され、かつC末端にシステインを含むオリゴペプチドが付加されたアミノ酸配列からなり、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質。
(f)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列に対し、さらにN末端にポリヒスチジン配列が付加され、かつC末端にシステインを含むオリゴペプチドが付加されたアミノ酸配列からなり、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合親和性を有し、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質。
(g)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列に対し、さらにN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドが付加され、かつC末端にシステインを含むオリゴペプチドが付加されたアミノ酸配列において、以下の(4)から(6)に記載のアミノ酸置換のいずれか1つ以上を含むアミノ酸配列を含み、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質
(4)配列番号1で示されるアミノ酸配列の39番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(5)配列番号1で示されるアミノ酸配列の72番目のシステイン残基の、グリシン残基およびアラニン残基から選ばれる1種類のアミノ酸残基への置換
(6)配列番号1で示されるアミノ酸配列の65番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(h)前記(g)のフコース結合性タンパク質のアミノ酸配列において、配列番号1の39番目、65番目および72番目以外の領域に1個若しくは複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列に対し、さらにN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドが付加され、かつC末端にシステインを含むオリゴペプチドが付加されたアミノ酸配列からなり、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合親和性を有する、フコース結合性タンパク質。
【請求項7】
水に不溶性の担体に親水性高分子が共有結合で固定されてなる吸着剤を用いることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
カラムに充填してなる吸着剤を用いることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフコース結合性タンパク質を不溶性の担体に固定化してなる吸着剤を用いた細胞の精製方法であり、吸着剤へ血球系細胞を含む細胞集団を接触させたのち、吸着剤に吸着しなかった細胞を回収することで、血球系細胞を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血球系細胞の主要な構成要素は赤血球、白血球、血小板の3つであり、赤血球はヘモグロビンによる酸素の運搬, 白血球は感染や異物の排除, 血小板は血液凝固及び止血に関わる細胞として、ヒトにおける生命の維持においてそれぞれ重要な役割を担っている。また、血球系細胞の分化過程の観点からは、まず単一の造血幹細胞がリンパ系幹細胞と骨髄系幹細胞に分化し、前者はB細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞へ、後者は赤血球、顆粒球、単球、マクロファージ、巨核球、血小板などへと分化することで、それぞれの血球系細胞が生成することが知られている。
【0003】
近年,医療の発展が目覚ましいが、患者の体内に赤血球を輸注する輸血療法は,現在においても未だ不可欠な治療法である。医療技術の高度化に伴い,輸血療法の重要性は今まで以上に高まってきているものの、輸血用血液の供給は多くのドナーに依存しており,少子高齢化に伴う献血者の減少により将来的な輸血用血液の供給不足が社会問題となりつつある。更に,輸血用血液は不特定多数のドナーから採取されるため,輸血を介した肝炎ウイルス(HBV、HCV)やエイズウイルスHIVの感染症の危険性など,その安全性も大きな問題となっている。感染症のリスクを完全に取り除くことは不可能であることから、安全な輸血用血液および血液製剤を人工的に大量生産する技術の開発が求められている。
【0004】
そのような状況の中、現在、再生医療を基盤とした血球系細胞の産生技術の開発が世界で盛んに行われている。例えば、造血不全や白血病などの移植治療の供給源として、長期骨髄再構築能を有する造血幹細胞の分化誘導技術の確立には大きな期待が集まっており、臍帯血や骨髄液からの造血幹細胞の採取は倫理的問題にも十分配慮する必要があることから、ヒト多能性幹細胞(ヒトiPS細胞)から機能的な造血幹細胞を誘導できれば、それら多くの部分を解決できると考えられる。ヒトiPS細胞からの造血幹細胞への分化誘導方法としては、千葉大学・岩間らによる方法が報告されている(特許文献1)。
【0005】
またヒトiPS細胞より赤血球を大量生産することが出来れば、将来的に予想される輸血用赤血球の不足を補うと同時に、品質管理を徹底することで、感染症リスクを回避できると期待される。ヒトiPS細胞からの造血幹細胞への分化誘導方法としては、理化学研究所・中村らによる方法が知られている(特許文献2)。
【0006】
また血小板も、血液凝固及び止血のために特に重要な血球細胞のひとつであり、白血病、骨髄移植、抗癌治療などにおいて需要が多く、安定供給体制の確立が望まれている。これまでに、血小板は、ドナーからの献血により採取する方法の他、トロンボポエチンミメティクス製剤投与法、臍帯血又は骨髄細胞から巨核球を分化させる方法などにより製造されてきた。また、ヒトiPS細胞から一気通貫で血小板を分化誘導する手法も開発されているが、これらの方法はいずれも分化効率が低く、1回あたり約2x10^11個細胞の投与が必要で、かつ長期間の保存ができないといった問題点から、臨床応用には至らなかった。これらを克服すべく、京都大学・江頭らによる、不死化巨核球細胞(immortalized megakaryocyte progenitor cell line)をマスターセルとした、血小板大量製造方法などが開発されている(特許文献3)。
【0007】
このようにヒトiPS細胞から血球細胞を分化誘導する試みは盛んに行われており、また、赤血球や血小板は核を持たない細胞であるため、一般的にはiPS細胞から分化誘導した細胞を用いた移植医療は他の組織細胞(有核細胞)の場合と比べ、腫瘍形成の危険性は少ないと考えられている。しかしながら、ヒトiPS細胞から直接血球系細胞を分化誘導する方法、または、ヒトiPS細胞から分化誘導により作製した造血幹細胞や巨核球、不死化巨核球などから更に分化誘導を進め、別の血球系細胞を生産する方法においては、ヒトiPS細胞をソースとして用いていることから、出来るだけ安全性が高く高品質な血球系細胞を得るために、ヒトiPS細胞を完全に除去して腫瘍化リスクを排除することが望ましい。
【0008】
グラム陰性細菌(Burkholderia cenocepacia)が産生するBC2L-CレクチンのN末端ドメインに由来するBC2LCNは、フコース残基を含む糖鎖への結合親和性を有するタンパク質であり、例えば、非特許文献1、特許文献2および特許文献4に記載の未分化糖鎖マーカーとして知られているHタイプ1型糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc)およびHタイプ3型糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3GalNAc)以外に、ルイスY型糖鎖(Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc)やルイスX型糖鎖(Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc)等のフコース残基を含む複数種の糖鎖に高い結合親和性を有することが知られている(非特許文献2)。また、BC2LCNは、Hタイプ1型糖鎖およびHタイプ3型糖鎖が高発現している未分化状態のヒトiPS細胞やヒトES細胞には結合するが、ヒト体細胞には結合しないことが知られている(非特許文献3)。さらに、BC2LCNは前記未分化糖鎖マーカーに結合性を有することから、例えば、未分化糖鎖マーカーを含む複合糖質の検出や、ヒトiPS細胞やヒトES細胞等の未分化細胞の検出に使用されている(特許文献1および特許文献5)。また、Hタイプ1型糖鎖はSSEA-5として特定のがん細胞に高発現していることが知られている(非特許文献4)。
【0009】
BC2LCNは既知の未分化細胞検出用抗体である抗Nanog抗体等と同等の未分化幹細胞検出能をもっているものの(特許文献5)、BC2LCNと未分化細胞の糖鎖の結合は静電相互作用によるものであり、結合の強さは溶媒や塩濃度等の外環境の影響を受ける。このため、実験条件によっては前記未分化細胞および/または前記未分化糖鎖マーカーを含む複合糖質の検出において、当該糖鎖とBC2LCNの結合親和性が低くなる可能性が考えられることから、前記未分化糖鎖マーカーへの結合親和性が向上したBC2LCNが求められている。
【0010】
タンパク質の機能を向上させる方法として、タンパク質工学的手法によりタンパク質にアミノ酸変異を導入し、目的とする機能を向上させる方法が公知であり、例えば、特定のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することにより、熱、酸および/またはアルカリに対する安定性が向上した抗体結合性タンパク質が知られている(特許文献6)。また、同様の手法を用い、特定位置のアミノ酸置換により熱に対する安定性や糖鎖への結合親和性が向上したBC2LCNが知られている(特許文献7)。さらに、Escherichia coli等の微生物を利用して製造した場合の生産性が向上したBC2LCNが知られている(特許文献8)。また、これら熱に対する安定性や糖鎖への結合親和性などの機能および微生物発現による生産性を向上させたBC2LCNを水不溶性担体に固定化した吸着剤を利用した細胞分離方法としては、ヒトiPS細胞などの未分化細胞を除去する細胞分離方法が知られているほか(特許文献9)、さらに吸着剤に結合した未分化細胞を剥離回収する方法が知られている(特許文献10)。
【0011】
しかしながら、これらの特許文献に開示されている方法では、Hタイプ1型糖鎖およびHタイプ3型糖鎖を発現している細胞と、発現していない血球系細胞の細胞混合物から、血球系細胞のみを効率良く精製する方法は確立されていなかった。しかるに現状では、再生医療用途に向け、大量の血球系細胞を短時間で、効率良く精製する技術の開発が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012―070731号公報
【特許文献2】特開2014―036651号公報
【特許文献3】WO2012/157586号
【特許文献4】WO2013/065302号
【特許文献5】WO2013/128914号
【特許文献6】特開2011-206046号公報
【特許文献7】特開2020-025535号公報
【特許文献8】特開2020-058343号公報
【特許文献9】特開2018-134073号公報
【特許文献10】特開2019-000063号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Tateno,H等,Stem Cells Transl Med.2013,2(4):265-273.
【非特許文献2】Sulak,O等,Structure.2010,18(1):59-72.
【非特許文献3】Tateno,H等,J Biol Chem.2011,286(23):20345-20353.
【非特許文献4】Tang,C等,Nat Biotechnol.2011,29(9):829-835.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、再生医療用途の細胞の調製において、大量の血球系細胞を短時間で精製可能な技術を提供することである。具体的には、ヒトiPS細胞から分化誘導して作製される血球系細胞から、未分化マーカー糖鎖であるFucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖を有する細胞を除去し、血球系細胞のみを精製する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、フコース結合性タンパク質を水不溶性担体に固定化してなる吸着剤に、血球系細胞を含む細胞を接触させ、細胞表面に存在する未分化マーカーであるFucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖等を発現する細胞を吸着剤に結合させることで、血球系細胞のみを精製回収可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の[1]から[8]に記載した発明を包含するものである。
[1]
フコース結合性タンパク質が水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤に、血球系細胞を含む細胞集団を接触させる工程と、吸着剤に結合しなかった細胞を取得する工程を含むことを特徴とする、血球系細胞の精製方法。
[2]
血球系細胞を含む細胞集団に、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖を有する細胞が含まれることを特徴とする、前記[1]に記載の精製方法。
[3]
Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖を有する細胞が、ヒトiPS細胞および/またはヒトiPS細胞より派生した細胞であることを特徴とする、前記[2]に記載の精製方法。
[4]
血球系細胞が、ヒトiPS細胞を分化誘導することにより得られる巨核球、赤血球、白血球、血小板、造血幹細胞のいずれか1種である、前記[1]から[3]のいずれかに記載の精製方法。
[5]
フコース結合性タンパク質が以下の(a)から(d)のいずれかである、前記[1]から[4]のいずれかに記載の精製方法。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列を含むフコース結合性タンパク質であって、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含むフコース結合性タンパク質であって、かつ、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合親和性を有し、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質。
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、以下の(1)から(3)に記載のアミノ酸置換のいずれか1つ以上を含むアミノ酸配列を含み、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質
(1)配列番号1で示されるアミノ酸配列の39番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(2)配列番号1で示されるアミノ酸配列の72番目のシステイン残基の、グリシン残基およびアラニン残基から選ばれる1種類のアミノ酸残基への置換
(3)配列番号1で示されるアミノ酸配列の65番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(d)前記(c)のフコース結合性タンパク質のアミノ酸配列において、配列番号1の39番目、65番目および72番目以外の領域に1個若しくは複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合親和性を有する、フコース結合性タンパク質。
[6]
フコース結合性タンパク質が、以下の(e)から(h)のいずれかである、前記[1]から[4]のいずれかに記載の精製方法。
(e)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列に対し、さらにN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドが付加され、かつC末端にシステインを含むオリゴペプチドが付加されたアミノ酸配列からなり、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質。
(f)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列において、1個または複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列に対し、さらにN末端にポリヒスチジン配列が付加され、かつC末端にシステインを含むオリゴペプチドが付加されたアミノ酸配列からなり、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合親和性を有し、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質。
(g)配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリン残基からX番目のアミノ酸残基までのアミノ酸配列に対し、さらにN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドが付加され、かつC末端にシステインを含むオリゴペプチドが付加されたアミノ酸配列において、以下の(4)から(6)に記載のアミノ酸置換のいずれか1つ以上を含むアミノ酸配列を含み、Xが120以上の整数である、フコース結合性タンパク質
(4)配列番号1で示されるアミノ酸配列の39番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(5)配列番号1で示されるアミノ酸配列の72番目のシステイン残基の、グリシン残基およびアラニン残基から選ばれる1種類のアミノ酸残基への置換
(6)配列番号1で示されるアミノ酸配列の65番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換
(h)前記(g)のフコース結合性タンパク質のアミノ酸配列において、配列番号1の39番目、65番目および72番目以外の領域に1個若しくは複数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入若しくは付加されたアミノ酸配列に対し、さらにN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドが付加され、かつC末端にシステインを含むオリゴペプチドが付加されたアミノ酸配列からなり、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合親和性を有する、フコース結合性タンパク質。
[7]
水に不溶性の担体に親水性高分子が共有結合で固定されてなる吸着剤を用いることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
[8]
カラムに充填してなる吸着剤を用いることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の血球系細胞を精製する方法(以降、細胞精製方法と略する場合もある。)は、フコース結合性タンパク質を水不溶性担体に固定化してなる吸着剤に血球系細胞を含む細胞集団を接触させたのち、吸着剤に結合しなかった細胞群を取得する工程を含むことを特徴とする、血球系細胞を精製する方法である。
【0019】
本発明において、血球系細胞とは主に巨核球、赤血球、白血球、血小板、造血幹細胞などを指すが、B細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞、顆粒球、単球、マクロファージ、巨核球、血小板なども血球系細胞に含まれ、いずれの血球系細胞においても本発明の精製方法による精製が可能である。また、本発明における血球系細胞とは、ヒトiPS細胞などの多能性幹細胞からの分化誘導により作製した血球系細胞であっても良い。また、例えば白血病細胞株K562細胞は、多能性幹細胞的性質を有するヒト造血幹細胞のモデル細胞株として知られ、種々の化学物質により赤芽球系細胞や巨核球系細胞に分化することが知られている。本来浮遊系の細胞であるK562細胞は,生理活性物質であるphorbol 12―myristate13―acetate(PMA)を培地中へと添加することで,培養面へと付着・伸展し、核内分裂が生じることで核と細胞質の巨大化が進行し、巨核球へと分化することが知られており、こうして作製された細胞は実際に巨核球の性質を有することから、本発明における血球系細胞に含まれる。
【0020】
また、本発明において血球系細胞に含まれる、除去対象となる細胞は未分化マーカーを発現している細胞を指す。ここで未分化マーカーとは、細胞表面に存在する未分化度の指標となる分子のことであり、具体的には上記のフコース結合性タンパク質が結合し得る、フコース含有糖鎖として知られているHタイプ1型糖鎖構造、Hタイプ3型糖鎖構造、ルイスY型糖鎖構造、および/またはルイスb型糖鎖構造を含む糖鎖を有するFucα1-2Galβ1-3GlcNAcからなる構造を含む糖鎖および/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖を例示することができる。また、本発明における未分化マーカーは、上記糖鎖構造のみに限定されず、一般的に細胞表面の未分化マーカーとして知られているTRA-1-60、TRA-1-81やSSEA-3、SSEA-4、SSEA-5などの糖鎖であっても良い。
【0021】
本発明において、前記の未分化マーカーを発現している細胞としては具体的には、ヒトiPS細胞201B7株(以下、201B7細胞と略す)や2102Ep細胞(ヒト胚性腫瘍細胞)などが例示できるが、血球系細胞分化誘導の過程において、原料となる細胞、分化誘導により生成する中間的な細胞、または何らかの原因によりこれらの細胞から派生して生じる細胞であっても、分化誘導系に含まれる細胞であって、未分化マーカーを発現する細胞あれば特に限定されない。すなわち、ヒトiPS細胞から血球系細胞への分化誘導過程において存在が確認されるような、未分化マーカー発現性が低下したヒトiPS細胞や未分化を逸脱した性質をもったヒトiPS細胞であっても良い。従って、本発明の細胞精製方法において精製対象となる細胞混合物は、巨核球、赤血球、白血球、血小板、造血幹細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞、顆粒球、単球、マクロファージ、巨核球、血小板などの血球系細胞と、未分化マーカーを発現する未分化細胞または分化誘導過程に生じる未分化細胞由来細胞の混合物であると考えて差し支えない。
【0022】
本発明の細胞精製方法は、フコース結合性タンパク質を水不溶性担体に固定化した吸着剤に細胞集団を接触させたのち、吸着剤に結合しない細胞群を分取する工程を含む細胞精製方法である。またさらに、本発明の精製方法で得られた細胞を遠心して細胞ペレットとし、MACS緩衝液などで適当な細胞懸濁液を調製したのち、再度フコース結合性タンパク質を水不溶性担体に固定化した吸着剤と接触させ、同様の精製方法を繰り返して細胞回収を行うことで、より純度の高い血球系細胞精製が可能となることは言うまでもない。
【0023】
フラクション回収液としては、遠心分離用容器や試験管、小型チューブ、マルチウェルディッシュ/プレート等に回収することで、性質評価や再培養など、回収血球系細胞を有効活用することができる。
【0024】
次に、本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質について説明する。本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質とは、Hタイプ1型糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3GlcNAc)、Hタイプ3型糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3GalNAc)、ルイスY型糖鎖(Fucα1-2Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAc)、ルイスb型糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3(Fucα1-4)GlcNAc)等のフコース含有糖鎖への結合性を有するタンパク質であり、前述した組換えBC2LCNレクチンも本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質に含まれる。本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質は、具体的には、(a):配列番号1で示される組換えBC2LCNレクチンのアミノ酸配列(GenPeptに登録番号WP_006490828として登録されているアミノ酸配列の2番目から156番目までのアミノ酸配列と一致する。)のうち1番目のプロリンからX番目のアミノ酸までのアミノ酸配列を含むタンパク質であって、Xが120以上の整数であるタンパク質、または(b):配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリンからX番目のアミノ酸までのアミノ酸配列において、1個若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、Hタイプ1型糖鎖および/またはHタイプ3型糖鎖への結合性を有し、Xが120以上の整数であるタンパク質を、大腸菌の形質転換体で組換えタンパク質として発現させたものである。
【0025】
本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質は、前記フコース含有糖鎖、特にFucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合性を有している限り、配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリンからX番目のアミノ酸までのアミノ酸配列において、1個若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加してもよく、例えば15個以下、好ましくは10個以下のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加してもよい。また、Xは120以上155以下であってよく、125以上155以下であってよい。特開2020-25535に開示されているように、本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のC末端側の複数個のアミノ酸残基を欠失させることにより、当該アミノ酸残基を欠失させない場合に比べて生産性(発現量)を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質は、熱に対する安定性を向上させる点で、(i)配列番号1で示されるアミノ酸配列の39番目のグルタミン残基のロイシン残基への置換、(ii)配列番号1で示されるアミノ酸配列の72番目のシステイン残基のグリシン残基および/またはアラニン残基から選ばれる1種類のアミノ酸残基への置換、(iii)配列番号1で示されるアミノ酸配列の65番目のグルタミン残基の、ロイシン残基への置換、のいずれか1つ以上を含んでいてもよい。特開2020-25535に開示されているように、前記(i)から(iii)に記載のアミノ酸置換を行うことにより、本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質の熱に対する安定性を向上させることができる。前記(i)から(iii)に記載のアミノ酸置換は、単独であっても複数を組み合わせても熱に対する安定性の向上に効果があるが、熱に対する安定性をさらに向上させることができる点で、前記(i)から(iii)に記載のアミノ酸置換を複数組合せることがより好ましい。さらに、本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質は、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合性を有している限り、配列番号1で示されるアミノ酸配列の1番目のプロリンからX番目のアミノ酸までのアミノ酸配列において、前記(1)から(3)の置換により置換された位置以外の領域に1個若しくは複数個のアミノ酸残基を欠失、置換若しくは挿入してもよく、例えば15個以下、好ましくは10個以下のアミノ酸残基を欠失、置換若しくは挿入してもよい。
【0027】
本発明の細胞精製におけるフコース結合性タンパク質は、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合性を有している限り、そのN末端側および/またはC末端側に、フコース結合性タンパク質を検出する際に有用な付加的なアミノ酸配列を有していてもよい。前記付加的なアミノ酸配列としては、ポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチド、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(以下、GSTとする。)、マルトース結合タンパク質、セルロース結合性ドメイン、mycタグ、FLAGタグ等が挙げられる。これらの付加的なアミノ酸配列の中では、大腸菌を用いて製造した場合の生産性が高く、蛍光標識した抗ポリヒスチジン抗体あるいは抗GST抗体を用いることでフコース結合性タンパク質の検出が容易に行える点で、ポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドあるいはGSTであることが好ましく、ポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドであることがより好ましい。ポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドにおけるヒスチジンの繰返し配列数特に制限はないが、ヒスチジンの繰返し配列が短い場合は抗ポリヒスチジン抗体による検出が困難となり、長い場合は、フコース結合性タンパク質の前記糖鎖への結合性が損なわれる可能性がある。従って、ポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドにおけるヒスチジンの繰返し配列数の長さはヒスチジンが5個から15個からなる繰返し配列であることが好ましく、5個から10個からなる繰返し配列であることがより好ましい。前記ポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドがフコース結合性タンパク質に付加する位置に特に制限はなく、N末端側とC末端側の双方、または、N末端側或いはC末端側のいずれかであってもよいが、抗ポリヒスチジン抗体による検出が効率的に行える点で、前記ポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドはフコース結合性タンパク質のN末端側に付加されていることが好ましい。
【0028】
さらに、本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質は、そのN末端側および/またはC末端側に、フコース結合性タンパク質を水不溶性の担体に固定化する際に有用な、システイン残基またはリジン残基を含むオリゴペプチドからなる付加的なアミノ酸配列(以下、担体固定化用タグと呼ぶ。)を有していても良い。フコース結合性タンパク質を担体に固定化することで、例えば、特許文献3に記載されているヒトiPS細胞等の未分化細胞を除去するための未分化細胞吸着剤を作製することができる。前記担体固定化用タグの長さは、フコース結合性タンパク質がFucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖への結合性を有している限り、特に制限はない。担体固定化用タグとしては、水不溶性担体への固定化が高選択的かつ高効率に行える点で、システイン残基を1つ以上含む2から10アミノ酸残基からなるオリゴペプチドが好ましく、具体的には、「Gly-Gly-Cys」の3アミノ酸残基からなるオリゴペプチド、「Ala-Ser-Gly-Gly-Cys」の5アミノ酸残基からなるオリゴペプチドおよび「Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Cys」の7アミノ酸残基からなるオリゴペプチドを例示することができる。前記システインを1つ以上含むオリゴペプチドがフコース結合性タンパク質に付加する位置に特に制限はなく、N末端側とC末端側の双方、N末端側或いはC末端側のいずれかであってもよいが、フコース結合性タンパク質の担体への固定化が効率的に行える点、さらにはフコース結合性タンパク質の活性中心から離れるため結合活性を阻害しにくいという点において、前記システイン残基を1つ以上含むオリゴペプチドはフコース結合性タンパク質のC末端側に付加されていることが好ましい。
【0029】
本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質の具体例としては、配列番号1、配列番号2(配列番号1で示されるアミノ酸配列のうち1番目から127番目までのアミノ酸配列)、配列番号3(配列番号2の72番目のシステイン残基をグリシン残基に置換したアミノ酸配列)、配列番号4(配列番号2の39番目のグルタミン残基をロイシン残基に、72番目のシステイン残基をグリシン残基に置換したアミノ酸配列)、配列番号5(配列番号2の39番目のグルタミン残基をロイシン残基に、65番目のグルタミン残基をロイシン残基に、72番目のシステイン残基をグリシン残基に置換したアミノ酸配列)、配列番号6(配列番号1で示されるアミノ酸配列のN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドを、C末端にシステイン残基を含むオリゴペプチドを付加したアミノ酸配)、配列番号7(配列番号2で示されるアミノ酸配列のN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドを、C末端にシステイン残基を含むオリゴペプチドを付加したアミノ酸配)、配列番号8(配列番号3で示されるアミノ酸配列のN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドを、C末端にシステイン残基を含むオリゴペプチドを付加したアミノ酸配)、配列番号9(配列番号4で示されるアミノ酸配列のN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドを、C末端にシステイン残基を含むオリゴペプチドを付加したアミノ酸配)および配列番号10(配列番号5で示されるアミノ酸配列のN末端にポリヒスチジン配列を含むオリゴペプチドを、C末端にシステイン残基を含むオリゴペプチドを付加したアミノ酸配)のいずれかで示されるフコース結合性タンパク質を挙げることができる。
【0030】
本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質のN末端側には、宿主での効率的な発現を促すためのシグナルペプチドを付加してもよい。宿主が大腸菌の場合における前記シグナルペプチドとしては、PelB、DsbA、MalE、TorT等といったペリプラズムにタンパク質を分泌させるシグナルペプチドを例示することができる。本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質をコードするDNAは、公知の方法により調製することができる。前記DNAの調製法として、本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質のアミノ酸配列から塩基配列に変換し、当該塩基配列を含むDNAを人工的に合成する方法や、本発明の細胞精製方法におけるフコース結合性タンパク質をコードするDNAを直接人工的に調製する方法、またはBurkholderia cenocepaciaのゲノムDNA等からPCR法などのDNA増幅法を用いて調製する方法を例示することができる。なお、当該調製法において、前記塩基配列を設計する際は、形質転換する大腸菌におけるコドンの使用頻度を考慮することが好ましく、例えば、アルギニン(Arg)ではAGA、AGG、CGGまたはCGAが、イソロイシン(Ile)ではATAが、ロイシン(Leu)ではCTAが、グリシン(Gly)ではGGAが、プロリン(Pro)ではCCCが、それぞれ使用頻度が少ないコドン(レアコドン)であるため、これらのコドン以外のコドンを選択して変換することが好ましい。コドンの使用頻度の解析は公的データベース(例えば、かずさDNA研究所のホームページにあるCodon Usage Database、http://www.kazusa.or.jp/codon/、アクセス日:2020年5月7日)を利用することによっても可能である。
【0031】
前記方法により調製したフコース結合性タンパク質をコードするDNAを用いて大腸菌を形質転換するには、当該DNAそのものを用いて形質転換してもよいが、例えば、原核細胞や真核細胞の形質転換に通常用いるバクテリオファージ、コスミドまたはプラスミド等を基にしたベクター中の適切な位置に当該DNAを挿入して発現ベクターとし、それを用いて形質転換することが、安定した形質転換が実施できる点で好ましい。ここで、適切な位置とは、発現ベクターの複製機能、所望の抗生物質マーカー、および伝達性に関わる領域を破壊しない位置を意味する。またベクターに当該DNAを挿入する際は、発現に必要なプロモータといった機能性DNAに連結される状態でベクターに挿入することが好ましい。前記発現ベクターとして使用するベクターは、宿主内で安定に存在し複製できるものであれば特に制限はなく、pETベクター、pUCベクター、pTrcベクター、pCDFベクター、pBBRベクター等が例示できる。また、前記プロモータとしては、trpプロモータ、tacプロモータ、trcプロモータ、lacプロモータ、T7プロモータ、recAプロモータ、lppプロモータ、さらにはλファージのλPLプロモータ、λPRプロモータ等を挙げることができる。前記発現ベクターを用いて宿主である大腸菌を形質転換するには、当業者が通常用いる方法で行えばよく、例えば、宿主として大腸菌JM109株、大腸菌BL21(DE3)株、大腸菌NiCo21(DE3)株、大腸菌W3110株などを選択する場合には、公知の文献(例えば、Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,256,1992)に記載の方法等を使用することができる。
【0032】
次に、本発明におけるフコース結合性タンパク質の製造方法について説明する。本発明におけるフコース結合性タンパク質は、前記形質転換体を培養することでフコース結合性タンパク質を生産する工程(以下、第1工程という。)と、得られた培養物からフコース結合性タンパク質を回収する工程(以下、第2工程という。)の2つの工程を含む工程により製造することができる。なお本明細書において、培養物とは、培養された形質転換体の細胞自体や細胞分泌物のほか、培養に用いた培地等も含まれる。前記第1工程では、形質転換体をその培養に適した培地で培養すればよい。例えば、宿主として大腸菌を用いた場合、必要な栄養源を補ったTerrific Broth(TB)培地、Luria-Bertani(LB)培地等を使用することが好ましい。
【0033】
発現ベクターが薬剤耐性遺伝子を含む場合、その遺伝子に対応した薬剤を培地に添加して第1工程を実施すれば、形質転換体の選択的増殖が可能となり、例えば、当該発現ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合は、培地にカナマイシンを添加することが好ましい。培養温度は利用する宿主に関して一般的に知られた温度であればよく、例えば宿主が大腸菌である場合、10℃から40℃、好ましくは20℃から37℃であり、本発明のフコース結合性タンパク質の製造量等を勘案しつつ、適宜決定すればよい。また、培地のpHは、利用する宿主に関して一般的に知られたpH範囲とすればよく、例えば宿主が大腸菌である場合、pH6.8からpH7.4の範囲、好ましくはpH7.0前後であり、本発明のフコース結合性タンパク質の製造量等を勘案しつつ、適宜決定すればよい。発現ベクターに誘導性のプロモータを導入した場合は、本発明のフコース結合性タンパク質が良好に製造可能な条件下で培地に誘導剤を添加してその発現を誘導すればよい。
【0034】
好ましい誘導剤としては、例えば、tacプロモータやlacプロモータを使用する場合はisopropyl-β-D-thiogalactopyranoside(IPTG)を挙げることができ、その添加濃度は0.005mMから1.0mMの範囲、好ましくは0.01mMから0.5mMの範囲である。IPTG添加による発現誘導は、利用する宿主に関して一般的に知られた条件で行なえばよい。前記第2工程では、第1工程で得られた培養物から一般的に知られた回収方法によって本発明のフコース結合性タンパク質を回収する。例えば、本発明のフコース結合性タンパク質が培養液中に分泌生産される場合は細胞を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清から本発明のフコース結合性タンパク質を回収すればよく、細胞内(原核生物においてはペリプラズムも含む)に発現する場合は、遠心分離操作により細胞を集めた後、酵素処理剤や界面活性剤等を添加する等により細胞を破砕し、細胞破砕液からフコース結合性タンパク質を回収すればよい。また、フコース結合性タンパク質の純度を向上させたい場合には、当該技術分野において公知の方法を用いればよく、一例として、液体クロマトグラフィーを用いた分離精製法を挙げることができる。液体クロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を使用することが好ましく、これらのクロマトグラフィーを組み合わせて行なうことがより好ましい。また、前記クロマトグラフィーにより精製した本発明のフコース結合性タンパク質の純度および分子量は当該技術分野において公知の方法を用いて調べればよく、一例として、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)法やゲルろ過クロマトグラフィー法を挙げることができる。
【0035】
本発明におけるフコース結合性タンパク質の糖鎖への結合親和性の評価は、Enzyme-linked immunosorbent assay法や表面プラズモン共鳴法等により評価することができる。一例として、表面プラズモン共鳴法について説明する。表面プラズモン共鳴法による結合親和性評価は、例えば、Biacore T200機器(GEヘルスケア製)を用い、アナライトをフコース結合性タンパク質、固相を糖鎖(Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖)として測定することができる。糖鎖を固定したセンサーチップの作製は、ビオチン標識糖鎖を利用して、ストレプトアビジンをコートしたセンサーチップ(Sensor Chip SA、GEヘルスケア製)や、デキストランがコートされたセンサーチップ(Sensor Chip CM5、GEヘルスケア製)にあらかじめストレプトアビジンを固定したものを利用して行うことができる。また、結合性親和評価は当該機器に付属のカイネティクス解析プログラムを利用して行うことができる。
【0036】
次に、本発明の細胞精製方法における吸着剤について説明する。本発明の細胞精製方法における吸着剤に使用する水不溶性担体の原料に特に制限はなく、シリカゲルや金薄膜を蒸着させたガラスなどの無機系担体、アガロース、セルロース、キチン、キトサン等の多糖類を原料とした水に不溶性の多糖系担体およびそれらを架橋剤で架橋した架橋多糖系担体、デキストラン、プルラン、デンプン、アルギン酸塩、カラギーナン等の水溶性多糖類を架橋剤で架橋した架橋多糖系担体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリスチレン等の合成高分子系担体およびそれらを架橋剤で架橋した架橋合成高分子系担体を例示することができる。これらの担体の中では、水酸基を有し、後述する親水性高分子による修飾が容易に行える点で、アガロース、セルロース、デキストラン、プルラン等の電荷をもたない多糖系担体およびそれらを架橋剤で架橋した架橋多糖系担体や、ポリ(メタ)アクリレートやポリウレタン等の親水性合成高分子系担体およびそれらを架橋剤で架橋した架橋親水性合成高分子系担体が好ましい。また、吸着剤に使用する水不溶性担体は、細胞やフコース含有糖鎖および/または複合糖質の非特異吸着を抑制する点で、前記の水不溶性担体表面が親水性高分子で修飾されていることが好ましく、親水性高分子が水不溶性担体に共有結合で固定されていることがより好ましい。
【0037】
水不溶性担体の表面を修飾する親水性高分子としては、アガロース、セルロース、デキストラン、プルラン、デンプン等の中性多糖類や、ポリ(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)やポリビニルアルコール等の水酸基を有する合成高分子を例示することができる。これら親水性高分子の中では、親水性が高く、不溶性担体表面への共有結合による固定が容易に行える点で、デキストラン、プルランおよびデンプンなどの中性多糖類が好ましく、デキストランおよびプルランがより好ましい。デキストランおよびプルランの分子量に特に制限はないが、不溶性担体表面の親水性修飾が十分に行える点で、数平均分子量が10,000から1,000,000のものが好ましい。吸着剤に使用する水不溶性担体の形状に特に制限はなく、粒子状、スポンジ状、平膜状、平板状、中空状、繊維状のいずれであってもよいが、吸着剤への細胞吸着を効率的に行える点で粒子状の担体であることが好ましく、真球状の粒子状担体であることがより好ましい。
【0038】
本発明の細胞精製方法における吸着剤に使用する水不溶性担体の、水に膨潤させた状態での平均粒径(メジアン径)は、担体から製造される吸着剤をカラムに充填した場合に精製対象の細胞が吸着剤表面と十分接触し、かつ吸着剤に結合しない細胞が吸着剤間の隙間を淀みなく通過できる点で、好ましくは100μm以上1000μm以下であり、より好ましくは100μm以上500μm以下であり、さらに好ましくは150μm以上300μm以下である。粒径が100μm未満の場合には、吸着剤に結合しない細胞が吸着剤間の隙間を通過しづらくなり、細胞の回収率が低下する。また、粒径が1000μm超の場合には、吸着剤に結合する細胞と吸着剤表面の接触が不十分となり、吸着剤に結合しない細胞の精製効率が低下する。不溶性担体の粒径は、例えば、ベックマンコールター(株)製の精密粒度分布測定装置(製品名「Multisizer 3」)などを用いて測定することができる。あるいは、光学顕微鏡を用いて目盛り付きスライドグラスの画像を撮影したのち、同じ倍率で測定対象の複数個の粒子の画像を撮影し、物差しを用いて撮影した複数個の担体の粒径を測定し、その平均値を算出することで求めることができる。吸着剤に使用する水不溶性担体の細孔の有無に特に制限はなく、多孔性または無孔性のいずれであってもよい。また、本発明の吸着剤に使用する水不溶性担体は、本発明の吸着剤に使用するフコース結合性タンパク質を担体に固定化するための活性官能基導入が容易に行える点で、水酸基を有する粒子状担体であることが好ましい。さらに、本発明の吸着剤に使用する水不溶性担体は市販品を使用してもよく、例えば、ポリ(メタ)アクリレートを原料としたトヨパール(東ソー製)、アガロースを原料としたSepharose(GEヘルスケア製)、セルロースを原料としたセルフィア(旭化成製)等を使用することができる。
【0039】
本発明の細胞精製方法における吸着剤は、水不溶性担体から反応性水不溶性担体を製造する工程(以下、工程Xとする。)と、該反応性水不溶性担体に本発明のフコース結合性タンパク質を作用させて固定化する工程(以下、工程Yとする。)の2つの工程を含む工程により製造することができる。以下に工程Xと工程Yの詳細を説明する。
【0040】
工程Xは、水不溶性担体に本発明のフコース結合性タンパク質を固定化するための反応性官能基を導入して反応性水不溶性担体を製造する工程である。水不溶性担体に本発明のフコース結合性タンパク質を固定化するため反応性官能基は、一般的なタンパク質固定化用の官能基であれば特に制限されず、エポキシ基、ホルミル基、カルボキシル基、活性エステル基、アミノ基、マレイミド基、ハロアセチル基等を例示することができる。
【0041】
水不溶性担体に前記官能基を導入する方法は、一般的な官能基導入方法であれば特に制限はされず、エポキシ基を導入する方法としては、水不溶性担体の水酸基とエピクロロヒドリンやエピブロモヒドリン等のハロヒドリン類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類、グリセロールトリグリシジルエーテル、エリスリトールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテルなどのトリグリシジルエーテル類、エリスリトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のテトラグリシジルエーテル類等のエポキシ基含有化合物を反応させる方法を例示することができる。また、水不溶性担体の水酸基とエポキシ基含有化合物を反応させる場合、反応効率を高める点で、塩基性条件下で反応を行うことが好ましい。
【0042】
水不溶性担体にホルミル基を導入する方法としては、水不溶性担体の水酸基とグルタルアルデヒド等の2官能性アルデヒド類を反応させる方法や、担体を過ヨウ素酸ナトリウム等の酸化剤と反応させる方法を例示することができる。また、前述の方法によりエポキシ基を導入した水不溶性担体と、D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミン、α-チオグリセロール等の化合物を反応させることで隣接する水酸基を導入した水不溶性担体を、過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤と反応させる方法を例示することができる。水不溶性担体にカルボキシル基を導入する方法としては、水不溶性担体の水酸基とモノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸等のハロ酢酸と塩基性条件下で反応させる方法の他に、前述の方法によりエポキシ基を導入した水不溶性担体を、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸類、β-アラニン、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸等のアミノ基含有カルボン酸類、チオグリコール酸やチオリンゴ酸等の含硫黄カルボン酸類と塩基性条件下で反応させる方法を例示することができる。さらに、水不溶性担体に導入したカルボキシル基を1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(以下、EDCとする。)等の縮合剤存在下でN-ヒドロキシスクシンイミドと反応させることにより、活性エステル基であるN-ヒドロキシスクシンイミドエステルへ誘導する方法を例示することができる。水不溶性担体にアミノ基を導入する方法としては、前述の方法によりエポキシ基を導入した水不溶性担体を、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン等の少なくとも2つ以上のアミノ基を有する化合物と反応させる方法を例示することができる。水不溶性担体にマレイミド基を導入する方法としては、水酸基および/またはアミノ基を有する水不溶性担体と、3-マレイミドプロピオン酸、4-マレイミド酪酸、6-マレイミドヘキサン酸、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボン酸等のマレイミド基を有するカルボン酸類をEDCなどの縮合剤存在下で反応させる方法を例示することができる。さらに、前述のマレイミド基を有するカルボン酸類のN-ヒドロキシスクシンイミドエステルやN-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルを反応させる方法を例示することができる。水不溶性担体にハロアセチル基を導入する方法としては、例えば、水酸基を有する水不溶性担体や、前述の方法によりアミノ基を導入した水不溶性担体と、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロリド、ブロモ酢酸ブロミド等の酸ハロゲン化物を反応させる方法や、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸等のハロゲン化酢酸をEDCなどの縮合剤存在下で反応させる方法を挙げることができる。さらに、前述のハロゲン化酢酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステルやN-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルを反応させる方法を挙げることができる。
【0043】
工程Yは、工程Xで製造した反応性水不溶性担体に、本発明におけるフコース結合性タンパク質を固定化する工程である。工程Xで得られた反応性水不溶性担体にフコース結合性タンパク質を固定化する方法は、一般的なタンパク質の固定化方法であれば特に制限はされず、例えば、配位結合やアフィニティー結合などを利用し、共有結合を形成せずにタンパク質を水不溶性担体に固定化する方法、タンパク質に固定化用活性官能基を導入したのち、固定化用活性官能基と担体を反応させて水不溶性担体に固定化する方法、水不溶性担体に導入した固定化用活性官能基とタンパク質を反応させ、共有結合を形成させて水不溶性担体に固定化する方法を挙げることができる。共有結合を形成せずにタンパク質を水不溶性担体に固定化する方法としては、アビジン-ビオチンのアフィニティー結合を利用し、ビオチンを導入したタンパク質をストレプトアビジンセファロースハイパフォーマンス(GEヘルスケア製)などのアビジンが固定化された水不溶性担体に固定化する方法を例示することができる。タンパク質へのビオチンの導入方法としては、9-(ビオチンアミド)-4,7-ジオキサノナン酸-N-スクシンイミジル等の活性エステル基を有するビオチン化試薬とタンパク質のアミノ基を反応させる方法や、N-ビオチニル-N’-[2-(N-マレイミド)エチル]ピペラジン塩酸塩等のマレイミド基を有するビオチン化試薬とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法を例示することができる。また、タンパク質に導入した固定化用活性官能基と水不溶性担体を反応させ、共有結合を形成させて固定化する方法としては、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸 3-スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルナトリウム塩等のマレイミド基と活性エステル基の双方を有する化合物の活性エステル基とタンパク質のアミノ基を反応させてタンパク質にマレイミド基を導入したのち、メルカプト基が導入された水不溶性担体と反応させる方法を例示することができる。さらに、水不溶性担体に導入した固定化用活性官能基とタンパク質を反応させて水不溶性担体に固定化する方法としては、水不溶性担体に導入したエポキシ基、ホルミル基、カルボキシル基、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル等の活性エステル基とタンパク質のアミノ基を反応させる方法、水不溶性担体に導入したアミノ基とタンパク質のカルボキシル基を反応させる方法、水不溶性担体に導入したエポキシ基、マレイミド基、ハロアセチル基またはハロアルキル基とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法を例示することができる。これらの固定化方法の中では、短時間に高収率で水不溶性担体へのタンパク質固定化が行える点で、水不溶性担体に導入したホルミル基または活性エステル基とタンパク質のアミノ基を反応させる方法、および、水不溶性担体に導入したマレイミド基またはハロアセチル基とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法が好ましく、固定化反応をpHが中性付近で行うことが可能でありタンパク質の変性を抑制できることが可能である点で、水不溶性担体に導入したマレイミド基またはハロアセチル基とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法がより好ましく、官能基の安定性が高い点で、水不溶性担体に導入したマレイミド基とタンパク質のメルカプト基を反応させる方法が、さらに好ましい。
【0044】
前記固定化用官能基を導入した水不溶性担体と、緩衝液に溶解したフコース結合性タンパク質を反応させることで、本発明における吸着剤を製造することができる。フコース結合性タンパク質を溶解する緩衝液に特に制限はなく、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝液や、D-PBS(-)(富士フイルム和光純薬製)等の市販の緩衝液を例示することができる。また、固定化反応の効率を高めることを目的として、緩衝液に塩化ナトリウム等の無機塩類やポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)等の界面活性剤を添加してもよい。フコース結合性タンパク質を水不溶性担体に固定化する際の反応温度およびpHは、活性官能基の反応性や本発明のフコース結合性タンパク質の安定性を考慮した上で反応温度については0℃以上50℃以下、pHについてはpH4以上pH10以下の範囲の中から適宜設定すればよく、フコース結合性タンパク質の失活を抑制する点で、反応温度については15℃以上40℃以下、pHについてはpH5以上pH9以下の範囲が好ましい。
【0045】
水不溶性担体へのフコース結合性タンパク質の固定化量は、本発明の細胞精製方法において精製対象となる細胞とフコース結合性タンパク質との結合性を考慮したうえで適宜設定すればよく、1mLの水不溶性担体あたり0.01mg以上50mg以下が好ましく、0.05mg以上30mg以下がより好ましい。また、水不溶性担体へのフコース結合性タンパク質の固定化量は、固定化反応時の前記タンパク質の使用量や水不溶性担体への活性官能基導入量を調節することにより調整することができる。フコース結合性タンパク質の水不溶性担体への固定化量は、固定化反応液および反応後の洗浄液を回収して未反応のフコース結合性タンパク質量を求めたのち、固定化反応に使用したフコース結合性タンパク質量から未反応の本発明のフコース結合性タンパク質量を差し引くことで算出することができる。
【0046】
また、前述したように、本発明における吸着剤に使用する水不溶性担体は、細胞の非特異吸着を抑制する点で、親水性高分子が共有結合で固定されていることが好ましいことから、吸着剤を製造する場合には、前記工程Xで本発明のフコース結合性タンパク質を固定化するための官能基を導入する前に、水不溶性担体に親水性高分子を共有結合で固定することもできる。水不溶性担体に親水性高分子を共有結合で固定する方法は、一般的な共有結合形成反応であれば特に制限はなく、例えば、水不溶性担体表面の水酸基とエピクロロヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ基含有化合物を塩基性条件下で反応させることで水不溶性担体にエポキシ基を導入したのち、エポキシ基と親水性高分子の水酸基を塩基性条件下で反応させる方法を挙げることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明は、iPS細胞を分化誘導して作製される様々な血球系細胞を、フコース結合性タンパク質を水不溶性担体に固定化してなる吸着剤に接触させることにより、分化誘導系の細胞混合物中に含まれる、Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcからなる構造を含む糖鎖および/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAcからなる構造を含む糖鎖を有する細胞、特にヒトiPS細胞または未分化性が消失しつつあるヒトiPS細胞を吸着剤に吸着することで、吸着しなかった細胞を純度の高い血球系細胞として得ることができる細胞精製方法である。本発明の細胞精製方法により、ヒトiPS細胞から血球系細胞への分化誘導過程の培養中に残存する未分化性を有する細胞を除去することが出来、既存の方法よりも造腫瘍性の少ない、高品質な血球系細胞の精製が可能である。また、本発明の細胞精製方法は既存の方法である磁気ビーズによる細胞精製方法、セルソーターによる細胞のソーティング、細胞ローリングカラムによる細胞精製方法と比べ、大量の細胞を短時間で簡便に処理することができ、特に大量の投与細胞数が必要とされる、再生医療用途の血球系細胞の大量精製にきわめて有効な手段である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】実施例1と比較例1における、K562細胞と、PMAにより分化誘導を行った巨核化細胞の写真である。
【
図2】実施例1と比較例1における、吸着剤処理後の201B7細胞と巨核化細胞の回収率を示すグラフである。
【
図3】実施例1と比較例1における、吸着剤処理後の流出細胞液における細胞比率(巨核化細胞数/201B7細胞数)を示すグラフである。
【実施例0049】
以下、作製例、実施例、比較例および参考例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
作製例1 吸着剤127Q39L/C72Gの作製
特開2020-025535号公報(特許文献4)の実施例33に記載の方法に従ってフコース結合性タンパク質127Q39L/C72G(配列番号8で示されるアミノ酸配列)を製造したのち、同公報の実施例34に記載の方法に従い、フコース結合性タンパク質127Q39L/C72Gが水に不溶性の担体に固定化されてなる吸着剤127Q39L/C72Gを製造した。
【0051】
実施例1 吸着剤を用いた201B7細胞と巨核化細胞の精製
実施例1は、前記作製例1で製造した吸着剤127Q39L/C72Gを利用した、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAc」からなる構造を含む糖鎖を有するヒトiPS細胞と、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAc」からなる構造を含む糖鎖を有さないヒト慢性骨髄性白血病細胞であるK562細胞(JCRB0019)から薬剤により誘導化を行った巨核化細胞の細胞混合物からの巨核化細胞の精製に関するものである。実施例1および比較例1では、ヒトiPS細胞として、iPSアカデミアジャパン社からライセンスを受け、購入したヒトiPS細胞201B7株(以下、201B7細胞と略する場合もある。)を用いた。なお、実施例1における細胞精製方法は吸着剤として127Q39L/C72Gを用いているが、詳細な説明で述べたように、同様の性能を有する細胞吸着剤であれば特に吸着剤の種類は限定されることなく用いることができる。
【0052】
(1)吸着剤を充填したカラムの作製
2.5mL容シリンジ(テルモ製)と注射針(テルモ製、22G)の間に目開き40μMの親水性ナイロンメッシュフィルター(コーニング製)を装着したカラムを2本作製した。次に、作製例1で作製した吸着剤127Q39L/C72GをMACS緩衝液(ミルテニーバイオテク製)で置換したのち、12時間以上放置後の吸着剤の沈降体積が50%となるように調整した吸着剤の50%懸濁液を調製し、作製したカラムにそれぞれ1.0mL、3.0mLを添加して、吸着剤をカラムに充填した(吸着剤容量はそれぞれ0.5mL、1.5mL)。
【0053】
(2)201B7細胞の培養と細胞懸濁液の調製
201B7細胞の培養は、接着培養用シャーレ(コーニング製)を用いて、以下の方法で行った。iMatrix-511(ニッピ製)を3μg/mLの割合でD-PBS(-)(細胞科学研究所製)に希釈した溶液をシャーレに添加して4℃で一晩以上放置することにより、シャーレ培養面へのiMatrix-511のコーティングを行った。コーティングを行ったシャーレのiMatrix-511溶液を廃棄したのち、ヒトiPS細胞培養用培地であるStemFit AK02N培地(味の素製)を添加して洗浄後、凍結バイアルより解凍した201B7細胞を、ロックインヒビター(Y-27632:富士フイルム和光純薬製)を10μM添加した同培地に懸濁して播種した。CO2インキュベーターで5%CO2雰囲気下、37℃にて一晩培養後、Y-27632を含むStemFit AK02N培地を廃棄し、Y-27632を含まないStemFit AK02N培地へと培地交換を行い、適切な細胞密度になったところで、細胞回収と継代を行った。
【0054】
次に、Cell Tracker Orange(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用いた201B7細胞の蛍光染色は、以下の方法で行った。まず、シャーレ中の培地を廃棄後、無血清のRPMI 1640培地(富士フイルム和光純薬製)を添加して細胞をリンス後、培地を吸引廃棄した。次にCell Tracker Orangeを無血清のRPMI 1640培地に終濃度10μMで溶解した溶液を添加し、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。蛍光試薬液を廃棄後、StemFit AK02N培地を添加し、5%CO2雰囲気下、37℃で1時間培養した。培地を廃棄後、StemFit AK02N培地を添加し、5%CO2雰囲気下、37℃で一晩培養した。次に、細胞の回収と細胞懸濁液の調製を以下の方法で行った。
【0055】
シャーレにD-PBS(-)を添加して細胞をリンスしたのち、D-PBS(-)を廃棄する操作を2回繰り返して細胞を洗浄後、CTS TrypLE Select Enzyme(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)とVersene Solution(サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を1:1で混合した剥離溶液を添加して5%CO2雰囲気下、37℃で10分間放置した。細胞が丸く剥がれつつあるのを確認したのち、剥離溶液中にてピペッティングを繰り返すことで細胞を剥離し、50mLチューブ中に回収した。回収した細胞を遠心分離して沈降後、細胞をMACS緩衝液で懸濁し、再度遠心分離して上清を廃棄することで細胞を洗浄した。この細胞洗浄操作を2回繰り返したのち、MACS緩衝液で懸濁し、セルストレーナー(コーニング製、目開き40μm)を用いてろ過することにより、Cell Tracker Orangeで染色した201B7細胞の細胞懸濁液を調製した。得られた201B7細胞液は一部を分取し、10倍希釈して血球計算盤にて細胞密度の算出を行った。以下、この細胞密度を元にして、カラムへのアプライ細胞液量x細胞密度の値から、カラムへ添加する添加細胞数を算出した。
【0056】
(3)K562細胞からの巨核化細胞の誘導、および細胞懸濁液の調製
ヒト慢性骨髄性白血病細胞であるK562細胞(JCRB0019)の培養は、10%FBS(Biological Industries製)と抗生物質溶液(ペニシリン-ストレプトマイシン溶液、富士フイルム和光純薬製)を添加したRPMI 1640培地(富士フイルム和光純薬製)を用い、浮遊培養用シャーレ(住友ベークライト製)に細胞を播種し、5%CO2雰囲気下、37℃で培養した。次にK562細胞の培養シャーレにphorbol 12-myristate13-acetate(以下、PMA)を1nM添加し、さらに3日間培養を継続した。PMAによる刺激の結果、細胞径が10μm前後であったK562細胞が肥大化し、細胞径20μm前後の巨核化細胞が誘導されていることが確認できた(
図1)。次に、巨核化誘導を行った細胞をピペットで50mLチューブ中に回収した。回収した細胞を遠心分離して沈降後、細胞をMACS緩衝液で懸濁し、再度遠心分離して上清を廃棄することで細胞を洗浄した。この細胞洗浄操作を2回繰り返したのち、MACS緩衝液で懸濁し、セルストレーナー(コーニング製、目開き40μm)を用いてろ過することにより、巨核化細胞の細胞懸濁液を調製した。得られた巨核化細胞液は一部を分取し、10倍希釈して血球計算盤にて細胞密度の算出を行った。以下、この細胞密度を元にして、この細胞密度を元にして、カラムへのアプライ細胞液量に細胞密度を乗じた値から、カラムへ添加する添加細胞数を算出した。
【0057】
(4)吸着剤を充填したカラムを用いた巨核化細胞の精製
前記(1)で作製した吸着剤127Q39L/C72Gを0.5mL充填したカラム(以下カラムAと記す。)および1.5mL充填したカラム(以下カラムBと記す。)を垂直に立てた状態で、(2)で調製した201B7細胞懸濁液と(3)で調製した巨核化細胞懸濁液を混合した細胞液を、添加細胞数がカラム当たり201B7細胞:3.6×10^6個、巨核化細胞:2.8×10^6個となるよう、混合細胞液量0.8mLでそれぞれカラム上部に添加した。次に、カラム上部より4.0mLのMACS緩衝液を静かに添加し、針部からの流出液計4.8mLをそれぞれ別容器に回収した(以下これを、流出細胞液A、流出細胞液Bと記載する。)。
(5)201B7細胞と巨核化細胞の細胞回収率の測定
上記操作で得られた、流出細胞液A、流出細胞液Bをそれぞれ2mL分取してセルストレーナー・キャップ付き5mLポリスチレンラウンドチューブ(コーニング製、目開き40μm)へと移し、細胞数計測用内部標準ビーズとしてCountBright Absolute Counting Beads(インビトロゲン製)を50μL、および細胞生死判定試薬として7-AADを50μL添加した後、セルソーターBD FACSAria(ベクトン・ディッキンソン製)にて、201B7細胞と巨核化細胞の細胞回収率の測定を行った。流出細胞液A、流出細胞液Bに含まれる201B7細胞と巨核化細胞の生細胞数はドットプロットで得られた内部標準ビーズの粒子数を元に、PEの波長が陽性の細胞集団を201B7細胞、陰性の細胞集団を巨核化細胞として解析を行い、比例計算により算出した。この201B7細胞と巨核化細胞の生細胞数をそれぞれカラムへのアプライ細胞数(201B7細胞:3.6×10^6個、巨核化細胞:2.8×10^6個)で割ることにより、カラムAとカラムBにおける201B7細胞と巨核化細胞の細胞回収率をそれぞれ算出した。測定の結果、カラムAでは201B7細胞回収率=0.19%、巨核化細胞回収率=26.1%、またカラムBでは201B7細胞回収率=0.09%、巨核化細胞回収率=24.4%であり、201B7細胞が99.8%以上除去されていることが明らかとなった(表1と
図2)。
【0058】
また、流出細胞中の細胞比率(巨核化細胞数÷201B7細胞数)を算出した結果、アプライ細胞=0.8だったのに対し、カラムA=106.2、カラムB=55.2であり(表2と
図3)、カラムからの流出細胞はほぼ全てが巨核化細胞であることが明らかとなった。この結果から、吸着剤127Q39L/C72Gを充填したカラムに 201B7細胞とK562細胞から誘導した巨核化細胞の混合細胞を通液することで、血球系細胞である巨核化細胞のみを精製可能であることが確認できた。
【0059】
比較例1 トヨパールHW-40ECを用いた201B7細胞と巨核化細胞の精製
比較例1は、トヨパールHW-40ECを用いた、「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAc」からなる構造を含む糖鎖を有するヒトiPS細胞201B7株(本発明では201B7細胞と略している)(特許実施許諾契約およびMTA契約を締結後、京都大学CiRAより分譲)と「Fucα1-2Galβ1-3GlcNAcおよび/またはFucα1-2Galβ1-3GalNAc」からなる構造を含む糖鎖を有さないヒト慢性骨髄性白血病細胞であるK562細胞(JCRB0019)から薬剤により誘導化を行った巨核化細胞の細胞混合物からの巨核化細胞の精製に関するものである。
【0060】
吸着剤としてトヨパールHW-40ECを吸着剤容量0.5mLで充填したカラム(以下、カラムCと記す。)を用いた以外は、すべて実施例1と同様の方法で行った。
【0061】
測定の結果、カラムCでは201B7細胞回収率=72.59%、巨核化細胞回収率=47.65%であり(表1と
図2)、また、流出細胞中の細胞比率(巨核化細胞数÷201B7細胞数)を算出した結果、アプライ細胞=0.8だったのに対し、カラムC=0.0であった(表2と
図3)。この結果から、トヨパールHW-40ECを吸着剤として用いた場合は、いずれの細胞も大部分が素通りしてしまうため、血球系細胞の精製が出来ないことが確認された。
【0062】
【0063】