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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151575
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】アミン含有水溶液の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
C02F1/58 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213794
(22)【出願日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2021054340
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木佐貫 紗也佳
(72)【発明者】
【氏名】羅 中力
(72)【発明者】
【氏名】服部 正寛
【テーマコード(参考)】
4D038
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB12
4D038BA02
4D038BB13
4D038BB17
4D038BB18
(57)【要約】
【課題】 アミンを含有する水溶液のアミン濃度を低減するアミン含有水溶液の処理方法を提供する。
【解決手段】 アミンを含有する水溶液に、ジチオカルバミン酸塩、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を、前記金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)中の金属元素に対する前記ジチオカルバミン酸塩のジチオカルバミン基のモル比(当該モル比とは、「金属元素のモル数÷ジチオカルバミン酸基のモル数」のことを表す)が0.25以上0.75未満の範囲で添加した後、pHを7より大きく11より小さい範囲に調整して固形物を除去する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンを含有する水溶液に、ジチオカルバミン酸塩と、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を、前記金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)中の金属元素に対する前記ジチオカルバミン酸塩のジチオカルバミン酸基とのモル比(当該モル比とは、「金属元素のモル数÷ジチオカルバミン酸基のモル数」のことを表す)が0.25以上0.75未満の範囲で添加し、pHを7より大きく11より小さい範囲に調整した後、固形物を除去することを特徴とするアミン含有水溶液の処理方法。
【請求項2】
前記アミンが、エチレンアミン類であることを特徴とする請求項1に記載のアミン含有水溶液の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミンを含有する水溶液から、アミンを除去する処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アミンは、エポキシ樹脂硬化剤、紙力増強剤、めっき用の添加剤、潤滑油添加剤、アスファルト添加剤、界面活性剤などに使用される有用な化学物質である。一方、皮膚腐食性や目に対する重篤な損傷性を有することから2017年に毒物及び劇物取締法における劇物に指定されており、有害な一面も有している。そのため、環境中に放出する場合には、適切な処理が必要である。
【0003】
アミンを含有した排水の処理方法として、この排水を排水処理設備に送り、生物分解による無害物質化、各種の吸着剤による吸着分離や凝集剤を添加して凝集沈殿によって水中から除去する方法が挙げられる。
【0004】
生物分解法は、微生物によりアミンを無害物質化して、アミンを処理する方法である(例えば、特許文献1参照)。しかし、アミンの多くは、生分解性が低い難分解性物質に分類されるため、生物処理によって処理する場合、あらかじめ微生物をアミン排水に長期間順化させた後、実際の排水処理設備に馴化した微生物を使用して処理する必要がある。このため、生物分解法を利用して、安定にアミンを処理するには、長期間を要する。
【0005】
また、アミンを含有する水溶液の処理方法として、活性炭によってアミンを吸着分離する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、アミンの除去率が十分とは言えず、排水のpHが11以上の場合に効果があり、pH11未満の場合では効果が低い。さらに、最後に処理水を中和するために大量の中和剤が必要というデメリットがあり、簡便な処理方法とは言い難い。
【0006】
また、凝集剤共沈効果によるアミンを凝集沈殿する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法では、無機凝集剤、カチオン性高分子凝集剤及びアニオン性高分子凝集剤を用いた多段階の凝集工程が必要であり、簡便な処理方法とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-173985号公報
【特許文献2】特許第2748435号公報
【特許文献3】特開2020-97004公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アミンを含有する水溶液のアミン濃度を低減する、従来技術より簡便な、アミン含有水溶液の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明で示す新規なアミン含有水溶液の処理方法を用いることにより、アミン濃度を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
[1]アミンを含有する水溶液に、ジチオカルバミン酸塩と、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を、前記金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)中の金属元素に対する前記ジチオカルバミン酸塩のジチオカルバミン酸基のモル比(当該モル比とは、「金属元素のモル数÷ジチオカルバミン酸基のモル数」のことを表す)が0.25以上0.75未満の範囲で添加し、pHを7より大きく11より小さい範囲に調整した後、固形物を除去することを特徴とするアミン含有水溶液の処理方法。
[2]前記アミンが、エチレンアミン類であることを特徴とする[1]に記載のアミン含有水溶液の処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来技術より簡便に、アミン含有水溶液中のアミン濃度を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のアミン含有水溶液の処理方法は、アミンを含有する水溶液に、ジチオカルバミン酸塩と、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を、前記金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)中の金属元素に対する前記ジチオカルバミン酸塩のジチオカルバミン酸基のモル比(当該モル比とは、「金属元素のモル数÷ジチオカルバミン酸基のモル数」のことを表す)が0.25以上0.75未満の範囲で添加し、pHを7より大きく11より小さい範囲に調整した後、固形物を除去することを特徴とする。
【0014】
アミン含有水溶液に包含されるアミンについては、特に限定するものではないが、エチレンアミン類であることが好ましく、当該エチレンアミン類としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレンジアミン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、N-アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、又はペンタエチレンヘキサミン等が挙げられ、これらのうち、ジエチレントリアミンが好ましい。
【0015】
アミン含有水溶液に添加されるジチオカルバミン酸塩としては、分子内にジチオカルバミル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物またはアンモニウムとの反応生成物が挙げられる。アミン化合物(前記アミンとは異なる)としては、具体的には、ジエチルアミン、ピロリジン、ピペラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、及びヘプタエチレンオクタミン等が挙げられ、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を2つ以上有するアミン化合物がより好ましい。
【0016】
ジチオカルバミン酸塩としては、これらのうち、アミンの処理性能や化合物の安定性の点で、ピロリジン、ピペラジン、テトラエチレンペンタミンまたはジエチレンアミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物が好ましい。ただし、テトラエチレンペンタミンのジチオカルバミン酸塩は、その原料であるテトラエチレンペンタミンが、主成分のリニア体[下記式(1)参照]以外に類縁体[下記式(2)~(4)参照]を含む組成物のみが工業的に製造されているため、得られるジチオカルバミン酸塩も組成物となり、品質管理上煩雑になる欠点がある。一方、ピペラジンまたはジエチレンアミンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物との反応生成物はこのような欠点がなく、より好ましい。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
【0021】
ジチオカルバミン酸塩の調製に使用するアルカリ金属水酸化物としては、入手が容易な点で、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが特に好ましい。
【0022】
ジチオカルバミン酸塩の調製に使用するアンモニウムとしては、入手容易な点、取り扱い容易な点でアンモニウム水溶液が特に好ましい。
【0023】
前記のジチオカルバミン酸塩としては、ピペラジン-N,N’-ビスジチオカルバミン酸ナトリウム、又はピペラジン-N,N’-ビスジチオカルバミン酸カリウムであることが好ましく、ピペラジン-N,N’-ビスジチオカルバミン酸カリウムであることがより好ましい。
【0024】
前記ジチオカルバミン酸塩の添加量は、前記アミン1モルに対して、0.1~10モルの範囲が好ましく、0.2~8モルの範囲がより好ましく、0.5~3モルの範囲がより好ましい。
【0025】
アミン含有水溶液に添加されるアルミニウムの塩としては、ジチオカルバミン酸塩を除き特に限定されることはないが、例えば、フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、水素化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、炭酸水素アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ピロリン酸アルミニウム、次亜塩素酸アルミニウム、塩素酸アルミニウム、臭素酸アルミニウム、ヨウ素酸アルミニウムが挙げられる。これらのうち、入手容易な点からポリ塩化アルミニウムが好ましい。
【0026】
アミン含有水溶液に添加される鉄の塩としては、鉄(II)または鉄(III)であればジチオカルバミン酸塩を除き特に限定されることはないが、例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(II)、硝酸鉄(III)、硫化鉄(II)、ヘキサシアニド鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアニド鉄(III)酸カリウムが挙げられる。これらのうち、入手容易な点から塩化鉄(III)が好ましい。
【0027】
前記のアルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)としては、アミンの処理性能の点で、ポリ塩化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、及び硫酸鉄(III)からなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0028】
前記金属塩の添加量は、前記アミン1モルに対して、前記金属塩中の金属元素の量が0.1~10モルとなる範囲が好ましく、0.2~8モルとなる範囲がより好ましく、0.5~3モルとなる範囲がより好ましい。
【0029】
アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)中の金属元素に対するジチオカルバミン酸塩のジチオカルバミン酸基のモル比(当該モル比とは、「金属元素のモル数÷ジチオカルバミン酸基のモル数」のことを表す)は、0.25以上0.75未満であり、0.3以上0.7以下であることが好ましく、0.4以上0.6以下であることがより好ましい。すなわち、前記の金属塩の金属元素の添加量は、前記のジチオカルバミン酸塩1モルに対して、金属塩の金属元素の量が0.25モル以上0.75モル未満であり、0.3モル以上0.7モル以下であることが好ましく、0.4モル以上0.6モル以下であることがより好ましい。
【0030】
アミン含有水溶液に、ジチオカルバミン酸塩、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を添加する順番としては特に限定されない。例えば、最初にジチオカルバミ酸塩を添加し、次にアルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を添加する方法、最初にアルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を添加し、次にジチオカルバミン酸塩を添加する方法、ジチオカルバミン酸塩と、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)とを同時に添加する方法等が挙げられる。
【0031】
ジチオカルバミン酸塩と、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を添加した後、アミン含有水溶液のpHを7より大きく11より小さい範囲に調整する。pHの調整方法は、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)とジチオカルバミン酸塩が添加された後のアミン含有水溶液のpHが11以上の場合には、該水溶液に硫酸や塩酸などの無機酸を添加することにより、pHを7より大きく11より小さい範囲に調整することができる。また、例えば、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)とジチオカルバミ酸塩が添加された後のアミン含有水溶液のpHが7以下の場合には、該水溶液に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加することにより、pHを7より大きく11より小さい範囲に調整することができる。
【0032】
ジチオカルバミン酸塩と、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を添加したアミン含有水溶液のpHを7より大きく11より小さい範囲に調整した後に、固形物が析出する。この固形物には、アミン(または、その反応生成物)が含まれており、固形物が除去されることで、アミン含有水溶液中のアミン含有量(濃度)を低減することができる。アミン含有水溶液から、固形物を除去する方法としては特に限定されず、例えば、ろ過、遠心分離、及び固形物を沈降させた後、上澄み液と分離する方法等が挙げられる。
【0033】
以上説明した本発明の処理方法によれば、アミン含有水溶液にジチオカルバミ酸塩と、アルミニウムまたは鉄の群から選ばれる少なくとも一種の金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)を、前記金属塩(ジチオカルバミン酸塩を除く)中の金属元素に対する前記ジチオカルバミン酸塩のジチオカルバミン酸基のモル比(当該モル比とは、「金属元素のモル数÷ジチオカルバミン酸基のモル数」のことを表す)が0.25以上0.75未満の範囲で添加してpHを7より大きく11より小さい範囲に調整することによって、該水溶液中のアミン(または、その反応生成物)を含む固形物が析出する。このため、この固形物を除去すれば、アミン含有水溶液中のアミン含有量(濃度)を低減することができる。この方法は、従来の処理方法と比較して簡便な方法であり、アミンを含む工場排水などの処理方法として有用である。
【0034】
なお、前記のpHについては、アミンの処理性能の点で、7.5~10.5であることが好ましく、8~10であることがより好ましい。
【実施例0035】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0036】
(キレート剤Aの調製)
ピペラジン(東ソー製)112gと純水386gを混合した後、25℃で、窒素気流中で攪拌しながら48重量%水酸化カリウム306g(キシダ化学社製)と二硫化炭素196g(キシダ化学社製)をそれぞれ4分割して交互に滴下した。1時間攪拌し、下記式(5)に示す化合物40重量%を含む水溶液を得た。
【0037】
【化5】
【0038】
N,N―ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(富士フィルム和光純薬社製)。表中、「キレート剤B」とも称す。
【0039】
(キレート剤Cの調製)
テトラエチレンペンタミン(東ソー社製)159gと純水331gを混合した後、25℃で、窒素気流中で攪拌しながら48重量%水酸化ナトリウム281g(キシダ化学社製)と二硫化炭素230g(キシダ化学社製)をそれぞれ4分割して交互に滴下した。1時間攪拌し、化学式(6)に示す化合物40重量%を含む水溶液を得た。
【0040】
【化6】
【0041】
(ジチオカルバミン酸塩と併用する金属塩)
ジチオカルバミン酸塩と併用する金属塩として、以下を使用した。
【0042】
ポリ塩化アルミニウム(キシダ化学社製)。表中、「AlCl」とも称す。
【0043】
硫酸アルミニウム(キシダ化学社製)。表中、「Al(SO4)」とも称す。
【0044】
塩化鉄(III)溶液(キシダ化学社製)。表中、「FeCl」とも称す。
【0045】
硫酸鉄(II)七水和物(富士フィルム和光純薬社製)。表中、「FeSO」とも称す。
【0046】
硫酸鉄(III)n水和物(富士フィルム和光純薬社製)。表中、「Fe(SO」とも称す。
【0047】
(アミン)
アミンとしてジエチレントリアミン(東ソー製)(以下、DETAという)を使用した。
【0048】
(分析方法)
水溶液中のジエチレントリアミン濃度は、核磁気共鳴分光法(JEOL RESONANCE社製 JMTC-400/54/JJ/YH)を分析装置として、tert-ブチルアルコール(キシダ化学社製)を内部標準として測定した。
【0049】
実施例1
300mLビーカーに、DETAを36g/L含む水溶液100mL(アミンとして36mmol添加)を加えた後、ポリ塩化アルミニウム(Al=47.75g/L)の水溶液40mL(Alとして71mmol添加)、キレート剤A(ジチオカルバミン酸塩=400g/L)の水溶液56mL(ジチオカルバミン酸塩として71mmol、ジチオカルバミン酸基として142mmol)を加え、1M水酸化ナトリウムでpH9に調整した後、全量が200mLになるまで純水を加えた。
【0050】
1時間の撹拌終了後、1時間静置し、メンブレンフィルター(アドバンテック社製 定性ろ紙No.2、孔径5μm)で水溶液をろ別し、処理後の水溶液のDETA濃度を測定した。
【0051】
アミン除去率(%)は、下式を用いて計算した。
【0052】
アミン除去率=(1-処理後のアミン濃度/処理前のアミン濃度)×100(%)
結果を以下の表1に示す。
【0053】
実施例2~8、比較例1~7
添加する薬剤を表1又は2に示す条件に調整する以外、実施例1と同様にして、アミン除去率を評価した。これらの結果を表1又は2に併せて示す。









































【0054】
【表1】
【0055】
実施例1~6は、金属塩とキレート剤Aを使用した例であり、アミン除去率は80%以上と処理後のアミン濃度を低減することができた。
【0056】
実施例7は、金属塩とキレート剤Bを使用した例であり、アミン除去率は86%と処理後のアミン濃度を低減することができた。
【0057】
実施例8は、金属塩とキレート剤Cを使用した例であり、アミン除去率は82%と処理後のアミン濃度を低減することができた。





















【0058】
【表2】
【0059】
比較例1は、キレート剤A単独で処理した例である。アミン除去率は5%と除去効果はほとんど確認されなかった。
【0060】
比較例2~3は、キレート剤Aを用いず、金属塩単独で処理した例である。アミン除去率は24~26%と除去効果はほとんど確認されなかった。
【0061】
比較例4~5は、処理pHを本発明の範囲外に変更して処理した例である。アミン除去率は2~40%と除去効果はほとんど確認されなかった。
【0062】
比較例6~7は、金属塩とキレート剤Aのモル比(当該モル比とは、「金属元素のモル数÷ジチオカルバミン酸基のモル数」のことを表す)を本発明の範囲外に変更して処理した例である。アミン除去率は28~45%であり、実施例1~3と比較して、アミン濃度の低減が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のアミン含有水溶液の処理方法によれば、アミン濃度を低減できるため、化学工場、めっき工場、製紙工場などからのアミン含有排水の処理方法として有用である。