IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特開2022-15172311-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物、並びにそれからの11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物、トリエナール化合物及びジエナール化合物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151723
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物、並びにそれからの11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物、トリエナール化合物及びジエナール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/54 20060101AFI20220929BHJP
   C07C 43/303 20060101ALI20220929BHJP
   C07C 47/21 20060101ALI20220929BHJP
   C07C 45/42 20060101ALI20220929BHJP
   C07C 41/50 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C07F9/54
C07C43/303
C07C47/21
C07C45/42
C07C41/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039698
(22)【出願日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021048537
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】金生 剛
(72)【発明者】
【氏名】長江 祐輔
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC43
4H006AC45
4H006BB21
4H006BB25
4H006GP01
4H050AA02
4H050AB84
4H050BE61
4H050WA11
4H050WA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、Citrus leafminerの性フェロモン2成分それぞれを共通の合成中間体から、短工程で効率的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、下記一般式(1-Z)で表される(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物と、下記一般式(2)で表されるホスフィン化合物とのホスホニウム塩形成反応により、下記一般式(3-Z)で表される(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物を得る工程を少なくとも含む、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の製造方法を提供する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1-Z):
【化1】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10の二価の炭化水素基を表す。)
で表される(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物と、下記一般式(2):
PAr (2)
(式中、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。)
で表されるホスフィン化合物とのホスホニウム塩形成反応により、下記一般式(3-Z):
【化2】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、Ar、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物を得る工程
を少なくとも含む、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の製造方法と、
前記(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、
前記反応生成物混合物と、下記式(5):
【化3】
で表される(2E)-2-ペンテナールとをウィッティヒ反応条件に付して、下記一般式(6):
【化4】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物を得る工程と
を少なくとも含む、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の製造方法と、
前記(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の加水分解反応により、下記式(7):
【化5】
で表される(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールを得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の製造方法と、
前記(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、
前記反応生成物混合物と、下記式(8):
CH(CHCHO (8)
で表されるペンタナールとをウィッティヒ反応条件に付して、下記一般式(9):
【化6】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物を得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の製造方法と、
前記(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の加水分解反応により、下記式(10):
【化7】
で表される(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールを得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の製造方法と、
前記(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、
前記反応生成物混合物と、下記式(5):
【化8】
で表される(2E)-2-ペンテナール及び下記式(8):
CH(CHCHO (8)
で表されるペンタナールとをウィッティヒ反応条件に付して、夫々、下記一般式(6):
【化9】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物及び下記一般式(9):
【化10】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物を含有する混合物を得る工程と
を少なくとも含む、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造方法と、
前記(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物を加水分解反応条件に付して、夫々、下記式(7):
【化11】
で表される(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール及び下記式(10):
【化12】
で表される(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールを含有する混合物を得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)を含有する混合物の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(3-Z):
【化13】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表し、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10の二価の炭化水素基を表す)
で表される(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、
前記反応生成物混合物と、下記式(5):
【化14】
で表される(2E)-2-ペンテナールとをウィッティヒ反応条件に付して、下記一般式(6):
【化15】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物を得る工程と
を少なくとも含む、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の製造方法と、
前記(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の加水分解反応により、下記式(7):
【化16】
で表される(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールを得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)の製造方法。
【請求項10】
下記一般式(3-Z):
【化17】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表し、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10の二価の炭化水素基を表す)
で表される(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下での脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、
前記反応生成物混合物と、下記式(8):
CH(CHCHO (8)
で表されるペンタナールとをウィッティヒ反応条件に付して、下記一般式(9):
【化18】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物を得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の製造方法と、
前記(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の加水分解反応により、下記式(10):
【化19】
で表される(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールを得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)の製造方法。
【請求項12】
下記一般式(3-Z):
【化20】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表し、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10の二価の炭化水素基を表す)
で表される(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、
前記反応生成物混合物と、下記式(5):
【化21】
で表される(2E)-2-ペンテナール及び下記式(8):
CH(CHCHO (8)
で表されるペンタナールとをウィッティヒ反応条件に付して、夫々、下記一般式(6):
【化22】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物及び下記一般式(9):
【化23】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物を含有する混合物を得る工程と
を少なくとも含む、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造方法と、
前記(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物を加水分解反応条件に付して、夫々、下記式(7):
【化24】
で表される(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール及び下記式(10):
【化25】
で表される(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールを含有する混合物を得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)を含有する混合物の製造方法。
【請求項14】
下記一般式(A):
L(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (A)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10の二価の炭化水素基を表し、並びにLは、X又はYArを表し、X及びYはハロゲン原子を表し、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。)
で表される化合物。
【請求項15】
請求項14に記載の化合物であって、下記一般式(1):
(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (1)
で表される11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物。
【請求項16】
請求項14に記載の化合物であって、下記一般式(3):
Ar(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (3)
で表される11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物、並びにそれからの11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物、トリエナール化合物及びジエナール化合物の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物、並びにそれからのトリエナール化合物及びジエナール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Citrus leafminer(Phyllocnistis citrella)は、米国、ブラジル及びアルゼンチン等の北中南米、スペイン及びイタリア等の地中海沿岸、日本、台湾、インドネシア、フィリピン及びインド等のアジア、オーストラリア等のオセアニア、サウジアラビア等の中東諸国、並びにチュニジア及び南アフリカ等のアフリカに広く分布する柑橘類の重要害虫である。Citrus leafminerは葉に寄生して加害するため幼木及び苗木の発育に大きな影響を及ぼし、また、その食害痕はかいよう病(Citrus canker)の発生を促すため防除が重要である。さらに、Citrus leafminerは葉肉内に侵入するため、通常の殺虫剤散布では殺虫剤が内部まで届かずその防除は困難である。また、残留農薬の懸念により、生物学的防除方法が注目されつつあり、その一つとして性フェロモン物質の利用が期待されている。
【0004】
Citrus leafminerの性フェロモン組成物は炭素数16のアルデヒドであり、並びに日本を除く地域では(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールと(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールとの3:1混合物であること(下記の非特許文献1及び2)、及び日本のみ(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール単独であること(下記の非特許文献3)が報告されている。
【0005】
(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールの製造方法としては、例えば、2-(5-ブロモペンチル)-1,3-ジオキサンを出発原料とし、該2-(5-ブロモペンチル)-1,3-ジオキサンをアセトン中でヨウ化ナトリウムによりヨウ素化させることにより、2-(5-ヨードペンチル)-1,3-ジオキサンを合成する。次に、該得られた2-(5-ヨードペンチル)-1,3-ジオキサンをヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)及びテトラヒドロフラン(THF)中で(5-クロロ-1-ペンチン-1-イル)リチウムとカップリング反応させることにより、2-(10-クロロ-6-デシル-1-イル)-1,3-ジオキサンを合成する。次に、該得られた2-(10-クロロ-6-デシル-1-イル)-1,3-ジオキサンをHMPA中で酢酸カリウムと反応させることにより、10-(1,3-ジオキサン-2-イル)-4-デシニル=アセテートを合成する。続いて、該得られた10-(1,3-ジオキサン-2-イル)-4-デシニル=アセテートを5%パラジウム-硫酸バリウムを触媒とし且つキノリンを触媒毒として、水素添加反応にて炭素-炭素三重結合を炭素-炭素二重結合へ還元して、(4Z)-10-(1,3-ジオキサン-2-イル)-4-デセニル=アセテートを合成する。次に、該得られた(4Z)-10-(1,3-ジオキサン-2-イル)-4-デセニル=アセテートをメタノール中、水酸化カリウム水溶液で加水分解反応させることにより、(4Z)-10-(1,3-ジオキサン-2-イル)-4-デセン-1-オールを合成する。該得られた(4Z)-10-(1,3-ジオキサン-2-イル)-4-デセン-1-オールをジクロロメタン中、二クロム酸ピリジニウム(PDC)で水酸基を酸化することにより、(4Z)-10-(1,3-ジオキサン-2-イル)-4-デセナールを合成する。該得られた(4Z)-10-(1,3-ジオキサン-2-イル)-4-デセナールをTHF及びHMPA中、別途調製したトリフェニルホスホニウム=(2E)-2-ペンテニリドとウィッティヒ反応(Wittig反応)させることにより、2-(6Z,10Z,12E)-6,10,12-ペンタデカトリエン-1-イル-1,3-ジオキサンを合成する。続いて、該得られた2-(6Z,10Z,12E)-6,10,12-ペンタデカトリエン-1-イル-1,3-ジオキサンをp-トルエンスルホン酸の存在下、メタノールと反応させることにより、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエンを合成する。最後に、該得られた(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエンをTHF中、塩酸で加水分解する方法が報告されている(下記の非特許文献1)。
【0006】
また、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールの別の製造方法としては、3-ブロモ-1-プロパノールを出発原料とし、該3-ブロモ-1-プロパノール中の水酸基を保護することにより、1-ブロモ-3-(tert-ブチルジメチルシロキシ)プロパンを合成する。次に、別途合成したテトラヒドロ-2-(7-オクチン-1-イルオキシ)-2H-ピランをTHF中でn-ブチルリチウムと反応させ、続いてTHF,N’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)混合溶液中で上記1-ブロモ-3-(tert-ブチルジメチルシロキシ)プロパンと反応させることにより1-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-11-(テトラヒドロピラニルオキシ)-4-ウンデシンを合成する。該得られた1-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-11-(テトラヒドロピラニルオキシ)-4-ウンデシンのtert-ブチルジメチルシリル基をTHF中、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)で外し、ホウ化ニッケル(P-2Ni)を触媒として、水素添加反応にて炭素-炭素三重結合を炭素-炭素二重結合へ還元して(4Z)-11-(テトラヒドロピラニルオキシ)-4-ウンデセン-1-オールを合成する。該得られた(4Z)-11-(テトラヒドロピラニルオキシ)-4-ウンデセン-1-オールの水酸基をTHF中、イミダゾール、トリフェニルホスフィン(TPP)の存在下、ヨウ素でヨウ素化し、続いてトルエン中でTPPと反応させることにより、(4Z)-11-(テトラヒドロピラニルオキシ)-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージドを合成する。該得られた(4Z)-11-(テトラヒドロピラニルオキシ)-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージドをDMPU中、n-ブチルリチウムと反応させ、その後、(2E)-2-ペンテナールとウィッティッヒ反応することにより(7Z,11Z,13E)-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)-ヘキサデカトリエンを合成する。該得られた(7Z,11Z,13E)-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)-ヘキサデカトリエンをp-トルエンスルホン酸の存在下、メタノールと反応させることにより、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエノールを合成する。最後に、該得られた(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエノールの水酸基をクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)で酸化する方法が報告されている(下記の非特許文献2)。
【0007】
次に、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールの製造方法としては、例えば、1,3-ジブロモプロパンを出発原料とし、該1,3-ジブロモプロパンをTHF中で[2-(1,3-ジオキサン-2-イル)エチル]マグネシウム=ブロミドとカップリング反応させることにより、2-(5-ブロモペンチル)-1,3-ジオキサンを合成する。次に、該得られた2-(5-ブロモペンチル)-1,3-ジオキサンをHMPA及びTHF中でリチウムアセチリドと反応させることにより、2-(6-ヘプチン-1-イル)-1,3-ジオキサンを合成する。次に、該得られた2-(6-ヘプチン-1-イル)-1,3-ジオキサンをTHF中でn-ブチルリチウムと反応させ、その後、HMPA中で(3Z)-1-ブロモ-3-オクテンとカップリング反応させることにより、2-[(11Z)-11-ヘキサデセン-7-イニルオキシ]テトラヒドロ-2H-ピランを合成する。続いて、該得られた2-[(11Z)-11-ヘキサデセン-7-イニルオキシ]テトラヒドロ-2H-ピランを5%パラジウム-硫酸バリウムを触媒とし且つキノリンを触媒毒として、水素添加反応にて炭素-炭素三重結合を炭素-炭素二重結合へ還元して2-[(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエン-1-イルオキシ]テトラヒドロ-2H-ピランを合成する。該得られた2-[(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエン-1-イルオキシ]テトラヒドロ-2H-ピランをp-トルエンスルホン酸の存在下、メタノールと反応させることにより、(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエンを合成する。最後に、該得られた(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエンをTHF中、塩酸で加水分解する方法が報告されている(下記の非特許文献1)。
【0008】
また、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールの上記とは別の製造方法として、テトラヒドロ-2-(7-オクチン-1-イルオキシ)-2H-ピランを出発原料とし、該テトラヒドロ-2-(7-オクチン-1-イルオキシ)-2H-ピランをTHF中でn-ブチルリチウムと反応させ、続いて1-クロロ-3-ヨードプロパンと反応させることにより、2-[(11-クロロ-7-ウンデシン-1-イル)オキシ]テトラヒドロ-2H-ピランを合成する。該得られた2-[(11-クロロ-7-ウンデシン-1-イル)オキシ]テトラヒドロ-2H-ピランをアセトン中、ヨウ化ナトリウムでヨウ素化させることにより、2-[(11-ヨード-7-ウンデシン-1-イル)オキシ]テトラヒドロ-2H-ピランを合成する。続いて、該得られた2-[(11-ヨード-7-ウンデシン-1-イル)オキシ]テトラヒドロ-2H-ピランをトルエン中でTPPと反応させることにより、11-(テトラヒドロピラニルオキシ)-4-ウンデシニルトリフェニルホスホニウム=ヨージドを合成する。次に、該得られた11-(テトラヒドロピラニルオキシ)-4-ウンデシニルトリフェニルホスホニウム=ヨージドをDMPU中、n-ブチルリチウムと反応させ、その後、ペンタナールとウィッティッヒ反応することにより、(11Z)-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)-ヘキサデセン-7-インを合成する。該得られた(11Z)-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)-ヘキサデセン-7-インをp-トルエンスルホン酸の存在下、メタノールと反応させることにより、(11Z)-11-ヘキサデセン-7-イン-1-オールを合成する。該得られた(11Z)-11-ヘキサデセン-7-イン-1-オール中の炭素-炭素三重結合を、触媒としてのホウ化ニッケル(P-2Ni)の存在下、水素添加反応にて炭素-炭素二重結合へ還元して(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエノールを合成する。最後に、該得られた(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエノールの水酸基をジクロロメタン中クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)によって酸化する方法が報告されている(下記の非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Walter S. Leal et al,2006,J.Chem.Ecol.,32(1):155-168.
【非特許文献2】Jocelyn G. Millar et al,2006,J.Chem.Ecol.,32(1):169-194.
【非特許文献3】T. Ando,J.Pestic.Sci.,30(4),2005,361-367.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、非特許文献1において報告されている(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールのいずれの製造方法においても、発ガン性物質であるヘキサメチルリン酸トリアミドを溶媒として大量に用いているため工業化が難しい。また、非特許文献1で使用しているn-ブチルリチウムは、空気又は水に敏感で空気にさらすと発火することがあるため、取扱いが難しい。さらに、高価なパラジウム触媒を用いた水素添加反応を行っているため経済的に有利でない上に、触媒毒として用いているキノリンは、近年、人体に影響がある化学物質と考えられているため工業的使用は難しい。加えて、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールの製造方法においては、環境負荷の極めて大きいクロム化合物であるPDCを用いた酸化反応を用いている上に、当該酸化反応は爆発の危険を伴うことが多いことから、工業スケールでの実施が難しい。さらに、当該合成方法は、総収率も14%と極めて低く、9工程と工程数が非常に長い。また、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールの製造方法においても、総収率が15%と極めて低い上に、6工程と工程数が長い。
【0011】
非特許文献2において報告されている(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールいずれの製造方法においても、空気又は水に敏感で空気にさらすと発火することがあり取扱いが難しいn-ブチルリチウムを使用していること、環境負荷の極めて大きいクロム化合物であるPCCを用いた酸化反応を用いていること、さらに当該酸化反応は爆発の危険を伴うことが多いことから、工業スケールでの実施が難しい。加えて、環境負荷の大きいジクロロメタンを溶媒として使用しているため環境の観点から望ましくない。また、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールの製造方法においては、総収率が7%と極めて低い上に、9工程と工程数が非常に長い。また、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールの製造方法においても、総収率が22%と低い上に、7工程と工程数が長い。
【0012】
加えて、非特許文献1及び2で報告されている(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールのいずれの製造方法においても、共通の合成中間体がなく、それぞれの化合物を別々に合成しなければならないため、経済的にCitrus leafminerの性フェロモン2成分を製造するという観点から望ましくない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、Citrus leafminerの性フェロモン2成分それぞれを共通の合成中間体から、短工程で効率的に製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物が、Citrus leafminerの性フェロモン2成分である(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールの製造において有用な共通の合成中間体であることを見出した。そして、該(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物から、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールを短工程で収率良く製造できることを見出し、本発明を為すに至った。
【0015】
本発明者らはまた、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物が、上記性フェロモン2成分についての共通の合成中間体である(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物の製造において有用な合成中間体であることをさらに見出し、本発明を為すに至った。
【0016】
本発明の第1の態様によれば、下記一般式(1-Z):
【化1】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10の二価の炭化水素基を表す。)
で表される(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物と、下記一般式(2):
PAr (2)
(式中、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。)
で表されるホスフィン化合物とのホスホニウム塩形成反応により、下記一般式(3-Z):
【化2】
(式中、Yはハロゲン原子を表し、Ar、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物を得る工程
を少なくとも含む、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、ここで、該(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)は、該(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)についての上記第1の態様に従う製造方法に従って製造されたものであってもよく、又は別の製造方法によって製造されたものであってもよい、
該反応生成物混合物と、下記式(5):
【化3】
で表される(2E)-2-ペンテナールとをウィッティヒ反応条件に付して、下記一般式(6):
【化4】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物を得る工程と
を少なくとも含む、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、
上記(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の上記製造方法と、
該(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の加水分解反応により、下記式(7):
【化5】
で表される(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールを得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の第4の態様によれば、
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を、塩基の存在下での脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、ここで、該(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)は、該(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)についての上記第1の態様に従う製造方法に従って製造されたものであってもよく、又は別の製造方法によって製造されたものであってもよい、
該反応生成物混合物と、下記式(8):
CH(CHCHO (8)
で表されるペンタナールとをウィッティヒ反応条件に付して、下記一般式(9):
【化6】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物を得る工程と
を少なくとも含む、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の第5の態様によれば、
上記(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の上記製造方法と、
該(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の加水分解反応により、下記式(10):
【化7】
で表される(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールを得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の第6の態様によれば、
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る工程と、ここで、該(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)は、該(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)についての上記第1の態様に従う製造方法に従って製造されたものであってもよく、又は別の製造方法によって製造されたものであってもよい、
該反応生成物混合物と、下記式(5):
【化8】
で表される(2E)-2-ペンテナール及び下記式(8):
CH(CHCHO (8)
で表されるペンタナールとをウィッティヒ反応条件に付して、夫々、下記一般式(6):
【化9】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物及び下記一般式(9):
【化10】
(式中、R及びRは、上記で定義した通りである。)
で表される(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物を含有する混合物を得る工程と
を少なくとも含む、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の第7の態様によれば、
上記(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の上記製造方法と、
該(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物を加水分解反応条件に付して、夫々、下記式(7):
【化11】
で表される(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール及び下記式(10):
【化12】
で表される(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナールを含有する混合物を得る工程と
を少なくとも含む、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)を含有する混合物の製造方法が提供される。
【0023】
本発明の第8の態様によれば、下記一般式(A):
L(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (A)
(式中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10の二価の炭化水素基を表し、並びにLは、X又はYArを表し、X及びYはハロゲン原子を表し、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。)
で表される化合物が提供される。
ここで、該化合物は、LがXである場合には、下記一般式(1):
(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (1)
で表される11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物であり、及び
LがYArである場合には、下記一般式(3):
Ar(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (3)
で表される11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)、又はそれらの混合物を短工程で収率良く製造できる。また、本発明によれば、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)の製造において有用な合成中間体である11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1)及び11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3)も提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.一般式(A)で表される化合物について
下記の一般式(A):
L(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (A)
で表される化合物について、以下に説明する。
上記一般式(A)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10の二価の炭化水素基を表し、並びにLは、X又はYArを表し、X及びYはハロゲン原子を表し、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。
化合物(A)においてLがXである場合、該化合物(A)は、下記一般式(1)で表される11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物である。
(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (1)
化合物(A)においてLがYArである場合、該化合物(A)は、下記一般式(3)で表される11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物である。
Ar(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (3)
【0026】
(A-1).11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1)及びその製造方法について
まず、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1)について説明する。
(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (1)
は、上記一般式(A)で定義された通り、ハロゲン原子を表す。具体的には、ハロゲン原子Xとして、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、取扱いの観点から塩素原子及び臭素原子が好ましい。
【0027】
上記一般式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4の一価の炭化水素基、又はRとRが互いに結合したR-Rとして炭素数2~10、好ましくは炭素数2~4の二価の炭化水素基を表す。
【0028】
一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基及びn-ドデシル基等の直鎖状の飽和炭化水素基;イソプロピル基、2-イソブチル基及び2-メチルブチル基等の分岐状の飽和炭化水素基;2-プロペニル基等の直鎖状の不飽和炭化水素基;2-メチル-2-プロペニル基等の分岐状の不飽和炭化水素基;並びに、シクロプロピル基等の環状の飽和炭化水素基等が挙げられ、これらと異性体の関係にある炭化水素基であってもよい。また、これらの炭化水素基の水素原子中の一部がメチル基又はエチル基等で置換されていてもよい。
一価の炭化水素基としては、取扱いの観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基及びn-ブチル基が好ましい。
【0029】
二価の炭化水素基としては、エチレン基、1,3-プロピレン基及び1,4-ブチレン基等の直鎖状の飽和炭化水素基;1,2-プロピレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、2,3-ブチレン基及び2,3-ジメチル-2,3-ブチレン基等の分岐状の飽和炭化水素基;1-ビニルエチレン基等の直鎖状の不飽和炭化水素基;2-メチレン-1,3-プロピレン基等の分岐状の不飽和炭化水素基;並びに、1,2-シクロプロピレン基及び1,2-シクロブチレン基等の環状炭化水素基等が挙げられ、これらと異性体の関係にある炭化水素基であってもよい。また、これらの炭化水素基の水素原子中の一部がメチル基又はエチル基等で置換されていてもよい。
二価の炭化水素基としては、脱保護における反応性、精製の容易さ、又は入手の容易さを考慮すると、反応性が高く、脱保護により生成する副生物が水洗又は濃縮によって容易に除去可能な低級(好ましくは炭素数2~4)の炭化水素基が好ましい。
これらを考慮すると、二価の炭化水素基の特に好ましい例としては、エチレン基、1,3-プロピレン基、1,2-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基及び2,3-ジメチル-2,3-ブチレン基等が挙げられる。
【0030】
11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1)は、一般式(1-Z)で表される(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物、及び一般式(1-E)で表される(7E)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物を包含する。
【0031】
(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
(7Z)-11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデセン及び(7Z)-11-クロロ-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデセン等の(7Z)-11-クロロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―Z:X=Cl);
(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデセン及び(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデセン等の(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―Z:X=Br);並びに、
(7Z)-11-ヨード-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ヨード-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ヨード-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ヨード-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ヨード-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ヨード-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ヨード-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ヨード-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデセン、(7Z)-11-ヨード-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデセン及び(7Z)-11-ヨード-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデセン等の(7Z)-11-ヨード-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―Z:X=I)。
【0032】
(7E)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-E)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
(7E)-11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-クロロ-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-クロロ-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-クロロ-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-クロロ-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-クロロ-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-クロロ-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-クロロ-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデセン及び(7E)-11-クロロ-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデセン等の(7E)-11-クロロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―E:X=Cl);
(7E)-11-ブロモ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ブロモ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ブロモ-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ブロモ-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ブロモ-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ブロモ-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ブロモ-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ブロモ-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ブロモ-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデセン及び(7E)-11-ブロモ-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデセン等の(7E)-11-ブロモ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―E:X=Br);並びに、
(7E)-11-ヨード-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ヨード-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ヨード-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ヨード-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ヨード-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ヨード-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ヨード-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ヨード-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデセン、(7E)-11-ヨード-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデセン及び(7E)-11-ヨード-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデセン等の(7E)-11-ヨード-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―E:X=I)。
【0033】
Citrus leafminerの性フェロモンを製造するという観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1)として、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)が好ましく、特には(7Z)-11-クロロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―Z:X=Cl)、(7Z)-11-ブロモ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―Z:X=Br)及び(7Z)-11-ヨード-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1―Z:X=I)が好ましい。
【0034】
以下、本明細書において、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)を用いてその製造方法を説明するが、(7E)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-E)においても(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)と同様に反応が進行し、対応する化合物を製造することができる。
【0035】
(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)は、例えば、下記の3つの工程を少なくとも含む反応式に従って合成されることができる。
【化13】
【0036】
上記反応式の式中、R、R及びXは上記一般式(1)で定義した通りであり、X及びXはハロゲン原子を表す。また、Mは、Li又はMgZを表し、Zはハロゲン原子又は6,6-ジアルコキシヘキシル基を表す。
【0037】
まず、一般式(14)で表される6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物を溶媒中、マグネシウム又はリチウムと反応させることにより、一般式(15)で表される6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬を調製する(第1の工程)。そして、該得られた6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)を必要に応じて触媒の存在下、一般式(16)で表される1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物とカップリング反応させて、一般式(17)で表される11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物を調製する(第2の工程)。そして、該得られた11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)の炭素-炭素三重結合を還元して、目的物である(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)を得る(第3の工程)。
以下に、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)の上記の合成方法について、さらに詳述する。
【0038】
6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)について、以下に説明する。
上記一般式(14)におけるR及びRは、上記一般式(1)で定義した通りである。
上記一般式(14)におけるXは、ハロゲン原子を表す。具体的には、ハロゲン原子Xとして、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、反応性の観点から塩素原子及び臭素原子が好ましい。
6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
6-クロロ-1,1-ジメトキシヘキサン、6-クロロ-1,1-ジエトキシヘキサン、6-クロロ-1,1-ジプロピルオキシ-ヘキサン、6-クロロ-1,1-ジブチルオキシ-ヘキサン、6-クロロ-1,1-ジペンチルオキシ-ヘキサン、6-クロロ-1,1-ジヘキシルオキシ-ヘキサン、6-クロロ-1,1-ジヘプチルオキシ-ヘキサン、6-クロロ-1,1-ジオクチルオキシ-ヘキサン、6-クロロ-1,1-ジノニルオキシ-ヘキサン及び6-クロロ-1,1-ジデシルオキシ-ヘキサン等の6-クロロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14:X=Cl);
6-ブロモ-1,1-ジメトキシヘキサン、6-ブロモ-1,1-ジエトキシヘキサン、6-ブロモ-1,1-ジプロピルオキシ-ヘキサン、6-ブロモ-1,1-ジブチルオキシ-ヘキサン、6-ブロモ-1,1-ジペンチルオキシ-ヘキサン、6-ブロモ-1,1-ジヘキシルオキシ-ヘキサン、6-ブロモ-1,1-ジヘプチルオキシ-ヘキサン、6-ブロモ-1,1-ジオクチルオキシ-ヘキサン、6-ブロモ-1,1-ジノニルオキシ-ヘキサン及び6-ブロモ-1,1-ジデシルオキシ-ヘキサン等の6-ブロモ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14:X=Br);並びに
6-ヨード-1,1-ジメトキシヘキサン、6-ヨード-1,1-ジエトキシヘキサン、6-ヨード-1,1-ジプロピルオキシ-ヘキサン、6-ヨード-1,1-ジブチルオキシ-ヘキサン、6-ヨード-1,1-ジペンチルオキシ-ヘキサン、6-ヨード-1,1-ジヘキシルオキシ-ヘキサン、6-ヨード-1,1-ジヘプチルオキシ-ヘキサン、6-ヨード-1,1-ジオクチルオキシ-ヘキサン、6-ヨード-1,1-ジノニルオキシ-ヘキサン及び6-ヨード-1,1-ジデシルオキシ-ヘキサン等の6-ヨード-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14:X=I)。
6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)として、反応性の観点から、6-クロロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14:X=Cl)及び6-ブロモ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14:X=Br)が好ましい。
【0039】
(第1の工程)
6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)を合成する一つの方法として、例えば、下記の化学反応式に示されている通り、6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)を溶媒中、マグネシウムと反応させることにより、グリニャール試薬としての6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15:M=MgZ)を得る方法が挙げられる(以下、「グリニャール試薬調製反応」ともいう)。
【化14】
【0040】
グリニャール試薬調製反応において用いるマグネシウムの使用量は、反応完結の観点から、6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)1molに対して、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
グリニャール試薬調製反応において用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類;トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素類等が挙げられるが、グリニャール試薬生成の反応速度の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類が好ましく、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)1molに対して、好ましくは30~5000g、より好ましくは50g~3000gである。
【0041】
グリニャール試薬調製反応における反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは0~120℃である。
グリニャール試薬調製反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0042】
6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)を合成する別の方法として、例えば、下記の化学反応式に示されている通り、6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)を溶媒中、リチウムと反応させることにより、有機リチウム試薬としての6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15:M=Li)を得る方法が挙げられる(以下、「リチウム試薬調製反応」ともいう)。
【化15】
【0043】
リチウム試薬調製反応において用いるリチウムの使用量は、反応完結の観点から、6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)1molに対して、好ましくは1.0~2.0グラム原子である。
リチウム試薬調製反応において用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類;トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素類等が挙げられるが、リチウム試薬生成の反応速度の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル類;並びに、トルエン、キシレン及びヘキサン等の炭化水素類が好ましく、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン及びヘキサンがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、6-ハロ-1,1-ジアルコキシヘキサン化合物(14)1molに対して、好ましくは30~5000g、より好ましくは50g~3000gである。
【0044】
リチウム試薬調製反応における反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは-40~120℃である。
リチウム試薬調製反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0045】
6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)について、以下に説明する。
上記一般式(15)におけるR及びRは、上記一般式(1)で定義した通りである。
上記一般式(15)におけるMは、Li又はMgZを表し、Zはハロゲン原子又は6,6-ジアルコキシヘキシル基を表す。具体的には、ハロゲン原子Zとして、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、反応性の観点から塩素原子及び臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0046】
6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)は、6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15:M=MgZ,Z=ハロゲン原子)及びビス(6,6-ジアルコキシヘキシル)マグネシウム化合物(15:M=MgZ,Z=6,6-ジアルコキシヘキシル基)を包含する。
6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15:M=MgZ,Z=ハロゲン原子)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
6,6-ジメトキシヘキシルリチウム、6,6-ジエトキシヘキシルリチウム、6,6-ジプロピルオキシ-ヘキシルリチウム、6,6-ジブチルオキシ-ヘキシルリチウム、6,6-ジペンチルオキシ-ヘキシルリチウム、6,6-ジヘキシルオキシ-ヘキシルリチウム、6,6-ジヘプチルオキシ-ヘキシルリチウム、6,6-ジオクチルオキシ-ヘキシルリチウム、6,6-ジノニルオキシ-ヘキシルリチウム及び6,6-ジデシルオキシ-ヘキシルリチウム等の6,6-ジアルコキシヘキシルリチウム化合物(15:M=Li);
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=クロリド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=クロリド化合物(15:M=MgZ,Z=塩素原子);
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=ブロミド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ブロミド化合物(15:M=MgZ,Z=臭素原子);
6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジプロピルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジブチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジペンチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジヘキシルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジヘプチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジオクチルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド、6,6-ジノニルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド及び6,6-ジデシルオキシヘキシルマグネシウム=ヨージド等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ヨージド化合物(15:M=MgZ,Z=ヨウ素原子)。
ビス(6,6-ジアルコキシヘキシル)マグネシウム化合物(15:M=MgZ,Z=6,6-ジアルコキシヘキシル基)の具体例としては、ビス(6,6-ジメトキシヘキシル)マグネシウム、ビス(6,6-ジエトキシヘキシル)マグネシウム、ビス(6,6-ジプロポキシヘキシル)マグネシウム、ビス(6,6-ジブチルオキシヘキシル)マグネシウム、ビス(6,6-ジペンチルオキシヘキシル)マグネシウム、ビス(6,6-ジヘキシルオキシヘキシル)マグネシウム、ビス(6,6-ジヘプチルオキシヘキシル)マグネシウム、ビス(6,6-ジオクチルオキシヘキシル)マグネシウム、ビス(6,6-ジノニルオキシヘキシル)マグネシウム及びビス(6,6-ジデシルオキシヘキシル)マグネシウム等の化合物等が挙げられる。
6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)として、調製の容易性の観点から、6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=クロリド化合物(15:M=MgZ,Z=塩素原子)等の6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15:M=MgZ,Z=ハロゲン原子)が好ましい。
【0047】
6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0048】
1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)について、以下に説明する。
上記一般式(16)におけるXは、上記一般式(1)で定義した通りである。Xは、ハロゲン原子である。具体的には、ハロゲン原子Xとして、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、反応性の観点から臭素原子及びヨウ素原子が好ましい。
【0049】
1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
1-クロロ-5-クロロ-1-ペンチン、1-クロロ-5-ブロモ-1-ペンチン及び1-クロロ-5-ヨード-1-ペンチン等の1-クロロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16:X=塩素原子);
1-ブロモ-5-クロロ-1-ペンチン、1-ブロモ-5-ブロモ-1-ペンチン及び1-ブロモ-5-ヨード-1-ペンチン等の1-ブロモ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16:X=臭素原子);
1-ヨード-5-クロロ-1-ペンチン、1-ヨード-5-ブロモ-1-ペンチン及び1-ヨード-5-ヨード-1-ペンチン等の1-ヨード-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16:X=ヨウ素原子)。
1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)として、調製の容易性の観点から、1-ブロモ-5-クロロ-1-ペンチン等の1-ブロモ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16:X=臭素原子)が好ましい。
【0050】
1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)は、市販されているものであってもよく、また独自に合成したものであってもよい。
【0051】
該カップリング反応には、必要に応じて溶媒を用いてもよい。該溶媒としては、一般的な溶媒、例えば、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素類;トリクロロエチレン、ジクロロメタン及びクロロホルム等の塩素系溶媒類;ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、-ジメチルホルムアミド(DMF)、-ジメチルアセトアミド(DMAC)及びヘキサメチルホスホリック=トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒類;並びに、アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル類が挙げられるが、反応性の観点から、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びアセトニトリルが好ましく、テトラヒドロフラン及び2-メチルテトラヒドロフランがより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)1molに対して、好ましくは30~8000g、より好ましくは50~5000gである。
【0052】
(第2の工程)
6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)を1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)とカップリング反応させる為には、必要に応じて触媒を用いてもよい。
該触媒としては、塩化第一銅、臭化第一銅及びヨウ化第一銅等の一価のハロゲン化銅、並びに、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等の二価のハロゲン化銅等の銅化合物;塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(II)、ヨウ化鉄(III)及びアセチルアセトン鉄(III)等の鉄化合物;塩化銀、硝酸銀及び酢酸銀等の銀化合物;四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)=メトキシド、チタン(IV)=エトキシド、チタン(IV)=イソプロポキシド及び酸化チタン(IV)等のチタン化合物;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム及びジクロロ[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム等のパラジウム(II)化合物;並びに、塩化ニッケル、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)等のニッケル化合物が挙げられ、6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)がグリニャール試薬、すなわち、6,6-ジアルコキシヘキシルマグネシウム=ハライド化合物(15:M=MgZ)の場合は、反応性及び/又は経済性の観点から、銅化合物が好ましく、塩化第二銅、臭化第二銅及びヨウ化第二銅等のハロゲン化第二銅がより好ましい。
該触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該触媒は、市販されているものを用いることができる。
該触媒の使用量は、反応速度及び後処理の観点から、1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)1molに対して、好ましくは0.0003~0.500mol、より好ましくは0.003~0.200molである。
【0053】
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じて補触媒を用いてもよい。該補触媒としては、亜リン酸トリエチル等の炭素数3~9の亜リン酸トリアルキル化合物;並びに、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン及び2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)等の炭素数18~44のアリールホスフィン化合物等が挙げられるが、反応性の観点から、亜リン酸トリアルキルが好ましく、亜リン酸トリエチルが特に好ましい。
該補触媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該補触媒は、市販されているものを用いることができる。
該補触媒の使用量は、1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)1molに対して、好ましくは0.0001~1.00mol、より好ましくは0.001~0.300molである。
該カップリング反応に有機リチウム試薬を用いる場合は、必要に応じてN’N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、又はN’-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)等を添加して反応速度を向上させてもよい。
【0054】
該カップリング反応に触媒を用いる場合は、必要に応じてリチウム塩を添加してもよい。リチウム塩としては、塩化リチウム、臭化リチウム及びヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウム等が挙げられるが、反応性の観点から、塩化リチウム等のハロゲン化リチウム、硝酸リチウムが好ましい。
リチウム塩は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該リチウム塩は、市販されているものを用いることができる。
該カップリング反応におけるリチウム塩の使用量は、反応性の観点から、1-ハロ-5-ハロ-1-ペンチン化合物(16)1molに対して、好ましくは0.0001~1.00mol、より好ましくは0.001~0.300molである。
【0055】
該カップリング反応における反応温度は、用いる6,6-ジアルコキシヘキシル求核試薬(15)によって異なるが、反応性の観点から、好ましくは-78~100℃、より好ましくは-25~60℃である。
該カップリング反応における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0056】
11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)について、以下に説明する。
上記一般式(17)におけるX、R及びRは、上記一般式(1)で定義した通りである。
【0057】
11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)の具体例としては、以下の化合物等が挙げられる:
11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデシン、11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデシン、11-クロロ-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデシン、11-クロロ-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデシン、11-クロロ-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデシン、11-クロロ-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデシン、11-クロロ-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデシン、11-クロロ-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデシン、11-クロロ-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデシン及び11-クロロ-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデシン等の11-クロロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17:X=塩素原子);
11-ブロモ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデシン、11-ブロモ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデシン、11-ブロモ-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデシン、11-ブロモ-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデシン、11-ブロモ-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデシン、11-ブロモ-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデシン、11-ブロモ-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデシン、11-ブロモ-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデシン、11-ブロモ-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデシン及び11-ブロモ-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデシン等の11-ブロモ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17:X=臭素原子);
11-ヨード-1,1-ジメトキシ-7-ウンデシン、11-ヨード-1,1-ジエトキシ-7-ウンデシン、11-ヨード-1,1-ジプロピルオキシ-7-ウンデシン、11-ヨード-1,1-ジブチルオキシ-7-ウンデシン、11-ヨード-1,1-ジペンチルオキシ-7-ウンデシン、11-ヨード-1,1-ジヘキシルオキシ-7-ウンデシン、11-ヨード-1,1-ジヘプチルオキシ-7-ウンデシン、11-ヨード-1,1-ジオクチルオキシ-7-ウンデシン、11-ヨード-1,1-ジノニルオキシ-7-ウンデシン及び11-ヨード-1,1-ジデシルオキシ-7-ウンデシン等の11-ヨード-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17:X=ヨウ素原子)。
【0058】
(第3の工程)
11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)の炭素-炭素三重結合を還元して、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)を合成する還元反応としては、(i)接触還元(catalytic hydrogenation)反応、(ii)アルコール溶媒中で亜鉛を用いた還元反応、(iii)ジアルキルボランを用いたヒドロホウ素化とそれに続くプロトン化による還元反応、(iv)酢酸パラジウム等のパラジウム触媒の存在下、水酸化カリウムと-ジメチルホルムアミド(DMF)とを用いる還元反応、(v)ヒドロシリル化を行ってビニルシランを得、その後に、脱シリル化する還元反応、(vi)バーチ還元、(vii)アンモニアフリーバーチ還元、並びに(viii)ベンケサー還元等が挙げられるが、選択性及び生産性の観点から、上記(i)の接触還元反応、上記(ii)の亜鉛を用いた還元反応及び上記(iii)のヒドロホウ素化とそれに続くプロトン化による還元反応が好ましく、(i)接触還元反応がより好ましい。
なお、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)の炭素-炭素三重結合を還元して、(7E)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-E)を合成する還元反応としては、上記(i)~(viii)の還元反応のうち、(vi)バーチ還元、(vii)アンモニアフリーバーチ還元及び(viii)ベンケサー還元(Benkeser還元)が好ましく、(viii)ベンケサー還元が製造上の観点から最も好ましい。
【0059】
(i)接触還元反応
該接触還元反応は、金属触媒の存在下、水素ガスを添加して行われる。
該接触還元反応に用いる金属触媒としては、例えば、ホウ化ニッケル触媒、ニッケル(0)ナノ粒子(Fransisco Alonso et al, Tetrahedron, 2007,63,93-102)、及び漆原ニッケル(例えば、U-Ni-A及びU-Ni-B)等のニッケル触媒;並びに、リンドラー(Lindlar)触媒、パラジウム炭素(Palladium on carbon)、Pd/CaCO、Pd/BaSO、Pd/Al、HgでドープされたPd/SiO、Pd/McM-41、ヒドロタルサイト中のPdナノ粒子、Pd/Zn合金、及びPd-PEI(但し、ポリエチレンイミンポリマー(PEI)で被毒されたパラジウム炭素である)及びパラジウム炭素をポリエチレンイミンポリマー(PEI)で被毒したPd-PEI等のパラジウム触媒等が挙げられるが、これらに限定されない。上記のホウ化ニッケル触媒としては、例えば、P-1ホウ化ニッケル触媒、及びP-2ホウ化ニッケル触媒(Thomas J. Caggiano et al. Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis:3694-3699.)(以下、「P-2Ni触媒」ともいう。);並びに、グラファイト上に分散されたニッケル(例えば、Ni-Gr1及びNi-Gr2)、カウベレ(Caubere)触媒(Nic)、及び水素化ホウ素交換樹脂(NiB-BER)におけるニッケル(Laurence Balas,HAL,2021;https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-00801666)等が挙げられるが、これらに限定されない。経済性の観点から、リンドラー触媒及びニッケル触媒が好ましい。
該金属触媒の使用量は、用いる触媒によって異なるが、反応性の観点から、リンドラー触媒等のように触媒が固体である場合は、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、0.01~50gが好ましい。また、P-2Ni触媒は、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、ニッケル化合物としての換算量が0.0001~2.0molとなるように使用することが好ましい。
なお、固体の触媒は、溶媒に分散させて用いてもよい。
【0060】
該金属触媒の活性が高い場合には、必要に応じて触媒毒を使用してもよい。
該触媒毒としては、ピリジン、キノリン及びエチレンジアミン等のアミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン及び亜リン酸トリエチル等のホスフィン化合物;並びに、ベンゼンチオール、ジフェニル=スルフィド、ジメチル=スルフィド及びジメチル=スルホキシド等の硫黄化合物等が挙げられる。
該触媒毒の使用量は、用いる触媒毒により大きく異なるが、反応速度及び幾何選択性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは0.0001~20.0mol、より好ましくは0.001~2.0molである。
【0061】
該接触還元反応に用いる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素類;アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル及び酢酸n-ブチル等のエステル類;並びに、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-プロパノール、2-ブタノール及びシクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
【0062】
リンドラー触媒を用いる場合は、上記溶媒は、反応性の観点から、ヘキサン、ヘプタントルエン及びキシレン等の炭化水素類が好ましく、ニッケル触媒を用いる場合は、上記溶媒は、反応性の観点から、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及び2-プロパノール等のアルコール類が好ましく、パラジウム炭素等のパラジウム触媒を用いる場合は、上記溶媒は、反応性の観点から、酢酸メチル及び酢酸エチル等のエステル類が好ましい。
該溶媒の使用量は、用いる触媒及び/又は溶媒により異なるが、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは0~1000gである。
【0063】
該接触還元反応の反応温度は、用いる触媒及び/又は溶媒の種類により異なるが、幾何選択性の観点から、好ましくは0~160℃、より好ましくは20~100℃である。
該接触還元反応の反応時間は、収率の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0064】
(ii)アルコール溶媒中で亜鉛を用いた還元反応
該還元反応は、アルコール溶媒中、亜鉛を用いて行われる。
溶媒として用いるアルコールの炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~5である。溶媒に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール及びデカノール等の直鎖状のアルコール化合物;2-プロパノール及び2-ブタノール等の分岐状のアルコール化合物;並びに、シクロヘキサノール等の環状のアルコール化合物等が挙げられるが、反応性の観点から、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及び2-プロパノール等の炭素数1~5のアルコール化合物が好ましい。
該アルコールの使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは46~1000gである。
亜鉛の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~1000mol、より好ましくは1.0~200molである。
【0065】
該還元反応は、亜鉛の低い反応性により、反応時間が長くなることがあるため、必要に応じて、亜鉛を活性化させる活性化剤を添加してもよく、又は予め調製した活性化された亜鉛を用いてもよい。
該活性化剤としては、1,2-ジブロモエタン、塩化銅第一、臭化銅第一、ヨウ化銅第一、臭化リチウム、ヨウ素及びクロロトリメチルシラン等が挙げられる。
該活性化剤は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
該活性化剤の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは0.01~10.0molである。
活性化された亜鉛は、例えば、塩酸等の酸で金属亜鉛を処理すること、又は塩化亜鉛を、テトラヒドロフラン又は2-メチルテトラヒドロフラン中、金属リチウムで還元すること、又は金属亜鉛を、テトラヒドロフラン又は2-メチルテトラヒドロフラン中、1,2-ジブロモエタン及びリチウム=ジブロモクプラートと反応させること等により調製することができる。
【0066】
該還元反応の反応温度は、用いる溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは20~180℃である。
該還元反応の反応時間は、反応完結の観点から、好ましくは0.5~150時間反応することが好ましい。
【0067】
(iii)ジアルキルボランを用いたヒドロホウ素化とそれに続くプロトン化による還元反応
該還元反応において、まずヒドロホウ素化が、溶媒中、ジアルキルボランを用いて行われる。
ヒドロホウ素化に用いるジアルキルボランの炭素数は、好ましくは4~18、より好ましくは6~12である。
該ジアルキルボランとしては、ジシクロヘキシルボラン、ジイソアミルボラン、ジシアミルボラン、9-ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9-BBN)、ジイソピノカンフェイルボラン、カテコールボラン及びピナコールボラン等が挙げられるが、反応性の観点から、ジシクロヘキシルボラン及びジイソアミルボランが好ましい。
該ジアルキルボランの使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~4.0molである。
【0068】
該ヒドロホウ素化に用いる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン及びジエチレングリコール=ジメチル=エーテル等のエーテル類;並びに、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素類が挙げられるが、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルテトラヒドロピラン及びジエチレングリコール=ジメチル=エーテル等のエーテル類がより好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは100~3000gである。
【0069】
該ヒドロホウ素化の反応温度は、幾何選択性の観点から、好ましくは-20℃~50℃である。
該ヒドロホウ素化の反応時間は、反応温度及び/又は反応のスケールによって変動するが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0070】
上記還元反応において、ヒドロホウ素化に続いて、プロトン化が、溶媒中、酸を用いて行われる。
ヒドロホウ素化に続くプロトン化に用いる酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ピバル酸、ヘプタン酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、ギ酸及びシュウ酸等のカルボン酸;p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;硫酸、塩酸、硝酸及びリン酸等の鉱酸を挙げることができるが、反応性の観点から、酢酸及びプロピオン酸等のカルボン酸が好ましい。
該酸の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは2.0~20.0molである。
該プロトン化に用いる溶媒及びその使用量は、プロトン化がヒドロホウ素化に続いて同一の反応系内で行われるため、ヒドロホウ素化に用いる溶媒及びその使用量と同じである。
【0071】
該プロトン化の反応温度は、用いる試薬により異なるが、反応速度の観点から、好ましくは0℃~150℃である。
該プロトン化の反応時間は、反応温度及び/又は反応のスケールによって変動するが、反応性の観点から、好ましくは1~70時間である。
【0072】
(iv)酢酸パラジウム等のパラジウム触媒の存在下、水酸化カリウムとN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)とを用いる還元反応
該還元反応は、酢酸パラジウム等のパラジウム触媒の存在下、水酸化カリウムと-ジメチルホルムアミド(DMF)とを用いて、好ましくは100~180℃にて、0.5~100時間行われる。
【0073】
(v)ヒドロシリル化を行ってビニルシランを得、その後に、脱シリル化する還元反応
該ヒドロシリル化は、ウィルキンソン(Wilkinson)触媒及びトロスト(Trost)触媒等の金属触媒と、トリアルキルシランとを用いて行われる。
該金属触媒の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは0.0001~4.0mol、より好ましくは0.001~1.0molである。
該ヒドロシリル化は、5~100℃にて0.5~100時間行われることが好ましい。
該ヒドロシリル化後の脱シリル化は例えば、硫酸及び塩酸等の酸、ヨウ化水素、塩化アセチル、四塩化チタン並びにヨウ素のうちの少なくとも一つを用いて、5℃~80℃にて、0.5~100時間行われることが好ましい。
【0074】
(vi)バーチ還元
該バーチ還元は、アンモニア中、金属を用いて行われる。
アンモニアの使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~10000mol、より好ましくは10~3000molである。
【0075】
該金属としては、カリウム、ナトリウム及びリチウム等のアルカリ金属;並びに、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。
金属の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~1000mol、より好ましくは1.0~100molである。
【0076】
該バーチ還元では、アンモニアに加えてプロトン源を添加しておくことが好ましい。該プロトン源としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール及び2-メチル-2-プロパノール等のアルコール;並びに、テトラヒドロフラン(THF)及び2-メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
該プロトン源は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該プロトン源は、市販されているものを用いることができる。
該プロトン源の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~10000mol、より好ましくは1.0~3000molである。
【0077】
バーチ還元における反応温度は、反応性の観点から、好ましくは-78~0℃、より好ましくは-78~-33℃である。
バーチ還元における反応時間は、反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0078】
(vii)アンモニアフリーバーチ還元
該アンモニアフリーバーチ還元は、クラウンエーテル中、金属を用いて行われる。
該クラウンエーテルとしては、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6及びジアザ-18-クラウン-6等が挙げられる。
該クラウンエーテルは、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該クラウンエーテルは、市販されているものを用いることができる。
該クラウンエーテルの使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~100.0mol、より好ましくは1.0~20.0molである。
【0079】
該金属としては、カリウム、ナトリウム及びリチウム等のアルカリ金属;並びに、カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。
該金属の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~100.0mol、より好ましくは1.0~20.0molである。
【0080】
該アンモニアフリーバーチ還元では、クラウンエーテルに加えてプロトン源を添加しておくことが好ましい。該プロトン源としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール及び2-メチル-2-プロパノール等のアルコール;並びに、テトラヒドロフラン(THF)及び2-メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
該プロトン源は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該プロトン源は、市販されているものを用いることができる。
該プロトン源の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~100.0mol、より好ましくは1.0~20.0molである。
【0081】
アンモニアフリーバーチ還元における反応温度は、用いる金属及び/又はクラウンエーテルにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは-78~100℃、より好ましくは-40~40℃である。
アンモニアフリーバーチ還元における反応時間は、用いる金属、クラウンエーテル及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.1~100時間、より好ましくは0.1~5時間である。
【0082】
(viii)ベンケサー還元
該ベンケサー還元は、アルキルアミン中、金属を用いて行われる。
該アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン及び1,3-プロパンジアミン等の低級アミンが挙げられる。
該アルキルアミンの使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~5000mol、より好ましくは1.0~1000molである。
【0083】
該金属としては、カリウム、ナトリウム及びリチウム等のアルカリ金属;並びに、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。
該金属の使用量は、反応性の観点から、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデシン化合物(17)1molに対して、好ましくは1.0~1000mol、より好ましくは1.0~100molである。
【0084】
ベンケサー還元における反応温度は、反応性の観点から、好ましくは-78~100℃、より好ましくは-78~60℃である。
ベンケサー還元における反応時間は、反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0085】
なお、11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1)は、Coniesa ignefusalisの性フェロモンである(7E)-7-ドデセナール、Spaelotis clandestinaの性フェロモンである(7Z)-7-テトラデセナール及びHelicoverpa armigeraの性フェロモンである(7Z)-7-ヘキサデセナール等の合成中間体の製造用途にも有用である。
【0086】
(A-2).11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3)について
次に、11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3)について説明する。
Ar(CHCH=CH(CHCH(OR)(OR) (3)
Yは、上記一般式(A)で定義された通り、ハロゲン原子を表す。具体的には、ハロゲン原子Yとして、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、反応性の観点から臭素原子及びヨウ素原子が好ましい。
上記一般式(3)において、R及びRは、上記一般式(1)で定義した通りである。
上記一般式(3)において、Arは、互いに同じであっても異なっていてもよいアリール基を表す。アリール基の炭素数は、好ましくは6~24、より好ましくは6~12、更に好ましくは6~7である。アリール基としては、例としてフェニル基(Ph基)、トリル基、ナフチル基及びアントラセニル基が挙げられるが、合成のしやすさの観点から、フェニル基が好ましく、三つのアリール基が全てフェニル基であることがより好ましい。
【0087】
11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3)は、一般式(3-Z)で表される(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物、及び一般式(3-E)で表される(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物を包含する。
【0088】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド及び(4Z)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド等の(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド化合物(3-Z:Y=塩素原子,Ar=フェニル基);
(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4Z)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド及び(4Z)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド等の(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド化合物(3-Z:Y=塩素原子,Ar=トリル基);
(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド及び(4Z)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド等の(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド化合物(3-Z:Y=臭素原子,Ar=フェニル基);
(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4Z)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド及び(4Z)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド等の(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド化合物(3-Z:Y=臭素原子,Ar=トリル基);
(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド及び(4Z)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド等の(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド化合物(3-Z:Y=ヨウ素原子,Ar=フェニル基);並びに、
(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4Z)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド及び(4Z)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド等の(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド化合物(3-Z:Y=ヨウ素原子,Ar=トリル基)。
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)として、調製の容易性の観点から、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド化合物(3-Z:Y=塩素原子,Ar=フェニル基)、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド化合物(3-Z:Y=臭素原子,Ar=フェニル基)及び(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド化合物(3-Z:Y=ヨウ素原子,Ar=フェニル基)が好ましい。
【0089】
(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-E)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
(4E)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド及び(4E)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド等の(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド化合物(3-E:Y=塩素原子,Ar=フェニル基);
(4E)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド、(4E)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド及び(4E)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド等の(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=クロリド化合物(3-E:Y=塩素原子,Ar=トリル基);
(4E)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド及び(4E)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド等の(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド化合物(3-E:Y=臭素原子,Ar=フェニル基);
(4E)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド、(4E)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド及び(4E)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド等の(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ブロミド化合物(3-E:Y=臭素原子,Ar=トリル基);
(4E)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド及び(4E)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド等の(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド化合物(3-E:Y=ヨウ素原子,Ar=フェニル基);並びに、
(4E)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド、(4E)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド及び(4E)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド等の(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリトリルホスホニウム=ヨージド化合物(3-E:Y=ヨウ素原子,Ar=トリル基)。
(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-E)として、調製の容易性の観点から、(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=クロリド化合物(3-E:Y=塩素原子,Ar=フェニル基)、(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ブロミド化合物(3-E:Y=臭素原子,Ar=フェニル基)及び(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド化合物(3-E:Y=ヨウ素原子,Ar=フェニル基)が好ましい。
【0090】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)は、以下で述べる通り、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)の製造及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)の製造における共通の合成中間体として使用されうる。
【0091】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)及び(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-E)の製造方法については、以下の項B.において説明する。
【0092】
B.11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3)の製造方法について
以下、本明細書において、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を用いてその製造方法を説明するが、(4E)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-E)においても(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)と同様に反応が進行し、対応する化合物を製造することができる。
【0093】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)は例えば、下記の化学反応式に示される通り、上記(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)と、下記一般式(2)で表されるホスフィン化合物とのホスホニウム塩形成反応により、調製されることができる。
【0094】
【化16】
【0095】
ホスフィン化合物(2)としては、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリナフチルホスフィン及びトリアントラセニルホスフィン等のトリアリールホスフィン化合物が挙げられ、反応性の観点から、トリフェニルホスフィンが好ましい。
ホスフィン化合物(2)の使用量は、反応性の観点から、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)1molに対して、好ましくは0.8~5.0molである。
【0096】
<ホスホニウム塩形成反応について>
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の調製には、必要に応じて、ハロゲン化物を用いてもよい。
該ハロゲン化物としては、例えば、ヨウ化ナトリウム及びヨウ化カリウム等のヨウ化物;並びに、臭化ナトリウム及び臭化カリウム等の臭化物が挙げられ、反応性の観点から、ヨウ化ナトリウム及びヨウ化カリウム等のヨウ化物が好ましい。
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の上記調製においてハロゲン化物を用いない場合は、上記一般式(3-Z)中のYは、上記一般式(1-Z)中のXと同じハロゲン原子である。一方、該調製においてハロゲン化物としてヨウ化物を用いる場合には、上記一般式(3-Z)中のYは(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)についての一般式(1-Z)のXと同じハロゲン原子又はヨウ素原子である。
該ハロゲン化物は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該ハロゲン化物は、市販されているものを用いることができる。
該ハロゲン化物の使用量は、反応性の観点から、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)1molに対して、好ましくは0.1~10.0mol、より好ましくは0.8~4.0molである。
【0097】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の調製には、必要に応じて、塩基を加えてもよい。
該塩基としては、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;並びに、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、-ジエチルアニリン及びピリジン等のアミン等が挙げられ、取扱いの観点から、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。
該塩基は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該塩基は、市販されているものを用いることができる。
該塩基の使用量は、反応性の観点から、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)1molに対して、好ましくは0.001~1.0molである。
【0098】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の調製には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒及びアセトニトリル、-ジメチルホルムアミド及び-ジメチルアセトアミド等の極性溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)に対して、好ましくは50~7000gである。
【0099】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の調製における反応温度は、用いる溶媒により至適温度は異なるが、好ましくは30~180℃、より好ましくは50~150℃である。
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)の調製における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0100】
C.(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)、並びにそれらの製造方法について
【0101】
(C-1).(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及びその製造方法について以下に説明する。
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)は、下記の化学反応式に従って製造されることができる。まず、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る。該脱プロトン化反応により得られる該混合物は、トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)を反応生成物として含有していると推定される(以下では、反応生成物がトリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)として説明をする)。そして、次に、該反応生成物混合物と、下記式(5)で表される(2E)-2-ペンテナールとを、例えばイン・シチュー(in situ)で、ウィッティヒ反応条件に付すことにより、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)が製造されることができる。
【0102】
【化17】
【0103】
まず、該反応生成物混合物であるトリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)について説明する。
上記一般式(4)において、R及びRは、上記一般式(1)で定義した通りであり、且つArは、上記一般式(3)において定義した通りである。
【0104】
トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニリド、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニリド、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニリド、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニリド、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニリド、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニリド、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニリド、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニリド、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニリド及びトリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニリド等のトリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4:Ar=フェニル基);
トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニリド、トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニリド、トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジプロピルオキシ-4-ウンデセニリド、トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジブチルオキシ-4-ウンデセニリド、トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジペンチルオキシ-4-ウンデセニリド、トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジヘキシルオキシ-4-ウンデセニリド、トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジヘプチルオキシ-4-ウンデセニリド、トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジオクチルオキシ-4-ウンデセニリド、トリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジノニルオキシ-4-ウンデセニリド及びトリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジデシルオキシ-4-ウンデセニリド等のトリトリルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4:Ar=トリル基)。
トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)として、調製の容易性の観点から、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4:Ar=フェニル基)が好ましい。
【0105】
<脱プロトン化反応について>
上記反応生成物混合物は、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を調製した後の反応系中に塩基を加えて、トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)に直接導いてもよいし、又は(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を精製してから塩基と反応させてトリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)に導いてもよい。
上記反応生成物混合物の調製に用いる塩基としては、例えば、n-ブチルリチウム及びtert-ブチルリチウム等のアルキルリチウム;メチルマグネシウム=クロリド、メチルマグネシウム=ブロミド、ナトリウム=アセチリド及びカリウム=アセチリド等の有機金属試薬類;カリウム=tert-ブトキシド、ナトリウム=tert-ブトキシド、カリウム=メトキシド、ナトリウム=メトキシド及びカリウム=エトキシド、ナトリウム=エトキシド等の金属アルコキシド;並びに、リチウム=ジイソプロピルアミド、ナトリウム=ビス(トリメチルシリル)アミド等の金属アミド等が挙げられ、反応性の観点から、金属アルコキシドが好ましく、カリウム=tert-ブトキシド、ナトリウム=メトキシド及びナトリウム=エトキシドがより好ましい。
該塩基の使用量は、反応性の観点から、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)又は(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)1molに対して、好ましくは0.7~5.0mol、である。
【0106】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)及びトリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)の調製には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、-ジメチルホルムアミド、-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒及びアセトニトリル、-ジメチルホルムアミド及び-ジメチルアセトアミド等の極性溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、(7Z)-11-ハロ-1,1-ジアルコキシ-7-ウンデセン化合物(1-Z)又は(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)1molに対して、好ましくは50~7000gである。
【0107】
上記反応生成物混合物の調製における反応温度は、用いる溶媒及び/又は塩基により至適温度は異なるが、好ましくは-78~70℃であり、例えば、塩基として金属アルコキシドを用いた場合の至適温度は-78~25℃である。
上記反応生成物混合物の調製における反応時間は、用いる溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0108】
次に、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)について、以下に説明する。
【0109】
【化18】
【0110】
上記一般式(6)におけるR及びRは、上記一般式(1)で定義した通りである。
【0111】
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジエトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジプロピルオキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジブチルオキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジペンチルオキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジヘキシルオキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジヘプチルオキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジオクチルオキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジノニルオキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン、及び(3E,5Z,9Z)-16,16-ジデシルオキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン。
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)として、経済性の観点から、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン及び(3E,5Z,9Z)-16,16-ジエトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエンが好ましい。
【0112】
<ウィッティヒ反応について>
トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)の使用量は、反応性の観点から、(2E)-2-ペンテナール(5)1molに対して、好ましくは1.0~4.0mol、より好ましくは1.0~2.0molである。
また、トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
(2E)-2-ペンテナール(5)は市販されているものであってもよく、または、例えば、(2E)-2-ペンテン-1-オールの酸化、若しくは(2E)-1,1-ジアルコキシ-2-ペンテンの加水分解反応等で独自に合成したものであってもよい。
【0113】
ウィッティヒ反応には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びクメン等の炭化水素系溶媒;並びに、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒等が挙げられ、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン及び4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒;並びに、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミド等の極性溶媒が好ましい。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
該溶媒の使用量は、反応性の観点から、(2E)-2-ペンテナール(5)1molに対して、好ましくは50~7000gである。
【0114】
ウィッティヒ反応における反応温度は、用いる溶媒により最適温度は異なるが、好ましくは-78~80℃である。ウィッティヒ反応をZ選択的に行うために、-78~30℃で反応させることがより好ましい。なお、-78~-40℃でウィッティヒ反応させた後、フェニルリチウム等の強塩基で処理することによるシュロッサー(Schlosser)変法等の条件下、生じる合成中間体を反応させることにより、E選択的に反応を行うこともできる。また、通常のウィッティヒ反応条件下においてハロゲン化リチウムを添加することによりE選択的に反応を行うこともできる。
ウィッティヒ反応における反応時間は、反応スケールにより異なるが、好ましくは0.5~100時間である。
【0115】
(C-2).(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)及びその製造方法について以下に説明する。
(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)は、下記の化学反応式に従って製造されることができる。まず、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る。該脱プロトン化反応により得られる該混合物は、トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)を反応生成物として含有していると推定される(以下では、反応生成物がトリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)として説明をする)。そして、次に、該反応生成物混合物と、下記式(8)で表されるペンタナールとを、例えばイン・シチュー(in situ)で、ウィッティヒ反応に付すことにより、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)が製造されることができる。
【0116】
【化19】
【0117】
(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)及びその製造方法の一例については、上記項(A-2)及び項(B)において述べた通りである。
該反応生成物混合物中に含有されるトリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)及びその製造方法については、上記項(C-1)において述べた通りである。
【0118】
次に、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)について、以下に説明する。
【0119】
【化20】
【0120】
上記一般式(9)におけるR及びRは、上記一般式(1)で定義した通りである。
【0121】
(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の具体例としては、下記の化合物等が挙げられる:
(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジエトキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジプロピルオキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジブチルオキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジペンチルオキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジヘキシルオキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジヘプチルオキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジオクチルオキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジノニルオキシ-5,9-ヘキサデカジエン、(5Z,9Z)-16,16-ジデシルオキシ-5,9-ヘキサデカジエン。
(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)として、経済性の観点から、(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン及び(5Z,9Z)-16,16-ジエトキシ-5,9-ヘキサデカジエンが好ましい。
【0122】
<ウィッティヒ反応について>
トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)の使用量は、反応性の観点から、ペンタナール(8)1molに対して、好ましくは1.0~4.0mol、より好ましくは1.0~2.0molである。
また、トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
ペンタナール(8)は、市販されているものであってよい。
ウィッティヒ反応において溶媒を用いる場合には、該溶媒の使用量は、反応性の観点から、ペンタナール(8)1molに対して、好ましくは50~7000gである。
ウィッティヒ反応のその他の条件については、上記項(C-1)において述べた通りである。
【0123】
(C-3).(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造方法について以下に説明する。
(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)は、下記の化学反応式に従って製造されることができる。まず、(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニルトリアリールホスホニウム=ハライド化合物(3-Z)を塩基の存在下で脱プロトン化反応させて、反応生成物混合物を得る。該脱プロトン化反応により得られる混合物は、トリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)を反応生成物として含有していると推定される(以下では、反応生成物がトリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)として説明をする)。そして、次に、該反応生成物混合物と、(2E)-2-ペンテナール(5)及びペンタナール(8)とを、例えばイン・シチュー(in situ)で、ウィッティヒ反応条件に付すことにより、夫々、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物が製造されることができる。
【0124】
【化21】
【0125】
該反応生成物混合物中に含有されるトリアリールホスホニウム=(4Z)-11,11-ジアルコキシ-4-ウンデセニリド化合物(4)及びその製造方法については、上記項(C-1)において述べた通りである。
反応生成混合物と(2E)-2-ペンテナール(5)とから生成される(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)、及び反応生成混合物とペンタナール(8)とから生成される(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)についても、夫々、上記項(C-1)及び項(C-2)において述べた通りである。
【0126】
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造において、(2E)-2-ペンテナール(5)とペンタナール(8)との比を任意に調整することによって、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)と(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)との比を調整することが可能である。
【0127】
(2E)-2-ペンテナール(5)とペンタナール(8)とは、混合物として用いても良く、又は(2E)-2-ペンテナール(5)とペンタナール(8)とを順次に加えてもよい。
【0128】
D.(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)、並びにそれらの製造方法について
【0129】
(D-1).(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及びその製造方法について以下に説明する。
Citrus leafminerの性フェロモン物質である(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナールは、下記の化学反応式に示される通り、上述の(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)の加水分解反応により、製造することができる。
【0130】
【化22】
【0131】
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及びその製造法については、上記項(C-1)において述べた通りである。
【0132】
<加水分解反応について>
上記加水分解反応において、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
【0133】
該加水分解反応は例えば、酸と水を用いて行うことができる。
上述の酸としては、塩酸、臭化水素酸等の無機酸類、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、しゅう酸、ヨードトリメチルシラン及び四塩化チタン等が挙げられるが、反応性の観点から、酢酸、ギ酸及びしゅう酸が好ましい。
該酸は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該酸は、市販されているものを用いることができる。
該酸の使用量は、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)1molに対して、好ましくは0.01~10.0molである。
上述の水の使用量は、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは18~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0134】
該加水分解反応には、上述の酸又は水とともに、必要に応じて溶媒を更に用いてもよい。
該溶媒としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン及びクメン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチル=エーテル、ジブチル=エーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル及び1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチル=スルホキシド、アセトニトリル、アセトン、γ―ブチロラクトン、ジクロロメタン及びクロロホルム等の極性溶媒;並びに、メタノール及びエタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。
該溶媒は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。また、該溶媒は、市販されているものを用いることができる。
用いる酸により最適な溶媒は異なるが、例えば、酸として、しゅう酸を用いる場合は、反応性の観点から、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトン及びγ―ブチロラクトンが好ましい。
該溶媒の使用量は、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)または(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)又は(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)と(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)との混合物(実施例12に記載された混合物(12)を参照)の合計1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0135】
加水分解反応における反応温度は、用いる酸及び/又は溶媒により異なるが、反応性の観点から、好ましくは5~180℃である。
加水分解反応における反応時間は、用いる酸及び/又は溶媒及び/又は反応スケールにより異なるが、反応性の観点から、好ましくは0.5~100時間である。
【0136】
(D-2).(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)及びその製造方法について以下に説明する。
Citrus leafminerの性フェロモン物質である(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)は、下記の化学反応式に示される通り、上述の(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)の加水分解反応により、製造されることができる。
【0137】
【化23】
【0138】
(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)及びその製造法については、上記項(C-2)において述べた通りである。
【0139】
<加水分解反応について>
上記加水分解反応において、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)は、1種類又は必要に応じて、2種類以上を使用してもよい。
【0140】
該加水分解反応は例えば、酸と水を用いて行うことができる。
上述の酸としては、上記項(D-1)において述べた通りである。
該酸の使用量は、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)1molに対して、好ましくは0.01~10.0molである。
上述の水の使用量は、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは18~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0141】
該加水分解反応には、上述の酸又は水とともに、必要に応じて溶媒を更に用いてもよい。
上述の溶媒としては、上記項(D-1)において述べた通りである。
該溶媒の使用量は、(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0142】
該加水分解反応のその他の条件については、上記項(D-1)において述べた通りである。
【0143】
(D-3).(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)を含有する混合物の製造方法について以下に説明する。
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)、及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物を加水分解反応条件に付することにより、夫々、(D-3).(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)を含有する混合物が製造されることができる。
【0144】
【化24】
【0145】
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造法については、上記項(C-3)において述べた通りである。
【0146】
(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物の製造において、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物中の(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)と(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)との比に応じて、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)と(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)との比を調製することが可能である。それ故、例えば、Citrus leafminerの性フェロモン組成である(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)と(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)との比が3:1である混合物を一挙に製造することも可能である。
【0147】
<加水分解反応について>
【0148】
該加水分解反応は例えば、酸と水を用いて行うことができる。
上述の酸としては、上記項(D-1)において述べた通りである。
該酸の使用量は、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物1molに対して、好ましくは0.01~10.0molである。
上述の水の使用量は、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物1molに対して、反応性の観点から、好ましくは18~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0149】
該加水分解反応には、上述の酸又は水とともに、必要に応じて溶媒を更に用いてもよい。
上述の溶媒としては、上記項(D-1)において述べた通りである。
該溶媒の使用量は、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン化合物(6)及び(5Z,9Z)-16,16-ジアルコキシ-5,9-ヘキサデカジエン化合物(9)を含有する混合物1molに対して、反応性の観点から、好ましくは0~7000g、より好ましくは18~3000gである。
【0150】
該加水分解反応のその他の条件については、、上記項(D-1)において述べた通りである。
【実施例0151】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、以下において、「純度」は、特に明記しない限り、ガスクロマトグラフィー(GC)分析によって得られた面積百分率を示し、「生成比」はGC分析によって得られた面積百分率の相対比を示す。また「収率」は、GC分析によって得られた面積百分率を基に算出した収率を示す。
各実施例において、反応のモニタリング及び収率の算出は、次のGC条件に従って行った。
GC条件:GC:島津製作所 キャピラリガスクロマトグラフ GC-2014,カラム:DB-WAX(DB-5),0.25μmx0.25mmφx30m,キャリアーガス:He(1.55mL/分)、検出器:FID,カラム温度:150℃ 5℃/分昇温 230℃。
収率は、原料及び生成物の純度(%GC)を考慮して、以下の式に従い計算した。
収率(%)={[(反応によって得られた生成物の重量×%GC)/生成物の分子量]
÷[(反応における出発原料の重量×%GC)/出発原料の分子量]}×100
なお、THFはテトラヒドロフラン、P-2NiはP-2型のホウ化ニッケル、EDAはエチレンジアミン、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはtert-ブチル基及びPhはフェニル基を表す。
【0152】
実施例1
<(7Z)-11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Me)の製造>
【0153】
【化25】
【0154】
室温にて、反応器にマグネシウム(51.64g、2.13グラム原子)及びテトラヒドロフラン(607.20g)を加えて、60~65℃にて31分間撹拌した。撹拌終了後、6-クロロ-1,1-ジメトキシヘキサン(14:X=Cl,R=R=Me)(367.17g、2.02mol、純度99.59%)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃で2時間撹拌することにより、6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=クロリド(15:M=MgCl,R=R=Me)を調製した。
続いて、別の反応器に塩化第二銅(3.24g、0.024mol)、塩化リチウム(2.04g、0.048mol)、亜リン酸トリエチル(16.11g、0.097mol)、テトラヒドロフラン(306.53g)及び1-ブロモ-5-クロロ-1-ペンチン(16:X=Cl,X=Br)(340.14g、1.86mol、純度99.34%)を加えて、上記で調製した6,6-ジメトキシヘキシルマグネシウム=クロリド(15:M=MgCl,R=R=Me)を15~30℃にて滴下した。滴下終了後、25~35℃にて1.5時間撹拌した。次に、反応液に酢酸水溶液(酢酸(253.00g)及び水(759.00g))を加えて分液し、そして水層を除去した。得られた有機層を水酸化ナトリウム水溶液(520.00g、水酸化ナトリウムとして3.25mol)で洗浄し、引き続き、減圧下で濃縮し、そして残渣を減圧蒸留することにより、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Me)(425.97g、1.64mol、純度95.12%、b.p.=123.0~131.1℃/0.40kPa(3.0mmHg))が収率88.18%で得られた。
【0155】
上記で得られた(7Z)-11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Me)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.30‐1.42(4H,m),1.47(2H,quin-like,J=7.3Hz),1.59(2H,dt,J=9.2Hz,5.7Hz),1.91(2H,tt,J=6.5Hz,6.5Hz),2.13(2H,tt,J=7.3Hz,2.3Hz),2.32(2H,tt,J=6.9Hz,2.3Hz),3.30(6H,s),3.63(2H,t,J=6.5Hz),4.34(1H,t,J=6.1Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=16.16,18.58,24.10,28.62,28.88,31.74,32.37,43.75,52.60,78.10,81.19,104.45
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 245(M-1),215,185,137,119,105,91,75
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2938,2860,1457,1437,1386,1291,1192,1127,1076,1053,969,910,652
【0156】
実施例2
<(7Z)-11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Et)の製造>
【0157】
【化26】
【0158】
室温にて、反応器にマグネシウム(89.30g、3.67グラム原子)及びテトラヒドロフラン(1050.00g)を加えて、60~65℃にて17分間撹拌した。撹拌終了後、6-クロロ-1,1-ジエトキシヘキサン(14:X=Cl,R=R=Et)(744.93g、3.50mol、純度98.08%)を60~75℃にて滴下した。滴下終了後、75~80℃で2時間撹拌することにより、6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=クロリド(15:M=MgCl,R=R=Et)を調製した。
続いて、別の反応器に塩化第二銅(5.60g、0.042mol)、塩化リチウム(3.54g、0.084mol)、亜リン酸トリエチル(27.86g、0.17mol)、テトラヒドロフラン(530.08g)及び1-ブロモ-5-クロロ-1-ペンチン(16:X=Cl,X=Br)(584.30g、3.22mol、純度100%)を加えて、上記で調製した6,6-ジエトキシヘキシルマグネシウム=クロリド(15:M=MgCl,R=R=Et)を15~30℃にて滴下した。滴下終了後、25~35℃で1.5時間撹拌した。次に、反応液に酢酸水溶液(酢酸(437.50g)及び水(1312.50g))を加えて分液し、そして水層を除去した。得られた有機層を水酸化ナトリウム水溶液(900.00g、水酸化ナトリウムとして5.63mol)で洗浄し、引き続き、減圧下で濃縮し、そして残渣を減圧蒸留することにより、(7Z)-11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Et)(798.79g、2.71mol、純度93.24%、b.p.=148.1~154.2℃/0.40kPa(3.0mmHg))が収率84.25%で得られた。
【0159】
上記で得られた(7Z)-11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Et)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.19(6H,t,J=7.3Hz),1.29-1.42(2H,m),1.47(2H,quin-like,J=7.3Hz),1.60(2H,dt,J=9.2Hz,5.8Hz),1.91(2H,tt,J=6.5Hz),2.13(2H,tt,J=6.5Hz),2.13(2H,tt,J=7.3Hz,2.3Hz),2.32(2H,tt,J=6.9Hz,2.3Hz),3.47(2H,tt,J=8.2Hz,6.9Hz),3.59-3.66(4H,m),4.46(1H,t,J=5.8Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=15.32,16.16,18.58,24.25,28.64,28.90,31.72,33.47,43.76,60.84,78.05,81.23,102.82
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 273(M-1),229,183,165,151,137,123,103,57
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2974,2932,2862,1442,1374,1345,1291,1128,1061,1001,653
【0160】
実施例3
<11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Me)の製造>
【0161】
【化27】
【0162】
室温にて、反応器に実施例1で得られた(7Z)-11-クロロ-1,1-メトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Me)(788.66g、3.04mol、純度95.12%)及びP-2Ni触媒(381.12g、Niとして0.096mol)及びEDA(8.32g)を加えて、45~55℃にて11.5時間撹拌しながら水素を加えた。反応率が100%であることをGCで確認し、その後、反応液に水(132.98g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧下で濃縮し、そして残留物を減圧蒸留することにより、11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Me)(785.92g、2.88mol、純度91.17%、b.p.=123.1~142.1℃/0.40kPa(3.0mmHg))が収率94.74%で得られた。
【0163】
上記で得られた11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Me)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.24‐1.39(6H,m),1.55-1.61(2H,m),1.81(2H,dt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.04(2H,q-like,J=6.9Hz),2.18(2H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),3.30(6H,s),3.52(2H,t,J=6.5Hz),4.35(1H,t,J=5.7Hz),5.30(1H,dtt,J=10.7Hz,7.3Hz,1.5Hz),5.42(1H,dtt,J=10.7Hz,7.3Hz,1.5HZ);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=24.33,24.44,27.08,29.06,29.54,32.41,32.43,44.46,52.55,104.47,127.63,131.45
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 247(M-1),217,184,158,134,121,97,75,55,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2932,2857,1457,1444,1127,1074,1055,965,912,726,653
【0164】
実施例4
<11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Et)の製造>
【0165】
【化28】
【0166】
室温にて、反応器に実施例2で得られた(7Z)-11-クロロ-1,1-エトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Et)(798.79g、2.71mol、純度93.24%)及びP-2Ni触媒(339.53g、Niとして0.10mol)及びEDA(7.43g)を加えて、45~55℃にて10時間撹拌しながら水素を加えた。反応率が100%であることをGCで確認し、その後、反応液に水(118.46g)を加えて分液し、そして水層を除去して、有機層を得た。得られた有機層を減圧下で濃縮し、そして残留物を減圧蒸留することにより、11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Et)(781.02g、2.49mol、純度88.26%、b.p.=150.0~165.0℃/0.40kPa(3.0mmHg))が収率91.79%で得られた。なお、蒸留中に、(7Z)-11-クロロ-1,1-エトキシ-7-ウンデシン(17:X=Cl,R=R=Et)からエトキシ部分がエタノールとして脱離した1-エトキシ-11-クロロ-1,7-ウンデカジエンが不純物として混入した(0.061mol、含有率1.8%)。
【0167】
上記で得られた11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Et)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.19(6H,t,J=6.9Hz),1.26-1.39(6H,m),1.56-1.64(2H,m),1.81(2H,tt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.03(2H,q-like,J=6.9Hz),2.18(2H,dt,J=7.1Hz,7.1Hz),3.48(2H,dt,J=9.4Hz,7.3Hz),3.52(2H,t,J=6.9Hz),3.62(2H,dq,J=9.4Hz,7.3Hz),4.46(1H,t,J=5.7Hz),5.29(1H,dtt,J=10.7Hz,7.3Hz、1.5Hz),5.41(1H,dtt,J=10.7Hz,7.3Hz,1.5Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=15.32,24.31,24.59,27.10,29.07,29.55,32.42,33.51,44.46,60.78,102.86,127.58,131.49
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 275(M-1),231,185,148,103,85,57,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2975,2930,2858,1444,1373,1344,1128,1062,1001,727,653
【0168】
実施例5
<(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Me)の製造>
【0169】
【化29】
【0170】
室温にて、反応器に実施例3で得られた得られた11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Me)(261.97g、0.96mol、純度91.17%)、トリフェニルホスフィン(2:Ar=Ph)(252.40g、0.96mol)、ヨウ化ナトリウム(155.89g、1.04mol)、炭酸カリウム(7.74g、0.056mol)及びアセトニトリル(360.00g)を加えて、75~85℃にて16時間撹拌することにより、(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド(3:Y=I,Ar=Ph,R=R=Me)を調製した。
【0171】
次に、該反応器にテトラヒドロフラン(640.00g)を30~40℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を0~-15℃に冷却した。続いて、カリウム=tert-ブトキシド(103.23g、0.92mol)を加え、その後、1時間撹拌することにより、反応生成物混合物を得た。該反応生成物混合物は、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニリド(4:Ar=Ph,R=R=Me)を反応生成物として含有していると推定される。
【0172】
その後、上記反応器に、(2E)-2-ペンテナール(5)(68.09g、0.80mol、純度98.84%、2E:2Z=98.7:1.3)を-70~-60℃にて滴下した。滴下終了後、20~30℃にて12時間撹拌した。その後、反応液に食塩水(食塩(121.26g)及び水(1212.40g))を加えて分液し、水層を除去して、有機層を得た。そして、該有機層を減圧下濃縮することにより、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Me)の粗生成物(228.31g、0.77mol、純度94.02%、3E5Z9Z:3E5E9Z=92.2:7.8)が粗収率95.68%で得られた。
【0173】
上記で得られた(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド(3:Y=I,Ar=Ph,R=R=Me)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.22-1.34(6H,m),1.45-1.54(2H,m),1.64(2H,sext-like,J=7.6Hz),1.99(2H,dt,J=6.9Hz,6.9Hz),2.24(2H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),3.23(6H,s),3.20-3.28(2H,m),4.29(1H,t,J=5.7Hz),5.31(1H,dtt,J=10.7Hz,7.3Hz,1.5Hz),5.45(1H,dtt,J=10.7Hz,7.3Hz,1.2Hz),7.68-7.75(12H,m),7.83-7.89(3H,m);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.80,0.76,1.13,1.30,1.47,1.63,1.80,105.42,118.87,119.56,131.12,131.22,134.54,134.62,136.00,136.03
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2930,2856,1438,1161,1113,1055,996,736,723,691,531,509
【0174】
上記で得られた(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Me)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.01(3H,t,J=7.3Hz),1.24-1.39(6H,m),1.55-1.61(2H,m),2.03(2H,q-like,J=6.9Hz)、2.12(4H,quin-like,J=7.3Hz),2.21(2H,dt,J=7.7Hz,7.7Hz),3.30(6H,s),4.35(1H,t,J=5.7Hz),5.30(1H,dt,J=10.7Hz,7.3Hz),5.33-5.41(2H,m),5.70(1H,dt,J=14.9Hz,6.5Hz),5.96(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.29(1H,dddt,J=14.9Hz,11.1Hz,1.5Hz,1.5Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.59,24.47,25.85,27.14,27.32,27.80,29.10,29.59,32.42,52.53,104.47,124.59,128.93,129.02,129.22,130.33,136.38
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 280(M-1),248,217,166,121,94,75
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2932,2856,1460,1385,1127,1077,1056,982,947,737
【0175】
実施例6
<(3E,5Z,9Z)-16,16-ジエトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Et)の製造>
【0176】
【化30】
【0177】
室温にて、反応器に実施例4で得られた1-エトキシ-11-クロロ-1,7-ウンデカジエン(0.034mol、純度1.8%)を含む11-クロロ-1,1-ジエトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl、R=R=Et)(436.61g、1.39mol、純度88.26%)トリフェニルホスフィン(2:Ar=Ph)(374.92g、1.46mol)、ヨウ化ナトリウム(232.33g、1.55mol)、炭酸カリウム(12.00g、0.087mol)、及びアセトニトリル(558.00g)を加えて、75~85℃にて15.5時間撹拌することにより、(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド(3:Y=I;Ar=PhR=R=Et)を調製した。
【0178】
次に、該反応器にテトラヒドロフラン(992.00g)を30~40℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を5~-10℃に冷却した。続いて、カリウム=tert-ブトキシド(153.05g、1.36mol)を加え、その後、1時間撹拌することにより、反応生成物混合物を得た。該反応生成物混合物は、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニリド(4:Ar=Ph,R=R=Et)を反応生成物として含有していると推定される。
【0179】
その後、上記反応器に、(2E)-2-ペンテナール(5)(106.27g、1.24mol、純度98.15%、2E:2Z=98.7:1.3)を-10~5℃にて滴下した。滴下終了後、15~25℃にて2時間撹拌した。その後、反応液に食塩水(食塩(187.95g)及び水(1879.22g))を加えて分液し、水層を除去して、有機層を得た。そして、該有機層を減圧下濃縮することにより、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Et)の粗生成物(375.58g、0.91mol、純度74.36%、3E5Z9Z:3E5E9Z=87.4:12.6)が粗収率73.01%で得られた。なお、不純物としての1-エトキシ-11-クロロ-1,7-ウンデカジエンに由来する(7Z,11Z,13E)-1-エトキシ-1,7,11,13-ヘキサデカテトラエンが混入した(0.037mol、純度2.6%)。
【0180】
上記で得られた(4Z)-11,11-ジエトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド(3:Y=I,Ar=Ph,R=R=Et)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.11(6H,t,J=7.3Hz),1.21-1.36(6H,m),1.48(2H,dt,J=8.8Hz,5.7Hz),1.65(2H,sext-like,J=7.7Hz),1.99(2H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),2.24(2H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),3.20-3.28(2H,m),3.42(2H,dq,J=7.3Hz,9.6Hz),3.57(2H,dq,J=6.9Hz,9.6Hz),4.41(1H,t,J=5.8Hz),5.31(1H,dtt,J=10.7Hz,7.3Hz,1.5Hz),5.45(1H,dtt,J=11.1Hz,7.3Hz,1.5Hz),7.68-7.75(12H,m),7.83-7.88(3H,m);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.80,0.97,1.14,1.30,1.46,1.63,1.80,15.68,29.73,34.48,103.70,118.87,119.56,131.12,131.22,134.54,134.2
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2973,2927,2858,1587,1438,1373,1113,1060,996,737,723,691,530,509
【0181】
上記で得られた(3E,5Z,9Z)-16,16-ジエトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Et)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.01(3H,t,J=7.3Hz),1.20(6H,t,J=7.3Hz),1.29-1.39(6H,m),1.57-1.63(2H,m),2.02(2H,q-like、J=6.5Hz),2.12(4H,tt,J=7.7Hz,7.7Hz),2.21(2H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),3.48(2H,dq,J=9.4Hz,7.3Hz),3.63(2H,dq,J=9.4Hz,7.3HZ),4.47(1H,t,J=5.7Hz),5.30(1H,dt,J=10.7Hz,7.3Hz),5.37(2H,dt,J=5.8Hz,3.5Hz),5.70(1H,dt,J=14.9Hz,6.9Hz),5.96(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.29(1H,dddt,J=14.9Hz,11.1Hz,1.5Hz,1.5Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.59,15.33,24.63,25.85,27.15,27.31,27.79,29.10,29.59,33.51,60.76,102.87,124.58,128.91,128.97,129.23,130.37,136.38
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 307(M-1),262,217,121,95,67,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2973,2930,2857,1457,1443,1373,1344,1128,1062,983,946,737
【0182】
実施例7
<(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン(9:R=R=Me)の製造>
【0183】
【化31】
【0184】
室温にて、反応器に実施例3で得られた11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Me)(130.99g、0.48mol、純度91.17%)、トリフェニルホスフィン(2:Ar=Ph)(126.20g、0.48mol)、ヨウ化ナトリウム(77.94g、0.52mol)、炭酸カリウム(3.87g、0.028mol)及びアセトニトリル(180.00g)を加えて、75~85℃にて17時間撹拌することにより、(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド(3:Y=I,Ar=Ph,R=R=Me)を調製した。
【0185】
次に、該反応器にテトラヒドロフラン(320.00g)を30~40℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を0~-15℃に冷却した。続いて、カリウム=t-ブトキシド(51.62g、0.46mol)を加え、その後、1時間撹拌することにより、反応生成物混合物を得た。該反応生成物混合物は、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニリド(4:Ar=Ph,R=R=Me)を反応生成物として含有していると推定される。
【0186】
その後、上記反応器に、ペンタナール(8)(36.27g、0.40mol、純度95.00%)を-70~-60℃にて滴下した。滴下終了後、20~30℃にて12時間撹拌した。その後、反応液に食塩水(食塩(60.63g)及び水(606.20g))を加えて分液し、水層を除去して、有機層を得た。そして、該有機層を減圧下濃縮することにより、(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン(9:R=R=Me)の粗生成物(117.29g、0.38mol、純度90.59%、5Z9Z体と5E9Z体とはGCで分離しなかった)が粗収率94.04%で得られた。
【0187】
上記で得られた(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン(9:R=R=Me)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.24-1.39(10H,m),1.55-1.62(2H,m),1.99-2.05(4H,m),2.05-2.09(4H,m),3.30(6H,s),4.35(1H,t,J=6.1Hz),5.32-5.42(4H,m);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.97,22.32,24.48,26.93,27.13,27.36,27.40,29.11,29.61,31.90,32.43,52.53,104.48,129.09,129.28,130.12,130.31
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 281(M-1),250,219,149,136,121,108,93,75,55,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2928,2857,1463,1385,1128,1078,1056,966,728
【0188】
実施例8
<(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Me)と(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン(9:R=R=Me)の混合物(12)の製造>
【0189】
【化32】
【0190】
室温にて、反応器に実施例3で得られた11-クロロ-1,1-ジメトキシ-7-ウンデセン(1-Z:X=Cl,R=R=Me)(44.75g、0.16mol、純度91.17%)、トリフェニルホスフィン(2:Ar=Ph)(43.13g、0.16mol)、ヨウ化ナトリウム(26.64g、0.18mol)、炭酸カリウム(1.32g、0.0096mol)及びアセトニトリル(61.52g)を加えて、75~85℃にて15.5時間撹拌することにより、(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニルトリフェニルホスホニウム=ヨージド(3:Y=I,Ar=Ph,R=R=Me)を調製した。
【0191】
次に、該反応器にテトラヒドロフラン(109.36g)を30~40℃にて滴下した。滴下終了後、反応液を0~-15℃に冷却した。続いて、カリウム=t-ブトキシド(17.64g、0.16mol)を加えた後、1時間撹拌することにより、反応生成物混合物を得た。該反応生成物混合物は、トリフェニルホスホニウム=(4Z)-11,11-ジメトキシ-4-ウンデセニリド(4:Ar=Ph,R=R=Me)を反応生成物として含有していると推定される。
【0192】
その後、上記反応器に、(2E)-2-ペンテナール(5)(8.72g、0.10mol、純度98.84%)とペンタナール(8)(3.10g、0.034mol、純度95.00%)の混合物(11)を-70~-60℃にて滴下した。滴下終了後、20~30℃にて12時間撹拌した。その後、反応液に食塩水(食塩(20.72g)及び水(207.17g))を加えて分液し、水層を除去して、有機層を得た。そして、該有機層を減圧下濃縮することにより、(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Me)(40.84g、0.092mol、混合物中の含有率63.06%、3E5Z9Z:3E5E9Z=90.9:9.1)と(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン(9:R=R=Me)(40.84g、0.30mol、混合物中の含有率20.59%、5Z9Z体と5E9Z体とはGCで分離しなかった)との混合物(12)が粗収率88.97%で得られた。
【0193】
上記で得られた(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Me)及び(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン(9:R=R=Me)のスペクトルデータはそれぞれ実施例5及び実施例7で得られたスペクトルデータと同じであった。
【0194】
実施例9
<(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)の製造>
【0195】
【化33】
【0196】
反応器に、上記実施例5で得られた(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Me)の粗生成物(228.31g、0.77mol、純度94.02%、3E5Z9Z:3E5E9Z=92.2:7.8)、しゅう酸二水和物(289.48g、2.30mol)、テトラヒドロフラン(765.40g)及び純水(765.40g)を加えて、60~65℃にて3.5時間撹拌した。そして、反応液を50℃に冷却し、ヘキサン(225.10g)を加えて、30分間撹拌した。撹拌終了後、反応液を静置して分液し、水層を除去して、有機層を得た。そして、該有機層を減圧下濃縮し、残留物を減圧蒸留(125.0~134.5℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)(159.21g、0.64mol、純度94.47%、7Z11Z13E:7Z11E13E=91.6:8.4)が、実施例5及び実施例9の2工程の総収率として収率80.21%で得られた。出発原料である1-ブロモ-5-クロロ-1-ペンチン(16:X=Cl,X=Br)から(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)が、実施例1、3、5及び9の全4工程の総収率として67.01%で得られた。
【0197】
上記で得られた(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=1.01(3H,t,J=7.3Hz),1.29-1.41(4H,m),1.63(2H,quin-like,J=7.3Hz),2.04(2H,q-like,J=6.9Hz),2.08-2.15(4H,m),2.21(2H,dt,J=7.3Hz,7.3Hz),2.41(2H,dt,J=1.9Hz,7.3Hz),5.29(1H,dt,J=11.1Hz,7.3Hz),5.33-5.41(2H,m),5.70(1H,dt,J=14.9Hz,6.5Hz),5.96(1H,dd,J=11.1Hz,11.1Hz),6.29(1H,dddt,J=15.0Hz,11.1Hz,1.5Hz,1.5Hz),9.75(1H,t,J=1.9Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.58,21.94,25.84,26.98,27.31,27.75,28.74,29.36,43.83,124.55,128.96,129.14,129.25,129.99,136.41,202.72
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 234(M),149,135,122,107,95,79,67,55,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2962,2931,2856,1727,1460,983,947,739
【0198】
実施例10
<(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)の製造>
【0199】
【化34】
【0200】
反応器に、上記実施例6で得られた(3E,5Z,9Z)-16,16-ジエトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Et)(375.58g、0.91mol、純度74.36%、3E5Z9Z:3E5E9Z=87.4:12.6)(但し、(7Z,11Z,13E)-1-エトキシ-1,7,11,13-ヘキサデカテトラエン(0.037mol、純度2.6%)を不純物として含む)、しゅう酸二水和物(356.53g、2.83mol)、テトラヒドロフラン(942.67g)及び純水(942.67g)を加えて、60~65℃にて2時間撹拌した。そして、反応液を50℃に冷却し、ヘキサン(277.24g)を加えて、30分間撹拌した。撹拌終了後、反応液を静置して分液し、水層を除去して、有機層を得た。そして、該有機層を減圧下濃縮し、残留物を減圧蒸留(125.0~134.5℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)(221.37g、0.90mol、純度94.79%、7Z11Z13E:7Z11E13E=86.6:13.4)が、実施例6及び10の2工程の総収率として収率72.20%で得られた。なお、(7Z,11Z,13E)-1-エトキシ-1,7,11,13-ヘキサデカテトラエンも加水分解され(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)に収束した。出発原料である1-ブロモ-5-クロロ-1-ペンチン(16:X=Cl,X=Br)から(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)が、実施例2、4,6及び10の全4工程の総収率として55.83%で得られた。
【0201】
上記で得られた(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)のスペクトルデータは実施例9で得られたスペクトルデータと同じであった。
【0202】
実施例11
<(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)の製造>
【0203】
【化35】
【0204】
反応器に、上記実施例7で得られた(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン(9:R=R=Me)の粗生成物(117.29g、0.38mol、純度90.59%、5Z9Z体と5E9Z体とはGCで分離しなかった)、しゅう酸二水和物(150.19g、1.19mol)、テトラヒドロフラン(397.10g)及び純水(397.10g)を加えて、60~65℃にて3時間撹拌した。そして、反応液を50℃に冷却し、ヘキサン(116.79g)を加えて、30分間撹拌した。撹拌終了後、反応液を静置して分液し、水層を除去して、有機層を得た。そして、該有機層を減圧下濃縮し、残留物を減圧蒸留(110.4~130.6℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)(87.73g、0.35mol、純度93.90%、7Z11Z:7Z11E=94.7:5.3)が、実施例7及び10の2工程の総収率として収率87.13%で得られた。出発原料である1-ブロモ-5-クロロ-1-ペンチン(16:X=Cl,X=Br)から(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)が、実施例1、3、7及び11の全4工程の総収率として72.79%で得られた。
【0205】
上記で得られた(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)のスペクトルデータを以下に示す。
〔核磁気共鳴スペクトル〕H-NMR(500MHz,CDCl):δ=0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.25-1.39(8H,m),1.63(2H,tt,J=7.3Hz,7.3Hz),2.02(4H,quin-like,J=6.2Hz),2.07(4H,t,J=2.7Hz),2.41(2H,dt,J=1.9Hz,7.3Hz),5.31-5.41(4H,m),9.76(1H,tJ=1.9Hz);13C-NMR(500MHz,CDCl):δ=13.96,21.95,22.31,26.92,26.96,27.31,27.39,28.75,29.38,31.88,43.84,129.02,129.51,129.79,130.35,202.74
〔マススペクトル〕EI-マススペクトル(70eV):m/z 236(M),218,193,137,123,109,95,81,67,55,41
〔赤外吸収スペクトル〕(D-ATR):νmax=2928,2857,2715,1728,1458,727
【0206】
実施例12
<(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)と(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)の混合物(13)の製造>
【0207】
【化36】
【0208】
反応器に、上記実施例8で得られた(3E,5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-3,5,9-ヘキサデカトリエン(6:R=R=Me)(40.84g、0.092mol、混合物中の含有率63.06%、3E5Z9Z:3E5E9Z=90.9:9.1)と(5Z,9Z)-16,16-ジメトキシ-5,9-ヘキサデカジエン(9:R=R=Me)(40.84g、0.30mol、混合物中の含有率20.59%、5Z9Z体と5E9Z体とはGCで分離しなかった)との混合物(12)、しゅう酸二水和物(45.99g、0.36mol)、テトラヒドロフラン(121.60g)及び純水(121.60g)を加えて、60~65℃にて3時間撹拌した。そして、反応液を50℃に冷却し、ヘキサン(35.76g)を加えて、30分間撹拌した。撹拌終了後、反応液を静置して分液し、水層を除去して、有機層を得た。そして、該有機層を減圧下濃縮し、残留物を減圧蒸留(110.4~123.0℃/0.40kPa(3.0mmHg))することにより、(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)(24.42g、0.078mol、混合物中の含有率75.23%、7Z11Z13E:7Z11E13E=90.6:9.4)と(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)(24.42g、0.023mol、混合物中の含有率21.83%、7Z11Z:7Z11E=94.3:5.7)との混合物(13)が、実施例8及び12の2工程の総収率として収率75.37%で得られた。
【0209】
上記で得られた(7Z,11Z,13E)-7,11,13-ヘキサデカトリエナール(7)及び(7Z,11Z)-7,11-ヘキサデカジエナール(10)のスペクトルデータはそれぞれ実施例9及び実施例11で得られたスペクトルデータと同じであった。