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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151865
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】積層構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20220929BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20220929BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H05K1/03 630H
B32B15/04 Z
B32B27/20 Z
H01L23/12 J
H01L23/36 C
H05K1/03 630E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050654
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021052753
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】澤村 敏行
(72)【発明者】
【氏名】古賀 裕也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 朗
【テーマコード(参考)】
4F100
5F136
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA14B
4F100AB17C
4F100AK01B
4F100AK33B
4F100AK46B
4F100AK53B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA32
4F100CA23B
4F100DC21C
4F100DE01B
4F100EH46
4F100EJ20
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100JA04B
4F100JB13B
4F100JG01C
4F100JG04B
4F100JJ01A
4F100YY00A
4F100YY00C
5F136BB05
5F136DA21
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
5F136FA52
5F136FA63
5F136FA82
(57)【要約】
【課題】絶縁層の絶縁性が低下することなく、かつ絶縁層内のボイドを低減させた絶縁層を備えた、積層構造体を提供する。
【解決手段】熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体と、前記熱伝導体の少なくとも一方の面に積層された絶縁層と、前記絶縁層の前記熱伝導体が積層された面とは反対の面に配置された、導電層と、を備えた積層構造体であって、前記絶縁層と前記導電層との積層面は、絶縁層と導電層が積層した積層部と導電層が存在しない空白部とが存在し、前記絶縁層と前記導電層との積層面において、前記積層部と前記空白部とが同一平面上に存在し、前記導電層は厚さ100μm以上の銅板であり、かつ、絶縁層表面の前記空白部の銅濃度が10,000ppm以下である、積層構造体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体と、
前記熱伝導体の少なくとも一方の面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層の前記熱伝導体が積層された面とは反対の面に配置された、導電層と、を備えた積層構造体であって、
前記絶縁層と前記導電層との積層面は、絶縁層と導電層が積層した積層部と導電層が存在しない空白部とが存在し、
前記絶縁層と前記導電層との積層面において、前記積層部と前記空白部とが同一平面上に存在し、
前記導電層は厚さ100μm以上の銅板であり、
かつ、絶縁層表面の前記空白部の銅濃度が10,000ppm以下である、積層構造体。
【請求項2】
熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体と、
前記熱伝導体の少なくとも一方の面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層の前記熱伝導体が積層された面とは反対の面に配置された、パターニングされた導電層と、を備えた積層構造体であって、
前記絶縁層と前記導電層との積層面は、絶縁層と導電層が積層した積層部と導電層が存在しない空白部が存在し、
前記絶縁層と前記導電層との積層面において、前記積層部と前記空白部とが同一平面上に存在し、
前記導電層は厚さ100μm以上の銅板であり、
かつ、前記空白部と積層部との境界部分において、導電層の側面と前記絶縁層とによって形成される角度が90°±10°である、積層構造体。
【請求項3】
前記絶縁層は、マトリックス樹脂に窒化ホウ素凝集粒子が含有された樹脂シートである、請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法であって、
前記絶縁層が、無機フィラー、熱硬化性樹脂及び熱硬化性触媒を含有する樹脂組成物を用いて得られる樹脂シートであり、
該無機フィラーは凝集無機フィラーを含み、
該熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含み、
該熱硬化性触媒の融点が120℃以上であり、
下記(a)工程及び(b)工程を有するものである、積層構造体の製造方法。
(a)樹脂組成物を用いてシートを形成する工程
(b)(a)工程で得られたシートを、95℃以下で加熱し、シートの反応率を50%以上とする工程
なお、シートの反応率は以下により求められる。
(反応率)
示差走査熱量測定(DSC)により40℃から250℃まで10℃/minで昇温した際に得られる発熱ピークの発熱量から下記式により算出する。
反応率(%)=(1-((b)工程後の発熱量/(a)工程後の発熱量))×100
【請求項5】
前記樹脂組成物の樹脂成分に対して前記熱硬化性触媒を5質量%以下含むものである、請求項4に記載の積層構造体の製造方法。
ここで樹脂成分とは前記樹脂組成物から無機フィラーと溶剤を含む場合は溶剤を除いた成分である。
【請求項6】
前記熱硬化性触媒が、イミダゾールから誘導される構造を有する化合物及び/又はジシアンジアミドを含むものである、請求項4または5に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項7】
前記(b)工程において、シートの加熱時間が5時間以下である、請求項4~6のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
【請求項8】
(b)工程において、加熱と同時にプレス圧を0.1MPa以上1000MPa以下の範囲で加圧するものである、請求項4~7のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパワーデバイスの基板として有用な、積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子機器の高性能化及び小型化が急速に進行している。これに伴い、電気素子の発熱量が大きくなっている。そのため、パワーデバイスを搭載する金属ベースの回路基板には、絶縁性と共に、優れた放熱性が要求されている。
【0003】
パワーデバイスに用いられる基板の例としては、金属基板などの熱伝導体上にセラミックなどの絶縁層を設け、その上に銅などの金属箔からなる電極回路を設けた基板が用いられている(例えば、特許文献1や特許文献2等)。
【0004】
一方、グリーンシートの形成方法において、グリーンシート上に導電パターンを銅ペーストで形成する方法が用いられている(特許文献4及び5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-64661号公報
【特許文献2】特開2016-106395号公報
【特許文献3】国際公開第98/24122号
【特許文献4】特開昭61-208889号公報
【特許文献5】特開平06-104552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献で開示された方法で製造されたパワーデバイス基板の電極回路は、エッチングによってパターニングされることが一般的であり、そのため導電体としては200μm以下の薄い金属箔が用いられ、大電流が流れるようなパワー半導体等の回路に使用する際にはその配線抵抗が問題となっていた。また、導電体に銅箔を用いた場合、エッチング時には絶縁層上に銅イオンが残存する。このように銅イオンが残存する場合、銅イオンが絶縁層に移動することで絶縁層の絶縁性が低下するという問題がある。
【0007】
一方で、エッチングをすることなくパターニングされた電極を設けるためには、予めパターニングされた電極を絶縁層上に配置し、プレスして絶縁層と接着する方法が考えられる。しかしながら、予めパターニングされた電極部分をプレスする場合、絶縁層のうち電極が積層してしない箇所はプレス圧力がかからず、絶縁層の一部に凹みが生じることがある。また、放熱フィラーを含有させた樹脂絶縁層の場合には、プレス圧力がかからない箇所にボイドが残る場合があり、放熱性に問題を生じる場合がある。
更に、電極を絶縁層上に配置し、モールド樹脂でモールドする電極回路の製造方法がある(特許文献3参照)。この場合は、モジュールごとに金型を要するためコストを要するという問題点や、回路が大きい場合には金型も大きくなりコストを要する上に基板との線膨張差によりひび割れが生じやすいなどの問題点があった。
【0008】
また、グリーンシート上に導電パターンを銅ペーストで形成する方法では、焼成時に歪みやボイドが生じることがあり、また銅ペーストから得られた導電層はボイドを含むため導電性や熱伝導性が不十分となるなどの問題点があった。
本発明は、絶縁層の絶縁性が低下することなく、かつ絶縁層内のボイドを低減させた絶縁層と、一定以上の厚みの銅板を用いることにより導電性と熱伝導性を兼ね備えた導電層を備えた、積層構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討をした結果、すでにパターニングされた厚さ100μm以上の銅板からなる電極を絶縁層上に配置した後、特定の方法でプレスするなどの方法により、上記課題を解決できる積層構造体を得られることを見出した。
本発明は、以下の要旨を含む。
【0010】
[1]熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体と、
前記熱伝導体の少なくとも一方の面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層の前記熱伝導体が積層された面とは反対の面に配置された、導電層と、を備えた積層構造体であって、
前記絶縁層と前記導電層との積層面は、絶縁層と導電層が積層した積層部と導電層が存在しない空白部とが存在し、
前記絶縁層と前記導電層との積層面において、前記積層部と前記空白部とが同一平面上に存在し、
前記導電層は厚さ100μm以上の銅板であり、
かつ、絶縁層表面の前記空白部の銅濃度が10,000ppm以下である、積層構造体。
[2]熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導体と、
前記熱伝導体の少なくとも一方の面に積層された絶縁層と、
前記絶縁層の前記熱伝導体が積層された面とは反対の面に配置された、パターニングされた導電層と、を備えた積層構造体であって、
前記絶縁層と前記導電層との積層面は、絶縁層と導電層が積層した積層部と導電層が存在しない空白部が存在し、
前記絶縁層と前記導電層との積層面において、前記積層部と前記空白部とが同一平面上に存在し、
前記導電層は厚さ100μm以上の銅板であり、
かつ、前記空白部と積層部との境界部分において、導電層の側面と前記絶縁層とによって形成される角度が90°±10°である、積層構造体。
[3]前記絶縁層は、マトリックス樹脂に窒化ホウ素凝集粒子が含有された樹脂シートである、[1]または[2]に記載の積層構造体。
[4][1]~[3]のいずれか1に記載の積層構造体の製造方法であって、
前記絶縁層が、無機フィラー、熱硬化性樹脂及び熱硬化性触媒を含有する樹脂組成物を用いて得られる樹脂シートであり、
該無機フィラーは凝集無機フィラーを含み、
該熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含み、
該熱硬化性触媒の融点が120℃以上であり、
下記(a)工程及び(b)工程を有するものである、積層構造体の製造方法。
(a)樹脂組成物を用いてシートを形成する工程
(b)(a)工程で得られたシートを、95℃以下で加熱し、シートの反応率を50%以上とする工程
なお、シートの反応率は以下により求められる。
(反応率)
示差走査熱量測定(DSC)により40℃から250℃まで10℃/minで昇温した際に得られる発熱ピークの発熱量から下記式により算出する。
反応率(%)=(1-((b)工程後の発熱量/(a)工程後の発熱量))×100
[5]前記樹脂組成物の樹脂成分に対して前記熱硬化性触媒を5質量%以下含むものである、[4]に記載の積層構造体の製造方法。
ここで樹脂成分とは前記樹脂組成物から無機フィラーと溶剤を含む場合は溶剤を除いた成分である。
[6]前記熱硬化性触媒が、イミダゾールから誘導される構造を有する化合物及び/又はジシアンジアミドを含むものである、[4]または[5]に記載の積層構造体の製造方法。
[7]前記(b)工程において、シートの加熱時間が5時間以下である、[4]~[6]のいずれか1に記載の積層構造体の製造方法。
[8](b)工程において、加熱と同時にプレス圧を0.1MPa以上1000MPa以下の範囲で加圧するものである、[4]~[7]のいずれか1に記載の積層構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、絶縁層の絶縁性が低下することなく、かつ絶縁層内のボイドを低減させた絶縁層と、一定以上の厚みの銅板を用いることにより導電性と熱伝導性を兼ね備えた導電層を備えた、積層構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る積層構造体の断面模式図である。
図2図1の一点鎖線部分を拡大した模式図である。
図3】従来の積層体の積層面を示す模式図である。
図4】従来の積層体の積層面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本発明の実施形態に係る積層構造体は、熱伝導体と、該熱伝導体の少なくとも一方の面に積層された絶縁層と、該絶縁層の熱伝導体が積層された面とは反対側の面に積層された導電層と、を備え、前記導電層は厚さ100μm以上の銅板である。
本発明の積層構造体が優れた絶縁性と放熱性を奏する理由としては、以下が挙げられる。絶縁層表面の空白部の銅濃度が10,000ppm以下であることにより、パターン間の絶縁性が保たれる。また、導電層を厚さ100μm以上の銅板とすることで導電性と熱伝導性を兼ね備えることができる。さらに、前記絶縁層と前記導電層との積層面において、前記積層部と前記空白部とが同一平面上に存在することで、電界集中を避け、また絶縁層の厚みを一定にすることで良好な絶縁性が得らえる。
また、絶縁層に特定の組成を用いて、特定の工程を用いて反応させることにより、熱伝導性と絶縁層だけでなく、硬化前のシート状態でのシェルフライフと硬化時の反り防止の効果が得られる。
【0015】
本実施形態に係る積層構造体の一形態を、図1を用いて説明する。図1は積層構造体を模式的に示しており、熱伝導体1と、絶縁層2と、導電層3を有する。
<<<熱伝導体1>>>
熱伝導体1は、熱伝導率が高い物質であり、通常熱伝導率が10W/m・K以上であり、20W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・K以上であることがより好ましい。熱伝導率が高い方が、パワーデバイスの放熱基板として好適である。
【0016】
このような高い熱伝導率を有する熱伝導体としては、各種金属が挙げられ、具体的には銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、鉄、これらの合金、セラミックスなどが用いられる。
【0017】
熱伝導体の形状や大きさは特段限定されず、積層構造体の用途に応じて適宜選択される。
また、熱伝導体の厚さも特段限定されず、パワーデバイスの放熱基板として用いられる場合には、デバイスの発熱量にもよるが、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また通常200mm以下、好ましくは100mm以下である。大きさは特に限定されず、通常モールド樹脂でモールドすることが困難な500mm以上の基板にも適用できる。また、厚さのみならず、その熱伝導体の大きさも大きいものにすることができ、その1辺が100mm以上の大きなものにも適用できる。
また、熱伝導体の絶縁層が積層されていない側に、放熱性を向上させるためにフィンが形成されていてもよい。
【0018】
<<<絶縁層2>>>
絶縁層2は、導電層3が電極として使用され得ることから、絶縁性を有する層である。絶縁層2に求められる絶縁性は、体積抵抗率が室温にて通常1×1012Ωcm以上であり、1×1013Ωcm以上であることが好ましく、1×1014Ωcm以上であることが好ましい。
一方で、積層構造体が放熱基板として用いられる場合には、絶縁層2は高い熱伝導率を有することが好ましい。この場合、熱伝導率が0.5W/m・K以上であり、1.0W/m・K以上であることが好ましく、2.0W/m・K以上であることがより好ましく、5.0W/m・K以上であることがより好ましく、7.0W/m・K以上であることがより好ましく、10.0W/m・K以上であることがより好ましい。
【0019】
このような絶縁性を有し、好ましくは熱伝導率を有する絶縁層2として、本実施形態においては、樹脂中に熱伝導性粒子を含有する樹脂シートであることが好ましく、樹脂中に窒化ホウ素粒子を含有する樹脂シートであることがより好ましい。
樹脂シートを形成するマトリクス樹脂としては、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも制限なく用いることができる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができ、熱硬化性が好ましい。
樹脂シートは、マトリックス樹脂等を含んだ樹脂組成物を用いて形成される。樹脂組成物は、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱伝導性粒子、硬化剤、熱硬化性触媒等を含有していてもよい。
【0020】
<<熱硬化性樹脂>>
熱硬化性樹脂としては、例えば国際公開第2013/081061号に例示されたものを用いることができ、特にエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えばナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格、ビスフェノール骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂、それらを水添したエポキシ樹脂、脂環式エポキシを有するエポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルやペンタエリスリトールポリグリシジルなどの脂肪族グリシジル基を含むエポキシ樹脂、グリシジルエステルを含むエポキシ樹脂などが挙げられる。
中でも、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格及びビフェニル骨格のうちの少なくとも1つ以上の骨格を有するフェノキシ樹脂を含むことが好ましい。これらのエポキシ樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、分子量の異なる二種以上のエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0022】
本発明で用いるエポキシ樹脂には多官能エポキシ樹脂を含有することがより好ましい。
多官能エポキシ樹脂とは、一分子あたりに3個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有するエポキシ樹脂である。
【0023】
本発明の樹脂シートの貯蔵弾性率を高くする、特にパワー半導体など発熱量の多い場合に重要になる高温時の貯蔵弾性率を高くする観点からは、分子内に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有するエポキシ樹脂が好ましく、また分子内に3個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有するエポキシ樹脂がさらに好ましく、さらに分子内に4個以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂がより一層好ましい。分子内に複数のオキシラン環(エポキシ基)、特にグリシジル基を有することで、硬化物の架橋密度が向上し、得られる樹脂シートがより高強度となる。それにより、吸湿リフロー試験において樹脂シートに内部応力が発生した際に、樹脂シートが変形したり、破壊したりせずに、形態を保持することで、樹脂シート内にボイド等の空隙が発生するのを抑制することができる。
また、樹脂シートの貯蔵弾性率を高くするという観点から、多官能エポキシ樹脂の分子量は1,000以下であることが好ましく、800以下であることが好ましい。また、下限は特に限定されないが、100以上である。また、より低吸湿及び高架橋を達成する観点から、窒素原子を含有するアミン系もしくはアミド系の構造を含まない多官能エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0024】
多官能エポキシ樹脂を添加することにより、極性の高いオキシラン環(エポキシ基)を高密度で導入することが可能であり、それにより、ファンデルワールス力や水素結合といった物理的相互作用の効果が増し、積層構造体における導電層と絶縁層(樹脂シート)との密着性を向上させることができる。また、多官能エポキシ樹脂を添加することにより、樹脂シートの貯蔵弾性率を高くすることができ、それにより被着体である金属の凹凸に樹脂組成物の硬化物が入り込んだ後、強固なアンカー効果を発現し、導電層と樹脂シートとの密着性を向上させることができる。
【0025】
一方で、多官能エポキシ樹脂を導入することにより、樹脂組成物の吸湿性が高くなる傾向にあるが、オキシラン環(エポキシ基)の反応性を向上させることで、反応途中の水酸基量を減らし、吸湿性の増加を抑制することができる。また、前述した特定のエポキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂を組み合わせて樹脂組成物を製造することにより、樹脂シートの高弾性化と低吸湿化を両立することが可能となる。
【0026】
多官能エポキシ樹脂としては、具体的にはエポキシ基を3つ以上有するエポキシ樹脂が好ましく、例えばナガセケムテックス社製の、EX321L、DLC301、DLC402、昭和電工社製のBATG、PETG等を用いることができる。
これらの多官能エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(含有量)
本発明の樹脂シートを形成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を、溶剤を含む場合は溶剤を除く本発明の樹脂組成物100質量%中に5~90質量%、特に10~60質量%含有することが好ましい。熱硬化性樹脂成分の含有量が上記下限以上であると、成形性が良好となり、上記上限以下であると、他の成分の含有量を確保することができ、熱伝導性を高めることができる。
【0028】
また、本発明の樹脂組成物の内、無機フィラー、熱硬化性触媒及び溶剤を含む場合は溶剤を除く成分の主成分がエポキシ樹脂であることが好ましい。ここで主成分とは、最も多い成分のことを指す。
無機フィラー及び熱硬化性触媒を除く樹脂組成物中のエポキシ樹脂の割合は特に限定されないが、20質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることが好ましい。また、上限値は100質量%であり、すべてエポキシ樹脂であってもよい。エポキシ樹脂の割合が上記範囲にあることで、低吸湿性、高弾性率、高靱性、反応制御が容易となり、高リフロー耐性、サイクル試験における高信頼性、高熱伝導率の効果を発現する傾向にある。
【0029】
また、本発明の樹脂シートを形成する樹脂組成物は、前述の好適なエポキシ樹脂である多官能エポキシ樹脂を、全エポキシ樹脂中に5質量%以上含有することが好ましく、10質量%以上含有することがより好ましい。また、50質量%以下含有することが好ましく、40質量%以下含有することがより好ましい。多官能エポキシ樹脂の含有量が上記下限以上であると、多官能エポキシ樹脂を含有することによる前述の効果を有効に得ることができる。一方、多官能エポキシ樹脂の含有量が上記上限以下であることにより、硬化物の吸湿性を抑制し、且つ硬化物の強度性能を優れたものにし、それらの性能を両立することが可能となる。
【0030】
製膜性、低吸湿、柔軟性の観点から、本発明で用いるエポキシ樹脂には高分子量のエポキシ樹脂を含有することがより好ましい。高分子量のエポキシ樹脂は、具体的には質量平均分子量が10,000以上のエポキシ樹脂であることが好ましく、また質量平均分子量が20,000以上のエポキシ樹脂であることがより好ましく、さらに質量平均分子量が30,000以上であることが特に好ましい、また、80,000以下のエポキシ樹脂であることがより一層好ましい。
高分子量のエポキシ樹脂はより疎水性であることが好ましく、具体的にはエポキシ成分のエポキシ当量は大きい方がよい。具体的には、5,000g/当量以上が好ましく、7,000g/当量以上がより好ましい。また、20,000g/当量以下が好ましい。
【0031】
なお、ここで、エポキシ樹脂の質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の値である。また、エポキシ当量とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
【0032】
このような高分子量のエポキシ樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよく、さらに高分子量ではないその他のエポキシ樹脂を併用してもよい。
【0033】
<<硬化剤>>
これらの熱硬化性樹脂と硬化する硬化剤を用いることもできる。シートに含まれている硬化剤は特に限定されないが、好ましい硬化剤は、フェノール樹脂、又は芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物である。この好ましい硬化剤の使用により、耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた樹脂シートの硬化物を得ることができる。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記フェノール樹脂は、特に限定されない。上記フェノール樹脂の具体例としては、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ-o-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-m-ヒドロキシフェニル)メタン、又はポリ(ジ-p-ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。なかでも、絶縁シートの柔軟性及び難燃性をより一層高めることができるので、樹脂シートの力学物性および耐熱性向上のためには剛直な主査骨格を持つノボラック型フェノール樹脂やトリアジン骨格を有するフェノール樹脂が好ましく、又は未硬化シートの柔軟性および樹脂シートのじん性向上のためにはアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
【0035】
<<熱硬化性触媒>>
本発明の樹脂シートを形成する樹脂組成物は、熱硬化性触媒を含んでいてもよい。特に融点が120℃以上の熱硬化性触媒を含むことが好ましい。この熱硬化性触媒を用いることで、保管時の熱硬化性樹脂の反応速度を低下させることができ、シェルフライフを向上させることができる。
【0036】
熱硬化性触媒は特に限定されず、融点が120℃以上の熱硬化性触媒を用いれば特に限定されない。好ましくは融点が150℃以上であり、より好ましくは200℃以上である。上限は特に限定されないが300℃以下である。これらの範囲であることで、保管時の熱硬化性樹脂の反応速度を低下させる効果が得られる傾向にある。
本発明の樹脂組成物に含まれる熱硬化性触媒は、1種でもよく、複数種用いてもよい。複数種用いる場合、その少なくとも1種の融点が120℃以上であればよい。複数種の熱硬化性触媒を用いる場合、その融点は特に限定されないが、全て120℃以上であることが好ましい。
また、120℃未満の融点の熱硬化性触媒を併用する場合には、全熱硬化性触媒中の10質量%以下であることが好ましい。
【0037】
融点が120℃以上の熱硬化性触媒としては、例えば、イミダゾールから誘導される構造を有する化合物、ジシアンジアミド、鎖状又は環状の3級アミン;有機リン系化合物、4級ホスホニウム塩類、有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類等が挙げられる。また、有機金属化合物類、4級アンモニウム塩類、金属ハロゲン化物等を用いることもできる。前記有機金属化合物類としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等が挙げられる。
これらの中でも、イミダゾールから誘導される構造を有する化合物及び/又はジシアンジアミドであることが保存安定性や硬化物の耐熱性の観点より好ましい。
また、熱硬化性触媒中のイミダゾールから誘導される構造を有する化合物及びジシアンジアミドの割合は特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがよりさらに好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、上限は特になく、100質量%であってもよい。
また、イミダゾールから誘導される構造を有する化合物とジシアンジアミドを併用する場合、その比率も特に限定されない。
【0038】
融点が120℃以上の、イミダゾールから誘導される構造を有する化合物、及びジシアンジアミドとしては、例えば、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル―(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン イソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0039】
樹脂組成物中の熱硬化性触媒の含有量は、樹脂成分100質量%中に5質量%以下含むことが好ましく、4.5質量%以下含むことがより好ましく、4質量%以下含むことがさらに好ましい。また、下限は特に限定されないが、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。
ここで、樹脂成分とは本発明の樹脂組成物から無機フィラーと溶剤を含む場合は溶剤を除いた成分とする。
硬化触媒の含有量が上記範囲であることで、保管時の熱硬化性樹脂の反応速度を低下させることができ、シェルフライフを向上させることができる傾向にある。
【0040】
熱硬化性触媒の平均粒径は特に限定されないが、少なくとも1種以上の熱硬化性触媒の平均粒径が好ましくは15μm以下であり、より好ましくは10μm以下である。また、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは100nm以上であり、さらに好ましくは500nm以上であり、よりさらに好ましくは1000nm以上である。平均粒子径が上記上限以下であることで、樹脂成分への熱硬化性触媒の溶解性が向上し、反応率が向上する傾向にある、また、樹脂シートの弾性率をより高くすることができ、ガラス転移温度を上げることができる傾向にある。さらに、熱硬化性触媒の分散性が向上し、保管安定性が向上する傾向にある。一方、平均粒子径が上記下限以上であることで、熱硬化性触媒自体の2次凝集を抑制し、熱硬化性触媒の分散性が向上し、樹脂組成物の保管安定性が向上する傾向にある。また、樹脂組成物の製造時のハンドリング性も良好となる傾向にある。
複数の熱硬化性触媒の平均粒径は特に限定されないが、複数の熱硬化性触媒の平均粒径が上記範囲であってもよい。
【0041】
<<熱伝導性粒子>>
樹脂シートに含まれる熱伝導性粒子は、熱伝導性を有する粒子であれば制限なく用いることができるが、シートの絶縁性を保つため、絶縁性の高いフィラーが用いられる。特にアルミナ、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化ケイ素、などが好ましく用いられる。
パワー半導体用途にあっては、絶縁性が要求されることから、熱伝導性粒子は体積抵抗率が1×1013Ω・cm以上、特に1×1014Ω・cm以上の絶縁性に優れた無機化合物よりなることが好ましい。中でも、樹脂シートの電気絶縁性が十分であることから、酸化物および窒化物が好ましい。このような熱伝導性粒子として、より具体的には、アルミナ(Al、体積抵抗率1×1014Ω・cm)、窒化アルミニウム(AlN、体積抵抗率1×1014Ω・cm)、窒化ホウ素(BN、体積抵抗率1×1014Ω・cm)、窒化ケイ素(Si、体積抵抗率1×1014Ω・cm)、シリカ(SiO、体積抵抗率1×1014Ω・cm)などが挙げられ、なかでも、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカが好ましく、とりわけアルミナ、窒化ホウ素が好ましい。
【0042】
無機フィラーは、表面処理剤により表面処理がされていてもよい。表面処理剤は、公知の表面処理剤を用いることができる。無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で混合して用いてもよい。
無機フィラーは高い熱伝導性と取扱い性の観点から窒化ホウ素粒子であることが好ましく、窒化ホウ素凝集粒子であることが好ましく、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子であることがより好ましい。カードハウス構造は、例えばセラミックス 43 No.2(2008年 日本セラミックス協会発行)に記載されており、板状粒子が配向せず複雑に積層した構造である。より具体的には、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子とは、窒化ホウ素一次粒子の集合体であって、一次粒子の平面部と端面部が接触している構造を有する窒化ホウ素凝集粒子である。
窒化ホウ素凝集粒子の凝集形態は走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
【0043】
窒化ホウ素凝集粒子は、XRD測定における100軸と004軸のピーク強度比I(100)/I(004)が、通常3.0以上、好ましくは3.1以上、より好ましくは、3.2以上、特に好ましくは、3.3以上である。通常、上限はないが、10以下である。
窒化ホウ素凝集粒子の破壊強度は、通常2.5MPa以上、好ましくは3.0MPa以上、より好ましくは3.5MPa以上、更に好ましくは4.0MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下、更に好ましくは10MPa以下である。
窒化ホウ素凝集粒子の比表面積は通常1m/g以上であるが、好ましくは3m/g以上50m/g以下、より好ましくは5m/g以上40m/g以下である。
【0044】
窒化ホウ素凝集粒子は、体積基準の最大粒子径Dmax(本明細書では、単に「最大粒子径」と記載する場合がある。)が、通常2μm以上であり、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上である。また、通常300μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。
【0045】
また、窒化ホウ素二次粒子の体積基準の平均粒子径D50(以下、単に「平均粒径」と記載する場合がある。)については特に制限はないが、上記体積基準の最大粒子径の値と同様な理由から、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、通常250μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましくは70μm以下である。平均粒径D50を上記範囲とすることにより、樹脂シートの厚み方向に十分な熱伝導率を有し、耐電圧特性も良好な樹脂シートを得ることができる。
【0046】
上記平均粒子径は、例えば、これを適当な溶剤に分散させ、具体的には、分散安定剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する純水媒体中に窒化ホウ素凝集粒子を分散させた試料に対して、堀場製作所社製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920にて粒度分布を測定し、得られた粒度分布から窒化ホウ素凝集粒子の平均粒子径を求めることができる。
窒化ホウ素凝集粒子は、カードハウス構造を有し、好ましくは上記物性を満たすものであれば、その製造方法は限定されない。例えば、特開2015-193752号公報、特開2015-195287号公報、特開2015-195292号公報などに記載の方法で製造することができる。
【0047】
<凝集無機フィラーの含有量>
本発明の絶縁層(樹脂シート)における凝集無機フィラーの含有量は、樹脂シート100質量%中に30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。また、99質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
また、上下限値の組み合わせは特に限定されないが、30質量%以上99質量%以下であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
また、本発明の樹脂シートを形成する樹脂組成物における凝集無機フィラーの含有量は、樹脂組成物100質量%中に30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。また、99質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。
また、上下限値の組み合わせは特に限定されないが、30質量%以上99質量%以下であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
凝集無機フィラーの含有量が上記下限値以上であることで、凝集無機フィラーを含有することによる熱伝導性の向上効果や、線膨張係数の制御効果を十分に得ることができる傾向にある。また、上記上限値以下であることで、樹脂シートの成形性や積層構造体における界面接着性が向上する傾向にある。
【0048】
凝集無機フィラーとは別に、その他の凝集していない無機フィラーを併用する場合、樹脂組成物の凝集無機フィラーとその他の凝集していない無機フィラーとの含有量比は特に限定されないが、質量比で90:10~10:90であることが好ましく、80:20~20:80であることがより好ましい。
【0049】
<凝集無機フィラーの破壊強度>
凝集無機フィラーの破壊強度は特に限定されないが、好ましくは300MPa以下であり、より好ましくは100MPa以下であり、さらに好ましくは50MPa以下であり、よりさらに好ましくは20MPa以下であり、特に好ましくは15MPa以下であり、最も好ましくは10MPa以下である。破壊強度が上記上限値以下であることで、プレス処理したときに凝集無機フィラーの凝集構造が変形し、凝集無機フィラー同士が面接触しやすくなる。一方、破壊強度の下限値は特に限定されないが、取り扱いを容易とする点から、破壊強度は2.5MPa以上が好ましく、より好ましくは3MPa以上であり、さらに好ましくは3.5MPa以上であり、特に好ましくは4MPa以上である。
【0050】
<凝集無機フィラーの弾性率>
凝集無機フィラーの弾性率は特に限定されないが、好ましくは10MPa以上であり、より好ましくは20MPa以上であり、さらに好ましくは30MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上であり、さらに好ましくは55MPa以上である。弾性率が上記下限値以上であれば、凝集無機フィラーがプレス圧力の方向に塑性変形し、凝集構造の崩れを抑制できる傾向にある。一方、弾性率の上限値は特に限定されないが、十分な変形が得られやすい点から、好ましくは5GPa以下であり、より好ましくは2GPa以下であり、さらに好ましくは1.5GPa以下であり、さらに好ましくは1GPa以下、よりさらに好ましくは500MPa以下、特に好ましくは300MPa以下、最も好ましくは150MPa以下である。
凝集無機フィラーが上記弾性率の範囲である場合、プレス処理時に球状を維持しやすい傾向にある。一方、破壊強度が上記範囲であると、凝集無機フィラー同士が接触している部分は変形し、面接触が容易になる傾向にある。凝集無機フィラー内部の高い熱伝導率を維持しながら、凝集無機フィラー界面、及び導電層と絶縁層(樹脂シート)との界面の接触熱抵抗を下げ、全体の熱伝導率を向上することができる。
【0051】
凝集無機フィラーの破壊強度及び弾性率は、凝集無機フィラーが樹脂シート中にある場合には、該凝集無機フィラーが変質しないよう、樹脂シートの樹脂を焼いて凝集無機フィラーを取り出してから、測定することができる。
【0052】
<球状フィラー>
無機フィラーとして球状フィラーを用いてもよい。本発明の球状フィラーは、特に限定されないが、例えば熱伝導率が10W/m・K以上、好ましくは15W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上、例えば20~30W/m・Kで、新モース硬度が3.1以上、例えば5~10であるものが好ましい。このような球状フィラーを上記の凝集無機フィラーと併用することにより、得られる樹脂シートの金属に対する放熱性をさらに高めることができる。
【0053】
ここで「球状」とは、一般的に球形であると認識されるものであればよく、例えば、平均円形度が0.4以上を球状としてもよく、0.6以上を球形としてもよい。通常平均円形度の上限は1である。円形度の測定はその投影画像を画像処理することによって測定することができ、例えばシスメックス社のFPIAシリーズ等で測定することができる。
【0054】
球状フィラーは、アルミナ、合成マグネサイト、結晶性シリカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛および酸化マグネシウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。これらの好ましい球状フィラーの使用により、得られる樹脂シートの放熱性をより一層高めることができる。
【0055】
球状フィラーの平均粒子径は、0.5μm以上、40μm以下の範囲内にあることが好ましい。これら範囲であることで、樹脂シートの絶縁破壊特性を維持しやすくなる。
【0056】
<その他フィラー>
本発明においては、上記無機フィラーとは別に、有機フィラーを併用してもよい。本発明において、有機フィラーとは、エポキシ基を含まず、また熱硬化性触媒の定義に入らず、有機成分で構成される室温で固体の成分である。それらは木粉等の天然物、変性されていてもよいセルロース、デンプン、各種有機顔料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、併用してもよい。具体例としては、アクリル樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子などがある。
有機フィラーが含まれていることで、樹脂組成物に適度な伸び性を付与し、発生する応力を緩和し、温度サイクル試験でのクラックの発生を抑えることができる場合がある。
【0057】
上記有機フィラーの平均粒径の上限は、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。これらの上限値以下にすることで、熱伝導率の低下の恐れなしに様々な厚さの樹脂シートを作成することができる。有機フィラーの粒径も、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
【0058】
<<その他の成分>>
本発明の樹脂シートを形成する樹脂組成物には、本発明の効果を損なうことのない範囲において、上記以外のその他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、樹脂組成物を用いて樹脂シートを製造する際に、場合により使用する無機フィラーと樹脂組成物との界面接着強度を改善するシランカップリング剤などの表面処理剤、還元剤等の絶縁性炭素成分、粘度調整剤、分散剤、チキソ性付与剤、難燃剤、着色剤、有機溶剤、熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらのうち、分散剤が含まれていることで、均一な樹脂シートを形成することが可能となり、得られる樹脂シートの熱伝導性および絶縁破壊特性を向上させることができる場合がある。また、熱可塑性樹脂が含まれていることで、樹脂組成物に適度な伸び性を付与し、発生する応力を緩和し、温度サイクル試験でのクラックの発生を押さえることができる場合がある。
【0059】
本発明に係る樹脂組成物は、例えば、塗布工程を経てシート状の樹脂シートを成形する際の塗布性の向上のために、有機溶剤を含有していてもよい。
本発明に係る樹脂組成物が含有し得る有機溶剤の例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
本発明に係る樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、その含有量は、樹脂シート作製時の樹脂組成物の取り扱い性、硬化前の形状、乾燥条件等に応じて適宜決定される。該樹脂組成物が、塗布工程に供するスラリー状である場合、有機溶剤は該樹脂組成物又は前述の無機フィラー添加後の本発明の樹脂組成物中の固形分(溶剤以外の成分の合計)濃度が10~90質量%、特に40~80質量%となるように用いることが好ましい。
また、樹脂組成物が、塗布及び乾燥等の工程を経たシート状の場合、有機溶剤は本発明の樹脂組成物又は後述の無機フィラー添加後の本発明の樹脂組成物中の固形分(溶剤以外の成分の合計)濃度が95質量%以上であることが好ましく、特に98質量%以上となるように用いることがより好ましい。
【0061】
<<<導電層3>>>
導電層3は、高い導電性を有する層であり、本実施形態の積層構造体がパワーデバイスの放熱基板となる場合には、電極となり得る。導電層3の導電性は、通常1×10Sm-1以上であり、1×10Sm-1以上であることが好ましく、1×10Sm-1以上であることがより好ましい。
【0062】
導電性を有する導電層としては、銅板を用いる。銅板を用いることで、良好な導電性と熱伝導性が得らえる。
また、導電層3の厚さは100μm以上であり、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上、より好ましくは250μm以上、より好ましくは300μm以上である。また、上限は特に限定されないが、100,000μm以下である。この範囲であることで、良好な導電性と熱伝導性が得らえる。
さらに、エッチングを行わないことにより、後述の空白部の絶縁層上に導電層を構成する金属の残留を低いレベルに抑えることが容易にできる。
なお、厚さの測定は膜厚計で銅板の中央付近を三か所以上測定し、その平均値とする。
【0063】
<<<積層構造体>>>
本実施形態において積層構造体の一形態としては、絶縁層2と導電層3との積層構造に特徴を有し、絶縁層2と導電層3との積層面は、絶縁層2と導電層3が積層した積層部と、導電層が存在しない空白部とが存在し、前記積層部と前記空白部とが、同一平面P上に存在する。ここで、図1中の一点鎖線領域の拡大図を図2に示す。
図2において示すとおり、導電層3と絶縁層2との積層面である積層部が、絶縁層2の導電層3側の面の導電層3が存在しない面である空白部と同一平面P上に存在する。ここで、「同一平面上に存在する」とは、絶縁層2と導電層3との積層面が、絶縁層2側に凹んでいないことを意味する。導電層3と絶縁層2とを積層し、これらを圧着により接合する場合には、特に絶縁層2が樹脂を含む場合、図3に示すように絶縁層2には、導電層3からの圧力によって凹みが生じる。一方で本実施形態では、絶縁層2と導電層3との積層面が、絶縁層2側に凹んでいないことを特徴とする。
なお、「同一平面上に存在する」とは、一切の凹みを排除する概念ではなく、絶縁層2の厚さに対して、厚さ方向に10%以下の凹みを有してよく、5%以下の凹みを有してよく、3%以下の凹みを有してよく、2%以下の凹みを有してよく、1%以下の凹みを有してよく、0.5%以下の凹みを有してよく、0.1%以下の凹みを有してよい。
また、前記空白部の絶縁層上の一部には、モールド樹脂が積層されていてもよいが、必ずモールド樹脂が積層されていない空白部も存在しなければならない。
【0064】
また、絶縁層2の導電層3側の表面のうち、導電層3が存在しない空白部において、導電層3を構成する金属濃度が10,000ppm以下である。導電層3がエッチングによりパターニングされて形成される場合には、導電層3を形成する金属が絶縁層2上に残留する。このような残留金属は、絶縁層2の絶縁性に影響を及ぼす場合がある。
上記残留金属濃度は10,000ppm以下であることが好ましく、5,000ppm以下であることがより好ましく、3,000ppm以下であることがより好ましく、1,000ppm以下であることがより好ましく、500ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、5ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。
【0065】
また、前記積層部と前記空白部との境界部分において、導電層3の側面と絶縁層2との交点によって形成される角度が、90°±10°であることが好ましく、90°±5°であることが好ましく、90°±3°であることが好ましく、90°±2°であることがより好ましく、90°±1°であることが更に好ましい。導電層3がエッチングによりパターニングされて形成される場合には、導電層の厚さにもよるが、導電層3の側面がテーパ状になる場合があり、導電層3の側面と絶縁層2との交点が有する角度が90°±10°を外れ易い。
【0066】
また、導電層3の側面は平面であることが好ましい。導電層3がエッチングによりパターニングされて形成される場合には、導電層3の側面に反りが生じたり、エッチング残りが生じる場合がある。その場合には図4に示すように、導電層3の側面が平面にはならない場合がある。
【0067】
また、予めパターニングした導電層3を樹脂でモールドした後、絶縁層2上に配置し、導電層と絶縁層とを接合することもできる。この場合、モールドした導電層が絶縁層2の面積よりも小さい場合には絶縁層の一部に凹みが生じることがあるが、本発明では凹みのない積層体を得ることができる。
【0068】
<<<製造方法>>>
次に、本実施形態に係る積層構造体の製造方法の代表例として、樹脂シートの製造方法及び積層構造体の製造方法A乃至Cを示すが、上記説明した構成を有する限り、これらの方法で製造された積層構造体に限られない。
【0069】
<<樹脂シート製造>>
本発明の絶縁層(樹脂シート)の製造方法は特に限定されないが、絶縁層が、無機フィラー、熱硬化性樹脂及び熱硬化性触媒を含有する樹脂組成物を用いて得られるものであり、
該無機フィラーは凝集無機フィラーを含み、該熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含み、
該熱硬化性触媒の融点が120℃以上であり、下記((a)工程及び(b)工程を有するものであることが好ましい。
(a)樹脂組成物を用いてシートを形成する工程
(b)(a)工程で得られたシートを、95℃以下で加熱し、シートの反応率を50%以上とする工程
なお、シートの反応率は以下により求められる。
(反応率)
示差走査熱量測定(DSC)により40℃から250℃まで10℃/minで昇温した際に得られる発熱ピークの発熱量から下記式により算出する。
反応率(%)=(1-((b)工程後の発熱量/(a)工程後の発熱量))×100
【0070】
また、(a)工程及び(b)工程以外にも他の工程を有していてもよい。
【0071】
<(a)工程>
(a)工程は、樹脂組成物を用いてシートを形成する工程である。シートの形成方法は特に限定されず、樹脂組成物の粘度、形成するシートの膜厚、大きさなどによって適宜選択することができる。
以下、例えばスラリー状の樹脂組成物を用いて樹脂シートを製造する場合方法の一例について説明する。
まず基材の表面に、スラリー状の樹脂組成物を塗布してシート(塗膜。シート状の樹脂組成物。)を形成する。具体的には、スラリー状の樹脂組成物を用いて、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、ブレード法、その他の任意の方法で基材上に塗膜を形成する。スラリー状の樹脂組成物の塗布には、スピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の塗布装置を用いることができる。塗布装置の使用により基材上に任意の膜厚の塗膜を均一に形成することが可能である。
基材としては、後述の銅箔、PETフィルムが一般的に用いられるが、特に限定されない。
また、本発明の樹脂組成物が、塗布及び乾燥等の工程を経たシート状の場合、溶剤を含んでいてもよい。
【0072】
(a)工程として、樹脂組成物を用いて形成したシートを、溶剤、低分子成分等の除去のために、通常10~150℃、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~110℃の温度で乾燥してもよい。乾燥温度が前記上限値以下であると、シート(塗膜)の熱硬化性樹脂の硬化が抑制され、その後の加圧工程でシート(塗膜)中の樹脂が流動し、ボイドを除去しやすくなる傾向にある。また、乾燥温度が前記下限値以上であると、効果的に溶剤等を取り除くことができ生産性が向上する傾向にある。
【0073】
乾燥時間は、特に限定されず、シート(塗膜)の状態、乾燥環境等によって適宜調整することができる。乾燥時間は、80℃未満で乾燥させる場合には1分以上が好ましく、2分以上がより好ましく、5分以上がさらに好ましく、10分以上がさらにいっそう好ましく、20分以上が特に好ましく、30分以上が最も好ましい。一方、乾燥時間は4時間以下が好ましく、2時間以下がより好ましい。80℃以上で乾燥させる場合には、1分以上が好ましく、30分以下が好ましく、20分以下がより好ましく、15分以下がより好ましく、10分以下がより好ましい。
乾燥時間が前記下限値以上であると、十分に溶剤等を除去でき、残留溶剤が樹脂シート内のボイドとなることを抑制できる傾向にある。乾燥時間が前記上限値以下であると、生産性が向上し、製造コストを抑制できる傾向にある。
【0074】
<<積層構造体作製>>
<製造方法A>
製造方法Aは、熱可塑性樹脂を用いて導電層の周囲をモールドし、絶縁層の導電層側の面に係る圧力を一様として、導電層を絶縁層に接着する方法である。具体的には、
厚さ100μm以上の銅板からなる導電層の絶縁層側の面と熱可塑性樹脂の絶縁層側の面とが同一平面を形成するように、軟化点以上に加熱した熱可塑性樹脂により導電層を覆うステップ、
同一平面を形成した導電層と熱可塑性樹脂の絶縁層側の面と、絶縁層とを積層させ、該熱可塑性樹脂の軟化点以下で加圧することで導電層と絶縁層とを接着させるステップ、
絶縁層を硬化させるステップ、及び
硬化した熱可塑性樹脂を取り除くステップ、を有する積層構造体の製造方法である。
導電層と絶縁層とを積層させ、加圧し硬化させるステップは後述する(b)工程で行うことが好ましい。
【0075】
熱可塑性樹脂は特段限定されず、典型的にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが用いられるがこれらに限られない。形状も特段限定されず、通常ペレットが用いられる。熱可塑性樹脂の軟化点は、通常30℃以上であり、50℃以上が好ましく、また通常300℃以下、好ましくは200℃以下である。
【0076】
硬化させた後の熱可塑性樹脂は、絶縁層と導電層との積層体から取り除かれる。この際に、熱可塑性樹脂を用いることで、軟化点に近い温度に加熱することで樹脂が軟化し、離型剤を用いることなく、熱可塑性樹脂を絶縁層と導電層との積層体から取り除くことができる。
【0077】
<製造方法B>
製造方法Bは、熱硬化性樹脂を用いて導電層の周囲をモールドし、絶縁層の導電層側の面に係る圧力を一様として、導電層を絶縁層に接着する方法である。具体的には、
導電層の絶縁層側の面と熱硬化性樹脂の絶縁層側の面とが同一平面を形成するように、熱硬化性樹脂により導電層を覆うステップ、
導電層を覆った熱硬化性樹脂を硬化させるステップ、
同一平面を形成した導電層と熱硬化性樹脂の絶縁層側の面と、絶縁層とを積層させ、加圧し、絶縁層を硬化させるステップ、及び
熱硬化性樹脂を取り除くステップ、を有し、
前記導電層は厚さ100μm以上の銅板である、積層構造体の製造方法である。
導電層と絶縁層とを積層させ、加圧し硬化させるステップは後述する(b)工程で行うことが好ましい。
【0078】
熱硬化性樹脂は特段限定されず、典型的にはゴム性を有するシリコーン樹脂などが用いられるがこれらに限られない。
【0079】
硬化させた後の熱硬化性樹脂は、絶縁層と導電層との積層体から取り除かれる。この際に、シリコーンゴムなどの熱硬化性樹脂を用いることで、離型剤を用いることなく、熱硬化性樹脂を絶縁層と導電層との積層体から取り除くことができる。
【0080】
<製造方法C>
製造方法Cは、絶縁層と導電層とを積層させた状態で、等方圧プレスにより、導電層を絶縁層に接着する方法である。具体的には、
絶縁層と導電層とを積層させるステップ、
該積層体を等方圧プレスするステップ、
絶縁層を硬化させるステップ、を有し、
前記導電層は厚さ100μm以上の銅板である、積層構造体の製造方法である。
導電層と絶縁層とを積層させ、加圧し硬化させるステップは後述する(b)工程で行うことが好ましい。
【0081】
等方圧プレスは、様々な方向から等圧を印加してプレスすることができれば特段限定されないが、例えば、絶縁層と導電層との積層体に追従可能な防水フィルムに収納し、静水圧で加圧する静水圧ラミネートが例示できる。
【0082】
硬化させた後の積層体は、等方圧プレスの際に収納された防水フィルムから取り出される。この際使用する防水フィルムは、市販のものでよい。ナイロン、ポリエチレン、EVAなど、またそれらを積層した袋状のフィルムなどが用いられる。また、積層体から容易に剥離できるため、テフロン(登録商標)シート、シリコンゴムシート、フッ素ゴムシートなどを積層体上に被せて防水フィルムに収納する方法が好ましく用いられる。
【0083】
<(b)工程>
(b)工程は、(a)工程で得られたシートを、95℃以下で加熱し、シートの反応率を50%以上とする工程である。本工程を経ることで、硬化収縮を低減し、最終的な反り量を低減する効果が得られる。
シート(樹脂シート)の反応率は50%以上であればよいが、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、反応率は100%でもよい。樹脂シートの使用形態に合わせ、反応率の上限は適宜調整することができる。
【0084】
シートの加熱温度は95℃以下であれば特に限定されないが、94℃以下がより好ましく、93℃以下がさらに好ましい。また、下限は特に限定されないが、10℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましく、40℃以上がよりさらに好ましく、50℃以上が特に好ましい。この加熱温度が前記数値範囲内であることで、冷却による硬化収縮が減少し、反りを抑制することができ、硬化を進行させることができる傾向にある。
【0085】
加熱時間は、シートの反応率が50%以上となるように適宜調整すればよいが、10時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましい。また、下限は特に限定されないが、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。加熱時間が上記範囲であることで、樹脂シートの製造時間が抑制でき、生産コストを短縮できる傾向にある。また、樹脂シート内の空隙、ボイドを十分に取り除くことができ、熱伝達性能、耐電圧特性を向上できる傾向にある。
【0086】
(b)工程において、加熱と同時に加圧を行ってもよい。加熱に加え加圧を行うことで、無機フィラー同士を接合させヒートパスを形成し、シート内のボイド、空隙を抑制することができる。
加圧時間は加熱時間と同じでもよく、異なっていてもよい。
加圧のプレス圧は、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることがさらに好ましい。また、1000MPa以下であることが好ましく、700MPa以下であることがより好ましく、500MPa以下であることがさらに好ましい。
プレス圧がこの範囲であることで、無機フィラーの二次粒子が破壊することなく、シート状の樹脂シート中に空隙等がない高い熱伝導性を有するシートを得ることができる。また、プレス圧が前記下限値以上であると、無機フィラー間の接触が良好となり、熱伝導パスを形成しやすくなるため、高い熱伝導性を有する樹脂シートを得ることができる傾向にある。
【0087】
(加圧工程)
(a)工程の後、かつ(b)工程の前に加圧工程を有していてもよい。加圧を行うことで、無機フィラー同士を接合させヒートパスを形成し、シート内のボイド、空隙を抑制することができる。
加圧工程の時間は、特に限定されない。加圧工程の時間は、30秒以上が好ましく、1分以上がより好ましく、3分以上がさらに好ましく、5分以上が特に好ましい。また、加圧工程の時間は、1時間以下が好ましく、30分以下がより好ましく、20分以下がさらに好ましい。
加圧時間が前記上限値以下であると、樹脂シートの製造時間を抑制でき、生産コストを短縮できる傾向にある。一方、前記下限値以上であると、樹脂シート(絶縁層)内の空隙、ボイドを十分に取り除くことができ、熱伝達性能、耐電圧特性を向上できる傾向にある。
加圧のプレス圧は、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることがさらに好ましい。また、1000MPa以下であることが好ましく、700MPa以下であることがより好ましく、500MPa以下であることがさらに好ましい。
プレス圧がこの範囲であることで、樹脂シート(絶縁層)内の空隙、ボイドを十分に取り除くことができ、熱伝達性能、耐電圧特性を向上できる傾向にある。
【0088】
(後硬化工程)
(b)工程の後に後硬化工程を有していてもよい。後硬化を行うことで、樹脂シートが完全に硬化し、高温保管の際、基材からのシートの剥離等が抑制できる傾向にある。後硬化の手段は特に限定されないが、加熱、加圧及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
後硬化工程の時間は、特に限定されない。後硬化工程の時間は、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、20分以上がさらに好ましく、30分以上が特に好ましい。また、後硬化工程の時間は、5時間以下が好ましく、4時間以下がより好ましく、3時間半以下がさらに好ましい。
後硬化工程の時間が前記上限値以下であると、樹脂シートの製造時間を抑制でき、生産コストを短縮できる傾向にある。一方、前記下限値以上であることで、高温保管時等において、基材からの剥離が抑制できる傾向にある。
後硬化工程における加熱温度は特に限定されない。後硬化工程の加熱温度は、100℃以上が好ましく、120℃分以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、160℃以上が特に好ましい。加熱温度が前記下限値以上であることで樹脂の未硬化部分を硬化でき、完全に硬化させることで、高温保管の際の基材からの樹脂シートの剥離等を抑制できる傾向にある。
後硬化工程における加圧条件は特に限定されない。後硬化工程の加圧は30MPa以下が好ましく、25MPa以下がより好ましく、20MPa以下がさらに好ましく、15MPa以下が特に好ましい。
加圧条件が前記上限値以下であることで、後硬化工程で樹脂シートのクラック等が生じづらくなる。
【0089】
(b)工程又は(b)工程に加え後硬化工程を経た樹脂シート(絶縁層)の厚さは特に限定されないが、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは80μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上である。また、樹脂シートの厚さは、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。樹脂シートの厚さが前記下限値以上であると、耐電圧特性が得られ、絶縁破壊電圧が向上する傾向にある。また、樹脂シートの厚さが前記上限値以下であると、デバイスの小型化、薄型化を達成でき、得られる樹脂シートの熱抵抗を抑制できる傾向にある。
【実施例0090】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
[原材料]
実施例及び比較例で用いた原材料は以下の通りである。
【0091】
<熱硬化性樹脂>
樹脂成分1:特開2020-63438公報の樹脂成分1に開示される二官能エポキシ樹脂
樹脂成分2:三菱ケミカル社製のビフェニル型固体エポキシ樹脂
樹脂成分3:昭和電工社製 一分子当たりグリシジル基を4個以上有する構造を含む多官能エポキシ樹脂
【0092】
<凝集無機フィラー>
無機フィラー1:国際公開第2015/119198号の実施例に開示される窒化ホウ素凝集粒子の製造方法に準拠して製造した、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子
新モース硬度:2
体積平均粒子径:45μm
【0093】
<その他のフィラー>
無機フィラー2:アドマテックス社製、球状アルミナ粒子
ピーク粒径:15μm、0.6μm
【0094】
<硬化剤>
硬化剤1:フェノール樹脂系硬化剤(明和化成社製「MEH-8000H」)
【0095】
<熱硬化性触媒成分>
熱硬化性触媒1:2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン。イミダゾールから誘導される構造トリアジンから誘導される構造の両方を一分子中に有する(四国化成社製「キュアゾール 2E4MZ-A」)。
分子量:247
融点:215~225℃
熱硬化性触媒2:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成社製「キュアゾール 2PHZ-PW」)
分子量:204
融点:230℃以上(230℃分解)
【0096】
<絶縁層表面の空白部の銅濃度測定>
絶縁層表面の空白部の銅濃度をXPSを用いて測定した。
測定条件は以下の通り。
X線光電子分光法(略称XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy またはESCA)
・装置:KRATOS ULTRA2
・X線源:単色化Al-Kα,出力15kV-225W(15mA)
・帯電中和:Filament current, Filament bias, Charge balance =0.43V,1V,4V
・分光系:パスエネルギー ワイドスペクトル 160eV
ナロースペクトル 80eV(Na1S,Zn2p,Cu2p,Fe2p,Ca2p,Cl2p,S2p,Al2s,Al2p,Br3s)
40eV(Si2p)
20eV(B1s,C1s,N1s,O1s)
・測定領域(Collimation, lens):
ワイドスペクトル,ナロースペクトル 700μm×300μm (Slot,Hybrid)
・取り出し角(表面より):90°
・エネルギー補正:B1s=190.9 eV@BN
【0097】
[実施例1]
<樹脂組成物の調整(合成例1)>
自転公転式撹拌装置を用いて、樹脂成分1、樹脂成分2、樹脂成分3、硬化剤1、熱硬化性触媒1、熱硬化性触媒2、無機フィラー1及び無機フィラー2を下記表1に記載の質量比となるように混合して混合物とした。この混合物を調製する際、上記混合物が塗布スラリーのうち、64質量%(固形分濃度)となるように、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンを各18質量%ずつ用いてスラリー状の樹脂組成物を調製した。
【0098】
【表1】
【0099】
<(a)工程>
得られたスラリー状の樹脂組成物をドクターブレード法でPETフィルム上に塗布し、60℃で120分間加熱乾燥を行った。
【0100】
(a)工程を経たシートを、50℃、147MPaで10分間加圧を行い、厚さ150μmのシートを得た。シート中のメチルエチルケトン及びシクロヘキサノンの合計の含有量は1質量%以下(固形分濃度99質量%以上)であった。このシートをシート1とする。
【0101】
SUS板上に剥離PET(三菱ケミカル製MRV50)を、剥離面を上にして置き、直径20mm、0.5mm厚の円板状銅電極を載せた。電極の上にポリエチレンペレット30gを置き、その上に剥離PETを剥離面を下にして置き、150mm×150mm×3mm厚のSUS板を被せた。
プレス機で175℃で10分間ゆっくり加圧し(5MPa以下程度)その後、150mm×150mm×15mm厚のSUS板二枚に挟んで徐冷した。両側のPETフィルムを剥がして電極下面と周囲の樹脂が面一になったポリエチレンシートを得た。
【0102】
<(b)工程>
シート1を40mm×80mm×2mm厚の銅板に塗布面を下にして貼りつけた。PETフィルムを剥がし、その上に上記の電極下面と周囲の樹脂が面一になったポリエチレンシートを、電極面を下にして載せ、90℃で4.9MPaの圧力で4時間プレスした。その後、プレス機で圧力を保持しながら自然放冷を行った。
その後、ポリエチレンを80℃で加熱しながら剥がして熱伝導体(銅板)上に絶縁層(シート1)とパターニングされた導電体(円板状銅電極)を備えた積層体を得た。絶縁層と電極との積層面は、絶縁層の電極側の面と同一平面上に存在していた。絶縁層上の電極の周囲の部分の銅濃度をXRFで測定したところ、銅濃度は検出限界以下(1,000ppm以下)であった。
得られた積層体の絶縁層の反応率は85%以上であった。
導電層の側面と前記絶縁層とによって形成される角度が90°±5°以内であった。
得られた積層体の耐電圧試験を行ったところ、BDVは8000Vであった。なお、耐電圧測定は、絶縁媒体(フロリナート)中で実施し、500Vステップ昇圧、各ステップ1分の条件で行った。
【0103】
[実施例2]
<(b)工程>
実施例1で作製したシート1を40mm×80mm×2mm厚の銅板に塗布面を下にして貼りつけた。PETフィルムを剥がし、その上に直径20mm、0.5mm厚の円板状銅電極を載せた。その上にシリコンゴムシートを上下に被せた。これを真空パック用ポリ袋(飛龍)に入れ、真空ラミネート機で真空ラミネートを行った。
【0104】
これを、温水ラミネーターを用いて90℃で4.9MPaの圧力で4時間等方圧プレスを行った。その後、真空パック用ポリ袋を開け、熱伝導体(銅板)上に絶縁層(合成例1で作製したシート)とパターニングされた導電体(円板状銅電極)を備えた積層体を得た。絶縁層と電極との積層面は、絶縁層の電極側の面と同一平面上に存在していた。絶縁層上の電極の周囲の部分(絶縁層表面の空白部)の銅濃度をXRFで測定したところ、銅濃度は検出限界以下(1,000ppm以下)であった。
得られた積層体の絶縁層の反応率は85%以上であった。
導電層の側面と前記絶縁層とによって形成される角度が90°±5°以内であった。
得られた積層体の耐電圧試験を行ったところ、BDVは8000Vであった。なお、耐電圧測定は、絶縁媒体(フロリナート)中で実施し、500Vステップ昇圧、各ステップ1分の条件で行った。
【0105】
[実施例3]
<(b)工程>
実施例1で作製したシート1を40mm×80mm×2mm厚の銅板に塗布面を下にして貼りつけた。PETフィルムを剥がし、その上に直径20mm、1.0mm厚の円板状銅電極を載せた。その上にシリコンゴムシートを上下に被せた。これを真空パック用ポリ袋(飛龍)に入れ、真空ラミネート機で真空ラミネートを行った。
【0106】
これを、温水ラミネーターを用いて90℃で4.9MPaの圧力で4時間等方圧プレスを行った。その後、真空パック用ポリ袋を開け、熱伝導体(銅板)上に絶縁層(実施例1で作製したシート1)とパターニングされた導電体(円板状銅電極)を備えた積層体を得た。絶縁層と電極との積層面は、絶縁層の電極側の面と同一平面上に存在していた。絶縁層上の電極の周囲の部分(絶縁層表面の空白部)の銅濃度をXRFで測定したところ、銅濃度は検出限界以下(1,000ppm以下)であった。
得られた積層体の絶縁層の反応率は85%以上であった。
導電層の側面と前記絶縁層とによって形成される角度が90°±5°以内であった。
得られた積層体の2500Vまでの耐電圧試験を行ったところ、2500Vまでの電圧で破壊されなかった。なお、耐電圧測定は、絶縁媒体(フロリナート)中で実施し、500Vステップ昇圧、各ステップ1分の条件で行った。
【0107】
[比較例1]
実施例1で作製したシート1を40mm×80mm×2mm厚の銅板に塗布面を下にして貼りつけた。PETフィルムを剥がし、その上に直径20mm、0.5mm厚の円板状銅電極を載せた。その上に0.5mm厚のシリコンゴムシートと20枚の上質紙を置き、90℃で4.9MPaの圧力でプレスした。その後、プレス機で圧力を保持しながら自然放冷を行った。電極面と絶縁層は同一平面上ではなく、電極のめり込みが見られた。
得られた積層体の絶縁層の反応率は85%以上であったが、導電層の側面と前記絶縁層とによって形成される角度は電極のめり込みのため測定できなかった。
得られた積層体の耐電圧は500V未満であった。なお、耐電圧測定は、絶縁媒体(フロリナート)中で実施し、500Vステップ昇圧、各ステップ1分の条件で行った。
【0108】
[比較例2]
実施例1で作製したシート1を40mm×80mm×2mm厚の銅板に塗布面を下にして貼りつけた。PETフィルムを剥がし、その上に直径20mm、0.5mm厚の円板状銅電極を載せた。その周囲に直径20mmにくり抜いた0.5mm厚のシリコンゴムシートを重ねて置き、90℃で4.9MPaの圧力でプレスした。その後、プレス機で圧力を保持しながら自然放冷を行った。電極面と絶縁層は同一平面上ではなく、電極のめり込みが見られた。得られた積層体の絶縁層の反応率は85%以上であったが、導電層の側面と前記絶縁層とによって形成される角度は電極のめり込みのため測定できなかった。
得られた積層体の耐電圧試験を行ったところ、BDVは2500Vであった。なお、耐電圧測定は、絶縁媒体(フロリナート)中で実施し、500Vステップ昇圧、各ステップ1分の条件で行った。
【0109】
[比較例3]
実施例1で作製したシート1を40mm×80mm×2mm厚の銅板に塗布面を下にして貼りつけた。PETフィルムを剥がし、その上に直径40mm×80mm×1mm厚の銅板を載せた。
90℃で4.9MPaの圧力で4時間プレスを行い、エッチングをかけようとしたが上の銅板が厚すぎてエッチングが困難であった。
【0110】
[比較例4]
実施例1で作製したシート1を40mm×80mm×2mm厚の銅板と40mm×80mm×0.3mm厚の銅板に挟んで10MPaで120℃30分→175℃30分で硬化した。硬化後、塩化第二鉄を主成分とするエッチング液でパターニングを行い、水酸化ナトリウムを主成分とする洗浄液で洗浄を行った後、銅パターンの周囲の部分(絶縁層表面の空白部)の銅濃度をXRFで測定したところ、銅濃度は11,000ppm~17,000ppmであった。
【符号の説明】
【0111】
1 熱伝導体
2 絶縁層
3 導電層
P 平面
図1
図2
図3
図4