(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151869
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ガス分離膜、その製造方法、ガス分離膜を用いたモジュール、及びガス分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20220929BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20220929BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20220929BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20220929BHJP
B01D 63/10 20060101ALI20220929BHJP
B01D 63/14 20060101ALI20220929BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20220929BHJP
B01D 71/06 20060101ALI20220929BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220929BHJP
C01B 39/40 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D53/22
B01D63/06
B01D63/08
B01D63/10
B01D63/14
B01D69/02
B01D71/06
C01B32/50
C01B39/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022050839
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021052049
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】武脇 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 知恵
(72)【発明者】
【氏名】森屋 早紀
【テーマコード(参考)】
4D006
4G073
4G146
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006HA61
4D006HA71
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA04
4D006MA09
4D006MA10
4D006MB03
4D006MB04
4D006MB06
4D006MB16
4D006MC01
4D006MC02
4D006MC03X
4D006MC07
4D006MC09X
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC39
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4D006MC49
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4D006MC69
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4D006PB68
4D006PC41
4G073BA63
4G073CZ17
4G073DZ05
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4G073GA01
4G073GA03
4G073UA06
4G073UB20
4G146JA02
4G146JB02
4G146JB04
4G146JC12
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】ガスの透過係数が高くかつ及び分離係数もが高くい、Robeson Upper Boundを上回るガス分離性能を持ち、かつ加工性に優れた有機無機ハイブリッド膜を提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO
2の透過係数が200Barrer以上の樹脂と、ガスの選択性を有する無機フィラーとを含み、前記ガスの選択性を有する無機フィラーの含有量が35質量%以上であり、前記ガスの選択性を有する無機フィラーはゼオライトを含み、有機無機ハイブリッド膜。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO2の透過係数が200Barrer以上の樹脂と、ガスの選択性を有する無機フィラーとを含み、前記ガスの選択性を有する無機フィラーの含有量が35質量%以上であり、
前記ガスの選択性を有する無機フィラーはゼオライトを含み、
前記ゼオライトのT元素をすべてケイ素であるとした場合のフレームワーク密度が16.0T/1000Å以下である、有機無機ハイブリッド膜。
【請求項2】
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が7以上である、請求項1に記載の有機無機ハイブリッド膜。
【請求項3】
ガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO2の透過係数が200Barrer以上の樹脂と、ガスの選択性を有する無機フィラーとを含み、前記ガスの選択性を有する無機フィラーの含有量が35質量%以上であり、
前記ガスの選択性を有する無機フィラーはゼオライトを含み、
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が7以上である、有機無機ハイブリッド膜。
【請求項4】
前記無機フィラーは、粒度分布が少なくとも二つのピークを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド膜。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド膜を用いたガス分離・濃縮方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド膜を用いたガス分離膜モジュール。
【請求項7】
有機無機ハイブリッド膜がマトリックス樹脂と無機フィラーを含み、加圧しながらマトリックス樹脂を硬化させる硬化工程を含む、有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
【請求項8】
前記硬化工程では、加温しながら加圧する、請求項7に記載の有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
【請求項9】
前記マトリックス樹脂のガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO2の透過係数が200Barrer以上である、請求項7または8に記載の有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
【請求項10】
前記無機フィラーが、少なくともゼオライトを含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の有機無機ハイブリッド膜の製造方法であって、加圧しながらマトリックス樹脂を硬化させる硬化工程を含む、有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
【請求項12】
前記硬化工程では、加温しながら加圧する、請求項11に記載の有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機無機ハイブリッド膜、有機無機ハイブリッド膜を用いたモジュール、ガスの分離方法、及び有機無機ハイブリッド膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの分離精製方法には、膜分離法、吸着分離法、吸収分離法、深冷分離法があるが、膜分離法は圧力を駆動力として、膜を透過するガスの速度差によって分離する手法であり、ガス分離にあっては、分離の途中で相変化をほとんど伴わないため、他のガス分離・精製方法に比べ消費エネルギーが小さい。世界的な気候変動から、温室効果ガスの削減が求められている昨今、消費エネルギーが少ない膜分離法は、従来の分離手法の代替や、温室効果ガスの分離回収の手段として注目を集めている。
【0003】
ガス分離用の膜としては、1970年代から提案されている高分子膜や、セラミックス支持体上に作製したゼオライト膜、高分子膜に無機フィラーを入れたMixed Matrix Membrane(以下MMM)と呼ばれる有機無機ハイブリッド膜が存在している。
高分子膜は加工性に優れる特徴を持つ一方で、ガス透過係数と分離係数がトレードオフの関係にあり、Present Upper Bound(以下Robeson Upper Bound)が概ね性能の上限であるという短所があった(非特許文献1)。
【0004】
ゼオライト膜などの無機膜は、Robeson Upper Boundをはるかに超える高いガス透過係数と分離係数を示す膜も存在する(特許文献1)。しかしながら、セラミックス支持体上に製膜した無機膜であるため、加工性に乏しく、膜の価格が高くなりがちであるという短所があった。
【0005】
上記のような、高分子膜と無機膜のそれぞれの欠点を解消し、長所を併せ持つ膜として、マトリックス樹脂にガス分離能を持つゼオライトなどの無機フィラーを入れて製膜したMMMすなわち有機無機ハイブリッド膜が注目されている(非特許文献2)。しかしながら、有機無機ハイブリッド膜においてもRobeson Upper Boundを超える、高い透過係数と分離係数を併せ持つ膜はほとんど報告されていない(非特許文献2)。
【0006】
有機無機ハイブリッド膜においては、マトリックス樹脂より高い分離・透過性能を持つ無機フィラーを多く混合するほど、無機フィラーに近いガス分離性能を示すと考えられる。しかしながら、実際には、ゼオライトなどの無機フィラーの割合が一定以上になるとマトリックス樹脂と無機フィラーの間に空隙(void)が生じ、空隙をガスが通過するなどして無機フィラーの分離性能が使われなくなることで、かえって性能が低下するケースが多く報告されている(非特許文献2)。無機フィラーとマトリックス樹脂の間の空隙生成を抑制するため、無機フィラーを修飾し、マトリックス樹脂との親和性を向上させる試みも多く行われているが、その効果は限定的である。
【0007】
一方、有機無機ハイブリッド膜でマトリックス樹脂と無機フィラーの間に生じる空隙の原因として、製膜時に界面にかかるストレスが挙げられている(非特許文献3)。したがって製膜温度や使用温度で柔軟性のあるラバー系のマトリックス樹脂を用いることで、製膜時の界面ストレスが緩和しやすくなるので、空隙の発生を抑制することができると考えられるが、ラバー系の樹脂を用いた有機無機ハイブリッド膜での報告は少ない。なぜなら、有機無機ハイブリッド膜の性能にはマトリックス樹脂の性能が大きく影響するので、有機無機ハイブリッド膜に用いるマトリックス樹脂はRobeson Upper Boundに近いガス分離性能を持つのが良いとされているためである。一方、ラバー系の樹脂はRobeson Upper Boundから離れた性能を示し(非特許文献4)、結晶性の樹脂に比べ分離性能が劣るため有機無機ハイブリッド膜のマトリックス樹脂としても、あまり選択されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of membrane Science 320 (2008) 390-400.
【非特許文献2】Progress in Materials Science 102 (2019) 222-295.
【非特許文献3】Journal of Molecular Structure 739 (2005) 87-98.
【非特許文献4】Current Opinion in Solid State and Materials Science, 4 (1999) 549-552.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる、従来技術の問題が解決された、ガスの透過係数及び分離係数が高く、Robeson Upper Boundを上回るガス分離性能を持ち、かつ加工性に優れた有機無機ハイブリッド膜の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ある種の物性を持つ樹脂に対して、ある種の無機フィラーを一定割合以上含有する有機無機ハイブリッド膜において、ガスの透過係数が高く、かつガスの分離係数も高く、さらに、柔軟性に優れ、加工に好適であることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、下記[1]~[12]に存する。
[1] ガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO2の透過係数が200Barrer以上の樹脂と、ガスの選択性を有する無機フィラーとを含み、前記ガスの選択性を有する無機フィラーの含有量が35質量%以上であり、
前記ガスの選択性を有する無機フィラーはゼオライトを含み、
前記ゼオライトのT元素をすべてケイ素であるとした場合のフレームワーク密度が16.0T/1000Å以下である、有機無機ハイブリッド膜。
[2] 前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が7以上である、[1]の有機無機ハイブリッド膜。
[3] ガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO2の透過係数が200Barrer以上の樹脂と、ガスの選択性を有する無機フィラーとを含み、前記ガスの選択性を有する無機フィラーの含有量が35質量%以上であり、
前記ガスの選択性を有する無機フィラーはゼオライトを含み、
前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が7以上である、有機無機ハイブリッド膜。
[4]前記無機フィラーは、粒度分布が少なくとも二つのピークを有する、[1]~[3]のいずれかの有機無機ハイブリッド膜。
[5] [1]~[4]のいずれかの有機無機ハイブリッド膜を用いたガス分離・濃縮方法。
[6] [1]~[4]のいずれかの有機無機ハイブリッド膜を用いたガス分離膜モジュール。
[7] 有機無機ハイブリッド膜がマトリックス樹脂と無機フィラーを含み、加圧しながらマトリックス樹脂を硬化させる硬化工程を含む、有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
[8] 前記硬化工程では、加温しながら加圧する、[7]の有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
[9] 前記マトリックス樹脂のガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO2の透過係数が200Barrer以上である、[7]または[8]の有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
[10] 前記無機フィラーが、少なくともゼオライトを含む、[7]~[9]のいずれかの有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
[11] [1]~[4]のいずれかに記載の有機無機ハイブリッド膜の製造方法であって、加圧しながらマトリックス樹脂を硬化させる硬化工程を含む、有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
[12] 前記硬化工程では、加温しながら加圧する、[11]の有機無機ハイブリッド膜の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、ガスの透過係数とガスの分離係数がともに高く、かつ柔軟性に優れ、加工に好適である有機無機ハイブリッドガス分離膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例においてガス分離に用いた装置の概略図である。
【
図2】実施例の評価結果であるCO
2ガス透過係数とCO
2/CH
4分離係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書中では、ラバーとゴムを同義とする。
【0016】
<有機無機ハイブリッド膜>
本発明の有機無機ハイブリッド膜の一態様は、ガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO2の透過係数が200Barrer以上のマトリックス樹脂と、無機フィラーとしてゼオライトと、を含み、前記無機フィラーの有機無機ハイブリッド膜に対する含有量が35質量%以上であり、前記ゼオライトのT元素をすべてケイ素であるとした場合のフレームワーク密度が15.5T/1000Å以下である。
本発明の有機無機ハイブリッド膜の別の一態様は、ガラス転移温度が15℃以下で、かつ35℃におけるCO2の透過係数が200Barrer以上のマトリックス樹脂と、無機フィラーとしてゼオライトと、を含み、前記無機フィラーの有機無機ハイブリッド膜に対する含有量が35質量%以上であり、前記ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が7以上である。
【0017】
本発明の一態様において有機無機ハイブリッド膜とは、ガスの分離層を指し、支持層や下地層、保護層などは含まない。
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜は、支持層を持たない自立膜としてそのまま使用してもよいし、無機多孔質支持層や有機高分子または無機高分子からなる多孔質支持層上に有機無機ハイブリッド膜を形成し、支持膜の形態にして使用してもよい。有機高分子または無機高分子からなる多孔質支持層としては、多孔質メンブレンフィルターなどの多孔質有機フィルムや樹脂製中空糸膜などが挙げられる。
多孔質支持層と有機無機ハイブリッド膜の間に下地層があっても、有機無機ハイブリッド膜の表面に保護層があってもよい。多孔質支持層と多孔質支持層上に製膜された有機無機ハイブリッド膜とを含めたもの、また、存在する場合には下地層、保護層も含めたものを、有機無機ハイブリッド膜複合体と総称する。
【0018】
有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体の性能は、膜の透過性能と膜の分離性能によってあらわされる。
有機無機ハイブリッド膜複合体においては、有機無機ハイブリッド膜のみの性能を測定することが困難であり、かつ、ガスの分離性能は、有機無機ハイブリッド膜の性能に大きく依拠し、多孔質支持層の性能はガスの分離性能にほとんど影響を与えないため、有機無機ハイブリッド膜複合体の性能を有機無機ハイブリッド膜の性能とみなすことがある。
【0019】
有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体の透過性能は、有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体のガス透過係数(以下透過係数ということがある。)、即ちPermeability、あるいはガス透過度(以下、透過度ということがある。)即ちパーミエンス(Permeance)によって表される。
【0020】
[透過係数]
ガスAのガス透過係数PA[Barrer]=PA×10-10[cm3・cm/(cm2・s・cmHg)]はガスAが膜を透過する際の単位面積当たりの透過量を供給圧と透過圧の差で除算し、膜厚を積算したものであり、下記式(1)で表される。
PA×10-10=NAl/(p2-p1)・・・(1)
式(1)中、
NA:ガスAが膜を透過する際の、定常状態における、透過流束(単位時間当たりの透過量を膜面積で割ったもの)[cm3(STP)/(cm2・s)]
l:膜厚[cm]
p1:透過側のガスAの分圧[cmHg]
p2:供給側のガスAの分圧[cmHg]
を意味する。
【0021】
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体が示す、CO2の透過係数の好ましい範囲は、通常1000Barrer以上、好ましくは3000Barrer以上、さらに好ましくは5000Barrer以上、特に好ましくは7000Barrer以上、最も好ましくは10000Barrer以上であり、上限は特に制限されないが、通常100000000Barrer以下である。ガス透過係数がこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体のガスの処理量が十分であり、実際のプロセスで使用可能な膜となる。
【0022】
[パーミエンス(透過度)]
ガスAのガス透過度RA[mol/(m2・s・Pa)]はガスAが膜を透過する際の単位面積当たりの透過量を供給圧と透過圧の差で除算したものであり、下記式(2)で表される。
RA=nA/(p2’-p1’)・・・(2)
式(2)中、
nA:ガスAが膜を透過する際の、定常状態における、透過流束(単位時間当たりの透過量を膜面積で割ったもの)[mol/(m2・s)]
p1’:透過側のガスAの分圧[Pa]
p2’:供給側のガスAの分圧[Pa]
を意味する。
また、パーミエンスは、単位として[GPU]を用いて表すこともでき、本明細書においては、1GPU=3.35×10-10mol/(m2・s・Pa)である。
【0023】
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体が示す、CO2の透過度の好ましい範囲は、通常5×10-9[mol/(m2・s・Pa)]以上、好ましくは1×10-8[mol/(m2・s・Pa)]以上、より好ましくは2×10-8[mol/(m2・s・Pa)]、さらに好ましくは5×10-8[mol/(m2・s・Pa)]以上、特に好ましくは1×10-7[mol/(m2・s・Pa)]以上であり、上限は特に制限されないが、通常1×10-4[mol/(m2・s・Pa)]以下である。CO2の透過度がこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜のガスの処理量が十分であり、実際のプロセスで使用可能な膜となる。
【0024】
[分離係数]
ガスAのガスBに対する分離係数αABは、ガスAの透過係数PAおよびガスBの透過係数PB、あるいはガスAの透過度RAおよびガスBの透過度RBを用いて、下記式(3)であらわされる。
αAB=PA/PB=RA/RB・・・(3)
【0025】
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体が示す、分離係数の好ましい範囲は例えば、CO2/CH4の分離係数の場合、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは14以上、特に好ましくは17以上、最も好ましくは20以上であり、上限は特に制限されないが通常1000以下である。分離係数がこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜を用いたガス分離において、透過側に混入する、分離できなかったガスが少なくなり、効率的に分離が可能となる。
【0026】
また、これらのガスの透過係数、ガスの透過度、分離係数は、単成分ガスや混合ガスを用いてconstant volume/valuable pressure法(Journal of Polymer Science:Part B:Polymer Physics,Vol.38,2051-2062(2000))によって膜の定常状態のガス透過流束を測定することで算出される。
【0027】
[空気透過量]
本発明の有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体の空気透過量は、10000L/(m2・h)以下である。空気透過量がこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜は、欠陥が無いまたは減じられているため、分離膜として好適に使用可能である。同様の観点から、有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体の空気透過量は、好ましくは5000L/(m2・h)以下、より好ましくは2000L/(m2・h)以下、さらに好ましくは1000L/(m2・h)である。透過量は、好ましくは0.0L/(m2・h)以上であるが、例えば20L/(m2・h)以上、例えば50L/(m2・h)以上であってもよい。
空気透過量がこの範囲にあるとき、欠陥や貫通孔が存在しない、あるいはそれらの影響が十分小さいため、高い分離性能を示すことができる。
【0028】
ここで、空気透過量とは、実施例の項で詳述するとおり、モジュールにセットした有機無機ハイブリッド膜を大気圧下におき、有機無機ハイブリッド膜の片側を5kPaの真空ラインに接続した時の空気の透過量[単位:L/(m2・h)](0℃、1気圧換算)である。
【0029】
空気透過量は、例えば、マトリックス樹脂の種類、有機無機ハイブリッド膜の膜厚、および有機無機ハイブリッド膜における無機フィラーの含有量などを調整することによって、調整することができる。
【0030】
[曲げ戻し試験]
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜は、屈曲半径(曲率半径)5mmの曲面に沿って180°、1回折り曲げて伸ばす曲げ戻し試験を行った後のガス透過係数、ガス透過度、分離係数の値が折り曲げる前の値と比較して、10%以内であることが好ましい。ここで、前述の曲げ戻し試験を行う際の屈曲半径(曲率半径)は、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下、特に好ましくは2mm以下であり、通常0.1mm以上、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上である。本発明の有機無機ハイブリッド膜が前記性能を満たすとき、有機無機ハイブリッド膜を必要に応じて曲げて使用することが可能になるため、加工性に優れており、膜に亀裂やピンホールが生じることがなく、スパイラル型モジュール、プリーツ型モジュールに加工することができる。また、前記性能を満たすとき、有機無機ハイブリッド膜は高い曲率で曲げられても膜に亀裂やピンホールが生じることがないことを意味するので、中空糸状に製膜する際も膜に亀裂やピンホールが生じることがなく製膜できる。
【0031】
[膜厚]
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜の膜厚は自立膜の場合、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、通常1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。有機無機ハイブリッド膜の自立膜の厚みがこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜は高い透過性能を持つとともにある程度耐久性がある膜となる。また、折り曲げなどに対して耐性のある、優れた加工性を持つ十分な柔軟性を持つ膜となり、膜に亀裂やピンホールが生じることがなくモジュール化を行うことができる。
【0032】
有機無機ハイブリッド膜が多孔質支持層上に製膜される有機無機ハイブリッド膜複合体においては、有機無機ハイブリッド膜の膜厚は通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。有機無機ハイブリッド膜複合体において、下地層および/または保護層がある場合、有機無機ハイブリッド膜と下地層、保護層が一体化しているため、各層の厚みを求めることが困難な場合がある。また、有機無機ハイブリッド膜と下地層およびまたは保護層が一体化している場合、下地層や保護層もガスの透過性や分離性に寄与するので、有機無機ハイブリッド膜複合体においては多孔質支持層を除いた部分(以下この部分を分離関連層ということがある)の膜厚が重要である。有機無機ハイブリッド膜複合体において分離関連層の厚みは通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
有機無機ハイブリッド膜複合体における有機無機ハイブリッド膜あるいは分離関連層の厚みがこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜は高い透過性能を持つとともに耐久性がある膜となる。また、折り曲げなどに対して耐性のある、優れた加工性を持つ十分な柔軟性を持つ膜となり、膜に亀裂やピンホールが生じることがなくモジュール化を行うことができる。
【0033】
[膜厚の測定]
有機無機ハイブリッド膜の膜厚は自立膜においてはデジマチック標準外側マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製MDC-25M)などを用いて、測定する膜の中央と、膜の辺縁部からやや内側に入った場所を3か所、円周上均等になるように選んで、合計4か所の相加平均から算出した。
有機無機ハイブリッド膜複合体においては凍結破断によって得た有機無機ハイブリッド膜複合体の断面を、走査電子顕微鏡をもちいて撮影し、多孔質支持層以外の部分である分離関連層の厚みを、複数個所について相加平均して算出したものを厚みとした。
【0034】
[マトリックス樹脂]
本発明の一態様におけるマトリックス樹脂のガラス転移温度(Tg)は通常15℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは-20℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、特に好ましくは-70℃以下、最も好ましくは-100℃以下である。Tgが前記上限値以下であるとき、前記マトリックス樹脂を含む有機無機ハイブリッド膜をガス分離に使用する際、無機フィラーの含有量を多くしても、使用温度においてマトリックス樹脂が柔軟性を有するため、無機フィラーとマトリックス樹脂の間に隙間が生じず、十分なガス分離性能を示す傾向がある。さらに、Tgが前記上限値以下であるとき、マトリックス樹脂と無機フィラーの間に隙間を生じさせずに無機フィラーを高充填することが可能となり、十分な透過・分離性能を示す膜を得られる。また、Tgがこの前記上限値以下であるとき、高圧条件下での使用や、長期間の使用においても、マトリックス樹脂と無機フィラーの界面のひずみをマトリックス樹脂の柔軟性が吸収することができ、隙間が生じにくい傾向があるほか、柔軟性を有するため、膜をスパイラル等の形状に加工してモジュール化する際に、マトリックス樹脂と無機フィラーの間に隙間が生じず、膜性能が良好である傾向がある。またTgの下限は特に制限されるものではないが、-250℃以上が好ましく、-200℃以上がより好ましい。
【0035】
本発明の一態様におけるマトリックス樹脂は、35℃におけるCO2のガス透過係数が200Barrer以上であるものが好ましく、より好ましくは500Barrer以上、さらに好ましくは1000Barrer以上、とくに好ましくは1500Barrer以上、最も好ましくは2000Barrer以上であるものが好ましい。
前記下限値以上であることで、マトリックス樹脂単体の膜のガス透過係数が十分に大きいことにより、有機無機ハイブリッド膜としたのちのガス透過係数を高くすることができる。なお、当該35℃におけるCO2の透過係数は、マトリックス樹脂単体で作製した膜(以下、樹脂膜ということがある)を差圧0.1MPaの差圧で測定したものである。
また、マトリックス樹脂の分離係数、透過係数、及び透過度は、マトリックス樹脂単体で作製した膜(以下、樹脂膜ということがある)を作製し、本発明の有機無機ハイブリッド膜の測定方法と同じ方法を用いて、35℃で差圧0.1MPaの条件で測定する。
【0036】
マトリックス樹脂は高分子化合物(ポリマー、重合体)であり、ポリジメチルシロキサン(以下、PDMSということがある)などのポリオルガノシロキサンからなるシリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、エチレン・酸化ビニルゴムなどのゴム類、ポリ(4-メチル-1-ペンチン)などのポリオレフィンが好ましく、PDMSなどのポリオルガノシロキサンからなるシリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、エチレン・酸化ビニルゴムなどのゴム類がより好ましく、PDMSなどのポリオルガノシロキサンからなるシリコーンゴムが特に好ましい。これらの樹脂をマトリックス樹脂として有機無機ハイブリッド膜を作製することで、ガス透過性能、及び分離性能に優れたガス分離膜を得ることができる。
【0037】
マトリックス樹脂として好ましいシリコーンゴムは特に限定されるものではないが下記式(1)であらわされるシロキサン骨格を有するポリオルガノシロキサン、または市販のシリコーンゴム前駆体を架橋反応して硬化させたものが好ましい。市販のシリコーンゴム前駆体としては、SILPOTTM 184 Silicone Elastomer Base(ダウ・東レ株式会社製)などが挙げられる。
【0038】
【化1】
式(1)中、nは2以上の整数であり、R
1、及びR
2は、それぞれ、水素原子、メチル基やエチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ポリエーテル基、ビニル基やアリル基などのアルケニル基、フェニル基、フルオレニル基などのアリール基、またはフルオロアルキル基などのヘテロアルキル基、オキシラニル基、オキセタニル基などのヘテロ元素を含む飽和及び不飽和脂環式基、アルコシ基、ケトキシム基、アセトキシ基、アミノキシ基などの縮合反応する置換基やアミノ基、カルボキシ基、カルビノール基、エポキシ基などの置換基を有していても良いである。なお、置換の形態としては、側鎖のR
1,R
2が置換されていても良く、両末端が置換されていても良く、両末端及び側鎖が置換されていてもよい。R
1とR
2は互いに同一であってもよく、異なるものであってもよく、ポリオルガノシロキサンの一部のR
1,R
2のみ置換されていてもよい。
式(1)のポリオルガノシロキサンを架橋反応によって重合あるいは縮合し、シリコーンゴムとする点で、式(1)のポリオルガノシロキサンは、ビニル基をはじめとするアルケニル基、ケイ素-水素結合、オキセタニル基、アルコシ基、ケトキシム基、アセトキシ基、アミノキシ基などの縮合反応する置換基などの架橋性基を有することが好ましく、付加反応を利用できるという点でアルケニル基を有することが特に好ましい。
【0039】
本発明の一態様において、ポリオルガノシロキサンを架橋して硬化させ、シリコーンゴムとする際の架橋反応の機構は特に限定されず、従来公知の有機過酸化物による硬化反応や縮合反応、付加反応、紫外線、放射線、電子線照射による硬化反応を利用できる。生産性の観点から、無機フィラーの混合や無機フィラー混合後の保管を大気中で安定して行えるものが好ましいく、その点で、付加反応や紫外線、放射線、電子線照射によって硬化するタイプが望ましく、硬化時の雰囲気制御が不要で簡便であるという点で付加反応を利用することが特に好ましい。
【0040】
本発明の一態様で用いる無機フィラーと混合する硬化前の主たるポリオルガノシロキサンのGPCで測定した重量平均分子量は、通常5000以上、好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上、さらに好ましくは25000以上であり、通常、100000以下である。硬化前の主剤のポリオルガノシロキサンの分子量がこの範囲にあるとき、ゼオライトと樹脂の混合が容易であり、さらに製膜性もよいため、有機無機ハイブリッド膜の無機フィラーの充填割合を向上させることができる。
本発明で好適に使用しうる、ポリオルガノシロキサンとしては例えば、ダウ・東レ株式会社製SILPOTTM 184、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製ELASTOSIL RT601が挙げられる。
【0041】
本発明の一態様において、無機フィラーとマトリックス樹脂とを混合する際に無機フィラーを添加することによって、粘度が高くなり製膜が困難となる場合には、特開2017-66364に記載されているように、有機変性シリコーン樹脂や有機変性シリコーンオイルを添加することで粘度をコントロールすることが可能である。
【0042】
有機変性シリコーン樹脂、及び/または有機変性シリコーンオイルの有機基としては、エポキシ基、アルコール基、カルボキシ基、アクリル基、メタクリル基、チオール基、アミノ基、エーテル基、アラルキル基、アルキル基等が挙げられる。その内、エポキシ基、アルコール基又はカルボキシ基で変性されたシリコーン樹脂、及び/または有機変性シリコーンオイルの少なくとも1種を使用することが好ましく、特に、少なくともエポキシ基で変性されたシリコーン樹脂、及び/または有機変性シリコーンオイルを含むことがより好ましい。
【0043】
上記のような有機変性シリコーン樹脂、及び/または有機変性シリコーンオイルは適度な極性の有機基を有することから無機フィラーに吸着しやすい。したがって、上記のような有機変性シリコーンを樹脂、及び/または有機変性シリコーンオイル組成物に含有することで、それらが無機フィラー表面に存在しやすく、無機フィラーに起因する構造粘性を破壊することができる。具体的には、有機基変性シリコーン樹脂及び/または有機変性シリコーンオイルの-Si-O-Si-結合部分であるシリコーン部分が無機フィラーの低極性部位に、また有機基部分が無機フィラーの極性部位に接触することにより、樹脂組成物内の相分離構造を解消する界面活性剤として機能することがあり、無機フィラーの分散性が向上することで有機無機ハイブリッド膜における無機フィラーの充填率を向上させることができる。
【0044】
有機変性シリコーン樹脂及び/または有機変性シリコーンオイルの存在割合としては、有機無機ハイブリッド膜の質量に対して、通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であり、通常50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下である。有機基変性シリコーン樹脂及び/または有機変性シリコーンオイルの存在割合が前記範囲内であるとき、有機無機ハイブリッド膜の、製膜時の粘度を低減することができる。また、無機フィラーの分散性を向上させ、有機無機ハイブリッド膜の長期安定性を確保することができる。
【0045】
[無機フィラー]
本発明の一態様で用いる、ガスの選択性を有する無機フィラーは、ある種のガスを通すがある種のガスは通さないか透過速度が著しく低いというように、分子篩効果及び/または吸着選択性によって、ガスの選択性を有する無機化合物である。無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。また、ガスの選択性を有しない無機化合物と併用してもよい。
ガスの選択性を有する無機フィラーとしては、具体的には、ゼオライト、有機金属構造体(以下MOFということがある)、多孔性金属錯体(以下PCPということがある)が挙げられる。本発明で用いるガスの選択性を有する無機フィラーとしては、ゼオライト、MOF、PCPのうち、1つ以上を含むことが好ましく、少なくともゼオライトを含むことが望ましい。
【0046】
ガスの選択性を有する無機フィラー以外の無機化合物として、シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素などを含有してもよい。ガスの選択性を有する無機フィラーに加えてこれらの無機化合物を添加することで、製膜しやすくなったり、ガス透過性以外の有機無機ハイブリッド膜の物性を改善したりすることがある。
【0047】
本発明の一態様で用いる無機フィラーとしてゼオライトを用いる場合、当該ゼオライトは、骨格を構成する酸素以外の元素(T元素)をすべてSiであるとした場合のフレームワーク密度(以下FDSiということがある)が、通常16.0T/1000Å3以下、好ましくは15.8T/1000Å3以下、より好ましくは15.5T/1000Å3以下、さらに好ましくは15.3T/1000Å3以下、特に好ましくは15.2T/1000Å3以下、最も好ましくは15.1T/1000Å3以下であり、通常10T/1000Å3以上、好ましくは11T/1000Å3以上、より好ましくは12T/1000Å3以上である。
ここで、T元素をすべてSiであるとした場合のフレームワーク密度(T/1000Å3)とは、ゼオライトの1000Å3あたりの、骨格を構成する酸素以外の元素すなわちSiの数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトの構造との関係はゼオライト構造データベース(https://asia.iza-structure.org/IZA-SC/ftc_table.php)に示されている。したがって、FDSiが小さいほどゼオライトの構造中に空間が多く存在することを示している。
【0048】
ゼオライトを有機無機ハイブリッド膜とする際、マトリックス樹脂がゼオライトの細孔の表面あるいは細孔内部を閉塞させる場合があるが、FDSiが前記範囲内にあるとき、ゼオライト内部の空間が多いため、一部が閉塞してもガスの流路を確保することができ、ゼオライトを混合した効果が有効に発揮されやすく、高いガス透過係数、高い分離性能を示す傾向にある。また、FDSiが前記範囲内である場合、ゼオライトの骨格が十分な強度を持つため、ゼオライトが壊れにくく安定になる傾向にあり、好ましい。
【0049】
本発明の一態様において好ましいゼオライトの構造は、通常AEI、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AST、AVL、*BEA、BEC、BOZ、BPH、CHA、-CLO、CON、DFO、EAB、EMT、ETR、*-EWT、FAU、GME、-IFT、-IFU、IFW、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、*-ITN、ITT、-ITV、IWR、IWS、IWV、JSR、JST、KFI、LEV、LTA、MEI、MWW、NPO、NPT、OBW、OSO、PAU、POS、PUN、PWN、RHO、RWY、SAO、SAS、SAV、SBE、SBS、SBT、SFO、SFW、SOV、*-SVY、-SYT、THO、TSC、UFI、USI、UTL、VFI、好ましくはAEI、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AST、AVL、*BEA、BEC、BOZ、BPH、CHA、-CLO、CON、DFO、EMT、ETR、*-EWT、FAU、GME、-IFT、-IFU、IFW、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITT、-ITV、IWR、IWS、IWV、JSR、JST、KFI、LTA、MEI、NPT、OBW、OSO、POS、PUN、PWN、RHO、RWY、SAO、SAS、SAV、SBE、SBS、SBT、SFO、SFW、SOV、*-SVY、-SYT、THO、TSC、UFI、UTL、VFI、より好ましくは、AEI、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、*BEA、BEC、BOZ、BPH、CHA、-CLO、DFO、EMT、ETR、*-EWT、FAU、GME、-IFT、-IFU、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITT、-ITV、IWS、IWV、JSR、JST、KFI、LTA、MEI、NPT、OBW、OSO、POS、PUN、RHO、RWY、SAO、SAS、SAV、SBE、SBS、SBT、SFO、SFW、SOV、-SYT、TSC、UFI、VFI、さらに好ましくはAEI、AFS、AFT、AFX、AFY、BEC、BOZ、BPH、CHA、-CLO、DFO、EMT、*-EWT、FAU、GME、-IFT、-IFU、IRR、-IRY、ISV、ITT、IWS、IWV、JSR、JST、KFI、LTA、MEI、NPT、OBW、OSO、PUN、RHO、RWY、SAO、SAS、SAV、SBE、SBS、SBT、SFW、SOV、-SYT、TSC、VFI、さらに好ましくはAEI、AFX、CHA、EMT、FAU、GME、KFI、LTA、MEI、NPT、RHO、VFIであり、特に好ましくはAEI、AFX、CHA、FAU、であり、最も好ましくはCHAである。ゼオライトの構造が上記の構造であるとき、ゼオライト内部の空間が多いため、マトリックス樹脂が細孔を完全に閉塞することがなく、高い透過分離性能を示す有機無機ハイブリッド膜が得られる。
【0050】
本発明の一態様で用いる主たるゼオライトは特に制限されるものではないが、酸素12員環以下のゼオライトが好ましく、酸素10員環以下のゼオライトがより好ましく、酸素8員環以下のゼオライトが最も好ましい。また通常、酸素6員環以上のゼオライトが好ましく、酸素8員環以上のゼオライトがより好ましい。
ここでいう酸素n員環を有するゼオライトのnの値は、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素(骨格を構成する酸素以外の元素)で構成される細孔の中で最も酸素の数が大きいものを示す。例えば、MOR型ゼオライトのように酸素12員環と8員環の細孔が存在する場合は、酸素12員環のゼオライトとみなす。
【0051】
酸素12員環以下のゼオライトとしてはAEI、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AST、AVL、*BEA、BEC、BOZ、BPH、CHA、CON、DFO、EAB、EMT、FAU、GME、IFW、IRN、ISV、ITE、*-ITN、IWR、IWS、IWV、JSR、JST、KFI、LEV、LTA、MEI、MWW、NPO、NPT、OBW、PAU、POS、PUN、PWN、RHO、RWY、SAO、SAS、SAV、SBE、SBS、SBT、SFO、SFW、SOV、THO、TSC、UFI、USIが挙げられる。酸素10員環以下のゼオライトとしてはAEI、AFT、AFV、AFX、AST、AVL、BOZ、CHA、EAB、IFW、IRN、ITE、JST、KFI、LEV、LTA、MWW、NPT、OBW、PAU、PWN、RHO、SAS、SAV、SFW、THO、TSC、UFIが挙げられる。酸素8員環以下のゼオライトとしてはAEI、AFT、AFV、AFX、AST、AVL、CHA、EAB、IRN、ITE、KFI、LEV、LTA、NPT、PAU、PWN、RHO、SAS、SAV、SFW、THO、TSC、UFIが挙げられる。
酸素n員環構造はゼオライトの細孔のサイズを決定するものであり、酸素n員環構造が上記の範囲であるとき、ゼオライトが高いガスの分離性能を発揮しやすく、有機無機ハイブリッド膜とした際に、ガスの分離性能をマトリックス樹脂より大きくする効果が得られやすい。
【0052】
本発明の一態様で用いる主なゼオライトとしては、アルミノケイ酸塩、アルミノリン酸塩(AlPO)、シリコアルミノリン酸塩(SAPO)、メタロ-アルミノリン酸塩(MeAPO)、メタロ-シリコアルミノリン酸塩(MeAPSO)が挙げられ、アルミノケイ酸塩、シリコアルミノリン酸塩(SAPO)が好ましく、アルミノケイ酸塩がゼオライトの耐久性の点から特に好ましい。
【0053】
アルミノケイ酸塩のSiO2/Al2O3モル比は、通常7以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは15以上、最も好ましくは20以上である。また上限は、通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。アルミノケイ酸塩のSiO2/Al2O3モル比は、FDSiが前記範囲内である場合は、その下限はさらに低くてもよく、通常0.5以上、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上、特に好ましくは15以上、最も好ましくは20以上である。また上限は、通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。SiO2/Al2O3モル比が上記の範囲であるとき、ゼオライトの耐久性が高く、有機無機ハイブリッド膜のガス分離・透過性能の耐久性が良好な傾向がある。また、SiO2/Al2O3モル比が上記の範囲であるとき、ゼオライトの吸湿性が高すぎないため、有機無機ハイブリッド膜の使用前の前処理が不要もしくは、低温、短時間の加熱で十分である点で好ましい。さらに、実際のガス分離プロセスにおいて、実ガス中の水分の影響を受けにくいため、ガス分離プロセスにおいて、有機無機ハイブリッド膜に導入するガスの前処理が軽くて済むため経済的である。
【0054】
なお、SiO2/Al2O3モル比は、あらかじめICP分析と蛍光X線分析法(XRF)により検量線を作成したうえで、XRFにより求める。具体的には下記の通りである。
ゼオライト試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後、ICP分析によりケイ素原子、アルミニウム原子の含有量(質量%)を求めた。そして、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成した。この検量線により、XRFでゼオライト試料中のケイ素原子、アルミニウム原子の含有量(質量%)を求めた。
【0055】
本発明の一態様において用いる無機フィラーの平均粒子径は通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。無機フィラーの平均粒子径がこの範囲にあるとき、無機フィラーの分散性が良好でマトリックス樹脂に無機フィラーを任意の割合で混合することが容易であり、かつガスが透過する際に無機フィラーを通るパスが形成されやすくなるため、無機フィラーによる分離・透過性能向上の効果が表れやすく、分離・透過性能がともに優れた有機無機ハイブリッド膜を得やすい傾向にある。
【0056】
なお、ここでいう平均粒子径の測定方法は、具体的には下記の通りである。
【0057】
[平均粒子径の測定方法]
有機無機ハイブリッド膜に用いた無機フィラーの粒子径は、合成した粉末をよく分散させて試料を作成し、走査電子顕微鏡で撮影して得られた画像において、任意に選択した30個の粒子の粒子径を測定しその相加平均をもって平均粒子径とする。小さな結晶粒子が凝集してなる二次粒子においては二次粒子径をさす。
得られた有機無機ハイブリッド膜中の無機フィラーの粒子径は、凍結破断によって得た有機無機ハイブリッド膜の断面を、走査電子顕微鏡で撮影して得られた断面の画像において、観察される無機フィラーについて任意に選択した30個の粒子の粒子径を測定し、その相加平均をもって平均粒子径とする。
なお、粒子径は、いずれの方法でも、粒子の投影面積と等しい面積を持つ、円の直径(円相当径)とする。
【0058】
本発明の一態様において用いる無機フィラーは、粒子径が前記範囲内であれば、小さな結晶粒子が凝集してなる二次粒子であっても、結晶粒子が単独で存在する一次粒子であっても良いが、結晶間に粒界と呼ばれる隙間が生じにいために有機無機ハイブリッド膜にした時にvoidと呼ばれる樹脂と粒子間の欠陥も生じにくく、高い分離係数を示す傾向にあるため、一次粒子が特に好ましい。
【0059】
本発明の一態様において平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーを用いる場合、それぞれの平均粒子径の比は、大粒子の平均粒子径/小粒子の平均粒子径の値で通常1.5以上、好ましくは3以上より好ましくは5以上であり、通常100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。粒子径の比がこの範囲にあるとき、無機フィラーをマトリックス樹脂に混合する際、無機フィラー間の空間が最も少なくなり、無機フィラーの充填割合を向上させることができる。なお、平均粒子径が3種類以上の無機フィラーを用いる場合は、そのうち2種類について、ここに記載の粒子径の比を満たすことが好ましい。
なおここで大粒子とは平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーのうち、平均粒子径が大きい方の無機フィラーの粒子を指し、小粒子とは平均粒子径が小さい方の無機フィラーの粒子を指し、以下同様である。
【0060】
[粒度分布]
本発明の一態様において平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーを用いる場合、有機無機ハイブリッド膜に含まれる無機フィラーは、粒度分布が少なくとも二つのピークを有することとなる。
本発明における粒度分布とは体積基準の粒度分布である。体積基準の粒度分布を求める方法は特に限定しないが、製膜前の粉末の状態の無機フィラーおいてはレーザー回折・散乱法が好適である。製膜後の有機無機ハイブリッド膜あるいは有機無機ハイブリッド膜複合体においては、その有機無機ハイブリッド膜および分離関連層に含まれる無機フィラーの粒度分布を画像解析によって求めることができる。すなわち、凍結破断によって作成した断面を、走査電子顕微鏡で観察し、観察によってみられる粒子を選択し、画像解析することによって、体積基準の粒度分布を求めることができる。
本発明において、有機無機ハイブリッド膜に含まれる無機フィラーの粒度分布が少なくとも二つのピークを有する場合、粒子径が大きい方のピークが、通常、粒子径1.5μm以上、好ましくは粒子径4μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下の間であり、粒子径が小さい方のピークが通常、粒子径0.1μ以上、好ましくは0.2μm以上であり、通常1μm以下の間であることがより好ましい。これらの範囲の粒度分布を有することで、有機無機ハイブリッド膜における無機フィラーの充填率を向上させることができる。よって、無機フィラーの性能を十分に発揮した、より高い分離・透過性能を持つ有機無機ハイブリッド膜となる。
本発明において、有機無機ハイブリッド膜に含まれる無機フィラーの粒度分布が少なくとも二つのピークを有する場合、粒子径が小さい方のピークの粒子径を1としたとき、粒子径が大きい方のピークの粒子径は通常1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは7.0以上であり、通常100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは15以下である。
粒子径が大きい方のピークが小さい方のピークに対してこれらの値をとるとき、体積基準粒度分布における極小値の粒子径より小さい粒子が極小値より大きい粒子径の無機フィラー間の粒子間隙を効率よく埋めることができ、有機無機ハイブリッド膜における無機フィラーの充填率を向上させることができる。よって、無機フィラーの性能を十分に発揮した、より高い分離・透過性能を持つ有機無機ハイブリッド膜となる。
【0061】
本発明の一態様において平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーを用いる態様において、粒子径の好ましい範囲は次の通りである。つまり、大粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは4μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10um以下である。また、小粒子の平均粒子径は、好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、また、好ましくは1μm以下である。これらの範囲の平均粒子径を有することで、有機無機ハイブリッド膜における無機フィラーの充填率を向上させることができる。よって、無機フィラーの性能を十分に発揮した、より高い分離・透過性能を持つ有機無機ハイブリッド膜となる。また、このような範囲であれば、マトリックス樹脂中に無機フィラーが分散し易い。
本発明の一態様において平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーを用いる態様において、小さい方の平均粒子径を1としたとき、大きい方の平均粒子径は通常1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは7.0以上であり、通常100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは15以下である。平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーを用いる場合に、大きい方の平均粒子径が小さい方の平均粒子径に対してこれらの範囲であるとき、小さい平均粒子径を持つ無機フィラーが大きい平均粒子径を持つ無機フィラー間の粒子間隙を効率よく埋めることができ、有機無機ハイブリッド膜における無機フィラーの充填率を向上させることができる。よって、無機フィラーの性能を十分に発揮した、より高い分離・透過性能を持つ有機無機ハイブリッド膜となる。
なお、大粒子、小粒子の平均粒子径は、用いる2種類の無機フィラーそれぞれについて、後述する平均粒子径の測定方法に従って求めることができる。大粒子、小粒子が混合している場合には用いる無機フィラー粉末をよく分散させて試料を作成し、走査電子顕微鏡で撮影した画像において、任意に選択した30個以上の粒子の粒子径を測定し、得られた体積基準の粒度分布を個数基準の粒度分布に変換し、それぞれの極小値より大きい粒子と極小値より小さい粒子それぞれについて個数基準で粒子径の相加平均をとることで算出できる。得られた有機無機ハイブリッド膜中の無機フィラーに含まれる大粒子、小粒子の平均粒子径は、凍結破断によって得た有機無機ハイブリッド膜の断面を、走査電子顕微鏡をもちいて撮影し、得られた断面の画像において、観察される、無機フィラーについて任意に選択した30個以上の粒子の粒子径を測定し、得られた体積基準の粒度分布を個数基準の粒度分布に変換し、それぞれの極小値より大きい粒子と極小値より小さい粒子それぞれについて個数基準で粒子径の相加平均をとることで算出できる。ピークが3個以上あるときは、適宜、極小値と極小値の間の粒子について、個数基準で粒子径の相加平均をとって算出する。
なお、本明細書において用語「粒子径」は、小さな結晶粒子が凝集してなる二次粒子においては二次粒子径をさし、粒子径は、いずれの方法でも、粒子の投影面積と等しい面積を持つ、円の直径(円相当径)とする。後述する平均粒子径の測定方法において測定される平均粒子径についても、ここに説明した粒子径に基づく平均粒子径が測定される。
【0062】
本発明の一態様において平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーを用いる態様において、小粒子の質量を1とするとき、大粒子の質量は特に制限されないが、例えば、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、4.5以上がさらに好ましい。通常10以下が好ましく、8以下が好ましく、6以下がより好ましい。質量の比がこの範囲にあるとき、大粒子と大粒子の空隙を小粒子が埋めて無機フィラーの充填率を向上させることができる。なお、無機フィラーの体積基準の粒度分布のピークの面積から、大粒子と小粒子との質量の比を算出可能である。
【0063】
粒度分布が少なくとも2つのピークを有する無機フィラーを得るためには、前述した平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーを用いるとよい。例えば、平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーをマトリックス樹脂に混合すればよい。この場合、平均粒子径が異なる2種類の無機フィラーの好ましい平均粒子径は、大粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは4μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
【0064】
本発明の一態様において、有機無機ハイブリッド膜の全質量に占める、ガス選択性を有する無機フィラー質量の割合は、通常35質量%以上、好ましくは37質量%以上、より好ましくは42質量%以上、さらに好ましくは48質量%以上、さらに好ましくは52質量%以上、さらに好ましくは57質量%以上、特に好ましくは62質量%以上であり、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。無機フィラー質量の割合がこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜は柔軟な性質を維持した加工性に優れた膜であるとともに、Robeson Upper Boundを超えるような高い分離透過性能を示す膜となる傾向がある。
【0065】
有機無機ハイブリッド膜における無機フィラーの割合は、樹脂および無機フィラーの物性によって通常の分析手法を選択することによって求めることができる。
例えば、熱重量測定(TG)によって樹脂部分をすべて燃焼させることで、無機フィラーの有機無機ハイブリッド膜全質量に対する割合を求めることができる。
【0066】
シリコーン樹脂と無機フィラーの有機無機ハイブリッド膜においては、例えば、シリコーン樹脂分解剤を用いて、有機無機ハイブリッド膜中のシリコーン樹脂を分解し、濾過あるいは遠心分離により固形分を分離することで、無機フィラーの質量を求め、有機無機ハイブリッド膜全質量に対する割合を求めることができる。シリコーン樹脂分解剤としては、オルトギ酸メチル、エコサーチ社製ダイジェジルNCなど市販のシリコーン樹脂分解剤、日新化学研究所社製のシリコンクリーナーなどのシリコーン溶解剤を使用することができる。
【0067】
本発明の一態様において、有機無機ハイブリッド膜がガス選択性を有しない無機フィラーも含む場合、有機無機ハイブリッド膜の全質量に占める無機フィラー質量(ガス選択性を有する無機フィラーおよびガス選択性を有しない無機フィラーの合計質量)の割合は、特に制限されず、例えば35質量%以上、好ましくは37質量%以上、より好ましくは42質量%以上、さらに好ましくは48質量%以上、さらに好ましくは52質量%以上、さらに好ましくは57質量%以上、特に好ましくは62質量%以上であり、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。無機フィラー質量の割合がこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜は柔軟な性質を維持した加工性に優れた膜であるとともに、Robeson Upper Boundを超えるような高い分離透過性能を示す膜となる傾向がある。
【0068】
また、本発明の一態様において、有機無機ハイブリッド膜に対するゼオライトの充填割合は、体積分率として通常20vol%以上、より好ましくは30vol%以上、さらに好ましくは40vol%以上、さらに好ましくは50vol%以上、さらに好ましくは60vol%以上であり、通常99vol%以下、好ましくは95vol%以下、より好ましくは90vol%以下、さらに好ましくは85vol%以下、特に好ましくは80vol%以下である。ゼオライトの体積分率が有機無機ハイブリッド膜の体積に対してこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜は柔軟な性質を維持した加工性に優れた膜であるとともに、Robeson Upper Boundを超えるような高い分離透過性能を示す膜となる傾向がある。
【0069】
有機無機ハイブリッド膜に対するゼオライトの体積分率は、膜の断面をSEMで観察し、支持層、下地層および保護層ではない、分離層に相当する有機無機ハイブリッド膜の断面部分から、5視野以上について無機フィラー、ガスの選択性を有する無機フィラー、ゼオライトの面積分率を算出し、相加平均をとったものを有機無機ハイブリッド膜における無機フィラー、ガスの選択性を有する無機フィラー、ゼオライトの体積分率とすることによって、決定することができる。有機無機ハイブリッド膜において無機フィラー、ガスの選択性を有する無機フィラー、ゼオライトは平均的には均一に分散していると考えられうるので、断面の深さ方向についても、断面の一部分と同じ面積分率が平均的に維持されると考えられることから、面積分率を体積分率と等しいとみなすことができる。
【0070】
無機フィラー、ガスの選択性を有する無機フィラー、ゼオライトは、断面のSEM観察において、形状やSEM-EDXによる組成分析から区別することができる。
【0071】
本発明の一態様において、ゼオライトとゼオライト以外の無機フィラーを併用する場合、ゼオライト以外の無機フィラー質量のゼオライト質量に対する割合は、通常30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であり、下限は特に限定されないが通常0.1%以上である。ゼオライト以外の無機フィラーの質量%がこの範囲であるとき、得られる有機無機ハイブリッド膜は柔軟な性質を維持した加工性に優れた膜であるとともに、Robeson Upper Boundを超えるような高い分離透過性能を示す膜となる傾向がある。
【0072】
本発明の一態様で用いる無機フィラーの形状は特に制限されるものではないが、球状、立方体状、直方体状、六角柱状の粒子形状が好ましく、特に球状、立方体状が好ましく、球状が最も好ましい。無機フィラーの形状がこれらの形状であるとき、無機フィラーの充填量を高くすることができ、分離・透過性の高い有機無機ハイブリッド膜を得ることができる。上記のような形状の無機フィラーは、無機フィラーの合成方法を制御することによって得ることもできるし、合成した無機フィラーの粉末を物理的に研磨することによって得ることもできる。
無機フィラーが球状であるとき、粒子の流動性が高いため、特に加圧しながら製膜および硬化させる場合に、粒子の充填率を向上させることが可能となる。無機フィラーが立方体状であるとき、粒子が整列することによって粒子間隙を少なくすることができるため、有機無機ハイブリッド膜における無機フィラーの充填率を向上させることができる。
【0073】
本発明の一態様で用いる無機フィラーは平均円形度係数が0.80以上であることが好ましく、0.90以上であることが特に好ましい。平均円形度係数は通常1.0以下である。平均円形度係数がこの範囲であるとき、粒子の流動性が高いため、粒子の充填率を向上させることが可能となり、加圧しながら製膜、硬化させる場合に特に充填率を向上させることができる。
ここでいう円形度係数とは、用いる無機フィラーの粒子の二次元投影像の面積をS、粒子の周囲長をLとしたときに、4πS/L2で表され、粒子が真球であるときに1.0となり真球に近いほど値が大きくなる。なお、ここでいう平均円形度係数の算出方法は、具体的には下記の通りである。
【0074】
[平均円形度係数径の算出方法]
有機無機ハイブリッド膜に用いた無機フィラーの平均円形度係数は、合成した粉末をよく分散させて試料を作成し、走査電子顕微鏡をもちいて撮影し、任意に選択した30個の粒子について円形度係数を算出し、その相加平均をもって平均円形度係数とする。小さな結晶粒子が凝集してなる二次粒子においては二次粒子について円形度係数を算出し、その平均値をとる。
得られた有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体中の無機フィラーの平均円形度係数は、凍結破断によって得た有機無機ハイブリッド膜の断面を、走査電子顕微鏡をもちいて撮影し、断面に見える、無機フィラーについて任意に選択した30個の粒子の円形度係数を算出し、その相加平均をもって平均円形度係数とする。
有機無機ハイブリッド膜および有機無機ハイブリッド膜複合体に含まれる無機フィラーが、粒度分布が少なくとも二つのピークを有する態様においては、粒度分布の極小値より大きい粒子、小さい粒子それぞれについて同様に平均円形度係数を算出する。
【0075】
また、有機無機ハイブリッド膜に含まれる無機フィラーが、粒度分布が少なくとも二つのピークを有する態様においては特に質量の多い粒子について、平均円形度係数が0.80以上であることが好ましく、0.90以上であることが特に好ましく、通常、平均円形度係数は1.0以下である。
【0076】
本発明の一態様で用いる無機フィラーは表面が修飾されていてもよい。ここで、表面が修飾されるとは、無機フィラー表面のOH基と反応可能な化合物(以下、表面修飾剤ということがある)を反応させ、無機フィラー表面に表面修飾剤を結合させることを言う。
【0077】
ここで用いる表面修飾剤としては一般に用いられるものであれば特に限定されないが、OH基との反応性の観点からシラザン類、シロキサン類、アルコキシシラン類、クロロシラン類、チタネートカップリング剤、シリケートオリゴマー等を好ましく使用することができる。
【0078】
シラザン類としてはヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザンなどが挙げられる。
【0079】
シロキサン類としてはヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、1,3-ブチルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、3-グリシドキシプロピルペンタメチルジシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、1,3-ジクロロ-1,1,3,3,-テトラ-i-プロピルジシロキサン、が挙げられる。
【0080】
アルコキシシラン類としては、例えば、アルケニル基を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、プロペニルトリエトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、ペンテニルトリメトキシシラン、ペンテニルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、ヘプテニルトリメトキシシラン、ヘプテニルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、オクテニルトリエトキシシラン、ノネニルトリメトキシシラン、ノネニルトリエトキシシラン、デケニルトリメトキシシラン、デケニルトリエトキシシラン、ウンデケニルトリメトキシシラン、ウンデケニルトリエトキシシラン、ドデケニルトリメトキシシラン、及びドデケニルトリエトキシシランのほかβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルメチルジエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロプロピルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシランなどが挙げられる。
【0081】
クロロシラン類としては、ビニルトリクロロシラン、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、t-ブチルジメチルシリルクロライド、トリ-i-プロピルシリルクロライド、3-イソシアノプロピルジメチルクロロシラン、等が挙げられる。
【0082】
シリケートオリゴマーとしては、三菱ケミカル株式会社製 MS51、MS56、MS57、MS56Sなどのメチルシリケートオリゴマーが挙げられる。
【0083】
これらの表面修飾剤によって表面を修飾することで、製膜に用いる有機溶媒と無機フィラーの親和性が高まり、製膜に用いる、マトリックス樹脂、無機フィラー、溶媒の混合物において無機フィラーの分散性が高くなり、無機フィラーの充填率が高い、有機無機ハイブリッド膜を得やすくなる。
また、これらの表面修飾剤によって無機フィラーの表面を修飾することで、無機フィラーとマトリックス樹脂の親和性が向上し、無機フィラーとマトリックス樹脂界面の空隙が生じにくくなり、無機フィラーの性能を十分に発揮した高い分離・透過性能を持つ有機無機ハイブリッド膜を得やすくなる。
一方で、ゼオライトなど細孔による分子篩効果を持つ、無機フィラーの細孔は表面修飾剤によって、ふさがれてしまうこともあるため、表面修飾剤による無機フィラーの修飾は最低限にすることが望ましく、表面修飾剤はなるべく低分子量でアルキル鎖が短いものが望ましい。その点で、これらの表面修飾剤中でも特にシロキサン類が好ましく、ヘキサメチルジシロキサンが最も好ましい。
【0084】
本発明の一態様に用いるゼオライトは必要に応じてイオン交換してもよい。イオン交換は、テンプレートを用いて合成するゼオライトの場合は、通常、テンプレートを除去した後に行う。イオン交換するイオンとしては、プロトンや、Na+、K+、Cs+、Li+などのアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+などの第2族元素イオン、Fe、Cu、Zn、Agなどの遷移金属元素のイオンなどが挙げられる。イオン交換によってゼオライトの細孔径やガス分子との親和性を変化させることができるので、分離対象のガスの種類によって好ましいイオンは異なるが、透過させたいガスと親和性の高いイオンを用いることで透過性能を向上させることができる。CO2分離用の有機無機ハイブリッド膜においては、CO2との親和性の観点から、Ca2+、K+、Ag+、が好ましい。これらのイオンを用いるとCO2の透過性能が向上し、分離係数が向上する傾向にある。
【0085】
ゼオライトのイオン交換は通常の方法で行うことができるが、ゼオライト細孔の閉塞をさけるために、イオン交換後は焼成してNO3
-などのカウンターアニオンを熱分解して除去することが望ましい。
【0086】
[支持層]
本発明の一態様における有機無機ハイブリッド膜は自立膜であってもかまわないが、支持層の上に製膜してもよい。支持層としては、有機無機ハイブリッド膜の透過性能を損なうことがないという観点で、多孔質支持層が好適である。多孔質支持層上に製膜すると、自立膜に比べ、膜の耐久性や外的な力に対する耐性が増すほか、膜厚を薄くできるので好ましい。
支持層の形状は特に制限されないが、多孔質の平面状の膜、多孔質中空糸膜、不織布などが挙げられ、多孔質中空糸膜が単位体積当たりの膜面積を大きくできるため好ましい。
【0087】
多孔質支持層の細孔径は通常は100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下であり、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上である。
多孔質支持層の細孔径が前記範囲内であるとき、支持層がガスの透過を妨げずに、かつ必要な強度を有機無機ハイブリッド膜に与えることができる。
多孔質支持層は対称構造でも、表面緻密層の下に荒い支持層を有する非対称構造でもよいが、ガス透過時の多孔質支持層に由来する抵抗が軽減されるので、非対称構造が好ましい。
【0088】
多孔質支持層の厚みは通常10μm以上、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは70μm以上、特に好ましくは100μm以上であり、通常2mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下である特に好ましくは150μm以下である。多孔質支持層の厚みがこの範囲にあるとき、有機無機ハイブリッド膜に十分な強度を与えることができる。
【0089】
多孔質支持層の材質は特に限定されないが、通常、ポリマーであり、好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリサルフォン(PSU)、酢酸セルロース(CA)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドであり、より好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、酢酸セルロース(CA)、特に好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。多孔質支持層の材質がこの範囲にあるとき、当該多孔質支持層は十分な柔軟性と強度を持つほか有機無機ハイブリッド膜の製膜方法に制限を与えないため、有機無機ハイブリッド膜に十分な強度を与えるとともに優れた加工性を提供できる。
【0090】
[下地層]
本発明の一態様における有機無機ハイブリッド膜は多孔質支持層の上に製膜してもよいが、多孔質支持層上に製膜する際には多孔質支持層の上に形成された下地層(=Gutter layer)の上に製膜してもかまわない。有機無機ハイブリッド膜が下地層を介して多孔質支持層の上に製膜されることによって、有機無機ハイブリッド膜の製膜時に、マトリックス樹脂及び製膜に用いる溶媒が多孔質支持層に過剰に浸透して、有機無機ハイブリッド膜に欠陥が生じることを回避する又は減じることができるほか、マトリックス樹脂及び製膜に用いる溶媒が多孔質支持層に過剰に浸透することが無いので、有機無機ハイブリッド膜を薄く緻密に形成することが可能となる。
下地層を形成する物質は特に限定されないが、通常シリコーン樹脂、ポリトリメチルシリルプロピン(PTMSP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエチレンオキシド(PEO)が、好ましくはシリコーン樹脂、ポリトリメチルシリルプロピン(PTMSP)、ポリエチレンオキシド(PEO)が、特に好ましくはシリコーン樹脂が、溶媒耐性が高いなど下地層の上に製膜する際の製膜方法の制限が少なく扱いやすいために用いられる。
下地層の厚みは分離に関係ない層の透過抵抗を少なくするという点で、薄いほど好ましいが、通常1nm以上、好ましくは10nm以上であり、通常3μm以下、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは500nm以下である。また、下地層は、有機無機ハイブリッド膜の製膜に用いられる溶媒に可溶化することによって、得られる有機無機ハイブリッド膜においては有機無機ハイブリッド膜と少なくとも部分的に一体化していてもよい。
【0091】
[保護層]
本発明の一態様において分離層である有機無機ハイブリッド膜の上に保護層を形成して、分離に用いることもできる。
保護層を形成する物質は特に限定されないが、通常シリコーン樹脂、ポリトリメチルシリルプロピン(PTMSP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエチレンオキシド(PEO)が、好ましくはシリコーン樹脂、ポリトリメチルシリルプロピン(PTMSP)、ポリエチレンオキシド(PEO)が、特に好ましくはシリコーン樹脂が、ガス透過性が高く、分離層である有機無機ハイブリッド膜の性能への影響が少ないという点で好適に用いられる。
保護層は分離層の透過を妨げないという点で、無いことが好ましいが、分離層の保護のために必要な場合には分離層を十分に保護する最小の厚みにすることが分離層の透過を妨げないという点で望ましい。通常1nm、好ましくは10nm、より好ましくは100nm以上であり、通常100μm以下、好ましくは10μm、より好ましくは1μm以下である。
【0092】
<ガス分離膜モジュール>
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜を工業的なガス分離に使用する場合には、支持層と複合化させた膜として、モジュール化することが望ましい。モジュールの例としてはスパイラル型、中空糸型、プリーツ型、管状型、プレート&フレーム型などが挙げられ、スパイラル型(スパイラルワウンド型あるいはSW型)または中空糸型が好ましい。
【0093】
<有機無機ハイブリッド膜の製造方法>
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜の製造方法は、無機フィラーをマトリックス樹脂と必要に応じて溶媒に分散させる分散工程と、無機フィラーをマトリックス樹脂と必要に応じて溶媒に分散させた分散液を、平面上又は曲面上に担持するキャスト工程と、キャストした分散液の溶媒を除去し、樹脂を硬化させる硬化工程からなる。分散工程の前工程として、マトリックス樹脂と、ガスの選択性を有する無機フィラーとを固練りする混練工程をさらに含んでもよい。樹脂を硬化させる硬化工程においては、加圧しながらマトリックス樹脂を硬化させる工程をさらに含んでもよい。加圧しながらマトリックス樹脂を硬化させる工程においては、樹脂の硬化を促進するために、加温することが好ましい。
具体的には、無機フィラーを十分に乾燥させたのちに、溶媒に溶解させたマトリックス樹脂、あるいは無溶媒の重合・硬化前のマトリックス樹脂の原料、及び無機フィラーを十分混合し無機フィラーを十分に分散させたのち、硬化剤が必要な樹脂を用いる場合には、更に硬化剤を添加し、よく混合して、無機フィラーを分散させる。この時、溶媒に無機フィラーを分散させたのちに、マトリックス樹脂を添加し、さらによく混合して無機フィラーを分散させることもできる。無機フィラーを分散させる方法としては、通常のミキサー、ビーズミル・ボールミル等による撹拌、二軸混練機や三本ロール等での混練に加え、超音波による解砕、分散、自転・公転ミキサーなどを使用することが挙げられる。無機フィラー、マトリックス樹脂またはマトリックス樹脂原料、場合によっては硬化剤と溶媒を混合したスラリーを、自立膜の場合には所定量テフロン(登録商標)シャーレに入れる、あるいは離型フィルムの上にブレード、バーコーター、ダイコーター、又は、スピンコーターを用いて一定厚みで製膜したのちに真空乾燥機で溶媒を除去し、所定の硬化温度で所定の硬化時間硬化させるか、イナートオーブンを用いて窒素気流下で溶媒を揮発させながら、樹脂を硬化させることで、有機無機ハイブリッド膜を得る。
真空乾燥機の温度条件は使用する溶媒に応じて適宜変更する。硬化温度や硬化時間も用いる樹脂に適した条件を用いる。
【0094】
平膜の多孔質支持層を使用する場合には支持層上にブレードあるいはダイコーター、あるいはバーコーターあるいはスピンコーターをもちいて一定厚みで製膜する。必要に応じ多孔質支持層上にあらかじめ下地層を作製したのち、下地層の上に製膜することもできる。下地層を形成する方法としては、当業者に公知の方法を用いることができ、例えば下地層を形成する物質として上述した物質の何れかを多孔質支持層上に塗布し、加熱して、当該物質を硬化させる方法を用いてもよい。あるいは、支持層上に上記混合スラリーを含浸や吸引、加圧等の方法で担持して製膜することもできる。その後、真空乾燥機で溶媒を除去したのち、所定の硬化温度で所定の硬化時間硬化させるか、イナートオーブンを用いて窒素気流下で溶媒を揮発させながら、樹脂を硬化させることで、有機無機ハイブリッド膜を得る。
【0095】
中空糸状の多孔質支持層を使用する場合には、支持層上に上記混合スラリーを浸漬や含浸や吸引、加圧等の方法で担持して製膜する。必要に応じ多孔質支持層上にあらかじめ下地層を作製したのち、下地層の上に製膜することもできる。下地層を形成する方法としては、当業者に公知の方法を用いることができ、例えば下地層を形成する物質として上述した物質の何れかを多孔質支持層上に塗布し、加熱して、当該物質を硬化させる方法を用いてもよい。製膜後、真空乾燥機で溶媒を除去したのち、所定の硬化温度で所定の硬化時間硬化させるか、イナートオーブンを用いて窒素気流下で溶媒を揮発させながら、樹脂を硬化させることで、有機無機ハイブリッド膜を得る。
真空乾燥機やイナートオーブンの温度条件、窒素流通条件は使用する溶媒に応じて適宜変更する。硬化温度や硬化時間も用いる樹脂に適した条件を用いる。
【0096】
マトリックス樹脂としてポリオルガノシロキサンを硬化させたシリコーンゴムを用いる場合、無機フィラーは、通常、硬化前のポリオルガノシロキサンと混合する。
硬化型のポリオルガノシロキサンを硬化する手段は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用できるが、生産性の観点から、無機フィラーの混合や無機フィラー混合後の保管を大気中で安定して行えるものが好ましい。その点で、付加反応や紫外線、放射線、電子線照射によって硬化するタイプが望ましく、硬化時の雰囲気制御が不要で簡便であるという点で付加反応を利用することが特に好ましい。
【0097】
ここで、マトリックス樹脂と無機フィラーを混合する前に無機フィラー乾燥させる温度は通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上、通常300℃以下であり、乾燥時間は通常3時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは8時間以上、さらに好ましくは12時間以上であり、通常48時間以下、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下である。乾燥温度と時間がこの範囲であるとき、ゼオライト中の水分を経済的な時間で十分除去することができる。
【0098】
製膜に用いる溶媒は、マトリックス樹脂あるいはマトリックス樹脂の原料が可溶な溶媒であれば特に制限されず、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドンなどを用いることができるが、無機フィラーの分散性が良い溶媒が好ましい。マトリックス樹脂あるいはマトリックス樹脂の原料は多くが疎水的である一方で、ゼオライトなどの無機フィラー表面は親水的であるので、酢酸エチルやメチルエチルケトンなど中程度の極性を持つ溶媒が好ましい。
【0099】
溶媒の無機フィラーに対する割合は、無機フィラーの量や樹脂の種類によって異なるが、製膜方法に応じて、製膜しやすい粘度になるよう溶媒量を調整することが好ましい。
【0100】
<固練り>
本発明の一態様における有機無機ハイブリッド膜の製造方法では、マトリックス樹脂と、前記無機フィラーとを固練りする、混練工程と、前記混練工程によって得られた混合物に、溶媒を混合して希釈し分散液を得る希釈工程と、を含み、後述する硬化工程では、分散工程によって得られた分散液を用いる態様が好ましい。
【0101】
[混練工程]
本発明の一態様における混練工程は、マトリックス樹脂と、ガスの選択性を有する無機フィラーとを固練りする工程である。本明細書において、固練りとは、当業者によって一般的に理解される意味を有し、例えば、マトリックス樹脂の少なくとも一部が溶媒に溶解していない条件下で、マトリックス樹脂と無機フィラーとを混練する操作を意味するが、これに限定されるものではない。
混練工程において、固練りが実施されることによって、無機フィラーに高い剪断力が加わり、凝集した二次粒子が一次粒子となって分散するため、無機フィラーの分散性を向上させることができる。従来、樹脂および粒子を含む組成物を固練りによって製造すると、粒子表面に樹脂が多量に吸着し、粒子が被覆されるため、組成物において粒子に由来する性質、例えば導電性および伝熱性などが発揮されないことがある。しかしながら、本発明において、マトリックス樹脂は一定程度のガス透過性能を有しているため、有機無機ハイブリッド膜において無機フィラーの粒子が被覆された状態であっても、無機フィラーに由来するガス透過性能及び分離性能が十分に発揮される。
【0102】
混練工程において、マトリックス樹脂と無機フィラーとの混合比は、適宜に調整することができ、上述した無機フィラーの好ましい含有量となるように調整することが好ましい。
また、混練工程によって、得られる混合物の粘度が所望の数値範囲となるように、マトリックス樹脂と無機フィラーとの混合比を調整してもよい。得られる混合物の粘度を調整することによって、混練工程において無機フィラーに加わる剪断力を調整し、無機フィラーの分散性をより向上させることができる。例えば、混練工程によって、粘度が好ましくは30Pa・s以上、より好ましくは40Pa・s以上、さらに好ましくは50Pa・s以上である混合物を得てもよい。なお、得られる混合物の粘度の上限値は、無機フィラーに高い剪断力を加える観点からは特に限定されない。例えば、混練工程において用いられる装置に加わる負荷を低減する観点から、混練工程によって、粘度が好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは300Pa・s以下である混合物を得てもよい。なお、本明細書において、粘度とは、コーンプレート型粘度計で、25℃で、測定した粘度を指す。
【0103】
混練工程において固練りする方法としては、例えばミキサー、ビーズミル・ボールミル、二軸混練機や三本ロール、自転・公転ミキサーなどを使用する方法が挙げられる。また、混練工程において、無機フィラーに加わる剪断力が下がりすぎない範囲で、硬化剤などの添加剤が添加されてもよい。
【0104】
[希釈工程]
本発明の一態様における希釈工程は、混練工程によって得られた混合物に、溶媒を混合する工程である。混練工程によって得られた混合物は、粘度が高く、製膜することが困難なことがある。しかしながら、希釈工程を実施することによって、混練工程によって得られた、無機フィラーの一次粒子が分散した混合物の粘度を調整し、製膜を容易なものとすることができる。
【0105】
溶媒は、マトリックス樹脂あるいはマトリックス樹脂の原料が可溶な溶媒であれば特に制限されず、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドンなどを用いることができるが、無機フィラーの分散性が良い溶媒が好ましい。マトリックス樹脂あるいはマトリックス樹脂の原料は多くが疎水的である一方で、ゼオライトなどの無機フィラー表面は親水的であるので、酢酸エチルやメチルエチルケトンなど中程度の極性を持つ溶媒が好ましい。
【0106】
溶媒の無機フィラーに対する割合は、無機フィラーの量や樹脂の種類によって異なるが、製膜方法に応じて、製膜しやすい粘度になるよう溶媒量を調整することが好ましい。
【0107】
混合物に溶媒を混合する方法としては、通常の撹拌、混練に加え、超音波による解砕、分散、自転・公転ミキサーなどを使用することが挙げられる。また、希釈工程においては、硬化剤などの添加剤が混合物に添加されてもよい。
【0108】
[分散工程]
本発明の一態様における分散工程は無機フィラーをマトリックス樹脂と必要に応じて溶媒に分散させる工程を言う。具体的には、無機フィラーを十分に乾燥させたのちに、溶媒に溶解させたマトリックス樹脂、あるいは無溶媒の重合・硬化前のマトリックス樹脂の原料、及び無機フィラーを十分混合し無機フィラーを十分に分散させたのち、硬化剤が必要な樹脂を用いる場合には、更に硬化剤を添加し、よく混合して、無機フィラーを分散させる。このとき、溶媒に無機フィラーを分散させたのちに、マトリックス樹脂を添加し、さらによく混合して無機フィラーを分散させることもできる。無機フィラーを分散させる方法としては、通常のミキサー、ビーズミル・ボールミル等による撹拌、二軸混練機や三本ロール等での混練に加え、超音波による解砕、分散、自転・公転ミキサーなどを使用することが挙げられる。また、分散工程には前記混練工程、前記希釈工程が包含される。
【0109】
溶媒は、マトリックス樹脂あるいはマトリックス樹脂の原料が可溶な溶媒であれば特に制限されず、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドンなどを用いることができるが、無機フィラーの分散性が良い溶媒が好ましい。マトリックス樹脂あるいはマトリックス樹脂の原料は多くが疎水的である一方で、ゼオライトなどの無機フィラー表面は親水的であるので、酢酸エチルやメチルエチルケトンなど中程度の極性を持つ溶媒が好ましい。
【0110】
[キャスト工程]
キャスト工程は分散工程によって得られた、無機フィラーとマトリックス樹脂と溶媒の分散液を、平面上又は曲面上に担持する。平面か曲面の例としては、例えば、シャーレ等の容器の内面、離型フィルムの上面、必要に応じて離型処理されたガラス板など平滑な板の上面、多孔質支持層の内面か外面、又は、多孔質支持層上に形成された下地層の上面等が挙げられる。
また、例えば、テフロン(登録商標)シャーレ上、離型フィルム上、必要に応じて離型処理されたガラス板などの平滑な板上、多孔質支持層(下地層が多孔質支持層上に形成されていてもよい)の上に、ダイコーター、ブレードやバーコーター、スピンコーター、浸漬、浸漬および吸引などによって塗布、担持してキャストしてもよい。塗布ないし担持する方法としては、ダイコーターやブレードやバーコーター、スピンコーター、による塗布が好ましく、ダイコーターやブレードやバーコーターがより好ましく、ダイコーターやブレードが特に好ましい。
【0111】
[硬化工程]
製膜においてはキャスト工程の後、溶媒を除去したのちに、マトリックス樹脂を硬化させる硬化工程が行われる。硬化工程においては、有機無機ハイブリッド膜を加圧しながら樹脂を硬化させる加圧硬化工程が好適に行われる。圧力をかけながら樹脂を硬化させることで、ゼオライトの充填量が多くても、空隙の無い膜を作ることができる。
【0112】
加圧硬化工程において加圧する方法にはいろいろあるが、加温しながら加圧することが好ましい。また、加温しながら加圧する方法としては、例えば、熱プレス機や真空熱プレス機、真空ラミネート装置、ダブルベルトプレス等を用いて膜に圧力をかけながら加温して硬化させる方法が好ましい。
圧力の大きさは通常1MPa以上、好ましくは2MPa以上、より好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは4MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、通常30MPa以下、好ましくは、20MPa以下、より好ましくは10MPa以下、さらに好ましくは8MPa以下である。圧力が上記の範囲内であるとき、有機無機ハイブリッド膜中のゼオライトの細孔を破壊することなく、ゼオライト、無機フィラーとマトリックス樹脂の間に空隙の無く、ゼオライトの充填量が多い膜を得ることができる。
加熱温度や加熱時間は用いるマトリックス樹脂の硬化条件に応じて適宜、定めればよいが、圧力をかけながら加熱する時間は通常1分以上、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上であり、通常2時間以下、好ましくは1時間以下である。この範囲にあるとき、空隙の無い膜を効率的に作製することができる。
【0113】
[下地層形成工程]
本発明の一態様における下地層形成工程は、キャスト工程の前に、多孔質支持層上に下地層を形成する工程である。下地層を形成する方法としては、当業者に公知の方法を用いることができ、例えば下地層を形成する物質として上述した物質の何れかを多孔質支持層上に塗布し、加熱して、当該物質を硬化させる方法を用いてもよい。
【0114】
<ガス分離・濃縮方法>
本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜はガス混合物を分離・濃縮することができる。本発明のガス分離・濃縮方法に用いるガス混合物は、二酸化炭素、水素、酸素、窒素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、六フッ化硫黄、ヘリウム、一酸化炭素、一酸化窒素、および水などから選ばれる少なくとも1種の成分を含むものが挙げられる。前記ガスを含むガス混合物の成分のうち、パーミエンス(以下、ガス透過度と呼ぶこともある)の高いガス成分は、有機無機ハイブリッド膜を透過し分離・濃縮され、ガス透過度の低いガス成分は供給ガス側に濃縮される。
【0115】
さらにガス混合物としては、上記成分の少なくとも2種の成分を含むものがより好ましい。この場合、2種の成分としては、ガス透過度の高い成分とガス透過度の低い成分の組合せが好ましい。
【0116】
本発明の一態様のガス分離の用途としてはCO2の分離・濃縮、H2の分離・濃縮、酸素の分離・濃縮、窒素の分離・濃縮の用途に用いることが好ましく、CO2の分離・濃縮に用いることが特に好ましい。
【0117】
CO2の分離・濃縮としては天然ガスからの二酸化炭素の除去(CO2、CH4混合物)、ランドフィルガス(CO2、CH4混合物)からのCO2回収、人工発酵ガス(CO2、CH4混合物)からのCO2回収、火力発電所等の燃焼排ガス(CO2、N2混合物)からのCO2回収などが挙げられる。
【0118】
水素の分離・濃縮としては石油精製工業における水素回収、化学工業の各種反応プロセスにおける水素回収および精製(H2、CO、CO2、炭化水素類混合物)、燃料電池用の高純度水素の製造等が挙げられる。燃料電池用の水素製造は、メタンの水蒸気改質反応により得られ、水素、一酸化炭素、メタン、水の混合ガスから水素の分離が必要とされている。
【0119】
そのほか酸素の分離・濃縮として空気からの酸素富化ガスの製造(医療用、燃焼用酸素富化空気等)が挙げられるほか、窒素分離・濃縮による空気からの窒素富化ガスの製造(防爆用、酸化防止等)にも好適に用いられる。
ガスの分離方法は公知の方法を用いることができる。膜のガス供給側とガス透過側に圧力差をつけて供給側の混合ガスから透過しやすいガスを透過側に透過させる。この時、ガス供給側の混合ガスを加圧してもよいし、透過側を、真空ポンプなどを用いて減圧してもよく、また、その両方を用いてもよい。
【0120】
ガス供給側と透過側の圧力差は適用するプロセスにおいて最適な圧力にすることが望ましいが、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.08MPa以上、さらに好ましくは0.1MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下、さらに好ましくは1MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下、特に好ましくは0.2MPa以下である。
【0121】
本発明の一態様のガス分離・濃縮方法において、スイープガスを用いてもよい。スイープガスを用いた方法とは、透過側に何らかのガスを流し、膜を透過したガスを回収するものである。
スイープガスの圧力は、通常大気圧であるが特に制限はなく、通常10MPa以下、好ましくは5MPa以下、より好ましくは1MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下、最も好ましくは0.05MPa以下であり、下限は通常0.0MPa以上である。
【0122】
本発明の一態様のガス分離方法において、供給ガス及び膜の温度は、各プロセスにおいて最適な温度を用いればよいが、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下であり、通常-30℃以上、好ましくは-15℃以上、より好ましくは0℃以上、さらに好ましくは5℃以上、特に好ましくは10℃以上、最も好ましくは20℃以上である。
【実施例0123】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明におけるサンプルの作成方法、測定・評価方法は、以下に示すとおりである。
【0124】
[粉末X線回折(XRD)測定方法]
XRD測定は以下の条件に基づき行った。
装置:BRUKER社製D2 PHASER
X線源:Cu-Kα線
出力設定:30kV・10mA
発散スリット:0.3°
入射側ソラースリット:2.5°
受光側ソラースリット:2.5°
検出部開き角度:5.69°
Niフィルター:2.5%
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=5~50°
スキャン速度:0.05°(2θ/sec)
【0125】
[SiO2/Al2O3モル比の測定方法]
SiO2/Al2O3モル比は、あらかじめICP分析と蛍光X線分析法(XRF)により検量線を作成したうえで、XRFにより求めた。
ゼオライト試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後、ICP分析によりケイ素原子、アルミニウム原子の含有量(質量%)を求めた。そして、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成した。この検量線により、XRFでゼオライト試料中のケイ素原子、アルミニウム原子の含有量(質量%)を求めた。ICP分析は、株式会社堀場製作所製ULTIMA 2Cを用いて行った。XRFの測定は、株式会社島津製作所製EDX-700またはリガク社製 蛍光X線分析装置Supermini200を用いて行った。
【0126】
[平均粒子径の測定方法]
有機無機ハイブリッド膜に用いた無機フィラーの粒子径は、合成した粉末をよく分散させて試料を作成し、JEOL社製走査電子顕微鏡JSM-6010LVをもちいて、加速電圧10kVで撮影し、任意に選択した30個の粒子について株式会社マウンテック社製画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-Viewで画像解析して、粒子径をもとめ、その粒子径の相加平均をもって平均粒子径とした。小さな結晶粒子が凝集してなる二次粒子においては二次粒子径をさす。
得られた有機無機ハイブリッド膜中の無機フィラーの粒子径は、凍結破断によって得た有機無機ハイブリッド膜の断面を、FE-SEM Hitachi:S-4500をもちいて加速電圧10kV加速電圧10kVで撮影し、断面に見える、無機フィラーについて任意に選択した30個の粒子について株式会社マウンテック社製画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-Viewで画像解析して、粒子径をもとめ、その粒子径の相加平均をもって平均粒子径とした。
なお、粒子径は、いずれの方法でも、粒子の投影面積と等しい面積を持つ、円の直径(円相当径)とする。
【0127】
[平均円形度係数の測定方法]
有機無機ハイブリッド膜に用いた無機フィラーの粒子径は、合成した粉末をよく分散させて試料を作成し、JEOL社製走査電子顕微鏡JSM-6010LVをもちいて、加速電圧10kVで撮影し、任意に選択した30個の粒子について株式会社マウンテック社製画像解析式粒度分布測定ソフトウェアMac-Viewで画像解析して、円形度係数をもとめ、その円形度係数の相加平均をもって平均円形度係数とした。小さな結晶粒子が凝集してなる二次粒子においては二次粒子の円形度係数の平均を平均円形度係数とした。
なお、ここでいう円形度係数は、用いる無機フィラーの粒子の二次元投影像の面積をS、粒子の周囲長をLとしたときに、4πS/L2で表される値である。
【0128】
[粒度分布の測定方法]
有機無機ハイブリッド膜に用いた無機フィラーの粒度分布は、以下の条件で測定した。
・装置名:レーザー回折/散乱式粒度分布計測装置LA-950(堀場製作所社製)
・測定方式:Mie散乱理論
・測定範囲:0.01~3000μm
・光源:半導体レーザー(650nm)
・検出器:リング状シリコンホトダイオード
・分散溶媒:水
超音波洗浄機を用いて無機フィラーを水によく分散させた分散液を、水を満たしたフローセルに滴下し、適正な光強度となる範囲で、粒度分布の測定を行った。得られた体積基準の粒度分布から、ピークの粒子径を求めた。
【0129】
[単成分ガス透過試験]
単成分ガス透過試験は
図1に模式的に示す装置を用いて、constant volume/valuable pressure法を用いて行った。膜の透過側(
図1の膜の下側)を13Pa(絶対圧)以下まで減圧し、35kPa(G)程度のある一定圧力でガスを供給し、膜の供給側と透過側の差圧を0.1MPaとした際の透過側の圧力増加の速度から透過係数を求めた。恒温槽の温度は35℃とし、35℃における膜の透過係数を求めた。
【0130】
ガスボンベ18からガスを供給し、手元バルブ17、およびマスフローコントローラー5の二次側にあるバルブ13を開けてマスフローコントローラー5を通じてガスを供給し、供給ガス用ガス溜め3に35kPa(G)程度、透過試験を行うガスをためたのち、バルブ12を閉とすると同時にバルブ11を開にして膜にガスを供給した。このとき、バルブ14は開で、バルブ15は閉とする。供給ガスの圧力は常に一定になるよう、バルブ13を開にしたままマスフローコントローラー5を通じてガスを一定量供給し、排圧弁6によって圧力を一定に保った。
【0131】
圧力計7で測定する圧力増加速度が定常となったのちの圧力増加速度と膜の下側からバルブ12までの体積、膜厚、膜面積から透過係数を算出した。透過ガス用ガス溜めについては水を満たして内容積を水の量から測定し、配管部分については配管長さと内径から体積を算出することで、膜の下側からバルブ12までの体積をあらかじめ算出した。圧力計は絶対圧力トランスデューサー(MKS社製バラトロン(Baratron)(登録商標)0~10トール用(626C11TBE))を用いた。
【0132】
膜厚は、自立膜においてはデジマチック標準外側マイクロメーター(株式会社ミツトヨ製MDC-25M)を用いて、測定する膜の中央と、膜の辺縁部からやや内側に入った場所を3か所、円周上均等になるように選んで、合計4か所の平均から算出した。ガスが透過する部分の面積を膜面積とした。
有機無機ハイブリッド膜複合体においては、凍結破断によって得た有機無機ハイブリッド膜複合体の断面を、走査電子顕微鏡をもちいて撮影し、多孔質支持層以外の部分である分離関連層の厚みを、複数個所について相加平均して算出したものを厚みとした。
用いたガスは、二酸化炭素(純度99.9%、東邦酸素工業社製)、メタン(純度99.999%、ジャパンファインプロダクツ製)、水素(純度99.99%、昭和電工ガスプロダクツ社製)である。
【0133】
(膜の前処理)
ガス透過試験の前の膜の前処理として、供給側ライン、透過側ラインの両者を減圧しながら、分離膜モジュール2にセットした膜1を恒温槽で80℃以上2時間加熱する。2時間経過後35℃に恒温槽の温度を下げ、1時間保持することで膜に溶解・吸着された水やガスを除去した。
【0134】
[ガラス転移温度の測定]
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)または熱機械分析装置(TMA)を用いて測定した。
DSCによるガラス転移温度の測定は、株式会社日立ハイテクサイエンス社製示差走査熱量計DSC6220(Auセンサー)を用いて測定した。約10mgの樹脂試料をアルミ製試料容器に入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度10℃/分で室温から150℃まで昇温した。5分間温度を保持した後、炉外の液体窒素へ取り出し急冷後、-150℃から再び150℃まで10℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータの変曲点をガラス転移温度とした。
TMAによるガラス転移温度の測定はエスアイアイ・ナノテクノロジー社製熱機械分析装置TMA/SS6100を使用して、熱膨張係数の変異点から求めた。なお、サンプル形状は幅4mm、チャック間距離20mmとし、49mNの引っ張り荷重をかけて、30℃から325℃に昇温速度10℃/minで昇温させて測定した。
【0135】
[曲げ戻し試験方法]
平面上に載置した平面状の膜の中央に、特定の外径のSUSチューブを置き、チューブに沿って膜を180°で1回折り返したのち、元に戻した。
【0136】
[空気透過量の測定]
有機無機ハイブリッド膜複合体、または有機無機ハイブリッド膜のみからなる自立膜を、直径1cm円形状に露出させた状態でモジュールにセットし、モジュールの一端を5kPaの真空ラインに接続して、真空ラインとモジュールとの間に設置したマスフローメーターで空気の流量を測定し、空気透過量[L/(m2・h)](0℃、1気圧換算)を算出した。マスフローメーターとしてはLintec社製MM-2100M、Airガス用、最大流量20mL/min(0℃、1気圧換算)を用いて測定した。なお、Lintec社製MM-2100Mにおいてマスフローメーターの最大流量以上の場合は、KOFLOC社製8300、N2ガス用、最大流量500ml/min(20℃、1気圧換算)を用いた。なお、多孔質支持層に担持された有機無機ハイブリッド膜をモジュールにセットする際は、多孔質支持層がある側を減圧側、すなわち透過側とし、有機無機ハイブリッド膜が製膜されている側を常圧側または加圧側、すなわちガス供給側とした。
【0137】
[ガスの選択性を有する無機フィラーの合成]
ガスの選択性を有する無機フィラーとして、ゼオライト(Z-1)~(Z-5)を合成した。
【0138】
(ゼオライト(Z-1)の合成)
容器内に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、N,N,N-トリメチル-1-アダマンタアンモニウム水酸化物(TMADAOH)水溶液(セイケム社製)、水酸化アルミニウム水和物(アルドリッチ社製)、シリカ水分散ゾルを順次加えた。N,N,N-トリメチル-1-アダマンタアンモニウム水酸化物は構造規定剤(SDA)として用いた。得られた混合物の組成比は、1.0SiO2/0.033Al2O3/0.1NaOH/0.06KOH/0.07TMADAOH/20H2Oであった。その後前記混合物中のSiO2に対して2質量%の、特開2016-104486と同様に作製したCHA型ゼオライト粉末を前記混合物に加えて、良く混合した後、得られた反応混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で、15rpmで回転させながら、48時間水熱合成を行った。反応終了後、吸引濾過し、得られた固体を水で洗浄した後に、100℃で一晩、恒温槽中で乾燥し、空気雰囲気下で550℃で6時間焼成してSDAを熱分解することで、ゼオライト(Z-1)を得た。得られたゼオライト(Z-1)について粉末X回折を測定し、ゼオライト(Z-1)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-1)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-1)平均粒子径は、SEM観察した結果、0.6μmであり、SiO2/Al2O3比をもとめたところ25であった。
【0139】
(ゼオライト(Z-2)の合成)
構造規定剤(SDA)として東京化成工業株式会社製テトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)を用い、シリカ源としてコロイダルシリカ(Ludox(登録商標)AS-40シグマ-アルドリッチ製)を用い、混合物の組成比を1.0SiO2/0.1388Al2O3/0.53NaOH/0.72TEABr/54H2Oとし、種結晶として、特願2020-53876 比較例1と同様に作製したMWF型ゼオライトをSiO2に対して2質量%の混合物に加えた以外はゼオライト(Z-1)の合成時と同様に反応混合物を作製した。
得られた反応混合物を耐圧容器に入れ、15rpmで回転させながら、室温で10日間保持してAgingを行ったのち、135℃で6日間水熱合成を行った。反応終了後、得られた固体を吸引濾過し、脱塩水で洗浄した後に、100℃で1晩恒温槽中で乾燥し、空気雰囲気下で550℃で6時間焼成してSDAを熱分解することで、ゼオライト(Z-2)を得た。
得られたゼオライト(Z-2)について粉末X回折を測定した結果、ゼオライト(Z-2)がMWF型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-2)はMWF型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は16.1である。
得られたゼオライト(Z-2)のSiO2/Al2O3比はリガク社製 蛍光X線分析装置Supermini200を用いて求めたところ6であり、SEM観察の結果、平均粒子径は1μmであった。
【0140】
(ゼオライト(Z-3)の合成)
容器内に、水酸化ナトリウム(キシダ化学社製)0.4g、水酸化アルミニウム(キョーワード製、Al2O354.3%)0.75g、水7.2gを混合し、そこへシリカゾル(日産化学製、スノーテックス40)6gを添加し、1時間撹拌した。この混合物を耐圧容器に入れ、80℃のオーブン中で2時間静置状態で加熱した。
室温まで冷却後、この混合物に水7.1g、構造規定剤(SDA)としてN,N,N-トリメチル-1-アダマンタアンモニウム水酸化物(TMADAOH、セイケム社製)25質量%水溶液16.9g、シリカゾル(日産化学製、スノーテック40)9gを加え撹拌した。得られた混合物の組成比は、1.0SiO2/0.04Al2O3/0.1NaOH/0.2TMADAOH/20H2Oであった。さらに種結晶としてCHA型のゼオライト(Z-1)を0.12gを添加し撹拌した。この混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブンで4日間、静置状態で加熱し水熱合成を行った。
反応終了後、得られた固体を吸引濾過し、脱塩水で洗浄した後に、100℃で1晩、恒温槽中で乾燥し、空気雰囲気下で550℃で6時間焼成してSDAを熱分解することで、ゼオライト(Z-3)を得た。得られたゼオライト(Z-3)について粉末X回折を測定した結果、ゼオライト(Z-3)がCHA型ゼオライトであることを確認した。また、SEM観察の結果、平均粒子径は7μmであった。ゼオライト(Z-3)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-3)のSiO2/Al2O3比は22であった。
【0141】
(ゼオライト(Z-4)の作製)
なすフラスコに測り取ったヘキサメチルジシロキサン(HMDS)100gに150℃で12時間以上乾燥させたゼオライト(Z-1)を10g入れ、撹拌しながら、オイルバスで110℃で5時間加熱還流し、吸引濾過後、アセトンでよく洗浄して、乾燥させることで、ゼオライト(Z-4)を得た。得られたゼオライト(Z-4)のSiO2/Al2O3比は26であった。
【0142】
(ゼオライト(Z-5)の作製)
ゼオライト(Z-2)を用いるほかは、ゼオライト(Z-4)の作製方法と同様にして、ゼオライト(Z-2)の表面をヘキサメチルジシロキサンで修飾し、ゼオライト(Z-5)を得た。得られたゼオライト(Z-5)のSiO2/Al2O3比は7であった。
【0143】
(比較例1)
ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)5.4gとシリコーンゴム前駆体(SILPOTTM184 Silicone Elastomer Base(ダウ・東レ株式会社製))(以下、Silpot主剤と呼ぶことがある。)1.04gを、撹拌子を用いて均一になるまで混合したのちに、硬化剤(SILPOTTM 184 Silicone Elastomer Curing Agent、ダウ・東レ株式会社製)(以下Silpot硬化剤と呼ぶことがある。)を0.10g加えてよく混合した。混合して得た液を内径30mmのテフロン(登録商標)シャーレに1.0g滴下し、真空乾燥機にテフロン(登録商標)シャーレを入れ、ヘキサンを揮発させたのちに80℃に昇温して30分保持した。その後、循環恒温槽にテフロン(登録商標)シャーレを入れ80℃で5時間保持してシリコーン樹脂を硬化させた。Silpot主剤とSilpot硬化剤の硬化物からなるマトリックス樹脂を、以下、マトリックス樹脂(P-1)とよぶ。
テフロン(登録商標)シャーレから膜をはがして、シリコーン樹脂膜(M-1)を得た。膜厚は135μmであった。シリコーン樹脂膜(M-1)のガラス転移温度をDSCを用いて測定したところ-126℃であった。
シリコーン樹脂膜(M-1)を上記の評価方法で測定した、35℃におけるCO2の透過係数は2500Barrerであり、CH4の透過係数は800Barrerであった。シリコーン樹脂膜(M-1)のCO2/CH4分離係数は3.1であった。
【0144】
(比較例2)
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 311g(1.06mol)、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物 324g(1.06mol)、N-メチルピロリドン 3700gを加え、80℃で8時間加熱撹拌することで、ポリイミド前駆体を25質量%含むポリイミド前駆体含有組成物(I-1)を得た。
ポリイミド前駆体含有組成物I-1を、N-メチル-2-ピロリドンで希釈し、ポリイミド前駆体が20質量%となるように調整した。得られた混合液をガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことでポリイミド樹脂膜(M-2)を得た。得られたフィルムの膜厚は、8μmであった。
ポリイミド前駆体含有組成物(I-1)を加熱焼成し、硬化させて得られるマトリックス樹脂を以下、マトリックス樹脂(P-2)と呼ぶ。ポリイミド樹脂膜(M-2)のガラス転移温度をTMAを用いて測定したところ、316℃であった。
【0145】
(実施例1)
150℃で一晩乾燥ゼオライト(Z-1)0.33gをヘキサン5.04gに混合し、超音波洗浄機を用いて、分散させたのち、Silpot主剤を0.50g加えてよく撹拌し、超音波洗浄機を用いてさらにゼオライト(Z-1)を分散させる。その後、Silpot硬化剤0.056gを加え、撹拌して混合させる。得られた混合液(以下、膜原料スラリーということがある)をシリコーン樹脂膜(M-1)の作製方法と同様の方法で製膜したところ、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-1)からなる有機無機ハイブリッド膜(M-3)が得られた。有機無機ハイブリッド膜(M-3)の膜厚は136μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-23)の全質量に対するゼオライト(Z-1)の割合は37.2wt%であった。有機無機ハイブリッド膜(M-3)の35℃におけるCO2透過係数は11000Barrer、CH4の透過係数は990Barrerであり、理想分離係数は11であり、ゼオライト(Z-1)を添加しないシリコーン樹脂膜(M-1)と比べて透過係数、分離係数ともに大きくなり、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能を示した。評価結果を表1に示す。
【0146】
(実施例2)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-4)を用い、ゼオライト(Z-4)0.53g、ヘキサン1.41g、Silpot主剤0.503g、Silpot硬化剤0.051gを実施例1と同様に混合して得た膜原料スラリー使用したほかは実施例1と同様にして、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-4)からなる、有機無機ハイブリッド膜(M-4)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-4)中のゼオライト(Z-4)の割合は48.9wt%であり、膜厚は167μmであった。35℃におけるCO
2透過係数は10000Barrer、CH
4透過係数は720Barrerで、分離係数は15であり、ゼオライト(Z-4)を添加しないシリコーン樹脂膜(M-1)と比べて透過係数、分離係数ともに大きくなり、
図2に示すように、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能を示した。評価結果を表1に示す。
【0147】
(実施例3)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-1)1.50gとヘキサン2.02g、Silpot主剤1.00g、Silpot硬化剤0.101gを実施例1と同様に混合し、膜原料スラリーを得た。アルミ板の上に張り付けた10cm×10cmで厚さ0.5mmのテフロン(登録商標)シートのうえに、直径3cm程度の円形に膜原料スラリーを垂らしたのち、真空乾燥機を用いて室温で溶媒を完全に揮発させた。このサンプルを取り出したのち上から、同様にテフロン(登録商標)シートを張りつけたアルミ板で挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で圧力ゲージが10MPaを示すまで加圧した。圧力ゲージの指示値を10MPaで維持したまま、78℃で10分間保持したのち100℃に昇温し、100℃で30分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-1)からなる、有機無機ハイブリッド膜(M-5)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-5)中のゼオライトの割合は57.6wt%であり、膜厚は436μmであった。26℃におけるCO2透過係数は7100Barrer、CH4透過係数は390Barrerで、分離係数は18であり、ゼオライト(Z-1)を添加しないシリコーン樹脂膜(M-1)と比べて透過係数、分離係数ともに大きくなり、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能を示した。評価結果を表1に示す。
【0148】
(実施例4)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-3)0.34g、酢酸エチル2.22g、Silpot主剤0.310g、Silpot硬化剤0.034gを実施例1と同様に混合して得た膜原料スラリー使用したほかは、実施例1と同様にして、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-3)からなる、有機無機ハイブリッド膜(M-6)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-6)中のゼオライトの割合は49.6wt%であり、膜厚は154μmであった。35℃におけるCO2透過係数は9400Barrer、CH4透過係数は530Barrerであり、CO2/CH4分離係数は18であった。ゼオライト(Z-3)を添加しないシリコーン樹脂膜(M-1)と比べて透過係数、分離係数ともに大きくなり、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能を示した。また、ゼオライト含有量は49.6wt%と実施例3の有機無機ハイブリッド膜(M-5)に比べて少ないものの、CO2/CH4分離係数は18と実施例3の有機無機ハイブリッド膜(M-5)と同等の値を示した。
得られた有機無機ハイブリッド膜(M-6)の中央に、外径1/16インチのSUSチューブを置き、チューブに沿って膜を180°1回折り返して戻す曲げ戻し試験を行ったのち、曲げ戻し試験前と同様にガス透過性能を測定した。35℃におけるCO2透過係数は9300Barrer、CH4透過係数は530Barrerであり、CO2/CH4分離係数は17であった。曲げ戻し試験前との性能差は2.0%以内であり、ガラス転移温度が低い柔軟な樹脂(P-1)を用いた有機無機ハイブリッド膜(M-6)では、ゼオライトを49.6wt%含有しても、折り曲げが性能にほとんど影響を与えず、優れた加工性を持つ十分な柔軟性を持つ膜となっている。
【0149】
(比較例3)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-1)を用い、ゼオライト(Z-1)0.126g、ヘキサン2.73g、Silpot主剤0.505g、Silpot硬化剤0.053gを実施例1と同様に混合して得た膜原料スラリー使用したほかは実施例1と同様にして、P-1とCHA型ゼオライト(Z-1)からなる、有機無機ハイブリッド膜(M-7)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-7)中のゼオライトの割合は18.4wt%であり、膜厚は96.3μmであった。35℃におけるCO2透過係数は3600Barrer、CH4透過係数は650Barrerであり、CO2/CH4分離係数は5.5であった。ゼオライト(Z-1)を添加しない比較例1のシリコーン樹脂膜(M-1)と比べて透過係数、分離係数ともに大きいものの、Robeson Upper Boundを超すガス透過・分離性能は得られなかった。評価結果を表1及び表2に示す。
【0150】
(比較例4)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-2)0.335gとヘキサン2.75g、Silpot主剤0.501g、Silpot硬化剤0.050gを実施例1と同様に混合して得た膜原料スラリー使用したほかは実施例1と同様にして、マトリックス樹脂(P-1)とMWF型のゼオライト(Z-2)からなる、有機無機ハイブリッド膜(M-8)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-8)中のゼオライトの割合は37.8wt%であり、膜厚は125μmであった。35℃におけるCO2透過係数は1800Barrer、CH4透過係数は550Barrerであり、分離係数は3.2であり、ゼオライト(Z-2)を添加しない比較例1のシリコーン樹脂膜(M-1)より透過係数が小さく、分離係数も同程度であり、Robeson Upper Boundを大きく下回るガス透過・分離性能を示した。したがって、有機無機ハイブリッド膜(M-8)においてはゼオライトを混合させた効果が見られないと考えられる。評価結果を表1に示す。
【0151】
(比較例5)
200℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-5)0.554gとヘキサン1.43g、Silpot主剤0.50g、Silpot硬化剤0.050gを実施例1と同様に混合して得た膜原料スラリー使用したほかは実施例1と同様にして、マトリックス樹脂(P-1)とMWF型のゼオライト(Z-5)からなる、有機無機ハイブリッド膜(M-9)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-9)中のゼオライトの割合は50.2wt%であり、膜厚は149μmであった。35℃におけるCO2透過係数は1400Barrer、CH4透過係数は440Barrerであり、分離係数は3.2であり、ゼオライト(Z-5)を添加しない比較例1のシリコーン樹脂膜(M-1)より透過係数が小さく、分離係数も同程度であり、Robeson Upper Boundを大きく下回るガス透過・分離性能を示した。したがって、有機無機ハイブリッド膜(M-9)においてはゼオライトを混合させた効果が見られないと考えられる。評価結果を表1に示す。
【0152】
(比較例6)
ゼオライト(Z-1)0.556gと、N-メチル-2-ピロリドン 1.019gを混合し、超音波洗浄機で5分間分散させたのちにポリイミド前駆体含有組成物(I-1)を加えて、撹拌子で混合し、ゼオライト(Z-1)とポリイミド前駆体含有組成物(I-1)とを混合した混合液を得た。得られた混合液をガラス基板上に適量たらし、ギャップ幅が8milのブレードを用いてコートすることで製膜した。混合液をコートしたガラス基板をヤマト科学製イナートオーブンDN411Iに入れ、窒素15L/min気流下で330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことで、ポリイミド樹脂P-2をマトリックス樹脂とした有機無機ハイブリッド膜(M-10)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-10)中のゼオライトの割合は35.7wt%であり、膜厚は47.3μmであった。
この膜を1/8インチの配管に沿って180°曲げたところ割れてしまった。ガラス転移温度が高いP-2を用いた有機無機ハイブリッド膜(M-10)は膜の柔軟性が乏しく、加工性が悪いといえる。
【0153】
【0154】
表1に示す通り、実施例1~5では、ガラス転移温度が15℃以下かつ樹脂膜でのガス透過が200Barrer以上のシリコーン樹脂(P-1)をマトリックス樹脂とし、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度FDSiが15.1のCHA型ゼオライトを35質量%以上含む膜において、Robeson Upper Boundを上回る高い透過性能と分離性能を示している。
【0155】
一方、表1に示すように比較例4,5では、FDSiが16.1のMWF型ゼオライトを用いており、ゼオライトの充填量が35wt%以上であっても、マトリックス樹脂のみの膜よりCO2の透過係数が低下し、分離係数はほぼ変わっておらず、ゼオライトを混合させた効果が見られない。ゼオライト混合の効果が見られないが透過係数の大幅な増加等は見られないことから、マトリックス樹脂とゼオライトの間に空隙が開いていて、ゼオライトの効果がないのではなく、樹脂がゼオライトの細孔を閉塞するなどして、ゼオライトの細孔中をガスが通れなくなっていると考えられる。
これらの結果から、FDSiが15.5以下であれば、マトリックス樹脂がゼオライトの細孔の表面あるいは細孔内部を一部閉塞させても、ゼオライト内部の空間が多いため、ガスの流路を確保することができ、ゼオライトのガス分離性能を十分に発揮した有機無機ハイブリッド膜を安定的に得ることができると考えられる。
【0156】
[ガスの選択性を有する無機フィラーの合成]
ガスの選択性を有する無機フィラーとして、さらに以下のゼオライトを合成した。
【0157】
(ゼオライト(Z-6)の合成)
1mol/L-NaOH水溶液(キシダ化学社製)150gと1mol/L-KOH水溶液(キシダ化学社製)90gを混合したものに水酸化アルミニウム水和物(キョーワード社製)9.4gを加えて攪拌し溶解させ、さらに水98gを加えて攪拌し、透明溶液とした。これに。N,N,N-トリメチル-1-アダマンタアンモニウム水酸化物(TMADAOH)水溶液(TMADAOH25質量%含有、セイケム社製)88.8gを加え、さらにコロイダルシリカ(日産化学社製スノーテック-40)225gを加えさらに、特開2016-104486 製造例9 と同様にして合成した未焼成のCHA型ゼオライトを種結晶として1.8g加え2時間撹拌し、反応混合物とした。TMADAOHは構造規定剤(SDA)として用いた。
得られた反応混合物の組成比は1.0SiO2/0.033Al2O3/0.1NaOH/0.06KOH/0.07TMADAOH/20H2Oであり、種結晶の質量は反応混合物中のSiO2に対して2質量%である。
上記反応混合物の入ったテフロン(登録商標)製内筒(1L)を、1Lの誘導攪拌式オートクレーブに入れて密閉し、アンカー翼を用いて100rpmで攪拌し、160℃で48時間、自生圧力下で加熱した。所定時間経過後に放冷し、反応混合物を取り出して濾過、洗浄し、100℃で5時間以上乾燥させ、as-madeのゼオライト結晶を得た。このas-madeのゼオライト結晶を空気雰囲気下において550℃で6時間焼成してSDAを熱分解することで、ゼオライト(Z-6)を得た。得られたゼオライト(Z-6)について粉末X線回折を測定し、ゼオライト(Z-6)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-6)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-6)の平均粒子径は、SEM観察した結果、0.7μmであり、SiO2/Al2O3比をもとめたところ24であった。平均円形度係数は、0.87であった。
【0158】
(ゼオライト(Z-7)の合成)
反応容器として容量200mLの耐圧容器をもちい、160℃のオーブン中で、15rpmで回転させた以外はZ-6と同様にして、ゼオライトを合成し、焼成してSDAを除くことでゼオライト(Z-7)を得た。得られたゼオライト(Z-7)について粉末X線回折を測定し、ゼオライト(Z-7)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-7)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-7)の平均粒子径は、SEM観察した結果、1μmであり、SiO2/Al2O3比をもとめたところ26であった。平均円形度係数は、0.94であった。
Z-7の体積基準粒度分布におけるモード径は1.19μmであった。
【0159】
(ゼオライト(Z-8)の合成)
種結晶として焼成前のZ-11を用いた以外はZ-7と同様にしてゼオライトを合成し、焼成してSDAを除くことでZ-8を得た。得られたゼオライト(Z-8)について粉末X線回折を測定し、ゼオライト(Z-8)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-8)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-8)の平均粒子径は、SEM観察した結果、0.8μmであり、SiO2/Al2O3比をもとめたところ24であった。平均円形度係数は、0.92であった。
【0160】
(ゼオライト(Z-9)の合成)
反応混合物の組成比を1.0SiO2/0.033Al2O3/0.1NaOH/0.06KOH/0.1TMADAOH/15H2Oとして160℃のオーブン中で15rpmで回転させながら96時間水熱合成を行った以外はZ-7と同様にしてゼオライトを合成し、焼成してSDAを除くことでゼオライト(Z-9)を得た。得られたゼオライト(Z-9)について粉末X線回折を測定し、ゼオライト(Z-9)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-9)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-9)の平均粒子径は、SEM観察した結果、0.2μmであり、SiO2/Al2O3比をもとめたところ25であった。平均円形度係数は、0.89であった。
Z-9の体積基準粒度分布におけるモード径は0.31μmであった。
【0161】
(ゼオライト(Z-10)の合成)
反応混合物の組成比を1.0SiO2/0.04Al2O3/0.15KOH/0.2TMADAOH/20H2Oとし、160℃のオーブン中に反応混合物を入れた200mlの耐圧容器を静置して、96時間保持することで水熱合成を行ったほかはZ-7と同様にしてゼオライトを合成し、焼成してSDAを除くことでゼオライト(Z-10)を得た。得られたゼオライト(Z-10)について粉末X線回折を測定し、ゼオライト(Z-10)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-10)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-10)の平均粒子径は、SEM観察した結果、5μmであり、形状は立方体状であり、平均円形度係数は、0.77であった。SiO2/Al2O3比をもとめたところ20であった。
Z-10の体積基準粒度分布におけるモード径は7.3μmであった。
【0162】
(ゼオライト(Z-11)の合成)
反応混合物の組成比を1.0SiO2/0.033Al2O3/0.1NaOH/0.04KOH/0.07TMADAOH/20H2Oとした以外はZ-6と同様にしてゼオライトを合成し、焼成してSDAを除くことでゼオライト(Z-11)を得た。得られたゼオライト(Z-11)について粉末X線回折を測定し、ゼオライト(Z-11)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-11)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-11)の平均粒子径は、SEM観察した結果、2μmであり、形状は球状であり、平均円形度係数は0.94であった。得られたゼオライト(Z-11)のSiO2/Al2O3比をもとめたところ26であった。
【0163】
(ゼオライト(Z-12)の合成)
反応混合物の組成比を1.0SiO2/0.033Al2O3/0.4TMADAOH/20H2Oとして160℃のオーブン中に反応混合物を入れた200mlの耐圧容器を静置して、48時間保持することで水熱合成を行った以外はZ-10と同様にしてゼオライトを合成し、焼成してSDAを除くことでゼオライト(Z-12)を得た。得られたゼオライト(Z-12)について粉末X線回折を測定し、ゼオライト(Z-12)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-12)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-12)の平均粒子径は、SEM観察した結果、5μmであり、形状は球状であり、平均円形度係数は0.94であった。得られたゼオライト(Z-12)についてSiO2/Al2O3比をもとめたところ23であった。
【0164】
(ゼオライト(Z-14)の合成)
反応混合物の組成比を1.0SiO2/0.033Al2O3/0.1NaOH/0.06KOH/0.07TMADAOH/100H2Oとした以外はZ-8と同様にしてゼオライトを合成し、焼成してSDAを除くことでゼオライト(Z-14)を得た。得られたゼオライト(Z-14)について粉末X線回折を測定し、ゼオライト(Z-14)がCHA型ゼオライトであることを確認した。ゼオライト(Z-14)はCHA型ゼオライトであるので、酸素8員環ゼオライトであり、T元素をすべてSiであるとしたときのフレームワーク密度(FDSi)は15.1である。得られたゼオライト(Z-14)の平均粒子径は、SEM観察した結果、6μmであり、形状はラグビーボール状であり、平均円形度係数は0.91であった。得られたゼオライト(Z-14)についてSiO2/Al2O3比をもとめたところ25であった。
【0165】
(ゼオライト(Z-15)の合成)
なすフラスコに測り取ったアセトン100gにシランカップリング剤(KBM-1083,信越化学工業株式会社)を5g加えた液に、乾燥させたゼオライト(Z-7)を15g入れ、撹拌しながら、オイルバスで55℃で5時間加熱還流し、吸引濾過後、アセトンでよく洗浄して、乾燥させることで、ゼオライト(Z-15)を得た。得られたゼオライト(Z-15)の平均粒子径、SiO2/Al2O3比および平均円形度係数は、原料であるゼオライト(Z-7)と同様であった。
【0166】
(ゼオライト(Z-16)の合成)
なすフラスコに測り取ったアセトン100gにシランカップリング剤(KBM-1083,信越化学工業株式会社)を5g加えた液に、乾燥させたゼオライト(Z-8)を15g入れ、撹拌しながら、オイルバスで55℃で5時間加熱還流し、吸引濾過後、アセトンでよく洗浄して、乾燥させることで、ゼオライト(Z-16)を得た。得られたゼオライト(Z-16)の平均粒子径、SiO2/Al2O3比および平均円形度係数は、原料であるゼオライト(Z-8)と同様であった。
【0167】
(ゼオライト(Z-17)の合成)
なすフラスコに測り取ったアセトン100gにシランカップリング剤(KBM-1083,信越化学工業株式会社)を5g加えた液に、乾燥させたゼオライト(Z-11)を15g入れ、撹拌しながら、オイルバスで55℃で5時間加熱還流し、吸引濾過後、アセトンでよく洗浄して、乾燥させることで、ゼオライト(Z-17)を得た。得られたゼオライト(Z-17)の平均粒子径、SiO2/Al2O3比および平均円形度係数は、原料であるゼオライト(Z-11)と同様であった。
【0168】
(実施例5)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-10)(モード径 7.3μm)0.249gと、ゼオライト(Z-9)(モード径 0.31μm)0.05gをヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.200gに加え、超音波洗浄機を用いて、分散させたのち、シリコーンゴム前駆体(SILPOTTM 184 Silicone Elastomer Base(ダウ・東レ株式会社製))(以下、Silpot主剤と呼ぶことがある。)0.21gと、硬化剤(SILPOTTM 184 Silicone Elastomer Curing Agent、ダウ・東レ株式会社製)(以下Silpot硬化剤と呼ぶことがある。)0.025gとヘキサン0.209gを加えて、攪拌子で撹拌して混合した。得られた混合液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、離型フィルムをさらに上に乗せて挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で、圧力ゲージが20MPaを示すまで加圧し、100℃で10分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-10)およびゼオライト(Z-9)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-18)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-18)中のゼオライトの割合は56.0wt%であり、ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-10)の含有量はゼオライト(Z-9)の含有量の5.0倍であった。有機無機ハイブリッド膜(M-18)は体積基準粒度分布で7.27μmにピークを持つZ-10と体積基準粒度分布で0.31μmにピークを持つZ-9の二種類のゼオライトを含有している。有機無機ハイブリッド膜(M-18)の膜厚は60μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-18)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は8100Barrer、CH4の透過係数は510Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は16であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0169】
(実施例6)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-14)0.325gと、ゼオライト(Z-6)0.068gと、シリコーンゴム前駆体(SILPOTTM 184 Silicone Elastomer Base(ダウ・東レ株式会社製))(以下、Silpot主剤と呼ぶことがある。)0.162gと、硬化剤(SILPOTTM 184 Silicone Elastomer Curing Agent、ダウ・東レ株式会社製)(以下Silpot硬化剤と呼ぶことがある。)0.012gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.334gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、離型フィルムをさらに上に乗せて挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で、圧力ゲージが20MPaを示すまで加圧し、100℃で10分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-14)およびゼオライト(Z-6)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-22)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-22)中のゼオライトの割合は69.3wt%であり、ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-14)の含有量はゼオライト(Z-6)の含有量の4.8倍であった。有機無機ハイブリッド膜(M-22)の膜厚は47μmであった。
ゼオライト(Z-14)とゼオライト(Z-6)の混合物の粒度分布を測定したところ体積基準粒度分布において、3.6μmと0.36μmの2つのピークが観測された。
有機無機ハイブリッド膜(M-22)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は12000Barrer、CH4の透過係数は340Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は34であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0170】
(実施例7)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-12)0.323gと、ゼオライト(Z-6)0.067gと、Silpot主剤0.151gと、Silpot硬化剤0.024gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.34gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、離型フィルムをさらに上に乗せて挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で、圧力ゲージが20MPaを示すまで加圧し、100℃で10分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-12)およびゼオライト(Z-6)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-19)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-19)中のゼオライトの割合は69.0wt%であり、ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-12)の含有量はゼオライト(Z-6)の含有量の4.8倍であった。有機無機ハイブリッド膜(M-19)の膜厚は53μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-19)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は12000Barrer、CH4の透過係数は450Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は26であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0171】
(実施例8)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-12)0.323gと、ゼオライト(Z-6)0.067gと、Silpot主剤0.151gと、Silpot硬化剤0.024gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.340gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、80℃の循環恒温槽で5時間加熱し硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-12)およびゼオライト(Z-6)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-20)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-20)中のゼオライトの割合は69.0wt%であり、ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-12)の含有量はゼオライト(Z-6)の含有量の4.8倍であった。有機無機ハイブリッド膜(M-20)の膜厚は64.3μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-20)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は17000Barrer、CH4の透過係数は910Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は19であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0172】
(実施例9)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-11)0.374gと、ゼオライト(Z-8)0.078gと、Silpot主剤0.173gと、Silpot硬化剤0.020gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、メチルエチルケトン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.38gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、離型フィルムをさらに上に乗せて挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で、圧力ゲージが20MPaを示すまで加圧し、100℃で10分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-11)およびゼオライト(Z-8)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-15)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-15)中のゼオライトの割合は70.1wt%であり、ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-11)の含有量はゼオライト(Z-8)の含有量の4.8倍であった。有機無機ハイブリッド膜(M-15)の膜厚は65μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-15)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は14000Barrer、CH4の透過係数は480Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は28であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0173】
(実施例10)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-11)0.554gと、ゼオライト(Z-8)0.111gと、Silpot主剤0.245gと、Silpot硬化剤0.025gとを加えて、さらに分散剤として変性シリコーンオイル(X-22-163B(信越化学工業株式会社製))0.011gを加え、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.600gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、離型フィルムをさらに上に乗せて挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で、圧力ゲージが20MPaを示すまで加圧し、100℃で10分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-11)およびゼオライト(Z-8)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-16)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-16)中のゼオライトの割合は70.3wt%であり、ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-11)の含有量はゼオライト(Z-8)の含有量の5.0倍であった。有機無機ハイブリッド膜(M-16)の膜厚は56μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-16)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は13000Barrer、CH4の透過係数は480Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は27であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0174】
(実施例11)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-11)0.319gと、ゼオライト(Z-9)0.068gと、Silpot主剤0.162gと、Silpot硬化剤0.016gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.427gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、離型フィルムをさらに上に乗せて挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で、圧力ゲージが20MPaを示すまで加圧し、100℃で10分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-11)およびゼオライト(Z-9)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-14)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-19)中のゼオライトの割合は68.5wt%であり、ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-11)の含有量はゼオライト(Z-9)の含有量の4.7倍であった。有機無機ハイブリッド膜(M-14)の膜厚は49μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-14)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は12000Barrer、CH4の透過係数は460Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は27であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0175】
(実施例12)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-6)0.662gと、Silpot主剤0.452gと、Silpot硬化剤0.040gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.6734gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、離型フィルムをさらに上に乗せて挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で、圧力ゲージが20MPaを示すまで加圧し、100℃で10分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-6)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-11)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-11)中のゼオライトの割合は57.4wt%であり、膜厚は43μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-11)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は11000Barrer、CH4の透過係数は550Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は20であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0176】
(実施例13)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-6)0.662gと、Silpot主剤0.452gと、Silpot硬化剤0.040gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.6734gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、80℃の循環恒温槽で5時間加熱し硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-6)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-12)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-12)中のゼオライトの割合は57.4wt%であり、膜厚は68μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-12)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は16000Barrer、CH4の透過係数は800Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は20であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0177】
(実施例14)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-14)0.304gと、Silpot主剤0.127gと、Silpot硬化剤0.015gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.283gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、80℃の循環恒温槽で5時間加熱し硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-14)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-21)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-21)中のゼオライトの割合は68.2wt%であり、膜厚は50μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-21)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は17000Barrer、CH4の透過係数は510Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は34であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0178】
(実施例15)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-11)0.368gと、Silpot主剤0.163gと、Silpot硬化剤0.027gとを加えて、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.3705gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、80℃の循環恒温槽で5時間加熱し硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-11)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-13)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-13)中のゼオライトの割合は65.9wt%であり、膜厚は47μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-13)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は11000Barrer、CH4の透過係数は460Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は24であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0179】
(実施例16)
150℃で一晩乾燥させたゼオライト(Z-10)(モード径 7.3μm)0.249gと、ゼオライト(Z-9)(モード径 0.31μm)0.052gと、Silpot主剤0.107gと、Silpot硬化剤0.012gとを加えて、さらに分散剤として変性シリコーンオイル(X-22-163B(信越化学工業株式会社製))0.031gを加え、自転・公転方式ミキサーあわとり練太郎(AR-250、株式会社シンキー製)で撹拌15分間、脱泡1分間で混合したのちに、ヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)0.314gと混合して得た液を、ギャップ幅を8milとしたアプリケータで離型フィルム上に塗布した。真空乾燥機で溶媒を揮発させたのち、離型フィルムをさらに上に乗せて挟み、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で、圧力ゲージが20MPaを示すまで加圧し、100℃で10分間保持して圧力をかけた状態で硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、マトリックス樹脂(P-1)とCHA型のゼオライト(Z-10)およびゼオライト(Z-9)とからなる、有機無機ハイブリッド膜(M-17)を得た。有機無機ハイブリッド膜(M-17)中のゼオライトの割合は66.7wt%であり、ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-10)の含有量はゼオライト(Z-9)の含有量の4.6倍であった。有機無機ハイブリッド膜(M-17)は体積基準粒度分布で7.3μmにピークを持つZ-10と体積基準粒度分布で0.31μmにピークを持つZ-9の二種類のゼオライトを含有している。有機無機ハイブリッド膜(M-17)の膜厚は61μmであった。有機無機ハイブリッド膜(M-17)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0[L/(m2・h)]であった。35℃におけるCO2の透過係数は13000Barrer、CH4の透過係数は510Barrerであり、CO2/CH4理想分離係数は25であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0180】
(製造例1:シリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-1)の作製)
孔径0.45μmの多孔質PVDFメンブレン支持層(Merck Millipore社製Immobilon(登録商標)-P メンブレン)を平滑な板の上に置き、ギャップ幅を1milとしたアプリケータを用いて、シリコーン樹脂を塗布した。得られた膜を100℃で30分間加熱し、シリコーン樹脂の下地層を形成した。多孔質PVDF支持層とシリコーン樹脂との複合膜を、以下シリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-1)とよぶ。凍結破断によって得た断面を走査電子顕微鏡で観察することによって求めたシリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-1)中のシリコーン樹脂層の膜厚は2μmであった。
【0181】
(製造例2:シリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-2)の作製)
孔径0.45μmの多孔質PVDFメンブレン支持層(Merck Millipore社製Immobilon(登録商標)-P メンブレン)を平滑な板の上に置き、ギャップ幅を0.5milとしたアプリケータを備えたオートコータを用いて、シリコーン樹脂を塗布した。得られた膜を100℃で30分間加熱し、シリコーン樹脂の下地層を形成した。多孔質PVDF支持層とシリコーン樹脂との複合膜を、以下シリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-2)とよぶ。凍結破断によって得た断面を走査電子顕微鏡で観察することによって求めたシリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-2)中のシリコーン樹脂層の膜厚は1μmであった。
【0182】
(実施例17)
150℃で一晩乾燥したゼオライト(Z-7)を0.99g秤量し、シリコーンゴム前駆体(SILPOTTM184 Silicone Elastomer Base(ダウ・東レ株式会社製)、以下Silpot主剤と呼ぶことがある)を0.602gおよび硬化剤(SILPOTTM184 Silicone Elastomer Curing Agent(ダウ・東レ株式会社製)、以下Silpot硬化剤と呼ぶことがある)を0.063g加えて、泡取り練太郎(株式会社シンキー製)で14分間撹拌した後、1分間脱泡した。さらにヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を1.348g加えてスターラーで撹拌し、製膜に用いる混合液を調製した。平滑な板の上にシリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-1)を置き、その上に混合液を滴下して、ギャップ幅を5milとしたアプリケータを用いて塗布した。真空乾燥機で溶媒を飛ばした後、さらに100℃の恒温槽で30分間加熱してマトリックス樹脂を硬化させ、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-23)を得た。Silpot主剤およびSilpot硬化剤の硬化物からなるマトリックス樹脂を、以下、マトリックス樹脂(P-1)とよぶ。製膜に用いた混合液の固形分濃度は55wt%であり、有機無機ハイブリッド膜におけるゼオライトの含有量は59.8wt%であった。
M-23を凍結破断して得た断面を走査電子顕微鏡で観察して、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-23)から多孔質支持層を除いた、有機無機ハイブリッド膜と下地層とを合わせた部分すなわち分離関連層の膜厚を計測したところ、膜厚は17μmであった。有機無機ハイブリッド膜複合体(M-23)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、76L/(m2・h)であった。
有機無機ハイブリッド膜複合体(M-23)の35℃におけるCO2透過係数は7400Barrer、CH4の透過係数は440Barrerであり、35℃におけるCO2の透過度は436GPUであった。CO2/CH4理想分離係数は17であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0183】
(実施例18)
150℃で一晩乾燥したゼオライト(Z-7)を0.662g秤量し、Silpot主剤を0.398gおよびSilpot硬化剤を0.041g加えて、泡取り練太郎(株式会社シンキー製)で15分間撹拌した後、1分間脱泡した。さらにヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を0.897g加えてスターラーで撹拌し、製膜に用いる混合液を調製した。平滑な板の上にシリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-2)を置き、その上に混合液を滴下して、ギャップ幅を5milとしたアプリケータを用いて塗布した。真空乾燥機で溶媒を飛ばした後、離型フィルムをさらに上に乗せて、井元製作所製小型加熱手動プレスIMC-180C-C型で圧力ゲージが10MPaを示すまで加圧した。100℃に昇温してから10分間保持することでマトリックス樹脂を硬化させ、離型フィルムを取り除くことで、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-24)を得た。製膜に用いた混合液の固形分濃度は55wt%であり、有機無機ハイブリッド膜におけるゼオライトの含有量は60.1wt%であった。
M-24を凍結破断して得た断面を走査電子顕微鏡で観察して、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-24)から多孔質支持層を除いた、有機無機ハイブリッド膜と下地層とを合わせた部分すなわち分離関連層の膜厚を計測したところ、膜厚は25.5μmであった。有機無機ハイブリッド膜複合体(M-24)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0L/(m2・h)であった。
有機無機ハイブリッド膜複合体(M-24)の35℃におけるCO2透過係数は6600Barrer、CH4の透過係数は430Barrerであり、35℃におけるCO2の透過度は258GPUであった。CO2/CH4理想分離係数は15であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0184】
(実施例19)
120℃で一晩乾燥したゼオライト(Z-15)を0.662g秤量し、Silpot主剤を0.422gおよびSilpot硬化剤を0.040g加えて、泡取り練太郎(株式会社シンキー製)で15分間撹拌した後、1分間脱泡した。さらにヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を0.893g加えてスターラーで撹拌し、製膜に用いる混合液を調製した。平滑な板の上にシリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-2)を置き、その上に混合液を滴下して、ギャップ幅を4milとしたアプリケータを用いて塗布した。真空乾燥機で溶媒を飛ばした後、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-24)と同様に加圧して、マトリックス樹脂を硬化させ、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-25)を得た。製膜に用いた混合液の固形分濃度は56wt%であり、有機無機ハイブリッド膜におけるゼオライトの含有量は58.9wt%であった。
M-25を凍結破断して得た断面を走査電子顕微鏡で観察して、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-25)から多孔質支持層を除いた、有機無機ハイブリッド膜と下地層とを合わせた部分すなわち分離関連層の膜厚を計測したところ、膜厚は24μmであった。有機無機ハイブリッド膜複合体(M-25)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0L/(m2・h)であった。
有機無機ハイブリッド膜複合体(M-25)の35℃におけるCO2透過係数は7700Barrer、CH4の透過係数は570Barrerであり、35℃におけるCO2の透過度は322GPUであった。CO2/CH4理想分離係数は14であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0185】
(実施例20)
120℃で一晩乾燥したゼオライト(Z-17)0.366g、およびゼオライト(Z-16)0.079gを秤量し、Silpot主剤を0.174gおよびSilpot硬化剤を0.025g加えて、泡取り練太郎(株式会社シンキー製)で15分間撹拌した後、1分間脱泡した。さらにヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を0.445g加えてスターラーで撹拌し、製膜に用いる混合液を調製した。平滑な板の上にシリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-2)を置き、その上に混合液を滴下して、ギャップ幅を5milとしたアプリケータを用いて塗布した。真空乾燥機で溶媒を飛ばした後、保持時間を5分間としたことを除いて有機無機ハイブリッド膜複合体(M-24)と同様に加圧して、マトリックス樹脂を硬化させ、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-26)を得た。製膜に用いた混合液の固形分濃度は59wt%であり、有機無機ハイブリッド膜におけるゼオライトの含有量は69.1wt%であった。ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-17)の含有量はゼオライト(Z-16)の含有量の4.6倍であった。
M-26を凍結破断して得た断面を走査電子顕微鏡で観察して、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-26)から多孔質支持層を除いた、有機無機ハイブリッド膜と下地層とを合わせた部分すなわち分離関連層の膜厚を計測したところ、膜厚は28μmであった。有機無機ハイブリッド膜複合体(M-26)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0L/(m2・h)であった。
有機無機ハイブリッド膜複合体(M-26)の35℃におけるCO2透過係数は8700Barrer、CH4の透過係数は450Barrerであり、35℃におけるCO2の透過度は312GPUであった。CO2/CH4理想分離係数は20であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0186】
(実施例21)
150℃で一晩乾燥したゼオライト(Z-14)0.393g、およびゼオライト(Z-8)0.083gを秤量し、Silpot主剤を0.162gおよびSilpot硬化剤を0.025g加えて、泡取り練太郎(株式会社シンキー製)で15分間撹拌した後、1分間脱泡した。さらにヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を0.400g加えてスターラーで撹拌し、製膜に用いる混合液を調製した。平滑な板の上にシリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-2)を置き、その上に混合液を滴下して、ギャップ幅を5milとしたアプリケータを用いて塗布した。真空乾燥機で溶媒を飛ばした後、保持時間を5分間としたことを除いて有機無機ハイブリッド膜複合体(M-24)と同様に加圧して、マトリックス樹脂を硬化させ、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-27)を得た。製膜に用いた混合液の固形分濃度は62wt%であり、有機無機ハイブリッド膜におけるゼオライトの含有量は71.8wt%であった。ゼオライトのうち、ゼオライト(Z-14)の含有量はゼオライト(Z-8)の含有量の4.7倍であった。
M-27を凍結破断して得た断面を走査電子顕微鏡で観察して、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-27)から多孔質支持層を除いた、有機無機ハイブリッド膜と下地層とを合わせた部分すなわち分離関連層の膜厚を計測したところ、膜厚は36μmであった。有機無機ハイブリッド膜複合体(M-27)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、0.0L/(m2・h)であった。
有機無機ハイブリッド膜複合体(M-27)の35℃におけるCO2透過係数は12000Barrer、CH4の透過係数は440Barrerであり、35℃におけるCO2の透過度は322GPUであった。CO2/CH4理想分離係数は26であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0187】
(実施例22)
120℃で一晩乾燥したゼオライト(Z-15)を1.005g秤量し、Silpot主剤を0.607gおよびSilpot硬化剤を0.06g加えて、泡取り練太郎(株式会社シンキー製)で14分間撹拌した後、1分間脱泡した。さらにヘキサン(富士フィルム和光純薬株式会社製)を1.35g加えてスターラーで撹拌し、製膜に用いる混合液を調製した。平滑な板の上にシリコーン樹脂/PVDF複合膜(GL-1)を貼り付け、スピンコーター(ミカサ株式会社、1H-DX2)の試料台に設置した。その上に混合液を滴下して、3000rpmで30秒間回転し塗布した。真空乾燥機で溶媒を飛ばした後、さらに100℃の恒温槽で30分間加熱してマトリックス樹脂を硬化させ、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-28)を得た。製膜に用いた混合液の固形分濃度は55wt%であり、有機無機ハイブリッド膜におけるゼオライトの含有量は60.1wt%であった。
M-28を凍結破断して得た断面を走査電子顕微鏡で観察して、有機無機ハイブリッド膜複合体(M-28)から多孔質支持層を除いた、有機無機ハイブリッド膜と下地層とを合わせた部分すなわち分離関連層の膜厚を計測したところ、膜厚は17μmであった。有機無機ハイブリッド膜複合体(M-28)の空気透過量を上記の評価方法で測定したところ、76L/(m2・h)であった。
有機無機ハイブリッド膜複合体(M-28)の35℃におけるCO2透過係数は6400Barrer、CH4の透過係数は470Barrerであり、35℃におけるCO2の透過度は377GPUであった。CO2/CH4理想分離係数は14であった。これらの値から、Robeson Upper Boundを上回るガス透過・分離性能が示された。
【0188】
実施例4~22の結果を表2および表3に示す。
【0189】
【0190】
本発明の一態様は産業上の任意の分野に使用可能であるが、本発明の一態様の有機無機ハイブリッド膜、ガス分離膜モジュール、ガス分離方法は天然ガスからの二酸化炭素の除去、ランドフィルガスからのCO2回収、火力発電所等の燃焼排ガスからのCO2回収(CO2、N2混合物)などのCO2分離・回収や、石油精製工業や化学工業の各種反応プロセスなどにおける水素の回収および精製、酸素富化ガスの製造などに好適に使用することができる。