(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151889
(43)【公開日】2022-10-11
(54)【発明の名称】乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23J 3/00 20060101AFI20221003BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20221003BHJP
【FI】
A23J3/00 502
A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054444
(22)【出願日】2021-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AD36
4B042AE10
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK11
4B042AK20
4B042AP03
4B042AP14
4B042AP17
4B042AP18
4B042AP21
(57)【要約】
【課題】本発明は、肉様の弾力性に優れた乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】組織状植物蛋白と、水にメチルセルロースと、を混合して作製したメチル
セルローススラリーと、を混合し、生地を作製した後、生地を成形し、品温が60~10
0℃となるまで生地を加熱し、ゲル化させ、10℃以下となるまで冷却して、生地中のメ
チルセルロースを再溶解させた後、再び品温が60~100℃となるまで生地を加熱し、
ゲル化させ、凍結し、真空凍結乾燥することで、お湯等で復元した際に肉様の弾力に優れ
た乾燥肉様蛋白加工食品を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織状植物蛋白と、
水とメチルセルロースとを混合して作製したメチルセルローススラリーと、を混合し、生地を作製する生地作製工程と、
作製した前記生地を成形する成形工程と、
成型した前記生地を品温が60~100℃となるまで加熱する第一加熱工程と、
第一加熱工程で加熱した前記生地を10℃以下に冷却する第一冷却工程と、
第一冷却工程で冷却した前記生地を品温が60~100℃となるまで再加熱する第二加熱工程と、
前記生地を凍結する凍結工程と、
前記凍結工程で凍結した前記生地を真空凍結乾燥する真空凍結乾燥工程と、を含むことを特徴とする乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記第二加熱工程の後、前記凍結工程の前に
前記第二加熱工程で再加熱した前記生地を10℃以下に冷却する第二冷却工程と、
前記第二冷却工程で冷却した前記生地を品温が60~100℃となるまで再々加熱する第三加熱工程と、を含むことを特徴とする請求項1記載の乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記第一冷却工程が生地を-10℃以下に凍結する工程であることを特徴とする請求項1または2何れか一項記載の乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記第一加熱工程及び第二加熱工程がスチームまたはボイルによる加熱であることを特徴とする請求項1~3何れか一項記載の乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記生地中に含まれる組織状植物蛋白の含有量が9~36重量%、メチルセルロースの含有量が0.8~1.5重量%であることを特徴とする請求項1~4何れか一項記載の乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法。
【請求項6】
前記メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量が1.5~4.0重量%であることを特徴とする請求項1~5何れか一項記載の乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織状植物蛋白及びメチルセルローススラリーを含む乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ベジタリアン向けだけでなく、環境面からも植物由来のタンパク質を使用した代替肉(肉様蛋白加工食品)が検討されており、多数の代替肉が上市されている。これらの代替肉の製造方法として、大豆、エンドウ豆、小麦などの植物蛋白粉やこれらをエクストルーダーで押し出して製造した組織状植物蛋白が使用されているが、植物蛋白粉を含むエマルジョンカードや組織状植物蛋白の結着材としてメチルセルロースが使用されている(例えば特許文献1~4)。
【0003】
しかしながら、メチルセルロースを結着材として乾燥肉様蛋白加工食品を製造した場合、お湯等で復元したときに十分な肉様の弾力性が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公表2018-533945号公報
【特許文献2】特公表2017-509349号公報
【特許文献3】特開2018-29565号公報
【特許文献4】特開2005-21163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、肉様の弾力性に優れた乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、植物由来のタンパク質から製造した組織状植物蛋白を使用した乾燥肉様蛋白加工食品の製造について鋭意検討したが、メチルセルロースを結着材とした場合、肉塊としての弾力性に欠けるといった課題があった。その原因について鋭意研究した結果、生地中のメチルセルロースに原因があると考えた。さらに鋭意研究した結果、従来よりも肉様の弾力性がある乾燥肉様蛋白加工食品を製造できる方法を見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、組織状植物蛋白と、水とメチルセルロースとを混合して作製したメチルセ
ルローススラリーと、を混合し、生地を作製する生地作製工程と、作製した前記生地を成
形する成形工程と、成型した前記生地を品温が60~100℃となるまで加熱する第一加
熱工程と、第一加熱工程で加熱した前記生地を10℃以下に冷却する第一冷却工程と、第
一冷却工程で冷却した前記生地を品温が60~100℃となるまで再加熱する第二加熱工
程と、前記生地を凍結する凍結工程と、前記凍結工程で凍結した前記生地を真空凍結乾燥
する真空凍結乾燥工程と、を含むことを特徴とする乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法であ
る。
【0008】
また、本発明に係る乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法としては、第二加熱工程と冷凍工
程との間に、さらに生地を10℃以下に冷却する第二冷却工程と、第二冷却工程で冷却
した生地を品温が60~100℃となるまで再々加熱する第三加熱工程と、を含むことも
できる。
【0009】
また、本発明に係る第一冷却工程は、-10℃以下に凍結する工程であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る第一加熱工程及び第二加熱工程の加熱方法がスチームまたはボイルであることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る生地中に含まれる組織状植物蛋白の含有量は、9~36重量%、メチルセルロースの含有量は、0.8~1.5重量%であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るメチルセルローススラリーのメチルセルロースの配合量は、1.5~4重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、肉様の弾力性に優れた乾燥肉様蛋白加工食品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0015】
1.生地作製工程
(組織状植物蛋白)
本発明に係る組織状植物蛋白は、大豆蛋白(大豆粉を含む)、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白などの植物蛋白粉や必要により澱粉などの植物素材やカルシウム塩など無機物を二軸エクストルーダーにより高温高圧で押し出すことで作製され、膨化した粒状蛋白や、冷却ダイなどにより吐出口を冷却しながら押し出すことで膨化を抑えて線維の方向性をもたせた繊維状蛋白が挙げられる。膨化した粒状蛋白は、ハンバーグのようなミンチ肉などの弾力のある粒的な食感が得られ、繊維状蛋白は、ステーキ肉のような筋肉の繊維っぽい食感が得られる。これらの組織状植物蛋白は求める肉様蛋白加工食品の食感に合わせて単独または混合して使用することができる。また、破砕や切断することにより、大きさや長さなどを適宜調整して使用することができる。
【0016】
これらは、乾燥しているか、水分が少ない状態の場合は、一度水や熱湯で吸水させて復水してから使用することもできる。また、必要により、脱水や油の中に浸漬しながら加温する油調処理によって組織状植物蛋白の持つ植物由来の風味を低減することもできる。
【0017】
また、本発明に係る組織状植物蛋白の含有量については、処理により、水分値や油脂含
量が異なるため、油脂と水分を除いた固形分としての含有量とする。
【0018】
(メチルセルローススラリー)
本発明に係るメチルセルローススラリーの製造方法としては、水にメチルセルロースを溶解させスラリーを作製する。本発明に係るメチルセルロースは、メチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースであれば特に問題がなく使用することができる。粘度やメトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基の置換量によって性質が異なるが、ゲル化温度50℃以上、ゲル再溶解温度10℃~50℃程度のものを使用すればよい。粘度の高いものの方が少ない配合量でスラリーが硬くなりやすく、好ましく、20℃2重量%の水溶液の粘度として2800mm2/s以上、特に好ましくは、77000mm2/s以上の高粘度のメチルセルロースが好ましい。メチルセルロースは、冷水に溶解するため、溶解する水の温度は10℃以下が好ましい。
【0019】
また、本発明に係るメチルセルローススラリーは、主に組織状植物蛋白を使用した肉様蛋白加工食品の組織状植物蛋白同士を結着させる結着剤として使用されるため、その他の原料として、風味付けのための油脂や、油脂を分散させるための乳化剤、食塩、砂糖、香料、蛋白素材として大豆蛋白や小麦蛋白などの植物蛋白粉、色付けのための色素などを添加することができる。水にメチルセルロースとこれらの原料を加えて、サイレントカッターなどでムース状となるまで撹拌し、スラリーを作製する。
【0020】
本発明に係るメチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量としては、1.5~4重量%が好ましい。1.5重量%未満だと、組織状植物蛋白同士の結着させるために生地中のメチルセルローススラリーの配合量を増やす必要がある。4重量%よりも多いと、メチルセルローススラリー自体が硬く組織状植物蛋白と混合しにくくなる。
【0021】
(混合)
組織状植物蛋白とメチルセルローススラリーの他にその他の材料として、味付け用の資材や具材を混合し、生地を作製する。その他の材料としては、食塩、核酸、グルタミン酸ナトリウム、醤油、赤ワイン、胡椒、大豆油、菜種油などの植物油、香料、大豆蛋白粉などや、タマネギ、ニンジン、キャベツなどの具材が挙げられる。混合方法に特に限定はなく、ミキサーなどで混合しても、手によって混合してもよく、均質に混ざるように混合すればよい。
【0022】
生地中のメチルセルローススラリーの配合量としては、30~75重量%が好ましい。メチルセルローススラリーが多すぎると、組織状植物蛋白の配合量が少なくなり、食感がカマボコっぽくなる。少なすぎると、組織状植物蛋白の配合量が多くなり、生地を保形しづらく、メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量を高くする必要があり、食感が悪くなる。また、生地中のメチルセルロースの含有量としては、0.8~1.5重量%が好ましい。0.8重量%未満であると生地の保形性や弾力が弱く、1.5重量%よりも多いと弾力が強くなりすぎる。
【0023】
また、生地中の組織状植物蛋白の含有量としては、9~36重量%が好ましい。少なすぎると生地中のメチルセルローススラリーの配合量が増え、カマボコ的な食感が強くなり、多すぎると生地中のメチルセルローススラリーの配合量が少なくなり、生地が保形しづらくなるだけでなく、つながりがなく、組織状植物蛋白由来の食感が強くなる。
【0024】
2.成型工程
作製した生地は、成形型などにより成形する。成形型としては、加熱耐性があれば特に限定はなく、ステンレス製のものや、耐熱性のビニール袋、耐熱性のプラスチック容器、ハム、ソーセージなどで使用されるケーシングや腸が挙げられる。これらの成形型に作製した生地を入れ、目的とする形状に成形する。成型工程後にカットして所定の形状とする場合は、生地の厚みを30mm厚以下とすることが好ましい、そうすることで中心まで熱が通りやすくなり加熱ムラが少なく、加熱時間の短縮にもつながる。
【0025】
3.第一加熱工程
成型した生地を加熱する。加熱方法は特に限定はなく、ボイルやスチーム、オーブン等による焼成などが挙げられるが、ボイルやスチームによる加熱の方が均質に生地に熱が伝わりやすく好ましい。このとき、品温が60℃以上となるまで加熱し、生地全体をしっかりとゲル化させる。本発明において品温とは、生地の中心の温度を指す。好ましくは品温が60~100℃、より好ましくは品温が60~90℃となるまで加熱する。品温が60℃未満だと、メチルセルロースのゲル化が不十分であり、品温が100℃を超えると弾力ではなく硬くなる。また、加熱後さらにカットにより生地を所定の形状とする場合は、粗熱を取った後、生地をカットする。
【0026】
4.第一冷却工程
第一加熱工程で加熱した生地を冷却する。本発明に係る第一冷却工程は、生地の品温が10℃以下となるまで冷却する。冷却方法は特に限定はなく、冷風による冷却や、冷却水に浸漬することによる冷却、凍結による冷却などが挙げられる。より好ましくは、品温が-10℃以下となるまでしっかり凍結する方法が好ましい。しっかりと冷却し、一度ゲル化したメチルセルロースが再溶解させることで、メチルセルロースの繊維が集合して再加熱する際に太い束状となる。
【0027】
5.第二加熱工程
第一冷却工程で冷却した生地を再加熱する。加熱方法は第一加熱工程と同じで、加熱方法は特に限定はなく、ボイルやスチーム、オーブン等による焼成などが挙げられるが、ボイルやスチームによる加熱の方が均質に生地に熱が伝わりやすく好ましい。また、品温についても第一加熱工程と同じで、品温が60~100℃、より好ましくは品温が60~90℃となるまで加熱となるまで加熱し、生地全体をしっかりと再ゲル化させる。
【0028】
6.第二冷却工程及び第三加熱工程
必要により、第二加熱工程の後、加熱した生地を冷却する第二冷却工程と、第二冷却工程で冷却した生地を再び加熱する第三加熱工程を設けてもよい。第二冷却工程は、上記の第一冷却工程と同様の方法で行うことが好ましい。第三加熱工程は、上記した第一、第二加熱工程と同様の方法で行ってもよく、表面を焼成するなどの加熱方法でもよい。ただし、加熱工程と冷却工程を繰り返すほど生地が硬くなるので、これ以上の冷却及び加熱は繰り返さないことが好ましい。
【0029】
7.凍結工程
第二加熱工程または第三加熱工程で加熱した生地の粗熱を取り、生地を凍結する。凍結方法は特に限定はなく、従来技術を適用することができる。例えば、エアブラスト式のトンネルフリーザー、スパイラルフリーザー、ワゴンフリーザーや急速凍結庫、ブライン式のフレキシブルフリーザー等の商業用の凍結装置だけでなく、一般的な業務用、家庭用の冷凍庫も適用できる。冷凍は、例えば約-35℃の急速凍結庫を利用して急速凍結してもよく、業務用の-18℃の冷凍庫に入れて凍結させてもよい。凍結温度は特に限定はないが、後述する乾燥工程のために-18℃以下となるようにしっかりと凍結させておくことが好ましい。
【0030】
凍結工程でも冷却工程と同様に生地が凍結する際にゲル化したメチルセルロースが再溶解し、メチルセルロースの繊維が集合してさらに太い束状となる。
【0031】
8.乾燥工程
所定の形状に成形され凍結物を真空凍結乾燥に用いるトレーに充填し、真空凍結乾燥機を用いて減圧下で真空凍結乾燥する。真空凍結乾燥条件は特に限定されず、凍結物が解凍しない程度の真空度、棚加熱温度で乾燥すればよい。好ましい範囲としては真空度が1.5torr以下、棚加熱温度が90℃以下、乾燥後の水分としては1~7重量%となるように乾燥し、乾燥肉様蛋白加工食品とする。乾燥しすぎると壊れやすくなるため、必要により、乾燥後に調湿処理を行い、水分調整してもよい。
【0032】
9.その他
真空凍結乾燥した乾燥肉様蛋白加工食品は、熱湯を入れて調理するか、水を入れて電子レンジ調理する即席麺や即席スープ、即席ライスなどの具材として用いることができる。このとき、調理により、水が復水する共にメチルセルロース繊維が太くなった状態でゲル化するため、肉様の弾力性に優れた乾燥肉様蛋白加工食品となる。
【0033】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【実施例0034】
<実験1>加熱冷却の回数の検討
(実施例1-1)
水87.5重量%、メチルセルロース(MCE-100TS 信越化学工業社製)2重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステル1重量%、菜種油9.5重量%となるように10℃以下でフードカッターを用いて混合し、メチルセルロースを水に溶解させるとともに、油脂を乳化し、メチルセルローススラリーを作製した。
【0035】
組織状植物蛋白として粒状大豆蛋白(ニューソイミー(登録商標)S11(日清オイリオ社製)、ニューフジニック(登録商標)10(不二製油社製)を1:1配合)20重量%、液体資材12重量%(摺りタマネギ6重量%、醤油6重量%)、粉体資材6重量%(食塩2.2重量%、コショウ0.1重量%、ガーリック粉末0.6重量%、グルタミン酸ナトリウム2.4重量%、カラメル色素0.6重量%、トコフェロール製剤0.1重量%)、メチルセルローススラリー62重量%となるようにニーダーに入れて混合し、生地を作製した。
【0036】
作製した生地は、金属製の型枠(250x120x10mm)に入れ成形した。
【0037】
成形した生地を型枠から外し、トレーに乗せてスチーマー(約100℃)にて品温が8
0℃となるまで加熱した(第一加熱)。加熱後、粗熱を取り、約10mm角となるようにカットした。
【0038】
カットした生地を-40℃の急速凍結庫で品温が-10℃となるように凍結した(第一冷却)。
【0039】
凍結した生地をトレーに乗せてスチーマー(約100℃)にて品温が80℃となるまで再加熱した(第二加熱)。
【0040】
再加熱した生地を-40℃の急速凍結庫で品温が-20℃以下となるように凍結した(凍結)。
【0041】
凍結した生地を真空凍結乾燥機(東洋技研株式会社製TFD10LF4)にて0.1torr以下で、棚温を87℃4時間、75℃3時間、その後60℃に設定し、品温が58℃になるまで乾燥し、乾燥肉様蛋白加工食品サンプルとした。
【0042】
(実施例1-2)
再加熱した生地を品温が-10℃以下となるように凍結し(第二冷却)、再びスチーマー(約100℃)にて品温が80℃となるまで再々加熱した後(第三加熱)、再々加熱した生地を-40℃の急速凍結庫で品温が-20℃以下となるように凍結する(凍結)以外は、実施例1-1と同様の方法で、乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0043】
(比較例1-1)
第一冷却、第二加熱をしない以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0044】
実験1で作製した乾燥肉様蛋白加工品の各サンプルを10gとり、発泡紙カップに370gの熱湯を注ぎ、蓋をして3分後にお湯から取り出して、喫食し、官能評価を行った。官能評価については、5人のベテランパネラーにより行い、下記の評価基準で行った。
<官能評価基準>
5:程よい肉様の弾力を有し、非常に良好なもの
4:やや硬いもしくは弾力が強いかまたはやや柔らかいもしくは弾力が弱いが良好なもの
3:少し硬いもしくは弾力が強いかまたは少し柔らかいもしくは弾力が弱いが商品として
可なもの
2:硬いもしくは弾力が強いかまたは柔らかいもしくは弾力が弱く、品質として劣るもの
1:極めて硬いもしくは弾力が強いかまたは柔らかいもしくは極めて弾力が弱く、品質と
して著しく劣るものを1とした。
【0045】
実験1のメチルセルローススラリーの配合を下記表1に、生地配合を下記表2に、官能評価結果を下記表3に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
比較例1-1で示すように、生地を加熱した後、凍結し、乾燥するだけでは、お湯で復元した乾燥肉様食品は、弾力が弱く、柔らかい食感であった。実施例1-1で示すように、生地を加熱した後、一回冷却し、再加熱してから凍結し、乾燥することで、お湯で復元した乾燥肉様食品は、硬さや弾力が増し、非常に良好な食感となった。実施例1-2で示すように、生地を加熱、冷却を2回繰り返した後、さらに加熱し、凍結し、乾燥することで、お湯で復元した乾燥肉様食品は、実施例1-1よりもさらに弾力が増したが、硬さも増した。上記結果から、製造工程としては、生地を加熱-冷却-加熱-凍結-乾燥することが好ましいと考える。
【0050】
<実験2>加熱温度の検証
(実施例2-1)
第一加熱及び第二加熱の品温を60℃とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0051】
(実施例2-2)
第一加熱及び第二加熱の品温を70℃とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0052】
(実施例2-3)
第一加熱及び第二加熱の品温を90℃とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0053】
(実施例2-4)
第一加熱及び第二加熱の品温を100℃とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0054】
(比較例2-1)
第一加熱及び第二加熱の品温を50℃とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0055】
実験2の乾燥肉様蛋白加工食品サンプルについて実験1同様に、喫食し、官能評価を行った。評価結果を下記表4に示す。
【0056】
【0057】
実験2の比較例2-1で示すように、メチルセルロースのゲル化温度(55℃)以下であるとゲル化が弱く、お湯で復元した乾燥肉様食品は、弱く柔らかい結果となった。よって、メチルセルロースがしっかりとゲル化する必要があると考える。また、実施例2-1、実施例2-2及び実施例1-1で示すように、品温が高くなるほど弾力が強く、硬さが出てくるが、実施例2-3及び実施例2-4で示すように、さらに品温が高くなると逆に硬さや弾力が強くなりすぎる傾向が認められた。よって、加熱時の好ましい品温としては60~90℃であると考える。
【0058】
<実験3>冷却温度の検証
(実施例3-1)
カットした生地を-40℃の急速凍結庫で品温が-20℃以下となるように凍結(第一冷却)する以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0059】
(実施例3-2)
カットした生地を-40℃の急速凍結庫で品温が0℃以下となるように冷却(第一冷却)する以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0060】
(実施例3-3)
カットした生地を-40℃の急速凍結庫で品温が5℃以下となるように冷却(第一冷却)する以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0061】
(実施例3-4)
カットした生地を-40℃の急速凍結庫で品温が10℃以下となるように冷却(第一冷却)する以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0062】
(比較例3-1)
カットした生地を-40℃の急速凍結庫で品温が20℃以下となるように冷却(第一冷却する以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0063】
実験3の乾燥肉様蛋白加工食品サンプルについて実験1同様に、喫食し、官能評価を行った。評価結果を下記表5に示す。
【0064】
【0065】
実験3で示すように、品温が高くなるほど食感が柔らかく、弾力が弱くなる傾向が認められた。メチルセルロースの再溶解温度(15℃)よりも高い温度であると著しく食感が劣る傾向が認められた。よって、冷却によってメチルセルロースを完全に再溶解させることが好ましく、10℃以下、より好ましくは5℃以下が好ましいと考える。また、実施例1-1及び実施例3-1で示すように凍結させた方が食感が良くなるため、0℃よりも低い温度で凍結させる方がより好ましいと考える。
【0066】
<実験4>加熱方法の検討
(実施例4-1)
第一冷却で凍結した生地を袋に入れて第二加熱を80℃のお湯で品温が80℃となるまでボイルする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0067】
(実施例4-2)
第一冷却で凍結した生地を金網に乗せ、120℃のオーブンで品温が80℃となるまでオーブン加熱(焼成)した。
【0068】
実験4の乾燥肉様蛋白加工食品サンプルについて実験1同様に、喫食し、官能評価を行った。評価結果を下記表6に示す。
【0069】
【0070】
実験4の結果、加熱方法としては、スチームやボイルによる方法の方がオーブン(焼成)よりも好ましい結果となった。
【0071】
<実験5>メチルセルローススラリーと組織状植物蛋白について
(実施例5-1)
組織状植物蛋白の配合量を10重量%、メチルセルローススラリーの配合量を72重量%とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0072】
(実施例5-2)
組織状植物蛋白の配合量を30重量%、メチルセルローススラリーの配合量を52重量%とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0073】
(実施例5-3)
組織状植物蛋白の配合量を40重量%、メチルセルローススラリーの配合量を42重量%とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0074】
(実施例5-4)
メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量を1.5重量%、水の配合量を88重量%とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0075】
(実施例5-5)
メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量を1.8重量%、水の配合量を87.7重量%とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0076】
(実施例5-6)
メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量を2.2重量%、水の配合量を87.3重量%とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0077】
(実施例5-7)
メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量を2.4重量%、水の配合量を87.1重量%とする以外は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0078】
(実施例5-8)
メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量を4重量%、水の配合量を85.5重量%とする以外は、実施例1-1の方法に従ってメチルセルローススラリーを作製した。
【0079】
組織状植物蛋白として粒状大豆蛋白(粒状大豆蛋白(ニューソイミー(登録商標)S11(日清オイリオ社製)、ニューフジニック(登録商標)10(不二製油社製)を1:1配合)に対して、当量の水で復水した後、遠心脱水機で軽く脱水し、再び同重量となるまで水を加え吸水させた。
【0080】
復水した組織状植物蛋白40gに対し、菜種油を3gとなるように加え、良く撹拌し、実施例5-8で使用する組織状植物蛋白とした。作製した組織状植物蛋白43重量%、液体資材21重量%(摺りタマネギ6重量%、醤油6重量%、水9重量%)、粉体資材6重量%(食塩2.2重量%、コショウ0.1重量%、ガーリック粉末0.6重量%、グルタミン酸ナトリウム2.4重量%、カラメル色素0.6重量%、トコフェロール製剤0.1重量%)、メチルセルローススラリー30重量%となるようにニーダーに入れて混合し、生地を作製した。その後の工程は、実施例1-1の方法に従って乾燥肉様蛋白加工食品サンプルを作製した。
【0081】
実験5の乾燥肉様蛋白加工食品サンプルについて実験1同様に、喫食し、官能評価を行った。実験5の各試験区のメチルセルローススラリーの配合を表7に、各試験区の生地配合を表8に、評価結果を表9に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
実施例5-1で示すように、生地中の組織状植物蛋白の配合量が少なくなると、メチルセルローススラリーの配合量が増え、商品として可なレベルではあるが、メチルセルロースゲル様のカマボコっぽい食感を感じるようになった。逆に、実施例5-2及び実施例5-3で示すように、生地中の組織状植物蛋白の配合量が多くなると、メチルセルローススラリーの配合量が減り、生地の保形性が悪くなるだけでなく、商品として可なレベル以上ではあるが、組織状植物蛋白由来の柔らかい食感が増し、生地全体として食感のまとまりが弱くなった。組織状植物蛋白は、処理により水分量が変わるため、組織状植物蛋白としては、油脂、水を除く、固形分の含有量として9~36重量%の範囲が好ましいと考える。
【0086】
実施例5-4及び実施例5-5で示すように、メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量が減ると、商品として可なレベル以上ではあるが、組織状植物蛋白同士の結着性が弱くなり、全体としても弾力が弱くなる傾向がみられた。逆に実施例5-6及び実施例5-7で示すように、メチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量が増えると、商品として可なレベル以上ではあるが、弾力が強くなりすぎる傾向がみられた。
【0087】
また、実施例5-8で示すようにメチルセルローススラリー中のメチルセルロースの配合量を4重量%とすると、メチルセルローススラリーが硬くなり、生地を混ぜづらくなったが、生地中のメチルセルロースの含有量が適正量であれば、実施例1-1と同等に良好な食感となった。本発明においては、第一加熱工程でゲル化した生地中のメチルセルロースを第一冷却工程で再溶解し、第二加熱工程で再ゲル化するため、水戻しした状態の組織状植物蛋白から水が溶出し、全体として適度な食感となったものと考える。また、風味の面においては、組織状植物蛋白由来の風味が少なく、実施例1-1よりも良好であった。