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特開2022-151930レジンブレード及びレジンブレードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151930
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】レジンブレード及びレジンブレードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/12 20060101AFI20221004BHJP
   B24D 3/28 20060101ALI20221004BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20221004BHJP
   B24D 3/02 20060101ALI20221004BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B24D5/12 Z
B24D3/28
B24D3/00 340
B24D3/02 310A
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054486
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】小林 巧亜
【テーマコード(参考)】
3C063
5F063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA02
3C063BC03
3C063BD08
3C063CC02
3C063CC19
3C063CC30
3C063EE31
3C063FF08
5F063AA22
5F063DD02
(57)【要約】
【課題】優れた研削性が維持された長寿命のレジンブレードを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係るレジンブレードは、レジンボンド相と、砥粒と、フィラーと、を備える円環薄板状のレジンブレードであって、上記フィラーが、ビトリファイド相と研削材とで構成される複合フィラーである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジンボンド相と、砥粒と、フィラーと、を備える円環薄板状のレジンブレードであって、
前記フィラーが、ビトリファイド相と研削材とで構成される複合フィラーである、レジンブレード。
【請求項2】
前記研削材のビッカース硬さが20GPa以上である、請求項1に記載のレジンブレード。
【請求項3】
前記研削材の耐熱温度が800℃以上である、請求項1又は2に記載のレジンブレード。
【請求項4】
前記複合フィラーの体積平均粒径が、前記砥粒の体積平均粒径に対して10%以上60%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のレジンブレード。
【請求項5】
前記複合フィラーの含有量が、前記レジンボンド相の体積に対して5体積%以上30体積%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のレジンブレード。
【請求項6】
レジンボンド相と、砥粒と、フィラーと、を備える円環薄板状のレジンブレードの製造方法であって、
前記フィラーとしてビトリファイド相と研削材とで構成される複合フィラーを製造する複合フィラー製造工程と、
熱硬化性樹脂の粉末と、前記砥粒と、前記複合フィラーと、を混合してブレード材料を得るブレード材料製造工程と、
前記ブレード材料からブレード原板を形成するブレード原板製造工程と、
前記ブレード原板をホットプレスするホットプレス工程と、を備える、レジンブレードの製造方法。
【請求項7】
前記複合フィラー製造工程が、ガラスフリットと研削材とを混合して得られた複合フィラー材料を加圧成形して成形体を製造する成形体製造工程と、
前記成形体を焼成して焼成体を製造する焼成体製造工程と、
前記焼成体を粉砕する粉砕工程と、を有する、請求項6に記載のレジンブレードの製造方法。
【請求項8】
前記複合フィラー製造工程が、ガラスフリットと、研削材と、バインダーと、で構成される複合フィラー材料の造粒体を製造する造粒体製造工程と、
前記造粒体を焼成して焼成粒を製造する焼成粒製造工程と、を有する、請求項6に記載のレジンブレードの製造方法。
【請求項9】
前記複合フィラー製造工程後であって、前記ブレード材料製造工程前に、前記複合フィラーを分級する分級工程を備える、請求項6~8のいずれか1項に記載のレジンブレードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジンブレード及びレジンブレードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製品などに用いられるガラスやセラミックス等の脆性材料からなる被加工材に、溝加工を施したり、切断することによって被加工材を個片化したりする加工には、高品位であることが要求されている。
【0003】
このような加工を高品位で行うために、例えば、レジンボンド相に砥粒が分散したレジンブレードが使用されている。レジンブレードは、例えば、樹脂からなるレジンボンド相と、レジンボンド相に分散されたダイヤモンドやcBN(立方晶窒化ホウ素)で構成される超砥粒とを備えている。レジンブレードは快削性に優れ、高品位の加工に適している。
【0004】
被加工材の加工量が多くなるにつれて、自生発刃作用に起因してレジンブレードは摩耗する。この摩耗を抑制してレジンブレードを長寿命化することが求められている。
【0005】
レジンブレードを長寿命化する方法として、例えば、特許文献1には、少なくとも1層以上の層状をなす切断用ブレードであって、ボンド部と、前記ボンド部中に分散配置された砥粒と、前記ボンド部中に分散配置されたフィラーとを備え、前記フィラーは、四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に伸びた三次元結晶構造のフィラーを有することを特徴とする切断用ブレードが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、所定の化学式で表されるポリイミド樹脂を含有する樹脂ボンド相中に砥粒が分散された円形薄板状の薄刃砥粒層を有する切断用ブレードであって、前記薄刃砥粒層が、所定の化学式で表されるポリアミック酸と砥粒を含む樹脂組成物が円形薄板状に成型され、加熱処理されて、前記ポリアミック酸が前記ポリイミド樹脂に変換されて形成される層であり、厚みが0.05~0.5mmであることを特徴とする切断用ブレードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-176472号公報
【特許文献2】特開2013-223902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術は、三次元結晶構造のフィラーを用いることで、フィラーの異方性を緩和している。これにより、どの方向に対してもほぼ同一の耐摩耗性を確保することができ、結果的に、耐摩耗性に優れるブレードが得られるとしている。特許文献2に記載の技術は、樹脂ボンド相の硬度を上げて樹脂ボンド相による砥粒やフィラーの保持力を強化し、ブレードの長寿命化を図っている。しかし、樹脂をボンド相とするブレードにおいてはボンド相が弾性変形する。そのため、被加工材の加工時において、ブレード表面の砥粒が被加工材に接触した際にブレード内部方向に変位しやすい。そのため、砥粒による被加工材の加工効率が低下しやすく、切れ味が低下しやすい。そのため、特許文献1に記載の技術及び特許文献2に記載の技術には、改善の余地がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、優れた研削性が維持された長寿命のレジンブレード及びレジンブレードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、フィラーの脱落によるレジンブレードの摩耗の抑制のために、フィラーの表面積を大きくすることに想到した。フィラーの表面積が大きければ、レジンボンド相によるフィラーの保持力が増大する。また、研削性向上のために、フィラー自体に切削性を付与することに想到した。
【0011】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]本発明の一態様に係るレジンブレードは、レジンボンド相と、砥粒と、フィラーと、を備える円環薄板状のレジンブレードであって、上記フィラーが、ビトリファイド相と研削材とで構成される複合フィラーである。
[2]上記[1]に記載のレジンブレードは、上記研削材のビッカース硬さが20GPa以上であることが好ましい。
[3]上記[1]又は[2]に記載のレジンブレードは、上記研削材の耐熱温度が800℃以上であることが好ましい。
[4]上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のレジンブレードは、上記複合フィラーの体積平均粒径が、上記砥粒の体積平均粒径に対して10%以上60%以下であることが好ましい。
[5]上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のレジンブレードは、上記複合フィラーの含有量が、上記レジンボンド相の体積に対して5体積%以上30体積%以下であることが好ましい。
[6]また、本発明の別の態様に係るレジンブレードの製造方法は、レジンボンド相と、砥粒と、フィラーと、を備える円環薄板状のレジンブレードの製造方法であって、上記フィラーとしてビトリファイド相と研削材とで構成される複合フィラーを製造する複合フィラー製造工程と、熱硬化性樹脂の粉末と、上記砥粒と、上記複合フィラーと、を混合してブレード材料を得るブレード材料製造工程と、上記ブレード材料からブレード原板を形成するブレード原板製造工程と、上記ブレード原板をホットプレスするホットプレス工程と、を備える。
[7]上記[6]に記載のレジンブレードの製造方法では、上記複合フィラー製造工程が、ガラスフリットと研削材とを混合して得られた複合フィラー材料を加圧成形して成形体を製造する成形体製造工程と、上記成形体を焼成して焼成体を製造する焼成体製造工程と、上記焼成体を粉砕する粉砕工程と、を有してもよい。
[8]上記[6]に記載のレジンブレードの製造方法では、上記複合フィラー製造工程が、ガラスフリットと、研削材と、バインダーと、で構成される複合フィラー材料の造粒体を製造する造粒体製造工程と、上記造粒体を焼成して焼成粒を製造する焼成粒製造工程と、を有してもよい。
[9]上記[6]~[8]のいずれか1項に記載のレジンブレードの製造方法では、上記複合フィラー製造工程後であって、上記ブレード材料製造工程前に、上記複合フィラーを分級する分級工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた研削性が維持された長寿命のレジンブレードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るレジンブレードを示す側面図である。
図2図1のA-A断面を示す断面図である。
図3図2のB部を拡大して示す模式図である。
図4】同実施形態に係るレジンブレードが備えるフィラーの模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係るレジンブレードの製造方法の流れを示すフロー図である。
図6】フィラー製造工程の流れの一例を示すフロー図である。
図7】フィラー製造工程の流れの別の一例を示すフロー図である。
図8】実施例に用いた被加工材としてのダミーQFNの正面図である。
図9】実施例に用いた被加工材としてのダミーQFNの斜視図である。
図10】実施例における被加工材のY方向バリの寸法LYの測定結果を示すグラフである。
図11】実施例における被加工材の電極間距離LEの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<レジンブレード1>>
以下、本発明の一実施形態に係るレジンブレード1について、図1~3を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るレジンブレード1を示す側面図である。図2は、図1のA-A断面を示す断面図である。図3は、図2のB部を拡大して示す模式図である。図4は、本実施形態に係るレジンブレードが備える複合フィラーの模式図である。なお、図中の各構成要素の寸法、比率は、実際の各構成要素の寸法、比率を表すものではない。
【0015】
<レジンブレード1の概略構成>
まず、本実施形態に係るレジンブレード1の概略構成を説明する。本実施形態に係るレジンブレード1は、図1に示すように、円環薄板状である。詳細には、レジンブレード1は、中心軸Oを軸として同心円状に外面11及び内面12を備えており、内面12より内側において中心軸Oに沿う方向に貫通する貫通孔13が形成されている。
ここで、本明細書においては、レジンブレード1の中心軸O方向に沿う方向を幅方向と呼称する。
【0016】
本実施形態に係るレジンブレード1では、外面11が切れ刃として機能する。詳細には、貫通孔13にフランジ(図示せず)を介して加工装置のスピンドルが挿入されて、レジンブレード1がスピンドルに固定される。スピンドルが中心軸O周りに回転し、回転するレジンブレード1の外面11が被加工材に接触することで被加工材を切断加工することになる。
【0017】
レジンブレード1の厚さ(幅方向の長さ)は、特段制限されず、例えば、0.17mm以上0.40mm以下とすることができる。レジンブレード1の厚さは、0.20mm以上であってもよいし、0.28mm以上であってもよいし、0.30mm以上であってもよいし、0.35mm以上であってもよい。また、レジンブレード1の厚さは、0.35mm以下であってもよいし、0.30mm以下であってもよいし、0.28mm以下であってもよいし、0.20mm以下であってもよい。
【0018】
レジンブレード1の外径は、特段制限されず、例えば、52mm以上62mm以下とすることができる。
【0019】
レジンブレード1の内径は、40mmとすることができる。
【0020】
レジンブレード1は、図3に示すように、レジンボンド相20と、レジンボンド相20に分散した砥粒30と、レジンボンド相20に分散した複合フィラー40と、を備えている。以下に、詳細に説明する。
【0021】
<レジンボンド相20>
レジンボンド相20は、熱硬化性樹脂で構成されている。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。レジンボンド相20を構成する熱硬化性樹脂としては、機能性、汎用性の観点から、フェノール樹脂であることが好ましい。
【0022】
<砥粒30>
砥粒30は、レジンボンド相20よりも硬質の材料で構成される。砥粒30は、例えば、天然ダイヤモンドの粒子、合成ダイヤモンドの粒子、立方晶窒化ホウ素(cBN)の粒子、窒化ケイ素(SiC)の粒子若しくは六方晶窒化ホウ素(hBN)の粒子、又はこれらの粒子の混合物である。砥粒30は、被加工材の加工性の観点から、合成ダイヤモンドの粒子、又は立方晶窒化ホウ素の粒子であることが好ましい。
【0023】
砥粒30の平均粒径は、例えば、0.030mm以上0.110mm以下である。砥粒30の平均粒径は、後述する複合フィラー40の平均粒径に応じて定められることが好ましい。
砥粒30の平均粒径は、レーザ回折・散乱式測定装置を用いて測定された体積平均粒径とする。具体的には、Microtrac社製レーザ回折・散乱式測定装置MT3300EXII-SDCを用い、サンプルを水(25℃、pH7)に投入する、測定試料の透過性は透過とし、粒子屈折率は1.81、形状は非球状とし測定された体積基準粒度分布での平均粒径を測定する。溶媒屈折率を1.333、測定時間を30秒とし、2回測定した平均値を測定値とする。
【0024】
なお、砥粒30を構成する各材料の粒子は、市販のものを用いることができ、実質的にそれぞれの成分を含有する粒子であるが、不純物としてのその他の成分を含んでいてもよい。
【0025】
<複合フィラー40>
複合フィラー40は、ビトリファイド相41と研削材42とで構成される。
【0026】
ビトリファイド相41は、非金属無機材料で構成され、三次元架橋構造を有する多孔質の相である。非金属無機材料は、例えば、結晶質又は非晶質のセラミックスであり、ガラスを含む。
ビトリファイド相41は、例えば、ほう素化合物20質量%以上30質量%以下、酸化アルミニウム15質量%以上25質量%以下、酸化カルシウム1質量%以上8質量%以下、シリカ20質量%以上35質量%以下、及び、その他の酸化物等を含有する。ビトリファイド相41には、上記以外の意図しない不純物や添加物が含まれていてもよい。
【0027】
複合フィラー40では、図4に示すように、ビトリファイド相41中に研削材42が分散している。ビトリファイド相41は多孔質であり表面積が大きいため、複合フィラー40の表面積が大きくなる。そのため、複合フィラー40はレジンボンド相20に強く保持される。その結果、複合フィラー40の脱落が抑制され、レジンブレード1の寿命が向上する。
【0028】
研削材42には、好ましくは、ビッカース硬さが20GPa以上であるものが用いられる。研削材42のビッカース硬さが20GPa以上であれば、研削材42を含有する複合フィラー40自体も被加工材の加工に寄与し、レジンブレード1の研削性が向上する。
【0029】
研削材42の耐熱温度は、800℃以上であることが好ましい。詳細は後述するが、ビトリファイド相41を形成させるために、ビトリファイド相41となる非金属無機材料を900℃で焼成する。このとき、研削材42の耐熱温度が800℃以上であれば、研削材の物性が著しく低下しない。ここでいう耐熱温度は、研削材が持つ物性を維持することができる温度を言う。この耐熱温度は、一般的な材料の物性値を参照とする。
【0030】
研削材42は、好ましくは、天然ダイヤモンドの粒子、合成ダイヤモンドの粒子、立方晶窒化ホウ素の粒子、炭化ケイ素の粒子、若しくは、炭化ホウ素(BC)の粒子、又はこれらの粒子の混合物である。研削材42は、より好ましくは、炭化ホウ素の粒子である。炭化ホウ素は、高いビッカース硬さを有し、更に、耐熱性及び耐薬品性に優れる。
【0031】
研削材42の平均粒径は、例えば、5μm以上30μm以下である。耐摩耗性の観点から、研削材42の平均粒径は、10μm以上であることが好ましい。しかしながら、研削材42の平均粒径は、10μm以上であってもよい。また、切断品位の観点から、研削材42の平均粒径は、30μm以下であることが好ましい。しかしながら、研削材42の平均粒径は、30μm以下であってもよい。研削材42の平均粒径の算出は、砥粒30の算出方法と同様の方法で行われればよい。
【0032】
また、複合フィラー40の平均粒径は、砥粒30の平均粒径に対して10%以上60%以下であることが好ましい。複合フィラー40の平均粒径が砥粒30の平均粒径に対して10%以上であれば、耐摩耗性が向上し、高い切削性が維持される。複合フィラー40の平均粒径は、より好ましくは、砥粒30の平均粒径に対して40%以上である。また、複合フィラー40の平均粒径が砥粒30の平均粒径に対して60%以下であれば、切断時の切断品位低下を抑制することができる、複合フィラー40の平均粒径は、より好ましくは、砥粒30の平均粒径に対して50%以下である。
複合フィラー40の平均粒径の算出は、砥粒30の算出方法と同様の方法で行われればよい。
【0033】
複合フィラー40の含有量は、レジンボンド相20の体積に対して5体積%以上30体積%以下であることが好ましい。複合フィラー40の含有量がレジンボンド相20の体積に対して5体積%以上であれば、耐摩耗性がより一層向上する。複合フィラー40の含有量は、より好ましくは、レジンボンド相20の体積に対して10%以上である。また、複合フィラー40の含有量がレジンボンド相20の体積に対して30体積%以下であれば、製品形状に成型する際の厚みバラつきが小さい。複合フィラー40の含有量は、より好ましくは、レジンボンド相20の体積に対して20%以下である。
【0034】
レジンボンド相20の体積に対する複合フィラー40の含有量の算出は、以下の方法で行われる。すなわち、砥粒を除くレジンボンド相20の体積に対する複合フィラー40の体積を百分率で表した際の体積%で計算する。具体的には、レジンブレード1の体積から砥粒30の体積を減じ、レジンブレード1中のレジンボンド相20及び複合フィラー40の合計体積を算出する。また、レジンブレード1の質量から、砥粒30の密度と体積(集中度)から算出された砥粒の質量を減じ、レジンブレード1中のレジンボンド相20及び複合フィラー40の合計質量を算出する。一方、レジンボンド相20の密度及び複合フィラー40の密度を予め測定しておく。算出されたレジンボンド相20及び複合フィラー40の合計体積及び合計質量、レジンボンド相20の密度、並びに複合フィラー40の密度から、レジンボンド相20の体積に対する複合フィラー40の含有量(体積%)を算出する。
【0035】
ここまで、本実施形態に係るレジンブレード1を詳細に説明した。本実施形態に係るレジンブレード1は、例えばガラス、石英、セラミックス等の硬脆材料を含有する電子部品材料等の被加工材を精密に切断加工するのに適している。レジンブレード1の加工対象としては、例えば、QFN(Quad Flat Non lead package)が挙げられる。なお、被加工材は、上記高脆材料を含有する電子部品材料に限らず、上記以外の材料であってもよい。
【0036】
<<レジンブレード1の製造方法>>
続いて、本実施形態に係るレジンブレード1の製造方法を説明する。本実施形態に係るレジンブレード1の製造方法は、ビトリファイド相41と研削材42とで構成される複合フィラー40を製造する複合フィラー製造工程S110と、熱硬化性樹脂の粉末と、砥粒30と、複合フィラー40と、を混合してブレード材料を得るブレード材料製造工程S120と、ブレード材料からブレード原板を形成するブレード原板製造工程S130と、ブレード原板をホットプレスするホットプレス工程S140と、を備える。以下に、第1の製造方法として、複合フィラー製造工程S110が、ガラスフリットと研削材とを混合して得られた複合フィラー材料を加圧成形して成形体を製造する成形体製造工程S111しと、上記成形体を焼成して焼成体を製造する焼成体製造工程S112と、焼成体を粉砕する粉砕工程S113と、を有するレジンブレード1を製造する方法を説明する。また、第2の製造方法として、複合フィラー製造工程S110が、ガラスフリットと研削材と、バインダーと、を混合して得られた複合フィラー材料の造粒体を製造する造粒体製造工程S116と、上記造粒体を焼成して焼成粒を製造する焼成粒製造工程S117と、を有するレジンブレード1を製造する方法を説明する。
【0037】
<第1の製造方法>
(複合フィラー製造工程S110)
第1の製造方法では、複合フィラー製造工程S110が、ガラスフリットと研削材とを混合して得られた複合フィラー材料を加圧成形して成形体を製造する成形体製造工程S111と、成形体を焼成して焼成体を製造する焼成体製造工程S112と、焼成体を粉砕する粉砕工程S113と、を有する。
【0038】
[成形体製造工程S111]
本工程では、ガラスフリットと研削材とを混合して得られた複合フィラー材料を加圧成形して成形体を製造する。
【0039】
ガラスフリットは、例えば、ほう素化合物20質量%以上30質量%以下、酸化アルミニウム15質量%以上25質量%以下、酸化カルシウム1質量%以上8質量%以下、シリカ20質量%以上35質量%以下、及び、その他の酸化物等を含有する。研削材には、上述したものが用いられる。
【0040】
ガラスフリットの平均粒径は、例えば、0.3μm以上5.0μm以下である。製造性等の観点から、ガラスフリットの平均粒径は、1.5μm以上であることが好ましい。しかしながら、ガラスフリットの平均粒径は、1.5μm以上であってもよい。また、他の原料とのサイズ差の観点から、ガラスフリットの平均粒径は、5.0μm以下であることが好ましい。ガラスフリットの平均粒径は、5.0μm以下であってもよい。
【0041】
上記ガラスフリットと研削材との混合には、公知の混合方法を用いることができる。例えば、ガラスフリット及び研削材が装入された容器を回転させて混合する方法、内部に攪拌羽根を設置可能な容器にこれらを装入して攪拌羽根により原料粉末を混合する方法、又は、流動層を利用した混合方法等を適用してガラスフリットと研削材とを混合する。
【0042】
ガラスフリットと研削材とを混合して得られた複合フィラー材料を金型に充填して加圧し、成形体を形成する。金型の形状は特段制限されないが、後工程である粉砕工程で、上記成形体が焼成された焼成体を粉砕するため、粉砕しやすい形状であることが好ましい。成形体の形状は、例えば、円環薄板状であってよい。複合フィラー材料に負荷する圧力は、例えば、5MPa以上20MPa以下とすることができる。加圧時の温度は、製造コストの低減の観点から、室温(25℃程度)であることが好ましい。
【0043】
[焼成体製造工程S112]
本工程では、成形体を焼成して焼成体を製造する。成形体を焼成するときの雰囲気は、酸化雰囲気又は不活性ガス雰囲気であり、例えば、大気、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気等である。一次焼成温度は、例えば、800℃以上950℃以下とすることができる。一次焼成温度は、強度などの観点から、850℃以上であることが好ましい。また、一次焼成温度は、含有切削材の物性維持の観点から、950℃以下であることが好ましい。保持時間は、例えば、6時間以上24時間以下とすることができる。保持時間は、ボンド結合の観点から、8時間以上であることが好ましい。また、保持時間は、含有切削材の物性維持の観点から、16時間以下であることが好ましい。
成形体を焼成する際には、白色溶融アルミナ(WA)でその表面を覆うことが好ましい。これにより、研削材の耐熱温度以上の温度で焼成しても物性を損なわずに焼成が可能となる。
【0044】
[粉砕工程S113]
本工程では、上記焼成体製造工程で製造された焼成体を粉砕する。粉砕方法は特段制限されず、焼成体のサイズや、所望の複合フィラーのサイズに応じて、ハンマーミルやボールミル等を用いて焼成体を粉砕することができる。また、粉砕方法は、乾式粉砕であってもよいし、湿式粉砕であってもよい。また、ボールミルで焼成体を粉砕する場合、メディア径やメディアの成分は特段制限されず、例えば、焼成体のサイズに応じてこれらを定めればよい。メディアとしては、例えばアルミナボールを用いることができる。
【0045】
(ブレード材料製造工程S120)
ブレード材料製造工程S120では、熱硬化性樹脂の粉末と、砥粒30と、複合フィラー40と、を混合してブレード材料を得る。本工程では、公知の混合装置を用いることができ、成形体製造工程S111における上記ガラスフリットと研削材との混合に用いた混合装置を用いることができる。
【0046】
熱硬化性樹脂の粉末は、後工程のホットプレス工程S140を経てレジンボンド相20となるものである。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、機能性、汎用性の観点から、フェノール樹脂であることが好ましい。
【0047】
砥粒は、その平均粒径が上述した範囲のものを用いることができる。また、複合フィラーの平均粒径が、砥粒の平均粒径に対して10%以上60%以下であるものを用いることが好ましい。
【0048】
また、本工程では、複合フィラーの含有量がブレード材料の全体の体積に対して5体積%以上30体積%以下になるように混合することが好ましい。
【0049】
(ブレード原板製造工程S130)
ブレード原板製造工程S130では、ブレード材料からブレード原板を形成する。具体的には、内部が円環形状の金型にブレード材料を充填して、加圧し、ブレード原板を形成する。ブレード原板への圧力は、例えば、5.0MPa以上20.0MPa以下とすることができる。加圧時の温度は、製造コストの低減の観点から、室温(25℃程度)であることが好ましい。
【0050】
(ホットプレス工程S140)
本工程では、ブレード原板をホットプレスする。具体的には、ブレードの厚みを均一にするスペーサを介してブレード原板を金型に配置し、当該ブレード原板をホットプレスする。加圧時の金型の温度は、ブレード原板中の熱硬化性樹脂が流動する温度であればよく、用いる熱硬化性樹脂の粉末の種類によるが、例えば、80℃以上140℃以下とすることができる。ブレード原板への圧力は、例えば、5.0MPa以上20.0MPa以下とすることができる。圧力負荷時間は、10分以上60分以下とすることができる。
【0051】
(仕上げ加工工程S150)
仕上げ加工工程S150では、ホットプレス工程S140後のレジンブレードの外径及び内径を調整する。外径の調整は、公知の研削装置、例えば円筒研削盤を用いて行うことができ、内径の調整は、公知の内径加工機を用いて行うことができる。
ここまで、第1の製造方法を説明した。
【0052】
<第2の製造方法>
(複合フィラー製造工程S110)
第2の製造方法では、複合フィラー製造工程S110が、ガラスフリットと、研削材と、バインダーと、を混合して得られた複合フィラー材料の造粒体を製造する造粒体製造工程S116と、上記造粒体を焼成して焼成粒を製造する焼成粒製造工程S117と、を有する。第2の製造方法におけるブレード材料製造工程S120、ブレード原板製造工程S130、ホットプレス工程S140及び仕上げ加工工程S150は、第1の製造方法における工程と同様であるため、これらの工程の詳細な説明は省略する。以下では、造粒体製造工程S116及び焼成粒製造工程S117を詳細に説明する。
【0053】
[造粒体製造工程S116]
本工程では、ガラスフリットと、研削材と、バインダーとで構成される複合フィラー材料の造粒体を製造する。
【0054】
ガラスフリット及び研削材は、第1の製造方法と同様のものを用いることができる。
【0055】
バインダーは、例えば、PVA(ポリビニールアルコール)やフェノールなどがあげられる。焼成温度にてバインダーを消失できれば種類は限定しない。
【0056】
造粒体の製造には、公知の造粒方法を用いることができる。例えば、ガラスフリット、研削材及びバインダーが装入された容器を転動させて造粒体を造粒する方法、内部に攪拌羽根を設置可能な容器にこれらを装入して攪拌羽根によりガラスフリット、研削材及びバインダーを攪拌しながら造粒体を造粒する方法、又は、流動層を利用した造粒方法等を適用して造粒体を造粒する。
【0057】
[焼成粒製造工程S117]
焼成粒製造工程S117では、造粒体を焼成して焼成粒を製造する。造粒体を焼成するときの雰囲気、焼成温度及び焼成時間は、第1の製造方法の焼成体製造工程における雰囲気、焼成温度及び焼成時間と同様の範囲にすることができる。
ここまで、第2の製造方法を説明した。
【0058】
本実施形態に係るレジンブレード1の製造方法では、複合フィラー製造工程S110後であって、ブレード材料製造工程S120前に、複合フィラーを分級する分級工程S160を有していてもよい。分級方法は特段制限されず、篩を用いた分級やサイクロンを用いた分級等を行うことができる。分級後の複合フィラーの平均粒径が、砥粒30の平均粒径に対して10%以上60%以下となるように分級を実施することが好ましい。
【実施例0059】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(本発明例1)
本発明例1として、以下の方法でレジンブレードを製造した。ガラスフリットにカサイ工業株式会社製、ホウ珪酸フリットを用い、研削材に合成ダイヤモンド(ノンコーティング)を用い、これらをボールミル混合装置とアルミナボールを用いて混合して複合フィラー材料を製造した。研削材の平均粒径は、0.015mmであった。
【0061】
研削材に用いた合成ダイヤモンドのビッカース硬さは、85GPaであり、耐熱温度は約800℃であった。
【0062】
得られた複合フィラー材料を金型に充填し、プレス圧力を14.5MPa、プレス時間を10秒としてコールドプレスを実施し、成形体を得た。次いで、成形体の表面を白色溶融アルミナ(WA)で覆い、これを温度920℃の大気雰囲気下で、14時間保持し、焼成体を得た。メディアにアルミナボールを用い、ボールミルで焼成体を粉砕した。粉砕して得られた焼成体の粉末を公称目開きが0.056mmで篩い、平均粒径が0.044mmの複合フィラーを得た。
【0063】
次いで、熱硬化性樹脂と、砥粒と、複合フィラーとを、ボールミル混合装置とアルミナボールを用いて混合してブレード材料を得た。熱硬化性樹脂には、アイカ工業株式会社製フェノール樹脂BRP-5417を使用した。砥粒には、平均粒径が0.088mmのNiコーティング合成ダイヤモンドを用いた。
【0064】
内部が円環形状の金型にブレード材料を充填して、ブレード材料を12.5MPaで加圧し、ブレード原板を成形した。加圧時間は、5秒とした。
続いて、スペーサを介してブレード原板を金型に配置し、当該ブレード原板をホットプレスした。加圧時の金型の温度を200℃とし、ブレード原板への圧力は、17.5MPaとした。加圧時間は、30分とした。その後、内外径を加工し、外径59mm、内径40mm、厚さ0.32mmのレジンブレードを6枚製造した。
【0065】
レジンブレードのレジンボンド相の体積に対する複合フィラーの含有量は、10体積%であった。上記複合フィラーの含有量は、以下の方法で算出した。すなわち、砥粒を除くボンド部分を百分率した際の体積%で計算した。具体的には、まず、レジンブレードの体積から砥粒の体積を減じ、レジンブレード中のレジンボンド相及び複合フィラーの合計体積を算出した。また、レジンブレードの質量から砥粒の密度と体積(集中度)から算出された砥粒の質量を減じ、レジンブレード中のレジンボンド相及び複合フィラーの合計質量を算出した。一方、レジンボンド相の密度及び複合フィラーの各密度を測定した。算出されたレジンボンド相及び複合フィラーの合計体積及び合計質量、レジンボンド相の密度、並びに複合フィラーの密度から、レジンボンド相の体積に対する複合フィラーの含有量(体積%)を算出した。
【0066】
砥粒の集中度は75であった。集中度とは、レジンブレードの体積に対する砥粒の含有割合であり、詳細には、レジンブレードの体積の1/4に対する超砥粒の体積の割合である。集中度は仕込み(各原料の秤量計算)から算出した。
【0067】
(本発明例2)
本発明例2として、研削材に平均粒径が0.015mmのBCの粒子を用い、その他を本発明例1と同じ条件として、6枚のレジンブレードを製造した。研削材に用いたBCのビッカース硬さは、35GPaであり、耐熱温度は2450℃であった。
【0068】
(本発明例3)
本発明例3として、以下の方法でレジンブレードを製造した。ガラスフリットにはカサイ工業株式会社製、ホウ珪酸フリットを用い、研削材にノンコーティング合成ダイヤモンドを用い、バインダーにPVAバインダーを用い、これらを株式会社シンキー社製混合装置ARE-250を用いて混錬、造粒して造粒体を製造した。研削材の平均粒径は、0.015mmであった。次いで、温度920℃の大気雰囲気下で、造粒体を14時間保持し、造粒体を焼成し、焼成粒を得た。得られた焼成粒を公称目開きが0.056mmで篩い、平均粒径が0.044mmの複合フィラーを得た。以降の工程は、本発明例1と同じ条件とし、6枚のレジンブレードを製造した。
【0069】
比較例として、以下の方法でレジンブレードを製造した。熱硬化性樹脂と、砥粒と、を、ボールミル混合装置とアルミナボールを用いて混合してブレード材料を得た。熱硬化性樹脂には、アイカ工業株式会社製フェノール樹脂BRP-5417を使用した。砥粒には、平均粒径が0.088mmのNiコーティング合成ダイヤモンドを用いた。砥粒の集中度は75とした。以降の工程は、本発明例1と同じ条件とし、3枚のレジンブレードを製造した。
【0070】
なお、本発明例1~3及び比較例における、研削材の平均粒径、複合フィラーの平均粒径、及び砥粒の平均粒径は以下の方法で測定した。Microtrac社製レーザ回折・散乱式測定装置MT3300EXII-SDCを用い、サンプルを水(25℃、pH7)に投入し、測定試料の透過性は透過とし、粒子屈折率は1.81、形状は非球状とし測定された体積基準粒度分布での平均粒径を測定する。溶媒屈折率を1.333、測定時間を30秒とし、2回測定した平均値を測定値とした。
【0071】
被加工材として、QFNを模擬したダミーQFNを用いた。ダミーQFNは、エポキシ樹脂などに、SiOを添加した銅配線(リードフレーム)を封止したものである。ダミーQFNは、図8に示すように、切断して個片化したときの寸法を5mm×5mmとした。また、銅電極の数を1面6ピンとした。
【0072】
レジンブレードに取り付けたフランジの直径は52mmとした。フランジを介して各レジンブレードを切断装置(ダイシングマシンSS30)に装着し、スピンドル回転数30000rpm、送り速度を60mm/秒、切削水の供給量を1.5L/分、冷却水の供給量を1.5L/分とした。
【0073】
本発明例1~3の各6枚のレジンブレード及び比較例の3枚のレジンブレードに関し、上記各切断量におけるレジンブレードの摩耗量、被加工材のY方向バリの寸法、及び電極間距離を測定した。
【0074】
ダミーQFNの切断長さを100m、500m、及び1000mとした。レジンブレードの摩耗量は使用ダイサー上で測定、カッターセットを用いて測定した。
【0075】
被加工材のY方向バリの寸法LYとは、図9に示す電極Eを切断したダミーQFNを上から見たときに、切断面Sから切断面Sに対して垂直方向に突出した金属バリYのY方向の長さLYである。被加工材のY方向バリの寸法LYは、以下の方法で測定した。すなわち、光学顕微鏡やマイクロスコープを用いて金属バリYを観察して測定した。被加工材のY方向バリの寸法LYは、ダミーQFNの電極全てで測定した。
【0076】
電極間距離LEは、図9に示す切断面Sをその正面から見たときの隣り合う電極E間の距離LEであり、1つの個片化QFNにつき4面測定した。電極間距離LEは、以下の方法で測定した。すなわち、マイクロスコープを用いて測定した。被加工材の電極間距離LEは、全ての隣り合う電極間で測定した。
【0077】
結果を表1及び図10、11に示す。表1は、本発明例1~3及び比較例におけるダミーQFNの切断距離によるレジンブレードの摩耗量(mm)を示す。図10は、実施例における被加工材のY方向バリの寸法LYの測定結果を示すグラフである。図11は、実施例における被加工材の電極間距離LEの測定結果を示すグラフである。図10及び図11に示すひし形のプロットは、測定値をプロットしたものであり、丸形のプロットは、測定値の平均値をプロットしたものである。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、本発明例1~3では、比較例と比べて、レジンブレードの摩耗量が低減された。被加工材のY方向バリの寸法LYの最大値について、表1及び図10に示すように、本発明例1~3は比較例と比べて小さく、Y方向バリの寸法LYの平均値も本発明例1~3は比較例と比べて小さかった。電極間距離に関し、図11に示すように、本発明例1~3は比較例1と同程度であり、大きな品位低下は見られなかった。
【符号の説明】
【0080】
1 レジンブレード
11 外面
12 内面
13 貫通孔
14A、14B 側面
20 レジンボンド相
30 砥粒
40 複合フィラー
41 ビトリファイド相
42 研削材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11