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特開2022-151955ジヒドロジシロキサン化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022151955
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ジヒドロジシロキサン化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
C07F7/18 X CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054525
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】田中 陵二
(72)【発明者】
【氏名】布川 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】杉本 俊
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP02
4H049VQ21
4H049VR11
4H049VR21
4H049VR42
4H049VS39
4H049VS78
(57)【要約】
【課題】
高い気化特性を示し、CVD法により良好な成膜速度でシリカ薄膜を作製するための前駆体として有用なケイ素系化合物及びその製造方法を提供する
【解決手段】
一般式(1)
【化1】
(1)
(式中、Rは炭素数1~6のアルキル基を、Rは炭素数1~3のアルキル基を表す。一つのRと一つのRの炭素数の和は4以上9以下である。)で示されるジヒドロジシロキサン化合物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(1)
(式中、Rは炭素数1~6のアルキル基を、Rは炭素数1~3のアルキル基を表す。RとRで表されるアルキル基の炭素数の和は4以上9以下である。)で示されるジヒドロジシロキサン化合物。
【請求項2】
一般式(1)中、Rがメチル基、エチル基又はイソプロピル基である、請求項1に記載のジヒドロジシロキサン化合物。
【請求項3】
一般式(1)中、Rがイソプロピル基、Rがメチル基である、請求項1又は2に記載のジヒドロジシロキサン化合物。
【請求項4】
一般式(2)
【化2】
(2)
(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数2~12のジアルキルアミノ基を表す。Rは炭素数1~6のアルキル基を、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、RとRで表されるアルキル基の炭素数の和は4以上9以下である。)で示されるヒドロアルコキシシラン化合物(2)を、水又は金属酸化物と反応させる、一般式(1)
【化3】
(1)
(式中、R及びRは前記と同義である。)で示されるジヒドロジシロキサン化合物の製造方法。
【請求項5】
一般式(3)
【化4】
(3)
(式中、Xはハロゲン原子を表す。Rは炭素数1~6のアルキル基を表す。)で示されるジハロジヒドロジシロキサン化合物を、一般式(4)
(RO)M (4)
(Rは炭素数1~3のアルキル基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。nは1又は2であり、Mが水素原子又はアルカリ金属の場合は1を、Mがアルカリ土類金属の場合は2を、それぞれ表す。)で示されるアルコール又は金属アルコキシドと反応させる、一般式(1)
【化5】
(1)
(式中、R及びRは前記と同義であり、RとRで表されるアルキル基の炭素数の和は4以上9以下である。)で示されるジヒドロジシロキサン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ケイ素薄膜の作製に有用なジヒドロジシロキサン化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化ケイ素(シリカ)は、高い化学的・熱的安定性と良好な物理的特性(透明性、絶縁性、機械的強度)を併せ持つ代表的な金属酸化物材料であり、バルクからナノサイズ材料まで、様々な形態で産業利用されている。シリカの薄膜を作製する方法としては、湿式法と乾式法が主として用いられるが、工程数が少なく高密度で高機能な膜を得やすいことから、乾式法の化学気相成長法(CVD法)が主に用いられている。特に、高い酸素・水バリア特性を高分子フィルム材料に付与するために、CVD法によりフィルム上に透明なシリカ膜を堆積させ、該目的を達成することが多い。CVD法による成膜では、前駆体には気化可能であることが求められる。これまでに、種々の有機ケイ素化合物を前駆体として採用し、CVD法により所望の組成及び特性を有する含ケイ素薄膜を堆積させる方法が多数報告されている。
【0003】
CVD法によるシリカ薄膜前駆体の分子設計としては、高い蒸気圧を有し、良好な成膜速度でシリカ薄膜を堆積させることができ、かつ該シリカ薄膜が所望の機能や物性を発現させうることが重要である。一般的には、入手の容易さ及び蒸気圧が高い点から、ケイ素原子数が一つのモノシラン化合物、特にテトラメトキシシランやテトラエトキシシランが用いられるが、その成膜速度にはまだ改善の余地が大きい。また、ケイ素原子上に水素原子が置換した水素置換シラン(ヒドロシラン)類は、対応するアルコキシ体やアルキル体に比べ分子量が小さく分子間相互作用が弱いため高蒸気圧化が達成されるものの、空気中の酸素に対し不安定となることがしばしばあり、保安上の問題となる場合もあった。成膜速度改善には、前駆体のケイ素原子数増大(多核化)が有効であると予想され、同時に分子量の増加による低蒸気圧化を避けるためには、前駆体のケイ素原子上に水素原子を導入することが有効と考えられる。
【0004】
非特許文献1では、CVD法によるヘキサメチルジシロキサンを前駆体とした高分子フィルム上に堆積させたシリカバリア膜について報告している。しかし、ヘキサメチルジシロキサンを前駆体として用いた薄膜は炭素が残存する傾向があり、着色しやすい。特許文献1では1,3-ジメチル-1,3-ジエトキシジシロキサンを用いてCVD法によりSiCHO膜を堆積させているが、得られる薄膜は低誘電率膜であって、膜の水蒸気バリア性については記述されていない。特許文献2ではテトラエトキシシランと酸素とを原料としたプラズマ支援化学気相成長法(PECVD法)により、シリカガスバリア層を形成したポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムの製造が開示されている。この薄膜の水蒸気バリア性(WVTR)は1.7×10-3g/m・dayと充分な水蒸気バリア性を示すものの、成膜速度は67nm/minと低く、成膜速度に改善の余地があった。特許文献3にはアルキルヒドロジシロキサン化合物を用い、PECVD法により成膜速度257nm/minでガスバリア膜を形成する方法が開示されており、膜厚2570nmの厚い単層膜において、WVTRが4.0×10-3g/m・dayという低い値を示すガスバリア膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/144960号
【特許文献2】特開2016-176091号公報
【特許文献3】特許第6007662号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lin Hanら、Journal of The Electrochemical Society、156巻、H106~H114頁、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高い気化特性を示し、CVD法において良好な成膜速度でシリカ薄膜を作製するための前駆体として有用なケイ素系化合物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ケイ素原子上にそれぞれ水素、特定の炭素数のアルキル基と、アルコキシ基を一つずつ有するジヒドロジシロキサン化合物が高い気化特性を示し、CVD法において良好な成膜速度でシリカ薄膜を作製するための前駆体として有用であることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
[1]
一般式(1)
【0010】
【化1】
【0011】
(1)
(式中、Rは炭素数1~6のアルキル基を、Rは炭素数1~3のアルキル基を表す。RとRで表されるアルキル基の炭素数の和は4以上9以下である。)で示されるジヒドロジシロキサン化合物。
[2]
一般式(1)中、Rがメチル基、エチル基又はイソプロピル基である、[1]に記載のジヒドロジシロキサン化合物。
[3]
一般式(1)中、Rがイソプロピル基、Rがメチル基である、[1]又は[2]に記載のジヒドロジシロキサン化合物。
[4]
一般式(2)
【0012】
【化2】
【0013】
(2)
(式中、Xはハロゲン原子、炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数2~12のジアルキルアミノ基を表す。Rは炭素数1~6のアルキル基を、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、RとRで表されるアルキル基の炭素数の和は4以上9以下である。)で示されるヒドロアルコキシシラン化合物を、水又は金属酸化物と反応させる、一般式(1)
【0014】
【化3】
【0015】
(1)
(式中、R、Rは前記と同義である。)で示されるジヒドロジシロキサン化合物の製造方法。
[5]
一般式(3)
【0016】
【化4】
【0017】
(3)
(式中、Xはハロゲン原子を表す。Rは炭素数1~6のアルキル基を表す。)で示されるジハロジヒドロジシロキサン化合物を、一般式(4)
(RO)M (4)
(Rは炭素数1~3のアルキル基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。nは1又は2であり、Mが水素原子又はアルカリ金属の場合は1を、Mがアルカリ土類金属の場合は2を、それぞれ表す。)で示されるアルコール又は金属アルコキシドと反応させる、一般式(1)
【0018】
【化5】
【0019】
(1)
(式中、R及びRは前記と同義であり、RとRで表されるアルキル基の炭素数の和は4以上9以下である。)で示されるジヒドロジシロキサン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)は、高い気化特性を示し、CVD法により良好な成膜速度でシリカ薄膜を作製するための前駆体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
まず、一般式(1)、(2)、(3)及び(4)中のR及びRについて説明する。
【0023】
は炭素数1~6のアルキル基であり、直鎖状、分枝状又は環状のいずれであっても良い。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、ネオペンチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基及びシクロヘキシル基が例示出来る。これらのうち、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)の製造コスト、酸素に対する安定性及び蒸気圧の点から、メチル基、エチル基、プロピル基、又はイソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基又はイソプロピル基が更に好ましく、メチル基又はイソプロピル基が殊更好ましく、イソプロピル基が特に好ましい。
【0024】
は炭素数1~3のアルキル基であり、直鎖状、分枝状、又は環状のいずれであっても良い。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基が例示出来る。これらのうち、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)の製造コスト、酸素に対する安定性及び蒸気圧の点から、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基が好ましく、メチル基、エチル基又はイソプロピル基が更に好ましく、メチル基又はイソプロピル基が殊更好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0025】
次に、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)について説明する。本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)は、下記一般式(1)
【0026】
【化6】
【0027】
(1)
(式中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表す。Rは炭素数1~3のアルキル基を表す。RとRで表されるアルキル基の炭素数の和は4以上9以下である。)で示される。
【0028】
ジヒドロジシロキサン化合物(1)においては、RとRで表されるアルキル基の炭素数の和が9を超えると、分子量増加により蒸気圧が低くなるため気化蒸発しづらくなり、CVD材料としては不適なものとなる。また、RとRで表されるアルキル基の炭素数の和が3以下になると、ケイ素原子上の水素原子が空気中の酸素により酸化されやすくなり、保存時又は成膜時において酸化により生じた高分子量のケイ素酸化物によって薄膜の品質低下や成膜に支障を来すことがある。
【0029】
一般式(1)で示されるジヒドロジシロキサン化合物(1)は、1位と3位のケイ素原子の立体化学によって、(1R,3R)体、(1R,3S)体及び(1S,3S)体の3つの異性体を含む。(1R,3R)体と(1S,3S)体は、互いに鏡像異性体の関係にある。本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)は、これらの混合物であっても良く、該異性体のいずれかを優勢に含有するものであっても良い。本明細書では、これらを区別せずに扱う。
【0030】
本発明の一般式(1)で示されるジヒドロジシロキサン化合物(1)としては、具体的には以下の化合物が例示出来る。なお、本明細書中では、Me、Et、Pr、i-Pr、Bu、i-Bu、sec-Bu、tert-Bu、Pen及びHexは、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基を表す。
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】
これらのうち、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)の蒸気圧の高さ、酸素に対する安定性、成膜後のシリカ膜の水蒸気バリア性の高さ及び経済性に優れる点で、(1-1-2)、(1-2-1)、(1-2-3)、(1-4-1)、(1-4-2)、(1-7-1)又は(1-8-1)が好ましく、(1-1-2)、(1-2-3)、(1-4-1)、(1-7-1)又は(1-8-1)が更に好ましく、(1-1-2)又は(1-4-1)が殊更好ましい。
【0035】
次に、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)の製造方法について説明する。
【0036】
まず、一般式(2)、(3)及び(4)中のX、X及びMについて説明する。
【0037】
はハロゲン原子、炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数2~12のジアルキルアミノ基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が例示できる。これらのうち、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)の製造コスト及び安定性の点から、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子又は臭素原子が更に好ましく、塩素原子が殊更好ましい。また、該アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、又はイソプロピルオキシ基が例示できる。これらのうち、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)の製造コスト、製造収率及び精製の容易さの点から、メトキシ基、エトキシ基又はイソプロピルオキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が更に好ましい。
【0038】
で示される炭素数2~12のジアルキルアミノ基としては、窒素上の二つのアルキル基は同一であっても良く、互いに異なっていても良い。また、直鎖状アルキル基の置換するアミノ基であっても、分枝状アルキル基の置換するアミノ基であっても良く、二つのアルキル基がそれぞれ互いに連結し、窒素を含んだ環を形成していても良い。該ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジノ基(N-ピペリジン-1-イル基)、ピロリジノ基(ピロリジン-1-イル基)及びジヘキシルアミノ基が例示出来る。これらのうち、経済性及び取り扱いの安全性の点から、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はジイソプロピルアミノ基が好ましく、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基が更に好ましい。
【0039】
はハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が例示できる。これらのうち、収率及び経済性の点から、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子又は臭素原子が更に好ましく、塩素原子が殊更好ましい。
【0040】
Mは、水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、該アルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムが例示できる。これらのうち、収率及び原料コストの点から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又はカルシウムが好ましく、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムが更に好ましい。
【0041】
本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)は、以下説明する製造方法1(以下、本発明の製造方法1という)又は製造方法2(以下、本発明の製造方法2という)のいずれかの方法により製造することが出来る。
【0042】
本発明の製造方法1について説明する。本発明の製造方法1は、一般式(2)で示されるヒドロアルコキシシラン化合物(2)を水又は金属酸化物と反応させ製造する、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)の製造方法である。
【0043】
【化10】
【0044】
(式中、R及びRは一般式(1)におけるそれらと同義である。Xはハロゲン原子、炭素数1~3のアルコキシ基、又は炭素数2~12のジアルキルアミノ基を表す)。
【0045】
本発明の製造方法1で原料として用いることが出来るヒドロアルコキシシラン化合物(2)としては、以下の化合物が例示出来る。
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
【化15】
【0051】
【化16】
【0052】
【化17】
【0053】
これらのうち、原料コスト、収率及び安定性の点から、化合物(2-1-2)、(2-1-8)、(2-2-1)、(2-2-10)、(2-4-1)、(2-4-13)、(2-7-13)又は(2-8-13)が好ましく、化合物(2-1-8)、(2-2-10)、(2-4-13)、又は(2-8-13)が更に好ましい。
【0054】
ヒドロアルコキシシラン化合物(2)の入手としては、市販品が購入可能であればそれを入手し、そのまま又は適宜精製して用いてもよい。ヒドロアルコキシシラン化合物(2)の製造方法としては、種々の既知合成法が採用出来、当業者であれば容易に合成利用し得る。本発明の製造方法1を阻害しない限り、これらのヒドロアルコキシシラン化合物(2)の製造工程を本発明の製造方法1の前工程として含んでいても良い。
【0055】
本発明の製造方法1において、ヒドロアルコキシシラン化合物(2)のXがハロゲン原子である場合は、水又は金属酸化物とアルコキシヒドロシラン化合物(2)とを反応させ、製造する(以下、製造方法1-1という。)。
【0056】
で表されるハロゲンはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子のいずれでも良く、経済性及び前駆体の収率の良さの点から、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子が更に好ましい。
【0057】
本発明の製造方法1-1で水を用いる場合(以下、製造方法1-1-1という。)、原料のヒドロアルコキシシラン化合物(2)化合物1モルに対し0.3~10モル当量の水を反応させることにより本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を収率良く製造出来る。経済性、生産効率及び反応収率の点から、水の当量は0.4~0.7モル当量の範囲から適宜選ばれる当量であることが好ましい。また、製造反応を加速するために、有機アミン等の塩基を同伴させても良い。該有機アミンとしては、ブチルアミン、ヘキシルアミン等の第一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第二級アミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の第三級アミン、アニリン等の芳香族アミン、ピリジン、キノリン、ピペリジン等の複素環アミンが例示出来る。経済性及び収率の点から、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、又はピリジンが好ましく、トリエチルアミン又はピリジンが更に好ましい。
【0058】
製造方法1-1-1においては、有機溶媒中で製造を行ってもよい。使用可能な有機溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒等が例示出来る。収率及び経済性の点からジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、又はシクロペンチルメチルエーテルが好ましく、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフランが更に好ましい。これらの有機溶媒は、一種を用いても、二種以上の溶媒を適当な比率で混合し用いても良い。
【0059】
製造方法1-1-1を実施する際のヒドロアルコキシシラン化合物(2)及び水の混合順序には特に制限はなく、例えば有機溶媒中にヒドロアルコキシシラン化合物(2)を混合し、ここに水(又は金属酸化物)を添加する方法が、収率及び安全性の点から好ましい。
【0060】
製造方法1-1-1を実施する際は、収率が良い点で、不活性ガス雰囲気下にて実施することが好ましい。該不活性ガスとしては、具体的には、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等を例示することが出来る。安価な点で窒素又はアルゴンが好ましい。
【0061】
製造方法1-1-1では、反応温度及び反応時間には制限はなく、当業者が官能性シランの加水分解反応を実施するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、-80℃~300℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1分~120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってジヒドロジシロキサン化合物(1)を収率良く製造することが出来る。
【0062】
製造方法1-1で金属酸化物を用いる場合(以下、製造方法1-1-2という。)、該金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化コバルト、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化レニウム、酸化銀等の金属酸化物を例示出来る。収率が高いという点から、酸化亜鉛を用いることが好ましい。
【0063】
製造方法1-1-2において、金属酸化物のモル当量には特に制限はなく、ヒドロアルコキシシラン化合物(2)のハロゲン原子1モル当量に対し、例えば金属酸化物中の金属のモル比が0.5~20モル当量の間から適宜選ばれた範囲内のモル比で収率良く製造することが出来る。
【0064】
製造方法1-1-2においては、有機溶媒中で製造を行ってもよい。該有機溶媒としては、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジグリム等のエーテル類溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のカルボン酸エステル溶媒が例示出来る。これらのうち、経済性、安全性及び収率の点から、テトラヒドロフラン、酢酸エチル又は酢酸メチルが好ましい。
【0065】
製造方法1-1-2において、収率が良い点で、不活性ガス雰囲気下にて実施することが好ましい。該不活性ガスとしては、具体的には、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等を例示することが出来る。安価な点で窒素又はアルゴンが好ましい。
【0066】
製造方法1-1-2において、反応温度及び反応時間には制限はなく、当業者が官能性ジシロキサンの製造を実施するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、-10℃~300℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1分~120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってジヒドロジシロキサン化合物(1)を収率良く製造することが出来る。
【0067】
本発明の製造方法1において、ヒドロアルコキシシラン化合物(2)のXがアルコキシ基である場合(以下、製造方法1-2という。)は、水とヒドロアルコキシシラン化合物(2)とを反応させ、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を製造する。Xで表されるアルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基又はイソプロピルオキシ基が例示でき、経済性及び前駆体の収率の良さの点から、メトキシ基、エトキシ基又はイソプロピルオキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基が更に好ましい。又、Xがアルコキシ基である場合、XはORで示されるアルコキシ基と同一であることが、収率の点から好ましい。
【0068】
製造方法1-2においては、原料のヒドロアルコキシシラン化合物(2)1モル当量に対し0.3~10モル当量の水を反応させることによりジヒドロジシロキサン化合物を収率良く製造出来る。経済性、生産効率及び反応収率の点から、水の当量は0.4~0.7モル当量の範囲から適宜選ばれた当量であることが好ましい。また、反応を加速させるため、酸性または塩基性触媒を用いても良い。
【0069】
本発明の製造方法1において、ヒドロアルコキシシラン化合物(2)のXがジアルキルアミノ基である場合(以下、製造方法1-3という。)は、水とヒドロアルコキシシラン化合物(2)とを反応させ、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を製造する。該ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジノ基(N-ピペリジン-1-イル基)、ピロリジノ基(ピロリジン-1-イル基)及びジヘキシルアミノ基が例示出来る。これらのうち、経済性及び取り扱いの安全性の点から、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はジイソプロピルアミノ基が好ましく、ジエチルアミノ基又はジイソプロピルアミノ基が更に好ましい。Xがジアルキルアミノ基である場合、原料のヒドロアルコキシシラン化合物(2)1モル当量に対し0.3~10モル当量の水を反応させることにより本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を収率良く製造出来る。経済性、生産効率及び反応収率の点から、水の当量は0.4~0.7モル当量の範囲から適宜選ばれる当量であることが好ましい。
【0070】
製造方法1-3において、ヒドロアルコキシシラン化合物(2)及び水の混合順序には特に制限はないが、例えば有機溶媒中にヒドロアルコキシシラン化合物(2)を混合し、ここに水(又は金属酸化物)を添加する方法が、収率及び安全性の点から好ましい。
【0071】
製造方法1-2及び製造方法1-3では、製造方法1-1-1及び1-1-2と同様に、有機溶媒を用い、不活性ガス雰囲気下で製造することができ、温度及び時間も同様な条件で行うことができる。
【0072】
本発明の製造方法1によって製造したジヒドロジシロキサン化合物(1)は、当業者がアルコキシ化シラン類を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、濃縮、抽出、洗浄、乾燥、遠心分離、蒸留又はクロマトグラフィー分取等を挙げることが出来る。CVD材料においてはその純度が重要となるため、蒸留を用いた精製の工程を含むことが好ましい。
【0073】
次に、本発明の製造方法2について説明する。本発明の製造方法2は、一般式(3)で示されるジハロジシロキサン化合物を一般式(4)
(RO)M (4)
(Rは前記と同義である。Mは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。nは1又は2であり、Mが素原子又はアルカリ金属の場合は1を、Mがアルカリ土類金属の場合は2を、それぞれ表す。)で示されるアルコール又は金属アルコキシドと反応させ、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を製造することを特徴とする。
【0074】
【化18】
【0075】
(式中、Rは炭素数1~6のアルキル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。Rは炭素数1~3のアルキル基を表す。)
製造方法2で用いることの出来るアルコールは、炭素数1~3の脂肪族アルコールである。該アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらのうち、収率及び原料コストの点から、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。該アルコールは、市販品をそのまま、又は適宜精製して用いることが出来る。
【0076】
製造方法2で用いることの出来る金属アルコキシドは、炭素数1~3の脂肪族のアルコールのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり、該金属アルコキシドとしては、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムイソプロピルオキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロピルオキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド、セシウムイソプロピルオキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロピルオキシド等が挙げられる。これらのうち、収率及び原料コストの点から、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロピルオキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロピルオキシド、が好ましく、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロピルオキシドが更に好ましい。
【0077】
該金属アルコキシドは、市販品の粉末をそのまま用いることも出来るし、該金属アルコキシドのアルコール溶液を購入して用いることも出来るし、又はアルカリ金属とアルコールとの反応等によって調製したものを使用することも出来、当業者であれば容易に利用し得る。
【0078】
本発明の製造方法2におけるアルコールの使用当量は、ジハロジシロキサン化合物(3)のモル当量に対して1.6~200モル当量から適宜選ばれたモル当量であることが好ましく、2~20モル当量から適宜選ばれたモル当量であることが更に好ましく、2~4モル当量から適宜選ばれたモル当量であることが殊更好ましい。
【0079】
本発明の製造方法2における金属アルコキシドの使用当量は、ジハロジシロキサン化合物(3)のモル当量に対して1.6~200モル当量から適宜選ばれたモル当量であることが好ましく、2~20モル当量から適宜選ばれたモル当量であることが更に好ましく、2~4モル当量から適宜選ばれたモル当量であることが殊更好ましい。
【0080】
本発明の製造方法2の原料として用いることの出来るジハロジシロキサン化合物(3)としては、以下の化合物が例示出来る。
【0081】
【化19】
【0082】
これらのうち、収率及び経済性の点から、(3-1-1)、(3-2-1)又は(3-4-1)が好ましく、(3-1-1)が更に好ましい。
【0083】
本発明の製造方法2では、有機溶媒中で実施するのが好ましい。該有機溶媒としては、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジグリム等のエーテル類溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類溶媒が例示できる。これらのうち、経済性、安全性及び収率の点から、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はシクロペンチルメチルエーテルが好ましい。又、原料として用いるアルコールを当量以上用いることにより有機溶媒と兼用してもよい。
【0084】
本発明の製造方法2でアルコールを用いて製造を行う場合は、有機アミン化合物を同伴させて実施してもよい。該有機アミン化合物は、反応により副生するハロゲン化水素と反応し、反応収率を高め反応を促進させる作用がある。該有機アミン化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、キノリン等が挙げられ、トリエチルアミン又はピリジンが好ましい。該有機アミン化合物の使用当量は、ジハロジシロキサン化合物(3)のケイ素原子上のハロゲン原子数1モル当量に対して0.8~10モル当量より適宜選ばれたモル当量であることが好ましく、1.0~2.0モル当量より適宜選ばれたモル当量であることが更に好ましく、1.0~1.2モル当量より適宜選ばれたモル当量であることが殊更好ましい。
【0085】
製造方法2を実施する際は、収率が良い点で、不活性ガス雰囲気下にて実施することが好ましい。該不活性ガスとしては、具体的には、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等を例示することが出来る。安価な点で窒素又はアルゴンが好ましい。反応圧力は0.1~1000気圧の範囲から適宜選ばれた圧力下で実施することが好ましく、0.1~10気圧の範囲が更に好ましく、1気圧で実施することが殊更好ましい。
【0086】
本発明の製造方法2における反応温度の限定は特にはなく、収率、安全性及び操作性の点から、-80~200℃の範囲より適宜決定された温度で実施することが好ましく、-20℃~50℃の範囲が更に好ましく、室温で実施することが殊更好ましい。反応時間は、反応の進行を機器分析により確認することによって適宜決定され、1分~200時間の範囲から適宜選択した反応時間で実施することによって、ジヒドロジシロキサン化合物(1)を収率良く製造することが出来る。
【0087】
製造方法2によって製造した本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)は、当業者がアルコキシシラン類を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して行うことによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、濃縮、抽出、洗浄、乾燥、遠心分離、蒸留等を挙げることが出来る。特に、CVD材料においてはその純度が重要となるため、蒸留を用いた精製の工程を含むことが好ましい。
【0088】
本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)をCVDプロセスの前駆体として用いる場合、該CVDプロセスの具体的手段としては、当業者がCVD法によりシリカ薄膜を作製するのに通常用いる汎用的な手段を挙げることが出来る。CVD法によりシリカ薄膜を製造する場合、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を気化させ、気体として反応チャンバーに供給する。本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を気化させる方法としては、例えばバブリング法やリキッドインジェクション法などを挙げることが出来る。バブリング法とは、恒温槽によって一定の温度に保たれた材料容器に本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を入れ、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン又は窒素などのキャリアガスを吹き込むことによって本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を気化させる方法である。リキッドインジェクション法とは、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を液体の状態で気化器に送りこみ、気化器内での加熱などによって本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を気化させる方法である。リキッドインジェクション法では、本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を溶媒に溶かして溶液として用いることも出来る。
【0089】
気体として反応チャンバーに供給した本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を分解することにより、基板上にシリカ薄膜を製造することが出来る。本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を分解する方法としては、熱による方法、プラズマや光などを使用する方法、反応チャンバー内に反応ガスを送り込んで化学反応を起こさせる方法等を例示することが出来る。これらの方法を単独で又は併せて用いることによって本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)を分解し、シリカ薄膜を製造することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のジヒドロジシロキサン化合物(1)は、異種の反応活性な官能基である水素原子及びアルコキシ基をケイ素上に併せ持つことから、種々の官能性シロキサン材料や有機シルセスキオキサン材料等の含ケイ素材料の原料への利用、又は有機合成反応における還元剤や保護基としての適用利用が考えられる。
【実施例0091】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0092】
実施例に記載の製造は全てアルゴン雰囲気下で実施した。機器分析は、H-NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)、13C-NMR(炭素13核磁気共鳴スペクトル)及び29Si-NMR(ケイ素29核磁気共鳴スペクトル)測定はBruker社のAvanceシリーズAscend400核磁気共鳴分光計を用いて測定を行った。核磁気共鳴スペクトル測定溶媒には重クロロホルムを用い、テトラメチルシランを内部標準物質として化学シフトを求めた。赤外スペクトルは(株)堀場製作所のFT-720分光光度計を用い、SensIRtechnologies社のDuraSamplIRII(反射型)測定セルを用いて測定を行った。質量スペクトル及びガスクロマトグラフィー測定は、(株)島津製作所のGCMS-QP2010型ガスクロマトグラフィー型質量分析装置を使用し、キャピラリーカラムにはアジレント・テクノロジー(株)のDB-5MSを使用した。
【0093】
製造で用いた1,3-ジクロロ-1,3-ジメチルジシロキサンは、文献(米国特許第2,519,881号)記載の方法に準じ合成した。tert-ブチルジクロロシラン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製試薬)、トリクロロシラン(東京化成工業株式会社製試薬)、2-クロロプロパン(東京化成工業株式会社製試薬)、2-クロロブタン(東京化成工業株式会社製試薬)、マグネシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、脱水ジエチルエーテル(関東化学株式会社製試薬)、脱水テトラヒドロフラン(以下、脱水THFと略す。)(関東化学株式会社製試薬)、脱水ヘキサン(関東化学株式会社製試薬)、脱水メタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、イソプロピルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社製試薬)、ピリジン(関東化学株式会社製試薬)、トリエチルアミン(関東化学株式会社製試薬)及びジエチルアミン(関東化学株式会社製試薬)は市販品を購入しそのまま用いた。
【0094】
(実施例1)1,3-ジメチル-1,3-ジ(イソプロピルオキシ)ジシロキサン(例示化合物番号(1-1-2))の合成
【0095】
【化20】
【0096】
磁気撹拌子、滴下ロート、ジムロート冷却管及び三方コックを備えた200mL3口フラスコをアルゴンで置換し、脱水ジエチルエーテル60mL、脱水ピリジン14.3g(181mmol)及び1,3-ジクロロ-1,3-ジメチルジシロキサン(例示化合物番号(3-1-1))15.0g(85.6mmol)を収めた。容器を0℃に冷却し、滴下ロートから2-プロパノール10.3g(171mmol)の脱水ジエチルエーテル40mL溶液を2時間かけて滴下し、16時間室温で撹拌し、さらに2時間加熱還流した。アルゴン雰囲気下、焼結ガラスフィルターを用い析出物をろ別した。ろ液を濃縮して低沸点成分を除去し、得られた粗生成物を減圧蒸留(沸点76℃/6.5kPa)することにより、1,3-ジメチル-1,3-ジ(イソプロピルオキシ)ジシロキサン(例示化合物番号(1-1-2))を無色液体として14.5g(収率76%)得た。
質量スペクトル(電子衝撃イオン化、70eV),m/z(%):221([M-H],7),179([M-Pr],23),137(100);H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.20(d,6H,J=1.6Hz),1.22(dd,12H,J=2.5,6.1Hz),4.16(m,2H),4.69(d,2H,J=1.3Hz);13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm):-0.61,-0.59,25.38,25.51,66.09;29Si-NMR(79MHz,CDCl)δ(ppm):-28.19,-28.16;赤外スペクトル(neat,cm-1):2972,2933,2877,2139,1456,1383,1369,1257,1174,1124,1070,1030,903,874,860,762,667。
【0097】
(実施例2)1,3-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシジシロキサン(例示化合物番号(1-4-1))の製造
【0098】
【化21】
【0099】
磁気撹拌子、滴下ロート、ジムロート冷却管及び三方コックを備えた500mLの3口フラスコに削り状金属マグネシウム9.40g(387mmоl)を収め、装置内をアルゴンで置換した。3口フラスコに脱水THF10mLを収め、1,2-ジブロモエタン0.1mLを加えマグネシウムを活性化させた。次いで、滴下ロートから2-クロロプロパン29.9g(381mmоl)の脱水THF190mL溶液を1.5時間かけて滴下し、滴下終了後さらに室温で1.5時間撹拌し、イソプロピルマグネシウムクロリド溶液を調製した。
【0100】
別に、磁気撹拌子、滴下ロート、ジムロート冷却管及び三方コックを備えた1000mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、反応容器内にトリクロロシラン50.9g(376mmоl)及び脱水THF300mLを収めた。反応容器を-10℃に冷却し、先に調製したイソプロピルマグネシウムクロリド溶液を滴下ロートから4.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し72時間撹拌し、イソプロピルジクロロシランの溶液を調製した。
【0101】
上記のイソプロピルジクロロシラン溶液を0℃に冷却し、滴下ロートからトリエチルアミン77.5g(0.765mоl)及びジエチルアミン27.1g(0.376mоl)の混合物を1時間かけて滴下し、さらに2時間撹拌した。次いで、この混合物に、滴下ロートから0℃でメタノール12.1g(0.376mоl)の脱水THF40mL溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で16時間撹拌し、(ジエチルアミノ)イソプロピルメトキシシラン(例示化合物番号(2-4-13))の溶液を調製した。
【0102】
次いで、三口フラスコ内に注射器より蒸留水3.99g(0.188mоl)を撹拌しながらゆっくり加え、その後2時間加熱還流した。減圧下で溶液を半分程度に濃縮し、ここに脱水ヘキサン300mLを加え、アルゴン雰囲気下で焼結ガラスフィルターで固形分をろ別した。これを再度濃縮し、脱水ヘキサンで希釈し、焼結ガラスフィルターで固形分を再度ろ別した。濃縮後得られた粗生成物を減圧蒸留(沸点86℃/4.8kPa)することにより、1,3-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシジシロキサン(例示化合物番号(1-4-1))を無色液体として22.6g(トリクロロシランからの収率54%)得た。この化合物はケイ素上の立体異性に基づく(1R,3R)及び(1S,3S)、並びに(1R,3S)の立体化学を有する分子の混合物であり、二種のジアステレオマー異性体の存在に基づく核磁気共鳴スペクトルが観測された。
質量スペクトル(電子衝撃イオン化、70eV),m/z(%):179([M-Pr],100),151(72),121(65);H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.842~0.932(m,2H),1.01(dd,12H,J=7.1,1.3Hz),3.57(s,6H),4.44(d,2H,J=0.68Hz);13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm):13.49,15.67,51.28;29Si-NMR(79MHz,CDCl)δ(ppm):-21.90,-21.87;赤外スペクトル(neat,cm-1):2945,2897,2868,2837,2131,1464,1385,1246,1190,1165,1088,1057,1001,922,881,825,766,683,661,648。
【0103】
(合成例1)sec-ブチルジクロロシランの調製
【0104】
【化22】
【0105】
磁気撹拌子、滴下ロート、ジムロート冷却管及び三方コックを備えた500mLの3口フラスコに削り状金属マグネシウム13.4g(552mmоl)を収め、装置内をアルゴンで置換した。三口フラスコに脱水ジエチルエーテル20mLを収め、1,2-ジブロモエタン0.1mLを加えマグネシウムを活性化させた。次いで、滴下ロートから2-クロロブタン50.2g(0.543mоl)の脱水ジエチルエーテル700mL溶液を2時間かけて還流を持続させながら滴下し、さらに滴下終了後に室温で1.5時間撹拌し、sec-ブチルマグネシウムクロリド溶液を調製した。
【0106】
別に、磁気撹拌子、滴下ロート、ジムロート冷却管及び三方コックを備えた1000mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、反応容器内にトリクロロシラン66.6g(492mmоl)及び脱水ジエチルエーテル400mLを収めた。溶液を-10℃に冷却し、先に調製したsec-ブチルマグネシウムクロリド溶液を滴下ロートから3.5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し18時間撹拌した。反応混合物に脱水ジエチルエーテル150mL及びヘキサン300mLを加え、アルゴン雰囲気下で焼結ガラスフィルターを用いて固体析出物をろ別した。溶液を濃縮し、次いで常圧で蒸留(沸点123℃)することにより、sec-ブチルジクロロシランを無色液体として45.2g(収率58.5%)得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.03(t,3H,J=7.4Hz),1.11-1.21(m,4H),1.36-1.47(m,1H);13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm):12.06,12.72,23.31,25.72;29Si-NMR(79MHz,CDCl)δ(ppm):13.00。
【0107】
(実施例3)1,3-ジ-sec-ブチル-1,3-ジメトキシジシロキサン(例示化合物番号(1-7-1))の合成
【0108】
【化23】
【0109】
滴下ロート、ジムロート冷却管、磁気撹拌子及び三方コックを備えた300mLの三口フラスコをアルゴンで置換した。三口フラスコに脱水THF120mL、合成例1で得たsec-ブチルジクロロシラン9.98g(63.5mmol)を収めた。反応容器を-10度に冷却し、滴下ロートからピリジン10.0g(0.127mol)及びジエチルアミン4.66g(63.7mmol)の混合物を1.5時間かけて滴下し、その後室温に戻して2時間撹拌し、sec-ブチルクロロ(ジエチルアミノ)シランの溶液を調製した。
【0110】
再度反応容器を-10℃に冷却し、滴下ロートからメタノール2.08g(64.8mmol)の脱水THF10mL溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分撹拌し、さらに2時間加熱還流し、sec-ブチル(ジエチルアミノ)メトキシシラン(例示化合物番号(2-7-13))の溶液を調製した。
【0111】
上記混合物を室温に戻し、蒸留水0.575g(31.9mmol)を注射器から加え16時間室温で撹拌し、その後1時間加熱還流した。減圧下で溶液量が半分ほどになるまで濃縮し、セライトを敷いたガラスフィルター付シュレンク管を用いてアルゴン雰囲気下でろ過した。ろ液を再度減圧下で濃縮し、得られた粗生成物を減圧蒸留(沸点110℃/3.6kPa)することにより、1,3-ジ-sec-ブチル-1,3-ジメトキシジシロキサン(例示化合物番号(1-7-1))を無色液体として34.3g(sec-ブチルジクロロシランからの収率:47.1%)得た。この化合物はケイ素上の立体異性に基づく(1R,3R)及び(1S,3S)、並びに(1R,3S)の立体化学を有する分子の混合物であり、二種のジアステレオマー異性体の存在に基づく核磁気共鳴スペクトルが観測された。
【0112】
質量スペクトル(電子衝撃イオン化、70eV),m/z(%):193([M-Bu],53),151(25),137(100);H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.675~0.766(m,2H),0.95~1.00(m,12H),1.23~1.34(m,2H),1.54~1.65(m,2H),3.57(s,6H),4.49(s,2H);13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm):12.43,12.53,13.07,13.10,21.31,21.35,23.69,23.77,51.32,51.33;29Si-NMR(79MHz,CDCl)δ(ppm):-22.26,-22.20,-22.15;赤外スペクトル(neat,cm-1):2960,2933,2871,2856,2837,2127,1458,1379,1338,1296,1261,1211,1190,1161,1088,1066,1032,1001,968,953,931,829,764,706,667。
【0113】
(実施例4)1,3-ジ(tert-ブチル)-1,3-ジメトキシジシロキサン(例示化合物番号(1-8-1))の合成
【0114】
【化24】
【0115】
磁気撹拌子、滴下ロート、ジムロート冷却管及び三方コックを備えた200mLの3口フラスコをアルゴンで置換し、フラスコ内にtert-ブチルジクロロシラン5.22g(33.2mmol)、脱水ピリジン5.30g(67.1mmol)及び脱水THF40mLを収めた。フラスコを-10℃に冷却し、滴下ロートからジエチルアミン2.43g(33.2mol)のTHF30mL溶液を30分かけて滴下し、その後室温で16時間撹拌した。次いで反応混合物を30分加熱還流した。再度、反応容器を-10℃に冷却した後、メタノール1.06g(33.3mmol)のTHF20mL溶液を滴下ロートから30分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物を1時間加熱還流させた。再度反応容器を-10℃に冷却した後、滴下ロートから蒸留水0.301g(16.7mmol)のTHF20mL溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物を1時間加熱還流した。減圧下で、液量が半分程度になるまで溶液を濃縮し、アルゴン雰囲気下で焼結ガラスフィルターを用いて固形分をろ別した。ろ液を濃縮し、得られた粗生成物をクーゲルロール蒸留装置で減圧蒸留(蒸留温度95℃/6.0kPa)することにより、1,3-ジ(tert-ブチル)-1,3-ジメトキシジシロキサン(例示化合物番号(1-8-1))を無色液体として1.67g(tert-ブチルジクロロシランからの収率40.0%)得た。この化合物はケイ素上の立体異性に基づく(1R,3R)及び(1S,3S)、並びに(1R,3S)の立体化学を有する分子の混合物であり、二種のジアステレオマー異性体の存在に基づく核磁気共鳴スペクトルが観測された。
質量スペクトル(電子衝撃イオン化、70eV),m/z(%):249([M-H],0.3),219([M-OMe],0.2),193([M-Bu],100);H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.941(s,18H),3.59(s,6H),4.39(s,片方の幾何異性体のSi-H),4.49(s,もう一方の幾何異性体のSi-H);13C-NMR(101MHz,CDCl)δ(ppm):17.83,17.84,24.71,51.61,51.64;29Si-NMR(79MHz,CDCl)δ(ppm):-22.31,-22.26,-22.15;赤外スペクトル(neat,cm-1):2954,2931,2900,2860,2837,2125,1473,1464,1390,1363,1227,1190,1074,1005,941,883,827,762,702。
【0116】
(評価例1)1,3-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシジシロキサン(化合物(1-4-1))を用いた成膜
1,3-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシジシロキサン(化合物(1-4-1))を用い、酸素と共にPECVD法によりPENフィルム上に酸化ケイ素膜を成膜した。1,3-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシジシロキサン(化合物(1-4-1))の供給流量を13sccm、酸素供給流量を90sccm、成膜室圧力を40Pa、電源周波数13.56MHzの高周波電源(RF電源)の電力を900Wとし、2分間成膜を行った。また、1,3-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシジシロキサン(化合物(1-4-1))の供給流量に対する酸素の供給流量比(Y/X)は6.9であった。
【0117】
得られた酸化ケイ素膜の厚みは306nmであった。成膜速度は153nm/minであった。膜の組成は、Si=33atom%、O=67atom%であり、炭素濃度は1.0atm%未満であった。WVTRは6.4×10-3g/m・dayであった。
【0118】
酸化ケイ素膜とPENフィルムからなる積層膜の可視光線透過率は86.8%であった。
【0119】
1,3-ジイソプロピル-1,3-ジメトキシジシロキサン(化合物(1-4-1))を用い、酸素と共にPECVD法により成膜すると、酸化ケイ素膜厚が300nmと薄い膜であっても、WVTRが10-3g/m・dayオーダーと高いガスバリア性能を示し、かつ成膜速度も100nm/min以上と高くガスバリア膜として好適であった。
【0120】
(比較評価例1)tert-ブチルトリエトキシシランを用いた成膜
K. Lin、R. J. Wiles、C. B. Kelly、G. H. M.Davies、G. A. Molander、ACS Catalysis、2017年、7巻、5129~5133頁.に記載の方法を参考に合成したtert-ブチルトリエトキシシランを用い、酸素と共にPECVD法によりPENフィルム上に酸化ケイ素膜を成膜した。tert-ブチルトリエトキシシランの供給流量を80sccm、酸素供給流量を2100sccm、成膜室圧力を8Pa、電源周波数13.56MHzの高周波電源(RF電源)の電力を1000Wとし、14分間成膜を行った。また、tert-ブチルトリエトキシシランの供給流量に対する酸素の供給流量比Y/Xは26.3であった。
【0121】
得られた酸化ケイ素膜の膜厚は800nmであった。膜の組成は、Si=33atom%、O=67atom%であり、炭素濃度は1.0atm%未満であった。WVTR値は2.0×10-4g/m・dayであった。
【0122】
酸化ケイ素膜とPENフィルムからなる積層膜の可視光線透過率は88.2%であった。
【0123】
tert-ブチルトリエトキシシランを用い、酸素と共にPECVD法によりPENフィルム上に酸化ケイ素膜を成膜した。tert-ブチルトリエトキシシランの供給流量を80sccm、酸素供給流量を2100sccm、成膜室圧力を8Pa、電源周波数13.56MHzの高周波電源(RF電源)の電力を1000Wとし、7分間成膜を行った。また、tert-ブチルトリエトキシシランの供給流量に対する酸素の供給流量比Y/Xは26.3であった。
【0124】
得られた酸化ケイ素膜の膜厚は400nmであった。成膜速度は57nm/minであった。WVTR値は4.3×10-4g/m・dayであった。酸化ケイ素膜とPENフィルムからなる積層膜の可視光線透過率は88.5%であった。
【0125】
tert-ブチルトリエトキシシランを用い、酸素と共にPECVD法により成膜すると、酸化ケイ素膜厚が400nmと薄い膜であってもWVTRが10-3g/m・dayオーダー以下の10-4g/m・dayオーダーを示すが、成膜速度が57nm/minと低く、生産性に乏しい。
【0126】
(比較評価例2)ヘキサメチルジシロキサンを用いた成膜
ヘキサメチルジシロキサンを用い、酸素と共にPECVD法によりPENフィルム上に成膜した。ヘキサメチルジシロキサンの供給流量を80sccm、酸素供給流量を2100sccm、成膜室の圧力を6Pa、電源周波数13.56MHzの高周波電源(RF電源)の電力を1000Wとし、2分間成膜を行った。また、ヘキサメチルジシロキサンの供給流量に対する酸素の供給流量比Y/Xは26.3であった。
【0127】
得られた膜の厚みは200nmであった。成膜速度は117nm/minであった。WVTRは2.4×10-2g/m・dayであり、高い値を示した。
【0128】
ヘキサメチルジシロキサンを用い、酸素と共にPECVD法により成膜すると、酸化ケイ素膜厚が200nmと薄い膜の場合、成膜速度は117nm/minと高いものの、WVTRは2.4×10-2g/m・dayであり、高い値を示した。