(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152042
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20221004BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20221004BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20221004BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20221004BHJP
B24D 3/32 20060101ALI20221004BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B37/10
B24B41/06 L
B24D3/00 320A
B24D3/32
H01L21/304 622Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054661
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】守屋 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】韓 在光
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
3C063
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034DD10
3C034DD20
3C047FF08
3C047FF17
3C047FF19
3C047HH15
3C063AA02
3C063AB08
3C063BA02
3C063BB03
3C063BC03
3C063BH03
3C063EE01
3C063EE26
3C063FF30
3C158AA07
3C158AC05
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA26
3C158EB01
5F057AA21
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB16
5F057EB19
5F057FA36
(57)【要約】
【課題】保持面の高さの均一性の低下を抑制しつつ、保持面の外周部に付着したスラリーを除去する。
【解決手段】ウェーハを吸引保持可能な保持面を有するチャックテーブルと、チャックテーブルを所定の回転軸の周りに回転させる回転機構と、スピンドルを有し、保持面で吸引保持されるウェーハを研磨するための研磨パッドがスピンドルの下端部に装着される研磨ユニットと、保持面で吸引保持されたウェーハ及び研磨パッドの少なくとも一方にスラリーを供給するスラリー供給ユニットと、保持面を洗浄する洗浄ユニットと、を備え、洗浄ユニットは、保持面に接触して、保持面に付着したスラリーを除去するための洗浄砥石と、洗浄砥石が保持面に接触する洗浄位置と、洗浄砥石が保持面から離れた退避位置とに、洗浄砥石を位置付ける位置付けユニットと、を有し、洗浄砥石の硬度は、保持面の硬度よりも低い研磨装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを吸引保持可能な保持面を有するチャックテーブルと、
該チャックテーブルを所定の回転軸の周りに回転させる回転機構と、
スピンドルを有し、該保持面で吸引保持される該ウェーハを研磨するための研磨パッドが該スピンドルの下端部に装着される研磨ユニットと、
該保持面で吸引保持された該ウェーハ及び該研磨パッドの少なくとも一方にスラリーを供給するスラリー供給ユニットと、
該保持面を洗浄する洗浄ユニットと、
を備え、
該洗浄ユニットは、
該保持面に接触して、該保持面に付着した該スラリーを除去するための洗浄砥石と、
該洗浄砥石が該保持面に接触する洗浄位置と、該洗浄砥石が該保持面から離れた退避位置とに、該洗浄砥石を位置付ける位置付けユニットと、を有し、
該洗浄砥石の硬度は、該保持面の硬度よりも低いことを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
該位置付けユニットは、該洗浄砥石を該保持面へ押圧するための弾性部材を含むことを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
該位置付けユニットは、該保持面の洗浄時に、該洗浄砥石を該洗浄位置に位置付けて、該洗浄砥石を該保持面の外周部の一部に接触させることを特徴とする請求項1又は2に記載の研磨装置。
【請求項4】
該保持面は、セラミックスで構成されており、
該洗浄砥石の該硬度は、ビッカース硬さで680HV以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の研磨装置。
【請求項5】
該洗浄砥石は、砥粒と、該砥粒を固定する結合材と、を有するPVA砥石であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の研磨装置。
【請求項6】
該洗浄砥石は、酸化セリウム製の該砥粒を含むことを特徴とする請求項5に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを研磨する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン等の半導体製のウェーハから半導体デバイスを製造する工程において、ウェーハの一面を略平坦に加工する際に、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)が広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ウェーハの化学機械研磨は、通常、研磨装置を用いて行われる。研磨装置は、ウェーハを吸引保持する保持面を含む円板状のチャックテーブルを備える。チャックテーブルの下部にはモーター等の回転駆動源が設けられており、回転駆動源を動作させると、チャックテーブルは所定の回転軸の周りに回転する。
【0004】
チャックテーブルの上方には、研磨ユニットが配置されている。研磨ユニットは、スピンドルを備える。スピンドルの下端部には、円板状のマウントを介して円板状の研磨パッドが装着されている。スピンドルには、スラリー供給路が形成されており、マウント及び研磨パッドの各中央部には、スラリー供給路と重なる様に貫通孔が形成されている。
【0005】
ウェーハを研磨する際には、まず、チャックテーブルでウェーハの他面側を吸引保持した状態で、ウェーハの一面を上方に露出させる。そして、チャックテーブル及びスピンドルを所定の方向に回転させると共に、研磨パッドにスラリーを供給しながら研磨パッドをウェーハの一面に接触させる。ウェーハに供給されたスラリーは、遠心力によって保持面の外周部にまで到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スラリーが保持面の外周部に付着することで、保持面の外周部には高さのムラが生じる。これにより、次のウェーハを研磨する際に、ウェーハの外周部における平坦度が低下するという問題がある。
【0008】
保持面の外周部に付着したスラリーは、圧縮エアを利用して微粒化された洗浄水での洗浄(所謂、二流体洗浄)では除去するのが困難である。それゆえ、アルミナ等で形成され、レベリングストーンを用いてスラリーを除去することが考えられる。
【0009】
しかし、レベリングストーンは、通常、保持面の硬度以上の硬度を有するので、レベリングストーンを用いると、スラリーの除去にとどまらず、保持面も研磨される。それゆえ、保持面の高さの均一性が低下するという問題がある。
【0010】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、保持面の高さの均一性の低下を抑制しつつ、保持面の外周部に付着したスラリーを除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、ウェーハを吸引保持可能な保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルを所定の回転軸の周りに回転させる回転機構と、スピンドルを有し、該保持面で吸引保持される該ウェーハを研磨するための研磨パッドが該スピンドルの下端部に装着される研磨ユニットと、該保持面で吸引保持された該ウェーハ及び該研磨パッドの少なくとも一方にスラリーを供給するスラリー供給ユニットと、該保持面を洗浄する洗浄ユニットと、を備え、該洗浄ユニットは、該保持面に接触して、該保持面に付着した該スラリーを除去するための洗浄砥石と、該洗浄砥石が該保持面に接触する洗浄位置と、該洗浄砥石が該保持面から離れた退避位置とに、該洗浄砥石を位置付ける位置付けユニットと、を有し、該洗浄砥石の硬度は、該保持面の硬度よりも低い研磨装置が提供される。
【0012】
好ましくは、該位置付けユニットは、該洗浄砥石を該保持面へ押圧するための弾性部材を含む。また、好ましくは、該位置付けユニットは、該保持面の洗浄時に、該洗浄砥石を該洗浄位置に位置付けて、該洗浄砥石を該保持面の外周部の一部に接触させる。
【0013】
好ましくは、該保持面は、セラミックスで構成されており、該洗浄砥石の該硬度は、ビッカース硬さで680HV以下である。また、好ましくは、該洗浄砥石は、砥粒と、該砥粒を固定する結合材と、を有するPVA砥石である。また、好ましくは、該洗浄砥石は、酸化セリウム製の該砥粒を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る研磨装置は、洗浄ユニットを備える。洗浄ユニットは、保持面の硬度よりも低い硬度を有する洗浄砥石と、洗浄砥石を洗浄位置及び退避位置に位置付ける位置付けユニットと、を有する。洗浄砥石を保持面の外周部に接触させた状態でチャックテーブルを回転させれば、保持面の外周部に付着したスラリーを洗浄砥石で除去できる。
【0015】
しかも、洗浄砥石の硬度が保持面の硬度よりも低いので、洗浄砥石は、保持面そのものをほぼ研磨せずに、スラリーを除去できる。それゆえ、レベリングストーン等の研磨工具で保持面を研磨する場合に比べて、保持面の高さの均一性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】洗浄砥石を保持面に接触させた状態を示す図である。
【
図4】
図4(A)は洗浄工程において保持面の外周部に対して二流体洗浄を施して複数のウェーハを研磨した場合のウェーハの外周部の厚さを示すグラフであり、
図4(B)は洗浄工程において洗浄ユニットを用いて保持面の外周部を洗浄して複数のウェーハを研磨した場合のウェーハの外周部の厚さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、研磨装置2の要部の斜視図である。なお、
図1にそれぞれ示すX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに直交する。例えば、Z軸方向は鉛直方向であり、X-Y平面は水平面である。
【0018】
本実施形態の研磨装置2は、粗研削装置と、仕上げ研削装置とを、備える1つの加工装置(研磨・研削装置)の一部であるが、研磨装置2は、研削を行わず研磨を行う加工装置であってもよい。
【0019】
研磨装置2は、円板状のチャックテーブル4を有する。チャックテーブル4は、非多孔質のセラミックスで形成された円板状の枠体6を有する。本実施形態の枠体6は、非多孔質のアルミナで形成されており、ビッカース硬さ(Vickers hardness)1597HVを有する。
【0020】
枠体6には、円板状の凹部(不図示)が形成されており、この凹部には多孔質のセラミックスで形成された円板状の多孔質板8が固定されている。本実施形態の多孔質板8は、多孔質のアルミナで形成されており、ビッカース硬さ681HVを有する。
【0021】
本実施形態の多孔質板8の上面8aは、外周部に比べて中心部が僅かに突出する凸形状を有する。枠体6の上面6aと、多孔質板8の上面8aとは、略面一となっており、保持面4aを構成している。なお、研磨装置2が研削を行わず研磨を行う加工装置の場合、多孔質板8の上面8aは、略平坦であってもよい。
【0022】
枠体6には、所定の流路が形成されている。所定の流路の一端には、エジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されており、所定の流路の他端は、凹部に露出している。吸引源で発生された負圧は、所定の流路を介して多孔質板8の上面8aに伝達される。
【0023】
この負圧を利用して、保持面4aに配置されたウェーハ11は、保持面4aで吸引保持される。ウェーハ11は、例えば、シリコン(Si)で形成されているが、ウェーハ11の材料、形状、構造、大きさ等に制限はない。
【0024】
例えば、ウェーハ11は、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)などから成るシリコン以外の半導体材料等で形成されてもよい。ウェーハ11の表面11aには、表面11a側へのダメージを低減するために、ウェーハ11と略同径であり樹脂製の保護テープ13が貼り付けられる。
【0025】
チャックテーブル4の下部には、リング状の回転台10aが固定されている。回転台10aの上部には、それぞれエアシリンダ、ねじ式の可動軸等の複数の可動部材(不図示)が、回転台10aの周方向に沿って設けられている。
【0026】
複数の可動部材は、それぞれチャックテーブル4を支持しており、可動部材の伸縮によりチャックテーブル4の傾きが調整される。例えば、保持面4aの一部がX-Y平面に対して略水平になるように、チャックテーブル4の傾きが調整される。X-Y平面に対して略水平となった保持面4aの一部は、後述する研磨パッド20で覆われる。
【0027】
回転台10aは、回転可能な態様で固定台10bに支持されている。回転台10aの外周側面には、従動ギア10cが形成されており、この従動ギア10cには、モーター10dに連結された主動ギア10eが噛み合っている。
【0028】
主動ギア10eを回転させると、チャックテーブル4は、所定の回転軸10fの周りに、10rpmから300rpm程度で回転する。回転台10a、固定台10b、従動ギア10c、モーター10d、主動ギア10e等は、チャックテーブル4を回転させる回転機構10を構成する。
【0029】
チャックテーブル4の上方には、研磨ユニット12が配置されている。研磨ユニット12は、円筒状のスピンドルハウジング14を有する。スピンドルハウジング14には円柱状のスピンドル16の一部が回転可能に収容されている。
【0030】
スピンドル16は、Z軸方向に沿って配置されており、スピンドル16の上端部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が設けられている。スピンドル16の下端部は、スピンドルハウジング14よりも下方に突出している。
【0031】
スピンドル16の下端部には、円板状のマウント18を介して、円板状の研磨パッド20が装着されている。研磨パッド20は、円板状の基部を含む。基部の一面には、ウェーハ11に接触するパッド部が固定されている。
【0032】
本実施形態のパッド部は、固定砥粒を有さず、所定の材料で形成されている。所定の材料は、例えば、発泡硬質ポリウレタン等の発泡硬質材料や、ポリエステル製の不織布にウレタンを含侵させた不織布である。
【0033】
マウント18及び研磨パッド20は、略同径であり、各円の中心を貫通する様に貫通孔18a、20aが形成されている。各貫通孔18a、20aには、スピンドル16に形成されているスラリー22aの流路16aが接続している。
【0034】
スラリー22aは、例えば、シリカ(酸化シリコン、SiO2)製の砥粒を含むアルカリ性水溶液であるが、砥粒の材料は、GC(グリーンカーボン)、ダイヤモンド、アルミナ(酸化アルミニウム、Al2O3)、セリア(酸化セリウム、CeO2)、cBN(cubic boron nitride)、炭化ケイ素(SiC)であってもよい。また、アルカリ性水溶液に代えて、酸性水溶液が用いられることもある。
【0035】
スラリー22aは、スラリー供給ユニット22から流路16aを経て、貫通孔18a、20aへ供給される。スラリー供給ユニット22は、スラリー22aが貯留された貯留槽(不図示)と、貯留槽から流路16aへスラリー22aを供給するためのポンプ(不図示)と、を含む。
【0036】
スピンドルハウジング14の外周部には、保持部材24が固定されている。保持部材24は、Z軸移動板26に固定されている。Z軸移動板26は、Z軸方向に略平行に配置された一対のガイドレール28にスライド可能に取り付けられている。
【0037】
一対のガイドレール28の間には、Z軸方向に略平行にボールねじ30が配置されている。ボールねじ30は、Z軸移動板26に設けられたナット部(不図示)に回転可能に連結されている。ボールねじ30の上端部には、パルスモーター32が連結されている。
【0038】
パルスモーター32でボールねじ30を回転させれば、Z軸移動板26はZ軸方向に沿って移動する。保持部材24、Z軸移動板26、一対のガイドレール28、ボールねじ30、パルスモーター32等は、研磨ユニット12の高さ位置を調整するZ軸移動ユニット34を構成する。
【0039】
Z軸移動ユニット34は、ボールねじ式のX軸移動機構(不図示)によりX軸方向に移動可能な移動ブロック2aに固定されている。移動ブロック2aに対してX軸方向の一方側には、基台(不図示)に固定された支持柱2bが設けられている。
【0040】
支持柱2bには、保持面4aを洗浄するための洗浄ユニット40が設けられている。洗浄ユニット40は、チャックテーブル4の上方に配置されている。洗浄ユニット40は、位置付けユニット42を有する。
【0041】
位置付けユニット42は、支持柱2bに対して位置が固定された一対のガイドレール44を有する。一対のガイドレール44には、Z軸移動板46がスライド可能に取り付けられている。
【0042】
Z軸移動板46には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のガイドレール44の間においてZ軸方向に略平行に配置されたボールねじ48が、回転可能に連結されている。
【0043】
ボールねじ48の上端部には、パルスモーター50が連結されている。パルスモーター50でボールねじ48を回転させれば、Z軸移動板46はZ軸方向に沿って移動する。Z軸移動板46の表面(Y軸方向の一方)側には、洗浄砥石ホルダー52が固定されている。
【0044】
洗浄砥石ホルダー52には、保持面4aの硬度よりも低い硬度を有する直方体状(例えば、縦24mm、横46mm、高さ28mm)の洗浄砥石54が固定されている。洗浄砥石54は、例えば、ビッカース硬さで680HV以下の硬度を有する。
【0045】
本実施形態の洗浄砥石54は、PVA(polyvinyl alcohol)を結合材に利用して酸化セリウム製の砥粒(砥粒の粒度を示す番手が#3000)が固定されたPVA砥石である。PVA砥石は、結合材中に連続的に形成されている気孔に起因して弾性を有し、例えば34HVのビッカース硬さを有する。
【0046】
但し、洗浄砥石54は、PVA砥石のみに限定されるものではない。洗浄砥石54は、ビッカース硬さが680HV以下であれば、セリア、シリカ、アルミナ等の砥粒が、加硫ゴムにより固定されたゴム砥石であってもよい。
【0047】
この様に、保持面4aに比べて十分に柔らかい洗浄砥石54を用いて保持面4aを接触させれば、保持面4aの高さの均一性を変えることなく、保持面4aの外周部に付着したスラリー22aを除去できる。
【0048】
しかし、ビッカース硬さが680HV以下であっても、家庭用に市販されているウレタンスポンジ等のスポンジでは柔らかすぎてスラリー22aを除去できない。それゆえ、洗浄砥石54のビッカース硬さは、10HV以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30HV以上とする方がよい。
【0049】
また、ビッカース硬さが680HV以下であっても、保持面4aの研磨量をできるだけ低減するために、洗浄砥石54のビッカース硬さは、600HV以下、より好ましくは300HV以下、更に好ましくは100HV以下とする方がよい。
【0050】
ここで、
図2を参照し、洗浄砥石ホルダー52の構造について更に詳しく説明する。
図2は、洗浄砥石ホルダー52の一部断面側面図である。洗浄砥石ホルダー52は、側面視でL型のブラケット56を有する。
【0051】
ブラケット56は、ボルト58によりZ軸移動板46の表面側に固定される第1の直線部を有する。第1の直線部の一端部には、第1の直線部に直交する態様で第2の直線部が設けられている。Z軸移動板46に固定されたブラケット56において、第2の直線部の下面には、ボルト(不図示)により上板60が固定されている。
【0052】
上板60には、貫通孔60aが形成されており、この貫通孔60aには、円柱状の軸部62が、スライド可能に挿入されている。軸部62の上端部には、貫通孔60aよりも大きな径を有する円板状の頭部62aが固定されている。
【0053】
頭部62aは、上板60よりも上方に配置されているので、軸部62は、上板60に支持されている。軸部62の下端部近傍には、軸部62よりも大きな径を有する円板状の支持部62bが固定されている。
【0054】
支持部62bの上面62cと、上板60の下面60bとの間において、軸部62の外周部には、金属製の圧縮コイルばね(弾性部材)64が設けられている。本実施形態では、圧縮コイルばね64を用いるが、復元力を発揮できれば、他の形態のばね、ゴム等を用いてもよい。
【0055】
支持部62bの下面には、下板66が固定されている。下板66のY軸方向の一方側には、第1の板部68aの上端部が固定されている。また、第1の板部68aに対して、Y軸方向の他方側には、複数のボルト70を介して第2の板部68bが固定されている。
【0056】
第1の板部68a及び第2の板部68bは、上述の洗浄砥石54をY軸方向で挟持している。洗浄砥石54は、その上部が下板66の下面に接し、その下部が第1の板部68a及び第2の板部68bよりも下方に突出する態様で、下板66、第1の板部68a及び第2の板部68bにより固定されている。
【0057】
洗浄砥石54のX-Y平面方向の位置は、保持面4aの外周部の一箇所に対応している。位置付けユニット42で、洗浄砥石54をZ軸方向に沿って移動させることにより、洗浄砥石54は、保持面4aに接触する洗浄位置(
図3参照)と、保持面4aから離れた退避位置(
図1参照)とに、位置付けられる。
【0058】
なお、
図1に示す様に、洗浄砥石ホルダー52の下部には、洗浄砥石54と保持面4aとの接触領域に、純水等の洗浄水を供給するノズル72が設けられている。ノズル72には、タンク、ポンプ等を有する洗浄水供給ユニット(不図示)が所定の流路を介して接続されている。
【0059】
ノズル72を含む洗浄ユニット40の動作は、制御ユニット(不図示)により制御される。制御ユニットは、回転機構10、スピンドルハウジング14に設けられた回転駆動源、スラリー供給ユニット22、Z軸移動ユニット34等の動作も制御する。
【0060】
制御ユニットは、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ(処理装置)と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0061】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニットの機能が実現される。次に、
図2及び
図3を参照して、ウェーハ11の研磨、保持面4aの外周部に付着したスラリー22aの除去等について説明する。
【0062】
まず、移動ブロック2aで研磨ユニット12を保持面4aの直上から退避させ、且つ、洗浄砥石54を退避位置に移動させた状態で、不図示の搬送ユニットにより、ウェーハ11の裏面11bが上方に露出する様に、ウェーハ11を保持面4aへ搬入する(搬入工程)。
【0063】
搬送工程の後、保持面4aでウェーハ11の表面11a側を吸引保持する(保持工程)。保持工程の後、研磨ユニット12の一部が保持面4aを覆う様に、移動ブロック2aで研磨ユニット12を移動させる。
【0064】
その後、チャックテーブル4及び研磨パッド20を所定の方向に回転させると共に研磨ユニット12を所定の研磨送り速度で下降させながら、ウェーハ11及び研磨パッド20の少なくとも一方に、スラリー供給ユニット22からスラリー22aを供給する。
【0065】
この様にして、所定の押圧力でウェーハ11を押圧しながら研磨パッド20で裏面11bを研磨する(研磨工程)。研磨工程により所定の厚さまで薄化されたウェーハ11は、不図示の搬送ユニットにより保持面4aから搬出される(搬出工程)。
【0066】
搬出工程の後、研磨工程で供給されたスラリー22aが遠心力等により移動することで、保持面4aの外周部にはスラリー22aが付着する(
図3参照)。スラリー22aは、主にウェーハ11で覆われていない枠体6の上面6aに付着するが、多孔質板8の上面8aに生じている負圧等に起因して上面8aの外周部に付着することもある。
【0067】
本実施形態では、洗浄ユニット40を用いて、保持面4aの外周部に付着したスラリー22aを除去する(洗浄工程)。洗浄時には、保持面4aの外周部に、ノズル72から所定の流量(例えば、2(l/min))で洗浄水を供給しながら、チャックテーブル4を所定の速度で回転させる。
【0068】
次いで、位置付けユニット42で洗浄砥石54を降下させ、洗浄砥石54を洗浄位置に移動させる。この様にして、下面54aは、枠体6の上面6aの一部と、多孔質板8の上面8aの一部と、に接触する(
図3参照)。
図3は、洗浄砥石54を保持面4aに接触させた状態を示す図である。
【0069】
このとき、洗浄砥石54の下面54a(
図2参照)が、保持面4aよりも例えば6mmだけ低くなる様に、洗浄砥石ホルダー52のZ軸方向の位置が調整される。この様にして、圧縮コイルばね64からの復元力により、洗浄砥石54は、一定の圧力で保持面4aへ押圧される。
【0070】
洗浄工程では、洗浄砥石54でスラリー22aを削り取ると共に、遠心力により保持面4aの径方向の外側に流れる洗浄水を利用して、削り取られたスラリー22aを保持面4aの外へ落とす。この様にして、保持面4aの外周部に付着したスラリー22aを略全て除去できる。
【0071】
本実施形態では、洗浄砥石54の硬度が保持面4aの硬度よりも低いので、洗浄砥石54は、保持面4aの高さの均一性を変えることなく、スラリー22aを除去できる。それゆえ、レベリングストーン等の研磨工具で保持面4aを研磨する場合に比べて、保持面4aの高さの均一性の低下を抑制できる。
【0072】
洗浄工程の後、搬入工程に戻り、2枚目のウェーハ11を研磨する。この様にして、ウェーハ11の研磨と、保持面4aの洗浄と、を交互に行う。次に、複数のウェーハ11を1枚ずつ研磨装置2で研磨した場合の実験結果について説明する。
【0073】
図4(A)は、洗浄工程において保持面4aの外周部に対して二流体洗浄を施して(即ち、圧縮エアを利用して微粒化された洗浄水で保持面4aを洗浄して)複数のウェーハ11を研磨した場合における、ウェーハ11の外周部の厚さを示すグラフである。
【0074】
これに対して、
図4(B)は、洗浄工程において上述の洗浄ユニット40を用いて保持面4aの外周部を洗浄して複数のウェーハ11を研磨した場合における、ウェーハ11の外周部の厚さを示すグラフである。
【0075】
図4(A)及び
図4(B)において、横軸は、ウェーハ11の半径方向の位置(mm)を示し、縦軸は、ウェーハ11の厚さ(μm)を示す。また、白丸は1枚目のウェーハ11を示し、ドット付きの丸は50枚目のウェーハ11を示し、黒丸は100枚目のウェーハ11を示す。
【0076】
図4(A)に示す実験では、1枚目のウェーハ11を研磨した後、保持面4aの外周部に対して二流体を施し、続いて、2枚目のウェーハ11を研磨した。その後、保持面4aの外周部に対して二流体洗浄を施し、3枚目のウェーハ11を研磨した。この様にして、100枚のウェーハ11を研磨した。
【0077】
また、
図4(B)に示す実験では、1枚目のウェーハ11を研磨した後、保持面4aの外周部を洗浄砥石54で洗浄し、続いて、2枚目のウェーハ11を研磨した後、保持面4aの外周部を洗浄砥石54で洗浄した。この様にして、100枚のウェーハ11を研磨した。
【0078】
図4(A)に示す様に、保持面4aの外周部に対して二流体を施す場合、保持面4aの外周部に付着したスラリー22aは十分には除去されない。それゆえ、残留したスラリー22aによりウェーハ11の外周部が持ち上げられることで、ウェーハ11の外周部の研磨量が、中央部の研磨量に比べて多くなった。
【0079】
従って、ウェーハ11の外周部は、ウェーハ11の中央部に比べて薄くなった。特に、100枚目のウェーハ11において明らかな様に、ウェーハ11の外周部では、ウェーハ11の平坦度が悪化した。
【0080】
これに対して、
図4(B)に示す様に、洗浄工程を行う場合、100枚目のウェーハ11においても、ウェーハ11の平坦度は悪化しなかった。この様に、洗浄砥石54を用いて保持面4aの外周部に付着したスラリー22aを除去することで、保持面4aの高さの均一性の低下を抑制できることが明らかとなった。
【0081】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0082】
2:研磨装置、2a:移動ブロック、2b:支持柱
4:チャックテーブル、4a:保持面
6:枠体、6a:上面、8:多孔質板、8a:上面
10:回転機構、10a:回転台、10b:固定台、10c:従動ギア
10d:モーター、10e:主動ギア、10f:回転軸
11:ウェーハ、11a:表面、11b:裏面、13:保護テープ
12:研磨ユニット、14:スピンドルハウジング
16:スピンドル、16a:流路、18:マウント、18a:貫通孔
20:研磨パッド、20a:貫通孔、22:スラリー供給ユニット、22a:スラリー
24:保持部材、26:Z軸移動板、28:ガイドレール、30:ボールねじ
32:パルスモーター、34:Z軸移動ユニット
40:洗浄ユニット、42:位置付けユニット
44:ガイドレール、46:Z軸移動板、48:ボールねじ、50:パルスモーター
52:洗浄砥石ホルダー、54:洗浄砥石、54a:下面
56:ブラケット、58:ボルト、60:上板、60a:貫通孔、60b:下面
62:軸部、62a:頭部、62b: 支持部、62c:上面
64:圧縮コイルばね、66:下板、68a:第1の板部、68b:第2の板部
70:ボルト、72:ノズル