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特開2022-152092ポリチオフェンと有機溶媒からなる組成物、及びその用途
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  • 特開-ポリチオフェンと有機溶媒からなる組成物、及びその用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152092
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ポリチオフェンと有機溶媒からなる組成物、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20221004BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C08L65/00
C08G61/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054736
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 定快
【テーマコード(参考)】
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4J002CE001
4J002FD140
4J002FD170
4J002FD310
4J002GQ00
4J002GQ02
4J002GQ05
4J002HA05
4J032BA04
4J032BB03
4J032CG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】導電性に優れたクラックの無いミクロンレベルの塗膜を形成できる、ポリチオフェンと有機溶媒の組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表される構造単位を含むポリチオフェンと、標準沸点が30~150℃の溶媒(A)と、標準沸点が150~300℃の溶媒(B)からなる組成物であって、ポリチオフェンの含有量が0.01~25重量%であり、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)の含有量が50~99重量%であり、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)の含有量が0.5~30重量%であることを特徴とする組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)及び(2)
【化1】
【化2】
{上記一般式(1)及び(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Mは、[NH(R)(Rで表される有機アンモニウムイオン、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは、炭素数7~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基を表す。Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。mは、1~6の整数を表す。}
で表される構造単位を含むポリチオフェンと、標準沸点が30~150℃の溶媒(A)と、標準沸点が150~300℃の溶媒(B)からなる組成物であって、前記のポリチオフェンの含有量が0.01~25重量%であり、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)の含有量が50~99重量%であり、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)の含有量が0.5~30重量%であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記のmが、2又は3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記のRが、メチル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種の単溶媒又は2種以上の混合溶媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)が、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、及びグリセリンからなる群より選ばれる1種の単溶媒又は2種以上の混合溶媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
導電性高分子膜の製造方法であって、請求項1に記載の組成物を含む導電性高分子組成物を支持体上に塗布し、次いで、40℃以上に加熱して主に前記の溶媒(A)を蒸発させ、次いで加熱温度を上昇させて前記の溶媒(B)を蒸発させることを特徴とする膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒に分散又は可溶なポリチオフェンと有機溶媒からなる組成物、及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリチオフェン系自己ドープ型導電性高分子は、高い導電性を有することから固体電解コンデンサ、帯電防止、太陽電池用正孔注入剤、透明電極等の広い分野で検討されている。これらの用途におけるポリチオフェン系自己ドープ型導電性高分子溶液の溶媒として、有機溶媒溶液と用いる例が報告されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-210356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に具体的に開示された導電性高分子の有機溶媒溶液を用いてミクロン単位の厚みの膜の成膜を試みたところ、ひび割れや、斑模様が生じやすく、歩留まりの良い成膜が困難であることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下に示す組成物を用いることによって、ひび割れや斑模様が生じにくいミクロン単位の膜を歩留まり良く製膜できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]に存する。
[1] 少なくとも下記一般式(1)及び(2)
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】
{上記一般式(1)及び(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Mは、[NH(R)(Rで表される有機アンモニウムイオン、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンを表す。Rは、炭素数7~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基を表す。Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基を表す。mは、1~6の整数を表す。}
で表される構造単位を含むポリチオフェンと、標準沸点が30~150℃の溶媒(A)と、標準沸点が150~300℃の溶媒(B)からなる組成物であって、前記のポリチオフェンの含有量が0.01~25重量%であり、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)の含有量が50~99重量%であり、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)の含有量が0.5~30重量%であることを特徴とする組成物。
[2] 前記のmが、2又は3である、[1]に記載の組成物。
[3] 前記のRが、メチル基である、[1]に記載の組成物。
[4] 前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種の単溶媒又は2種以上の混合溶媒である、[1]に記載の組成物。
[5] 前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)が、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、及びグリセリンからなる群より選ばれる1種の単溶媒又は2種以上の混合溶媒である、[1]に記載の組成物。
[6] 導電性高分子膜の製造方法であって、[1]に記載の組成物を含む導電性高分子組成物を支持体上に塗布し、次いで、40℃以上に加熱して主に前記の溶媒(A)を蒸発させ、次いで加熱温度を上昇させて前記の溶媒(B)を蒸発させることを特徴とする膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い導電性を有する、ひび割れや斑の無いミクロンレベルの塗膜を、歩留まり良く製膜することができる。
【0011】
上記のポリチオフェンを加熱して成膜する際に、沸点の異なる溶媒を少なくとも2段階のステップワイズで蒸発させることによって、ポリチオフェンの偏析や急速な固形化が抑制されるという作用が生じ、当該作用に基づいて上記効果が発現されるものと推測される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明は、少なくとも上記の一般式(1)及び(2)で表される構造単位を含むポリチオフェンと、標準沸点が30~150℃の溶媒(A)と、標準沸点が150~300℃の溶媒(B)からなる組成物であって、前記のポリチオフェンの含有量が0.01~25重量%であり、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)の含有量が50~99重量%であり、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)の含有量が0.5~30重量%であることを特徴とする組成物である。
【0014】
本発明のポリチオフェンは、上記一般式(1)及び(2)で表される構造単位で表される構造単位を含有するポリチオフェンである。
【0015】
上記一般式(2)で表される構造単位は、上記一般式(1)で表される構造単位のドーピング状態を表し、そのドーピング状態は、上記一般式(1)で表される構造単位中のスルホ基又はスルホナート基がp型ドーパントとして作用することにより発現する。
【0016】
上記一般式(1)又は(2)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン素原子を表す。
【0017】
前記の炭素数1~6のアルキル基(なお、炭素数3~6のアルキル基については、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0018】
前記のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等が挙げられる。
【0019】
これらのうち、置換基Rについては、成膜性の点で、水素原子、メチル基、エチル基、フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であることが好ましく、水素原子、メチル基、又はフッ素原子であることがより好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0020】
一般式(1)において、Mは、[NH(R)(Rで表される有機アンモニウムイオン、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンを表す。
【0021】
前記の[NH(R)(Rで表される有機アンモニウムイオンとしては、[N(R)(R]で表される有機アミン化合物にヒドロン(H)が付加してカチオン種(共役酸)になったものが示される。当該[N(R)(R]で表される有機アミン化合物については、スルホン酸基と反応して[NH(R)(Rで表される有機アンモニウムイオン(共役酸)を形成する。
【0022】
前記の置換基Rは、炭素数7~20のアルキル基、又は置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基を表す。
【0023】
炭素数7~20のアルキル基(直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)としては、特に限定するものではないが、例えば、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、メチルヘプチル基、エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、エチルオクチル基、ブチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、オクチルノニル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、又はオクチルドデカン基等が挙げられる。
【0024】
置換基を有する総炭素数7~20のアルキル基(直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、又はヒドロキシ基を有する総炭素数7~20のアルキル基(直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)が挙げられ、具体的には、8-ヒドロキシオクチル基、9-アミノノニル基等が例示される。
【0025】
これらのうち、置換基Rとしては、入手容易性の観点から、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、又はn-ドデシル基が好ましい。
【0026】
前記の置換基Rは、各々独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基(なお、炭素数3~20のアルキル基については、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)、又は置換基を有する総炭素数1~20のアルキル基(なお、炭素数3~20のアルキル基については、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)を表す。
【0027】
炭素数1~20のアルキル基(なお、炭素数3~20のアルキル基については、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、メチルヘプチル基、エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、エチルオクチル基、ブチルヘキシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、オクチルノニル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、オクチルドデカン基等が挙げられる。
【0028】
置換基を有する炭素数1~20のアルキル基(なお、炭素数3~20のアルキル基については、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、又はヒドロキシ基を有する総炭素数1~20のアルキル基(なお、炭素数3~20のアルキル基については、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、2-ヒドロキシエチル基、8-ヒドロキシオクチル基、9-アミノノニル基等が例示される。
【0029】
これらのうち、置換基Rとしては、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、n-ヘプチル基、メチルヘキシル基、n-オクチル基、メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、又はn-ドデシル基が好ましい。
【0030】
前記の[N(R)(R]で表される有機アミン化合物としては、特に限定するものではないが、n-ヘプチルアミン、ジ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、N-メチル-ジ-n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、ジ-n-ノニルアミン、トリ-n-ノニルアミン、n-デシルアミン、ジ-n-デシルアミン、トリ-n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、ジ-n-ドデシルアミン、トリ-n-ドデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ジ-n-ヘキサデシルアミン、トリ-n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、ジ-n-オクタデシルアミン、トリ-n-オクタデシルアミン、n-イコシルアミン、ジ-n-イコシルアミン、トリ-n-イコシルアミン、N,N-ジメチル-n-ヘプチルアミン、N,N-ジメチル-n-オクチルアミン、N,N-ジメチル-n-ノニルアミン、N,N-ジメチル-n-デシルアミン、N,N-ジメチル-n-ドデシルアミン、N,N-ジメチル-n-ヘキサデシルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジメチル-n-イコシルアミン、N,N-ジエチル-n-ヘプチルアミン、N,N-ジエチル-n-オクチルアミン、N,N-ジエチル-n-ノニルアミン、N,N-ジエチル-n-デシルアミン、N,N-ジエチル-n-ドデシルアミン、N,N-ジエチル-n-ヘキサデシルアミン、N,N-ジエチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジエチル-n-イコシルアミン、N-メチルヘキシルアミン、2-オクチルアミン、N,N-ジメチル-2-エチルヘキサン-1-アミン、N,N-ジイソプロピル-2-エチルヘキサン-1-アミン、6-メチル-1-ヘプチルアミン、ジ(6-メチル-1-ヘプチル)アミン、トリス(6-メチル-1-ヘプチル)アミン、2-エチルヘキシルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、トリス(2-エチルヘキシル)アミン、メチルオクチルアミン、メチルノニルアミン、メチルドデシルアミン、メチルヘキサデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、エチルヘプチルアミン、エチルオクチルアミン、エチルノニルアミン、エチルドデシルアミン、エチルヘキサデシルアミン、エチルオクタデシルアミン、7-ヒドロキシヘプチルアミン、8-ヒドロキシオクチルアミン、9-ヒドロキシノニルアミン、10-ヒドロキシデシルアミン、12-ヒドロキシドデシルアミン、16-ヒドロキシヘキサデシルアミン、18-ヒドロキシオクタデシルアミン、20-ヒドロキシイコシルアミン、7-アミノヘプチルアミン、8-アミノオクチルアミン、9-アミノノニルアミン、10-アミノデシルアミン、12-アミノドデシルアミン、16-アミノヘキサデシルアミン、18-アミノオクタデシルアミン、又は20-アミノイコシルアミン等が挙げられる。
【0031】
前記の[NH(R)(Rで表される有機アンモニウムイオンとしては、特に限定するものではないが、n-ヘプチルアンモニウム、ジ-n-ヘプチルアンモニウム、トリ-n-ヘプチルアンモニウム、n-オクチルアンモニウム、ジ-n-オクチルアンモニウム、トリ-n-オクチルアンモニウム、N-メチル-ジ-n-オクチルアンモニウム、n-ノニルアンモニウム、ジ-n-ノニルアンモニウム、トリ-n-ノニルアンモニウム、n-デシルアンモニウム、ジ-n-デシルアンモニウム、トリ-n-デシルアンモニウム、n-ドデシルアンモニウム、ジ-n-ドデシルアンモニウム、トリ-n-ドデシルアンモニウム、n-ヘキサデシルアンモニウム、ジ-n-ヘキサデシルアンモニウム、トリ-n-ヘキサデシルアンモニウム、n-オクタデシルアンモニウム、ジ-n-オクタデシルアンモニウム、トリ-n-オクタデシルアンモニウム、n-イコシルアンモニウム、ジ-n-イコシルアンモニウム、トリ-n-イコシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-ヘプチルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-オクチルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-ノニルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-デシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-ドデシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-ヘキサデシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアンモニウム、N,N-ジメチル-n-イコシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-ヘプチルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-オクチルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-ノニルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-デシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-ドデシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-ヘキサデシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-オクタデシルアンモニウム、N,N-ジエチル-n-イコシルアンモニウム、N-メチルヘキシルアンモニウム、2-オクチルアンモニウム、N,N-ジメチル-2-エチルヘキサン-1-アンモニウム、N,N-ジイソプロピル-2-エチルヘキサン-1-アンモニウム、6-メチル-1-ヘプチルアンモニウム、ジ(6-メチル-1-ヘプチル)アンモニウム、トリス(6-メチル-1-ヘプチル)アンモニウム、2-エチルヘキシルアンモニウム、ジ(2-エチルヘキシル)アンモニウム、トリス(2-エチルヘキシル)アンモニウム、メチルオクチルアンモニウム、メチルノニルアンモニウム、メチルドデシルアンモニウム、メチルヘキサデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウム、エチルヘプチルアンモニウム、エチルオクチルアンモニウム、エチルノニルアンモニウム、エチルドデシルアンモニウム、エチルヘキサデシルアンモニウム、エチルオクタデシルアンモニウム、7-ヒドロキシヘプチルアンモニウム、8-ヒドロキシオクチルアンモニウム、9-ヒドロキシノニルアンモニウム、10-ヒドロキシデシルアンモニウム、12-ヒドロキシドデシルアンモニウム、16-ヒドロキシヘキサデシルアンモニウム、18-ヒドロキシオクタデシルアンモニウム、20-ヒドロキシイコシルアンモニウム、7-アミノヘプチルアンモニウム、8-アミノオクチルアンモニウム、9-アミノノニルアンモニウム、10-アミノデシルアンモニウム、12-アミノドデシルアンモニウム、16-アミノヘキサデシルアンモニウム、18-アミノオクタデシルアンモニウム、又は20-アミノイコシルアンモニウム等が挙げられる。
【0032】
前記の[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンとしては、特に限定するものではないが、テトラヘプチルアンモニウムカチオン、テトラオクチルアンモニウムカチオン、テトラノニルアンモニウムカチオン、テトラデシルアンモニウムカチオン、テトラドデシルアンモニウムカチオン、テトラヘキサデシルアンモニウムカチオン、テトラオクタデシルアンモニウムカチオン、テトライコシルアンモニウムカチオン、又はテトラエチルヘキシルアンモニウムカチオン等を挙げられる。
【0033】
前記の[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオンについては、[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオン化合物と、上記一般式(1)及び(2)で表される構造単位で表される構造単位を含有するポリチオフェンを反応させることによって生成される。
【0034】
前記のMは、アニオンを表し、特に限定するものではないが、例えば、ヒドロキシイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、スルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、又はトルエンスルホン酸イオンなどを挙げることができる。
【0035】
前記の[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルプロピルアンモニウムクロリド、テトラノルマルブチルアンモニウムクロリド、テトラノルマルヘキシルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラノルマルプロピルアンモニウムブロミド、テトラノルマルブチルアンモニウムブロミド、テトラノルマルヘキシルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラノルマルプロピルアンモニウムヨージド、テトラノルマルブチルアンモニウムヨージド、テトラノルマルヘキシルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラノルマルプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラノルマルブチルアンモニウムヒドロキシド、又はテトラノルマルヘキシルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)又は(2)中、mは、1~6の整数を表し、好ましくは、mは、1~4の整数であり、より好ましくは、mは、2~3である。
【0037】
本発明のポリチオフェンの原料となるポリマーは、少なくとも下記一般式(3)及び(4)で表される構造単位を含むポリチオフェンを、前記の[N(R)(R]で表される有機アミン化合物、又は[N(R)(Rで表される第4級アンモニウムカチオン化合物と反応させることによって製造することができる。また、その反応の後、必要に応じて、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、イオン交換樹脂処理等の操作を組み合わせることが好ましい。
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
[上記一般式(3)及び(4)中、Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。Mは、水素イオン、又はアルカリ金属イオンを表す。mは、1~6の整数を表す。]
前記の炭素数1~6のアルキル基(なお、炭素数3~6のアルキル基については、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。)としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、2-エチルブチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
前記のアルカリ金属イオンとしては、例えば、Liイオン、Naイオン、又はKイオンが好ましい。
【0042】
上記一般式(3)又は(4)で表されるポリチオフェンとしては、特に限定するものではないが、具体的には、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ポリマー、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-ヘキシル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソプロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソブチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-イソペンチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-フルオロ-1-プロパンスルホン酸ナトリウムポリマー、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸カリウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウムポリマー、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸アンモニウムポリマー、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウムポリマー、4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-ブタンスルホン酸トリエチルアンモニウムポリマー又は3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウムポリマー等が挙げられる。
【0043】
前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1,4-ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、1-メトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、又は水等が挙げられる。
【0044】
これらの溶媒は、単独で用いてもよく、あるいは2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0045】
前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)については、成膜性に優れる点で、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種の単溶媒又は2種以上の混合溶媒であることが好ましく、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種の単溶媒又は2種以上の混合溶媒であることがより好ましい。
【0046】
前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)としては、特に限定するものではないが、例えば、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ-ブチロラクトン、又はグリセリン等が挙げられる。
【0047】
これらの溶媒は、単独で用いてもよく、あるいは2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0048】
前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)については、成膜性に優れる点で、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、及びグリセリンからなる群より選ばれる1種の単溶媒又は2種以上の混合溶媒であることが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及びグリセリンからなる群より選ばれる1種の単溶媒又は2種以上の混合溶媒であることがより好ましい。
【0049】
本発明の組成物については、
前記のポリチオフェンの含有量が0.01~25重量%であり、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)の含有量が50~99重量%であり、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)の含有量が0.5~30重量%であることを特徴とするが、成膜性に優れる点で、
前記のポリチオフェンの含有量が0.01~15重量%であり、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)の含有量が60~99重量%であり、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)の含有量が0.5~25重量%であることが好ましく、
前記のポリチオフェンの含有量が0.01~10重量%であり、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)の含有量が70~99重量%であり、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)の含有量が0.5~20重量%であることがより好ましく、
前記のポリチオフェンの含有量が0.01~5重量%であり、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)の含有量が80~99重量%であり、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)の含有量が0.5~15重量%であることがより好ましい。
【0050】
本発明の組成物については、前記のポリチオフェンと、前記の標準沸点が30~150℃の溶媒(A)と、前記の標準沸点が150~300℃の溶媒(B)を混合することによって製造することができる。
【0051】
本発明の組成物を混合する際には、スターラーチップ、攪拌羽根等による一般的な混合溶解操作に加えて、超音波照射、又はホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。
【0052】
なお、当該混合については、適度に温調して行うこともでき、特に限定するものではないが、例えば、10~80℃の範囲で混合することができ、15~60℃の範囲が好ましく、20~50℃の範囲がより好ましい。
【0053】
また、当該混合については、酸素脱気した後に行うことが好ましく、当該酸素脱気の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、減圧処理や窒素バブリング等が挙げられる。
【0054】
当該混合の時間については、特に限定するものではないが、例えば、1分~12時間の範囲であることが好ましく、1分~6時間の範囲であることがより好ましい。
【0055】
本発明の組成物については、支持体上に塗布し、次いで40℃以上に加熱して主に前記の溶媒(A)を蒸発させ、次いで加熱温度を上昇させて主に前記の溶媒(B)を蒸発させることによって、膜厚がミクロンレベルの良好な導電性高分子膜を製造することができる。
【0056】
前記の支持体としては、本発明の組成物が塗布可能なものであれば特に限定するものではないが、例えば、高分子基材又は無機基材が挙げられる。より具体的には、例えば、熱可塑性樹脂、不織布、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、又はポリカーボネート等が挙げられる。不織布としては、例えば、天然繊維、又は合成繊維のいずれでもよい。紙としては一般的なセルロースを主成分とするものでよい。その他の無機基材としては、特に限定するものではないが、例えば、ガラス、ガラス繊維、セラミックス、酸化アルミニウム、酸化タンタル等が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物の塗布方法としては、特に限定するものではないが、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ディスペンサ法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、スピンコート法、インクジェット法等が挙げられる。好ましくはスピンコート法である。
【0058】
前記の主に溶媒(A)を蒸発させる温度としては、より高品質な導電性高分子膜を製造できる点で、40℃~150℃の範囲が好ましく、80℃~140℃の範囲がより好ましく、100℃~130℃の範囲がより好ましい。
【0059】
前記の主に溶媒(A)を蒸発させる加熱処理時間としては、特に限定するものではないが、より高品質な導電性高分子膜を製造できる点で、5~120分の範囲が好ましく、15分~90分の範囲がより好ましい。
【0060】
また、前記の主に溶媒(B)を蒸発させる温度としては、より高品質な導電性高分子膜を製造できる点で、120℃~300℃の範囲が好ましく、140℃~260℃の範囲がより好ましく、160℃~240℃の範囲がより好ましい。
【0061】
前記の主に溶媒(B)を蒸発させる加熱処理時間としては、特に限定するものではないが、より高品質な導電性高分子膜を製造できる点で、5~240分の範囲が好ましく、15分~180分の範囲がより好ましい。
【0062】
乾燥雰囲気は大気中、不活性ガス中、真空中、又は減圧下のいずれであってもよい。高分子膜の劣化抑制の観点からは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中が好ましい。
【0063】
なお、本発明の組成物を成膜する際は、当該組成物に適宜添加剤を加えることもできる。当該添加剤としては、特に限定するものではないが、例えば、多価アルコール化合物、界面活性剤、バインダー樹脂、架橋剤、滑剤等を挙げることができる。
【0064】
前記の多価アルコール化合物としては、特に限定するものではないが、エリトリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、又はアラビトール等が挙げられる。これらのうち、ソルビトールが好ましい。
【0065】
前記の界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、高分子型非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はアセチレングリコール型界面活性剤等で例示される。
【0066】
前記の高分子型非イオン界面活性剤としては、特に限定するものではないが、ポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドンの共重合体等が挙げられる。ポリビニルピロリドンの平均分子量として、1千~200万であることが好ましく、より好ましくは1万~150万である。ポリビニルピロリドンの共重合体としては、特に限定するものではないが、親水性部と疎水性部をポリマー鎖中に併せ持つものが好ましく、例えば、ポリビニルピロリドンをポリビニルアルコールにグラフトしたコポリマーや、[ビニルピロリドン-酢酸ビニル]ブロック共重合体、[ビニルピロリドン-メチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン-ノルマルブチルメタクリレート]共重合体、[ビニルピロリドン-アクリルアミド]共重合体などが例示できる。
【0067】
前記の両性界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。ベタイン型両性界面活性剤としては特に限定するものではないが、例えば、アルキルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン等が挙げられる。
【0068】
前記のフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するものが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、又はパーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0069】
前記のシリコーン系界面活性剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、又はシリコーン変性アクリル化合物などが挙げられる。
【0070】
前記のバインダー樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ポリイミド、ニトロセルロース若しくはその他のセルロース樹脂、又はポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0071】
前記の架橋剤としては、特に限定するものではないが、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、エポキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、エポキシプロピルトリエトキシシラン、又は3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらのうち、成膜性に優れる点で、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、又は3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0072】
前記の滑剤については、一般的な樹脂添加剤として用いられる滑剤(プラスチック用滑剤、樹脂用滑剤)のことを表し、当該滑剤については、プラスチックの成形加工において、プラスチックと成形加工機の摩擦およびプラスチック粒子間の摩擦を低減させる効果を有するものが挙げられる。当該滑剤としては、外部滑剤として働くものと、内部滑性に効果を発揮するものがあり、本発明においては、どちらか単独であってもよいし、両方を用いてもよい。としては、特に限定するものではないが、例えば、炭化水素系滑剤(パラフィンワックス、合成ポリエチレン、流動パラフィン)、脂肪酸系滑剤(ステアリン酸、ベヘニン酸、12ヒドロキシステアリン酸)、高級アルコール系滑剤(ステアリルアルコール)、脂肪酸アミド系滑剤(ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド)、エステル系滑剤(グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ブチルステアレート)、シリコーンオイル、又はシリコーンパウダー等を挙げることができる。
【0073】
本発明の組成物は、コンデンサ、タッチセンサー、帯電防止、有機薄膜太陽電池、有機EL、又は電極等の用途で期待できる。本発明のポリチオフェンを含む組成物については、用途に応じて、公知の界面活性剤又は/及びバインダー等の添加剤を含有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】実施例1でポリチオフェンと、標準沸点が30~150℃の溶媒(A)と、標準沸点が150~300℃の溶媒(B)からなる組成物を用いて成膜した、ポリチオフェン膜の状態を撮影した写真。
図2】参考例1でポリチオフェンと、沸点が30~150℃の溶媒(A)からなる組成物を用いて成膜した、ポリチオフェン膜の状態を撮影した写真。
【実施例0075】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、本実施例で用いた測定方法を以下に列記する。
[成膜方法]
下記の実施例等に示した組成物 2mlを50mm角の無アルカリガラス板にキャスティングし、120℃にて30分及び200℃にて60分加熱して膜を得た。成膜性について、目視により、クラック(ひび割れ)が発生していない状態を「成膜性が良好」と称している。
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
【0076】
実施例1
特開2019-210356に基づいて得られたポリチオフェン[前記式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=ジオクチルアンモニウム、m=2である。以下、P1と略す)]の固体 0.1gを、1-ブタノール 90重量%とエチレングリコール 10重量%からなる混合液 9.9gに添加し、20℃で30分撹拌して本発明の組成物を得た。その後、上記の成膜方法の条件にて成膜したところ、成膜性が良好な導電性高分子膜を得た。
【0077】
実施例2~17
実施例1において、1-ブタノール 90重量%とエチレングリコール 10重量%からなる混合液 9.9gの代わりに、表1に示した組成の混合液 9.9gを用いた以外、実施例1と同じ条件にて混合、撹拌して本発明の組成物を得、成膜試験を行った。いずれの場合も、成膜性が良好な導電性高分子膜を得た。
【0078】
実施例18
実施例1において、ポリチオフェン P1の固体 0.1gを用いる代わりに、ポリチオフェン P2[前記式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=トリオクチルアンモニウム、m=2である。)]の固体 0.1gを用いた以外、実施例1と同じ条件にて行った。上記の成膜方法にて成膜したところ、成膜性が良好なポリチオフェン膜を得た。
【0079】
実施例19~34
実施例18において、1-ブタノール 90重量%とエチレングリコール 10重量%からなる混合液 9.9gの代わりに、表2に示した組成の混合液 9.9gを用いた以外、実施例19と同じ条件にて混合、撹拌して本発明の組成物を得、成膜試験を行った。いずれの場合も、成膜性が良好な導電性高分子膜を得た。
【0080】
実施例35
実施例1において、ポリチオフェン P1の固体 0.1gを用いる代わりに、ポリチオフェン P3[前記式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=ジ(2-エチルヘキシル)アンモニウム、m=2である。)]の固体 0.1gを用いた以外、実施例1と同じ条件にて行った。上記の成膜方法にて成膜したところ、成膜性が良好な導電性高分子膜を得た。
【0081】
実施例36~51
実施例35において、1-ブタノール 90重量%とエチレングリコール 10重量%からなる混合液 9.9gの代わりに、表3に示した組成の混合液 9.9gを用いた以外、実施例35と同じ条件にて混合、撹拌して本発明の組成物を得、成膜試験を行った。いずれの場合も、成膜性が良好な導電性高分子膜を得た。
【0082】
実施例52
実施例1において、ポリチオフェン P1の固体 0.1gを用いる代わりに、ポリチオフェン P4[前記式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=デシルアンモニウム、m=2である。)]の固体 0.1gを用いた以外、実施例1と同じ条件にて行った。上記の成膜方法にて成膜したところ、成膜性が良好な導電性高分子膜を得た。
【0083】
実施例53~68
実施例52において、1-ブタノール 90重量%とエチレングリコール 10重量%からなる混合液 9.9gの代わりに、表4に示した組成の混合液 9.9gを用いた以外、実施例52と同じ条件にて混合、撹拌して本発明の組成物を得、成膜試験を行った。いずれの場合も、成膜性が良好な導電性高分子膜を得た。
【0084】
参考例1
ポリチオフェン P1[前記式(1)及び(2)の構成単位からなるポリチオフェン(ただし、R=メチル基、M=ジオクチルアンモニウム、m=2である。)]の固体 0.1gを、1-ブタノール 9.9gに添加し、20℃で30分撹拌して組成物を得た。その後、上記の成膜方法にて成膜したところ、クラック(ひび割れ)が生じた導電性高分子膜を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0089】
上記のポリチオフェンと、沸点が30~150℃の溶媒(A)と、沸点が150~300℃の溶媒(B)からなる本願発明の組成物は、良好な成膜性を有するため、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、並びに帯電防止フィルム、固体電解コンデンサの固体電解質、巻回型アルミ電解コンデンサ用のセパレータへの利用が可能である。その他、有機薄膜太陽電池、有機EL、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、熱電変換材料、化学センサ、アクチュエータ、電磁波シールド材、導電性塗料、導電性インク等への応用も期待できる。
図1
図2