(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152246
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ウエハ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20221004BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
H01L21/302 101C
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054949
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松林 恵理
(72)【発明者】
【氏名】廣實 一幸
(72)【発明者】
【氏名】高妻 豊
(72)【発明者】
【氏名】宮内 琢真
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA15
5F004AA16
5F004BA20
5F004BB02
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004BC01
5F004BC03
5F004BC08
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA24
5F004EA28
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA32
5F131EB11
5F131EB81
5F131EB85
(57)【要約】
【課題】処理の効率を向上させたウエハ処理装置を提供する。
【解決手段】真空容器の処理室内に配置され、載置面にウエハ204が載せられる試料台103と、試料台103上方に配置された処理ガス供給路と、処理ガス供給路の周囲にリング状に配置され、ウエハ204に電磁波を照射してウエハ204を加熱するIRランプ1020と、載置面の周囲を囲んで試料台103上に位置する誘電体製のサセプタリング205と、サセプタリング205と試料台103の上面との間に位置し、載置面を囲み、内部にガスが導入されるリング状の空間と、当該空間の内周側に配置され、内部と連通されガスがサセプタリング205の内周側に導入される導入口と、導入口から導入されたガスが載置面または当該載置面に載せられたウエハ204の外周縁の裏面に向けて導入されるサセプタリング205と載置面の周囲の試料台103の表面との間の隙間とを備えたウエハ処理装置を用いる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部の処理室内に配置され、上部の載置面に処理対象の半導体ウエハが載せられる試料台と、
前記試料台の上方に配置され、前記処理室内に前記半導体ウエハを処理するための処理ガスが供給される処理ガス供給路と、
前記試料台の上方であって前記処理ガス供給路の周囲にリング状に配置され、前記半導体ウエハに電磁波を照射して前記半導体ウエハを加熱するランプと、
前記載置面の周囲を囲んで前記試料台上に配置された誘電体製のリングと、
前記リングと前記試料台の上面との間に位置し、平面視で前記載置面を囲み、内部に第1ガスが導入されるリング状の空間と、
前記リング状の空間の内周側の箇所に配置され、前記内部と連通され前記第1ガスが前記リングの内周側の箇所に導入される導入口と、
前記導入口から導入された前記第1ガスが前記載置面または当該載置面に載せられた前記半導体ウエハの外周縁の裏面に向けて導入される前記リングと前記載置面の周囲の前記試料台の表面との間の隙間と、
を備えた、ウエハ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のウエハ処理装置において、
前記試料台の上部の前記リングは、前記リング状の空間と連通されて前記第1ガスを前記リング状の空間内に供給する開口を備えている、ウエハ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のウエハ処理装置において、
前記リング状の空間は、前記リングの下面に前記リングの中央部を囲んで配置された凹み部と、前記リングが前記試料台の上部に載せられた状態で当該リングに覆われる前記試料台の表面とにより囲まれた空間である、ウエハ処理装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ処理装置において、
前記載置面上に載せられた前記半導体ウエハ上に前記処理ガスを導入して、当該半導体ウエハの上面に予め形成された処理対象の膜層の表面に生成物層を形成する工程の後、前記ランプから電磁波を前記半導体ウエハに照射して前記生成物層を除去する工程を行う、ウエハ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-143186号公報(特許文献1)には、半導体ウエハ上の層に対し、原子層レベルのエッチング処理を行うことが開示されている。具体的には、まず、試料である半導体ウエハの上面にプラズマを用いて形成した処理用のガスの活性種(ラジカル)を供給して付着させて当該表面に生成物層を生成する工程を行う。その後、ウエハの上方の領域を囲んでリング状に配置されたランプから赤外線を含む波長の電磁波をウエハに照射して生成物層を脱離、揮発させる工程を行って、原子層と同等の程度の厚さで形成される生成物層を除去することで、当該エッチング処理を行う。
【0003】
このような技術においては、真空容器内部の処理室内に配置された試料台(ステージ)の上に載置されたウエハに対して、(1)ラジカルによる反応生成物の層の形成工程と、(2)赤外線を含む電磁波が照射された加熱による反応層の除去工程とが実施される。(1)の反応層生成工程については、まず、処理室上部のラジカル生成空間に処理ガスを供給し、ガスを活性化することでラジカルを形成する。形成されたラジカル粒子は、下部処理室との間が連通されたガス導入管を介して、処理室に載置されたウエハ上面に供給され、反応層が形成される。(2)の反応層除去工程については、(1)の後に実施され、ウエハ上部に配置したランプから赤外光が照射され、ウエハ上面の生成物が気化され反応層が除去される。これら工程を交互に繰り返し、ウエハ表面の処理対象の膜が除去される。
【0004】
一方、エッチング処理工程では各種工程で反応生成物が発生し、その一部は処理室内の壁面上に付着あるいは堆積する。この堆積物が処理室内部の表面から再度遊離してウエハ表面に再付着すると、パターン欠陥が生じ、当該ウエハから製造される半導体デバイスの性能が損なわれる虞がある。特に、ステージの側壁面に付着した生成物はウエハの近傍に付着しているウエハ上に飛来し易いことから、処理の歩留まりが低下する要因になりやすい。
【0005】
これらの問題に対して、化学的または物理的なクリーニング方法が用いられている。代表的な手段として、特開2004-158563号公報(特許文献2)に開示されたものが知られている。この従来技術は、ステージの外周部からガスを導入し、このガスにエネルギーを与えて補助プラズマを形成することでステージ側面の堆積物と化学的に反応させ除去するか、あるいはガス流れにより反応生成物のステージ側面への拡散を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-143186号公報
【特許文献2】特開2004-158563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、次の点について十分な考慮がなされていなかったため問題が生じていた。
【0008】
すなわち、ステージの表面がプラズマによりエッチングされるため、ステージ自体が異物発生源となったり、ステージ表面材料が消耗し内部電極と電気的にパスができることで故障したりする問題がある。特に、ウエハをステージ上面に静電吸着させるためにステージ上面に配置される誘電体製の膜の材料としてポリイミドが用いられる場合には、処理室内部の表面に付着した付着物を除去(クリーニング)するために供給されるクリーニングガスとして使用されることの多いハロゲンラジカルと反応し易い。このため、このようなクリーニングガスを使用すると静電吸着用の膜の変質や消耗が大きくなって清掃や交換等メンテナンスの間隔が短縮してしまい、ウエハ処理装置を運転して行われる処理の効率が損なわれてしまう。また、ステージ近傍に補助プラズマ用の放電部を形成するための構成が必要となりウエハ処理装置の構造が複雑になってコストが増大してしまう。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するために想起されたものであり、本発明の目的は、処理の効率を向上させたウエハ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
一実施の形態であるウエハ処理装置は、真空容器内部の処理室内に配置され、上部の載置面に処理対象の半導体ウエハが載せられる試料台と、前記試料台の上方に配置され、前記処理室内に前記半導体ウエハを処理するための処理ガスが供給される処理ガス供給路と、前記試料台の上方であって前記処理ガス供給路の周囲にリング状に配置され、前記半導体ウエハに電磁波を照射して前記半導体ウエハを加熱するランプと、前記載置面の周囲を囲んで前記試料台上に配置された誘電体製のリングと、前記リングと前記試料台の上面との間に位置し、平面視で前記載置面を囲み、内部に第1ガスが導入されるリング状の空間と、前記リング状の空間の内周側の箇所に配置され、前記内部と連通され前記第1ガスが前記リングの内周側の箇所に導入される導入口と、前記導入口から導入された前記第1ガスが前記載置面または当該載置面に載せられた前記半導体ウエハの外周縁の裏面に向けて導入される前記リングと前記載置面の周囲の前記試料台の表面との間の隙間とを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、処理の効率を向上させたウエハ処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るウエハ処理装置の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】実施の形態で用いられるステージガス供給機構の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】実施の形態で用いられるステージガス供給機構が備える分散板の構成を模式的に示す横断面図である。
【
図4】実施の形態のウエハ処理装置の運転の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態の変形例に係るウエハ処理装置の運転の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
(実施の形態)
以下、
図1~
図4を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るウエハ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図である。
【0016】
図1に示す本実施の形態に係るウエハ処理装置100は、真空容器101と、真空容器101の上部を構成し内部でプラズマを形成する放電部102と、真空容器下部を構成し半導体ウエハ(以下ではウエハと呼ぶ)を置く試料台103を備えた処理室104とを備えている。言い換えれば、試料台103は、上部の載置面に処理対象の半導体ウエハが載せられるステージであり、真空容器101内部の処理室104内に配置されている。また、ウエハ処理装置100は、試料台103上のウエハを加熱するIRランプユニット105と、放電部102と処理室104とを連結しプラズマで生成したラジカル粒子を通過させる貫通孔を備えた誘電体製の分散板106を備えた通路とを備えている。
【0017】
本実施の形態のウエハ処理装置100において、処理室104および放電部102は円筒形を有した空間であって、その中心軸は同軸上またはこれと見做せる程度に近似した位置に配置されている。処理室104および放電部102の間は、同様に処理室104および放電部102と中心軸が合致またはこれと見做せる程度に近似した位置に配置された円形の分散板106により区分され、分散板106に同心円状に配置された複数の貫通孔を通して連通されている。
【0018】
放電部102は、処理ガス1013を流入し、プラズマ1011を形成し、そのプラズマ状態は光学的手法で観測できるように構成されている。このように、放電部102を含む供給路であって、ウエハを処理するための処理ガス1013を処理室104内に供給する処理ガス供給路が、試料台103の上方に配置されている。
【0019】
放電部102は真空に保たれた円筒型の石英チャンバ(誘電体チャンバ)107が設置されており、石英チャンバ107の外側にはICPコイル108が設置されている。ICPコイル108は整合器を介して高周波電源に接続され、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)放電方式で石英チャンバ107内にプラズマ1011を生成させられる。高周波電力の周波数は13.56MHzなど、数十MHzの周波数帯を用いるものとする。
【0020】
放電部102の上部には天板1014が設置されている。天板の下部にはガス分散板とシャワープレートが設置されており、処理ガスはガス分散板とシャワープレートを介して真空容器101内に導入される。
【0021】
天板1014と放電部102の側壁の上端部上面との間にOリング等のシール部材が挟まれる。これにより、放電部102の内部と真空容器101の外部との間が気密に封止される。
【0022】
処理ガス1013はガス種毎に設置されたマスフローコントローラによって供給流量が調整される。処理ガス1013として、可燃性ガス、支燃性ガス、およびこれらの混合ガス、または不活性ガスにより希釈されたこれらの混合ガスが用いられる。
【0023】
処理室104の下部には真空容器101内を減圧するため、排気用の開口が設けられ、真空容器101は当該開口部から排気管を通して真空ポンプ1017に接続されている。開口部と真空ポンプ1017の経路上には調圧バルブが配置され、経路または開口の流路断面積を増減して排気の流量または速度を調整している。
【0024】
処理室104は、放電部102および処理室104の中心軸に合致またはこれと見做せると近似した位置にウエハ204を載置する試料台103を配置している。
【0025】
試料台103と放電部102の間にはウエハ204を加熱するためのIRランプユニット105が設置されている。IRランプユニット105は主に、IRランプ1020、IR光を反射するための反射板1021および光透過窓1022からなる。
【0026】
IRランプ1020にはサークル型(円形状)のランプを用いる。すなわち、ウエハ204に電磁波を照射してウエハ204を加熱するIRランプ1020が、試料台103の上方であって上記処理ガス供給路の周囲にリング状に配置されている。なお、IRランプ1020から放射される光は可視光から赤外光領域の光を主とした光(ここではIR光と呼ぶ)を放出する。IRランプ1020は電力を供給するランプ用電源に接続されている。本実施の形態では、ウエハ温調用に500nmから3000nmの近赤外領域を用いて、クリーニングガスのIR吸収は3000nm以降の遠赤外領域を使用する。
【0027】
図示は省略したが、同心円上に配置された各々の半径に位置するIRランプ1020(図中は3つ)の各々の円弧状の部分に供給される電力の大きさを各々で独立に調整可能に構成してあり、ウエハの加熱量の径方向分布を調整できるようになっている。
【0028】
IRランプユニット105には、その下面から内周側壁面に亘って、IR光を通すための石英製の光透過窓1022が配置されている。
【0029】
IRランプユニット105の内周の内側の空間は、上方に配置された放電部102内で形成されたプラズマ1011が通流する流路である。当該流路内には、プラズマ中で生成されたイオンまたは電子などを遮蔽し、ガスの中性粒子またはラジカルなどを透過される誘電体製の分散板(イオンシールドプレート)106が設置されている。
【0030】
本実施の形態のウエハ処理装置100では、ウエハ204に対して次のような工程を行う。すなわち、まず、(1)ウエハ204の表面にラジカルによる反応生成物層を形成する工程と、(2)赤外線を含む電磁波を照射し、これによりウエハ204の表面を加熱し、反応生成物層を除去する工程とが実施される。
【0031】
(1)の反応生成物層の生成工程については、まず、処理室104上部のラジカル生成空間に処理ガスを供給し、ガスを活性化することでラジカルを形成する。形成されたラジカル粒子は、下部の処理室104との間が連通されたガス導入管を介して、処理室104に載置されたウエハ204の上面に供給され、反応生成物層が形成される。つまり、試料台103の載置面上に載せられたウエハ204上に処理ガスを導入して、ウエハ204の上面に予め形成された処理対象の膜層の表面に反応生成物層を形成する。(2)の反応生成物層の除去工程については、(1)の後に実施され、ウエハ204の上部に配置したIRランプユニット105から赤外光(電磁波)が照射され、ウエハ204の上面の生成物が気化されることで、反応生成物層が除去される。これらの工程を交互に繰り返し、ウエハ204の表面の処理対象の膜が除去される。
【0032】
図2は、
図1に示す本実施の形態のステージガス供給機構の構成の概略を模式的に示す縦断面図である。本図に示す試料台103は、処理室104の中心軸と同軸の円柱型の構造をしており、内部の試料台基材201と、上面の試料吸着膜202と、それらを側面から取り囲むサセプタリング205とで構成され、ウエハ204の固定吸着と冷却機能とが備わっている。
【0033】
試料台基材201には、試料台103を冷却するための冷媒流路が螺旋状に配置されており、チラーによって冷媒が循環供給されるようになっている。
【0034】
試料吸着膜202として、ウエハ204を吸着したまま加熱・冷却サイクルを行ってもウエハ裏面に傷がつかないように、ポリイミド等の樹脂シートが貼り付けられている。また、ウエハ204を静電吸着により固定するため、試料吸着膜202内に板状の電極板203が埋め込まれており、電極板203はDC電源に接続されている。また、試料吸着膜202には溝が設けられ、ウエハ204と試料吸着膜202との間にHeガスを供給する経路になっている。これにより、冷媒経路で温調された試料台103とウエハ204とは、Heガスを通して熱的に接触でき、IRランプユニット105によって加熱されたウエハ204は効率良く冷却される。
【0035】
試料台103の外周部にはエッチングガスによる腐食から試料台103を保護するため石英製のサセプタリング205が配置されている。サセプタリング205は試料台と中心軸を同じくする円筒形であり、内径を試料台基材201、試料吸着膜202のそれぞれの側壁の径に合わせて設計され、ウエハ204が載置される部分以外の試料台103を覆っている。サセプタリング205は、透光性のある材料(例えば石英)により構成されている。つまり、誘電体製のサセプタリング205は、試料台103の載置面の周囲を囲んで試料台103上に配置されている。
【0036】
サセプタリング205の下には試料台103の側面に堆積した異物の除去と異物侵入抑制のためのステージガス導入機構206が設けられている。ステージガス導入機構206は、ステージ内部配管207および分散板208を有する機構である。ステージ内部配管207よりAr(アルゴン)のような不揮発性ガス、またはC-H、O-H、N-H、C=O、C=C若しくはC-Oの結合を含む分子ガス(ここではIR吸収ガスと呼ぶ)を導入する。Arガスはプロセス中のステージ側面への反応生成物侵入を抑制する目的で使用する。IR吸収ガスは分子の伸縮振動と変角振動とがIR光の波長と共鳴してエネルギーを効率良く吸収するため、異物の加熱除去に使用できる。
【0037】
IRランプユニット105から照射されるIR光は、当該ガスが吸収する波長帯の波長を有するものである。例えば、当該ガスが二酸化炭素である場合、IR光は遠赤外領域であることが望ましい。具体的には、IR光の波長は、ガスの有する結合がC-Hの場合は10.1~14.9μmまたは3.2~3.7μm、O-Hの場合は2.7~3.1μm、N-Hの場合は2.9μmであることが望ましい。また、IR光の波長は、ガスの有する結合がC=Oの場合は5.5~6.5μm、C=Cの場合は6.1~6.3μm、C-Oの場合は7.7~9.6μmであることが望ましい。このような波長のIR光を照射するためのIRランプをIRランプユニット105内にさらに設けても良い。つまり、
図1に示すIRランプ1020は近赤外領域(波長0.4~3μm)のIR光を照射するウエハ温調用のランプとし、3重の当該IRランプ1020の外側に並べるように、上記波長(4μm以上)のIR光を照射するためのIRランプをさらに設けても良い。
【0038】
試料台基材201の直下の領域の周囲における試料台基材201の上面と、当該上面を覆うサセプタリング205との間には、分散板208が設けられている。ステージ内部配管207より供給されたガスは、分散板208で試料台103の周方向に均等に拡散され、ウエハ204の陰になりIR光が到達しないステージ側面209の近傍を通りウエハ裏面210の近傍から抜けていく。このとき、その過程で吸収したIR光が放出され堆積物に熱を与える。分散板208の材料には、赤外線の透過性を良くするため石英を用いている。このように、ステージガス導入機構206では、IR吸収ガスが試料台103の外周側からステージ側面209(試料台103の中央の凸部の側面)に向かって吹き付けるようにIR吸収ガスの流路(経路)が形成されている。
【0039】
当該堆積物は、例えば、ウエハ204等が処理ガスと反応して生成される反応生成物である。堆積物は、ウエハ204の陰になりIR光が到達しないステージ側面209に付着するように異物として生成されやすい。
【0040】
図3は、
図2に示す本実施の形態のステージガス導入機構206が備えるガスの分散板208の構成を模式的に示す横断面図である。本図は、
図2に示したリング状の形状を有する分散板208の1/4周(リングの中心周りに角度90度の範囲)の構造を示している。
【0041】
8箇所のステージ内部配管207から供給されたガスは、ガス溜まり302で試料台103の周方向に拡散され、22.5°間隔で均等に16箇所設置されたスリット(導入口)303を通り、後段のガス溜まり304で再度拡散される。この構造によりガスは周方向に拡散されると共に、IR光が照射される距離が延びるため、ガスは効率良くIR光を吸収できる。分散板208をボルト4点で試料台103に固定することで、試料台103側面と分散板間の隙間を管理している。
【0042】
ガス溜まり302は、サセプタリング205と試料台103の上面との間に位置し、平面視で試料台103の載置面を囲み、サセプタリング205の中心側(内部)に上記ガスが導入されるリング状の空間である。スリット303は、当該空間の内周側の箇所に配置され、サセプタリング205の中心側(内部)と連通され、当該ガスがサセプタリング205の内周側の箇所に導入する導入口である。当該導入口から導入されたガスは、当該載置面または当該載置面に載せられたウエハ204の外周縁の裏面に向けて導入され、サセプタリング205と当該載置面の周囲の試料台の表面(ステージ側面209)との間の隙間に供給される。試料台103の上部のサセプタリング205は、当該リング状の空間と連通されてガスを当該リング状の空間内に供給する開口、つまり8箇所のステージ内部配管207を備えている。当該リング状の空間は、サセプタリング205の下面にサセプタリング205の中央部を囲んで配置された凹み部と、サセプタリング205が試料台103上部に載せられた状態でサセプタリング205に覆われる試料台103の表面とにより囲まれた空間である(
図2参照)。
【0043】
図4は、
図1に示す本実施の形態に係るウエハ処理装置の運転の流れを示すフローチャートである。特に、
図4では、ウエハ204をエッチング処理する処理の工程中におけるステージガス導入機構206の動作の流れが示されている。
【0044】
図4に示す通り、本実施の形態のウエハ処理装置100では、処理プロセススタート(ステップ401)してウエハ204の処理が開始され、ステージガス導入機構206により不揮発性ガスが導入される(ステップ402)。ウエハ204の処理中はステップ402が継続されて不揮発性ガスが常時供給されることで、試料台103の側面への反応生成物の侵入が抑制される。
【0045】
ウエハ204の処理プロセスが終了する(ステップ403)と、ステップ404から408に示されるクリーニングプロセスの工程が実施される。すなわち、クリーニングプロセスが開始(ステップ404)されると、ステージガス導入機構206から導入されるガスが、不揮発性ガスからIR吸収ガスに切替えられる(ステップ405)。その後、IRランプ1020に電力が供給されて点灯し、処理室104内のウエハ204およびその外周側の箇所に赤外線(IR)を含む電磁波が照射される(ステップ406)。この工程において、導入されたIR吸収ガスが照射された赤外線吸収する。
【0046】
IR光を吸収したガスはある時定数でIR光を放出する(ステップ407)。この放出の量は時間に対し指数関数的に減衰するため、ステージ側面で十分な量の熱の放出が生じるようにIR吸収ガスの供給量が当ガスの供給経路上に配置されたマスフローコントローラで制御され最適化される。本実施の形態では、IR吸収ガスを加熱する温度の上限は、ポリイミド膜の接着剤の耐熱温度150℃である。温度が当該上限を超える前にIRランプ1020の照射マスフローコントローラできるように、試料台103内部に配置された熱電対等の温度センサからの出力を用いて、上記加熱の工程中に試料台103の温度が図示しない制御装置により検出され、制御装置によるマスフローコントローラの動作の調節にフィードバックされる。
【0047】
ステップ407でガスから放出されたIR光により異物(試料台103のステージ側面209に付着した堆積物)は過熱され、熱分解して除去される(ステップ408)。
【0048】
異物が除去されたことが検出された(ステップ408)後、IRランプ1020は電力の供給が停止されて消灯する。その後、ステージガス導入機構206に供給されるガスが不揮発性ガスに切り替えられ(ステップ409)、クリーニングプロセスが終了する。さらに、ウエハ204のエッチング処理が終点に到達したか否かの判定の結果に応じて、ウエハ204の次の処理の工程が開始され、またはウエハ204の処理の終了が行われる。さらに、次に処理されるウエハ204の有無が検出され、ウエハ204が存在する場合には次の処理の工程がプロセスを開始する(ステップ410)。
【0049】
<変形例>
本実施の形態のウエハ処理装置100において、IR吸収率が0.5と比較的高い一方で線膨張が8.2×10-6/Kと小さいTi(チタン)またはその合金から構成された分散板(ガス分散板)208が用いられても良い。この構成においては、分散板208とステージガス導入機構206から導入されるガスとが熱交換することで、ステージ側面209の異物が除去される。分散板208の材料として、線膨張が小さい材料を選ぶ理由は、加熱により熱膨張した時、分散板208の固定ボルト周りにかかる応力を抑制するためである。
【0050】
本変形例では、熱伝導率の高い水素(熱伝導率0.2W/mK)またはヘリウム(熱伝導率0.15W/mK)(以下熱伝導ガスと表記)が用いられる。上記した実施の形態では、異物の除去のためにステージガス導入機構206から供給されるガスとして遠赤外領域の波長の電磁波が用いられた。これに対し、本変形例では、近赤外領域の波長のものが使用され、近赤外領域にピークをもつIRランプ1020が用いられる。
【0051】
図5に、本実施の形態の変形例におけるウエハ処理装置の運転の流れをフローチャートで示す。
【0052】
図5において、
図4と同様に、本実施の形態のウエハ処理装置100では、処理プロセススタート(ステップ501)してウエハ204の処理が開始され、ステージガス導入機構206より不揮発性ガスが導入される(ステップ502)。ウエハ204の処理中は当該ステップ502が継続されて不揮発性ガスが常時供給されることで、ステージ側面209への反応生成物の侵入が抑制される。
【0053】
ウエハ204の処理プロセスが終了する(ステップ503)と、ステップ504から508に示されるクリーニングプロセスの工程が実施される。すなわち、クリーニングプロセスが開始される(ステップ504)と、IRランプ1020に電力が供給されて点灯され、処理室104内のウエハ204およびその外周側の箇所に赤外線(IR)を含む電磁波が照射されるとともに、分散板208は電磁波が照射されて加熱される(ステップ505)。
【0054】
さらに、不揮発性ガスから熱伝導ガスに切替えられてステージガス導入機構206からガスが導入される(ステップ506)。この工程において、加熱された分散板208から熱伝導ガスへ熱エネルギーが伝わり、この熱エネルギーは熱伝導ガスによりステージ側面209に伝えられる(ステップ507)。これにより、ステージ側面209の異物が昇温されて除去される。本変形例においても、ステージ側面209を加熱する温度は、試料台103内部に配置された熱電対等の温度センサからの出力を用いて、制御装置により調節される。
【0055】
異物が除去されたことが検出された(ステップ508)後、IRランプ1020は消灯され、ステージガス導入機構206に供給されるガスが不揮発性ガスに切り替えられ(ステップ509)、クリーニングプロセスが終了する。さらに、ウエハ204のエッチング処理が終点に到達したか否かの判定の結果に応じて、ウエハ204の次の処理の工程が開始される、あるいはウエハ204の処理の終了が行われる。さらに、次に処理されるウエハ204の有無が検出され、ウエハ204が存在する場合には次の処理の工程がプロセスを開始する(ステップ510)。
【0056】
以上、本発明者らによってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
100 ウエハ処理装置
101 真空容器
102 放電部
103 試料台
104 処理室
105 IRランプユニット
106 分散板
107 石英チャンバ
108 ICPコイル
201 試料台基材
202 試料吸着膜
203 電極板
204 ウエハ
205 サセプタリング
206 ステージガス導入機構
207 ステージ内部配管
208 分散板
1011 プラズマ
1013 処理ガス
1014 天板
1017 真空ポンプ
1020 IRランプ
1021 反射板
1022 光透過窓