(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152453
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】印刷物及びその作成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/06 20060101AFI20221004BHJP
B41N 1/24 20060101ALI20221004BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B41M3/06 C
B41N1/24
B41M1/30 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055233
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】田原 健児
【テーマコード(参考)】
2H113
2H114
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA06
2H113BA09
2H113BA27
2H113BB02
2H113BB08
2H113BB22
2H113BC09
2H113FA32
2H114AB05
2H114AB08
2H114AB15
2H114DA03
2H114DA04
2H114DA52
2H114DA55
2H114DA57
2H114DA60
2H114DA61
2H114GA11
(57)【要約】
【課題】盛りがあり境い目のない印刷領域が形成されて成る印刷物について、印刷領域を構成する一部と他部において、印刷領域に含まれる機能性顔料の粒子数、あるいは粒子径が異なる印刷物を提供する。
【解決手段】本発明の印刷物は、基材に、少なくとも1種類の機能性顔料を含む1種類のインキにより、盛りのある印刷領域を有する印刷物であって、印刷領域は、少なくとも第1の印刷領域と第2の印刷領域から成るとともに、第1の印刷領域と第2の印刷領域は境い目なく形成され、第1の印刷領域と第2の印刷領域における、単位面積あたりの機能性顔料の粒子数及び/又は粒子径が異なることを特徴とする。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に、少なくとも1種類の機能性顔料を含む1種類のインキにより、盛りのある印刷領域を有する印刷物であって、
前記印刷領域は、少なくとも第1の印刷領域と第2の印刷領域から成るとともに、前記第1の印刷領域と前記第2の印刷領域は境い目なく形成され、
前記第1の印刷領域と前記第2の印刷領域における、単位面積あたりの前記機能性顔料の粒子数及び/又は粒子径が異なることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
少なくとも第1の開口径を備える第1の開口部を1つ以上有する第1の開口領域と、第2の開口径を備える第2の開口部を1つ以上有する第2の開口領域から形成されるとともに、
前記第1の開口領域と前記第2の開口領域は隣接して成り、
前記第1の開口領域と前記第2の開口領域とにおいて、開口径及び/又は各開口領域における透過容積が異なることを特徴とするスクリーン版面。
【請求項3】
請求項2に記載の前記スクリーン版面を用いて、基材上に、1種類の樹脂又は少なくとも1種類の機能性顔料を含む1種類のインキで一度刷りで印刷することにより印刷物を作成する方法であって、
前記樹脂又は前記インキにより境い目がない印刷領域を有し、前記印刷領域の一部と他部において、少なくとも膜厚方向の高さ、前記印刷領域における単位面積当たりの前記機能性顔料の粒子数あるいは粒子径のいずれか一つが異なる印刷物を作成することを特徴とする印刷物の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に1種類のインキにより一度刷りで、盛りがあり境い目のない印刷領域が形成される印刷物に関し、印刷領域を構成する一部と他部において、印刷領域における膜厚方向の高さ、印刷領域に含まれる単位面積あたりの顔料の数及び/又は粒子径が異なる印刷物とその作成方法に関する。
【0002】
スクリーン印刷は、金属、樹脂にて形成された版基材に、パターンに応じた多数の小孔をあけてスクリーン版面とし、当該スクリーン版面にスキージ等を装着してから印刷インキを圧送し、スクリーン版面に形成された多数の小孔から印刷インキを押し出して、基材にパターンを印刷するものである。
【0003】
スクリーン印刷は、スクリーン版面が柔軟で印圧が非常に低く、インキ皮膜が他の版式と比べて厚いという特徴があるため、基材の材質が自由に選択でき、点字等の盛りのある印刷物を得る印刷方法の一つとして広く知られている。
また、版面の形状として、平面状の版面を用いるフラットベッドスクリーン印刷、または平面状の版面を円筒状に加工したものを使用した、ロータリースクリーン印刷もスクリーン印刷の一つであり、ロータリー式のスクリーン印刷は巻取紙への連続模様の印刷が可能である。これらのスクリーン印刷機構は、従来から加飾印刷や捺染といった用途で利用されているほか、導電性ペーストを使用することによって、電子回路基板を形成するプリンテッドエレクトロニクス分野では標準的な技術となっている。
さらに、偽造防止技術が施され、高い印刷品質が求められるセキュリティ印刷物にもスクリーン印刷が用いられる。
【0004】
本出願人は、スクリーン版面に関して、滑らかな断面形状及び滑らかなエッジを有する凸状画線を形成することが可能なスクリーン版面を開示している(例えば、特許文献1参照)。
このスクリーン版面は、ベース層と、ベース層に積層されたベース層と異なる材料のベース層より薄いレリーフ層を備え、画線群を形成する画線部は、レリーフ層に形成された線状の開口部(14a)と、凸状画線の頂点に沿って開口部内のベース層に形成された少なくとも1以上の部分開口部(14b)から成る構成であり、上述した平面式、ロータリー式のいずれの版式でも印刷でき、ともにスキージにてインキを開口部に充填させ、基材に転写させる方法にて印刷するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のスクリーン版面では、1種類のインキを用いて基材への一度刷りで得られるのは、顔料濃度が一定の単純な印刷領域であり、連続して形成される印刷領域において一部の顔料濃度が異なるような、例えば階調を有するような印刷物を得るためには、2つ以上のスクリーン版面及び2種類以上のインキを準備し、同一基材に複数回スクリーン印刷を施す必要があった。その場合、スクリーン版面やインキの準備が煩雑であるとともに、高い刷合せ精度が求められていた。
さらに、高い刷合せで、1回目の印刷で施した画線と、2回目の印刷で施した画線を境い目なく形成できたとしても、それぞれのスクリーン版面で印刷された画線自体は顔料濃度が同一であるため、階調を有する印刷物は得られなかった。
【0007】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、盛りがあり境い目のない印刷領域を有する印刷物において、印刷領域の一部と他部とで、膜厚方向の高さ、含まれる機能性顔料の粒子数あるいは粒子径が異なる印刷物とその作成方法に関し、印刷領域の一部と他部における機能性特性の違いを視認及び/または検知することができる印刷物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材上の少なくとも一部に、少なくとも1種類の機能性顔料を含む1種類のインキにより、盛りのある印刷領域を有する印刷物であって、印刷領域は、少なくとも第1の印刷領域と第2の印刷領域から成るとともに、第1の印刷領域と第2の印刷領域は境い目なく形成され、第1の印刷領域と第2の印刷領域における、単位面積あたりの機能性顔料の粒子数及び/又は粒子径が異なる印刷物である。
【0009】
また、本発明のスクリーン版面は、少なくとも第1の開口径を備える第1の開口部を1つ以上有する第1の開口領域と、第2の開口径を備える第2の開口部を1つ以上有する第2の開口領域から形成されるとともに、第1の開口領域と前記第2の開口領域は隣接して成り、第1の開口領域と前記第2の開口領域とにおいて、開口径及び/又は各開口領域における透過容積が異なることを特徴とする。
【0010】
また、本発明における印刷物の作成方法は、スクリーン版面を用いて、基材上に、1種類の樹脂又は少なくとも1種類の機能性顔料を含む1種類のインキで一度刷りで印刷することにより印刷物を作成する方法であって、
樹脂又はインキにより境い目がない印刷領域を有し、印刷領域の一部と他部において、少なくとも膜厚方向の高さ、印刷領域における単位面積当たりの機能性顔料の粒子数あるいは粒子径のいずれか一つが異なる印刷物を作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の印刷物及び作成方法によると、1種類のインキを用いた一度刷りの印刷で盛りがあり境い目のない印刷領域を形成し、印刷領域を形成する一部と他部において、膜厚方向の高さ、印刷領域に含まれる機能性顔料の粒子数、あるいは粒子径が異なる印刷物を得ることができるため、様々な機能性特性を有する印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態における印刷物の一例を示す図である。
【
図2】本実施の形態における印刷物の一例とその断面図である。
【
図3】本実施の形態における印刷物の別の断面図である。
【
図4】本実施の形態における印刷物を作成するための版面を示す図である。
【
図5】本実施の形態におけるスクリーン版面の製造工程を示す図である。
【
図6】本実施の形態における印刷物における単位面積当たりの機能性顔料の粒子数について説明する図である。
【
図7】本実施の形態における版面と印刷物の関係の一例を示す図である。
【
図8】本実施の形態における版面と印刷物の関係の他の例を示す図である。
【
図9】本実施の形態における版面の開口径の構成例である。
【
図10】本実施の形態における実施の形態1について説明する図である。
【
図11】本発明の実施の形態1に係る印刷領域の膜厚の高さを説明する図。
【
図12】本発明の実施の形態1に係る印刷物について、効果を示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態2における版面及び印刷領域について説明する図。
【
図14】本発明の実施の形態2に係る印刷物について、効果を示す図である。
【
図15】本発明の実施の形態3における版面及び印刷領域について説明する図である。
【
図16】本発明の実施の形態3に係る印刷物について、効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0014】
(印刷物)
まず、本発明の印刷物(1)について説明する。
図1は、本発明の印刷物(1)の平面図であり、
図1(a)に示すように、印刷物(1)は基材(2)の少なくとも一部に印刷領域(3)を有している。
本実施の形態では、
図1(b)に示すように、印刷領域(3)は、少なくとも第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)から成り、第1の印刷領域(4)が多角形、第2の印刷領域(5)が数字の10の構成である。しかしながら、印刷領域(3)は、少なくとも第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)で形成されていれば、図柄の種類は問わない。
図1(b)では、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)は設計上、区分けしているが、印刷領域の境界(K)において領域を共有しており、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の間には境い目がなく領域が繋がっている。
なお、本発明における「境い目」とは、2種類以上のインキを使用して印刷領域を形成する際の異なるインキで形成される領域間の境界のことをいう。
また、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)は、1種類のインキ(7)によって形成されている。
【0015】
(インキ)
また、本発明における印刷領域(3)は、1種類のインキ(7)で形成される。インキ(7)には、機能性顔料を含まない透明なクリアインキ又は機能性顔料(8)を含むインキが用いられる。
本発明において機能性顔料(8)とは、可視光で視認できる着色顔料、紫外励起可視発光の蛍光顔料、パール顔料、カラーシフト顔料、メタリック顔料、サーモクロミック顔料、フォトクロミック顔料等、読取装置で検知できる可視発光以外の蛍光顔料、赤外吸収顔料、磁性顔料、導電性顔料等が挙げられ、その顔料が有する機能性特性に基づき、その特性を観察或いは検知するためにインキに配合する顔料である。
本発明において用いられる1種類のインキ(7)には、上述のとおり、機能性顔料(8)を含まないクリアインキでもよいし、1種類以上の機能性顔料(8)が含まれてもよい。
また、本発明に用いる機能性顔料(8)は、最小粒子径から最大粒子径までの顔料粒子を含む材料であり、一般的に顔料のサイズは、平均粒子径で表される。顔料の粒子径については、動的光散乱(DLS)、レーザー回析、沈殿法など、周知の方法で測定することができる。
【0016】
なお、インキ(7)には、種類に応じて、樹脂と機能性顔料(8)の他、硬化方式に合わせた乾燥剤、硬化剤、光重合開始剤が含まれる。また、機能性顔料(8)以外にインキ流動特性や、物性を調整するために配合する体質顔料、ワックス等が適宜配合されている。さらに、用途に合わせて消泡剤、分散剤、レべリング剤等の助剤を適宜配合し、インキ特性の調整がなされていてもよい。
本発明におけるインキ(7)の硬化方式は、溶剤蒸発型、酸化重合型、紫外線硬化型等、いずれでもよく、または、それらの複合であっても構わないが、後述する印刷直後の印刷領域(3)の高さを形成するには、紫外線硬化型が好ましい。
【0017】
(基材)
本発明において、基材(2)は、上質紙、コート紙、アート紙等の紙や、フィルム、紙をフィルムでコーティングした複合基材等が利用可能であり、印刷領域(3)の光学的な効果に影響を与えなければよい。また、基材(2)、基材自体が着色されていても、あらかじめ文字や模様などが印刷されていても構わない。
【0018】
以下、本発明においては、複数の印刷物(1)の形態があるため、まず、代表例について説明する。
図2(a)は印刷領域(3)であり、
図2(b)及び
図2(c)は、印刷領域(3)のXX´断面図である。
図2(b)に示すように、本発明の印刷領域(3)は、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)から成り、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)とも機能性顔料(8)を含む1種類のインキ(7)により形成されている。また、第1の印刷領域(4)には機能性顔料(8)を含まず、第2の印刷領域(5)にのみ機能性顔料(8)を含む。さらに、
図2(b)は、第2の印刷領域(5)の高さが第1の印刷領域(4)より高く形成されている。
なお、
図2(c)に示すように、第1の印刷領域(4)には機能性顔料(8)を含まず、第2の印刷領域(5)にのみ機能性顔料(8)を含み、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の高さがほぼ等しく形成されている印刷物(1)も本発明の範囲内である。
【0019】
次に、本発明における印刷物(1)の別の形態について説明する。
図2(a)は印刷物(1)の印刷領域(3)を示す図であり、
図3(a)は、
図2(a)の印刷領域(3)のXX´断面図である。
本発明の印刷物(1)における印刷領域(3)は、
図3(a)に示すように第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)から成り、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)とも顔料を含まない1種類のクリアインキ(7)により形成されている。そのため、両方の領域には顔料が含まれない。また、
図3(a)は、第2の印刷領域(5)の高さが第1の印刷領域(4)より高く形成されている。
【0020】
また、本発明における印刷物(1)別の形態について説明する。
図2(a)は印刷物(1)の印刷領域(3)であり、
図3(b)及び
図3(b’)は、
図2(a)の印刷領域(3)のXX´断面図である。
本発明の印刷物(1)における印刷領域(3)は、
図3(b)に示すように第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)から成り、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)とも1種類の機能性顔料(8)を含む1種類のインキ(7)により形成されている。第2の印刷領域(5)は、第1の印刷領域(4)より多くの機能性顔料(8)を含んでいる。また、第2の印刷領域(5)の高さが第1の印刷領域(4)より高く形成されている。
なお、
図3(b’)に示すように、第2の印刷領域(5)が、第1の印刷領域(4)より多くの機能性顔料(8)を含み、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の高さがほぼ等しく形成されている印刷物(1)も本発明の範囲内である。
【0021】
更に、本発明における印刷物(1)の別の形態について説明する。
図2(a)は印刷物(1)印刷領域(3)であり、
図3(c)及び
図3(c’)は、
図2(a)の印刷領域(3)のXX´断面図である。
本発明の印刷物(1)における印刷領域(3)は、
図3(c)に示すように第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)から成り、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)とも第1の顔料(8a)と第2の顔料(8b)の2種類の機能性顔料(8)を含む1種類のインキ(7)により形成されている。また、第1の顔料(8a)は、第2の顔料(8b)より小さい粒子径である。
図3(c)の印刷物(1)は、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)とも顔料径が小さい第1の顔料(8a)を含むが、第2の印刷領域(5)は、第1の印刷領域(4)より多くの第1の顔料(8a)を含んでいる。また、第2の印刷領域(5)のみ第2の顔料(8b)を含んでいる。そして、第2の印刷領域(5)の高さは、第1の印刷領域(4)より高く形成されている。
なお、
図3(c’)に示すように、第2の印刷領域(5)は、第1の印刷領域(4)より多くの第1の顔料(8a)を含むとともに、第2の印刷領域(5)のみ第2の顔料(8b)を含む構成であり、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の高さがほぼ等しい印刷物(1)も本発明の範囲内である。以上が、本発明における印刷物(1)の説明である。
【0022】
(印刷物の作成方法)
次に、本発明の印刷物(1)の作成方法について説明する。印刷物(1)は、スクリーン印刷により、1種類のインキ(7)を基材(2)に一度刷りで印刷することで作成される。
【0023】
(印刷装置)
印刷装置は、フラットベッド型、ロータリー型のいずれのスクリーン印刷装置でもよい。また、上述したインキ(7)の硬化方式に合わせ、熱風乾燥、IR乾燥、UV照射等、またはそれらの複合の乾燥装置を備える。
【0024】
(版面)
次に、本発明において使用するスクリーン版面について説明する。
図4に、本発明の印刷物(1)をスクリーン印刷機で印刷するためのスクリーン版面(9)の構成を示す。
図4(a)は、印刷物(1)の印刷領域(3)に対応するスクリーン版面(9)のパターン領域(10)の平面図であり、
図4(b)は、スクリーン版面(9)のパターン領域(10)の一部拡大図である。また、
図4(c)は、
図4(b)に示すスクリーン版面(9)のパターン領域(10)のXX´断面図である。
【0025】
図4(c)に示すスクリーン版面(9)は、ベース層(9a)にレリーフ層(9b)を積層した構造である。ここで、スクリーン版面(9)の作製方法について、
図5を用いて説明する。
まず、
図5(a)に示すようにベース層(9a)を用意し、
図5(b)に示すように「ベース層(9a)にレリーフ層(9b)を積層する。次に、
図5(c)に示すようにレーザーにより、レリーフ層(9b)にパターンに従い開口部(14a)を形成する。続いて、
図5(d)に示すように、レリーフ層(9b)に形成したパターンに合わせて、ベース層(9a)に部分開口部(14b)をレーザーで形成する。この構造とすることで、レリーフ層(9b)に形成したパターンに従った開口部(14a)に合わせて、ベース層(9a)の部分開口部(14b)を適宜設計することができ、同一版面内に多様なパターンをそれぞれ最適な条件で構成することができる。上記スクリーン版面(9)の作成方法は、本出願人による特開2020-175605号公報の記載によるものである。
【0026】
本発明では、上記に加えて、異なる印刷領域(3)において境い目のない盛りを有する印刷物(3)を作成するために、スクリーン版面(9)は、少なくとも、第1の開口領域(11)と第2の開口領域(12)を有し、第1の開口領域(11)、第2の開口領域(12)は隣接するとともに、開口領域の境界(K)における第1の開口領域(11)の部分開口部(14b)と、第2の開口領域(12)の部分開口部(14b’)の間隔(T)を考慮して設計する。このとき、第1の開口領域(11)の部分開口部(14b)と、第2の開口領域(12)の部分開口部(14b’)の間隔(T)は、形成する印刷領域(3)の大きさや、用いる機能性顔料(8)の粒子径等によって異なるが、20μmから500μmの範囲が好ましい。間隔(T)が20μm以下であれば、スクリーン版面(9)の強度が損なわれるため好ましくなく、間隔(T)が500μm以上であれば、境界(K)にインキが供給されず、境い目のない印刷領域(3)が得られにくいためである。
なお、本実施の形態では、部分開口部(14b、14b’)の形状は、円形で示しているが、円、楕円、正方形、長方形、台形、又は六角形(図示せず)等、任意の形状で構わない。
【0027】
(ベース層)
ベース層(9a)は、樹脂材料又は金属層から成り、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、ステンレス等の金属、又はポリカーボネート、PET等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等のエンジニアプラスチック等の樹脂を使用することができる。ベース層(9a)の厚さは、30~200μmが好ましい。30μm以下では版面の強度が不足することになり、200μm以上ではインキの吐出不良が発生する。
【0028】
(レリーフ層)
レリーフ層(9b)は、樹脂材料、樹脂材料に金属めっき層又はダイヤモンドライクカーボン被覆層から成り、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、又はDLC被覆層による気相めっき、電解法によるクロム、ニッケル等の金属めっきを施しためっき層等の金属膜を前述の樹脂材料に被覆して使用することができる。めっき層を形成することで耐久性が向上する。
レリーフ層(9b)に形成する気相めっきであるDLC被覆層は、公知のCVD法あるプラズマCVD法、紫外線による励起を利用した光CVD法、ソースに有機金属を用いた化合物結晶成長用のMOCVD法等の公知の方法が適用できる。
レリーフ層(9b)の厚みは、3~30μmが好ましい。3μm以下では印刷画線にベース層(9a)の吐出ムラによって画線頂点、画線高さの位置が乱れる。30μm以上ではベース層(9a)からのインキ供給が不足し印刷画線にカスレ等が発生する。なお、ベース層(9a)とレリーフ層(9b)を異なる材質で構成することで、レーザー加工時に異なるレーザーで選択的に加工ができるようになる。例えば、ベース層(9a)をステンレス、レリーフ層(2)をポリマーとすることができる。
また、レリーフ層(9b)の厚みはベース層(9a)の厚みより薄い必要がある。凸状画線の印刷に粘度が0.5~3.0Pa・s(30℃)までの紫外線硬化型インキを用いる場合、レリーフ層(9b)の方が厚いとベース層(9a)からのインキ供給不足が生じるためである。
【0029】
(レーザー)
本発明において、開口部(14a)及び部分開口部(14b)の形成に用いるレーザーは、CO2レーザーやファイバーレーザー等が用いられるが、開口部を設けることができれば、レーザーの種類は限定されない。
【0030】
続いて、本発明のスクリーン版面(9)の特徴について更に説明する。本発明において、第1の開口領域(11)、第2の開口領域(12)・・・第nの開口領域は、開口径(L)、透過容積(V)の少なくとも1つが異なっている。例えば、
図4(c)に示すスクリーン版面(9)は、第1の開口領域(11)に開口径(L1)を、第2の開口領域(12)に開口径(L2)を有しており、開口径(L1)と開口径(L2)の大きさが異なる構成を示している。
【0031】
上述の透過容積(V)とは、印刷領域における計算上のインキ転移量cm
3/m
2を示し、単位面積あたりのインキ容積で算出することができる。印刷領域における透過容積(V)が多いと、対応する印刷領域の高さが高くなり、印刷領域における透過容積(V)が低いと対応する印刷領域の高さが低くなる。
また、開口径(L)とは、
図4(b)に示すように、ベース層(9a)に設けられた開口部(14b)の直径を示す。開口径(L)が大きければ、粒子径の大きい機能性顔料(8)が印刷領域に転移され、開口径(L)が小さければ、粒子径の大きい機能性顔料(8)が印刷領域に転移されず、開口径(L)より粒子径の小さい機能性顔料(8)のみ印刷領域に転移される。
【0032】
本発明では、ベース層(9a)の開口径(L)を調整することによって、印刷領域(3)に含まれる単位面積当たりの機能性顔料(8)の粒子数や粒子径を制御することができる。また、透過容積(V)を調整することによって、印刷領域(3)の高さや、単位面積当たりの機能性顔料(8)の数を制御することができる。
なお、本実施の形態において、開口領域における開口部(14)の配列は、説明上、
図4(b)に示すようにX方向、Y方向に等間隔に配列しているが、開口部(14)の配列に限定はなく、自由に設計することができる。
【0033】
図6は、印刷物(1)の印刷領域(3)における単位面積当たりの機能性顔料(8)の粒子数について説明する図である。印刷領域(3)に含まれる単位面積当たりの機能性顔料(8)の粒子数は、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)において、それぞれの所定の面積(S)上に存在する機能性顔料(8)の粒子数を示す。
図6の場合、第1の印刷領域(4)における単位面積当たりの機能性顔料(8)の粒子数は2個であり、第2の印刷領域(5)における単位面積当たりの機能性顔料(8)の粒子数は5個である。また、単位面積当たりの機能性顔料(8)の粒子数が多いほど、印刷領域の機能性の発現強度が強くなる。なお、単位面積当たりのインキ体積は関係ないものとする。
【0034】
(開口径が同じで透過容積が異なる例)
ここで、スクリーン版面(9)と印刷物(1)との関係について説明する。
図7(a)は、スクリーン印刷時における基材(2)、スクリーン版面(9)及びインキ(7)の状態を示す図であり、スキージ(図示せず)により、D1方向にインキ(7)がスクリーン版面内を通過し、基材(2)へ転移することで印刷される。
スクリーン版面(9)は、第1の開口領域(11)と第2の開口領域(12)の設計上の境い目を境界(K:点線で図示)とし、第1の開口領域(11)と第2の開口領域(12)の開口径(L)は同じで、透過容積(V)が異なっており、第2の開口領域(12)が、第1の開口領域(11)より透過容積(V)が大きい関係にある。
また、インキ(7)は、1種類の機能性顔料(8)を含んでおり、
図7(a)では、説明上、粒子径大と、粒子径小の顔料を有している。機能性顔料(8)の粒子径大は、第1の開口領域(11)及び第2の開口領域(12)の開口径(L)より大きいものとし、粒子径小は第1の開口領域(11)及び第2の開口領域(12)の開口径(L)より小さいものとする。そして、スクリーン版面(9)の第1の開口領域(11)に対応して第1の印刷領域(4)が、第2の開口領域(12)に対応して第2の印刷領域(5)が形成される。
【0035】
得られた印刷物(1)は、
図7(b)に示すように、第2の印刷領域(5)に含まれる粒子径小の機能性顔料(8)は、第1の印刷領域(4)に含まれる粒子径小の機能性顔料(8)より多い。理由は、第2の開口領域(12)が、第1の開口領域(11)より透過容積(V)が大きいため、第2の開口領域(12)に対応する第2の印刷領域(5)に粒子径小の機能性顔料(8)が多く転移するからである。
また、印刷物(1)は、
図7(b)に示すように、第2の開口領域(12)の透過容積(V)が、第1の開口領域(11)より大きいため、第2の印刷領域(5)の高さ(h2)は、第1の印刷領域(4)の高さ(h1)より高い。
【0036】
本発明の印刷物(1)は、スクリーン版面(9)において隣接した第1の開口領域(11)と第2の開口領域(12)の設計上の境界(K)にあたる第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を共有した境い目のない構造であり、かつ第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の高さの違い、あるいは第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)に含まれる機能性顔料(8)の粒子数の違いにより、機能性特性の違いを視認及び/または検知することができる。
【0037】
(透過容積が同じで開口径が異なる例)
次に、スクリーン版面(9)と印刷物(1)との関係の別の例について説明する。
図8(a)は、スクリーン印刷時における基材(2)、スクリーン版面(9)及びインキ(7)の状態を示す図であり、スキージ(図示せず)により、D1方向にインキ(7)がスクリーン版面内を通過し、基材(2)へ転移することで印刷される。
スクリーン版面(9)は、第1の開口領域(11)と第2の開口領域(12)の設計上の境い目を境界(K:点線で図示)とし、第1の開口領域(11)と第2の開口領域(12)における透過容積(V)は同じであるが、第2の開口領域(12)の開口径(L2)は、第1の開口領域(11)の開口径(L1)に比べて大きい関係にある。
図8(a)のスクリーン版面(9)に対応して印刷された印刷領域(3)の断面図を
図8(b)に示す。インキ(7)は、1種類の機能性顔料(8)を含んでおり、
図8(a)では、説明上、粒子径大と、粒子径小の顔料を有している。機能性顔料(8)の粒子径大は、第1の開口領域(11)の開口径(L1)より大きく、第2の開口領域(12)の開口径(L2)より小さいものとする。また、粒子径小は、第1の開口領域(11)の開口径(L1)及び第2の開口領域(12)の開口径(L2)より小さいものとする。
そして、スクリーン版面(9)の第1の開口領域(11)に対応して第1の印刷領域(4)が、第2の開口領域(12)に対応して第2の印刷領域(5)が形成される。
【0038】
図8(b)は、
図8(a)のスクリーン版面(9)によって印刷した印刷領域(3)のXX´断面図を示す図である。スクリーン版面(9)の第1の開口領域(11)に対応して第1の印刷領域(4)が、第2の開口領域(12)に対応して第2の印刷領域(12)が形成される。
このとき、各印刷領域における透過容積(V)は同じであるが、第2の開口領域(12)の開口径(L2)が第1の開口領域(11)の開口径(L1)より大きいため、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の高さは同じで、第2の印刷領域(12)のみ粒子径が大きい機能性顔料(8)を有する。
【0039】
得られた印刷物(1)は、スクリーン版面(9)において隣接した第1の開口領域(11)と第2の開口領域(12)の境界(K)にあたる第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を共有した境い目のない構造であり、かつ第1の印刷領域(5)と第2の印刷領域(5)に含まれる機能性顔料(8)の粒子数、あるいは粒子径の違いにより、機能性特性の違いを視認及び/または検知することができる。
【0040】
(スクリーン版面の開口径)
ここで、
図9にスクリーン版面(9)の開口径(L)の構成例について説明する。
図9(a)及び
図9(b)に示すとおり、スクリーン版面(9)のベース層(9a)において、インキが入り込む側の開口径(L1’)に対して、基材(2)に接するレリーフ層側の開口径をL1とした場合、L1≧L1’の関係であることが望ましい。その理由は、L1<L1’では、開口部(14)に入った顔料がベース層(9a)で詰まり、印刷不良が発生するためである。
【0041】
本実施の形態において印刷領域(3)は、スクリーン版面(9)を構成するベース層(9a)の第1の開口領域(11)、第2の開口領域(12)、・・・第nの開口領域について、各領域において透過容積(V)または開口径(L)の少なくとも1つが異なることから、それぞれの開口領域に対応する第1の印刷領域(4)、第2の印刷領域(5)・・・第nの印刷領域において、互いに各印刷領域における膜厚方向の高さ、各印刷領域における単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数あるいは粒子径の少なくとも1つ以上が異なる印刷物(1)を得ることができる。以上が、本発明の印刷物(1)及びその作成方法に係る基本的な説明である。
【0042】
続いて、本発明に係る実施の形態1として、クリアインキを単独で用いる例、実施の形態2として、1種類の機能性顔料(8)を含むインキを用いる例、実施の形態3として、2種類以上の機能性顔料(8)を含むインキを用いる例についてそれぞれ説明する。
【0043】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、
図4に示すスクリーン版面(9)及びインキ(7)として機能性顔料(8)を含まないクリアインキを用いた例で説明する。
図4に示すスクリーン版面(9)は、第2の開口領域(12)の開口径(L2)及び透過容積(V)が、第1の開口領域(11)の開口径(L1)及び透過容積(V)に比べ、共に大きい構成である。
【0044】
図10(a)は、印刷領域(3)に対応するスクリーン版面(9)の断面図であり、
図10(b)は、スクリーン版面(9)により印刷された印刷物(1)の印刷領域(3)の平面図である。また、
図10(c)は、
図10(b)の印刷領域(3)のXX´断面図である。
図10(c)は、
図10(a)においてスキージ(図示せず)によりD1の方向にインキ(7)が版面内を通過し、基材(2)へ転移することにより印刷される。
【0045】
また、印刷領域(3)は、第1の開口領域(11)に対応して第1の印刷領域(4)が、第2の開口領域(12)に対応して第2の印刷領域(5)が基材(2)上に印刷されることで形成される。実施の形態1では、第1の開口領域(11)に比べて、第2の開口領域(12)の透過容積(V)が大きいことから、第1の印刷領域(4)より第2の印刷領域(5)の膜厚が高い印刷物(1)が得られる。
【0046】
図11は、印刷領域(3)における第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の膜厚の高さの関係図である。第1の印刷領域(4)の高さをh1、第2の印刷領域(5)の高さをh2とした場合、h1とh2の差にあたるΔhは3μm以上が望ましく、より好ましくは8μm以上で良好な視認性が得られる。高さの差(Δh)が3μm未満では、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の差が視認しづらいためである。
なお、図示しないが、Δhは3μm以上であればよく、第1の印刷領域(4)が第2の印刷領域(5)より高い構成でも構わない。また、スクリーン版面(9)の構成によっては、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)に加え、高さの差(Δh)が3μm以上異なる領域として第3の印刷領域、第4の印刷領域・・・第nの印刷領域と任意の印刷領域を設けることができる。
【0047】
(効果)
図12(a)は、観察光源(B)と観察者(A)の位置関係を示す図である。観察者(A)が拡散反射角に相当する観察角度(A1)から印刷領域(3)を目視で観察した場合、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の境界(K)は区別がつかず、
図12(b)に示すように基材と第1の印刷領域(4)の境にあたる輪郭模様が視認される。一方、正反射角に相当する観察角度(A2)から印刷領域(3)を目視で観察した場合、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の高低差により境界(K)で光の反射が遮られるため、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を区別して視認することができる。この例では、
図12(c)に示すように、第2の印刷領域(5)の高さにより第1の領域(4)が遮られ、第2の印刷領域(5)のみが視認される。さらに拡散角から正反射角に連続して目視で観察することにより第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の高低差により反射光の強弱が連続して変化するため、印刷領域(3)を立体的に視認することができる。
【0048】
本発明の実施の形態1では、印刷領域(3)は異なる印刷領域が境い目がなく形成されているため、複数の図柄を複数回の印刷で刷り合せた印刷物のように印刷領域間に隙間やずれがなく偽造抵抗力、意匠性が向上する。また、印刷領域(3)が高さの異なる印刷領域が境い目なく構成されているため、観察角度に応じて視認できる印刷領域が変化する潜像効果を得ることができる。さらに、観察角度を連続して変化させることにより、印刷模様が浮き出て見える立体効果を奏する。
【0049】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、 実施の形態1と同じ内容は省略し、異なる点のみ説明する。本発明の実施の形態2では、
図4に示すスクリーン版面(9)及び機能性顔料(8)を含むインキ(7)を用いた形態について説明する。
図4に示すスクリーン版面(9)は、第2の開口領域(12)の透過容積(V)及び開口径(L2)が、第1の開口領域(11)の透過容積(V)及び開口径(L1)に比べ共に大きい構成である。
また、説明上、機能性顔料(8)は、粒子径大と粒子径小からなる顔料とし、粒子径大は第1の開口領域(11)の開口径(L1)より大きく、かつ、第2の開口領域(12)の開口径(L2)より小さく、粒子径小は第1の開口領域(11)の開口径(L1)及び第2の開口領域(12)の開口径(L2)より小さいものとする。
【0050】
図13(a)は、印刷領域(3)に対応するスクリーン版面(9)の断面図であり、
図13(b)は、スクリーン版面(9)により印刷された印刷物(1)の印刷領域(3)の平面図である。また、
図13(c)は、
図13(b)の印刷領域(3)のXX´断面図である。
図13(c)は、
図13(a)においてスキージ(図示せず)によりD1の方向にインキ(7)が版面内を通過し、基材(2)へ転移することにより印刷される。
【0051】
印刷領域(3)は、基材(2)上に第1の開口領域(11)に対応して第1の印刷領域(4)が、第2の開口領域(12)に対応して第2の印刷領域(5)が印刷されることにより形成される。第2の開口領域(12)の透過容積(V)が第1の開口領域(11)より大きいことから、第2の印刷領域(5)の高さは、第1の印刷領域(4)より高く、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数も多い。
さらに、機能性顔料(8)の粒子径大は、第1の開口領域(11)の開口径(L1)より大きく、第2の開口領域(11)の開口径(L2)より小さいため、機能性顔料(8)の粒子径大は、第2の開口領域(12)の開口径(L2)のみ通過し、基材上に転移することから、
図13(c)に示すように第2の印刷領域(5)には、第1の印刷領域(4)より、機能性顔料(8)の粒子径大を含む。
【0052】
機能性顔料(8)により、印刷領域(3)における第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を区別して視認及び/又は検知するためには、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)に含まれる単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の少なくとも1つが異なっていればよい。本実施の形態は、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の両方が異なる構成例である。
【0053】
機能性顔料(8)が着色顔料、パール顔料、メタリック顔料、可視発光の蛍光顔料等のように、可視光にて視認できる場合、色差ΔE≧1.5で異なる印刷領域として視認できる。ΔE<1.5では、異なる色相として区別できない。また、機能性顔料(8)が磁性顔料、導電性顔料、可視発光以外の蛍光顔料等のように機械読取に用いる場合には、検知精度に応じて印刷領域を区別するために、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径に差が生じるように適宜調整すればよい。
【0054】
印刷領域(3)は単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の少なくとも1つ以上が異なる印刷領域が複数(n≧2)隣接して成るため、機能性顔料(8)の特性に応じた境い目のない変化を視認及び/または検知できる。
例えば、機能性顔料(8)が着色顔料である場合、境い目のない印刷領域において濃度が異なって視認できる。また、別の例として、機能性顔料(8)が紫外励起可視発光の蛍光顔料である場合、境い目のない印刷領域においてにおいて発光強度が異なって視認できる。
さらに、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の少なくとも1つ以上が異なる印刷領域を形成することにより、濃度や発光強度を徐々に変化させた階調模様を形成することができる。また、機能性顔料(8)が磁性顔料、導電性顔料等の機械読取特性を有する場合には、機械読取強度を多段階で調整することができる。加えて印刷領域の高さが異なる場合には、実施の形態1の効果も奏する。
【0055】
(効果)
図14は、実施の形態2の効果を示す図である。
図14では、機能性顔料(8)として紫外励起可視発光の無色蛍光顔料を用い、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)で単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数及び粒子径が異なる構成である。
紫外励起可視発光の無色蛍光顔料とは、可視光下では無色であり、紫外光下にて可視光を発色する顔料のことを示す。第2の印刷領域(4)は第1の印刷領域(5)に比べて、第1の顔料(8a)の単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が多く、さらに粒子径が大きい。このため紫外光下において、第2の印刷領域(5)における発光強度(I2)は、第1の印刷領域(4)における発光強度(I1)より大きくなり、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)で発光強度に差が生じる。この発光強度の差が色差ΔE≧1.5相当となることで、境界(K)において第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を区別して視認することができる。
【0056】
本実施の形態2では、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)において、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数及び粒子径が共に異なる構成を示したが、発光強度に十分な差が生じる構成であればよく、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の少なくとも1つ以上を異なる構成とすることができる。また、第1の顔料(8a)として紫外励起可視発光の無色蛍光顔料の例を示したが、他の機能性顔料(8)においても同様である。
【0057】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、 実施の形態1及び実施例2と同じ内容は省略し、異なる点のみ説明する。本発明の実施の形態3では、
図4に示すスクリーン版面(9)、及び機能性顔料(8)として第1の顔料(8a)及び第2の顔料(8b)を含むインキ(7)を用いた形態について説明する。
図4に示すスクリーン版面(9)は、第2の開口領域(12)における透過容積(V)及び開口径(L2)が、第1の開口領域(11)における透過容積(V)及び開口径(L1)に比べ共に大きい構成である。
【0058】
第1の顔料(8a)は、第1の開口領域(11)の開口径(L1)及び第2の開口領域(12)の開口径(L2)より小さく、第2の顔料(8b)は、第1の開口領域(11)の開口径(L1)より大きく、かつ第2の開口領域(12)の開口径(L2)より小さいものとする。なお、第2の顔料(8b)は第1の顔料(8a)に比べて粒度分布が無視できる程度に大きいものとする。
【0059】
図15(a)は、印刷領域(3)に対応するスクリーン版面(9)の断面図であり、
図15(b)は、スクリーン版面(9)により印刷された印刷物(1)の印刷領域(3)の平面図である。また、
図15(c)は、
図15(b)の印刷領域(3)のXX´断面図である。
図15(c)は、
図15(a)においてスキージ(図示せず)によりD1の方向にインキ(7)が版面内を通過し、基材(2)へ転移することにより印刷される。
【0060】
印刷領域(3)は、基材(2)に第1の開口領域(11)に対応して第1の印刷領域(4)が、第2の開口領域(12)に対応して第2の印刷領域(5)が印刷されることにより形成される。第2の開口領域(12)は第1の開口領域(11)に比べて、透過容積(V)が大きいことから、第1の印刷領域(4)より第2の印刷領域(5)の高さが高く、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が多い。さらに、第1の顔料(8a)は、第1の開口領域(11)と第2の開口領域(12)の開口部(14)を共に通過するため、各開口領域の透過容積(V)に応じて、第2の印刷領域(5)の単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が、第1の印刷領域(4)より多くなる。一方、第2の顔料(8b)は、第1の開口領域(11)は通過せず、第2の開口領域(12)のみ通過するため、第1の印刷領域(4)には存在せず、第2の印刷領域(5)の単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が、第1の印刷領域(4)より多くなる。
【0061】
機能性顔料(8)により、印刷領域(3)における第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を区別して視認およびまたは検知するためには、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)に含まれる第1の顔料(8a)及び第2の顔料(8b)の単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の少なくとも1つが異なる必要がある。本実施の形態3は、第1の顔料(8a)及び第2の顔料(8b)のそれぞれの単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が異なる構成である。
【0062】
なお、第1の顔料(8a)と第2の顔料(8b)は、異なる機能性顔料(8)であってもよいし、同じ機能性顔料(8)であっても特性が異なればよい。同じ機能性顔料(8)であって特性が異なるとは、例えば機能性顔料(8)として着色顔料を選択した際、第1の顔料(8a)をマゼンタ、第2の顔料(8b)をシアンとし、着色顔料の機能である視認できる色相が異なることなどを示す。
【0063】
印刷領域(3)は、機能性顔料(8)である第1の顔料(8a)及び第2の顔料(8b)それぞれの単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の少なくとも1つ以上が異なる印刷領域が複数(n≧2)隣接して成るため、各印刷領域における第1の顔料(8a)及び第2の顔料(8b)に応じた境い目のない変化を視認及び/又は検知することができる。
例えば、第1の顔料(8a)に紫外励起可視発光の無色蛍光顔料、第2の顔料(8b)に着色顔料(非蛍光顔料)を用いた場合、可視光下では、第1の顔料(8a)が無色であるため、第2の顔料(8b)の単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の違いに応じて、各印刷領域における濃度が異なって視認できる。一方、紫外光下では、第1の顔料(8a)による発光を、第2の顔料(8b)が隠蔽するため、第1の顔料(8a)に対し第2の顔料(8b)が多く含まれる印刷領域ほど、発光強度が抑えられて視認することができる。このように、第1の顔料(8a)と第2の顔料(8b)の機能性が混ざり合う、強め合う、または打消し合うことで第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を区別して視認することができる。加えて印刷領域の高さが異なる場合には、実施の形態1の効果も奏する。
【0064】
(効果)
図16は、実施の形態3の効果を示す図である。
図16では、例として第1の顔料(8a)に紫外励起可視発光の無色蛍光顔料、第2の顔料(8b)に着色顔料(非蛍光顔料)を用い、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)でそれぞれの顔料の単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が異なる構成を示す。第2の顔料(8b)である着色顔料(非蛍光顔料)は、カーボンブラックや金属ベースのメタリック顔料などのように可視光下で着色し、紫外光下で発光せず、他の機能性顔料が発光する場合に、その発光を隠蔽する顔料とする。
【0065】
第2の印刷領域(5)は第1の印刷領域(4)に比べ、第1の顔料(8a)及び第2の顔料(8b)共に単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が多い。特に第2の顔料(8b)は、第1の印刷領域(4)に存在せず、選択的に第2の印刷領域(5)に存在する。このため可視光下において、第2の顔料(8b)の単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が多い第2の印刷領域(5)は着色され、濃度が高く色差ΔE≧1.5となることで、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を区別して視認できる。また、紫外光下においては、第2の印刷領域(5)にて、第1の顔料(8a)による発光を第2の顔料(8b)が隠蔽する効果が働くため、第1の印刷領域(4)における発光強度(I1´)が第2の印刷領域(5)における発光強度(I2´)より強くなり、発光強度に差が生じる。この発光強度の差が色差ΔE≧1.5相当となることで、境界(K)において第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)を区別して視認することができる。
【0066】
本実施の形態3では、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)において、第1の顔料(8a)及び第2の顔料(8b)の単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が異なる構成を示したが、可視光下による濃度及び/又は紫外光下による発光強度に十分な差が生じる構成であればよく、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数、粒子径の少なくとも1つ以上が異なる構成であればよい。本実施の形態3では、第1の顔料(8a)、第2の顔料(8b)の例を示したが、2つ以上の顔料を用いても良く、他の機能性顔料(8)を組み合わせても良い。
【0067】
(実施例1)
図1に示す印刷物(1)の実施例について説明する。基材(2)に形成される印刷領域(3)は、
図1に示す第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)から成る。基材(2)は、コート紙(しらおいマット_日本製紙(株))を用い、スクリーン版面(9)は
図4に示す版面を用いた。
第1の印刷領域(4)に対応する第1の開口領域(11)について、開口径(L)を80μm、透過容積(V)を15.4μmとした。また、第2の印刷領域(5)に対応する第2の開口領域(12)について、開口径(L)を150μm、透過容積(V)を24.0μmとした。さらに、スクリーン版面(9)の開口領域の境界(K)における第1の開口領域(11)の部分開口部(14b)と第2の開口領域(12)の部分開口部(14b’)の間隔(T)は60μmとした。インキ(7)は、市販のクリアインキ(UVA9117_(株)セイコーアドバンス製)を用いた。
次に、基材(2)にフラットベッドスクリーン印刷にて印刷領域(3)を印刷し、UV照射(メタルハライドランプ_積算光量100mJ/cm
2)で硬化させた。得られた印刷領域(3)の第1の印刷領域(4)の高さ(h1)は12.5μm、第2の印刷領域(5)の高さ(h2)は22.5μmであり、高さの差(Δh)は10.0μmであった。なお、領域の高さは、3次元粗さ測定機(SURFCOM1500DX3_(株)東京精密)を用いて測定した。
【0068】
得られた印刷物(1)は、印刷領域(3)において第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)との間に境い目のない印刷物(1)であった。
この印刷物(1)を可視光下にて拡散反射角に相当する観察角度(A1)から目視で観察すると、印刷領域(3)における第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)は、境い目がないため区別して視認できず、
図12(b)に示すように第1の印刷領域(4)と基材(1)の境い目にあたる輪郭模様が視認できた。
一方、正反射角に相当する観察角度(A2)から印刷領域(3)を目視で観察した場合、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)の高低差により境界(K)で光の反射が遮ら、
図12(c)に示すように、第2の印刷領域(5)の高さにより第1の領域(4)が遮られ、第2の印刷領域(5)のみが視認できた。さらに、観察角度を連続して変化させることにより、印刷模様が浮き出て見える立体効果が確認できた。
【0069】
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。実施例2についても、実施例1と同じ
図1に示す図柄の印刷物(1)であり、形成される印刷領域(3)は、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)から成る。実施例2では実施例1とは異なるインキ(7)を用い、それ以外は同様とした。
インキ(7)は、市販のクリアインキ(UVA9117_(株)セイコーアドバンス製)と、1種類の機能性顔料(8)として、紫外励起可視発光の無色蛍光顔料である蛍光メジウム(BESTCURE UV蛍光メジウムR_T&KTOKA製)を90:10の比で混合した。このとき、機能性顔料(8)の粒子径は2.54μm(0.1ミル)以下のインキとした。なお、粒子径は、グラインドメータを用いて測定した。
次に、基材(2)にフラットベッドスクリーン印刷にて印刷領域(3)を印刷し、UV照射(メタルハライドランプ_積算光量100mJ/cm
2)で硬化させた。
得られた印刷領域(3)における第1の印刷領域(4)の高さ(h1)は12.5μm、第2の印刷領域(5)の高さ(h2)は22.5μmであり、高さの差(Δh)は10.0μmであった。なお、画線高さは、3次元粗さ測定機(SURFCOM1500DX3_(株)東京精密)を用いて測定した。
【0070】
(効果)
得られた印刷物(1)は、
図13(b)及び
図13(c)に示すように印刷領域(3)において第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)に境い目のない構成であった。
この印刷物(1)を可視光下にて目視で観察すると、印刷領域(3)において、第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)は境い目がないため区別して視認できず、第1の印刷領域(4)と基材(1)の境い目にあたる輪郭模様が視認できた(図示せず)。
また、この印刷物(1)を紫外光下にて観察すると、印刷領域(3)において、第1の印刷領域(4)より第2の印刷領域(5)が、第1の顔料である無色蛍光顔料の効果により強く発光して視認された。
また、可視光下にて印刷領域(3)を異なる観察角度で観察したところ、観察角度に応じて視認できる印刷領域が変化する潜像効果を確認した。さらに、観察角度を連続して変化させることにより、印刷模様が浮き出て見える立体効果を確認した。
【0071】
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。実施例3についても、実施例1及び実施例2と同じ
図1に示す図柄の印刷物(1)であり、形成される印刷領域(3)は、第1の印刷領域(4)及び第2の印刷領域(5)から成る。実施例3では実施例1及び実施例2とは異なるインキ(7)を用い、それ以外は同様とした。
インキ(7)は、機能性顔料(8)を2種類用い、市販のクリアインキ(UVA9117_(株)セイコーアドバンス製)と、第1の顔料(8a)として紫外励起可視発光の無色蛍光顔料である蛍光メジウム(BESTCURE UV蛍光メジウムR_(株)T&KTOKA)と、第2の顔料(8b)として、着色顔料(UVカートンLシアン_(株)T&KTOKA)を85:10:5の比で混合した。このとき、第1の顔料(8a)である紫外励起可視発光の無色蛍光顔料の粒子径は2.54μm(0.1ミル)以下、第2の顔料(8b)である着色顔料の粒子径は2.54μm(0.1ミル)以下のインキとした。なお、粒子径は、グラインドメータを用いて測定した。
次に、基材(2)にフラットベッドスクリーン印刷にて印刷領域(3)を印刷し、UV照射(メタルハライドランプ_積算光量100mJ/cm
2)で硬化させた。
得られた印刷領域(3)における第1の印刷領域(4)の高さ(h1)は12.5μm、第2の印刷領域(5)の高さ(h2)は22.5μmであり、高さの差(Δh)は10.0μmであった。なお、画線高さは、3次元粗さ測定機(SURFCOM1500DX3_(株)東京精密)を用いて測定した。
【0072】
(効果)
得られた印刷物(1)は、印刷領域(3)において第1の印刷領域(4)と第2の印刷領域(5)に境い目のない構成であった。
この印刷物(1)を可視光下にて目視で観察すると、印刷領域(3)において、第1の印刷領域(4)より第2の印刷領域(5)が、第2の顔料である着色顔料の効果によりシアンが濃く視認できた。紫外光下においては、第1の顔料(8a)による発光を第2の顔料(8b)が隠蔽する効果が働くため、第1の印刷領域(4)における発光強度(I1)と第2の印刷領域(5)における発光強度(I2)は同程度となり、第2の顔料(8b)の粒子数が少なく濃度の低い第1の印刷領域(4)に比べ、第2の顔料(8b)の粒子数が多く濃度の高い第2の印刷領域(5)の方が暗く視認され各印刷領域を区別することができた。
また、可視光下にて印刷領域(3)を異なる観察角度で観察したところ、観察角度に応じて視認できる印刷領域が変化する潜像効果を確認した。さらに、観察角度を連続して変化させることにより、印刷模様が浮き出て見える立体効果を確認した。
【0073】
(実施例4)
次に、
図17に示す実施例4について説明する。実施例4は、本発明におけるスクリーン版面(9)の各開口領域に設けられた開口径(L)と透過容積(V)による、インキ(7)に含まれる機能性顔料(8)のふるい分け効果を確認した実験である。
実施例4の印刷物(1)における印刷領域(3)は、
図17(a)に示す第1の印刷領域(4)、第2の印刷領域(5)及び第3の印刷領域(6)から成る。
印刷方式、インキ硬化方式は、実施例1、実施例2、実施例3と同じであるが、スクリーン版面及びインキについては以下のとおりとした。
スクリーン版面(9)は、第1の印刷領域(4)に対応する第1の開口領域(11)、第2の印刷領域(5)に対応する第2の開口領域(12)及び第3の印刷領域(6)に対応する第3の開口領域(13)により構成した版面を用いた。
また、第1の印刷領域(4)に対応する第1の開口領域(11)は開口径(L1)60μm、透過容積(V1)11.8μm、第2の印刷領域(5)に対応する第2の開口領域(12)は開口径(L2)120μm、透過容積(V2)20.9μm、第3の印刷領域(6)に対応する第3の開口領域(13)は開口径(L3)200μm、透過容積(V3)27.9μmとした。
インキ(7)は、市販のクリアインキ(UVA9117_(株)セイコーアドバンス製)と、1種類の機能性顔料(8)である平均粒子径が20μmである光輝性顔料(クロマシャイン_東洋アルミニウム(株))を90:10で混合したインキを用いた。
次に、基材(2)にフラットベッドスクリーン印刷にて印刷領域(3)を印刷した後、UV照射(メタルハライドランプ_積算光量100mJ/cm
2)で硬化させた。得られた印刷領域(3)における第1の印刷領域(4)の高さ(h1)は5.2μm、第2の印刷領域(5)の高さ(h2)は15.4μm、第3の印刷領域(6)の高さ(h3)は29.8μmであった。画線高さは、3次元粗さ測定機(SURFCOM1500D×3_(株)東京精密)を用いて測定した。
【0074】
図17(b)、
図17(c)及び
図17(d)にスクリーン版面(9)を構成する第1の開口領域(11)、第2の開口領域(12)及び第3の開口領域(13)のデジタルマイクロスコープ(VHX-1000_キーエンス(株))による画像を示す。また、
図17(b’)、
図17(c’)及び
図17(d’)に各開口領域に相当する第1の印刷領域(4)、第2の印刷領域(5)及び第3の印刷領域(6)のデジタルマイクロスコープ(VHX-1000_キーエンス(株))による画像を示す。
第1の印刷領域(4)は、他の印刷領域に比べ、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が少なく、機能性顔料(8)の粒子径が小さい光輝性顔料が多く存在していることを確認した。
続いて第2の印刷領域(5)、第3の印刷領域(6)と透過容積(V)及び開口径が増す順に、単位面積あたりの機能性顔料(8)の粒子数が増加し、機能性顔料(8)の粒子径が大きい光輝性顔料が多く存在することを確認した。
【0075】
(効果)
得られた印刷物(1)は、印刷領域(3)において第1の印刷領域(4)、第2の印刷領域(5)及び第3の印刷領域(6)に境い目のない構成であった。
印刷物(1)を可視光下にて目視で観察すると、印刷領域(3)において、第1の印刷領域(4)の光輝性が最も弱く、第2の印刷領域(5)、第3の印刷領域(6)の順に光輝性が強く視認でき、光輝性による階調効果を確認した。
【符号の説明】
【0076】
1 スクリーン印刷物
2 基材
3 印刷領域
4 第1の印刷領域
5 第2の印刷領域
6 第3の印刷領域
7 インキ
8 機能性顔料
8a 第1の顔料
8b 第2の顔料
9 スクリーン版面
9a ベース層
9b レリーフ層
10 パターン領域
11 第1の開口領域
12 第2の開口領域
13 第3の開口領域
14a 開口部
14b、14b’ 部分開口部
A、A1、A2 観察者
B 観察光源
C 入射光
D 反射光
I1、I1‘、I2、I2’ 発光強度
K 境界
L、L1、L2、L3 開口径
T 境界における部分開口部と部分開口部の間隔
V、V1、V2、V3 透過容積
h1、h2、h3 高さ