(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152459
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】ドットモアレ形成体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20221004BHJP
G09F 19/14 20060101ALI20221004BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
G02B5/18
G09F19/14
G02B5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055241
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木村 健一
【テーマコード(参考)】
2H249
【Fターム(参考)】
2H249AA03
2H249AA07
2H249AA13
2H249AA60
2H249AA65
2H249CA15
2H249CA22
(57)【要約】
【課題】
半球状のドット群で画像を構成することで、観察角度の依存性を低減させ、モアレ模様が観察される像とし、動的・立体的効果を視認しやすくしたドットモアレ形成体の提供。
【解決手段】
光反射性又は光透過性を有する基材の同一面に、半球状の第一の要素を第一の方向、第一のピッチで複数配列した第一の要素群を、第二の方向、第二のピッチで複数配列して形成した第一のドット模様と、半球状の第二の要素を第一の方向、第一のピッチと異なる第三のピッチで複数配列した第二の要素群を、第二の方向、第四のピッチで複数配列して形成された第二のドット模様と、第一の要素と第二の要素の少なくとも一部が重畳して形成され、幅と深さ又は高さが第一のピッチと第三のピッチの差に応じて周期的に変化する第三の要素を複数配列した第三の要素群とにより形成されたモアレ画像を有することを特徴とするドットモアレ形成体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性又は光透過性を有する基材の同一面上の少なくとも一部に、
直径が同じ又は異なる半球状の二つの要素が少なくとも一部が重なるように複数配置され、一部が重なった領域の高さ又は深さが前記二つの要素の高さ又は深さよりも高い又は深いことを特徴とするドットモアレ形成体。
【請求項2】
光反射性又は光透過性を有する基材の同一面上の少なくとも一部に、
第一の高さ又は第一の深さと第一の直径を有する半球状の第一の要素を第一の方向、かつ、第一のピッチにより複数配列した第一の要素群を、第二の方向、かつ、第二のピッチにより複数配列して形成された第一のドット模様と、
第二の高さ又は第二の深さと第二の直径を有する半球状の第二の要素を前記第一の方向、かつ、前記第一のピッチと異なる第三のピッチにより複数配列した第二の要素群を、前記第二の方向、かつ、第四のピッチにより複数配列して形成された第二のドット模様と、
前記第一の要素と前記第二の要素の少なくとも一部が重畳して形成された第三の幅と、前記第一の高さと前記第二の高さより高い第三の高さ又は前記第一の深さと前記第二の深さより深い第三の深さを有し、前記第三の幅と前記第三の高さ又は前記第三の幅と前記第三の深さが、前記第一のピッチと前記第三のピッチの差に応じて周期的に変化する第三の要素を複数配列した第三の要素群とにより形成されたモアレ画像を有することを特徴とするドットモアレ形成体。
【請求項3】
光透過性を有する基材の一方の面の少なくとも一部に、
第一の高さ又は第一の深さと第一の直径を有する半球状の第一の要素を第一の方向、かつ、第一のピッチにより複数配列した第一の要素群を、第二の方向、かつ、第二のピッチにより複数配列して形成された第一のドット模様と、
前記基材の他方の面の前記基材の一方の面に対応する部分に、第二の高さ又は第二の深さを備えた第二の直径を有する半球状の第二の要素を前記第一の方向、かつ、前記第一のピッチと異なる第三のピッチにより複数配列した第二の要素群を、前記第二の方向、かつ、第四のピッチにより複数配列して形成された第二のドット模様と、
前記第一の要素と前記第二の要素の少なくとも一部が、前記基材を介して重畳して形成された第三の要素を複数配列した第三の要素群とにより形成されたモアレ画像を有することを特徴とするドットモアレ形成体。
【請求項4】
前記第一の要素群又は前記第二の要素群の配列の位相が、前記第一の方向にずらして形成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のドットモアレ形成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の入射角度の変化に応じて動的・立体的な変化を有する干渉模様を奏するドットモアレ形成体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字や図形が、立体的に浮き上がって見える立体画像は、通常の平面的な印刷物に比べ、意匠性に優れる。このような立体画像として、立体視を用いるものがある。
【0003】
立体視とは、人間の左右の目が離れていることで生じる両眼視差を利用し、観察者の脳内で立体画像を生成するものである。公知の代表的な立体画像として、ステレオグラムを用いたものがある。ステレオグラムは、撮影角度の異なる画像を左右に並べることで、裸眼の状態で観察者が二つの画像を脳内で融合させて立体画像として認識可能となるものである。しかしながら、ステレオグラムの原理による立体画像は、必ず同一の模様が二つ並んで形成される必要があるとともに、立体的には視認されるが、その立体画像が連続的に動いているように視認可能な構成とすることは非常に困難であった。
【0004】
そこで、本出願人は、基材上に、凹形状又は凸形状の断面形状を有する光輝性の円弧状画線を万線状に配置して成る画像を形成することで、定位置の光源下で観察角度を連続的に変化させると、光源からの入射光を反射する位置が、円弧状の光輝性画線上で徐々に移動し、左右の目で視認される画像の位相が異なることで、観察角度の変化前に平面的に視認される画像が、両眼視差により立体的、かつ、観察角度の変化に伴い、動的に視認される立体表示形成体を出願している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、本出願人は、基材上に、凹形状又は凸形状の断面形状を有する光輝性を備えた第一の円弧状画線を有して成る第一の画像を備え、全ての第一の画線の少なくとも始点により、第一の立体画像が形成され、基材を、所定の角度から光源に対して異なる角度へと、連続的に変化させて観察した場合、第一の立体画像が立体的、かつ、第一の方向と異なる第二の方向に動的に視認されることを特徴とする立体表示形成体を出願している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5799431号公報
【特許文献2】特許第6583632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術は、凹形状又は凸形状の円弧状画線の光輝性領域の観察角度に応じた移動によって、動的・立体的な視認効果を発現させているため、円弧状画線の配置方向に起因する観察時の角度依存性があり、視認効果が低下する場合があるという課題があった。
【0008】
本発明は、前述した問題の解決を目的としたものであり、半球状のドット群により画像を構成することによって、観察角度の依存性を低減させ、モアレ模様が観察される像とすることにより、動的・立体的効果を視認しやすくしたドットモアレ形成体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光反射性又は光透過性を有する基材の同一面上の少なくとも一部に、直径が同じ又は異なる半球状の二つの要素が少なくとも一部が重なるように複数配置され、一部が重なった領域の高さ又は深さが二つの要素の高さ又は深さよりも高い又は深いことを特徴とするドットモアレ形成体である。
【0010】
本発明は、光反射性又は光透過性を有する基材の同一面上の少なくとも一部に、第一の高さ又は第一の深さと第一の直径を有する半球状の第一の要素を第一の方向、かつ、第一のピッチにより複数配列した第一の要素群を、第二の方向、かつ、第二のピッチにより複数配列して形成された第一のドット模様と、第二の高さ又は第二の深さと第二の直径を有する半球状の第二の要素を前記第一の方向、かつ、前記第一のピッチと異なる第三のピッチにより複数配列した第二の要素群を、前記第二の方向、かつ、第四のピッチにより複数配列して形成された第二のドット模様と、第一の要素と第二の要素の少なくとも一部が重畳して形成された第三の幅と、第一の高さと第二の高さより高い第三の高さ又は第一の深さと第二の深さより深い第三の深さを有し、第三の幅と第三の高さ又は第三の幅と第三の深さが、第一のピッチと第三のピッチの差に応じて周期的に変化する第三の要素を複数配列した第三の要素群とにより形成されたモアレ画像を有することを特徴とするドットモアレ形成体である。
【0011】
本発明は、光透過性を有する基材の一方の面の少なくとも一部に、第一の高さ又は第一の深さと第一の直径を有する半球状の第一の要素を第一の方向、かつ、第一のピッチにより複数配列した第一の要素群を、第二の方向、かつ、第二のピッチにより複数配列して形成された第一のドット模様と、基材の他方の面の基材の一方の面に対応する部分に、第二の高さ又は第二の深さを備えた第二の直径を有する半球状の第二の要素を第一の方向、かつ、第一のピッチと異なる第三のピッチにより複数配列した第二の要素群を、第二の方向、かつ、第四のピッチにより複数配列して形成された第二のドット模様と、第一の要素と第二の要素の少なくとも一部が、基材を介して重畳して形成された第三の要素を複数配列した第三の要素群とにより形成されたモアレ画像を有することを特徴とするドットモアレ形成体である。
【0012】
本発明は、第一の要素群又は第二の要素群の配列の位相が、第一の方向にずらして形成されたことを特徴とするドットモアレ形成体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、半球状のドットで画像を形成することによって、観察角度の依存性を低減させ、モアレ模様が観察される像とすることにより、動的・立体的効果の視認が容易なモアレ模様が観察できるとともに、モアレ模様とモアレ模様を重ね合わせることによって、さらに複雑なモアレ模様を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態のドットモアレ形成体を示す一例図。
【
図8】本発明のドットモアレ形成体の効果を示す一例図。
【
図10】本発明のドットモアレ形成体の効果を示す一例図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0016】
(第一の実施形態)
(ドットモアレ形成体)
図1に、第一の実施形態におけるドットモアレ形成体(A1)を示す。
図1(a)は、ドットモアレ形成体(A1)の平面図であり、
図1(b)は、ドットモアレ形成体(A1)の構成図である。
図1(a)に示すように、ドットモアレ形成体(A1)は、光反射性又は光透過性の基材(1)に形成されたモアレ画像(2)を有する。また、
図1(b)に示すように、モアレ画像(2)は、第一のドット模様(3)と第二のドット模様(4)により形成される。なお、後述するが、モアレ画像(2)の絵柄は、格子状又は第二の実施形態にて説明する同心円状に限定されるものではなく、任意の絵柄を使用することができる。
【0017】
(基材)
基材(1)は、光反射性又は光透過性を有する材料から成る。光反射性を有する材料としては、アルミ、ステンレス等の一般的な金属材料や、フィルム、プラスチック等の樹脂材料の他に、パールインキ、平滑な表面を形成可能な塗料等が塗工された用紙等がある。また、光透過性を有する材料としては、透明樹脂材料であるフィルム、プラスチック等の熱可塑性樹脂等がある。基材(1)の厚さは、50μm以上1mm以下の範囲内において、後述する第一の要素(5)と第二の要素(6)の深さにより適宜設定される。50μm未満の場合は、半球の加工性が困難であり、1mm以上の場合は、カード類として使用した場合の利便性に欠ける。
【0018】
(第一のドット模様)
次に、第一のドット模様(3)について説明する。
図2は、第一のドット模様(3)の概略図であり、
図2(a)は、第一のドット模様(3)の一部拡大図を示し、
図2(b)は、AA´断面図を示す。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第一のドット模様(3)は、第一の直径(S1)と第一の深さ(Z1)を有する半球状の第一の要素(5)を第一の方向(T1)、かつ、第一のピッチ(P1)により配列した第一の要素群(7)を、第二の方向(T2)、かつ、第二のピッチ(P2)により配列して成る。
【0019】
第一の要素(5)の第一の直径(S1)と第一の深さ(Z1)は、いずれも全て同じ大きさであることが好ましいが、第一の直径(S1)は、20μmから500μmの範囲内であれば異なる径であってもよく、第一の深さ(Z1)は、10μmから250μmの範囲内であれば、異なる深さであってもよい。第一の直径(S1)と第一の深さ(Z1)の大きさが、いずれも当該範囲未満の場合は、モアレ模様が不鮮明となる。当該範囲を超えた場合は、モアレ模様の発現性が低下する。
【0020】
また、第一の要素(5)の第一のピッチ(P1)と、第一の要素群(7)の第二のピッチ(P2)の間隔は、40μmから1000μmである(なお、本実施の形態では、第一のピッチ(P1)と第二のピッチ(P2)を第一の直径(S1)の2倍としている)。各ピッチ(P1、P2)は、第一の要素(5)の第一の直径(S1)に合わせて適宜設定することができるが、好ましくは、第一の直径(S1)の2倍から3倍である。第一の直径(S1)が大きい場合は、一定面積当たりに占める第一の要素(5)の割合が少なくなるため、モアレの視認性が低下する(例えば、各ピッチ(P1、P2)が第一の直径(S1)の4倍だと、発現するモアレの視認性が低下する傾向がある)。
【0021】
(第二のドット模様)
次に、第二のドット模様(4)について説明する。
図3は、第二のドット模様(4)の概略図であり、
図3(a)は、第二のドット模様(4)の一部拡大図を示し、
図3(b)は、AA´断面図を示す。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、第二のドット模様(4)は、第二の直径(S2)と第二の深さ(Z2)を有する半球状の第二の要素(6)を第一の方向(T1)、かつ、第一のピッチ(P1)と異なる第三のピッチ(P3)により配列した第二の要素群(8)を、第二の方向(T2)、かつ、第四のピッチ(P4)により配列して成る。第四のピッチ(P4)は、第二のピッチ(P2)と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第一の方向(T1)と第二の方向(T2)は、前述の第一のドット模様(3)と同じ方向である。
【0022】
第二の要素(6)の第二の直径(S2)と第二の深さ(Z2)は、前述の第一の要素(5)と同様に、いずれも全て同じ大きさであることが好ましいが、第二の直径(S2)は、20μmから500μmの範囲内であれば異なる径であってもよく、第二の深さ(Z2)は、10μmから250μmの範囲内であれば、異なる深さであってもよい。第二の直径(S2)と第二の深さ(Z2)の大きさが、いずれも当該範囲未満の場合は、モアレ模様が不鮮明となる。当該範囲を超えた場合は、モアレ模様の発現性が低下する。なお、第二の要素(6)の第二の直径(S2)と第二の深さ(Z2)は、第一の要素(5)の第一の直径(S1)と第一の深さ(Z1)のいずれも全て同じ大きさであることが好ましいが、前述に示した範囲内であれば、いずれも異なる大きさであってもよい。
【0023】
また、第三のピッチ(P3)と第四のピッチ(P4)の間隔は、40μmから1000μmである。(なお、本第一の実施の形態では、第三のピッチ(P3)と第四のピッチ(P4)を第二の直径(S2)の2倍としている)。各ピッチ(P3、P4)は、第二の要素(6)の第二の直径(S2)に合わせて適宜設定することができるが、好ましくは、第二の直径(S2)の2倍から3倍である。第二の直径(S2)が大きい場合は、一定面積当たりの第二の要素(6)が占める割合が少なくなるため、モアレの視認性が低下する(例えば、各ピッチ(P3、P4)が、第二の直径(S2)の4倍だと、発現するモアレの視認性が低下する傾向がある)。
【0024】
本第一の実施の形態では、第二の要素(6)を第二の深さ(Z2)を有する半球としているが、基材(1)が光透過性を有する場合は、
図3(c)に示すように、第二の要素(6)を凸状の第二の高さ(Y2)として形成してもよい。なお、第二の要素(6)が凸状の第二の高さ(Y2)を有する場合については、後ほど説明する。
【0025】
(モアレ画像)
次に、
図4を用いて、モアレ画像(2)を詳細に説明する。本第一の実施の形態のモアレ画像(2)は、
図4(a)に示す第一のドット模様(3)と、
図4(b)に示す第二のドット模様(4)の一部が重畳して形成される。
図4(c)に示すように、第一の要素群(7)を形成する第一の要素(5)の第一のピッチ(P1)と、第二の要素群(8)を形成する第二の要素(6)の第三のピッチ(P3)が異なるピッチで形成されているため、第一の要素(5)と第二の要素(6)の一部が、周期的に重畳して形成された第三の幅(S3)の第三の要素(9)(第三の幅(S3)が周期的に変化する)が複数配列された第三の要素群から成る。本第一の実施の形態では、第一の要素(5)と第二の要素(6)は同一の円形状であるが、一方を円形状とし、他方の形状を異なる楕円形状としてもよく、直径(S1、S2)及び深さ(Z1、Z2)を互いに異なる大きさとしてもよい。
【0026】
また、
図5に示すように、第一の要素群(7)及び第二の要素群(8)の配列方向を、第一の方向(T1)及び第二の方向(T2)にずらして形成してもよい。他の例として、第一の方向(T1)を円周方向、第二の方向(T2)を中心方向として、
図6(a)に示すように、第一の方向(T1)に第一の要素群(7)及び第二の要素群(8)の配列方向をずらして形成して、
図6(b)に示すように、同心円状のモアレ画像(2)を形成してもよい。
【0027】
あるいは、
図12(a)と
図12(b)に示すように、第一の要素群(7)の一部の位相を、第一の方向(T1)に第五のピッチ(P5)ずらして第一のドット模様(3)を形成し、第二の要素群(8)の一部の位相を、第一の方向(T1)に第六のピッチ(P6)ずらして第二のドット模様(4)を形成して、
図12(c)に示すモアレ画像(2)を形成してもよい。本第一の実施の形態では、第五のピッチ(P5)と第六のピッチ(P6)は、互いに同一ピッチとして第一のピッチ(P1)の1/2ピッチで形成しているが、互いに異なるピッチで形成してもよい。なお、本第一の実施の形態では、第一の要素群(7)と第二の要素群(8)の一部の位相をずらして形成しているが、位相のずれは、一部でなくともよい。
【0028】
(第三の要素)
図7は、第三の要素(9)を示す一例図である。本第一の実施の形態の第三の要素(9)は、
図7(a)に示すように、第一の要素(5)と第二の要素(6)の一部が重畳して形成される。第三の要素(9)は、第三の幅(S3)を有し、第一の方向(T1)、かつ、第二の方向(T2)に複数配列される。また、
図7 (b)の断面図と一部拡大図に示すように、第三の要素(9)は、第一の要素(5)の第一の深さ(Z1)と第二の要素(6)の第二の深さ(Z2)より深い第三の深さ(Z3)を有する。
【0029】
さらに、第三の要素(9)は、第一の要素(5)の第一のピッチ(P1)と第二の要素(6)の第三のピッチ(P3)が異なるピッチで配列されていることから、第三の幅(S3)と第三の深さ(Z3)は、第一の要素(5)の第一のピッチ(P1)と第二の要素(6)の第三のピッチ(P3)の差に応じて周期的に変化する。
【0030】
なお、本第一の実施形態では、第三の要素(9)が第一の要素(5)と第二の要素(6)の一部が重畳して形成された第三の深さ(Z3)により形成されているが、後述する第二の実施形態に示すように、第一の要素(5)と第二の要素(6)を互いに異なる面に形成し、第一の要素(5)と第二の要素(6)の一部を重畳、かつ、近接して第三の要素(9)を形成してもよい。
【0031】
また、本第一の実施形態では、第一の要素(5)と第二の要素(6)を深さを有する凹形状で形成する例で示したが、高さを有する凸形状で形成することも可能である(図示せず)。この場合、第一の深さ(Z1)、第二の深さ(Z2)及び第三の深さ(Z3)は、第一の高さ、第二の高さ及び第三の高さとなる。
【0032】
(モアレ模様)
図8は、ドットモアレ形成体(A1)が奏するモアレ模様(10)の発現効果を示す簡略図である。モアレ模様(10)とは、一定のピッチで配置された線や格子で構成される幾何学的な模様を重ね合わせたり、少しずらしたりしたときに、干渉によって生じる縞模様のことであって、日常的には二枚のスダレや網戸を重ねて透かして見たときに観察することができる模様である。
図8(a)に示すように、光反射性の基材(1)に本発明のドットモアレ形成体(A1)を格子状で形成した場合は、立体的な格子状のモアレ模様(10)を確認することができ、また、観察角度(U1、U2)を傾けて観察することにより、モアレ模様(10)が連続的に変化することにより、動いているように見える。また、
図8(b)に示すように、本発明のドットモアレ形成体(A1)を同心円状で形成した場合は、立体的な同心円状、あるいは彩紋状のモアレ模様(10)を確認することができる。また、観察角度(U1、U2)を傾けて観察することにより、モアレ模様(10)が連続的に変化することにより、動いているように見える。なお、光透過性の基材(1)に本発明のドットモアレ形成体(A1)を形成した場合は、透過光下においても、モアレ模様(10)を確認することができる(図示せず。)。
【0033】
(作製方法)
次に、モアレ画像(2)の形成方法について説明する。モアレ画像(2)は、光反射性又は光透過性の基材(1)を凹形状又は凸形状に変形して、第一の要素(5)、第二の要素(6)及び第三の要素(9)を形成する。基材(1)を凹形状又は凸形状に変形させて形成する方法とは、基材(1)をエンボス加工、レーザ加工等の公知の加工機を用いて、第一の要素(5)、に第二の要素(6)を重畳させて、第三の要素(9)を形成する。
【0034】
また、
図7(b)に示す第三の要素(9)を形成する場合は、レーザ加工が好ましい。照射するレーザのエネルギーにより第一の要素(5)と第二の要素(6)の重畳する第三の要素(9)を第三の深さ(Z3)により形成することが可能であり、切削加工では困難となるためである。なお、レーザ加工により金属板に
図7(b)に示す第三の要素(9)を形成した後、当該金属板を原版としてエンボス加工により透明性の基材(1)に形成してもよい。
【0035】
(第二の実施形態)
次に、透明性の基材(1)の一方の面に第一のドット模様(3)を形成し、透明性の基材(1)の他方の面に第二のドット模様(4)を形成したドットモアレ形成体(A2)について説明する。本第二の実施形態は、第一の要素(5)と第二の要素(6)を互いに異なる面に形成し、基材(1)を介して第一の要素(5)と第二の要素(6)の一部を重畳して形成した第三の要素(9)の例である。なお、第一の実施形態と異なる箇所のみ説明し、同様な個所は省略する。
【0036】
図9に、第二の実施形態におけるドットモアレ形成体(A2)を示す。
図9(a)は、ドットモアレ形成体(A2)の平面図であり、
図9(b)は、ドットモアレ形成体(A2)の一部断面図である。
図9(a)に示すように、ドットモアレ形成体(A2)は、透明性の基材(1)に形成されたモアレ画像(2)を有する。また、
図9(b)に示すように、モアレ画像(2)は、透明性の基材(1)の一方の面に形成された凹半球状の第一の要素(5)により形成された第一のドット模様(3)と、他方の面に形成された凸半球状の第二の要素(6)により形成された第二のドット模様(4)を有し、第一の要素(5)と第二の要素(6)の一部が透明性の基材(1)を介して重畳、かつ、近接して形成された(峡間部)、
図9(b)の点囲いにより示す第三の要素(9)を複数配列した第三の要素群から成る。
【0037】
本第二の実施形態の第二の要素(6)は、一例として凸半球状であり、凸レンズとしての役割を果たしている。第二の要素(6)を凸半球状として形成する場合の第二の直径(S2)と第二の高さ(Y2)は、前述の第一の実施の形態で示した凹半球の第二の要素(6)の直径(S2)の数値と同等であり、第二の高さ(Y2)は、第二の深さ(Z2)と同等である。なお、本第二の実施の形態では、第二の要素(6)を凸半球状として形成しているが、
図9(c)に示すように、他方の面に第二の要素(6)を凹半球状として形成してもよい。
【0038】
図10は、ドットモアレ形成体(A2)が奏するモアレ模様(10)の発現効果を示す簡略図である。
図10(a)に示すように、透明性の基材(1)に本発明のドットモアレ形成体(A2)を格子状に形成した場合は、観察角度(U1、U2)を傾けて観察することにより、立体的、かつ、動的な視覚効果を持った格子状のモアレ模様(10)を確認することができる。透過光下(U3)においても、モアレ模様(10)を確認することができる。また、
図10(b)に示すように、本発明のドットモアレ形成体(A2)を同心円状で形成した場合は、観察角度(U1、U2)を傾けて観察することにより、立体的、かつ、動的な視覚効果を持った彩紋状のモアレ模様(10)を確認することができる。また、透過光下においても、モアレ模様(10)を確認することができる。
【0039】
(その他の例)
第一の実施形態により格子状のモアレ画像(2)、第二の実施形態により同心円状のモアレ画像(2)を説明したが、モアレ画像(2)の絵柄は、文字、数字、記号等も形成することが可能であり、例えば、第一の要素群(7)と第二の要素群(8)の配列を直線状、曲線状にそれぞれ形成し、組み合わせることによって、
図11(a)に示す花、
図11(b)に示す蝶、
図11(c)に示す幾何学的図形等の絵柄を形成することができる。
【実施例0040】
本発明の実施例について、前述の実施の形態と同様に、
図1、
図6及び
図8を用いて説明をする。なお、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
図1及び
図6に示すように、ドットモアレ形成体(A1)は、光反射性の基材(1)としてステンレス板に四角形と同心円状のモアレ画像(2)を、光反射性の基材(1)の同一面上に第一のドット模様(3)と第二のドット模様(4)に配置して形成した。第一のドット模様(3)は、第一の要素(5)を直径(S1)25μmの半球状のドットとし、第一のピッチ(P1)47μmで第一の方向(T1)に配置して形成した第一の要素群(7)と、第一の要素群(7)を第二の方向(T2)に第二のピッチ(P2)47μmとして、ステンレス板に対してレーザにより形成した。
【0042】
次に、第二のドット模様(4)は、第二の要素(6)を直径(S2)25μmの半球状のドットとし、第三のピッチ(P3)48μmで第一の方向(T1)に配置して形成した第二の要素群(8)と、第二の要素群(8)を第二の方向(T2)に第四のピッチ(P4)を48μmとして、第二の要素(6)を第一の要素(5)に重畳するようにレーザにより多重加工して第三の要素(9)を形成した。さらに、モアレ画像(2)を作成したステンレス板をエンボス版として使用し、熱プレスにより透明のプラスチック板にモアレ画像(2)を転写した。
【0043】
次に、ステンレス板と透明のプラスチック板に形成したモアレ画像(2)の効果を確認した。
図8(a)に示すように、ステンレス板の基材(1)にモアレ画像(2)を格子状で形成した場合は、観察角度(U1、U2)を傾けて観察することにより、立体的、かつ、動的視覚効果を有する格子状のモアレ模様(10)を確認することができた。また、
図8(b)に示すように、モアレ画像(2)を同心円状で形成した場合は、観察角度(U1、U2)を傾けて観察することにより、立体的、かつ、動的視覚効果を有する彩紋状のモアレ模様(10)を確認することができた。また、透明のプラスチック板にモアレ画像(2)を形成した場合は、透過光下においても、モアレ模様(10)を確認することができた。