(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152490
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】抑制装置および抑制方法
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20221004BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055279
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(71)【出願人】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】仲村 直子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 篤志
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD01
3E172EA03
3E172EA23
3E172EA43
3E172EA48
3E172HA12
3E172JA08
3E172KA03
3E172KA19
3E172KA23
(57)【要約】
【課題】低温液化ガスの受け入れ時に、BOGの発生を抑制することのできる抑制装置および抑制方法を提供する。
【解決手段】
抑制装置1は、カーゴタンクT1および貯蔵タンクT2を連結する経路10に配置された冷凍機30と、貯蔵タンクの内部に設けられ、冷凍機に向けて貯蔵タンク内のヒール液を送液可能なポンプ40と、を有する、
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーゴタンクから貯蔵タンクにカーゴ液を受け入れる際に発生するBOGを抑制する抑制装置であって、
前記カーゴタンクおよび前記貯蔵タンクを連結する経路に配置された冷凍機と、
前記貯蔵タンクの内部に設けられ、前記冷凍機に向けて前記貯蔵タンク内のヒール液を送液可能なポンプと、を有する、抑制装置。
【請求項2】
前記カーゴタンクと前記貯蔵タンクを連結する前記経路に対して、分岐するように設けられるバイパス経路をさらに有する、請求項1に記載の抑制装置。
【請求項3】
前記貯蔵タンク内の高さ方向の複数個所における温度を測定する測定部をさらに有する、請求項1または2に記載の抑制装置。
【請求項4】
前記カーゴタンクおよび前記貯蔵タンクを連結する前記経路は、
前記貯蔵タンクのうち上方側に、前記冷凍機によって冷却された液化ガスを送液する上方経路と、
前記貯蔵タンクのうち下方側に、前記冷凍機によって冷却された前記液化ガスを送液する下方経路と、を有し、
前記上方経路および前記下方経路には、前記貯蔵タンクへ送液する量を調整する調整弁が設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の抑制装置。
【請求項5】
前記貯蔵タンクは、複数設けられ、
一の貯蔵タンク内の前記ヒール液は、前記冷凍機によってサブクール状態にされ、
前記ポンプによって、サブクール状態にされた前記一の貯蔵タンク内の前記ヒール液を、他の貯蔵タンク内に送液する、請求項1~4のいずれか1項に記載の抑制装置。
【請求項6】
カーゴタンクおよび貯蔵タンクを連結する経路の間に配置された冷凍機と、前記貯蔵タンクの内部に設けられ、前記冷凍機に向けて前記貯蔵タンク内のヒール液を送液するポンプと、を有する抑制装置によって、前記カーゴタンクから前記貯蔵タンクにカーゴ液を受け入れる際に発生するBOGを抑制する抑制方法であって、
前記カーゴ液を前記貯蔵タンクに受け入れる際に、前記冷凍機によって前記カーゴ液をサブクール状態まで冷却する工程と、
冷却された前記カーゴ液を前記貯蔵タンクに送液する工程と、を有する抑制方法。
【請求項7】
前記ポンプによって、前記貯蔵タンク内の前記ヒール液を前記冷凍機に送液することによって、前記貯蔵タンク内にあった前記ヒール液をサブクール状態まで冷却する工程と、
サブクール状態まで冷却された、前記貯蔵タンク内にあった前記ヒール液を、サブクール状態まで冷却された前記カーゴタンクからの前記カーゴ液に混合する工程と、
混合された前記ヒール液および前記カーゴ液を前記貯蔵タンクに送液する工程と、をさらに有する、請求項6に記載の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BOGの発生を抑制する抑制装置および抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスや液体水素等の低温液化ガス(以下、液化ガスとも称する)は、貯蔵タンクの外部からの入熱によって温められることで、BOG(ボイルオフガス)が発生している。このBOGの発生に伴って、貯蔵タンク内の圧力上昇が招かれる。
【0003】
また、液化ガスを積み荷であるカーゴタンクから貯蔵タンクに受け入れる際、カーゴポンプや受入配管での入熱による受入液の気化によって、非受け入れ時に比べて、BOGの発生量が増加する。なお、カーゴタンクから受け入れる液化ガスをカーゴ液、また貯蔵タンクに貯蔵している液化ガスをヒール液と呼ぶ。
【0004】
これに関連して、従来から、発生したBOGを再液化する処理方法が知られている(例えば下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、BOGを再液化するための再液化システムは、圧縮機で昇圧した後、熱交換器などで冷却して液化したり、送出される液化ガスにBOGを注入して液化したりし、その後ポンプで圧送する方法が一般的である。しかし、このシステムではシステムが煩雑になるため、信頼性の低減や装置の大型化などが課題となる。
【0007】
さらに、液化ガスのBOGを冷凍機で再液化する場合、極低温の冷却温度が要求されるため熱効率が低下する。このため、冷凍機を稼働するための動力が増加するという問題がある。また、送出される液化ガスのBOGを注入する場合は、送出される液化ガスの流量で液化できるBOGの流量が制限される。送出される液化ガスが無いとBOGの再液化は出来ないという課題がある。
【0008】
以上から、発生したBOGを再液化する方法ではなく、BOGの発生を抑制することが求められている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、BOGの発生を抑制することのできる抑制装置および抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る抑制装置は、カーゴタンクから貯蔵タンクにカーゴ液を受け入れる際に発生するBOGを抑制する抑制装置である。抑制装置は、前記カーゴタンクおよび前記貯蔵タンクを連結する経路に配置された冷凍機と、前記貯蔵タンクの内部に設けられ、前記冷凍機に向けて前記貯蔵タンク内のヒール液を送液可能なポンプと、を有する。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明に係る抑制方法は、カーゴタンクおよび貯蔵タンクを連結する経路の間に配置された冷凍機と、前記貯蔵タンクの内部に設けられ、前記冷凍機に向けて前記貯蔵タンク内のヒール液を送液するポンプと、を有する抑制装置によって、前記カーゴタンクから前記貯蔵タンクにカーゴ液を受け入れる際に発生するBOGを抑制する抑制方法である。抑制方法は、前記カーゴ液を前記貯蔵タンクに受け入れる際に、前記冷凍機によって前記カーゴ液をサブクール状態まで冷却する工程と、冷却された前記カーゴ液を前記貯蔵タンクに送液する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
上述の抑制装置および抑制方法によれば、カーゴタンクから貯蔵タンクにカーゴ液を受け入れる際に、冷凍機によってカーゴ液をサブクール状態まで冷却した状態で、カーゴ液かヒール液あるいはその両方を貯蔵タンクに送液するため、受入れ時のBOGの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る抑制装置を示す概略図である。
【
図2】サブクール状態を説明するための図であって、状態図を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る抑制装置の一の抑制方法を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態に係る抑制装置の二の抑制方法を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態に係る抑制装置の三の抑制方法を説明するための図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る抑制装置を示す概略図である。
【
図7】第2実施形態に係る抑制装置の抑制方法を説明するための図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る抑制装置を示す概略図である。
【
図9】第3実施形態に係る抑制装置の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を、
図1、
図2を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る抑制装置1を示す概略平面図である。
図2は、サブクール状態を説明するための図であって、状態図を示す図である。
【0016】
第1実施形態に係る抑制装置1は、カーゴタンクT1から貯蔵タンクT2に液化ガスを受け入れる際に発生するBOGを抑制する装置である。ここで、液化ガスとは特に限定されないが、LNG(液化天然ガス)、LPG(液化石油ガス)、液体水素、液化窒素等を挙げることができる。
【0017】
抑制装置1は、
図1に示すように、カーゴタンクT1および貯蔵タンクT2を連結する第1経路(経路に相当)10と、第1経路10に対して分岐するように設けられるバイパス経路20と、第1経路10に配置される冷凍機30と、貯蔵タンクT2内に設けられるポンプ40と、ポンプ40および第1経路10を連結する第2経路50と、第2経路50から分岐されて貯蔵タンクT2内の液化ガスを外部に送るための第3経路60と、貯蔵タンクT2内の高さ方向の3か所における液化ガスの温度を測定する測定部70と、冷凍機30の運転を制御する制御部(不図示)と、を有する。
【0018】
カーゴタンクT1は、カーゴ液の積み荷である。カーゴタンクT1は、例えば船の積み荷である。貯蔵タンクT2には、残液であるヒール液が貯蔵されている。カーゴタンクT1のカーゴ液は、所定のタイミングで第1経路10を介して、貯蔵タンクT2に送液される。
【0019】
第1経路10には、
図1に示すように、第1弁11および合流部12が配置されている。第1弁11は、合流部12に対して、カーゴタンクT1側に配置されている。第1弁11は、カーゴタンクT1から貯蔵タンクT2へ送る液化ガスの量を制御することができる。第1経路10は、配管である。
【0020】
合流部12は、第1弁11の冷凍機30に配置されている。合流部12は、カーゴタンクT1からの液化ガス、および貯蔵タンクT2からの液化ガスが混合されて、混合された液化ガスが冷凍機30を介して、貯蔵タンクT2に戻るように配置されている。
【0021】
本実施形態において、第1経路10の貯蔵タンクT2側の端部10Aは、
図1に示すように、貯蔵タンクT2の中心付近に位置するのが望ましい。
【0022】
バイパス経路20は、第1経路10に対して分岐するように設けられる。バイパス経路20には、
図1に示すように、バイパス弁21が配置されている。バイパス弁21は、合流部12を流れた液化ガスの、バイパス経路20に流れる量を調整することができる。このようにバイパス経路20が設けられることによって、バイパス経路20にカーゴタンクT1からのカーゴ液を通過させることができる。したがって、カーゴ液が十分にサブクール状態まで冷却されている場合、冷凍機30によって冷却する第1経路10を通過させる必要が無い。
【0023】
冷凍機30は、カーゴタンクT1から受け入れるカーゴ液および/または貯蔵タンクT2からポンプ40によって送液されたヒール液をサブクール状態にする。以下、
図2の状態図を参照して、サブクール状態について説明する。
【0024】
液化ガスは、通常、
図2の黒丸で示す液相および気相の境界の飽和状態にある。この飽和状態にある液化ガスを冷凍機30で冷却することによって、黒丸の箇所から左側の白丸の箇所に移動して、サブクール状態となる。サブクール状態にある液化ガスは、完全に液体の状態にあるため、BOGが発生することを抑制できる。
【0025】
冷凍機30としては、液化ガスをサブクール状態まで冷却することのできるものであれば特に限定されないが、例えば、逆ブレイトンサイクルやスターリングサイクルの冷凍機30を用いることができる。冷凍機30は、例えば、-160℃にある飽和状態の液化ガスを冷却することによって、-165℃~-162℃とすることができる。
【0026】
ポンプ40は、
図1に示すように、貯蔵タンクT2の底部近傍に設けられる。ポンプ40は、貯蔵タンクT2内のヒール液を、第3経路60を介して、外部に送液するために設けられる。また、ポンプ40は、貯蔵タンクT2内の液化ガスを、第2経路50を介して、合流部12に戻して、カーゴタンクT1からのカーゴ液と混合させるために設けられる。ポンプ40としては、公知のものを用いることができる。
【0027】
第2経路50は、ポンプ40および第1経路10を連結する。第2経路50には、
図1に示すように、第2弁51が配置されている。第2弁51は、ポンプ40によって貯蔵タンクT2から送液されたヒール液の合流部12側へ送る量を制御することができる。第2経路50は、配管である。
【0028】
第3経路60は、貯蔵タンクT2内のヒール液を外部に送るための経路である。第3経路60には、
図1に示すように、第3弁61が配置されている。第3弁61は、ポンプ40によって貯蔵タンクT2から送液されたヒール液を外部に送る量を制御することができる。第3経路60は、配管である。
【0029】
測定部70は、
図1に示すように、貯蔵タンクT2内の高さ方向の3箇所P1、P2、P3における温度を測定する。なお、高さ方向の測定箇所は3箇所に限定されず、2か所以上であればよい。測定部70としては、公知の温度計を用いることができる。なお、測定部70は、温度に加えて、温度を測定した場所の高さを測定可能であってもよい。
【0030】
制御部は、第1弁11、バイパス弁21、第2弁51、第3弁61の開閉を制御する。制御部は、ポンプ40の駆動を制御する。制御部は、測定部70によって測定される温度に基づいて、冷凍機30の運転を制御する。制御部は、例えばCPUである。
【0031】
次に、
図3~
図5を参照して、第1実施形態に係る抑制装置1の抑制方法について説明する。
図3は、第1実施形態に係る抑制装置1の一の抑制方法を説明するための図である。
図4は、第1実施形態に係る抑制装置1の二の抑制方法を説明するための図である。
図5は、第1実施形態に係る抑制装置1の三の抑制方法を説明するための図である。
【0032】
まず、
図3を参照して、第1実施形態に係る抑制装置1の一の抑制方法について説明する。一の抑制方法は、液化ガスの受け入れ時における抑制方法であって、貯蔵タンクT2内のヒール液およびカーゴタンクT1からのカーゴ液を混合して、混合された液化ガスを冷凍機30で冷却してサブクール状態にする点が特徴である。
図3において、液化ガスが通過する経路を太線で示す。
【0033】
まず、制御部は、ポンプ40を駆動して、貯蔵タンクT2内のヒール液を合流部12まで送液する。一方、制御部は第1弁11を開くことによって、カーゴタンクT1からのカーゴ液が合流部12まで送液される。そして、合流部12において、貯蔵タンクT2内にあったヒール液およびカーゴタンクT1からのカーゴ液が混合して、冷凍機30に送液される。混合された液化ガスは、冷凍機30において、サブクール状態まで冷却されて、貯蔵タンクT2内に送液される。なお、第3弁61は開閉どちらの状態でもよい。
【0034】
ここで例えば、冷凍機30によって冷却されていない液化ガスが、貯蔵タンクT2内に送液されると、カーゴポンプや受入配管での入熱による受け入れ時に液化ガスが気化することで、BOGが大量に発生する。
【0035】
これに対して、一の抑制方法によれば、混合された液化ガスをサブクール状態まで冷却して貯蔵タンクT2内に送液するため、BOGの発生を好適に抑制することができる。
【0036】
次に、
図4を参照して、第1実施形態に係る抑制装置1の二の抑制方法について説明する。二の抑制方法は、液化ガスの受け入れ時における抑制方法であって、カーゴタンクT1からのヒール液のみを冷凍機30で冷却してサブクール状態にする点が特徴である。
図4において、ヒール液およびカーゴ液が通過する経路を太線で示す。
【0037】
まず、制御部は、第1弁11を開くことによって、カーゴタンクT1からのカーゴ液を、合流部12を介して、冷凍機30に送液する。カーゴタンクT1からのカーゴ液は、冷凍機30において、サブクール状態まで冷却されて、貯蔵タンクT2内に送液される。なお、第3弁61は開閉どちらの状態でもよい。
【0038】
このように二の抑制方法によれば、カーゴタンクT1からのカーゴ液をサブクール状態まで冷却して貯蔵タンクT2内に送液するため、BOGの発生を好適に抑制することができる。
【0039】
次に、
図5を参照して、第1実施形態に係る抑制装置1の三の抑制方法について説明する。三の抑制方法は、定常時(非受け入れ時)における抑制方法であって、貯蔵タンクT2内にあったヒール液のみを冷凍機30で冷却してサブクール状態にする点が特徴である。
図5において、ヒール液およびカーゴ液が通過する経路を太線で示す。
【0040】
まず、制御部は、ポンプ40を駆動して、貯蔵タンクT2内の液化ガスを合流部12まで送液する。そして、貯蔵タンクT2内にあったヒール液は冷凍機30に送液され、冷凍機30においてサブクール状態まで冷却されて、貯蔵タンクT2内に送液される。なお、第3弁61は開閉どちらの状態でもよい。
【0041】
このとき、測定部70は、貯蔵タンクT2内の高さ方向の3箇所P1、P2、P3における液化ガスの温度と温度を測定した場所の高さを測定して、液化ガスがサブクール状態まで冷却されているかを確認する。
【0042】
測定部70によって貯蔵タンクT2内の温度を測定した際に、ヒール液が確実にサブクール状態まで冷却されている場合、制御部は、冷凍機30の運転をオフにすることが好ましい。そして、測定部70によって貯蔵タンクT2内の温度を測定した際に、温度が上昇してヒール液が飽和状態に近づいている場合、制御部は、冷凍機30の運転をオンにすることが好ましい。このように、制御部が冷凍機30の運転を制御することによって、冷凍機30を常に運転する必要がなくなり、冷凍機30の運転効率が向上する。
【0043】
なお、上記の使用方法とは異なり、以下のように冷凍機30の運転を制御してもよい。すなわち、余剰電力を用いて、冷凍機30をオンにして、液化ガスをサブクール状態まで確実に冷却する。そして、電気が不足しているときに、冷凍機30をオフにする。このように使用することによって、変動性再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電)を有効的に活用することができる。
【0044】
次に、第1実施形態に係る抑制装置1の四の抑制方法について説明する。この場合は対象となる液化ガスはLNGである。四の抑制方法は、貯蔵タンクT2内のヒール液とは異なる密度のカーゴ液を受け入れる際に、層状化が発生することを抑制する抑制方法である。
【0045】
まず、カーゴタンクT1からのカーゴ液が、貯蔵タンクT2内のヒール液よりも重質である場合について説明する。
【0046】
制御部は、カーゴタンクT1からカーゴ液を受け入れる前に、上述した三の抑制方法と同様に、貯蔵タンクT2内のヒール液を冷凍機30によって冷却して、サブクール度を大きくする。
【0047】
次に、カーゴタンクT1からカーゴ液を受け入れる。このとき、貯蔵タンクT2内のヒール液は、サブクール度を大きくすることによって密度が上昇し、カーゴタンクT1からのカーゴ液の密度と略同一にすることができる。したがって、貯蔵タンクT2内の液化ガスの層状化を好適に抑制することができる。
【0048】
ここで、貯蔵タンクT2内のヒール液およびカーゴタンクT1からのカーゴ液の密度が略同一とは、完全に同一でなくてもよく、貯蔵タンクT2内で層状化しない密度差の範囲であればよい。
【0049】
次に、カーゴタンクT1からのカーゴ液が、貯蔵タンクT2内のヒール液よりも軽質である場合について説明する。
【0050】
制御部は、上述した二の抑制方法と同様に、カーゴタンクT1からのカーゴ液を冷凍機30によって冷却して、サブクール度を大きくして、貯蔵タンクT2内に送る。このとき、カーゴタンクT1からのカーゴ液は、サブクール度が大きくなることによって密度が上昇し、貯蔵タンクT2内のヒール液の密度と略同一にすることができる。したがって、液化ガスの層状化を好適に抑制することができる。
【0051】
以上説明したように、第1実施形態に係る抑制装置1は、カーゴタンクT1から貯蔵タンクT2にカーゴ液を受け入れる際に発生するBOGを抑制する抑制装置1である。抑制装置1は、カーゴタンクT1および貯蔵タンクT2を連結する第1経路10に配置された冷凍機30と、貯蔵タンクT2の内部に設けられ、冷凍機30に向けて貯蔵タンクT2内のヒール液を送液可能なポンプ40と、を有する。このように構成された抑制装置1によれば、カーゴタンクT1から貯蔵タンクT2にカーゴ液を受け入れる際に、冷凍機30によって液化ガスをサブクール状態まで冷却した状態で、カーゴ液かヒール液あるいはその両方を貯蔵タンクT2に送液するため、受入れ時のBOGの発生を低減することができる。
【0052】
また、抑制装置1は、カーゴタンクT1および貯蔵タンクT2が連結される第1経路10に対して、分岐するように設けられるバイパス経路20をさらに有する。このように構成された抑制装置1によれば、バイパス経路20にカーゴタンクT1からの液化ガスを通過させることができる。したがって、カーゴ液かヒール液あるいはその両方が十分にサブクール状態まで冷却されている場合、冷凍機30によって冷却する第1経路10を通過させる必要が無い。
【0053】
また、抑制装置1は、貯蔵タンクT2内の高さ方向の3個所P1、P2、P3における温度を測定する測定部70をさらに有する。このように構成された抑制装置1によれば、測定部70によって貯蔵タンクT2内の温度を測定して、ヒール液がサブクール状態まで冷却されているかを確認することができる。そして、ヒール液が確実にサブクール状態まで冷却されている場合、制御部は、冷凍機30の運転をオフにする。そして、ヒール液が飽和状態に近づいている場合、制御部は、冷凍機30の運転をオンにする。したがって、冷凍機30を常にオンにする必要が無く、冷凍機30の運転効率が向上する。
【0054】
<第2実施形態>
次に、
図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る抑制装置2の構成について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る抑制装置2を示す概略図である。第2実施形態に係る抑制装置2は、第1経路110の構成の点において第1実施形態に係る抑制装置1の構成と異なる。
【0055】
第2実施形態に係る抑制装置2は、
図6に示すように、カーゴタンクT1および貯蔵タンクT2を連結する第1経路(経路に相当)110と、第1経路110に配置される冷凍機30と、貯蔵タンクT2内に設けられるポンプ40と、ポンプ40および第1経路10を連結する第2経路50と、第2経路50から分岐されて貯蔵タンクT2内のヒール液を外部に送るための第3経路60と、貯蔵タンクT2内の3か所におけるヒール液の温度を測定する測定部(図示省略)と、冷凍機30の運転を制御する制御部と、を有する。この場合は対象となる液化ガスはLNGである。
【0056】
第1経路110は、
図6に示すように、貯蔵タンクT2のうち上方側に、冷凍機30によって冷却されたヒール液を送液する上方経路111と、貯蔵タンクT2のうち下方側に、冷凍機30によって冷却されたヒール液を送液する下方経路112と、を有する。
【0057】
上方経路111および下方経路112には、貯蔵タンクT2へ送液する量を調整する調整弁113、114がそれぞれ設けられている。
【0058】
次に、
図7を参照して、第2実施形態に係る抑制装置2の一の抑制方法について説明する。第2実施形態に係る抑制装置2の抑制方法は、貯蔵タンクT2内においてヒール液が層状化している場合に、ロールオーバー現象が生じることを抑制する抑制方法である。
図7において、ヒール液およびカーゴ液が通過する経路を太線で示す。
【0059】
ここで、「ロールオーバー現象」とは、層状化した貯蔵タンクT2内において、外部からの入熱により各層の内部でそれぞれ対流が起こり、層の境界を通して物質移動および熱移動が進まず上下層間の密度差が次第に減少し、一定時間経過後に上下層の密度が等しくなることで上下層の境界が消滅するとき、下層に蓄積された熱が多量のBOG発生という形で短時間に開放される現象をいう。
【0060】
まず、制御部は、ポンプ40を駆動して、貯蔵タンクT2内の液化ガスを合流部12まで送液する。そして、貯蔵タンクT2内にあったヒール液は冷凍機30に送液され、冷凍機30においてサブクール状態まで冷却される。冷凍機30によってサブクール状態まで冷却された液化ガスは、調整弁113、114によって流量が調整されて、上方経路111および下方経路112を介して、貯蔵タンクT2内の上層のヒール液および下層のヒール液に戻される。なお、第3弁61は開閉どちらの状態でもよい。
【0061】
また、上方経路111は、上方受入配管であるトップフィード管に替えてもよい。同様に、下方経路112は、下方受入配管であるボトムフィード管またはジェットミキシングノズルに替えてもよい。
【0062】
これによって、上層のヒール液から、BOGが発生することを抑制でき、密度が上昇することを防止できる。一方、下層のヒール液において、入熱によるヒール液の液温の上昇を、サブクール状態のカーゴ液かヒール液あるいはその両方で抑制することによって、密度の低下を抑制することができる。したがって、層状化した上層と下層の密度が等しくなることに起因して生じるロールオーバー現象の発生を好適に防止できる。
【0063】
<第3実施形態>
次に、
図8を参照して、本発明の第3実施形態に係る抑制装置3の構成について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る抑制装置3を示す概略図である。第3実施形態に係る抑制装置3は、貯蔵タンクT2が複数設けられる点において第1実施形態に係る抑制装置1の構成と異なる。
【0064】
第3実施形態に係る抑制装置3において、貯蔵タンクT2は、
図8に示すように、3つ設けられている。
【0065】
3つの貯蔵タンクT2のうち、一の貯蔵タンクT21内のヒール液は、冷凍機30によってサブクール状態に冷却される。具体的には、余剰電力を用いて、冷凍機30をオンにして、一の貯蔵タンクT21内のヒール液をサブクール状態まで確実に冷却することが好ましい。
【0066】
そして、ポンプ40によって、サブクール状態にされた一の貯蔵タンクT21内のヒール液を、
図8に例示するように、他の貯蔵タンクT22、T23のカーゴ液の受入配管に送液する。これによって、他の貯蔵タンクT22、T23における受け入れ時のBOGの発生を抑制することができる。
【0067】
以上のように構成された抑制装置3によれば、一の貯蔵タンクT21にサブクール状態のヒール液を貯蔵することによって、再生可能エネルギーの電力をサブクール状態のヒール液として貯蔵する電力貯蔵システムとして機能させることができる。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0069】
例えば、上述した第1実施形態では、抑制装置1は、バイパス経路20を有した。しかしながら、抑制装置には、バイパス経路が設けられていなくてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、抑制装置1、2は、測定部70が設けられて、測定部70は、貯蔵タンクT2内の高さ方向の3箇所P1、P2、P3の温度を測定した。しかしながら、測定部は、貯蔵タンクT2内の高さ方向の温度、温度を測定した場所の高さ、密度を連続的に測定できる構成であってもよい。
【0071】
また、上述した第2実施形態では、第1経路110は、上方経路111および下方経路112を有した。しかしながら、第1経路は、上方経路111のみ、または下方経路112のみであってもよい。この構成の場合、ロールオーバー現象の発生を防止することは困難であるが、ロールオーバー現象の発生までの時間を延ばすことができ、その間に、下層のヒール液をポンプ40で払いだして、下層をなくすことで層状化を消滅させることができる。
【0072】
また、上述した第3実施形態では、カーゴタンクT1からのカーゴ液の受け入れ時におけるBOGの発生の抑制について説明した。しかしながら、これに限定されず、
図9に示すように、定常時(非受け入れ時)におけるBOGの発生の抑制にも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1、2 抑制装置、
10、110 第1経路、
20 バイパス経路、
30 冷凍機、
40 ポンプ、
50 第2経路、
60 第3経路、
70 測定部、
111 上方経路、
112 下方経路、
113 調整弁、
114 調整弁、
T1 カーゴタンク、
T2 貯蔵タンク。