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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152563
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】荷台昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/00 20060101AFI20221004BHJP
   B60P 1/04 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B60P3/00 M
B60P1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055381
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁康
(57)【要約】
【課題】荷台昇降装置自体の高さを比較的に低く抑えることができ、荷台を上昇させた際に荷台の必要な高さを確保することができる荷台昇降装置を提供すること。
【解決手段】荷台6と、支持フレーム11A、11Bと、アーム13A、13Bと、荷台6をその後部に傾ける方向に回動可能に支持する回動軸部52と、下端が支持フレーム11A、11Bに支持され、上端が荷台6に支持されて、伸長および収縮により荷台6を昇降および回動させるアクチュエータ12A、12Bと、を備え、アクチュエータ12A、12Bは、その伸長により荷台6を上昇させて、アーム13A、13Bがスライド移動して上限となる上昇位置に荷台6を配置し、荷台6の上昇位置において、アクチュエータ12A、12Bの更なる伸長により回動軸部52を回動中心として荷台6を回動させて、荷台6をその後部に傾けた姿勢状態に配置する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台と、
該荷台を挟んで互いに対向する位置に配置される支持フレームと、
該支持フレームから上方に突出して上下にスライド移動可能に支持されたアームと、
該アームの先端に設けられ、前記アームの先端を回動中心として、前記荷台を該荷台の後部に傾ける方向に回動可能に支持する回動軸部と、
前記アームよりも前記荷台の前方に離れた位置に配置され、下端が前記支持フレームに支持され、上端が前記荷台に支持されて、伸長および収縮により前記荷台を昇降および回動させるアクチュエータと、を備え、
前記アクチュエータは、該アクチュエータの伸長により前記荷台を上昇させて、前記アームがスライド移動して上限となる上昇位置に前記荷台を配置し、該荷台の上昇位置において、前記アクチュエータの更なる伸長により前記回動軸部を回動中心として前記荷台を回動させて、前記荷台を該荷台の後部に傾けた姿勢状態に配置することを特徴とする荷台昇降装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記荷台の重心位置と前記回動軸部との間に前記アクチュエータの上端が支持されていることを特徴とする請求項1に記載の荷台昇降装置。
【請求項3】
前記アクチュエータの伸長および収縮により上昇および下降する前記荷台を一定の姿勢状態に支持して下降位置と上昇位置との間に亘って案内する昇降ガイドを有することを特徴とする請求項1に記載の荷台昇降装置。
【請求項4】
前記アームには、スライド移動方向に所定間隔をおいて複数の上限位置決め穴が設けられており、
前記支持フレームには、前記アームのスライド移動方向に沿って前記複数の上限位置決め穴が露出する長穴が設けられており、
前記長穴を通して前記複数の上限位置決め穴のいずれかに位置決めピンが挿入されることを特徴とする請求項1に記載の荷台昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台を昇降させるとともに回動させる荷台昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の荷台昇降装置として、リンク機構を介して荷台を横に傾けて積荷を降ろすいわゆるサイドダンプが可能に支持するフレームと、荷台の前後に配置され、荷台を昇降させるとともに回転させるスライド回転支持部と、伸縮可能に設けられたアクチュエータとを備えたものが開示されている(特許文献1参照)。この荷台昇降装置は、荷台の回転軸の固定部分を長穴とし、アクチュエータにより荷台を上昇させた際に、回転軸が長穴を摺動して上昇し長穴の分だけ高い位置から積載物が荷台から排出されるように構成されている。また、車体後端部に鉛直方向に設けた支持体と、支持体に沿って昇降する案内部材と、油圧シリンダとを備え、案内部材が荷台の後端部を回動自在に支持し、油圧シリンダの伸縮により荷台を昇降させるものが開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-112903号公報
【特許文献2】特開昭58-431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の荷台昇降装置においては、例えば、荷台の積載物をトラックなどの運搬車両に積載する際に、荷台を回転させると、回転時にバケットの開口端部が下がり、運搬車両のあおりに接触する可能性がある。また、荷台を上昇させると、荷台の上端が下降するので、荷台の上端が、あおりの上部と干渉するおそれがあるという問題がある。また、荷台の長穴の分だけ荷台昇降装置の荷台の上端までの高さが高くなり、荷台昇降装置が搭載されている収穫機を運搬車両に積載して移動させる際に、積載可能な高さの上限を超えてしまうおそれや、収穫機を農機具庫へ格納できないという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載の荷台昇降装置においては、車体後端部に鉛直方向に設けた支持体の高さの分だけ荷台昇降装置の荷台の上端までの高さが高くなり、荷台昇降装置が搭載されている収穫機を運搬車両に積載して移動させる際に、積載可能な高さの上限を超えてしまうおそれや、収穫機を農機具庫へ格納できないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、荷台昇降装置自体の高さを比較的に低く抑えることができ、荷台を上昇させた際に荷台の必要な高さを確保することができる荷台昇降装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る荷台昇降装置は、荷台と、該荷台を挟んで互いに対向する位置に配置される支持フレームと、該支持フレームから上方に突出して上下にスライド移動可能に支持されたアームと、該アームの先端に設けられ、前記アームの先端を回動中心として、前記荷台を該荷台の後部に傾ける方向に回動可能に支持する回動軸部と、前記アームよりも前記荷台の前方に離れた位置に配置され、下端が前記支持フレームに支持され、上端が前記荷台に支持されて、伸長および収縮により前記荷台を昇降および回動させるアクチュエータと、を備え、前記アクチュエータは、該アクチュエータの伸長により前記荷台を上昇させて、前記アームがスライド移動して上限となる上昇位置に前記荷台を配置し、該荷台の上昇位置において、前記アクチュエータの更なる伸長により前記回動軸部を回動中心として前記荷台を回動させて、前記荷台を該荷台の後部に傾けた姿勢状態に配置することを特徴とする。
【0008】
(2)本発明に係る荷台昇降装置は、前記アクチュエータは、前記荷台の重心位置と前記回動軸部との間に前記アクチュエータの上端が支持されていることを特徴とする。
【0009】
(3)本発明に係る荷台昇降装置は、前記アクチュエータの伸長および収縮により上昇および下降する前記荷台を一定の姿勢状態に支持して下降位置と上昇位置との間に亘って案内する昇降ガイドを有することを特徴とする。
【0010】
(4)本発明に係る荷台昇降装置は、前記アームには、スライド移動方向に所定間隔をおいて複数の上限位置決め穴が設けられており、前記支持フレームには、前記アームのスライド移動方向に沿って前記複数の上限位置決め穴が露出する長穴が設けられており、前記長穴を通して前記複数の上限位置決め穴のいずれかに位置決めピンが挿入されることを特徴とする。
【0011】
(1)本発明に係る荷台昇降装置によれば、アクチュエータの伸長により荷台を上昇させ、アームの上方へのスライド移動により、荷台をかかる姿勢状態のまま上昇位置まで上昇させることができる。そして、荷台が上昇位置に到達した状態で、更に、アクチュエータを伸長させることにより、回動軸部を中心として荷台を回動させ、荷台を後部に傾けた姿勢状態に配置することができる。これにより、例えば荷台に積載物が積載された状態で荷台を上昇させ、上昇位置において荷台を後方に向かって回動させて、荷台の積載物を荷台後方に排出させることができる。そして、荷台の自重またはアクチュエータが作動することでアクチュエータが収縮し、回動軸部を中心として荷台を回動させ、荷台の後方に傾いた姿勢から水平となる姿勢状態にする。そして、更にアクチュエータが収縮することにより、アームが下方にスライド移動し、荷台、アクチュエータおよびアームは元の位置に戻り、荷台に積載物を積載可能な状態になる。
【0012】
(2)本発明に係る荷台昇降装置においては、アクチュエータは、荷台の重心位置と回動軸部との間にアクチュエータの上端が支持されている。したがって、アクチュエータの伸長により、荷台を先に上昇させて上昇位置において荷台後方に向かって回動させることができる。そして、アクチュエータの収縮により、荷台を上昇位置において先に回動させて水平な姿勢状態にしてから下降させることができる。
【0013】
(3)本発明に係る荷台昇降装置は、アクチュエータの伸長および収縮により上昇および下降する荷台を一定の姿勢状態に支持して下降位置と上昇位置との間に亘って案内する昇降ガイドを有する。この構成により、荷台の昇降中に、荷台が回動するのを防ぎ、安定した姿勢に保持することができる。
【0014】
(4)本発明に係る荷台昇降装置においては、アームには、スライド移動方向に所定間隔をおいて複数の上限位置決め穴が設けられており、支持フレームには、アームのスライド移動方向に沿って複数の上限位置決め穴が露出する長穴が設けられており、長穴を通して複数の上限位置決め穴のいずれかに位置決めピンが挿入される。
【0015】
この構成により、アームの昇降により位置決めピンが挿入穴内で昇降し、アームの回動軸部が所定の上昇位置に到達すると同時に位置決めピンが長穴の上端の内壁に当接する。位置決めピンが長穴の上端の内壁に当接すると、位置決めピンの上昇が阻止されアームの上昇が阻止される。位置決めピンによりアームの上限位置を調節できるので、積載物を運ぶ運搬車両の高さに応じて荷台が上昇する上昇高さを調節することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、荷台を必要な高さ位置まで上昇させ、上昇位置において後方に傾けて積載物を排出させることができる荷台昇降装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置を備えた収穫機の側面図。
図2】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の正面図であり、荷台が最下位置に下降した状態を示す。
図3】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の図であり、荷台が最下位置に下降した状態を示し、図3(a)は平面図、図3(b)は左側面図。
図4】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の図3(b)のC-C断面図。
図5】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の斜視図であり、荷台が最下位置に下降した状態を示す。
図6】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の分解斜視図。
図7】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の断面図であり、図7(a)は図2のA-A断面を示し、図7(b)は図2のB-B断面を示す。
図8】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の図であり、荷台が上昇途中の状態を示し、図8(a)は左側面図、図8(b)は正面図。
図9】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の斜視図であり、荷台が上昇途中の状態を示す。
図10】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の図であり、荷台が最上位置に上昇した状態を示し、図10(a)は左側面図、図10(b)は正面図。
図11】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の斜視図であり、荷台が最上位置に上昇した状態を示す。
図12】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の側面図であり、農作物が積載された荷台が最上位置に上昇し、トラックに農作物を落下させる状態を示す。
図13】本発明の実施形態に係る荷台昇降装置の斜視図であり、農作物が積載された荷台が最上位置に上昇し、トラックに農作物を落下させる状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る荷台昇降装置を収穫機1に適用した実施形態に係る荷台昇降装置7について図面を参照して説明する。
【0019】
まず、本実施形態に係る荷台昇降装置7が装備された収穫機1の構成について説明する。
収穫機1は、図1に示すように、車体2と、走行装置3と、運転装置4と、収穫装置5と、荷台6と、荷台昇降装置7と、荷台昇降装置7による荷台6の昇降を操作する図示しない操作部とにより構成されている。
【0020】
収穫機1は、走行しながら圃場に植栽されている稲やトウモロコシ等の農作物を刈り取り、細断して荷台6に積載し、積載した農作物を2tトラックや4tトラックなどの運搬車両に積載するように構成されている。収穫した農作物は、例えば、家畜の飼料として用いられ、運搬車両により飼料基地まで運搬される。
【0021】
車体2は、例えば、高い剛性を有する縦フレームおよび横フレームによって連結されたフレームを備えたフレーム構造の車体からなり、各構成要素を支持するように構成されている。走行装置3は、車体2に連結され、圃場などの不整地走行面の凹凸を吸収し、旋回および前後左右方向に操舵可能に回転駆動される無限軌道により構成されている。
【0022】
運転装置4は、車体2の前方に固定され、走行装置3を操舵するステアリングハンドルなどの図示しない操舵機構を含んで構成されている。収穫装置5は、圃場に植栽されている農作物を刈り取って細断し荷台6内に排出するように構成されている。
【0023】
荷台6は、図1に示すように、収穫機1の運転装置4の後方に配置され、水平状態において、鉛直方向の上面が開口された箱体6aと、図3(a)、図3(b)、図5図7(b)および図9に示すように、箱体6aに固定され荷台昇降装置7に対して摺動する左右の摺動体6bとにより構成されている。荷台6は、図2図3(a)、図3(b)および図5に示すように、荷台昇降装置7に連結されており、荷台昇降装置7により昇降するとともに回動するように構成されている。荷台6には、収穫装置5により収穫された農作物が積載される。
【0024】
荷台昇降装置7は、図1に示すように、収穫機1の車体2の後方に固定されており、図2図3(a)、図3(b)および図6に示すように、支持フレーム11A、11Bと、アクチュエータ12A、12Bと、アーム13A、13Bと、ガイドローラ14A、14Bと、昇降ガイド15A、15Bと、図示しないコントローラと、により構成されている。なお、以下の説明で上または下の語は、荷台昇降装置7が図1に示す収穫機1に装備された状態で、収穫機1の上方または下方を意味し、左または右の語は、収穫機1の後方から見た左側または右側を意味する。なお、荷台昇降装置7は、支持フレーム11A、11Bで構成されているが、本発明に係る荷台昇降装置は、単一構造の支持フレームで構成してもよい。
【0025】
支持フレーム11Aは、図5に示すように、荷台6の一方側面部としての左側面部に取り付けられる。支持フレーム11Aは、図6に示すように、左側板21と、右側板22と、左補強板23と、右補強板24と、左補強枠25と、右補強枠26と、連結部材27、28と、上部連結部材31と、下部連結部材32と、により構成されている。各構成要素は、金属材料により形成されており、高い機械的強度を有している。
【0026】
左側板21は、鉛直方向に延び、アクチュエータ12Aおよびアーム13Aを支持する支持部分と、鉛直方向に直交して延び、収穫機1の車体2に取り付ける取付部分とにより構成されている。左側板21の支持部分には、ガイドローラ14Aの後述する上部ガイドローラ61を取り付ける4個の取付穴21aと、下部ガイドローラ62を取り付ける4個の取付穴21bが貫通して形成されている。
【0027】
また、左側板21の支持部分には、左補強枠25を挿入する長穴21cと、アクチュエータ12Aを取り付ける取付穴21dとが貫通して形成されている。左側板21の取付部分には、支持フレーム11Aを車体2に取り付ける3個の取付穴21eと、下部連結部材32を固定する3個の固定穴21fが貫通して形成されている。
【0028】
右側板22は、左側板21と同様、鉛直方向に延び、アクチュエータ12Aおよびアーム13Aを支持する支持部分と、鉛直方向に直交して延び、収穫機1の車体2に取り付ける取付部分とにより構成されている。右側板22の支持部分には、ガイドローラ14Aの後述する上部ガイドローラ61を取り付ける4個の取付穴22aと、下部ガイドローラ62を取り付ける4個の取付穴22bが貫通して形成されている。
【0029】
また、右側板22の支持部分には、右補強枠26を挿入する長穴22cと、アクチュエータ12Aを取り付ける取付穴22dとが貫通して形成されている。右側板22の取付部分には、支持フレーム11Aを車体2に取り付ける3個の取付穴22eと、下部連結部材32を固定する3個の固定穴22fが貫通して形成されている。
【0030】
左補強板23は、略三角形で形成されており、アクチュエータ12Aを取り付ける取付穴23aが貫通して形成されている。左補強板23は、左側板21の右側板22に対向する側面に溶接などの接合手段により接合されている。
【0031】
右補強板24は、左補強板23と同様、略三角形で形成されており、アクチュエータ12Aを取り付ける取付穴24aが貫通して形成されている。右補強板24は、右側板22の左側板21に対向する側面に溶接などの接合手段により接合されている。
【0032】
左補強枠25は、長手方向の両端部が半円形で形成されており、後述するアーム13Aの位置決めピン54が挿入される長穴25aが貫通して形成されている。左補強枠25は、左側板21の長穴21cに挿入され溶接などの接合手段により、左側板21に接合される。
【0033】
右補強枠26は、左補強枠25と同様、長手方向の両端部が半円形で形成されており、後述するアーム13Aの位置決めピン54が挿入される長穴26aが貫通して形成されている。右補強枠26は、右側板22の長穴22cに挿入され溶接などの接合手段により、右側板22に接合される。
【0034】
連結部材27は、図4および図6に示すように、コの字形状の断面を有するチャンネル鋼材によって構成されており、左側板21の右側板22に対向する側面に溶接などの接合手段により接合されている。連結部材27は、左側板21の端部に沿って上下に延びるように設けられており、左側板21および右側板22をそれぞれ連結している。連結部材28は、連結部材27と鏡像対象で、同様に形成されており、連結部材27に対向して配置され、右側板22の左側板21に対向する側面に溶接などの接合手段により接合されている。連結部材28も、右側板22の端部に沿って上下に延びるように設けられており、左側板21および右側板22をそれぞれ連結している。なお、連結部材28は、連結部材27と同一の形状で形成されていてもよい。
【0035】
上部連結部材31は、方形の板材からなり、アーム13Aを通す方形の貫通穴31aが形成されている。上部連結部材31は、左側板21のアーム13Aを支持する支持部分の上端部と、右側板22のアーム13Aを支持する支持部分の上端部とを連結する。上部連結部材31は、左側板21の上端部および右側板22の上端部に溶接などの接合手段により接合されている。
【0036】
下部連結部材32は、角形の棒状部材からなり、側面に図示しない締結部材を通す複数の貫通穴32aが形成されている。下部連結部材32は、左側板21の取付部分の固定穴21fと、右側板22の取付部分の固定穴22fとに図示しない締結部材を通して左側板21と右側板22とを連結している。
【0037】
支持フレーム11Bは、図5に示すように、荷台6の他方側面部としての右側面部に取り付けられ、支持フレーム11Aと同様に構成されている。支持フレーム11Bは、収穫機1の車体2に固定される。
【0038】
アクチュエータ12Aは、図5に示すように、伸長および収縮により、荷台6を昇降させる機構、例えば、油圧機構からなり、コントローラに接続され、昇降動作がコントローラにより制御される。アクチュエータ12Aは、油圧の供給により伸長し、荷台6の自重により収縮する構成を有している。
【0039】
アクチュエータ12Aは、アーム13Aの先端が所定の上限位置に到達した際に、さらに伸長することにより、回動軸部52を中心として荷台6を回動させるストロークを有している。
【0040】
アクチュエータ12Aは、図6に示すように、油圧シリンダ41と、ピストンロッド42と、荷台6の左側面部に結合された上端支持部43と、固定ピン44と、ピン固定具45と、図示しない油圧供給装置とにより構成されている。油圧供給装置はコントローラに接続されており、コントローラにより油圧供給が制御されるように構成されている。
【0041】
油圧シリンダ41は、筒状に形成され、ピストンロッド42を往復移動自在に収容しており、油圧供給装置から油圧が供給されて、ピストンロッド42が伸長する単動式のものが用いられている。油圧シリンダ41のピストンロッド42は、荷台6の自重によって収縮される。本実施形態では、単動式の油圧シリンダ41を用いているが、油圧の供給によりピストンロッド42を伸長および収縮させる復動式のものを用いても良い。単動式のものは、復動式と比較して、油圧回路の構成を簡単化できる。油圧シリンダ41は、下部に固定ピン44を挿入する挿入穴41aが貫通して形成されており、挿入穴41aに挿入された固定ピン44を介して、支持フレーム11Aに回動自在に支持されている。
【0042】
ピストンロッド42は、上端で荷台6を回動自在に支持する上端支持部43に結合されており、ピストンロッド42の往復移動は上端支持部43を介して荷台6に伝達され、荷台6を昇降させる。
【0043】
上端支持部43は、荷台6に固定される固定部43aと、ピストンロッド42の上端に連結される連結部43bと、固定部43aと連結部43bとを相対回動自在に繋げる連結ピン43cとにより構成されている。ピストンロッド42の伸長および収縮に伴って連結部43bが固定部43aに対して回動する。
【0044】
アクチュエータ12Bは、アクチュエータ12Aと同様、油圧機構からなり、コントローラに接続され、伸長および収縮する動作がコントローラにより制御されるように構成されている。アクチュエータ12Bは、油圧シリンダ41と、ピストンロッド42と、ピン固定具45と、図示しない油圧供給装置とにより構成されている。油圧供給装置はコントローラに接続されており、コントローラにより油圧供給が制御されるように構成されている
【0045】
アーム13Aは、図5および図6に示すように、本体51と、回動軸部52と、フランジ53とを有している。アーム13Aの本体51には、左補強枠25の長穴25aを通して位置決めピン54が挿入される位置決め穴51aが設けられている。アーム13Aは、上方にスライド移動して位置決めピン54が長穴25aの上端の内壁に当接することにより、移動の上限となり、それ以上の上方へのスライド移動が阻止される。
【0046】
即ち、アクチュエータ12Aの伸長により荷台6が上昇を開始すると、それにつれてアーム13Aが上方に向かってスライド移動する。アクチュエータ12Aの収縮により荷台6が下降を開始すると、それにつれてアーム13Aが下方に向かってスライド移動する。
【0047】
本体51は、方形の断面を有する棒状部材からなり、下部には位置決めピン54が挿入される複数の上限位置決め穴51aが貫通して形成されている。複数の上限位置決め穴51aは、本体51の長手方向に互いに所定間隔をおいて設けられており、左補強枠25の長穴25aを通して位置決めピン54を挿入することができるようになっている。
【0048】
回動軸部52は、荷台6に固定される固定部52aと、本体51の上端に連結される連結部52bと、固定部52aと連結部52bとを相対回動自在に繋げる連結ピン52cとにより構成されている。
【0049】
フランジ53は、支持フレーム11Aの上部連結部材31と同様の形状、即ち、方形の板材からなる。フランジ53は、溶接などの接合手段により本体51の上端に接合されており、フランジ53の上面には、回動軸部52の連結部52bが固定されている。フランジ53は、上部連結部材31の貫通穴31aと本体51との間の隙間からワラなどの異物が入るのを防ぐために、本体51が下降した状態で、支持フレーム11Aの上部連結部材31に当接して貫通穴31aを閉塞する大きさを有している。
【0050】
位置決めピン54は、円形の断面を有する棒状部材からなり、左補強枠25の長穴25aを通して本体51の複数の上限位置決め穴51aのいずれかに挿入される。位置決めピン54は、先端部分が上限位置決め穴51aを通過して右補強枠26の長穴26aに配置され、中央部分が複数の上限位置決め穴51aのいずれかに配置され、基端部分が左補強枠25の長穴25aに配置された状態とされる。
【0051】
位置決めピン54は、本体51が上方にスライド移動する際、左補強枠25の長穴25aの上端の内壁および右補強枠26の長穴26aの上端の内壁に同時に当接することにより、本体51の上昇を阻止することができる。位置決めピン54が本体51の複数の上限位置決め穴51aのうち、最も下部に位置する上限位置決め穴51aに挿入された場合は、位置決めピン54が左補強枠25の長穴25aの上端の内壁および右補強枠26の長穴26aの上端の内壁に当接するまでの距離が最も長くなり、本体51を最も高い位置までスライド移動させることができる。
【0052】
反対に、位置決めピン54が本体51の複数の上限位置決め穴51aのうち、最も上部に位置する上限位置決め穴51aに挿入された場合は、位置決めピン54が左補強枠25の長穴25aの上端の内壁および右補強枠26の長穴26aの上端の内壁に当接するまでの距離が最も短くなり、本体51は、最も低い位置で上昇を阻止することができる。即ち、位置決めピン54が挿入される複数の上限位置決め穴51aの位置を選択することにより、本体51のスライド移動による上限の位置を調節することができる。
【0053】
例えば、比較的に車高が低い2tトラックなどの運搬車両の荷台に対して荷台6に積載された積載物を排出する場合には、位置決めピン54は、本体51の複数の上限位置決め穴51aのうち、最も上部に位置する上限位置決め穴51aに挿入される。一方、比較的に車高が高い4tトラックなどの運搬車両の荷台に対して荷台6に積載された積載物を排出する場合には、位置決めピン54は、本体51の複数の上限位置決め穴51aのうち、最も下部に位置する上限位置決め穴51aに挿入される。
【0054】
アーム13Bは、アーム13Aと同様、本体51と、回動軸部52と、フランジ53とを有している。アーム13Bは、本体51が上方にスライド移動を開始して、位置決めピン54が長穴26aの上端の内壁に当接することにより、移動の上限となり、それ以上の上方へのスライド移動が阻止される。
【0055】
ガイドローラ14Aは、図2図6および図7(a)に示すように、上部ガイドローラ61および下部ガイドローラ62により構成されている。上部ガイドローラ61は4個のローラにより構成されており、各ローラは、左側板21の取付穴21aと右側板22の取付穴22aに両端が支持されてそれぞれ回転自在に取り付けられている。そして、アーム13Aの本体51の側面に当接し、本体51を上下にスライド移動可能に案内する。
【0056】
下部ガイドローラ62は、上部ガイドローラ61と同様、4個のローラにより構成されており、各ローラは、左側板21の取付穴21bと右側板22の取付穴22bに両端が支持されてそれぞれ回転自在に取り付けられている。そして、アーム13Aの本体51の側面に当接し、本体51を上下にスライド移動可能に案内する。
【0057】
下部ガイドローラ62は、本体51の移動方向で上部ガイドローラ61から離隔しており、アーム13Aの下部に位置している。なお、上部ガイドローラ61および下部ガイドローラ62は、それぞれ4個以外の2個であってもよく6個以上の複数個であってもよい。ガイドローラ14Bは、ガイドローラ14Aと同様に構成されている。
【0058】
昇降ガイド15Aは、図2および図6に示すように、取付部71とガイド部72とにより構成されており、取付部71でアクチュエータ12Aの右側板22の右側面に溶接などの接合手段により接合されている。ガイド部72は、荷台6に設けられている摺動体6bと当接し、荷台6の昇降中に、摺動体6bを案内する。昇降ガイド15Aは、摺動体6bの摺動を案内することにより、荷台6が昇降する際に、荷台の姿勢を、鉛直方向に直交する水平姿勢を維持する。
【0059】
昇降ガイド15Bは、昇降ガイド15Aと同様、取付部71とガイド部72とにより構成されており、図5および図7(b)に示すように、取付部71でアクチュエータ12Bの左側板21の左側面に溶接などの接合手段により接合されている。
【0060】
コントローラは、演算プログラムやデータなどの設定値情報を格納したROMなどのメモリと、プログラムにより処理を実行するプロセッサとを備える公知のマイクロコンピュータによって構成されている。コントローラは、アクチュエータ12A、12Bの油圧供給装置に接続されており、油圧供給装置の油圧供給動作を制御することにより、アクチュエータ12A、12Bの昇降動作を制御する。なお、コントローラは、リレー回路によって構成してもよい。
【0061】
本実施形態に係る荷台昇降装置7の昇降およびトラックへの積載の動作について図面を参照して簡単に説明する。
【0062】
収穫機1の荷台6が収穫された農作物で満たされると、収穫機1は、圃場の進入路などの積載物を排出する場所まで走行し、荷台6から排出された積載物を運搬する2tトラックや4tトラックなどの運搬車両に近接した位置であって、荷台6の積載物を運搬車両の荷台に積載するのに適した位置で停止する。
【0063】
収穫機1が停止した状態で、収穫機1の操作部に対して荷台昇降装置7の動作開始の操作がなされると、荷台昇降装置7のコントローラにより油圧供給装置からアクチュエータ12A、12Bに油圧が供給され、ピストンロッド42の伸長が開始される。ピストンロッド42が伸長すると、荷台6が上昇する。荷台6は、荷台6の左右の摺動体6bがそれぞれ昇降ガイド15A、15Bに案内されて、水平姿勢を維持しながら上昇する。
【0064】
図8(a)、図8(b)および図9に示すように、荷台6の上昇により、アーム13A、13Bが上方にスライド移動する。アーム13A、13Bの上方へのスライド移動により、位置決めピン54が、左補強枠25の長穴25aの上端の内壁および右補強枠26の長穴26aの上端の内壁に同時に当接すると、アーム13A、13Bの上方へのスライド移動が阻止され、荷台6が上昇位置に保持される。
【0065】
荷台6が上昇位置に配置された状態で、アクチュエータ12A、12Bは、更に伸長を継続する。
【0066】
このアクチュエータ12A、12Bの伸長により、荷台6は、回動軸部52を中心として荷台後方に向かって回動する。図10(a)に示す回動軸部52の回動中心を通る鉛直線Lを上端支持部43が回動方向に越えない位置で、図11に示すように、アクチュエータ12A、12Bの伸長が停止し、荷台6の回動が停止する。荷台6が回動して荷台後方に傾いた姿勢状態になると、荷台6内の農作物が、図12および図13に示すように、4tトラックなどの運搬車両の荷台の中央部に落下する。
【0067】
荷台6内の農作物が、4tトラックなどの運搬車両の荷台内に落下し、収穫機1の操作部に対して荷台昇降装置7の戻し動作開始の操作がなされると、アクチュエータ12A、12Bが収縮し、荷台6を水平姿勢に戻す方向に回動する。そして、上昇位置にて水平姿勢に戻されると、そこから更なるアクチュエータ12A、12Bの収縮により、荷台6の左右の摺動体6bがそれぞれ昇降ガイド15A、15Bに案内されて、荷台6が水平姿勢を維持しつつ下降し、図3(a)、図3(b)および図5に示す元の位置に戻り、荷台昇降装置7の昇降動作が終了する。
【0068】
本実施形態に係る荷台昇降装置7の効果について図面を参照して説明する。
(1)実施形態に係る荷台昇降装置7は、荷台6と、荷台6を挟んで互いに対向する位置に配置される支持フレーム11A、11Bと、支持フレーム11A、11Bから上方に突出して上下にスライド移動可能に支持されたアーム13A、13Bと、アーム13A、13Bの先端に設けられ、アーム13A、13Bの先端を回動中心として、荷台6を荷台後部に傾ける方向に回動可能に支持する回動軸部52と、アーム13A、13Bよりも荷台6の前方に離れた位置に配置され、下端が支持フレーム11A、11Bに支持され、上端が荷台6に支持されて、伸長および収縮により荷台6を昇降および回動させるアクチュエータ12A、12Bと、を備える。そして、アクチュエータ12A、12Bは、アクチュエータ12A、12Bの伸長により荷台6を上昇させて、アーム13A、13Bがスライド移動して上限となる上昇位置に荷台6を配置し、荷台6の上昇位置において、アクチュエータ12A、12Bの更なる伸長により回動軸部52を回動中心として荷台6を回動させて、荷台6を荷台後部に傾けた姿勢状態に配置する構成を有している。
【0069】
したがって、荷台6に積載された全ての積載物を荷台6から排出させることができる。荷台6に積載された全ての積載物が荷台6から排出されると、アクチュエータ12A、12Bは収縮し、回動軸部52を回動中心として荷台6を戻す方向に回動させ、水平な姿勢状態に戻す。そして、更に、アクチュエータ12A、12Bを収縮させて、アーム13A、13Bを下方に向かってスライド移動させ、元の下降位置に荷台6を戻し、積載物が積載可能な状態とする。
【0070】
その結果、荷台6を上昇させた際に、より高い位置でかつ荷台6の中央寄りの位置から農作物を落下させることができるという効果が得られる。また、アームを上下にスライド移動させることができるので、下方にスライド移動させることによって、荷台昇降装置7自体の高さを比較的に低く抑えることができる。
【0071】
(2)本実施形態に係る荷台昇降装置7は、アクチュエータ12A、12Bは、荷台6の重心位置と回動軸部52との間にアクチュエータ12A、12Bの上端支持部43が支持されている。かかる構成によれば、荷台6が下降位置に配置された状態でアクチュエータ12A、12Bを伸長させたときに、荷台6が上昇するよりも先に回動軸部52を中心として回動してしまうのを防ぐことができる。
【0072】
(3)本実施形態に係る荷台昇降装置7は、アクチュエータ12A、12Bの伸長および収縮により上昇および下降する荷台6を一定の姿勢状態に支持して下降位置と上昇位置との間に亘って案内する昇降ガイド15A、15Bを有する。この構成により、荷台6が昇降する際に摺動体6bを介して荷台6の水平姿勢が保たれたまま荷台6が昇降する。その結果、荷台6が揺動することなく安定した姿勢で昇降するという効果が得られる。
【0073】
(4)本実施形態に係る荷台昇降装置7は、位置決めピン54をアーム13A、13Bに設けられた複数の位置決め穴51aから任意に選択した位置決め穴51aに挿入することによって、アーム13A、13Bの上方へのスライド移動における上限を決めることができる。
【0074】
その結果、荷台6から排出される積載物を運ぶ運搬車両のアオリの高さ、荷台幅、荷台高さ等に応じて、荷台6の高さを調節することができるという効果が得られる。2tトラックや4tトラックなどの運搬車両の大きさに応じて荷台6内の全ての積載物を運搬車両の荷台に確実に排出することができるという効果が得られる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0076】
1・・・収穫機、2・・・車体、3・・・走行装置、4・・・運転装置、5・・・収穫装置、6・・・荷台、6a・・・箱体、6b・・・摺動体、7・・・荷台昇降装置、11A、11B・・・支持フレーム、12A、12B・・・アクチュエータ、13A、13B・・・アーム、14A、14B・・・ガイドローラ、15A、15B・・・昇降ガイド、27、28・・・連結部材、51a・・・上限位置決め穴、43・・・上端支持部、51・・・本体、52・・・回動軸部、54・・・位置決めピン、61・・・上部ガイドローラ、62・・・下部ガイドローラ
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
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図10
図11
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図13