(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152727
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】粉砕装置、及びセメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
B02C 17/04 20060101AFI20221004BHJP
B02C 17/18 20060101ALI20221004BHJP
B02C 23/18 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
B02C17/04 B
B02C17/18 D
B02C23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055597
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】丸山 有亮
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】栗山 英司
(72)【発明者】
【氏名】上野 修
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063FF02
4D063FF35
4D063GA06
4D063GB02
4D063GC29
4D063GC32
4D063GD04
4D063GD22
4D067EE34
4D067EE45
4D067GA05
4D067GB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セメント粉末による冷却装置への影響を抑制するのに有用な粉砕装置及びセメントの製造方法を提供する。
【解決手段】粉砕装置は、複数の粉砕用ボールが収容され、セメントクリンカを含む粉砕対象物をドラムの内部に供給する供給シュート14を有し、ドラムを回転させることで粉砕対象物を粉砕するミル装置と、ドラムの内部に冷却液を供給する冷却装置40とを備える。冷却装置は、先端部72がミル装置の内部に位置し、基端部74がミル装置の外部に位置するように供給シュートに設けられた鞘管70と、鞘管内に配置され、先端に設けられた吐出部42まで冷却液を導く供給配管44と、鞘管の先端部よりも突出した状態でミル装置の内部に吐出部が配置される吐出位置P1と、先端部よりもミル装置の内部から離れるように吐出部が配置される退避位置P2との間で、鞘管の延在方向に沿って供給配管を移動させる駆動装置46とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粉砕用ボールが収容され、所定の軸線まわりに回転可能なドラムと、セメントクリンカを含む粉砕対象物を前記ドラムの内部に供給する供給シュートとを有し、前記ドラムを回転させることで前記粉砕対象物を粉砕するミル装置と、
前記ドラムの内部に冷却液を供給する冷却装置とを備え、
前記冷却装置は、
先端部と基端部とを含み、前記先端部が前記ミル装置の内部に位置し、前記基端部が前記ミル装置の外部に位置するように前記供給シュートに設けられた鞘管と、
前記鞘管内に配置され、先端に設けられた吐出部まで前記冷却液を導く供給配管と、
前記鞘管の前記先端部よりも突出した状態で前記ミル装置の内部に前記吐出部が配置される吐出位置と、前記先端部よりも前記ミル装置の内部から離れるように前記吐出部が配置される退避位置との間で、前記鞘管の延在方向に沿って前記供給配管を移動させる駆動装置とを有する、粉砕装置。
【請求項2】
前記鞘管内の空間を介して前記ミル装置の内部と外部とが接続されるように、前記先端部と前記基端部とは開放されている、請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記鞘管は、前記ミル装置の内部に向かって斜め下方に傾いている、請求項1又は2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記鞘管の前記先端部には、前記ミル装置の内部に向かって突出するように尖った尖り部が形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記鞘管の前記先端部には、前記尖り部が形成されるように、前記鞘管の延在方向に対して交差して延びる先端面が形成されており、
前記先端面と前記鞘管の延在方向とのなす角度は、30°~60°である、請求項4に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記鞘管は、前記尖り部が、前記供給シュート内において前記粉砕対象物が通過する領域と前記供給配管との間に位置するように、前記供給シュートに設けられている、請求項4又は5に記載の粉砕装置。
【請求項7】
前記吐出部が前記冷却液を吐出する状態と、前記吐出部が前記冷却液を吐出しない状態とを切り替える切替装置と、
前記ドラム内の温度を示す温度情報を取得する温度計測装置と、
前記駆動装置、前記切替装置、及び前記温度計測装置を制御する制御装置とを更に備え、
前記制御装置は、
前記温度情報が示す温度が所定の設定温度を上回った場合に、前記駆動装置により前記供給配管を前記吐出位置に移動させることと、前記供給配管が前記吐出位置に配置された状態で前記吐出部から前記冷却液を吐出させるように前記切替装置を制御することとを実行し、
前記温度情報が示す温度が所定の設定温度を下回った場合に、前記吐出部からの前記冷却液の吐出を停止させるように前記切替装置を制御することと、前記駆動装置により前記供給配管を前記退避位置に移動させることとを実行する、請求項1~6のいずれか一項に記載の粉砕装置。
【請求項8】
前記吐出部から前記冷却液が排出されるように、圧縮された空気を前記供給配管内に噴射する噴射装置を更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の粉砕装置。
【請求項9】
前記駆動装置及び前記噴射装置を制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、
前記供給配管が前記吐出位置に配置された状態で、前記供給配管内に圧縮された空気を前記噴射装置に噴射させることを実行し、
圧縮された空気が前記供給配管内に噴射された後に、前記吐出部が前記冷却液を吐出していない状態で前記駆動装置により前記供給配管を前記退避位置まで移動させることを実行する、請求項8に記載の粉砕装置。
【請求項10】
セメント原料を焼成することでセメントクリンカを生成する工程と、
請求項1~9のいずれか一項に記載の粉砕装置を用いて、セメントクリンカと石膏とを含む前記粉砕対象物を粉砕する工程とを含む、セメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉砕装置、及びセメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工場廃液を、クリンカを仕上げ粉砕する工程等に在るセメントクリンカに散布添加する工場廃液処理方法が開示されている。特許文献2には、半導体工場から排出される洗浄排水を、セメント製造設備の粉砕機に粉砕助剤として投入して処分する工場排水の処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-238244号公報
【特許文献2】特開2003-2706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セメントを生成するための粉砕工程を実行する粉砕機には、内部の温度の上昇を防ぐために粉砕機内に水等の冷却液を供給する冷却装置が備えられる。本開示は、セメントの粉末による冷却装置への影響を抑制するのに有用な粉砕装置及びセメントの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る粉砕装置は、複数の粉砕用ボールが収容され、所定の軸線まわりに回転可能なドラムと、セメントクリンカを含む粉砕対象物をドラムの内部に供給する供給シュートとを有し、ドラムを回転させることで粉砕対象物を粉砕するミル装置と、ドラムの内部に冷却液を供給する冷却装置とを備える。冷却装置は、先端部と基端部とを含み、先端部がミル装置の内部に位置し、基端部がミル装置の外部に位置するように供給シュートに設けられた鞘管と、鞘管内に配置され、先端に設けられた吐出部まで冷却液を導く供給配管と、鞘管の先端部よりも突出した状態でミル装置の内部に吐出部が配置される吐出位置と、先端部よりもミル装置の内部から離れるように吐出部が配置される退避位置との間で、鞘管の延在方向に沿って供給配管を移動させる駆動装置とを有する。
【0006】
セメントを粉砕するミル装置内では、セメントの粉末が浮遊している。そのため、吐出部からの冷却液を停止した後において、吐出部に付着している冷却液とセメントの粉末とが反応して、吐出部のまわりにセメントの塊が生じてしまうおそれがある。これに対して、上記粉砕装置では、吐出位置と、鞘管の先端部よりもミル装置の内部から吐出部が離れる退避位置との間で、吐出部まで冷却液を導く供給配管が移動可能である。そのため、吐出部からの冷却液を停止した際に、吐出部をミル装置の内部から退避させることができるので、吐出部のまわりにセメントの塊が生じ難い。従って、セメントの粉末による冷却装置への影響を抑制するのに有用である。
【0007】
鞘管内の空間を介してミル装置の内部と外部とが接続されるように、先端部と基端部とは開放されていてもよい。この構成において、ミル装置の内部のガスを吸引すると、鞘管と供給配管との間の空間を介して、ミル装置の内部に外部から空気が取り込まれる。この空気の流れにより、鞘管と供給配管との間の空間での滞留物の発生を抑制できる。従って、冷却装置のメンテナンス性の向上に有用である。
【0008】
鞘管は、ミル装置の内部に向かって斜め下方に傾いていてもよい。この場合、鞘管の内部に逆流防止装置を設けることなく、ミル装置の内部からのセメントの粉末又は塊の放出を抑制できる。従って、冷却装置の構成の簡素化に有用である。
【0009】
鞘管の先端部には、ミル装置の内部に向かって突出するように尖った尖り部が形成されていてもよい。この場合、冷却液の供給中に吐出部のまわりに大きなセメントの塊が形成されてしまっても、吐出部が鞘管内に収容されるように供給配管を移動させた際に、当該塊を鞘管の尖り部で落とすことができる。従って、冷却装置のメンテナンス性の向上に有用である。
【0010】
鞘管の先端部には、上記尖り部が形成されるように、鞘管の延在方向に対して交差して延びる先端面が形成されていてもよい。先端面と鞘管の延在方向とのなす角度は、30°~60°であってもよい。この場合、吐出部が鞘管内に収容されるように供給配管を移動させた際に、吐出部に形成され得るセメントの塊の一点に鞘管から力を作用させることができ、当該塊を除去しやすい。従って、冷却装置のメンテナンス性の向上に有用である。
【0011】
鞘管は、上記尖り部が、供給シュート内において粉砕対象物が通過する領域と供給配管との間に位置するように、供給シュートに設けられていてもよい。この場合、供給シュートを通過する粉砕対象物が鞘管の内部に入り難く、鞘管内での滞留物の発生が抑制される。従って、冷却装置のメンテナンス性の向上に有用である。
【0012】
上記粉砕装置は、吐出部が冷却液を吐出する状態と、吐出部が冷却液を吐出しない状態とを切り替える切替装置と、ドラム内の温度を示す温度情報を取得する温度計測装置と、駆動装置、切替装置、及び温度計測装置を制御する制御装置とを更に備えてもよい。制御装置は、温度情報が示す温度が所定の設定温度を上回った場合に、駆動装置により供給配管を吐出位置に移動させることと、供給配管が吐出位置に配置された状態で吐出部から冷却液を吐出させるように切替装置を制御することとを実行してもよい。制御装置は、温度情報が示す温度が所定の設定温度を下回った場合に、吐出部からの冷却液の吐出を停止させるように切替装置を制御することと、駆動装置により供給配管を退避位置に移動させることとを実行してもよい。この場合、ミル装置内に効率的に冷却液を供給しつつ、吐出部でのセメントの塊の発生を抑制できる。従って、ミル装置の内部の効率的な冷却と冷却装置のメンテナンス性の向上とに有用である。
【0013】
上記粉砕装置は、吐出部から冷却液が排出されるように、圧縮された空気を供給配管内に噴射する噴射装置を更に備えてもよい。この場合、供給配管内に在る冷却液を吐出部から排出できるので、供給配管内に残った冷却液に起因して、吐出部にセメントの塊が生じるのを抑制できる。従って、吐出停止時の冷却液とセメントの粉末との反応に起因した冷却装置への影響を抑制するのに有用である。
【0014】
上記粉砕装置は、駆動装置及び噴射装置を制御する制御装置を更に備えてもよい。制御装置は、供給配管が吐出位置に配置された状態で、供給配管内に圧縮された空気を噴射装置に噴射させることを実行してもよい。制御装置は、圧縮された空気が供給配管内に噴射された後に、吐出部が冷却液を吐出していない状態で駆動装置により供給配管を退避位置まで移動させることを実行してもよい。この場合、吐出部がミル装置の内部に配置された状態で、供給配管内に在る冷却液が排出される。そのため、排出された冷却液が、ミル装置の内部以外の領域に散布されない。従って、吐出部にセメントの塊が生じるのを抑制しつつ、供給配管内に圧縮空気を噴射することに伴い排出される冷却液の影響を低減するのに有用である。
【0015】
本開示の一側面に係るセメントの製造方法は、セメント原料を焼成することでセメントクリンカを生成する工程と、上記のいずれかの粉砕装置を用いて、セメントクリンカと石膏とを含む粉砕対象物を粉砕する工程とを含む。このセメントの製造方法では、上記のいずれかの粉砕装置を用いて粉砕対象物が粉砕される。従って、上記粉砕装置と同様に、セメントの粉末による冷却装置への影響を抑制するのに有用である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、セメントの粉末による冷却装置への影響を抑制するのに有用な粉砕装置及びセメントの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、粉砕装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、冷却液を供給している状態の冷却装置の一部を示す模式図である。
【
図3】
図3は、退避した状態の冷却装置の一部を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)は、鞘管の先端部の一例を模式的に示す側面図である。
図4(b)は、鞘管の先端部の断面を模式的に示す上面図である。
【
図5】
図5は、供給シュート内での鞘管の配置の一例を模式的に示す上面図である。
【
図6】
図6は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、冷却装置の一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、制御装置が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。一部の図面にはX軸、Y軸及びZ軸により規定される直交座標系が示される。以下の実施形態では、Z軸が鉛直方向に対応し、X軸及びY軸が水平方向に対応する。
【0019】
図1に示される粉砕装置1は、セメントの製造設備に設けられており、仕上げ工程に含まれる粉砕工程を実行する装置である。具体的には、粉砕装置1は、前工程である焼成工程において生成されたセメントクリンカ(以下、単に「クリンカ」という。)と石膏とを含む粉砕対象物を粉砕しながら、クリンカに石膏を混合させる。粉砕装置1は、仕上げ粉砕を行う装置(仕上げ粉砕機)であり、粉砕装置1によって粉砕されることで生成された粉(微粉)が、セメントとして粉砕装置1から排出される。
【0020】
粉砕装置1には、クリンカ用のサイロ92からクリンカが供給され、石膏用の置場94から石膏が供給される。クリンカ用のサイロ92には、竪型ミル等の予備粉砕機によって粉砕された状態のクリンカが収容されてもよい。粉砕装置1は、ミル装置10と、集塵ファン22と、集塵装置24と、温度計測装置30と、冷却装置40と、制御装置100とを備える。
【0021】
ミル装置10は、粉砕媒体によって粉砕対象物を粉砕する装置である。粉砕媒体は、粉砕対象物を粉砕するためのボール(以下、「粉砕用ボール18」という。)であり、例えば、鋼鉄製のボールである。なお、ミル装置10は、チューブミル(仕上げミル)とも称される。ミル装置10は、ドラム12と、供給シュート14と、接続部16とを有する。
【0022】
ドラム12は、複数の(多数の)粉砕用ボール18を収容しており、所定の軸線まわりに回転可能に設けられた収容体である。ドラム12は、例えば、水平な一方向(例えば、図示のX軸方向)に沿って延びており、円筒状に形成されている。上記所定の軸線は、ドラム12の延在方向に沿って延び、且つ当該延在方向に直交する断面においてドラム12の中心を通る軸線であってもよい。ドラム12には、駆動力を付与する駆動装置が接続されている。ミル装置10は、ドラム12内に粉砕対象物が供給された状態で、ドラム12を上記軸線まわりに回転させる。これにより、ドラム12内において粉砕用ボール18と粉砕対象物とが互いに衝突し、粉砕対象物が粉砕される。
【0023】
供給シュート14は、サイロ92及び置場94から搬送される粉砕対象物をドラム12の内部に供給する。供給シュート14の一方の端部に粉砕対象物の導入口が設けられており、供給シュート14の他方の端部は、ドラム12の延在方向における端部と接続部16を介して接続されている。接続部16は、ドラム12と供給シュート14とを接続し、供給シュート14から供給される粉砕対象物をドラム12の内部に導く。接続部16は、ドラム12に向かうにつれて径が大きくなるように筒状に形成されてもよい。
【0024】
供給シュート14は、筒状に形成されている。供給シュート14は、例えば円筒状又は断面が四角形の角筒状に形成されている。供給シュート14の導入口は上方(例えば、鉛直上方)を向き、供給シュート14の接続部16と接続される端部における開口は、水平方向(ドラム12)を向く。供給シュート14は、側面視において、導入口が設けられる一端から、接続部16に接続される他端に向かって湾曲状に延びていてもよい。供給シュート14は、
図1に示される例とは異なり、側面視において、導入口が設けられる一端から、接続部16に接続される他端に向かって斜め下方に直線状に延びていてもよい。
【0025】
集塵ファン22は、ミル装置10の内部の空間からガスを排出するファンである。集塵ファン22は、ミル装置10の内部が負圧となるように、ミル装置10の内部のガスをミル装置10の外に排出する。集塵装置24は、集塵ファン22によって排出されたガスから微粉を捕集する装置(例えばフィルタ)である。集塵ファン22及び集塵装置24によって、ミル装置10の内部の空間に浮遊する微粉(セメントの微粉)を回収することができる。
【0026】
温度計測装置30は、ミル装置10のドラム12内の温度を示す情報(以下、「温度情報」という。)を取得する装置である。温度計測装置30は、ドラム12内の空間の温度を計測することで、温度情報を取得してもよい。温度計測装置30は、ドラム12内の温度に相関する温度を、上記温度情報として取得してもよい。ドラム12の出口(不図示)に排出されたセメントの温度は、ドラム12内の温度に相関する。そのため、温度計測装置30は、ドラム12の出口に排出されたセメント(排出された直後のセメント)の温度を計測することで、上記温度情報を取得してもよい。ドラム12の外表面の温度は、ドラム12内の温度に相関する。そのため、温度計測装置30は、ドラム12の外表面の温度を計測することで、上記温度情報を取得してもよい。温度計測装置30は、取得した温度情報を制御装置100に出力する。
【0027】
冷却装置40は、ドラム12の内部に冷却液を供給する装置である。上述したように粉砕対象物を粉砕するためにドラム12を水平な軸線まわりに回転させている。これに伴い、ドラム12内では多数の粉砕用ボール18それぞれにおいて、粉砕対象物、又はドラム12の内壁等との衝突に起因した摩擦熱が発生する。摩擦熱の発生によってドラム12内の温度が上昇するので、冷却装置40による冷却が必要となる。ドラム12の内部を冷却するために(温度を低下させるために)、冷却装置40はドラム12の内部に冷却液を供給する。冷却装置40は、冷却液として水(例えば、工業用水)を供給してもよい。冷却装置40が供給する水は、常温の水であってもよい。
【0028】
冷却装置40は、吐出部42と、供給配管44と、液送出装置50と、噴射装置60と駆動装置46とを有する。吐出部42は、ドラム12の内部に向けて冷却液を吐出する。吐出部42は、冷却液の吐出が可能なノズルであってもよい。吐出部42は、供給シュート14の接続部16との接続部分の近傍、又は接続部16内に配置された状態で、ドラム12の内部に向けて冷却液を吐出してもよい。供給配管44は、その先端に吐出部42が設けられており、当該吐出部42まで冷却液を導く管である。供給配管44は、供給シュート14の側壁を貫通するように設けられている。
【0029】
液送出装置50は、吐出部42が吐出するための冷却液を供給配管44に送出する装置である。液送出装置50は、例えば、液源52と、送出管54と、切替バルブ56(切替装置)とを含む。液源52は、冷却液の液源である。送出管54は、液源52と供給配管44に設けられた冷却液の導入口とを接続し、液源52からの冷却液を供給配管44内まで導く。
【0030】
切替バルブ56は、吐出部42が冷却液を吐出する状態と、吐出部42が冷却液を吐出しない状態とを切り替える。切替バルブ56は、送出管54に設けられており、制御装置100からの動作指示に基づいて、送出管54内の流路の開閉状態を切り替える。例えば、切替バルブ56が開状態である場合に、液送出装置50から供給配管44内に冷却液が導入されて、吐出部42から冷却液が吐出される。切替バルブ56が閉状態である場合に、液送出装置50から供給配管44内への冷却液の導入が停止されて、吐出部42からの冷却液の吐出が停止する。
【0031】
噴射装置60は、吐出部42から冷却液が排出されるように、圧縮された空気(以下、単に「圧縮空気」という。)を供給配管44内に噴射する装置である。噴射装置60によって噴射される圧縮空気は、圧力が高められることで体積が縮小した空気である。噴射装置60は、例えば、供給源62と、送出管64と、切替バルブ66とを含む。供給源62は、圧縮空気の供給源であり、例えば、エアーコンプレッサーである。送出管64は、供給源62と供給配管44に設けられた圧縮空気の導入口とを接続し、供給源62からの圧縮空気を供給配管44内まで導く。
【0032】
切替バルブ66は、供給配管44内に圧縮空気が噴射される状態と、供給配管44内に圧縮空気が噴射されない状態とを切り替える。切替バルブ66は、送出管64に設けられており、制御装置100からの動作指示に基づいて、送出管64内の流路の開閉状態を切り替える。例えば、切替バルブ66が開状態である場合に、噴射装置60から圧縮空気が供給配管44内に導入されて、供給配管44内に存在する冷却液の少なくとも一部が吐出部42から排出される。切替バルブ66が閉状態である場合に、噴射装置60からの供給配管44内への圧縮空気の導入が停止される。
【0033】
駆動装置46は、供給配管44をその延在方向に沿って移動させる装置である。駆動装置46は、例えば、エアシリンダ等の動力源を含み、接続部材を介して供給配管44に接続されている。駆動装置46は、吐出部42がドラム12内への冷却液の吐出を行うための位置と、吐出部42を退避させるための位置との間で、供給配管44を移動させる。供給配管44の移動動作については後述する。
【0034】
図2に示されるように、冷却装置40は、鞘管70を有する。鞘管70は、円筒状又は角筒状(例えば、断面が四角形の筒状)に形成された管であり、供給配管44及び吐出部42を収容可能である。鞘管70は、供給シュート14の側壁を貫通するように供給シュート14に設けられている。鞘管70は、例えば、固定部材を介して供給シュート14の側壁に固定されている。鞘管70の一方の端部は、供給シュート14の内部に位置しており、鞘管70の他方の端部は、供給シュート14の外部に位置している。
【0035】
以下では、ミル装置10の内部の空間(領域)を「内部空間S1」と表記し、ミル装置10の外部の空間(領域)を「外部空間S2」と表記する。ミル装置10の内部空間S1は、供給シュート14の内部の空間、接続部16の内部の空間、及びドラム12の内部の空間を含む。外部空間S2は、内部空間S1及び鞘管70内の空間を含む領域以外の空間である。また、鞘管70の内部空間S1(供給シュート14内)に位置する端部を「先端部72」と表記し、鞘管70の外部空間S2に位置する端部を「基端部74」と表記する。鞘管70は、先端部72及び基端部74を含み、先端部72が内部空間S1に位置し、且つ、基端部74が外部空間S2に位置するように供給シュート14に設けられている。
【0036】
先端部72と基端部74とはそれぞれ、鞘管70内の空間を介して内部空間S1と外部空間S2とが接続されるように、開放されている。先端部72に位置する端面には、例えば、接続部16又はドラム12を向く開口が設けられており、基端部74に位置する端面には、例えば、接続部16又はドラム12から離れる方向を向く開口が設けられている。鞘管70内の空間には、少なくとも吐出部42が冷却液を吐出する状態において、供給配管44が配置される。鞘管70の内径は、吐出部42の外径(最大の幅)及び供給配管44の外径(最大の幅)よりも大きい。鞘管70の延在方向における長さは、供給配管44の延在方向における長さよりも短くてもよい。
【0037】
吐出部42から冷却液を吐出させる状態では、駆動装置46によって、鞘管70の先端部72よりも突出した状態で内部空間S1に吐出部42が配置される位置(以下、「吐出位置P1」という。)に供給配管44が移動する。供給配管44が吐出位置P1に移動した状態では、鞘管70の先端部72から、供給配管44のうちの吐出部42が設けられる端部が突出しており、基端部74から、供給配管44のうちの吐出部42が設けられていない端部が突出している。
【0038】
吐出部42から冷却液を吐出させない状態では、
図3に示されるように、駆動装置46によって、鞘管70の先端部72よりも内部空間S1から離れるように吐出部42が配置される位置(以下、「退避位置P2」という。)に供給配管44が移動する。供給配管44が退避位置P2に移動した状態では、吐出部42及び供給配管44の先端側の端部が鞘管70の先端部72から突出していない。供給配管44が退避位置P2に移動した状態において、吐出部42(その先端面)が鞘管70内に収容されてもよい。
【0039】
供給配管44が退避位置P2に移動した状態において、鞘管70のうちの先端部72に近い半分の範囲に吐出部42が位置してもよく、鞘管70のうちの基端部74に近い半分の範囲に吐出部42が位置してもよい。供給配管44のうちの外部空間S2において基端部74から突出する部分は、供給配管44が吐出位置P1に位置する場合に比べて長くなる。以上のように、駆動装置46は、吐出位置P1と退避位置P2との間で、鞘管70の延在方向に沿って供給配管44を移動させる。なお、
図2及び
図3等では、鞘管70の延在方向が「方向D1」によって示されている。
【0040】
鞘管70は、ミル装置10の内部(内部空間S1)に向かって斜め下方に傾いた状態で設置されてもよい。言い換えると、基端部74から先端部72に向かうにつれて、高さ位置が低くなるように、鞘管70が設置されてもよい。この場合、基端部74の最上部(最下部)は、先端部72の最上部(最下部)に比べて低い。鞘管70の延在方向(方向D1)は、水平方向に対して傾いている。鞘管70が傾斜した状態で設けられる場合、供給配管44も傾斜した状態で設けられる。供給配管44は、内部空間S1に向かって斜め下方に傾いていてもよい。
【0041】
図4(a)及び
図4(b)には、鞘管70の先端部72の一例が示されている。鞘管70の先端部72には、内部空間S1に向かって突出するように尖った尖り部が形成されている。尖り部は、鞘管70の延在方向に対して直交する特定の一方向(以下、「特定方向」という。)から見て、先端部72において一方の側縁に近い領域に形成される。上記特定方向から鞘管70を見て、上記一方の側縁と、当該側縁の端点から、当該側縁に対して90°よりも小さい角度(鋭角)で交差するように延びる先端縁との交点及びその近傍に、尖り部が形成される。
【0042】
例えば、鞘管70の先端部72に位置する端面(以下、「先端面72a」という。)が、円筒状の鞘管70の延在方向に対して直交しない状態で交差していてもよい。先端面72a(先端面72aを含む仮想平面)と鞘管70の延在方向とのなす角度αは、30°~60°であってもよい。この場合、
図4(b)に示されるように、30°~60°の角度αを有する尖り部72bが形成される。
図4(b)には、鞘管70の中心軸Axを通る1つの縦断面が示されており、この縦断面は、上記特定方向から見た図に対応する。
図4(b)に示される縦断面は、先端面72aのうちの内部空間S1に向けて最も突出する部分と、内部空間S1に向けて最も突出しない(内部空間S1から最も離れた)部分と、鞘管70の中心軸Axとを含む仮想平面で、鞘管70を切断したときの図である。
【0043】
尖り部72bが形成されることで、吐出部42の外表面においてセメントの粉末と冷却液とが反応することで吐出部42の周りにセメントの塊が形成された場合でも、当該塊を尖り部72bによって除去することが可能となる。角度αの上記範囲(30°~60°)は、尖り部72bの強度を確保する観点、及びセメントの塊の除去を容易にする観点から設定される。角度αの最小値は、尖り部72bの強度をより確実に確保する観点から、32°、35°、又は40°であってもよい。角度αの最大値は、セメントの塊の除去をより容易にする観点から、58°、55°、又は50°であってもよい。一例では、角度αは、35°~55°であってもよく、40°~50°であってもよい。
【0044】
先端面72aのうちの内部空間S1に向けて最も突出する部分と、内部空間S1に向けて最も突出しない部分と、中心軸Axとを含む仮想平面に対して直交する方向(上記特定方向)から鞘管70を見た場合、尖り部72bは角度αを有する。その特定方向から鞘管70を見た場合、方向D1に沿った鞘管70の一対の側縁72c,72dのうちの、尖り部72bが形成される一方の側縁72cの端点は、他方の側縁72dの端点よりも、ドラム12の近くに位置する。
【0045】
図5には、供給シュート14内に配置された鞘管70の上面が見える位置での供給シュート14内の断面が模式的に示されている。ここでは、供給シュート14が、四角形の断面を有する筒状に形成されている場合を説明する。鞘管70は、先端部72において上記角度αを有する尖り部72bが、供給シュート14内において粉砕対象物が通過する領域(以下、「領域R」という。)と供給配管44との間に位置するように、供給シュート14に設けられてもよい。領域Rは、例えば、供給シュート14に導入され、ドラム12の内部まで導かれる粉砕対象物のうちの90%以上が通過する領域である。
【0046】
以上の構成では、鞘管70は、先端面72aが領域Rとは反対側を向くように配置されている。ここで、供給シュート14からドラム12を見たとき(X軸正方向を見たとき)を基準として、「左右方向」、「右方向」及び「左方向」を使用する。左右方向は、Y軸方向に対応している。
図5には、右方向(Y軸正方向)に位置する供給シュート14の右側壁14aと、左方向(Y軸負方向)に位置する供給シュート14の左側壁14bとが示されている。右側壁14a及び左側壁14bは、左右方向において互いに対向しており、領域Rと鞘管70の内部空間S1に位置する部分とを間に挟む。
【0047】
鞘管70の中心軸Axと左側壁14bとの間の左右方向における距離が、中心軸Axと右側壁14aとの間の左右方向における距離よりも小さくなるように、鞘管70は、左側壁14b寄りに配置されている。先端面72aが領域Rとは反対側を向いた状態では、左右方向において、右側壁14a、領域R、尖り部72b、及び供給配管44(又は鞘管70の中心軸Ax)が、この順に並んでいる。なお、供給シュート14が円筒状である場合、供給シュート14の周壁のうちの最も右に位置する部分、領域R、尖り部72b、及び供給シュート14の周壁のうちの最も左に位置する部分が、この順に並んでいてもよい。
【0048】
図1に戻り、制御装置100は、少なくとも、駆動装置46、液送出装置50、温度計測装置30、及び噴射装置60を制御するコンピュータである。制御装置100は、少なくとも、吐出部42から冷却液を吐出させる際に供給配管44を吐出位置P1に移動させるように駆動装置46を制御することと、冷却液の吐出を停止して吐出部42を退避させる際に供給配管44を退避位置P2に移動させるように駆動装置46を制御することと、を実行するように構成されている。
【0049】
制御装置100は、
図6に示されるように、回路110を有する。回路110は、少なくとも一つのプロセッサ112と、メモリ114と、ストレージ116と、入出力ポート118と、タイマ119とを含む。ストレージ116は、粉砕装置1に含まれる各種装置を制御するためのプログラムを記録する。ストレージ116は、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0050】
メモリ114は、ストレージ116からロードされたプログラム、プロセッサ112の演算結果等を一時的に記憶する。プロセッサ112は、メモリ114と協働してプログラムを実行することで、粉砕装置1に含まれる各装置に対する制御を実行する。入出力ポート118は、プロセッサ112からの指令に応じ、駆動装置46、液送出装置50、噴射装置60、及び温度計測装置30等の間で電気信号の入出力を行う。タイマ119は、プロセッサ112からの指令により所定周期のクロックパルスをカウントして経過時間を計測する。
【0051】
上述の粉砕装置1を備えるセメントの製造設備において、セメントを製造することができる。当該セメントの製造設備で実行されるセメントの製造工程(製造方法)は、クリンカ(セメントクリンカ)を製造するクリンカ製造工程と、クリンカを粉砕する粉砕工程とを含む。上記クリンカ製造工程は、セメント原料を予熱及び仮焼する工程と、予熱及び仮焼されたセメント原料をロータリキルンにおいて焼成することで、クリンカを生成する工程と、ロータリキルンから排出されたクリンカをクリンカクーラにおいて冷却する工程とを含む。
【0052】
上記粉砕工程では、粉砕装置1を用いて、クリンカに少なくとも石膏を加えて得られる粉砕対象物を粉砕する工程(仕上げ粉砕工程)が行われることで、クリンカと石膏とが粉砕されながら混合されてセメントが得られる。この粉砕工程には、ミル装置10のドラム12を回転させて粉砕対象物の粉砕を継続する工程と、ドラム12内に冷却液を供給してドラム12内を冷却する冷却工程とが含まれる。この冷却工程は、粉砕対象物の粉砕が継続されている間に実行されてもよい。
【0053】
制御装置100は、上記冷却工程を実行するように、駆動装置46、液送出装置50、噴射装置60、及び温度計測装置30等を制御する。
図7は、冷却工程において制御装置100が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。この一連の処理では、供給シュート14から粉砕対象物がドラム12の内部に供給され、ドラム12の回転による粉砕対象物の粉砕が開始された状態で、制御装置100がステップS11を実行する。また、初期状態において、供給配管44は退避位置P2に配置されている。ステップS11では、例えば、制御装置100が、温度計測装置30から、ドラム12内の温度を示す温度情報を温度計測装置30から取得する。なお、以降のステップでは、供給シュート14からの粉砕対象物の供給、及びドラム12の回転が継続される。
【0054】
次に、制御装置100は、ステップS12を実行する。ステップS12では、例えば、制御装置100が、ステップS11で取得された温度情報が示す温度が、所定の設定温度を上回っているか否かを判定する。所定の設定温度は、例えば、粉砕対象物に含まれる石膏の一部が、半水石膏に変化してしまう温度よりも小さい値に予め定められている。一例では、設定温度は、70℃~80℃程度に定められている。ステップS12において、ステップS11で取得した温度情報が示す温度が、設定温度以下である場合(ステップS12:NO)には、制御装置100が実行する処理は、ステップS11に戻る。
【0055】
一方、ステップS12において、ステップS11で取得した温度情報が示す温度が、設定温度よりも大きい場合(ステップS12:YES)、制御装置100が実行する処理は、ステップS13に進む。このように、ステップS12で取得した温度情報が示す温度が、設定温度以下である間では、制御装置100が、ステップS11,S12を繰り返す。この場合、制御装置100は、所定の周期でステップS11,S12を繰り返してもよい。ステップS13では、例えば、制御装置100が、退避位置P2から吐出位置P1まで、駆動装置46により供給配管44を方向D1に沿って移動させる。これにより、ドラム12内に冷却液の吐出が可能な内部空間S1の位置に吐出部42が配置される。
【0056】
次に、制御装置100は、ステップS14を実行する。ステップS14では、例えば、制御装置100が、液送出装置50の切替バルブ56を閉状態から開状態に遷移させる。切替バルブ56が開状態に遷移することで、内部空間S1において吐出部42からの冷却液の吐出が開始される。
【0057】
次に、制御装置100は、ステップS15,S16を実行する。ステップS15では、例えば、ステップS11と同様に、制御装置100が、ドラム12内の温度を示す温度情報を温度計測装置30から取得する。ステップS16では、例えば、制御装置100が、ステップS15で取得した温度情報が示す温度が、所定の設定温度を下回っているか否かを判定する。ステップS16での判定に用いる設定温度は、ステップS12での判定に用いる設定温度と同じ値又は小さい値に予め定められていてもよい。ステップS16において、ステップS15で取得した温度情報が示す温度が、設定温度以上である場合(ステップS16:NO)、制御装置100が実行する処理は、ステップS15に戻る。
【0058】
一方、ステップS16において、ステップS15で取得した温度情報が示す温度が、設定温度よりも小さい場合(ステップS16:YES)、制御装置100が実行する処理は、ステップS17に進む。このように、ステップS15で取得した温度情報が示す温度が、設定温度以上である間では、制御装置100が、ステップS15,S16を繰り返す。この場合、制御装置100は、所定の周期でステップS15,S16を繰り返してもよい。ステップS17では、例えば、制御装置100が、液送出装置50の切替バルブ56を開状態から閉状態に遷移させる。切替バルブ56が閉状態に遷移することで、内部空間S1に位置する吐出部42からの冷却液の吐出が停止する。
【0059】
次に、制御装置100は、ステップS18を実行する。ステップS18では、例えば、制御装置100が、供給配管44内に圧縮された空気(圧縮空気)を噴射するように噴射装置60を制御する。一例では、制御装置100は、噴射装置60の供給源62となる装置を動作させて、噴射装置60の切替バルブ66を閉状態から開状態に遷移させることで、供給配管44内に圧縮空気を噴射(供給)する。そして、制御装置100は、噴射を開始してから所定時間が経過した後に、切替バルブ66を開状態から閉状態に遷移させる。この圧縮空気の噴射により、ステップS17での停止後に供給配管44内に残っている冷却液が、吐出部42から排出され得る。
【0060】
次に、制御装置100は、ステップS19を実行する。ステップS19では、例えば、制御装置100が、吐出位置P1から退避位置P2まで、駆動装置46により供給配管44を方向D1に沿って移動させる。これにより、吐出部42が鞘管70内に収容される(退避される)。ステップS19の実行後、制御装置100は、ステップS11以降の一連の処理を繰り返す。制御装置100は、例えば、粉砕装置1が稼働を停止するまで、ステップS11以降の一連の処理を繰り返し実行する。
【0061】
以上の一連の処理において、制御装置100は、温度計測装置30から取得される温度情報が示す温度が所定の設定温度(閾値)を上回った場合に、駆動装置46により供給配管44を吐出位置P1に移動させることと、供給配管44が吐出位置P1に配置された状態で吐出部42から冷却液を吐出させるように切替バルブ56を制御することとを実行する。制御装置100は、温度計測装置30から取得される温度情報が示す温度が所定の設定温度(閾値)を下回った場合に、吐出部42からの冷却液の吐出を停止させるように切替バルブ56を制御することと、駆動装置46により供給配管44を退避位置P2に移動させることとを実行する。
【0062】
以上の一連の処理において、制御装置100は、供給配管44が吐出位置P1に配置された状態で、供給配管44内に圧縮空気を噴射装置60に噴射させることを実行する。そして、制御装置100は、圧縮空気が供給配管44内に噴射された後に、吐出部42が冷却液を吐出していない状態で駆動装置46により供給配管44を退避位置P2まで移動させることを実行する。
【0063】
上述した一連の処理は一例であり、適宜変更可能である。上記一連の処理において、制御装置100は、一のステップと次のステップとを並列に実行してもよく、上述した例とは異なる順序で各ステップを実行してもよい。制御装置100は、いずれかのステップを省略してもよく、いずれかのステップにおいて上述の例とは異なる処理を実行してもよい。制御装置100は、例えば、ステップS18を省略してもよい。この場合、粉砕装置1は、噴射装置60を備えていなくてもよい。
【0064】
続いて、
図8~
図10を参照しながら、変形例に係る粉砕装置1について説明する。
図8に示されるように、変形例に係る粉砕装置1は、冷却装置40に代えて、冷却装置40Aを備える。なお、
図8では、ミル装置10の図示が省略されており、内部空間S1と外部空間S2との境界BLが一点鎖線で示されている。この境界BLは、供給シュート14の側壁に対応する。
【0065】
冷却装置40Aでは、供給配管44が退避位置P2に配置された状態において、吐出部42(吐出部42の全体)が、鞘管70内に位置しておらず、基端部74から突出した状態でミル装置10の外部である外部空間S2に位置する。冷却装置40Aの駆動装置46は、吐出部42が内部空間S1に配置される吐出位置P1と、吐出部42が外部空間S2に配置される退避位置P2との間で、方向D1に沿って供給配管44を移動させることが可能となるように構成されている。
【0066】
冷却装置40Aは、第2噴射装置80を有する。この場合、冷却装置40Aは、噴射装置60(第1噴射装置)と第2噴射装置80との2種類の噴射装置を有する。噴射装置60が供給配管44内に圧縮空気を噴射するのに対して、第2噴射装置80は、供給配管44が退避位置P2に退避することで吐出部42が外部空間S2に位置する際に、吐出部42の外表面に対して圧縮空気を噴射する。第2噴射装置80は、噴射装置60と同様に、制御装置100の動作指示に応じて、圧縮空気を噴射する状態と圧縮空気を噴射しない状態とを切替え可能である。
【0067】
図9は、冷却装置40Aが備えられる場合に、制御装置100が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。この一連の処理では、制御装置100が、
図7に示されるステップS11~S18と同様に、ステップS21~S28を実行する。ステップS28において、供給配管44内に圧縮空気が噴射された後に、制御装置100は、ステップS29を実行する。ステップS29では、例えば、制御装置100が、内部空間S1及び鞘管70内の空間の外である外部空間S2に吐出部42が配置されるように、吐出位置P1から退避位置P2まで、駆動装置46により供給配管44を方向D1に沿って移動させる。
【0068】
次に、制御装置100は、ステップS30を実行する。ステップS30では、例えば、制御装置100が、外部空間S2に配置された吐出部42の外表面に圧縮空気が噴射されるように、第2噴射装置80を制御する。第2噴射装置80からの圧縮空気の噴射により、ステップS27での冷却液の吐出を停止した後に吐出部42の外表面に付着している冷却液が、吐出部42の外表面から除去され得る。
【0069】
制御装置100は、噴射装置60によって供給配管44内に圧縮空気を噴射しつつ、吐出部42からの冷却液の吐出を開始させてもよい。制御装置100は、噴射装置60によって供給配管44内に圧縮空気を噴射しつつ、吐出部42からの冷却液の吐出を停止させてもよい。
図10は、以上の制御を含む一連の処理の一例を示すフローチャートである。制御装置100は、
図7に示されるステップS11~S13と同様に、ステップS41~S43を実行する。
【0070】
次に、制御装置100は、ステップS44,S45を実行する。ステップS44では、例えば、制御装置100が、吐出部42が内部空間S1に位置するように供給配管44が吐出位置P1に配置された状態で、噴射装置60の切替バルブ66を閉状態から開状態に遷移させる。これにより、供給配管44内への噴射装置60からの圧縮空気の噴射が開始される。ステップS45では、例えば、制御装置100が、液送出装置50の切替バルブ56を閉状態から開状態に遷移させる。これにより、噴射装置60からの圧縮空気の噴射が継続された状態で、吐出部42からの冷却液の吐出が開始される。
【0071】
次に、制御装置100は、ステップS46を実行する。ステップS46では、例えば、制御装置100が、噴射装置60の切替バルブ66を開状態から閉状態に遷移させる。これにより、吐出部42からの冷却液の吐出が継続されている状態で、供給配管44内への圧縮空気の噴射が停止する。次に、制御装置100は、
図7に示されるステップS15,S16と同様に、ステップS47,S48を実行する。
【0072】
ステップS48において、ステップS47で取得した温度情報が示す温度が、設定温度を下回っている場合(ステップS48:YES)、制御装置100は、ステップS49,S50を実行する。ステップS49では、例えば、制御装置100が、吐出部42からの冷却液の吐出が継続されている状態で、噴射装置60の切替バルブ66を開状態から閉状態に遷移させる。これにより、供給配管44内への噴射装置60からの圧縮空気の噴射が開始される。ステップS50では、例えば、制御装置100が、液送出装置50の切替バルブ56を開状態から閉状態に遷移させる。これにより、噴射装置60からの圧縮空気の噴射が継続された状態で、吐出部42からの冷却液の吐出が停止する。
【0073】
次に、制御装置100は、ステップS51を実行する。ステップS51では、例えば、制御装置100が、噴射装置60の切替バルブ66を開状態から閉状態に遷移させる。これにより、吐出部42からの冷却液の吐出が停止した後に、供給配管44内への圧縮空気の噴射が停止する。次に、制御装置100は、ステップS52,S53を実行する。ステップS52では、例えば、制御装置100が、外部空間S2に吐出部42が配置されるように、吐出位置P1から退避位置P2まで、駆動装置46により供給配管44を方向D1に沿って移動させる。ステップS53では、例えば、制御装置100が、外部空間S2に配置された吐出部42の外表面に圧縮空気が噴射されるように、第2噴射装置80を制御する。
【0074】
冷却液の吐出の開始直後及び停止直前では、供給配管44内に送出される冷却液の圧力が弱くなり、吐出部42から冷却液が飛び出さずに、吐出部42の外表面に冷却液が垂れてしまう可能性がある。これに対して、以上に例示した一連の処理では、供給配管44内に圧縮空気が噴射されつつ、吐出部42からの冷却液の吐出が開始及び停止される。そのため、冷却液の吐出の開始直後及び停止直前において、吐出部42からの圧縮空気と共に、冷却液が排出(吐出)される。その結果、吐出部42の外表面に冷却液が付着し難い。
【0075】
制御装置100は、温度計測装置30から取得した温度情報以外の情報に基づいて、吐出状態と停止状態とを切り替えてもよい。例えば、制御装置100は、作業員からの吐出開始の指示を示す入力情報に基づいて、駆動装置46により供給配管44を吐出位置P1に移動させて、吐出部42から冷却液が吐出されるように液送出装置50を制御してもよい。制御装置100は、作業員からの吐出停止の指示を示す入力情報に基づいて、吐出部42からの冷却液の吐出が停止するように液送出装置50を制御して、駆動装置46により供給配管44を退避位置P2に移動させてもよい。この場合、制御装置100は、作業員に情報を表示するモニタに上記温度情報を出力してもよい。
【0076】
制御装置100は、ミル装置10が稼働中(ミル装置10において粉砕対象物の粉砕を継続している間)において、吐出部42からの冷却液の吐出の有無によらずに、吐出部42を内部空間S1に配置した状態を駆動装置46に維持させてもよい。そして、制御装置100は、ミル装置10の稼働を停止する際に、駆動装置46により供給配管44を吐出位置P1から退避位置P2に移動させてもよい。
【0077】
鞘管70の形状は、上述した例に限られない。上述の例では、特定方向から鞘管70を見た場合に、一方の側縁72cの先端から他方の側縁72dの先端まで、直線状に先端面72aが形成されるが、先端面が湾曲した状態で尖り部が形成されてもよい。また、先端面が、異なる角度で延びる2以上の平面から構成された状態で、一つの平面(先端面の一部)によって尖り部が形成されてもよい。鞘管70の先端部72において、先端面が鞘管70の延在方向に対して直交していてもよい。この場合、先端部72に尖り部が形成されていなくてもよい。
【0078】
上述の例では、供給配管44の先端に吐出部42(ノズル)が設けられているが、供給配管44と吐出部42とが一体に構成されていてもよい。例えば、供給配管44の先端(及びその近傍)に、供給配管44の内部と外部とを接続する複数の吐出口が形成されてもよい。この場合、供給配管44のうち複数の吐出口が形成されている部分が吐出部を構成する。
【0079】
[実施形態の効果]
ミル装置10内の温度を低下させる装置として、位置が固定された状態で設置される吐出部と供給配管とを有する冷却装置が考えられる。セメントを粉砕するミル装置10内では、セメントの粉末が浮遊している。そのため、位置が固定された吐出部からの冷却液を停止した後において、吐出部に付着している冷却液とセメントの粉末とが反応して、吐出部のまわりにセメントの塊が生じてしまうおそれがある。セメントの塊が吐出部に形成されると、その塊の自重により、吐出部及び供給配管が故障してしまう可能性がある。また、このような塊を除去するために、定期的なメンテナンスが必要となる。当該メンテナンスでは、例えば、作業員が、ミル装置10内において、吐出部のまわりに形成されたセメントの塊を除去する作業を行う。
【0080】
これに対して、上記粉砕装置1では、吐出位置P1と、鞘管70の先端部72よりもミル装置10の内部(内部空間S1)から吐出部42が離れる退避位置P2との間で、吐出部42まで冷却液を導く供給配管44が移動可能である。そのため、吐出部42からの冷却液を停止した際に、吐出部42をミル装置10の内部から退避させることができるので、吐出部42のまわりにセメントの塊が生じ難い。従って、セメントの粉末による冷却装置40への影響を抑制するのに有用である。その結果、セメントの塊に起因した吐出部42及び供給配管44の故障の発生を抑制でき、作業員による冷却装置40のメンテナンス作業を簡素化することができる。
【0081】
以上の粉砕装置1において、鞘管70内の空間を介してミル装置10の内部(内部空間S1)と外部(外部空間S2)とが接続されるように、先端部72と基端部74とは開放されていてもよい。この構成において、例えば、集塵ファン22によってミル装置10の内部のガスを吸引すると、鞘管70と供給配管44との間の空間を介して、ミル装置10の内部に外部から空気が取り込まれる。この空気の流れにより、鞘管70と供給配管44との間の空間での滞留物の発生を抑制できる。従って、冷却装置40のメンテナンス性の向上に有用である。
【0082】
以上の粉砕装置1において、鞘管70は、ミル装置10の内部(内部空間S1)に向かって斜め下方に傾いていてもよい。この場合、鞘管70の内部に逆流防止装置を設けることなく、ミル装置10の内部からのセメントの粉末又は塊の放出を抑制できる。従って、冷却装置40の構成の簡素化に有用である。
【0083】
以上の粉砕装置1において、鞘管70の先端部72には、ミル装置10の内部(内部空間S1)に向かって突出するように尖った尖り部72bが形成されていてもよい。この場合、冷却液の供給中に吐出部42のまわりに、鞘管70の外径よりも大きなセメントの塊が形成されてしまっても、吐出部42が鞘管70内に収容されるように供給配管44を移動させた際に、当該塊を鞘管70の尖り部72bで破壊して除去することができる。従って、冷却装置40のメンテナンス性の向上に有用である。
【0084】
以上の粉砕装置1において、鞘管70の先端部72には、尖り部72bが形成されるように、鞘管70の延在方向(方向D1)に対して交差して延びる先端面72aが形成されていてもよい。先端面72aと鞘管70の延在方向とのなす角度は、30°~60°であってもよい。この場合、吐出部42が鞘管70内に収容されるように供給配管44を移動させた際に、吐出部42に形成され得るセメントの塊の一点に鞘管70から力を作用させることができ、当該塊を除去しやすい。従って、冷却装置40のメンテナンス性の向上に有用である。
【0085】
以上の粉砕装置1において、鞘管70は、尖り部72bが、供給シュート14内において粉砕対象物が通過する領域Rと供給配管44との間に位置するように、供給シュート14に設けられていてもよい。この場合、供給シュート14を通過する粉砕対象物が鞘管70の内部に入り難く、鞘管70内での滞留物の発生が抑制される。従って、冷却装置40のメンテナンス性の向上に有用である。
【0086】
以上の粉砕装置1は、吐出部42が冷却液を吐出する状態と、吐出部42が冷却液を吐出しない状態とを切り替える切替装置(切替バルブ56)と、ドラム12内の温度を示す温度情報を取得する温度計測装置30と、駆動装置46、切替装置、及び温度計測装置30を制御する制御装置100とを更に備えてもよい。制御装置100は、温度情報が示す温度が所定の設定温度を上回った場合に、駆動装置46により供給配管44を吐出位置P1に移動させることと、供給配管44が吐出位置P1に配置された状態で吐出部42から冷却液を吐出させるように切替装置を制御することとを実行する。制御装置100は、温度情報が示す温度が所定の設定温度を下回った場合に、吐出部42からの冷却液の吐出を停止させるように切替装置を制御することと、駆動装置46により供給配管44を退避位置P2に移動させることとを実行する。この場合、ミル装置10内に効率的に冷却液を供給しつつ、吐出部42でのセメントの塊の発生を抑制できる。従って、ミル装置10の内部の効率的な冷却と冷却装置40のメンテナンス性の向上とに有用である。
【0087】
以上の粉砕装置1は、吐出部42から冷却液が排出されるように、圧縮された空気を供給配管44内に噴射する噴射装置60を更に備えてもよい。この場合、供給配管44内に在る冷却液を吐出部42から排出できるので、供給配管44内に残った冷却液に起因して、吐出部42にセメントの塊が生じるのを抑制できる。従って、吐出停止時の冷却液とセメントの粉末との反応に起因した冷却装置40への影響を抑制するのに有用である。
【0088】
以上の粉砕装置1は、駆動装置46及び噴射装置60を制御する制御装置100を更に備えてもよい。制御装置100は、供給配管44が吐出位置P1に配置された状態で、供給配管44内に圧縮された空気を噴射装置60に噴射させることを実行する。制御装置100は、圧縮された空気が供給配管44内に噴射された後に、吐出部42が冷却液を吐出していない状態で駆動装置46により供給配管44を退避位置P2まで移動させることを実行する。この場合、吐出部42がミル装置10の内部に配置された状態で、供給配管44内に在る冷却液が排出される。そのため、排出された冷却液が、ミル装置10の内部以外の領域に散布されない。従って、吐出部42にセメントの塊が生じるのを抑制しつつ、供給配管44内に圧縮空気を噴射することに伴い排出される冷却液の影響を低減するのに有用である。
【符号の説明】
【0089】
1…粉砕装置、10…ミル装置、12…ドラム、14…供給シュート、18…粉砕用ボール、30…温度計測装置、42…吐出部、44…供給配管、46…駆動装置、50…液送出装置、56…切替バルブ、60…噴射装置、70…鞘管、72…先端部、72a…先端面、72b…尖り部、74…基端部、100…制御装置、P1…吐出位置、P2…退避位置。