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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152730
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】排ガス冷却装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/60 20060101AFI20221004BHJP
   F23J 15/06 20060101ALI20221004BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20221004BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
C04B7/60
F23J15/06
F23J15/00 Z
F27D17/00 104D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055603
(22)【出願日】2021-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】高木 智広
【テーマコード(参考)】
3K070
4K056
【Fターム(参考)】
3K070DA09
3K070DA35
3K070DA72
4K056AA12
4K056CA08
4K056DB04
4K056DB05
(57)【要約】
【課題】
冷却ガスのプローブ内での逆流を抑制し、排ガスと冷却ガスとの混合を円滑にし冷却効率の高い、排ガス冷却装置及び方法を提供すること。
【解決手段】
本発明の排ガス冷却装置及び方法においては、排ガス(EG2)と冷却ガス(CG)とをプローブ(2)内で混合した混合ガスを排出する排ガス冷却装置及び方法において、該プローブ(2)は円筒形であり、該プローブの円筒形の周面の一部から該冷却ガス(CG)を導入すると共に、該冷却ガスの導入方向(ベクトルV)への延長線上には、該プローブ(2)の円筒形の中心軸(C1)が配置されていないことを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料を焼成するキルンと、該キルンから排出される排ガスの一部を抽気するプローブと、該プローブに冷却ガスを導入し、該排ガスと該冷却ガスとを該プローブ内で混合した混合ガスを排出する排ガス冷却装置において、
該プローブは円筒形であり、
該プローブの円筒形の周面の一部に該冷却ガスの導入部を設け、
該導入部の開口の中心から該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されていないことを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス冷却装置において、該導入部の開口の中心を含み該中心軸に垂直な面内で、該冷却ガスの導入方向の成分と該中心軸から該開口の中心とを繋ぐ線分とがなす角度は、30度以上であることを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス冷却装置において、該冷却ガスの導入時の流速が40~150m/sであることを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の排ガス冷却装置において、該プローブの該排ガスを導入する側と反対側の端部は閉塞され、該プローブの円筒形の周面の一部に該混合ガスを排出する分岐部を設けていることを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項5】
セメント原料を焼成するキルンから排出される排ガスの一部を抽気し、前記抽気した排ガスに冷却ガスを混合し、前記混合した混合ガスを排出する排ガス冷却方法において、
該排ガスと該冷却ガスとの混合は円筒形のプローブ内で行い、
該プローブの円筒形の周面の一部から該冷却ガスを導入すると共に、該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されていないことを特徴とする排ガス冷却方法。
【請求項6】
請求項5に記載の排ガス冷却方法において、該冷却ガスの導入部の開口の中心を含み該中心軸に垂直な面内で、該冷却ガスの導入方向の成分と該中心軸から該開口の中心とを繋ぐ線分とがなす角度は、30度以上であることを特徴とする排ガス冷却方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の排ガス冷却方法において、該冷却ガスの導入時の流速が40~150m/sであることを特徴とする排ガス冷却方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の排ガス冷却方法において、該プローブの該排ガスを導入する側と反対側の端部は閉塞され、該プローブの円筒形の周面の一部に該混合ガスを排出する分岐部を設けていることを特徴とする排ガス冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス冷却装置及び方法に関し、特に、セメント原料を焼成するキルンと、該キルンから排出される排ガスの一部を抽気するプローブと、該プローブに冷却ガスを導入し、該排ガスと該冷却ガスとを該プローブ内で混合した混合ガスを排出する排ガス冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント産業において、ナトリウム、カリウム等のアルカリや塩素等の種々の揮発性の不純物が含まれている産業廃棄物等をセメント原料の一部として利用することが進められている。これは、リサイクルの観点からも要望されている。特に、近年は、セメント生産量に対し、塩素含有産業廃棄物の処理量の増加や、高濃度塩素含有産業廃棄物の処理等が期待されており、セメントから塩素を除去する技術が望まれている。
【0003】
セメントから塩素を除去する技術としては、セメントキルンから排出される排ガスの一部をプローブで抽気し、該プローブ内で該排ガスの温度を1000℃程度から450℃以下に冷却し、塩素等の揮発性成分を排ガス中の微粉部分に濃縮し、当該微粉部分を分級除去することが提案されている。抽気するガスは、キルンの窯尻からの排ガスや、当該排ガスが導入されるプレヒータからの排ガスの何れであっても良い。
【0004】
特許文献1では、冷却ガスの一部がプローブ内を逆流し、プレヒータ等に流入することを抑制するため、プローブの排ガスを抽気する方向と冷却ガスをプローブ内に向けて供給する方向とがなす角度を70度以下に設定することが開示されている。なお、この角度は、後述する角度θ3を用いると、「90°-θ3」で表示される。
【0005】
また、特許文献2では、プローブ内の燃焼ガス(排ガス)の吸引方向に対して直角方向、かつ、燃焼ガス流れの中心方向に低温ガス(冷却ガス)を吐出する複数の吐出口を備えた、直交流冷却型プローブが開示されている。
【0006】
プローブ内の排ガスを単に冷却するだけであれば、排ガスに対する冷却ガスの流量を増加するだけでも良いが、冷却ガスの流速や流量を増加すると、プローブの入口側(プレヒータ側)へ冷却ガスが逆流し、冷却ガスのリーク量が増加する原因となる。その結果、例えばプレヒータに供給される排ガスの温度が低下し、適切な石灰石の脱炭素率を実現するために必要な燃料も増加するなどの不具合を生じる。
【0007】
プローブでは、抽気された排ガスを急冷し、揮発性物質を速やかに気相から固相に相変化させることで、プローブの内面に付着し易い液相状態となることを抑制することが重要である。冷却効率が悪く急冷できない場合には、プローブ内に液相状態の揮発性物質が付着しコーチングを生成し、プローブの閉塞等の操業トラブルの原因にもなる。
【0008】
特許文献1の方法では、冷却ガスの流速が不足した場合には、冷却ガスと排ガスとの混合が不十分となる。また、特許文献2の方法では、冷却ガスが排ガスの流れに対して直角に導入されるため、冷却ガスの流速が大きくなると、冷却ガスがプレヒータへ逆流する不具合も生じる。このように、従来のプローブにおいても、冷却効率をより一層高めることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5582414号公報
【特許文献2】特許第5411126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、冷却ガスのプローブ内での逆流を抑制し、排ガスと冷却ガスとの混合を円滑にし冷却効率の高い、排ガス冷却装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の排ガス冷却装置及び方法は、以下の技術的特徴を有する。
(1) セメント原料を焼成するキルンと、該キルンから排出される排ガスの一部を抽気するプローブと、該プローブに冷却ガスを導入し、該排ガスと該冷却ガスとを該プローブ内で混合した混合ガスを排出する排ガス冷却装置において、該プローブは円筒形であり、該プローブの円筒形の周面の一部に該冷却ガスの導入部を設け、該導入部の開口の中心から該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されていないことを特徴とする。
【0012】
(2) 上記(1)に記載の排ガス冷却装置において、該導入部の開口の中心を含み該中心軸に垂直な面内で、該冷却ガスの導入方向の成分と該中心軸から該開口の中心とを繋ぐ線分とがなす角度は、30度以上であることを特徴とする。
【0013】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の排ガス冷却装置において、該冷却ガスの導入時の流速が40~150m/sであることを特徴とする。
【0014】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の排ガス冷却装置において、該プローブの該排ガスを導入する側と反対側の端部は閉塞され、該プローブの円筒形の周面の一部に該混合ガスを排出する分岐部を設けていることを特徴とする。
【0015】
(5) セメント原料を焼成するキルンから排出される排ガスの一部を抽気し、前記抽気した排ガスに冷却ガスを混合し、前記混合した混合ガスを排出する排ガス冷却方法において、該排ガスと該冷却ガスとの混合は円筒形のプローブ内で行い、該プローブの円筒形の周面の一部から該冷却ガスを導入すると共に、該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されていないことを特徴とする。
【0016】
(6) 上記(5)に記載の排ガス冷却方法において、該冷却ガスの導入部の開口の中心を含み該中心軸に垂直な面内で、該冷却ガスの導入方向の成分と該中心軸から該開口の中心とを繋ぐ線分とがなす角度は、30度以上であることを特徴とする。
【0017】
(7) 上記(5)又は(6)に記載の排ガス冷却方法において、該冷却ガスの導入時の流速が40~150m/sであることを特徴とする。
【0018】
(8) 上記(5)乃至(7)のいずれかに記載の排ガス冷却方法において、該プローブの該排ガスを導入する側と反対側の端部は閉塞され、該プローブの円筒形の周面の一部に該混合ガスを排出する分岐部を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、排ガスと冷却ガスとをプローブ内で混合した混合ガスを排出する排ガス冷却装置及び方法において、該プローブは円筒形であり、該プローブの円筒形の周面の一部から該冷却ガスを導入すると共に、該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されていないため、冷却ガスのプローブ内での逆流を抑制しながら、冷却ガスと排ガスとの混合を円滑に行い、排ガスの冷却効果を高めた排ガス冷却装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】排ガス用の配管から直接抽気する様子を説明する図である。
図2】排ガス用の配管からボックスを介し抽気する様子を説明する図である。
図3】プローブ内に冷却ガスを導入する様子を説明する側面図である。
図4図3の点線Aにおける断面図である。
図5】冷却ガスの導入時の速度ベクトルの説明図である。
図6】プローブに冷却ガス導入部及び混合ガス分岐部を設ける様子を説明する図である。
図7図6の点線Bにおける断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の排ガス冷却装置及び方法について、好適例を用いて詳細に説明する。
図3及び4に示すように、本発明の排ガス冷却装置及び方法においては、排ガス(EG2)と冷却ガス(CG)とをプローブ(2)内で混合した混合ガス(MG)を排出する排ガス冷却装置及び方法において、該プローブ(2)は円筒形であり、該プローブの円筒形の周面の一部から該冷却ガス(CG)を導入すると共に、該冷却ガスの導入方向への延長線(CGL)上には、該プローブ(2)の円筒形の中心軸(C1)が配置されていないことを特徴とする。以下では、排ガス冷却装置を中心に説明する。
【0022】
本発明の排ガス冷却装置に使用する排ガスは、セメント原料を焼成するキルンの窯尻から抽出される排ガスであり、図1に示すように、窯尻から排出される排ガス(EG1)を案内する配管1の途中に、排ガス(EG1)の一部(EG2)を抽気するプローブ2を設けている。また、図2では、配管1から分岐するボックス10を設け、そのボックス内の排ガス(EG1’)の一部(EG2)を抽気するプローブ2を設けている。このようなボックス10を介することで、流量や流速の安定した排ガスをプローブ2に導入することができる。
【0023】
図1及び2に示した配管1は、キルンの窯尻から直接排出される排ガスを導入する配管に限定されない。キルンから排出される排ガスをセメント原料を加熱するプレヒータに導入する場合、プレヒータから排出される排ガスを案内する配管であっても良い。
【0024】
図3は、本発明の排ガス冷却装置に使用されるプローブ2の一部を示す断面図である。プローブ2は円筒形であり、その周面の一部に冷却ガス(CG)を導入する導入管3が接続されている。導入管3の断面形状は、円形に限らず矩形であっても良い。断面の円形の直径や矩形の幅に相当する図4の太さWは、プローブの円筒形の半径Rと比較し、半分以下、より好ましくは3分の1以下のように、狭く設定されている。これは後述するように、プローブの円筒形の中心軸C1に向かう角度から所定角度θ2だけ外れた方向に冷却ガスを噴出する効果を高めるためである。また、導入管3の中心軸(C1)方向の高さhは、冷却ガスの導入量にも依存するが、上記太さW以上に設定される。
【0025】
本発明の特徴である冷却ガスのプローブ内への導入方向は、図4に示すように、導入部3の開口の中心(C2)から冷却ガスの導入方向への延長線上には、プローブの円筒形の中心軸が配置されていないことを特徴とする。この構成により、プローブ2の円筒形の内壁に沿って、中心軸(C1)周りに回転する気流が発生し、排ガス(EG2)と冷却ガス(CG)との混合を滑らかに行うことができる。中心軸(C1)を中心とした回転する気流の流量を増加させるには、所謂、「冷却ガスの運動量モーメント」を増加させることが好ましい。
【0026】
上記「冷却ガスの運動量モーメント」とは、導入部3の開口から導入される冷却ガスの流速と導入方向に着目したパラメータである。具体的には、図5に示すように、冷却ガスの速度ベクトルVは、プローブ2の円筒形の中心軸C1に対して平行な速度ベクトル成分Vzと、中心軸C1に垂直な断面(S)に平行な速度ベクトル成分Vsに分解できる。中心軸(C1)周りに回転する気流に寄与するのは、専ら速度ベクトル成分Vsである。
【0027】
「冷却ガスの運動量モーメント」は、冷却ガスが、プローブ内を通過する排ガスに対して、プローブの中心軸C1周りに回転する気流を発生させるために、冷却ガスが持つ単位時間当たり運動量モーメントであり、冷却ガスの密度ρと、導入部3の冷却ガスが流れる方向に垂直な断面の面積D(図3のhと図4のWを用いてD=h×W)、中心軸(C1)に垂直な断面(S)における冷却ガスの流速Vの速度ベクトル成分Vsと、冷却ガスの速度ベクトル成分Vsの延長線と中心軸(C1)との距離Rsinθ2を用いて、以下のように定義される。
冷却ガスの運動量モーメント:ρ×D×Vs×Rsinθ2
なお、ρ×D×Vは質量流量Mであり、Vs=Vcosθ3であるため、上記式は、以下のように書き直せる。
ρ×D×Vs×Rsinθ2=M×R×sinθ2×cosθ3
これは、仮に、質量流量が一定の場合には、角度θ2及びθ3が、冷却ガスの運動量モーメントに影響を与えることが理解される。
【0028】
図4の冷却ガスを導入する導入部3は、角度θ2を変化させる場合、点線3aから3bに示すような範囲で設定できる。中心軸C1周りに回転する気流の方向を逆にする場合には、点線3bより図面の上側に導入部が配置される。本発明では、冷却ガスの導入方向が中心軸C1を通過する導入部3bの配置は選択しない。点線3bの導入部に沿った一点鎖線STNは、角度θ2の基準となる基準線でもある。また、点線3aの導入部の角度θ2は、ほぼ90度となる。
【0029】
冷却ガスの速度ベクトルVは、図3及び図5に示すように、プローブの円筒形の中心軸(C1)に平行な方向であり、かつ排ガスが流れる方向を向いたベクトル成分Vzを持つことが好ましい。この速度ベクトルVと断面S(図3の点線A)とがなす角度θ3は、断面Sより下流側のプローブの長さなども考慮する必要があるが、プローブ2内を冷却ガスが逆流することを抑制するためにも、例えば、20度より大きい、より好ましくは30度以上のように所定の範囲に設定される。
【0030】
さらに、図6には、プローブ2に分岐部4を設け、排ガス(EG2)と冷却ガス(CG)とを混合した混合ガス(MG)を、2つの矢印(MG1とMG2)に分岐して排気するものである。さらに、分岐部の下流に位置するプローブを点線20のように閉塞し、混合ガスの排気を分岐部4のみで形成することも可能である。図7は、図6の点線Bにおける断面であり、参考までに冷却ガスの導入部3を併せて記載している。
【0031】
角度θ2及びθ3の最適値を判断するため、図2の形状のモデルを使って、以下の境界条件を用いて、シミュレーションを行った。
(プローブの形状)
プローブの半径R:0.7[m]
(抽気ガスの特性)
プローブ入口での排ガス温度:1091℃
質量流量Q:34.1[kg/s]
密度ρ:0.266[kg/m
流速V:14[m/s]
運動量F(=Q×V):477[kg・m/s
(冷却ガス)
冷却ガスの温度:30℃
質量流量Q:4.83[kg/s]
密度ρ:1.203[kg/m
導入部の開口の高さh:0.9[m]
導入部の開口の幅wは、流速に応じて変更。
プローブの入口から導入部の開口の中心C2までの距離H:1.5[m]
【0032】
さらにシミュレーションでは、導入部から下流側に1m移動した場所から、プローブ内に散水量0.5[t/h]の噴霧を行っていると仮定した。
また、プローブの冷却ガスの導入部から下流側にプローブの半径が、円錐台部分を経て狭くなる、所謂「絞り」がある場合についてもシミュレーションを行った。結果としては、「絞り」がある場合は、排ガスと冷却ガスの混合を補助する効果がある一方、冷却ガスがプローブの入口側に逆流する問題も発生し易い。ただし、絞りが存在しても、結果は大きく変化しなかったため、ここでは、絞りなしの結果を例示している。
【0033】
シミュレーション結果の評価方法は、「プローブの出口における温度」「冷却ガスの導入部付近の下流側での排ガスと冷却ガスとの混合状態」を用いて評価した。
(評価条件)
・プローブの出口における温度:計算結果の温度を「出口温度℃」で表示し、「温度評価」を350℃以下を「○」、それ以外を「×」で評価した。
・冷却ガスの導入部付近の下流側におけるプローブ内壁付近の温度分布を見て、排ガスと冷却ガスとの混合状態(表中の「混合状態」)を評価した。冷却ガスがプローブ内壁付近に留まって温度が低い場合を「×」、排ガスと混合し温度が上昇している場合を「○」で評価した。
【0034】
比較例として、冷却ガスの流速を15~150m/sの範囲で変化させ、角度θ2=90度、角度θ3=0度に設定した。その結果を表1に示す。この結果、プローブの内壁に沿って冷却ガスを導入(ただし、θ3=0度)しただけでは、流速が低い15m/sの場合は、冷却ガスのリークも少なく、混合ガスの温度を350℃以下に下げることが可能となる。しかしながら、流速が30m/s以上に設定すると、冷却ガスの逆流及びリークが発生し、混合ガスの温度を適切に下げることが難しいことが理解される。ただし、流速が50m/s以上であると、排ガスと冷却ガスとの混合状態が改善している。このことからも、本発明では、冷却ガスの流速が40~150m/sの範囲においても、より高い冷却効果を得られるよう、冷却ガスの導入方向を調整している。
【0035】
【表1】
【0036】
以下の結果2では、冷却ガスの流速100m/sとし、角度θ2を90度に設定すると共に、角度θ3を10~64度の範囲で変化させた。結果1(比較例)の角度θ3=0度で流速100m/sの出口温度が554℃であったものが、冷却ガスの導入角度θ3=30度に設定するだけで、約200℃程度下げることができている。しかも、流速が100m/sでは、θ3の角度に依らず、排ガスと冷却ガスとの混合状態を良好に維持している。よって、角度θ3を30度以上に設定することで、プローブの出口温度を350℃以下まで下げ、混合ガスの混合状態も良好に維持することが可能となる。
【0037】
【表2】
【0038】
以下の結果3では、冷却ガスの流速50m/sとし、角度θ2を90度に設定すると共に、角度θ3を10~60度の範囲で変化させた。プローブの出口温度を改善するには、結果2の流速が100m/sの場合よりも、角度θ3をより大きくすることが必要となることが理解される。結果としては、角度θ3は35度以上に設定することが、好ましい。
【0039】
【表3】
【0040】
以下の結果4では、プローブの他端(点線20)を閉塞し、図6に示すように分岐部を設け、冷却ガスの流速は100m/sとし、角度θ1は15度、角度θ2は90度に設定した。この場合でも、上記結果2と同様に、高い冷却効果が得られていることが確認できる。
【0041】
【表4】
【0042】
以上のことから、冷却ガスの導入方向の延長線上にプローブの中心軸C1が無い場合には、排ガスと冷却ガスとが円滑に混合され、高い冷却効果が得られる。しかも、プローブの中心軸C1に対する角度θ3を調整することで、より高い冷却効果を得ることができる。また、本発明には必要に応じて冷却ガスの導入部の下流側に散水機構や「絞り」を設けることができることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、冷却ガスのプローブ内での逆流を抑制し、排ガスと冷却ガスとの混合を円滑にし冷却効率の高い、排ガス冷却装置及び方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 キルンからの排ガス用の配管
2 プローブ(円筒形)
3 冷却ガス導入管
4 分岐部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント原料を焼成するキルンと、該キルンから排出される排ガスの一部を抽気するプローブと、該プローブに冷却ガスを導入し、該排ガスと該冷却ガスとを該プローブ内で混合した混合ガスを排出する排ガス冷却装置において、
該プローブは円筒形であり、
該プローブの円筒形の周面の一部の1カ所のみに該冷却ガスの導入部を設け、
該導入部の開口の中心から該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されておらず、かつ該冷却ガスの導入方向と該中心軸に垂直な断面とがなす角度が30度以上、60度以下であることを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス冷却装置において、該導入部の開口の中心を含み該中心軸に垂直な面内で、該冷却ガスの導入方向の成分と該中心軸から該開口の中心とを繋ぐ線分とがなす角度は、30度以上であることを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス冷却装置において、該冷却ガスの導入時の流速が40~150m/sであることを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の排ガス冷却装置において、該プローブの該排ガスを導入する側と反対側の端部は閉塞され、該プローブの円筒形の周面の一部に該混合ガスを排出する分岐部を設けていることを特徴とする排ガス冷却装置。
【請求項5】
セメント原料を焼成するキルンから排出される排ガスの一部を抽気し、前記抽気した排ガスに冷却ガスを混合し、前記混合した混合ガスを排出する排ガス冷却方法において、
該排ガスと該冷却ガスとの混合は円筒形のプローブ内で行い、
該プローブの円筒形の周面の一部の1カ所のみから該冷却ガスを導入すると共に、該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されておらず、かつ該冷却ガスの導入方向と該中心軸に垂直な断面とがなす角度が30度以上、60度以下であることを特徴とする排ガス冷却方法。
【請求項6】
請求項5に記載の排ガス冷却方法において、該冷却ガスの導入部の開口の中心を含み該中心軸に垂直な面内で、該冷却ガスの導入方向の成分と該中心軸から該開口の中心とを繋ぐ線分とがなす角度は、30度以上であることを特徴とする排ガス冷却方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の排ガス冷却方法において、該冷却ガスの導入時の流速が40~150m/sであることを特徴とする排ガス冷却方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の排ガス冷却方法において、該プローブの該排ガスを導入する側と反対側の端部は閉塞され、該プローブの円筒形の周面の一部に該混合ガスを排出する分岐部を設けていることを特徴とする排ガス冷却方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の排ガス冷却装置及び方法は、以下の技術的特徴を有する。
(1) セメント原料を焼成するキルンと、該キルンから排出される排ガスの一部を抽気するプローブと、該プローブに冷却ガスを導入し、該排ガスと該冷却ガスとを該プローブ内で混合した混合ガスを排出する排ガス冷却装置において、該プローブは円筒形であり、該プローブの円筒形の周面の一部の1カ所のみに該冷却ガスの導入部を設け、該導入部の開口の中心から該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されておらず、かつ該冷却ガスの導入方向と該中心軸に垂直な断面とがなす角度が30度以上、60度以下であることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
(5) セメント原料を焼成するキルンから排出される排ガスの一部を抽気し、前記抽気した排ガスに冷却ガスを混合し、前記混合した混合ガスを排出する排ガス冷却方法において、該排ガスと該冷却ガスとの混合は円筒形のプローブ内で行い、該プローブの円筒形の周面の一部の1カ所のみから該冷却ガスを導入すると共に、該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されておらず、かつ該冷却ガスの導入方向と該中心軸に垂直な断面とがなす角度が30度以上、60度以下であることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
本発明は、排ガスと冷却ガスとをプローブ内で混合した混合ガスを排出する排ガス冷却装置及び方法において、該プローブは円筒形であり、該プローブの円筒形の周面の一部の1カ所のみから該冷却ガスを導入すると共に、該冷却ガスの導入方向への延長線上には、該プローブの円筒形の中心軸が配置されておらず、かつ該冷却ガスの導入方向と該中心軸に垂直な断面とがなす角度が30度以上、60度以下であるため、冷却ガスのプローブ内での逆流を抑制しながら、冷却ガスと排ガスとの混合を円滑に行い、排ガスの冷却効果を高めた排ガス冷却装置及び方法を提供することができる。