(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022152769
(43)【公開日】2022-10-12
(54)【発明の名称】光う蝕診断計及び光う蝕診断方法
(51)【国際特許分類】
A61C 19/04 20060101AFI20221004BHJP
A61B 1/247 20060101ALI20221004BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
A61B1/247
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055669
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】595148176
【氏名又は名称】学校法人大阪歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間 久直
(72)【発明者】
【氏名】粟津 邦男
(72)【発明者】
【氏名】吉川 一志
【テーマコード(参考)】
4C052
4C161
【Fターム(参考)】
4C052NN07
4C052NN12
4C052NN15
4C161AA09
4C161BB00
4C161CC06
4C161HH51
4C161LL01
4C161NN01
(57)【要約】
【課題】う蝕の進行度合いを定量的に診断するために一つの装置により歯の硬さを定量的に得ることのできる光う蝕診断計及び光う蝕診断方法、並びにそれらを含むう蝕診断システムを提供すること
【解決手段】光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、対象物に当接する圧子と、圧子に光を出射する光源と、圧子の先端部から反射した光を受光する受光素子と、圧子の先端部と受光素子の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズと、を有しており、光源から出射される光の波長が500nm以下であり、光源から出射される光が圧子の先端部に入射する入射角が70°以下である光う蝕診断計。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、対象物に当接する圧子と、
前記圧子に光を出射する光源と、
前記圧子の先端部から反射した光を受光する受光素子と、
前記圧子の先端部と前記受光素子の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズと、を有しており、
前記光源から出射される光の波長が500nm以下であり、
前記光源から出射される光が前記圧子の先端部に入射する入射角が70°以下である光う蝕診断計。
【請求項2】
前記受光素子が、二次元に配列している単位セルを含む請求項1に記載の光う蝕診断計。
【請求項3】
前記圧子と前記光源との間の光路上であって前記圧子と前記受光素子との間の光路上に配置されたビームスプリッターをさらに有している請求項1又は2に記載の光う蝕診断計。
【請求項4】
さらに圧力センサを備え、前記圧子が対象物に当接する圧力が所定の値に達すると前記受光素子が撮像する請求項1~3のいずれか一項に記載の光う蝕診断計。
【請求項5】
前記圧子の先端部が何にも当接していないとき(非当接)の前記受光素子の受光強度から、前記圧子の先端部が対象物に当接しているときの前記受光素子の受光強度を差し引くことにより、差分強度画像を取得する請求項1~4のいずれか一項に記載の光う蝕診断計。
【請求項6】
所定の値を閾値として前記差分強度画像を二値化する請求項5に記載の光う蝕診断計。
【請求項7】
前記二値化により得られた差分強度画像の外形の長軸の長さと短軸の長さの比((長軸の長さ)/(短軸の長さ))が所定の値以上であるときに、エラー信号を発する請求項6に記載の光う蝕診断計。
【請求項8】
前記閾値を超えた領域の面積を取得する請求項6又は7に記載の光う蝕診断計。
【請求項9】
さらに筐体を有しており、前記圧子が前記筐体に着脱可能である請求項1~8のいずれか一項に記載の光う蝕診断計。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光う蝕診断計を用意するステップと、
前記圧子の先端部を既知の硬度を有する対象物に当接させるステップと、
前記圧子の先端部が前記既知の硬度を有する対象物に当接している状態で、前記光源から出射し前記圧子の先端部から反射した光を前記受光素子で受光し第1の撮像画像を取得するステップと、
前記圧子の先端部を診断する歯に当接させるステップと、
前記圧子の先端部が前記診断する歯に当接している状態で、前記光源から出射し前記圧子の先端部から反射した光を前記受光素子で受光し第2の撮像画像を取得するステップと、
前記第1の撮像画像と前記第2の撮像画像とを比較することにより、前記既知の硬度を有する対象物の硬度から前記診断する歯の硬度を決定するステップと、
を有している光う蝕診断方法。
【請求項11】
前記圧子の先端部を何にも当接させない状態(非当接)で、前記光源から出射し前記圧子の先端部から反射した光を前記受光素子で受光し第3の撮像画像を取得するステップをさらに有している請求項10に記載の光う蝕診断方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光う蝕診断計を含むう蝕診断システムであって、有線又は無線で接続されている情報端末装置と、前記情報端末装置に蓄積されている光う蝕診断情報(請求項1~9のいずれか一項に記載の光う蝕診断計により測定されたもの)を有しているう蝕診断システム。
【請求項13】
前記情報端末装置は、さらに、請求項1~9のいずれか一項に記載されている光う蝕診断計以外の装置により測定されたう蝕診断情報を有している請求項12に記載のう蝕診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、う蝕を診断できる光う蝕診断計及び光う蝕診断方法、並びにそれらを含むう蝕診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯の健康は全身の健康に与える影響が大きく、う蝕の予防や適切な治療は社会的要請である。特に高齢者においては、歯の残存数と認知症発症の関連性が非常に高いことが知られており、歯の健康を維持することが認知症予防に有効であるといわれている。う蝕の予防や適切な治療が行われることにより認知症発症を減らすことができれば、介護費用の大きな削減を見込むことができる。
【0003】
歯の硬組織(エナメル質、象牙質)は、う蝕に罹患すると脱灰されて欠損が生じる。エナメル質に白斑が生じる程度の軽いものは経過観察されるが、進行が進むと罹患部分を削る必要が生じる。従来のう蝕の診断及び治療において、う蝕と健全歯との識別や治療方法の選択は、歯科医療者の感覚に頼っているのが現状である。例えば、う蝕と健全歯との識別は、歯科用探針や染色液等により歯科医療者の感覚に頼って行われており、定量的な指標に基づいて行われていない。また、切除するべきう蝕の選別についても歯科医療者の手指の感覚に頼っている部分が多い。そのため、本来切除する必要のない歯まで切除される事例も多く、歯科医療者の経験に左右されることなくう蝕の進行程度を診断できる技術が求められている。
【0004】
また、う蝕の進行を止めるためにフッ素等の薬剤の塗布が行われているが、う蝕の進行程度を定量的に評価して最適な薬剤の塗布を行うためにも、う蝕の進行程度を正確に知ることが必要である。
【0005】
中でも高齢者においては、歯根部のう蝕である根面う蝕の罹患率が50%を超えているが、根面う蝕の進行程度を定量的に評価する方法は確立されていない。特に、切除すべき症例と予防処置でよい症例との間の中間状態の診断が非常に難しく、う蝕の進行程度を診断する技術の向上が必要である。
【0006】
う蝕を診断する技術として、特許文献1及び2に開示されているようなう蝕診断装置が知られているが、これらの装置ではう蝕の進行程度を定量的に評価することは困難である。
【0007】
また、特許文献3に開示されている「硬さ測定用圧子とそれを用いた硬さ測定方法」では、定量的な硬さの測定が試みられているが、円錐形圧子の表面に塗料を塗布する工程や測定後の顕微鏡観察が必要であるなど、工程及び装置ともに複数に及び測定値順が煩雑であるという課題があった。
【0008】
特許文献4では、圧子が反射した光源からの光を受光することによりう蝕の定量的な診断を試みたう蝕診断計が開示されているが、相対的な歯の硬さの情報が得られるにとどまっており、歯の具体的な硬度についてはヌープ硬さ等の別の指標と対応させる必要があり、一つの装置により歯の硬さを定量的に得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-29412号公報
【特許文献2】特開2010-252911号公報
【特許文献3】特開2011-112629号公報
【特許文献4】国際公開第2020/080219号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、う蝕の進行度合いを定量的に診断するために一つの装置により歯の硬さを定量的に得ることのできる光う蝕診断計及び光う蝕診断方法、並びにそれらを含むう蝕診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計は、光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、対象物に当接する圧子と、圧子に光を出射する光源と、圧子の先端部から反射した光を受光する受光素子と、圧子の先端部と受光素子の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズと、を有しており、光源から出射される光の波長が500nm以下であり、光源から出射される光が圧子の先端部に入射する入射角が70°以下である。このような構成により、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計は、金属の硬さ基準片に圧子を当接させて得た受光撮像画像と、当該圧子を歯に当接させて得た受光撮像画像とを比較することにより、一つの装置で歯の硬さを定量的に得ることができる。
【0012】
受光素子はが、二次元に配列している単位セルを含むことが好ましい。
【0013】
圧子と光源との間の光路上であって圧子と受光素子との間の光路上に配置されたビームスプリッターを有していることが好ましい。
【0014】
さらに圧力センサを備え、圧子が対象物に当接する圧力が所定の値に達すると受光素子が撮像することが好ましい。
【0015】
圧子の先端部が何にも当接していないとき(非当接)の受光素子の受光強度から、圧子の先端部が対象物に当接しているときの受光素子の受光強度を差し引くことにより、差分強度画像を取得することが好ましい。この場合、所定の値を閾値として差分強度画像を二値化することが好ましい。さらにこの場合、二値化により得られた差分強度画像の外形の長軸の長さと短軸の長さの比((長軸の長さ)/(短軸の長さ))が所定の値以上であるときに、エラー信号を発することが好ましい。
【0016】
二値化する場合、閾値を超えた領域の面積を取得することが好ましい。
【0017】
さらに筐体を有しており、圧子が筐体に着脱可能であることが好ましい。
【0018】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断方法は、上記に記載の光う蝕診断計を用意するステップと、圧子の先端部を既知の硬度を有する対象物に当接させるステップと、圧子の先端部が既知の硬度を有する対象物に当接している状態で、光源から出射し圧子の先端部から反射した光を受光素子で受光し第1の撮像画像を取得するステップと、圧子の先端部を診断する歯に当接させるステップと、圧子の先端部が診断する歯に当接している状態で、光源から出射し圧子の先端部から反射した光を受光素子で受光し第2の撮像画像を取得するステップと、第1の撮像画像と第2の撮像画像とを比較することにより、既知の硬度を有する対象物の硬度から診断する歯の硬度を決定するステップと、を有している。
【0019】
圧子の先端部を何にも当接させない状態(非当接)で、光源から出射し圧子の先端部から反射した光を受光素子で受光し撮像するステップをさらに有していることが好ましい。
【0020】
本発明の実施形態に係るう蝕診断システムは、上記に記載の光う蝕診断計を含み、有線又は無線で接続されている情報端末装置と、情報端末装置に蓄積されている光う蝕診断情報(上記に記載の光う蝕診断計により測定されたもの)を有している。
【0021】
情報端末装置は、さらに上記光う蝕診断計以外の装置により測定されたう蝕診断情報を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光う蝕診断計及び光う蝕診断方法、並びにそれらを含むう蝕診断システムによれば、一つの装置により歯の硬さを定量的に測定することができ、これによりう蝕の進行度合いを定量的に診断できる。本発明の光う蝕診断計を用いれば、歯の硬さの測定を患者の負担が少ない低侵襲な方法で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】金製の基準片に圧子を当接したときの入射光の波長と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
【
図2】銅製の基準片に圧子を当接したときの入射光の波長と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
【
図3】真鍮製の基準片に圧子を当接したときの入射光の波長と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
【
図4】金製の基準片に圧子を当接させ波長455nmの光を圧子に入射したときの入射角と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
【
図5】金製の基準片に圧子を当接させ波長625nmの光を圧子に入射したときの入射角と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る圧子が対象物に当接したときの断面図を表す。
【
図7】本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計の断面図を表す。
【
図8】本発明の一実施形態に係る圧子の側面図を表す。
【
図9】
図8に示した圧子の先端部とは反対側から見た平面図を表す。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る圧子の側面図を表す。
【
図11】時間と当接圧力の関係を示すグラフである。
【
図12】
図7に示した光う蝕診断計の別の断面図を表す。
【
図13】圧子の先端部が何にも当接していないとき(非当接)の圧子の先端部からの反射光の撮像画像である。
【
図14】圧子の先端部が対象物に当接しているときの圧子の先端部からの反射光の撮像画像である。
【
図15】
図13に示した撮像画像から
図14に示した撮像画像を差し引いた差分強度画像である。
【
図16】
図15に示した差分強度画像を二値化した二値化後差分強度画像である。
【
図17】圧子の先端部が対象物に垂直に当接したときの模式図を表す。
【
図18】圧子の先端部が対象物に垂直から逸脱して当接したときの模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合は明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における各部材の寸法は、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0025】
1.光う蝕診断計
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計は、光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、対象物に当接する圧子と、圧子に光を出射する光源と、圧子の先端部から反射した光を受光する受光素子と、圧子の先端部と受光素子の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズと、を有しており、光源から出射される光の波長が500nm以下であり、光源から出射される光が圧子の先端部に入射する入射角が70°以下である。
【0026】
発明者らは、上記構成を有する光う蝕診断計の圧子を既知の硬さを有する金属製の基準片に当接させて、圧子に光を入射し、圧子の先端部からの反射する光を受光素子で受光することにより、既知の硬さを有する金属製の基準片の受光撮像画像が得られることを見出した。既知の硬さを有する金属製の基準片の受光撮像画像が得られるようになったことで、基準片に当接させたのと同じ圧子を歯に当接させて同様に受光撮像画像を得ることにより、基準片の硬さから歯の硬さを定量的に得ることができる。
【0027】
図1~
図5を参照して、既知の硬さを有する金属製の基準片の受光撮像画像を得られることについて説明する。
図1は、金製の基準片(山本科学工具研究社製、HMV30)にガラス(ショット社製、N-BK7)製の圧子を当接し、光源から圧子に入射した光の圧子の先端部からの反射率を測定したときの、入射光の波長と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
図2は、銅製の基準片(山本科学工具研究社製、HMV40)にガラス(ショット社製、N-BK7)製の圧子を当接し、光源から圧子に入射した光の圧子の先端部からの反射率を測定したときの、入射光の波長と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
図3は、真鍮(銅:70%、亜鉛:30%)製の基準片(山本科学工具研究社製、HMV100)にガラス(ショット社製、N-BK7)製の圧子を当接し、光源から圧子に入射した光の圧子の先端部からの反射率を測定したときの、入射光の波長と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
図4は、金製の基準片(山本科学工具研究社製、HMV30)にガラス(ショット社製、N-BK7)製の圧子を当接させ、波長455nmの光を圧子に入射したときの圧子の先端部への入射角と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
図5は、金製の製、N-BK7)製の圧子を当接させ、波長625nmの光を圧子に入射したときの圧子の先端部への入射角と圧子の先端部からの反射率との関係を示すグラフである。
【0028】
図1~
図3から、金製、銅製、及び真鍮製の基準片に圧子を当接させる場合は、圧子に入射する光の波長が500nm以下のときに反射率が低下することがわかる。また、
図4及び
図5から、波長625nmの光を圧子に入射する場合には入射角が0~90°の範囲でほとんど反射率が変わらないのに対し、波長455nmの光を圧子に入社する場合は、入射角が70°以下のときに反射率が低下することがわかる。
【0029】
図6に示すように、対象物100に圧子20が当接すると、対象物100の硬さに応じて圧子20の先端部21の一定の面積が対象物100の表面と接する。この面積は対象物100の硬さに比例し、対象物100が軟らかいほど当該面積は大きくなる。
図6の入射光11のように圧子20に光を入射すると、対象物100が金属製の基準片であっても圧子20の先端部21の対象物100の表面と接した部分S
1では
図1~
図5に示したような反射率で光が反射し、圧子20の先端部21の何にも当接していない部分S
2では全反射が起こるため、圧子20の先端部21の対象物100の表面と接した部分S
1の反射率が低いことで、すなわち光源10から出射される光の波長が500nm以下であり該光が圧子20の先端部21に入射する入射角θ
iが70°以下であることで圧子20の先端部21の何にも当接していない部分S
2の全反射とのコントラストを検出でき、圧子20の先端部21の対象物100の表面と接した部分S
1の面積の情報を得ることができる。これにより、この面積に比例する対象物100の硬さを得ることができる。
【0030】
次に上記基準片に当接させたのと同じ圧子20を歯に当接させて同様に受光撮像画像を得ることで、歯に当接させたときの圧子20の先端部21の歯の表面と接した部分の面積の情報を得ることができる。上記基準片は既知の硬さを有していることから、基準片に当接した圧子20の面積の情報と歯に当接した圧子20の面積の情報とを比較することで、一つの装置で歯の硬さを定量的に得ることができる。
【0031】
図7~
図12を参照しながら、本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計を説明する。
図7は本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計の断面図を表す。
図8は本発明の一実施形態に係る圧子の側面図を表し、
図9は
図8に示した圧子の先端部とは反対側から見た平面図を表す。
図10は本発明の他の実施形態に係る圧子の側面図を表す。
図11は本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計を対象物に当接させたときの時間と当接圧力との関係を示すグラフである。
図12は
図7に示した光う蝕診断計の別の断面図を表す。
【0032】
図7に示すように、本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計1は、光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、対象物100に当接する圧子20と、圧子20に光を出射する光源10と、圧子20の先端部21から反射した光を受光する受光素子30と、圧子20の先端部21と受光素子30の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズ40と、を有しており、光源10から出射される光の波長が500nm以下であり、光源10から出射される光が圧子20の先端部21に入射する入射角が70°以下であることに特徴を有する。このような構成により、光う蝕診断計1は、金属の硬さ基準片に圧子20を当接させて得た受光撮像画像と、当該圧子20を歯に当接させて得た受光撮像画像とを比較することにより、一つの装置で歯の硬さを定量的に得ることができる。
【0033】
図8に示すように、圧子20の先端部21は先細り形状を有するように縮径されている。圧子20の先端部21の好ましい形状は、概ね錘状であり、例として
図8に示した円錐のほか多角錐等が挙げられる。中でも、圧子20の先端部21の形状は円錐又は四角錐であることが好ましい。先端部21は頂部22を有する。先端部21が円錐や多角錐等の場合は、頂部22はそれらの頂点である。
【0034】
図9に示すように、圧子20の頂部22とは反対側にある面(以下、底面と呼ぶことがある。)の形状は円形であってもよいし、図示していないが多角形やその他任意の形状であってよい。
【0035】
図8及び
図9に示すように、圧子20は底面の図心O(
図8及び
図9の場合は円の中心)と頂部22とを結ぶ中心軸cを有しており、先端部21は角度θを有する。角度θは、圧子20の先端部21が円錐の場合は対向する母線のなす角度であり、圧子20の先端部21が四角錐の場合は対向する面同士がなす角度である。光源10からの光が
図8に示す入射光11のように圧子20の中心軸cに平行に入射するとしたとき、入射光11と先端部21の母線とがなす角度はθ/2と等しい。入射光11の入射角θ
iは、母線に対する垂線pと入射光11のなす角度であるから、θ/2とθ
iとの和は90°である。
【0036】
圧子20の底面の大きさは、口腔内への挿入に支障がなく対象物100に当接可能であれば特に制限されないが、直径又は長径が3mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以下である。
【0037】
図10に示すように、圧子20の先端部21は尖鋭ではなくある程度の丸みを有するR部を有していてもよい。R部を有することにより、圧子20が破損しにくく、被験者が痛みを感じにくいという利点がある。一方で、R部の丸みが付きすぎると対象物100への当接がしにくくなったり反射光の検出に悪影響があったりするため、R部の曲率半径rは上記条件を満たすように適宜定めればよい。具体的には、R部の曲率半径rは5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。また、R部の曲率半径rは500μm以下であることが好ましく、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0038】
圧子20は光透過性を有している。圧子20が光透過性を有していることにより、圧子20の底面側から入射した光が圧子20の先端部21まで達することができ、先端部21で反射された光が圧子20を透過して受光素子30まで達することができる。圧子20を形成する材料は、光透過性を有する限り特に制限されず、ガラス、鉱石、樹脂材料等から適宜選ぶことができる。具体的には、ガラス、有機ガラス等のガラス;サファイア、ルビー等の天然鉱物;人工鉱物;アクリル樹脂、ポリカボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂材料等が挙げられる。これらの中から、屈折率や硬さが測定する対象物の条件に最適となるような材料を用いて圧子20とすればよい。
【0039】
図7に示すように、本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧子20の先端部21と受光素子30の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズ40を有している。これにより、反射光の弱い領域と強い領域とのコントラストの違いを精度よく観測することが可能となる。さらに、単に反射光強度を測定する手法と比べて、測定値の較正の変動が少ないという利点がある。
【0040】
光源10から出射される光の波長は500nm以下であり、光源10から出射される光が圧子20の先端部21に入射する入射角θiは70°以下である。これにより、対象物100が金属製の基準片である場合であっても、圧子20の先端部21が対象物100に当接した部分の反射率を低くすることができ、先端部21が何にも当接していない部分の全反射とのコントラストを検出できる。光源10から出射される光の波長は、480nm以下がより好ましく、450nm以下がさらに好ましく、420nm以下であってもよい。光源10から出射される光は400nm以上であることが好ましい。
【0041】
光源10は特に制限されないが、半導体レーザー、発光ダイオード等が用いられる。これらは、特定の波長の光を得られるため不要な光との分離が容易であり好適である。中でも、半導体レーザーは指向性を有するため好ましい。
【0042】
上述したように、先端部21の角度θと入射角とは、θ/2+θ
i=90°の関係を有しており入射角θ
iは70°以下であることから、圧子20の形状が
図8~
図10に示したような円錐形の場合、先端部21の角度θは40°以上である。先端部21の角度θは45°以上がより好ましく48°以上がさらに好ましい。また、先端部21の角度θは、100°以下が好ましく、90°以下がより好ましく、80°以下がさらに好ましく、60°以下、55°以下であってもよい。
【0043】
以上、好ましい先端部21の角度θについて円錐形を例に説明したが、圧子20の先端部21が円錐形以外の形状を有する場合も、上記と同様の説明がなされる。
【0044】
図7に示す光路P
1のように、光源10から出射した光は圧子20の底面側から圧子20に入射し、圧子20の先端部21に到達することが好ましい。圧子20の先端部21に到達した光は、光路P
2のように先端部21で反射され、光路P
3のようにレンズ40を通って受光素子30で受光されることが好ましい。
図7では、光源10から圧子20の先端部21までの光路と先端部21から受光素子30までの光路が平行ではない位置に光源10と受光素子30が配されているため、互いに平行ではない光路P
2及び光路P
3が示されているが、受光素子30が圧子20の先端部21に対して光源10と同じ方向に配されている場合は、光路P
2及び光路P
3は互いに平行で一直線上に配される構成とすることもできる。
【0045】
受光素子30は、二次元に配列している単位セルを含むことが好ましい。該二次元に配列している単位セルは、固体撮像素子(イメージセンサ)であってもよく、CDCイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等であってもよい。中でも、供給価格が比較的安く消費電力が少なく携帯用に好適であるという理由からCMOSイメージセンサが好ましい。
【0046】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧子20と光源10との光路P
1上であって、圧子20と受光素子30との光路上に配置されたビームスプリッター50をさらに有していることが好ましい。ビームスプリッター50を配置することで、
図7に示したように光源10から圧子20までの光路P
1と平行ではない光路(光路P
3)を圧子20から受光素子30までの光路が有することが可能となり、光う蝕診断計1の自由度が向上する。その結果、光う蝕診断計1の圧子20側を口腔内に挿入しつつ、他端を把持して操作することが容易な形状とすることができる。また、受光画像のS/N比を高めるために、ビームスプリッター50の反射率は、例えば52%以上が好ましく、55%がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
【0047】
或いは、図示していないが、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧子20と光源10との光路P1上であって、圧子20と受光素子30との光路上に配置されたミラーを有していてもよい。受光素子30が圧子20に対して光源10と反対側に配されており、圧子20から受光素子30までの光路が光源10から圧子20までの光路P1と平行な場合は、圧子20からの反射光をミラーで反射することにより受光素子30で受光することができる。
【0048】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、さらに圧力センサ71を備え、圧子20が対象物100に当接する圧力が所定の値に達すると受光素子30が撮像することが好ましい。これにより、一定の圧力で圧子20を対象物100に当接したときの対象物100の硬さを測定でき、操作者の技量にかかわらず定量的な測定が可能となる。
【0049】
図11に時間と当接圧力の関係を表すグラフを示す。
図11において、所定の当接圧力をSとすると、Tのタイミングで撮像する。圧子20は操作者により対象物100に当接されるため、時間とともに当接圧力が変化するのは避けられないが、所定の当接圧力のタイミングで撮像することで、常に一定の当接圧力における反射光を撮像できる。当接圧力の所定値は、対象物100の条件により適宜定められるが、好ましくは3N以下、より好ましくは2.5N以下、さらに好ましくは2N以下、また、好ましくは0.1N以上、より好ましくは0.5N以上、さらに好ましくは0.8N以上である。
【0050】
図示していないが、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧力センサ71とは別にさらにスイッチを有しており、スイッチからの信号で受光素子30が撮像してもよい。スイッチからの信号で撮像することにより、圧子20の先端部21が何にも当接しておらず(非当接)圧力センサ71からの信号がない場合であっても随時撮像が可能となる。
【0051】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、さらにフィルター60を有していてもよい。フィルター60が透過することのできる光の波長を光源10が出射する光の波長とすることで、光源10から出射された光以外の光の影響、例えば室内蛍光灯や歯科用照明器等の影響を除くことができ、撮像画像のS/N比を高められる。
【0052】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、さらに筐体80に納められていてもよい。例えば
図7に示すように、光源10から圧子20の先端部21までの光路P
1、圧子20の先端部21からビームスプリッター50までの光路P
2、及びビームスプリッター50から受光素子30までの光路P
3が筐体80内に配置され、圧子20は筐体80に設けられた開口部に取り付けることができる。
【0053】
圧子20は、筐体80の開口部に着脱可能であることが好ましい。測定前に圧子20の消毒や滅菌を行ったり、患者によって圧子20を取り替えたり、対象物100の状態によって最適な圧子20を用いたりすることができる。また、圧子20を消耗部品として定期的に交換することもでき、使用の都度使い捨てとしてもよい。このとき、光路P1、光路P2、及び光路P3の距離が測定の度に変化しないことが好ましい。従って、筐体80は、圧子20が着脱される開口部内に圧子20を固定するストッパー等の固定部を備えていることが好ましい。光路P1、光路P2、及び光路P3の距離が一定であることで、結像関係を変えずに圧子20を交換でき、安定した撮像が可能となる。
【0054】
筐体80の一部が、筐体80を納める空洞を有した持ち手90に取り付けられていてもよい。
図12に示すように、一実施形態において、筐体80の外側に設けられた回転軸72を持ち手90内に設けられた軸穴に嵌合することで、筐体80を持ち手90に取り付けることができる。圧子20の先端部21が対象物100に当接すると、筐体80が回転軸72を軸として回転し、このとき生じる力を圧力センサ71が検出することができる。
【0055】
硬さの測定値を定量的に取得するために、反射光が弱くなる領域の面積は一定の条件下で測定されることが好ましい。このために、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、以下の画像処理過程を有することができる。
【0056】
図13~
図18を参照しながら、本発明の実施形態に係る画像処理過程を説明する。
図13は圧子20の先端部21が何にも当接していないとき(非当接)の圧子20の先端部21からの反射光の撮像画像である。
図14は圧子20の先端部21が対象物100に当接しているときの圧子20の先端部21からの反射光の撮像画像である。
図15は
図13に示した撮像画像から
図14に示した撮像画像を差し引いた差分強度画像である。
図16は
図15に示した差分強度画像を二値化した二値化後差分強度画像である。
図17は圧子20の先端部21が対象物100に垂直に当接したときの模式図を表し、
図18は圧子20の先端部21が対象物100に垂直から逸脱して当接したときの模式図を表す。
【0057】
[差分強度画像取得過程]
圧子20の先端部21が非当接であるときの反射光を受光素子30が撮像した強度画像(
図13)から、圧子20の先端部21が対象物100に当接しているときの反射光を受光素子30が撮像した強度画像(
図14)を差し引いて、差分強度画像(
図15)を取得する。差し引くことにより、圧子20の個体差による反射のばらつきや、観測したい反射光以外の寄与分を除外することができる。上記画像処理過程では圧子20は同一のものを使用し、他の撮像条件も同一にして撮像する。
【0058】
[差分強度画像の二値化過程]
上記で得られた差分強度画像を、所定の値を閾値として二値化する。このとき、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、下記の条件でエラー信号を発することができる。対象物100に圧子20の先端部21を当接する際は、
図17に示すように圧子20の中心軸cができるだけ対象物100の表面に対して垂直に当接することが好ましいが、対象物100の表面の凹凸や操作者の技量により必ずしも直角とならない場合がある。中心軸cと対象物100の表面との当接角度が垂直から外れると、
図18に示すように、反射光が弱くなる領域の外径が円形から逸脱する。そうすると、得られた撮像画像が硬さ以外の情報を含んでしまうことになるため、上記閾値を超えた差分強度画像(二値化差分強度画像)の外形の長軸L
mの長さと短軸L
sの長さの比((長軸L
mの長さ)/(短軸L
sの長さ))が所定の値以上であるときにエラー信号を発することが好ましい。これにより、硬さ以外の情報を除外できる。
【0059】
[二値化差分強度画像の面積取得過程]
上記過程を経た二値化差分強度画像の面積を取得する。当該面積は対象物100の硬さを反映しており、硬ければ面積は小さく、軟らかければ面積は大きい。
【0060】
2.光う蝕診断方法
本発明の実施形態に係る光う蝕診断方法は、上記光う蝕診断計1を用意するステップと、圧子20の先端部21を既知の硬度を有する対象物に当接させるステップと、圧子20の先端部21が既知の硬度を有する対象物に当接している状態で、光源10から出射し圧子20の先端部21から反射した光を受光素子30で受光し第1の撮像画像を取得するステップと、圧子20の先端部21を診断する歯に当接させるステップと、圧子20の先端部21が診断する歯に当接している状態で、光源10から出射し圧子20の先端部21から反射した光を受光素子30で受光し第2の撮像画像を取得するステップと、第1の撮像画像と第2の撮像画像とを比較することにより、既知の硬度を有する対象物の硬度から診断する歯の硬度を決定するステップと、を有している。本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、対象物100が金属製の基準片であっても歯であっても圧子20の先端部21の対象物100の表面と接した部分の反射率が低いことで、すなわち光源10から出射される光の波長が500nm以下であり該光が圧子20の先端部21に入射する入射角θiが70°以下であることで圧子20の先端部21の何にも当接していない部分の全反射とのコントラストを検出でき、圧子20の先端部21の対象物の表面と接した部分の面積の情報を得ることができる。既知の硬度を有する対象物として、例えば既知のヌープ硬さを有する金属製の基準片を用いれば、ヌープ硬さと第1の撮像画像の受光強度の弱い面積とから検量線を得ることができる。この検量線に基づき、第2の撮像画像の受光強度の弱い面積から診断する歯のヌープ硬さを得ることができる。
【0061】
既知の硬度を有する対象物は、ヌープ硬さ以外にも、ビッカース硬さ、モース硬さ、ロックウェル硬さ、ブリネル硬さ等、いずれの値を有していてもよい。既知の硬度を有する対象物は、金属製の基準片であることが好ましい。金属製の基準片であれば、光源10から出射される光の波長が500nm以下であり該光が圧子20の先端部21に入射する入射角θiが70°以下であることで、圧子20の先端部21が基準片の表面と当接して反射光強度が低い部分と、圧子20の先端部21の何にも当接していない部分の全反射とのコントラストを検出でき、第1の撮像画像を得ることが容易となる。
【0062】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断方法は、圧子20の先端部21を何にも当接させない状態(非当接)で、光源10から出射し圧子20の先端部21から反射した光を受光素子30で受光し第3の撮像画像を取得するステップをさらに有していることが好ましい。これにより、第3の撮像画像から第1の撮像画像及び第2の撮像画像を差し引いてそれぞれ差分強度画像を得ることができ、圧子20の個体差による反射のばらつきや、観測したい反射光以外の寄与分を除外することができる。
【0063】
3.う蝕診断システム
本発明の実施形態に係るう蝕診断システムは、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計を含むシステムであって、有線又は無線で接続されている情報端末装置と、該情報端末装置に蓄積されている光う蝕診断情報(本発明の光う蝕診断計により測定されたもの)を有している。情報端末装置に光う蝕診断情報を蓄積することにより、情報をデータベース化して診断する歯の硬さをより精度よく測定することができる。
【0064】
本発明の実施形態に係るう蝕診断システムは、さらに、本発明の光う蝕診断計以外の装置により測定されたう蝕診断情報、例えば探針やカリオテスター、パノラマレントゲン等の従来のう蝕診断方法により診断された情報を有していることが好ましい。これら従来の診断方法により診断された情報を併せて蓄積することで、従来の診断方法で診断したう蝕診断結果を、本発明の光う蝕診断計で得た硬さの情報と対応させることができる。
【実施例0065】
実施例1
光う蝕診断計を作製し、金製の基準片(山本科学工具研究社製、HMV30)にガラス(エドモンド・オプティクス社製、#49-397 N-BK7)製の圧子を当接した状態で、光源から出射し圧子の先端部から反射した光を受光素子で受光し顕微鏡を用いて撮像画像を取得した。上記ガラス圧子は表面がアルミコーティングされているため、塩酸に浸漬することにより表面のアルミニウム層を除去して測定に用いた。得られた画像を
図19に示す。光う蝕診断計の構成及び撮像条件は以下の通りである。
光源:青色LED(波長:455nm、ソーラボジャパン社製M455L3)
受光素子:モノクロCMOSカメラ(エドモンド・オプティクス社製#89-737)
ビームスプリッター:ソーラボジャパン社製CCM5-BS016/M(50%透過、50%反射)
入射角:45°
対物レンズ:無限補正対物レンズ(株式会社ミツトヨ製、M-PLAN NIR 10X
結像レンズ:株式会社ミツトヨ製、MT-L
【0066】
比較例1
光源を赤色LED(波長:625nm、ソーラボジャパン社製M625L3)に替えたこと以外は実施例1と同様にして受光画像を取得した。得られた画像を
図20に示す。
【0067】
実施例2
基準片を銅製の基準片(山本科学工具研究社製、HMV40)に替えたこと以外は実施例1と同様にして受光画像を取得した。得られた画像を
図21に示す。
【0068】
比較例2
光源を赤色LED(波長:625nm、ソーラボジャパン社製M625L3)に替えたこと以外は実施例2と同様にして受光画像を取得した。得られた画像を
図22に示す。
【0069】
実施例3
基準片を真鍮(銅:70%、亜鉛:30%)製の基準片(山本科学工具研究社製、HMV100)に替えたこと以外は実施例1と同様にして受光画像を取得した。得られた画像を
図23に示す。
【0070】
比較例3
光源を赤色LED(波長:625nm、ソーラボジャパン社製M625L3)に替えたこと以外は実施例3と同様にして受光画像を取得した。得られた画像を
図24に示す。
【0071】
いずれの基準片を用いた場合も、青色LEDを用いた場合に圧子の先端部が基準片の表面と当接して反射光強度が低い部分と、圧子の先端部の何にも当接していない部分の全反射との強いコントラストを検出できた。